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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122086
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】コネクタ洗浄器
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/16 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A61M39/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029419
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 隼平
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066JJ03
4C066JJ05
(57)【要約】
【課題】洗浄対象のオスコネクタをスムーズに装着できるコネクタ洗浄器を提供する。
【解決手段】実施形態の一例であるコネクタ洗浄器10は、洗浄液の噴出孔24が底部に形成され、オスコネクタ100を収容する有底筒状のコネクタ収容部20と、オスコネクタ100の挿通孔33を有し、コネクタ収容部20の開口を覆う蓋部材30と、コネクタ収容部20から洗浄廃液を排出するための排出部40とを備える。蓋部材30は、可撓性を有する部材であって、挿通孔33の周囲に薄肉部35を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のオスコネクタ本体と、前記オスコネクタ本体の先端に形成されたルアーの周囲を覆うカプラとを含む医療用オスコネクタの洗浄器であって、
洗浄液の噴出孔が底部に形成され、前記オスコネクタを収容する有底筒状のコネクタ収容部と、
前記オスコネクタの挿通部を有し、前記コネクタ収容部の開口を覆う蓋部材と、
前記コネクタ収容部から洗浄廃液を排出するための排出部と、
を備え、
前記蓋部材は、可撓性を有する部材であって、前記挿通部の周囲に薄肉部を有する、コネクタ洗浄器。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記挿通部の縁部に、前記薄肉部よりも厚みが大きな厚肉部を有する、請求項1に記載のコネクタ洗浄器。
【請求項3】
前記蓋部材の外側を向いた面には、前記挿通部を囲む溝が形成され、
前記溝が形成された部分が前記薄肉部となる、請求項2に記載のコネクタ洗浄器。
【請求項4】
前記薄肉部の厚みは、前記厚肉部の厚みの30%以上70%以下である、請求項2に記載のコネクタ洗浄器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用オスコネクタの洗浄器に関し、より詳しくは、経管栄養法に用いられるオスコネクタの洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用のコネクタは、シリンジ、カテーテル、チューブ等の様々な医療器具の接続に使用されている。経管栄養用途においても、患者の体内に挿入されたカテーテル等と栄養剤の供給源との接続にコネクタが用いられている。なお、コネクタの誤接続は医療事故につながる可能性があるため、誤接続防止のための取り組みの一環として国際的な規格の導入が進められている。経管栄養用途の規格によれば、患者側の投与ラインにオスコネクタを取り付け、栄養剤の供給源側の投与ラインにメスコネクタを取り付ける必要がある。このコネクタは栄養剤の投与終了後に接続が解除されるが、この際、患者側のオスコネクタに栄養剤が残留してしまう場合がある。特許文献1は、残留した栄養剤をオスコネクタから取り除くための手段として、オスコネクタを拭き取り清掃するための筒状の拭き取りチップを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-099738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、オスコネクタを綺麗に洗浄することが難しく、また作業負担も大きい。本発明の目的は、簡単かつ綺麗にオスコネクタを洗浄することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタ洗浄器は、筒状のオスコネクタ本体と、前記オスコネクタ本体の先端に形成されたルアーの周囲を覆うカプラとを含む医療用オスコネクタの洗浄器であって、洗浄液の噴出孔が底部に形成され、前記オスコネクタを収容する有底筒状のコネクタ収容部と、前記オスコネクタの挿通部を有し、前記コネクタ収容部の開口を覆う蓋部材と、前記コネクタ収容部から洗浄廃液を排出するための排出部とを備え、前記蓋部材は、可撓性を有する部材であって、前記挿通部の周囲に薄肉部を有することを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、洗浄器に対するオスコネクタの装着が容易である。