(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122087
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸の吸収を促進する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20240902BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240902BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240902BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20240902BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240902BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240902BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240902BHJP
A23K 20/163 20160101ALI20240902BHJP
【FI】
A23L33/12
A23L33/175
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K31/7016
A61K31/198
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61P3/00
A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029422
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大西 素子
(72)【発明者】
【氏名】末廣 大樹
(72)【発明者】
【氏名】深見 健
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B117
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AA08
2B150AB03
2B150AB10
2B150DA43
2B150DC15
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
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4B018ME14
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4C206AA02
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4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZC01
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、遊離アミノ酸を効率的に体内に吸収できる遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸の吸収を促進する方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸及びその塩類からなる群から選択される少なくとも1つ以上のマルトビオン酸類を含む、遊離アミノ酸吸収促進剤を提供する。前記マルトビオン酸塩類は、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸マグネシウム、マルトビオン酸ナトリウム、マルトビオン酸カリウム、マルトビオン酸銅、マルトビオン酸鉄や、マルトビオン酸亜鉛であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸及びその塩類からなる群から選択される少なくとも1つ以上のマルトビオン酸類を含む遊離アミノ酸吸収促進剤。
【請求項2】
前記塩類が、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸マグネシウム、マルトビオン酸ナトリウム、マルトビオン酸カリウム、マルトビオン酸銅、マルトビオン酸鉄及びマルトビオン酸亜鉛から選択される少なくとも1つ以上である、請求項1記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【請求項3】
飲食品、飼料、餌料、ペットフード、医薬品、医薬部外品、又は動物用医薬品である請求項1記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【請求項4】
遊離アミノ酸と同時に又は連続して経口投与して用いられる、請求項1記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【請求項5】
遊離アミノ酸に対し、請求項1~4のいずれか1項記載の遊離アミノ酸吸収促進剤を配合することを含む、遊離アミノ酸の吸収を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸の吸収を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸は、エネルギー産生栄養素のひとつであるタンパク質を構成する有機化合物であり、人体を構成する要素としては20%を占め、体内に広く分布している。アミノ酸は、ホルモン、酵素、抗体や、血液等を作り出す他、骨格筋細胞において筋タンパク質合成を調節する役割がある。
【0003】
ヒトの身体では、常時、筋タンパク質の合成と分解が生じているが、分解量が合成量を上回ると骨格筋量は減少する。特に高齢者においては、食事の摂取量の低下により、タンパク質やエネルギーの低栄養状態を招き、代謝性ストレスに対する抵抗力や免疫力の低下により、創傷や疾患の治癒の遅延、合併症の併発等を招く。低栄養は、高齢者のみでなく、過度のダイエットを行う若年者や、激しい運動負荷を日常的に行うアスリート等においても見られ、低栄養による骨格筋量や骨密度の低下等が問題となっている。
