(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122089
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】水素生成装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
C01B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029424
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】西崎 柾峻
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲有
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 理
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB03
4G140EB12
(57)【要約】
【課題】製造容易性及びCO低減触媒の温度検出の精度を向上させることに適した水素生成装置を提供する。
【解決手段】本開示の水素生成装置100は、加熱器120と、改質触媒122cを含む改質器122と、CO低減触媒123cを含むCO低減器123と、CO低減器123の内部の温度を検出するように上外筒133に取り付けられた温度センサ150と、CO低減触媒123cを下方から支持するように内筒132と上外筒133との間の空間に温度センサ150から離間して配置された棚板151と、を備える。下外筒134は、上外筒133の下端部133eに接合されるとともに上外筒133の内側に位置する上端部135を有する。棚板151が下外筒134の上端部135によって支持されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器と、
前記加熱器を周方向に包囲する有底筒状の隔壁と、
前記隔壁を周方向に包囲する内筒と、
前記内筒の上部を周方向に包囲する上外筒と、
前記上外筒の下端部に接合されるとともに前記上外筒の内側に位置する上端部を有し、前記内筒の下部を周方向に包囲する有底の下外筒と、
前記隔壁と前記内筒との間の空間に充填された改質触媒を含む改質器と、
前記内筒と前記上外筒との間の空間に充填されたCO低減触媒を含むCO低減器と、
前記CO低減器の内部の温度を検出するように前記上外筒に取り付けられた温度センサと、
前記CO低減触媒を下方から支持するように前記内筒と前記上外筒との間の前記空間に前記温度センサから離間して配置され、前記下外筒の前記上端部によって支持された棚板と、
を備えた、水素生成装置。
【請求項2】
前記棚板は、前記内筒、前記上外筒、及び前記下外筒のいずれにも固定されていない、
請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
上端に向かうに従って前記下外筒の一部が連続的又は段階的に縮径することによって前記下外筒の前記上端部が形成されている、
請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記下外筒の前記上端部の外周面が前記上外筒の前記下端部の内周面に接するように前記上外筒と前記下外筒とが固定されている、
請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記上外筒と前記下外筒とが溶接されている、
請求項4に記載の水素生成装置。
【請求項6】
前記温度センサは、前記CO低減触媒が最も高い温度となる位置に配置されている、
請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項7】
前記加熱器がバーナであり、
前記バーナの吹き出し口よりも鉛直方向の上側に前記棚板が位置し、
前記温度センサは、前記棚板の上面と前記棚板の上面からの距離が9mm以上15mm以下である高さ位置との間に配置されている、
請求項6に記載の水素生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バーナ、原料ガスと水蒸気とを改質して水素を含む燃料ガスを発生させる改質触媒を有する改質器、改質器から供給される燃料ガス中の一酸化炭素を低減する一酸化炭素低減触媒を有する一酸化炭素低減器、及び一酸化炭素低減器の温度を検知する温度検知器を備えた水素発生装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、製造容易性及びCO低減触媒の温度検出の精度を向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における水素生成装置は、