オスコネクタは、可撓性を有する蓋部材を弾性変形させて蓋部材の挿通部に挿入されるが、蓋部材をカプラが通過するため挿入時及び抜去時の抵抗が大きい。特に経腸栄養施術においてオスコネクタは患者に近い位置にあるため、挿抜時に抵抗が大きいと医療従事者の手が患者や他の器具に当たるなどの問題が生じる可能性がある。上記構成によれば、挿通部の周囲に薄肉部を形成することで挿入時及び抜去時の抵抗を低減できる。このため、コネクタ収容部にオスコネクタをスムーズに挿抜できると共に、コネクタ収容部内において、オスコネクタを洗浄液で綺麗に洗浄できる。
【0007】
本発明に係るコネクタ洗浄器において、前記蓋部材は、前記挿通部の縁部に、前記薄肉部よりも厚みが大きな厚肉部を有することが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、薄肉部を形成したことによるシール性の低下を十分に抑制できる。なお、蓋部材の挿通部の周縁部分がオスコネクタに密着することで洗浄液の漏出が防止されるが、薄肉部を形成するとシール性の低下が懸念される。上記構成によれば、厚肉部の機能により、挿通部の周縁におけるシール性が十分に確保され、洗浄液が漏出することをより確実に防止できる。
【0009】
本発明に係るコネクタ洗浄器において、前記蓋部材の外側を向いた面には、前記挿通部を囲む溝が形成され、前記溝が形成された部分が薄肉部となることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、蓋部材の内側を向いた面に溝を形成した場合と比べて、オスコネクタを蓋部材の挿通孔に挿入する際の抵抗をより効果的に低減でき、洗浄器に対するオスコネクタの装着がよりスムーズになる。なお、カプラが当接する蓋部材の外側を向いた面がフラットであると、カプラから加わる力が逃げてしまい、意図する蓋部材の変形が生じ難くなり、当該構成に比べて挿入抵抗が高くなることが想定される。
【0011】
本発明に係るコネクタ洗浄器において、前記薄肉部の厚みは、前記厚肉部の厚みの30%以上70%以下であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、蓋部材の良好なシール性を確保しつつ、オスコネクタを蓋部材の挿通部に挿抜する際の抵抗をより効果的に低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコネクタ洗浄器によれば、簡単かつ綺麗にオスコネクタを洗浄することが可能であり、洗浄器に対するオスコネクタの装着が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の一例であるコネクタ洗浄器の斜視図である。
図2】コネクタ洗浄器の斜視図であって、オスコネクタが取り付けられた状態を示す。
図3】コネクタ洗浄器の分解斜視図である。
図4】コネクタ洗浄器の軸方向断面の一部を示す図であって、オスコネクタが取り付けられた状態を示す。
図5】コネクタ洗浄器の軸方向断面の一部を示す図であって、洗浄器上部を拡大して示す。
図6】コネクタ洗浄器に対してオスコネクタを取り付ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るコネクタ洗浄器の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0016】
図1及び図2は、実施形態の一例であるコネクタ洗浄器10(以下、「洗浄器10」とする)の斜視図であって、図2はオスコネクタ100が取り付けられた状態を示す。
【0017】
図1及び図2に示すように、洗浄器10は、オスコネクタ100が取り付けられる第1部材11と、第1部材11に連結された第2部材12とを備える。第1部材11と第2部材12は、着脱自在に構成されている。なお、洗浄器を1つの部材で構成することも可能である。第2部材12には、洗浄液の供給源として洗浄液が充填されたシリンジ(図示せず)が取り付けられ、洗浄液は第2部材12を介して第1部材11に供給される。洗浄液の供給源は、シリンジに限定されず、例えば、洗浄液が充填されたタンクであってもよい。この場合、第2部材12には洗浄液タンクから延びるチューブが接続される。
【0018】