【0004】
これらの観点から、日々の食事において、筋タンパク質の構成材料であるアミノ酸を含有する食品の摂取が推奨され、筋タンパク質合成促進や分解抑制に寄与する分岐鎖アミノ酸の摂取、生体内における筋タンパク質合成改善剤や、アミノ酸吸収促進組成物等が提案されている。(特許文献1~3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-171017号公報
【特許文献2】特開2019-058140号公報
【特許文献3】特表2021-501746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アミノ酸を多く摂取した場合、アミノ酸の主要吸収部位である小腸へアミノ酸が局時的に流入することでアミノ酸輸送担体によるアミノ酸の取込みが追い付かず、小腸での腸管吸収を免れたアミノ酸が大腸に流入し得る。アミノ酸が大腸に流入した場合、腸管内pHの上昇や、インドール、スカトール、フェノール化合物をはじめとした腸内細菌による腐敗物質の産生等、腸内環境の悪化が指摘されている。このような実情から、摂取したアミノ酸をより効率的に体内に吸収できることが望ましい。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、遊離アミノ酸を効率的に体内に吸収できる遊離アミノ酸吸収促進剤および遊離アミノ酸の吸収を促進する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、マルトビオン酸やマルトビオン酸塩が、体内への遊離アミノ酸の吸収を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下を提供する。
【0009】
(1) 4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸及びその塩類からなる群から選択される少なくとも1つ以上のマルトビオン酸類を含む遊離アミノ酸吸収促進剤。
【0010】
(2) 前記塩類が、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸マグネシウム、マルトビオン酸ナトリウム、マルトビオン酸カリウム、マルトビオン酸銅、マルトビオン酸鉄及びマルトビオン酸亜鉛から選択される少なくとも1つ以上である、(1)記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【0011】
(3) 飲食品、飼料、餌料、ペットフード、医薬品、医薬部外品、又は動物用医薬品である(1)又は(2)記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【0012】
(4) 遊離アミノ酸と同時に又は連続して経口投与して用いられる、(1)~(3)のいずれか1つに記載の遊離アミノ酸吸収促進剤。
【0013】
(5) 遊離アミノ酸に対し、(1)~(4)のいずれか1つに記載の遊離アミノ酸吸収促進剤を配合することを含む、遊離アミノ酸の吸収を促進する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遊離アミノ酸を効率的に体内に吸収できる遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸の吸収を促進する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<遊離アミノ酸吸収促進剤>
本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸及びその塩類からなる群から選択される少なくとも1つ以上のマルトビオン酸類を含む。
【0016】
本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、マルトビオン酸類を含むため、遊離アミノ酸の吸収を促進し、後述する実施例に示されるように、遊離アミノ酸の体内への吸収量を増加することができる。このため、遊離アミノ酸を効率的に体内に吸収できる。なお、本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、遊離アミノ酸の体内保留を持続し得る。例えば、遊離アミノ酸吸収促進剤を摂取してから120分間程度経過しても、高濃度で遊離アミノ酸を体内に維持し得る。
したがって、本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤を摂取することにより、例えば、筋肉量の減少、骨量低下、免疫力低下、肌荒れ等に対して、予防や改善をすることができる。
【0017】
4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸やその塩類による、遊離アミノ酸の吸収促進メカニズムは、次の機構であると考えられる。
【0018】
摂取した遊離アミノ酸は、腸管において、主に基底膜側に存在するアミノ酸輸送担体による能動輸送によって血液中に輸送され、各臓器や骨格筋へ運ばれることが知られている。能動輸送で使用されるアミノ酸輸送担体数には限りがあるため、一般に能動輸送される遊離アミノ酸が局時的に腸管内に流入するとアミノ酸輸送担体が不足し、腸管吸収量や腸管速度が高止まりすることが知られている。
【0019】
4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸やその塩類は、腸管上皮細胞を刺激し、アミノ酸輸送担体の発現を亢進させることで、能動輸送による遊離アミノ酸の吸収を促進したと推測される。
【0020】
本明細書において、「遊離アミノ酸」とは、タンパク質や、ポリペプチド等のペプチドの構成成分としてのアミノ酸ではないこと意味し、具体的には、アミノ酸そのもの(すなわち、単独で遊離の状態で存在しているアミノ酸)や、当該アミノ酸の代謝産物を意味する。