加熱器と、
前記加熱器を周方向に包囲する有底筒状の隔壁と、
前記隔壁を周方向に包囲する内筒と、
前記内筒の上部を周方向に包囲する上外筒と、
前記上外筒の下端部に接合されるとともに前記上外筒の内側に位置する上端部を有し、前記内筒の下部を周方向に包囲する有底の下外筒と、
前記隔壁と前記内筒との間の空間に充填された改質触媒を含む改質器と、
前記内筒と前記上外筒との間の空間に充填されたCO低減触媒を含むCO低減器と、
前記CO低減器の内部の温度を検出するように前記上外筒に取り付けられた温度センサと、
前記CO低減触媒を下方から支持するように前記内筒と前記上外筒との間の前記空間に前記温度センサから離間して配置され、前記下外筒の前記上端部によって支持された棚板と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、製造容易性及びCO低減触媒の温度検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施の形態1における水素生成装置の概略断面図
【
図2】CO低減器の内部の温度分布の一例を示すグラフ
【
図3A】他の実施の形態1における水素生成装置の概略断面図
【
図4A】他の実施の形態2における水素生成装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
改質器及びCO低減器を備えた水素生成装置が知られている。改質器において、都市ガス等の原料ガスから水蒸気の改質反応によって水素ガスが生成される。CO低減器において、水素ガスの生成時に副生した一酸化炭素(CO)の濃度が低減される。これにより、燃料電池の燃料ガス等に適用可能な水素リッチな水素含有ガスが得られる。
【0009】
CO低減器では、下記の式(1)で表される変成反応によって一酸化炭素が低減される。
【0010】
CO+H2O → CO2+H2 ・・・式(1)
【0011】
触媒には、触媒活性温度が存在する。触媒活性温度は、触媒が活性化して触媒反応を開始し、触媒反応を維持しうる温度である。CO低減触媒の触媒活性温度は、150℃から300℃周辺である。
【0012】
CO低減触媒は内筒と外筒との間の空間に充填される。CO低減触媒を下方から支持するために、CO低減器の内部に棚板を配置することが考えられる。棚板は、例えば、内筒に溶接される。ここで本発明者らは、棚板に関する1つの課題に気付いた。すなわち、棚板を内筒に溶接し、CO低減触媒の温度を検出する温度センサを外筒に取り付けると、内筒の熱膨張量と外筒の熱膨張量との差に基づき、棚板と温度センサとの距離が変動する可能性がある。この場合、温度センサが適切な位置(例えば、CO低減触媒が最も高い温度となる位置)の温度を測定できず、CO低減触媒を触媒活性温度に維持できない可能性がある。
【0013】
上記の課題を解決するために、例えば、棚板を外筒に固定することが考えられる。しかし、本発明者らの検討によると、棚板を外筒に溶接するための溶接トーチが内筒と干渉するので、そのような方法を採用することは容易ではない。これらの知見に基づき、本発明者らは、製造容易性及びCO低減触媒の温度検出の精度を向上させるべく、本開示の主題を構成するに至った。
【0014】
本開示は、製造容易性及びCO低減触媒の温度検出の精度を向上させることに適した水素生成装置を提供する。
【0015】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0016】
添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0017】
(実施の形態1)
以下、
図1Aから
図2を用いて、実施の形態1を説明する。
図1Aにおいて、図中の矢印はガスの流れ方向を示している。
【0018】
[1-1.構成]
図1Aは、実施の形態1における水素生成装置100の概略断面図である。水素生成装置100は、加熱器120、隔壁130、隔壁131、内筒132、上外筒133、及び下外筒134を備える。隔壁130は、加熱器120を周方向に包囲する筒状の部材である。隔壁131は、隔壁130を周方向に包囲する有底筒状の部材である。内筒132は、隔壁131を周方向に包囲する部材である。上外筒133は、内筒132の上部を周方向に包囲する部材である。下外筒134は、内筒132の下部を周方向に包囲する有底の部材である。上外筒133と下外筒134とは鉛直方向に接合されている。上外筒133及び下外筒134の内部に隔壁131が配置されている。隔壁131の内部に隔壁130が配置されている。隔壁130の内部に加熱器120が配置されている。すなわち、水素生成装置100は、四層のシェル構造を有している。