洗浄器10の洗浄対象であるオスコネクタ100は、栄養剤の投与ラインに取り付けられるコネクタである。オスコネクタ100から延びるチューブ120(後述の図4参照)は患者に接続されている。即ち、チューブ120が患者に接続された状態でオスコネクタ100の洗浄が実施される。詳しくは後述するが、オスコネクタ100が洗浄器10に取り付けられると、カプラ102の開口部分がコネクタ収容部20の底部側を向き、洗浄器10の突起25がオスルアー部103の開口に挿入された状態となる(図4参照)。
【0019】
洗浄器10を構成する第1部材11は、オスコネクタ100が取り付けられるコネクタ収容部20(以下、「収容部20」とする)と、オスコネクタ100の挿通部としての挿通孔33を有する蓋部材30と、収容部20から洗浄廃液を排出するための排出部40とを備える。収容部20は、洗浄液の噴出孔24(図4参照)が底部に形成され、オスコネクタ100を収容する有底筒状の部分である。蓋部材30は、可撓性を有する部材であって、収容部20の開口を覆う板状部(天部32)を有し、板状部の中央に挿通孔33が形成されている。なお、挿通部には良好なシール性が求められるため、好適な例として挿通孔33を例示したが、挿通部をスリットとすることも可能である。
【0020】
洗浄器10によれば、収容部20の内部空間S(図4参照)において、オスコネクタ100を洗浄液で綺麗に洗浄できる。オスコネクタ100は、蓋部材30を弾性変形させて挿通孔33に挿入され、内部空間Sに収容される。なお、挿通孔33の周縁部分とオスコネクタ100の間から洗浄液が漏出しないように、蓋部材30はオスコネクタ100に密着することが好ましい。図2に示す例では、挿通孔33の周囲がオスコネクタ100に押圧されて凹み、オスコネクタ100の外周面に密着した状態となっている。
【0021】
第1部材11は、全体として略円筒形状を有し、円筒の軸方向中央部より排出部40が突出した構造を有する。第2部材12も同様に、略円筒形状を有し、第1部材11の蓋部材30と反対側の軸方向端部に接続されている。第1部材11と第2部材12は、各々の円筒の中心軸が一致するように配置される。洗浄液の供給源であるシリンジは、第2部材12の第1部材11と反対側の軸方向端部に取り付けられる。即ち、シリンジと洗浄対象であるオスコネクタ100が、洗浄器10の軸方向両端に離れて位置する状態となる。
【0022】
第2部材12を介して第1部材11に供給される洗浄液は、収容部20の底部に形成された噴出孔24から収容部20の内部空間Sに噴出され、オスコネクタ100に付着した栄養剤を洗い流す。そして、洗浄廃液が排出部40により内部空間Sから排出される。収容部20の上端は開口しているが、該開口部は蓋部材30及びオスコネクタ100により塞がれている。本明細書では、説明の便宜上、洗浄器10の軸方向に沿った方向を「上下方向」とし、第1部材11側を「上」、第2部材12側を「下」という場合がある。
【0023】
第1部材11は、オスコネクタ100を収容する収容部20と、第2部材12が連結される接続部21とを有する。収容部20と接続部21は、第1部材11の上下方向に並んで配置され、互いに底部を共通とする有底筒状に形成されている。即ち、収容部20と接続部21は、互いに反対の方向に向かって開口している。収容部20、接続部21、及び排出部40は、例えば、一体成形され、硬質のプラスチックで構成されている。なお、第1部材11は、1回又は複数回のコネクタ洗浄を行った後に取り替えられるディスポーザブルな部材であってもよい。
【0024】
第1部材11は、上記のように、収容部20の上端開口を覆う蓋部材30を有する。蓋部材30は、収容部20に装着される。蓋部材30は、円筒状に形成された壁部31と、収容部20の上端開口の一部を覆う天部32とを有する。壁部31は、収容部20の壁部22(後述の図3参照)を覆い、壁部22の外周面に密着している。天部32は、壁部31の上端から径方向に内側に延び、壁部31の周方向に沿って円環状に形成される。また、蓋部材30には、オスコネクタ100が挿入される貫通孔である挿通孔33が形成される。挿通孔33は、例えば、平面視真円形状を有し、挿通孔33の周囲に円環状の天部32が形成されている。
【0025】
蓋部材30は、エラストマー、ゴム等の弾性部材により構成され、オスコネクタ100が挿通孔33に挿入されることで弾性変形し、挿通孔33の周縁部分がオスコネクタ100に密着する。蓋部材30の材質は特に限定されないが、一例としては、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、イソプレン系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴムなどが挙げられる。蓋部材30は、弾性部材により一体成形されたものに限定されず、弾性部材を硬質の保持部に接着して構成されてもよい。