遊離アミノ酸としてのアミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、セリン、アスパラギン、グリシン、プロリン、アラニン、アルギニン等が挙げられる。また、遊離アミノ酸としてのアミノ酸の代謝産物としては、前述のアミノ酸の代謝産物、主にクエン酸回路であるピルビン酸、2-オキソグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、オキサロ酢酸、アセチルCoA、アセト酢酸等に分解転換された物質が挙げられ、例えばオルチニチン、α-ケトイソカプロン酸、α-ケトイソ吉草酸、γ-アミノ酪酸、タウリン、テアニン、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸等が挙げられる。
遊離アミノ酸は、1種でも、2種以上でもよい。
【0021】
遊離アミノ酸吸収促進剤が含むマルトビオン酸類は、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルコン酸の一般式で表されるマルトビオン酸や、その塩類である。遊離アミノ酸吸収促進剤は、マルトビオン酸及びその塩類の両方を含んでいてもよい。
塩の形態としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銅塩、鉄塩、亜鉛塩等が挙げられる。
遊離アミノ酸吸収促進剤が含むマルトビオン酸類の形態に限定はなく、液体状でも、粉末状でもよい。
【0022】
マルトビオン酸類の含有量は、遊離アミノ酸吸収促進剤の種類や形態等に応じて適宜設定できるが、例えば、遊離アミノ酸吸収促進剤に対して、0.0001質量%~100質量%、好ましくは0.001質量%~50質量%、より好ましくは0.01質量%~30質量%、さらに好ましくは0.01質量%~10質量%である。マルトビオン酸類は少量でも遊離アミノ酸の吸収促進効果を発揮するため、マルトビオン酸類の含有量は、遊離アミノ酸吸収促進剤に対して1.0質量%以下でもよく、0.50質量%以下でもよい。
【0023】
本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、マルトビオン酸類のみを含むものでも、マルトビオン酸類とその他の成分とを含むものでもよい。
その他の成分としては、マルトトリオン酸やマルトテトラオン酸などの重合度3以上のマルトオリゴ糖酸が挙げられる。
また、その他の成分としては、例えば、機能性成分、栄養補助成分、糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、製造用剤等も挙げられる。また、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、水等の希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、添加物、調味料等の、従来飲食品、飼料、餌料、ペットフード、医薬品、医薬部外品や、動物用医薬品に含有される成分を、その他の成分として用いることができる。その他の成分の含有量は、本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤の形態等に応じて適宜選択することができる。なお、遊離アミノ酸吸収促進剤がマルトビオン酸類とは異なるその他の遊離アミノ酸吸収促進成分をさらに含む場合は、マルトビオン酸類の含有量を減らしてもよい。
【0024】
遊離アミノ酸吸収促進剤の形態は特に限定されないが、例えば、経口用遊離アミノ酸吸収促進剤とすることができる。経口用遊離アミノ酸吸収促進剤の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。例えば、経口摂取に適した形態、具体的には液状、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各形態が挙げられる。例えば固形状の遊離アミノ酸吸収促進剤の場合は、液体状のマルトビオン酸類を賦形剤とともに粉末化し固形状にすることができる。
【0025】
遊離アミノ酸吸収促進剤の使用方法は特に限定されないが、例えば、液状の遊離アミノ酸吸収促進剤の場合、そのまま、又は水等で希釈する等して、飲むことにより経口摂取することができる。
【0026】
遊離アミノ酸吸収促進剤は、例えば、遊離アミノ酸と同時に又は連続して、経口投与して用いられる。
経口投与の対象は、例えば、ヒト、牛、豚、馬等の哺乳類、鶏等の鳥類、魚等の魚類である。
遊離アミノ酸吸収促進剤を遊離アミノ酸と同時に経口投与する場合は、遊離アミノ酸吸収促進剤に遊離アミノ酸を含有させてもよく、また、遊離アミノ酸吸収促進剤と、アミノ酸吸収促進剤とは別剤としての遊離アミノ酸とを、同時に経口投与してもよい。
また、遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸を連続して経口投与する場合は、遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸のいずれを先に経口投与してもよい。また、遊離アミノ酸吸収促進剤及び遊離アミノ酸のいずれか一方を経口投与し、所定の期間経過後に、他方を経口投与してもよい。
【0027】
遊離アミノ酸吸収促進剤の摂取量は特に限定されず、摂取者(例えば、ヒト等の哺乳動物)の状態(例えば、骨格筋量の程度)や摂取態様に応じて適宜設定され得るが、遊離アミノ酸吸収促進剤の成人1日の摂取量は、例えば、マルトビオン酸の質量換算で、摂取者の体重を基準として、5~400mg/kgであり、好ましくは10~200mg/kgであり、より好ましく20~100mg/kgである。
【0028】
また、遊離アミノ酸の総量に対するマルトビオン酸類の総量の質量比(マルトビオン酸類の質量の合計/遊離アミノ酸の質量の合計)は、例えば0.06~24.00であり、好ましくは0.12~12.00、より好ましくは0.16~6.00、さらに好ましくは、0.20~1.00である。
【0029】