【0019】
水素生成装置100は、改質器122、CO低減器123、温度センサ150、及び棚板151をさらに備える。改質器122は、隔壁131と内筒132との間の空間に充填された改質触媒122cを含む。CO低減器123は、内筒132と上外筒133との間の空間に充填されたCO低減触媒123cを含む。温度センサ150は、上外筒133に取り付けられている。温度センサ150によってCO低減器123の内部の温度が検出される。棚板151は、CO低減触媒123cを下方から支持するように内筒132と上外筒133との間の空間に温度センサ150から離間して配置されている。
【0020】
改質器122は、例えば、下記の式(2)及び式(3)で表される水蒸気改質反応等の改質反応によって水素ガスを生成するためのデバイスである。
【0021】
CH4+H2O → CO+3H2 ・・・式(2)
CH4+2H2O → CO2+4H2 ・・・式(3)
【0022】
改質器122では、改質触媒122cにより改質反応が進行される。改質器122は、水及び原料ガスを用いて、水素ガスを生成する。原料ガスは、例えば、都市ガス、液化石油ガス等の炭化水素ガスである。
【0023】
CO低減器123は、下記の式(4)で表される変成反応によって一酸化炭素を低減するためのデバイスである。
【0024】
CO+H2O → CO2+H2 ・・・式(4)
【0025】
CO低減器123では、CO低減触媒123cにより変成反応が進行される。一酸化炭素が低減された水素リッチな水素含有ガスは、例えば、燃料電池に供給される。燃料電池は、酸化剤ガスと水素ガスとを用いて電力を生成する。燃料電池は、例えば、固体高分子形燃料電池である。
【0026】
以下、本実施の形態の水素生成装置100の構造の例を詳細に説明する。
【0027】
図1Aに示すように、隔壁130、隔壁131、内筒132、上外筒133、及び下外筒134は、鉛直方向に中心軸Xを有する円筒状の部材である。加熱器120は、中心軸Xに沿って配置されている。
【0028】
水素生成装置100において、隔壁131の外周面と内筒132の内周面との間には、ドーナツ状の横断面形状を有する流路121が形成されている。上外筒133及び下外筒134の内周面と内筒132の外周面との間には、ドーナツ状の横断面形状を有する流路141が形成されている。流路121は、ガスを上方から下方に導く流路である。流路121の最上流部分には、原料入口160が接続されている。原料入口160を通じて流路121に水及び原料ガスが導入される。流路121の上流部分には、螺旋状の流路を形成するためのコイル状の部材が配置されている。螺旋状の流路を水が流れる間に水が蒸発する。このように、流路121の上流部分は、蒸発器の役割を果たす。ただし、流路121の上流部分の構成は上述したものに限られない。例えば、流路121の上流部分は、隔壁131の外周面に鉛直方向に向かって形成された螺旋状の凸部であって、内筒132の内周面に接する凸部を有し、この凸部により形成された螺旋状の流路を水が流れる間に水が蒸発するように構成されていてもよい。流路121の下流部分には、改質触媒122cが配置され、改質器122を構成している。流路121は、内筒132の底部において流路141に連通している。流路141は、ガスを下方から上方に導く流路であって、リターン流路とも呼ばれる。流路141の下流部分には、CO低減触媒123cが配置され、CO低減器123を構成している。流路141の最下流部分には、水素含有ガス出口162が接続されている。
【0029】
流路141には、CO低減器123の内部の温度を検出するように温度センサ150が配置されている。温度センサ150によってCO低減器123の内部の温度が検出される。例えば、水素生成装置100の運転時、温度センサ150により検出されたCO低減器123の内部の温度が所定の温度を超えた場合、原料ガスに加える水の供給量を増加させる。これにより、CO低減触媒123cの温度を触媒活性温度まで低下させることができる。その結果、高温によりCO低減触媒123cが酸化して劣化することを回避できる。
【0030】
流路121には、改質器122の内部の温度を検出するように温度センサが配置されていてもよい。温度センサによって改質器122の内部の温度が検出されてもよい。
【0031】