【0026】
蓋部材30は、壁部31に形成された開口34を有する。開口34は、壁部31の周方向に延びる長孔であって、壁部31の上部に形成されている。開口34は収容部20に形成された係合突起23が嵌まる孔であって、係合突起23が開口34に嵌ることで蓋部材30が収容部20から抜けないようになっている。開口34は、例えば、壁部31の径方向に並ぶように2つ形成される。係合突起23についても同様に、収容部20の径方向並んで2つ形成される。
【0027】
詳しくは後述するが、蓋部材30は、挿通孔33の周囲に形成された薄肉部35を有する。オスコネクタ100は可撓性を有する蓋部材30を弾性変形させて挿通孔33に挿入されるが、挿通孔33の周囲に薄肉部35を形成することで挿入時の抵抗を低減でき、オスコネクタ100のスムーズな装着が可能になる。また、蓋部材30は、挿通孔33と薄肉部35の間に位置する部分に、薄肉部35よりも厚みが大きな厚肉部である凸部36を有する。凸部36は、オスコネクタ100に対する蓋部材30の密着性を向上させ、これにより良好なシール性が確保される。
【0028】
排出部40は、収容部20の下部から軸方向に対して直交する方向(径方向)に突出している。排出部40は、円管状の管部41を有する。管部41は、収容部20の内部空間Sに連通し、内部空間Sから洗浄廃液を排出するための流路を形成する。排出部40には、例えば、洗浄廃液を貯める廃液タンクに接続されたチューブ(図示せず)が取り付けられる。管部41の先端側の外周面には、当該チューブを固定するための係止部42が形成されている。係止部42は、管部41の外周面に沿って形成された円環状の突起である。
【0029】
オスコネクタ100は、オスルアー部103の開口を塞ぐキャップ110を有していてもよい。キャップ110は、本体部111と、オスコネクタ本体101に取り付けられるリング部112と、本体部111とリング部112をつなぐリード部113とを含む。オスコネクタ100は、キャップ110を有する状態で洗浄器10に取り付けられるが、キャップ110は収容部20に挿入されず、リング部112及びリード部113が蓋部材30の天部32を上から押圧した状態となる。
【0030】
以下、図3及び図4を参照しながら、オスコネクタ100の構成、及び洗浄器10の構成について、さらに詳説する。図3は洗浄器10の分解斜視図、図4は洗浄器10の軸方向断面の一部を示す図であって、オスコネクタ100が取り付けられた状態を示す。
【0031】
図3及び図4に示すように、オスコネクタ100は、筒状のオスコネクタ本体101と、オスコネクタ本体101の先端に形成されたルアー(オスルアー部103)の周囲を覆うカプラ102とを含む。カプラ102は、オスコネクタ本体101の外径よりも大きな内径を有する円筒状の部材であって、基端側部分が縮径した形状を有する。この縮径した部分が、オスコネクタ本体101に連結される。カプラ102の内周面にはネジが形成され、該ネジはメスコネクタとの結合に使用される。カプラ102は、一般的に、ロックナットとも呼ばれる。カプラ102は、例えば、オスコネクタ本体101に対して、軸周りに回転可能に、且つ軸方向に移動しないように連結されている。
【0032】
オスコネクタ本体101は、オスルアー部103と、チューブ接続部104とを有する。オスルアー部103は、メスコネクタに挿入される部分であって、先端に向かって次第に外径が小さくなったテーパー形状を有する。このテーパー形状は、メスコネクタとの間で漏れのない接続を実現するためにISO規格で定められた形状であり、ルアーテーパーと呼ばれる。なお、オスルアー部103の先端はカプラ102の先端から少し突出している。チューブ接続部104は、チューブ120が接続される部分であって、オスルアー部103よりも大きな外径を有する。
【0033】
オスコネクタ本体101の軸方向中央部には、径方向外側に向かって突出した鍔部105が形成されている。鍔部105は、オスコネクタ本体101の外周面に沿って円環状に形成され、オスコネクタ本体101の軸方向に間隔をあけて2つ存在する。2つの鍔部105の間には溝106が形成され、この溝106にキャップ110のリング部112が嵌まることでキャップ110がオスコネクタ本体101に固定される。収容部20にオスコネクタ100が挿入された状態では、例えば、鍔部105が蓋部材30の挿通孔33を塞ぐように配置される。換言すると、蓋部材30はオスコネクタ100の鍔部105やキャップ110のリング部112に密着した状態となる。なお、蓋部材30は鍔部105およびリング部112以外のオスコネクタ100の他の部分に密着してもよい。