本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、飲食品(健康志向の飲食品を含む、例えば、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)であってもよく、飼料、餌料やペットフードであってもよく、医薬用組成物(医薬品、医薬部外品、動物用医薬品等)であってもよい。すなわち、本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、飲食品、飼料、餌料、ペットフード、医薬品、医薬部外品、動物用医薬品等の経口組成物として利用することができる。
【0030】
<遊離アミノ酸の吸収を促進する方法>
本発明の遊離アミノ酸の吸収を促進する方法は、遊離アミノ酸に対し、上述の遊離アミノ酸吸収剤を配合することを含む。上述の遊離アミノ酸吸収促進剤はマルトビオン酸類を含むため、遊離アミノ酸吸収剤を遊離アミノ酸に配合(添加)することにより、遊離アミノ酸摂取時の体内への遊離アミノ酸の吸収を促進することができる。
遊離アミノ酸吸収剤の配合量は、特に限定されないが、遊離アミノ酸の総量に対するマルトビオン酸類の総量の質量比(マルトビオン酸類の質量の合計/遊離アミノ酸の質量の合計)が、例えば0.06~24.00であり、好ましくは0.12~12.00、より好ましくは0.16~6.00、さらに好ましくは、0.20~1.00になるように、配合する。
【実施例0031】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
<実施例1及び比較例1>
(1)マルトビオン酸の遊離アミノ酸吸収促進作用の検証
遊離アミノ酸摂取後の血中遊離アミノ酸濃度を経時的に測定することにより、マルトビオン酸の遊離アミノ酸吸収促進作用を検証した。
【0033】
(2)被験試料の調製
ミネラルウォーター(サントリーフーズ株式会社製)、アミノ酸混合粉末5g(バリン:330 mg、ロイシン:520mg、イソロイシン:400mg、スレオニン:200mg、メチオニン:48mg、フェニルアラニン:210mg、ヒスチジン:110mg、リジン:350mg、トリプトファン:70mg、アスパラギン酸:400mg、セリン:200mg、アスパラギン: 50mg、グルタミン酸:700mg、グルタミン: 30mg、グリシン:160mg、プロリン:210mg、アラニン:165mg、システイン:102mg、チロシン:170mg、アルギニン:590mg、ヤクルトヘルスフーズ株式会社)、マルトースシロップ(サンエイ糖化株式会社製)、マルトビオン酸含有水飴(サンエイ糖化株式会社製、製品名:サワーオリゴ、マルトビオン酸40質量%、重合度3以上のマルトオリゴ糖酸30質量%を含む)を用い、表1に示す処方(配合量(g))で混合して、比較例1(プラセボ試料)及び実施例1(被験試料)の試験食品を調製した。
【0034】
【0035】
(3)マルトビオン酸摂取試験
健常成人男女37名を被験者とし、試験前日の22時以降から検査終了までは水及び試験当日に交付した試験食品以外の飲食を禁止した。試験当日は採血を行ってから、摂取する試験食品がプラセボ試料と被験試料のいずれかであるのかを被験者に知らせることなく、摂取させた。摂取後30分後、60分後、120分後及び180分後に採血を行った。なお、試験はクロスオーバー単回投与の盲検試験とし、先にプラセボ試料を摂取させた被験者には被験試料を、先に被験試料を摂取させた被験者にはプラセボ試料を摂取させ、同様に試験した。
【0036】
(4)評価項目及び評価方法
得られた血液は3000rpm、5分の遠心分離を行い、上清を回収して血清を採取した。得られた血清中の血清BCAA量(血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン量の総和)、血清総アミノ酸量(血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、アラニン、システイン、チロシン、アルギニンの総和)について、オルトフタルアルデヒドを誘導化試薬としたポストカラム誘導体化法により測定した。
【0037】
(5)統計処理法
結果はすべて平均値±標準偏差で表し、2群間の有意差検定はstudent’s t-testにより、危険率5%にて有意差を判定した。表において、有意差有りの場合を、*印で記す。
【0038】
(6)血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の摂取前からの変化量の推移
試験食品(被験試料又はプラセボ試料)摂取後の血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の摂取前からの変化量を、表2に示す。表2に示すように、プラセボ試料(比較例1)と比べ、被験試料(実施例1)では試験食品摂取前から摂取30分後、摂取前から摂取60分後及び摂取前から摂取120分後の血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の変化量において、有意な増加が確認された。
【0039】
【0040】
(7)血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の時間曲線下面積
さらに、被験者ごとに、血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の時間曲線下面積(AUC)を求めた。具体的には、上述の(6)血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の推移で得られた各時間の測定値から、試験食品摂取前の測定値を引いた値を求めて血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の変化量とし、この変化量を、試験食品摂取からの経過時間に対してプロットし、得られた折れ線下の面積値をAUCとした。得られたAUCの値を表3に示す。表3に示すように、被験試料(実施例1)は、プラセボ試料(比較例1)と比較し、血清BCAA濃度のAUCは約19%増加、血清総アミノ酸濃度のAUCは約26%増加し、ともに有意な上昇が確認された。