隔壁130の内部空間には加熱器120が配置されている。加熱器120には、燃料ガス供給口(不図示)を通じて燃料ガスが供給される。燃料ガスは、例えば、燃料電池から排出される残余の水素ガス及び未反応の原料ガスである。隔壁130の外周面と隔壁131の内周面との間には、ドーナツ状の横断面形状を有する排ガス経路140が形成されている。排ガス経路140の最下流部分には、排ガス出口161が接続されている。排ガスは、排ガス経路140を通じて排ガス出口161から水素生成装置100の外部に排出される。
【0032】
加熱器120で燃料ガスを燃やすと、隔壁130、隔壁131、内筒132、上外筒133、及び下外筒134が加熱される。隔壁131及び内筒132の熱が改質触媒122cに伝わることにより、改質触媒122cの温度が上昇する。内筒132及び上外筒133の熱がCO低減触媒123cに伝わることにより、CO低減触媒123cの温度が上昇する。CO低減触媒123cの温度は、改質器122から排出した水素ガスを含む改質ガスの熱によっても上昇する。
【0033】
本実施の形態において、下外筒134は、上外筒133の下端部133eに接合されるとともに上外筒133の内側に位置する上端部135を有している。棚板151の下面151bは上端部135によって支持されている。棚板151の上面151aはCO低減触媒123cの自重により押圧されている。このような構造によれば、水素生成装置100の運転時、鉛直方向における棚板151の変位量と温度センサ150の変位量とが等しくなる。その結果、棚板151と温度センサ150との間の所定の距離が維持されるので、温度センサ150によって、特定の位置にあるCO低減触媒123cの温度を測定することができる。したがって、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度を精度よく検出することができる。また、棚板151は、上端部135及びCO低減触媒123cによって位置決めされているので、棚板151を上外筒133に溶接することが必須でない。そのため、棚板151を上外筒133にする際に溶接トーチが内筒132と干渉するのを回避するために新たな製造工程を設けることが必須でないので、製造容易性が向上する。
【0034】
本実施の形態において、棚板151は、溶接又はかしめ等の方法によって、内筒132、上外筒133、及び下外筒134のいずれにも固定されていない。言い換えると、棚板151は、上端部135及びCO低減触媒123cのみによって位置決めされている。このような構造によれば、水素生成装置100の運転時に、内筒132の熱膨張量と上外筒133の熱膨張量とに差に起因する棚板151の位置の変動が抑制されるだけでなく、新たな製造工程の発生及び製造コストの増加が抑制される。したがって、水素生成装置100の製造容易性が向上する。
【0035】
図1Bは、
図1Aにおいて破線で囲ったA1部分の拡大図である。
図1Bに示すように、上端に向かうに従って下外筒134の一部が連続的に縮径することによって上端部135が形成されていてもよい。このような構造によれば、上端部135によって棚板151の下面151bを支持しやすい。
【0036】
棚板151は、ドーナツ状の板状部材である。棚板151は、溶接によって、内筒132及び上外筒133、及び下外筒134のいずれにも固定されていないので、溶接で接合した際に発生する溶接痕、いわゆる溶接ビードを有していない。すなわち、棚板151は、完全に平坦な板状部材である。
【0037】
棚板151は、流路141において、内筒132の上部と上外筒133との間の空間に相当する位置に配置されている。棚板151は、CO低減触媒123cを下方から支持している。棚板151には、CO低減触媒123cの粒子径より小さい通気口151hが形成されている。通気口151hの数は特に限定されない。このような構造であることにより、棚板151は、CO低減触媒123cの落下を防ぎながら改質ガスを通過させることができる。
【0038】
上外筒133と下外筒134とは、上外筒133の下端部133eと上外筒133の内側に位置する上端部135とによって、鉛直方向に接合している。以下では、上外筒133と下外筒134との接合部を接合部136と称することがある。
図1Bに示すように、上外筒133の外周面133sと下外筒134の外周面134sとの間には隙間が存在しない。
【0039】
図1Bに示すように、上外筒133の外周面133sと下外筒134の外周面134sとが面一であってもよい。上外筒133の外周面133sと下外筒134の外周面134sとが面一であるとは、外周面133sと外周面134sとの段差が、上外筒133の厚み又は下外筒134の厚みよりも小さいことを意味する。このような構造によれば、例えば、接合部136の溶接を容易に行うことができる。
【0040】