【0034】
オスコネクタ100は、例えば、栄養剤の投与ラインに取り付けられ、チューブ120は患者の鼻孔に挿入されている。オスコネクタ100は栄養剤の投与終了後に図示しないメスコネクタとの接続が解除されるが、この際、特にオスコネクタ本体101とカプラ102の隙間に栄養剤が残留しやすい。このため、洗浄器10は、オスコネクタ本体101とカプラ102の隙間に洗浄液を供給可能に構成されている。
【0035】
洗浄器10は、上記の通り、オスコネクタ100が取り付けられる第1部材11と、洗浄液の供給源であるシリンジ等が接続される第2部材12とで構成される。オスコネクタ100は、オスルアー部103を収容部20の底部側に向けた状態で第1部材11の収容部20に取り付けられ、少なくともカプラ102の全体が収容部20の内部空間Sに収容される。
【0036】
収容部20は、有底円筒形状を有する。収容部20は筒状の壁部22を有し、壁部22の下部から排出部40が延出している。また、壁部22の上部には、蓋部材30の開口34に嵌る係合突起23が形成されている。本実施形態では、壁部22の上部が下部よりも拡径している。即ち、壁部22の上部が大径部、壁部22の下部が小径部となっている。また、壁部22の大径部は、収容部20の底部に向かって次第に内径が小さくなるように内周面がテーパー状に形成されていてもよい。この場合、オスコネクタ100を収容部20の底部側に案内し易くなる。
【0037】
壁部22の小径部の内径は、オスコネクタ100のカプラ102の外径より若干大きくなっている。このため、壁部22の内周面とカプラ102の外周面との間には洗浄液が流れる隙間が存在している。また、収容部20の底部には、径方向中央部に略円柱状の突起25が形成され、突起25の周囲が一段低くなって溝状に形成されている。突起25の周囲には、例えば、排出部40に連通する環状の溝が形成される。収容部20の底部の周縁部は、突起25の周囲よりも一段高く形成され、当該周縁部にカプラ102が当接する。
【0038】
収容部20の底部には、洗浄液の噴出孔24が形成される。噴出孔24は、突起25を囲む環状の溝部分に複数形成され、収容部20の底部を軸方向に貫通して接続部21の筒内に連通する。本実施形態では、4つの噴出孔24が等間隔で形成されている。オスコネクタ100が収容部20に取り付けられた状態において、突起25がオスルアー部103の筒内に挿入され、カプラ102とオスルアー部103の隙間が噴出孔24に対向配置される。これにより、噴出孔24から噴出される洗浄液は、オスルアー部103の内部に浸入することなく、カプラ102とオスルアー部103の隙間に導入される。
【0039】
カプラ102とオスルアー部103の隙間に噴出された洗浄液は、該隙間に残留する栄養剤を洗い流し、オスコネクタ100の先端側から流出して排出部40に流れ込む。なお、カプラ102とオスルアー部103の隙間に噴出された洗浄液の一部は、カプラ102の基端側の隙間から内部空間Sに流出し、カプラ102の外側を通って排出部40に流れる。このように洗浄廃液が漏出することなく、カプラ102の全体を洗浄することができ、衛生的な状態を維持することができる。
【0040】
蓋部材30は、上記のように、収容部20の壁部22に固定され、挿通孔33に挿入されたオスコネクタ100と共に、収容部20の上端開口を塞いでいる。蓋部材30の天部32はキャップ110に押されて撓み、挿通孔33の周縁部が鍔部105に密着している。蓋部材30は、壁部31よりも内側に形成された内壁38を有する。内壁38は、壁部31と同様に円筒状に形成され、壁部22の内周面を覆っている。即ち、壁部31と内壁38により、壁部22が挟持されている。
【0041】
第2部材12は、筒状の本体13と、本体13に連結されたカプラ14とを含む。本体13は、シリンジを接続可能なオスルアー部15を有する。カプラ14は、オスルアー部15に外挿され、例えば、シリンジ等の結合に使用される。本体13のオスルアー部15と反対側の軸方向端部(上端部)には溝19が形成され、該溝にOリング18が装着される。そして、本体13の上端部が基部20の接続部21内に挿入される。Oリング18は、接続部21の内周面に密着して洗浄液の漏出を防止する。これにより、オスルアー部15から導入された洗浄液は、本体13及び接続部21の筒内を通って噴出孔24から内部空間Sに供給される。
【0042】
本体13の外周面には、係合突起16が形成されている。本実施形態では、係合突起16が接続部21の開口26に嵌まることで、第1部材11と第2部材12の連結状態が維持される。また、本体13の軸方向中央部には、板状の翼部17が形成されている。第2部材12は、回転操作により第1部材11に対して着脱されるが、翼部17は該回転操作に利用され、第2部材12の着脱を容易にする。なお、第2部材12の構造は、特に限定されず、例えば、第1部材11と第2部材12は螺号されてもよいし、カプラ14や翼部17を有していなくてもよい。