【0041】
【0042】
<実施例2及び比較例2>
(1)マルトビオン酸塩類の遊離アミノ酸吸収促進作用の検証
実施例1と同様の試験条件にて、マルトビオン酸カルシウムの遊離アミノ酸吸収促進作用を検証した。
【0043】
(2)被験試料の調製
ミネラルウォーター(サントリーフーズ株式会社製)、アミノ酸混合粉末5g(バリン:330 mg、ロイシン:520mg、イソロイシン:400mg、スレオニン:200mg、メチオニン:48mg、フェニルアラニン:210mg、ヒスチジン:110mg、リジン:350mg、トリプトファン:70mg、アスパラギン酸:400mg、セリン:200mg、アスパラギン: 50mg、グルタミン酸:700mg、グルタミン: 30mg、グリシン:160mg、プロリン:210mg、アラニン:165mg、システイン:102mg、チロシン:170mg、アルギニン:590mg、ヤクルトヘルスフーズ株式会社)、マルトース(株式会社林原製)、炭酸カルシウム(三共製粉株式会社製)、マルトビオン酸カルシウム含有粉飴(サンエイ糖化株式会社製、製品名:サワーオリゴC、マルトビオン酸カルシウム63質量%、重合度3以上のマルトオリゴ糖酸カルシウム30質量%を含む)を用い、表4に示す処方(配合量(g))で混合して、比較例2(プラセボ試料)及び実施例2(被験試料)の試験食品を調製した。
【0044】
【0045】
(3)マルトビオン酸カルシウム摂取試験
健常成人男女37名を被験者とし、試験前日の22時以降から検査終了までは水及び試験当日に交付した試験食品以外の飲食を禁止した。試験当日は採血を行ってから、摂取する試験食品がプラセボ試料と被験試料のいずれかであるのかを被験者に知らせることなく、摂取させた。摂取後30分後、60分後、120分後及び180分後に採血を行った。なお、試験はクロスオーバー単回投与の盲検試験とし、先にプラセボ試料を摂取させた被験者には被験試料を、先に被験試料を摂取させた被験者にはプラセボ試料を摂取させ、同様に試験した。
【0046】
(4)評価項目及び評価方法
得られた血液は3000rpm、5分の遠心分離を行い、上清を回収して血清を採取した。得られた血清中の血清BCAA量(血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン量の総和)、血清総アミノ酸量(血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、アラニン、システイン、チロシン、アルギニンの総和)および、各血清アミノ酸量(血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、アラニン、システイン、チロシン、アルギニンの各量)について、オルトフタルアルデヒドを誘導化試薬としたポストカラム誘導体化法により測定した。
【0047】
(5)統計処理法
結果はすべて平均値±標準偏差で表し、2群間の有意差検定はstudent’s t-testにより、危険率5%にて有意差を判定した。表において、有意差有りの場合を、*印で記す。
【0048】
(6)血清BCAA濃度、血清総アミノ酸濃度および血清各アミノ酸濃度の、摂取前からの変化量の推移
試験食品(被験試料又はプラセボ試料)摂取後の血清BCAA濃度、血清総アミノ酸濃度および各アミノ酸濃度の摂取前からの変化量を、表5~12に示す。表5~12に示すように、プラセボ試料(比較例2)と比べ、被験試料(実施例2)では試験食品摂取前から摂取30分後、摂取前から摂取60分後及び摂取前から摂取120分後の血清BCAA濃度および血清総アミノ酸濃度の変化量において、有意な増加が確認された。さらに、プラセボ試料(比較例2)と比べ、被験試料(実施例2)では、試験食品摂取前から摂取30分後の変化量では、血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、セリン、アスパラギン、グリシン、プロリン、アラニン、アルギニンの各濃度において、試験食品摂取前から摂取60分後の変化量では、血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、リジン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、アラニン、アルギニンの各濃度において、また、試験食品摂取前から摂取120分後の変化量では、血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、リジン、セリンの各濃度において、有意な上昇が確認された。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
(7)血清BCAA濃度、血清総アミノ酸濃度および血清各種アミノ酸濃度の、時間曲線下面積
さらに、被験者ごとに、血清BCAA濃度、血清総アミノ酸濃度および血清各アミノ酸の時間曲線下面積(AUC)を求めた。具体的には、上述の(6)血清BCAA濃度、血清総アミノ酸濃度および血清各アミノ酸濃度の、摂取前からの変化量の推移で得られた各時間の測定値から、試験食品摂取前の測定値を引いた値を求めて変化量とし、この変化量を、試験食品摂取からの経過時間に対してプロットし、得られた折れ線下の面積値をAUCとした。得られたAUCの値を表13に示す。表13に示すように、被験試料(実施例2)は、プラセボ試料(比較例2)と比較して、血清BCAA濃度のAUCは約19%増加、血清総アミノ酸濃度のAUCは約23%増加し、ともに有意な上昇が確認された。さらに、血清中の遊離体である、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、セリン、アスパラギン、グリシン、プロリン、アラニン、アルギニンの各濃度のAUCは、有意な上昇が確認された。
【0058】
本発明の遊離アミノ酸吸収促進剤は、遊離アミノ酸の吸収を促進し、遊離アミノ酸の体内への吸収量を増加することができる。このため、例えば、骨格筋量に不安を抱える者の健康維持や肌荒れ等の美容維持に極めて有用である。