本実施の形態では、下外筒134の上端部135の外周面135sが上外筒133の下端部133eの内周面133eiに接するように上外筒133と下外筒134とが固定されている。このような構造によれば、上外筒133と下外筒134との位置関係が固定されるので、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出することができる。上外筒133と下外筒134とを固定する方法として、例えば、溶接、かしめが挙げられる。
【0041】
下外筒134の上端部135を除いた部分の外径と上外筒133の外径とが等しくてもよい。このような構造によれば、上外筒133と下外筒134との固定を容易に行うことができる。
【0042】
下外筒134の上端部135の外周面135sに上外筒133の下端部133eが接触することで、下外筒134と上外筒133との位置決めがなされていてもよい。このような構造によれば、上外筒133と下外筒134との位置関係を容易に固定できる。
【0043】
本実施の形態では、上外筒133と下外筒134とが溶接されている。
図1Cは、接合部136の拡大図である。接合部136には、溶接で接合した際に発生する溶接痕、いわゆる溶接ビード136wが存在している。
図1Cに示すように、溶接ビード136wは、上外筒133の外周面133s及び下外筒134の外周面134sからわずかに突出していてもよい。
【0044】
本実施の形態において、温度センサ150は、上外筒133に取り付けられている。上外筒133は、内筒132よりも加熱器120による加熱の影響を受けにくい。そのため、このような構造によれば、温度センサ150によってCO低減器123の内部の温度、具体的にはCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出できる。
【0045】
温度センサ150は、水素生成装置100の運転時にCO低減触媒123cが最も高い温度となる位置に配置されていることが望ましい。
図2は、CO低減器123の内部の温度分布の一例を示すグラフである。
図2において、横軸はCO低減器123の鉛直方向の高さを表し、縦軸はCO低減器123の内部の温度を表す。
図2におけるB
1及びB
2は、
図1Aに示す位置B
1及び位置B
2に対応している。棚板151の上面151aからCO低減器123の上端までの距離を距離Hと定義したとき、CO低減触媒123cには、水素生成装置100の運転時に最も高い温度となる距離Hpが存在する。温度センサ150が距離Hpの位置に配置されていると、CO低減触媒123cの温度をより精度よく検出できる。
【0046】
図1は、加熱器120がバーナである場合を例示している。加熱器120がバーナである場合、棚板151は、バーナの吹き出し口120pよりも鉛直方向の上側に位置していてもよい。このとき、温度センサ150は、棚板151の上面151aと棚板151の上面151aからの距離が9mm以上15mm以下である高さ位置との間に配置されていてもよい。このような構造によれば、温度センサ150によって、CO低減触媒123cの温度をより精度よく検出できる。
【0047】
図1Bに示すように、下外筒134の外周面134sに平行な基準線L
134と上端部135の外周面135sに平行な基準線L
135とのなす角度を上端部135の傾き角度αと定義する。このとき、傾き角度αは、25°以上90°以下であってもよい。このような構造によれば、上端部135によって棚板151の下面151bをより確実に支持することができる。
【0048】
CO低減器123は、CO低減触媒123cとして、CO変成触媒及びCO選択酸化除去触媒を含んでいてもよい。この場合、流路141の上流側にCO変成触媒が配置され、流路141の下流側にCO選択酸化除去触媒が配置される。CO変成触媒は、下記の式(5)で表される変成反応によって、一酸化炭素を低減する。下記の式(5)で表される変成反応は、COシフト反応とも呼ばれる。CO選択酸化除去触媒は、下記の式(6)で表される選択的酸化反応によって、さらに一酸化炭素を低減する。
【0049】
CO+H2O → CO2+H2 ・・・式(5)
2CO+O2 → 2CO2 ・・・式(6)
【0050】
CO低減器123が、CO低減触媒123cとして、CO変成触媒及びCO選択酸化除去触媒を含む場合、CO変成触媒よりも下流側かつCO選択酸化除去触媒よりも上流側において、流路141には、上外筒133に設けられた空気入口を通じて空気を供給可能であるように空気供給経路が接続されていてもよい。空気入口から供給された空気は、CO選択酸化除去触媒よりも上流側において、改質ガスと混合される。
【0051】