【0043】
以下、図5及び図6を参照しながら、蓋部材30の構成について、さらに詳説する。図5及び図6は、洗浄器10の軸方向断面の一部を示す図であって、洗浄器上部を拡大して示す。
【0044】
図5及び図6に示すように、蓋部材30には、オスコネクタ100を挿入可能な挿通孔33が形成されている。挿通孔33の直径は、オスルアー部103の外径より大きく、カプラ102及び鍔部105の外径より小さいことが好ましい。この場合、オスコネクタ100を挿通孔33に挿入する際には、カプラ102が蓋部材30の天部32に当接し、カプラ102に押圧されて天部32が弾性変形する。このため、オスコネクタ100を挿通孔33に挿入する際には、天部32が元の形状に戻ろうとする抵抗力よりも強い力でスコネクタ100を挿入する必要がある。
【0045】
蓋部材30は、エラストマー、ゴム等の可撓性を有する弾性部材で構成され、挿通孔33の周囲のカプラ102が当接する部分に薄肉部35を有する。薄肉部35は、天部32の他の部分よりも厚みが薄い部分であって、オスコネクタ100を挿通孔33に挿入する際の抵抗を低減する。また、オスコネクタ100を挿通孔33から引き抜く際の抵抗も低減され、挿通孔33の周囲に薄肉部35を形成することで、洗浄器10に対するオスコネクタ100の着脱が容易になる。
【0046】
蓋部材30の外側を向いた外面には、挿通孔33を囲む環状の溝37が形成されている。本実施形態では、この環状の溝37によって環状の薄肉部35が形成される。薄肉部35は、例えば、蓋部材30の内面に形成された溝により、或いは断続的な非環状の溝ないし凹部により形成されてもよいが、外面の環状の溝37により形成されることが好ましい。天部32の外面に環状の溝37が形成されていれば、カプラ102が溝37に嵌まるようにオスコネクタ100を安定に配置でき、オスコネクタ100の装着がより簡単になる。また、カプラ102から薄肉部35に対して力が伝わり易くなり、オスコネクタ100の挿入抵抗の低減効果がさらに低減される。
【0047】
溝37は、天面32の外面及び内面の両面に形成されてもよいが、好ましくは外面のみに形成される。換言すると、天面32の内面はフラットであることが好ましい。この場合、天面32の耐圧性が向上し、シール性がさらに良好になる。天面32の内面がフラットであると、内面に溝が形成される場合と比べて、天面32が水圧を受けても水圧をうまく分散させることができ、天面32の変形が抑制される。他方、天面32の内面に溝が存在すると、水圧により溝を起点として天面32が上方に変形し、シール性が損なわれることが想定される。
【0048】
薄肉部35(溝37)は、挿通孔33の周囲において、オスコネクタ100を挿抜する際に弾性変形する部分に形成されていればよく、この場合、オスコネクタ100の挿抜時の抵抗を低減できる。溝37は、少なくとも、カプラ102の先端が当接する部分を囲むように形成されている。カプラ102が当接する部分よりも蓋部材30の径方向外側に溝37が形成されると挿入抵抗が効率的に下がるため、好ましい。より好ましくは、カプラ102の先端が当接する部分から蓋部材30の径方向外側に向かって所定の幅で溝37が形成され、この場合、溝37の深さより溝37の幅の方が長い幅広状になり、オスコネクタ100の挿抜時の抵抗低減効果がより顕著になる。
【0049】
薄肉部35の厚みは、0.3mm以上0.7mm以下が好ましく、0.4mm以上0.6mm以下がより好ましい。薄肉部35及び凸部36が形成されていない部分の天部32の厚みは、例えば、0.8mm以上1.2mm以下である。薄肉部35の厚みは、薄肉部35及び凸部36が形成されていない部分の厚みの20%以上80%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。この場合、蓋部材30の耐久性及びシール性を確保しつつ、オスコネクタ100の挿入時の抵抗をより効果的に低減できる。なお、溝37の深さは、0.3mm以上0.7mm以下が好ましく、0.4mm以上0.6mm以下がより好ましい。
【0050】
溝37は全長にわたって一定の深さで形成され、薄肉部35の厚みは全長にわたって一定であることが好ましい。また、溝37(薄肉部35)は、挿通孔33の周縁から一定の間隔をあけて、カプラ102の先端が嵌まる一定の幅で形成されることが好ましい。この場合、オスコネクタ100をより安定に挿入できる。溝37は、カプラ102の先端が嵌まる幅で形成されることが好ましく、溝37の外周縁がカプラ102の外周縁よりも蓋部材30の径方向外側に位置するように形成されることがより好ましい。