図1Aに示す例において、流路121では、改質器122に相当する下流部分の流路断面積が、蒸発器に相当する上流部分の流路断面積よりも大きい。しかし、流路121の構造は
図1Aに示す例に限定されない。
【0052】
図1Aに示す例において、流路141では、CO低減器123に相当する下流部分の流路断面積が、上流部分の流路断面積よりも大きい。しかし、流路141の構造は
図1Aに示す例に限定されない。
【0053】
水素生成装置100を構成する部材の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、二相系ステンレスを使用できる。水素生成装置100を構成する部材は、隔壁131、内筒132、上外筒133、及び下外筒134を含む。本実施の形態では、上外筒133と下外筒134とが溶接されている。上記の材料は、高温環境での溶接に対する耐久性及び施工性に優れる。また、上記の材料を用いることにより、経済合理性のあるコストで水素生成装置100を構成できる。これらの理由から、上記の材料は、水素生成装置100を構成する部材の材料として好適である。
【0054】
棚板151の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、二相系ステンレス、フェライト系ステンレスを使用できる。フェライト系ステンレスは、オーステナイト系ステンレス及び二相系ステンレスとの溶接が難しく、施工性の面で劣る一方で、オーステナイト系ステンレス及び二相系ステンレスよりも耐酸化性及び耐応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)性に優れる。また、フェライト系ステンレスは、Niを含まないため比較的安価であるという利点もある。本実施の形態において、棚板151は、溶接によって、内筒132、上外筒133、及び下外筒134のいずれにも固定されていない。そのため、棚板151の材料としてフェライト系ステンレスを使用することで、耐酸化性及び耐SCC性を向上させることができるとともに、製造コストを抑制することもできる。
【0055】
[1-2.動作]
以上のように構成された水素生成装置100について、
図1Aを用いて、以下その動作、作用を説明する。
【0056】
まず、加熱器120で燃料ガスを燃やす。燃料ガスは、例えば、燃料電池から排出された残余の水素ガス及び未反応の原料ガスである。これにより、隔壁130、隔壁131、内筒132、上外筒133、及び下外筒134が加熱される。なお、加熱器120の排ガスGeは、排ガス経路140を通じて排ガス出口161から水素生成装置100の外部に排出される。
【0057】
次に、水素生成装置100で必要な水素量を得るのに必要な量の原料ガスG0及び水Wを水及び原料入口160から流路121に供給する。原料ガスG0は、例えば、メタンガスなどの炭化水素ガスである。
【0058】
流路121に供給された水Wは、螺旋状の流路を水が流れる間に隔壁131の外周面及び内筒132の内周面を介して伝わる熱により蒸発して水蒸気となり、原料ガスG0と混合される。これにより、混合ガスG1が得られる。このように、流路121の上流部分は、蒸発器の役割を果たす。
【0059】
混合ガスG1は、流路121の下流部分に位置する改質器122に供給される。改質器122では、改質触媒122cにより水蒸気改質反応が進行する。これにより、水素ガスを含む改質ガスG2が得られる。
【0060】
流路141に流入した改質ガスG2は、棚板151を通過して、流路141の下流部分に位置するCO低減器123に供給される。CO低減器123では、CO低減触媒123cにより変成反応が進行する。これにより、一酸化炭素濃度が0.1%から0.2%程度にまで低減された水素リッチな水素含有ガスG3が得られる。
【0061】
水素含有ガスG3は、水素含有ガス出口162から排出され、例えば、燃料電池に供給される。
【0062】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、水素生成装置100は、加熱器120と、加熱器120を周方向に包囲する有底筒状の隔壁131と、隔壁131を周方向に包囲する内筒132と、内筒132の上部を周方向に包囲する上外筒133と、上外筒133の下端部133eに接合されるとともに上外筒133の内側に位置する上端部135を有し、内筒132の下部を周方向に包囲する有底の下外筒134と、隔壁131と内筒132との間の空間に充填された改質触媒122cを含む改質器122と、内筒132と上外筒133との間の空間に充填されたCO低減触媒123cを含むCO低減器123と、CO低減器123の内部の温度を検出するように上外筒133に取り付けられた温度センサ150と、CO低減触媒123cを下方から支持するように内筒132と上外筒133との間の上記空間に温度センサ150から離間して配置され、下外筒134の上端部135によって支持された棚板151と、を備える。このような構造によれば、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度を精度よく検出することができるとともに、水素生成装置100の製造容易性が向上する。