【0051】
溝37の幅は、例えば、1.0mm以上3.0mm以下である。溝37は、カプラ102の先端位置に合わせて形成され、溝37の幅はカプラ102の先端の幅よりも幅広であることが好ましい。この場合、溝37にカプラ102の先端が容易に嵌り、オスコネクタ100の位置決めが容易になる。溝底面にカプラ102の先端が当接する構成とすれば、カプラ102からの力が天面32の変形箇所である薄肉部35にダイレクトに伝わるため、挿入抵抗の低減効果がより顕著になる。例えば、溝37の幅が1mm以上であるとカプラ102の先端を溝内に挿入でき、3mm以下であると挿通孔33の縁部に厚肉部を確保することが容易になりシール性が向上する。
【0052】
蓋部材30は、挿通孔33の縁部に、薄肉部35よりも厚みが大きな厚肉部である凸部36を有する。本実施形態では、天部32の外面に溝37が形成されているため、凸部36は蓋部材30の外側に向かって突出するように形成されている。凸部36は、挿通孔33の周縁において環状に形成されることが好ましい。即ち、オスコネクタ100の鍔部105に密着する挿通孔33の周縁部は、その全周にわたって薄肉部35よりも厚みが大きくなっている。この場合、挿通孔33の周縁におけるシール性が十分に確保され、洗浄液が漏出することをより確実に防止できる。
【0053】
凸部36の厚みは、0.8mm以上1.2mm以下が好ましく、0.9mm以上1.1mm以下がより好ましい。凸部36の厚みは、薄肉部35及び凸部36が形成されていない部分の厚みより大きくてもよいが、本実施形態では同じ厚みとなっている。凸部36は、全長にわたって一定の厚み、一定の幅で形成されることが好ましい。この場合、良好なシール性を確保しつつ、オスコネクタ100を安定に挿入できる。凸部36の幅は、例えば、0.6mm以上0.9mm以下である。凸部36は、挿通孔33側の角が面取りされて丸みを帯び、挿通孔33の方向に凸となるように湾曲していてもよい。この場合、オスコネクタ100の挿入により撓んだ天部32が元の形状に戻る際に、凸部36がコネクタに引っ掛かることを抑制できる。即ち、天部32の形状の復元が容易になる。
【0054】
薄肉部35の厚みは、凸部36の厚みの30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。この場合、良好なシール性を確保しつつ、オスコネクタ100の挿入時の抵抗をより効果的に低減できる。即ち、良好なシール性とコネクタの装着性をより高度に両立できる。
【0055】
以上のように、上記構成を備えた洗浄器10によれば、蓋部材30の挿通孔33の周囲に薄肉部35を形成することにより、特にオスコネクタ100の取り付ける際、即ちオスコネクタ100を挿通孔33に挿入するときの抵抗を十分に低減できる。このため、収容部20にオスコネクタ100をスムーズに装着できる。オスコネクタ100を洗浄器10に強く押し込まなくてもコネクタを取り付けることができ、またオスコネクタ100を強く引っ張らなくてもコネクタを取り外すことができるので、着脱の際の力が患者に伝わって不快感を与えたり、反動でカテーテルが抜けたりすることも効果的に抑制できる。
【0056】
さらに、挿通孔33の周縁部に薄肉部35よりも厚みが大きな凸部36を形成することにより、オスコネクタ100に対する蓋部材30の密着性が向上し、良好なシール性が確保される。
【0057】
なお、上記実施形態は本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、凸部36が天部32の他の部分と同じ厚みで形成されているが、凸部36の厚みは、薄肉部35の厚みより大きく、他の部分の厚みより小さくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 コネクタ洗浄器(洗浄器)、11 第1部材、12 第2部材、13 本体、14 カプラ、15 オスルアー部、16,23 係合突起、17 翼部、18 Oリング、19,37,106 溝、20 コネクタ収容部(収容部)、21 接続部、21,31 壁部、24 噴出孔、25 突起、26,34 開口、30 蓋部材、32 天部、33 挿通孔、35 薄肉部、36 凸部、38 内壁、40 排出部、41 管部、42 係止部、100 オスコネクタ、101 オスコネクタ本体、102 カプラ、103 オスルアー部、104 チューブ接続部、105 鍔部、110 キャップ、111 本体部、112 リング部、113 リード部、120 チューブ、S 内部空間
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図6