【0063】
また、本実施の形態では、棚板151は、内筒132、上外筒133、及び下外筒134のいずれにも固定されていない。このような構造によれば、水素生成装置100の製造容易性が向上する。
【0064】
また、本実施の形態では、上端に向かうに従って下外筒134の一部が連続的又は段階的に縮径することによって下外筒134の上端部135が形成されている。このような構造によれば、上端部135によって棚板151の下面151bを支持しやすい。
【0065】
また、本実施の形態では、下外筒134の上端部135の外周面135sが上外筒133の下端部133eの内周面133eiに接するように上外筒133と下外筒134とが固定されている。このような構造によれば、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、上外筒133と下外筒134とが溶接されている。このような構造によれば、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出することができる。
【0067】
また、本実施の形態において、温度センサ150は、CO低減触媒123cが最も高い温度となる位置に配置されていてもよい。このような構造によれば、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出できる。
【0068】
また、本実施の形態において、加熱器120がバーナであり、バーナの吹き出し口120pよりも鉛直方向の上側に棚板151が位置していてもよく、温度センサ150は、棚板151の上面151aと棚板151の上面151aからの距離が9mm以上15mm以下である高さ位置との間に配置されていてもよい。このような構造によれば、温度センサ150によって、CO低減触媒123cの温度をより精度よく検出できる。
【0069】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0070】
そこで、以下、
図3Aから
図4Bを用いて、他の実施の形態を例示する。
【0071】
図3Aは、他の実施の形態1における水素生成装置101の概略断面図である。
図3Aに示す水素生成装置101は、下外筒134の上端部135の構造が異なることを除いて、実施の形態1で説明した
図1に示す水素生成装置100と同一の構成を有する。そのため、同一の要素については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0072】
図3Bは、
図3Aにおいて破線で囲ったA2部分の拡大図である。
図3Bに示すように、水素生成装置101では、上端に向かうに従って下外筒134の一部が連続的に縮径することによって上端部135が形成されている。このような構造によれば、上端部135によって棚板151の下面151bを支持しやすい。
【0073】
水素生成装置101では、下外筒134の外周面134sに平行な基準線L134と上端部135の外周面135sに平行な基準線L135とのなす上端部135の傾き角度αが90°である。このような構造によれば、上端部135の外周面135sと棚板151の下面151bとを面接触させることができるので、上端部135によって棚板151をより確実に支持することができる。
【0074】
水素生成装置101では、上外筒133の外周面133sと下外筒134の外周面134sとが完全に面一である。上外筒133の外周面133sと下外筒134の外周面134sとが完全に面一であるとは、外周面133sと外周面134sとの段差がゼロであることを意味する。このような構造によれば、例えば、接合部136の溶接をより容易に行うことができる。
【0075】
水素生成装置101では、下外筒134の上端部135の外周面135sが上外筒133の下端部133e端面133efに接するように上外筒133と下外筒134とが固定されている。このような構造によれば、上外筒133と下外筒134との位置関係が固定されるので、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出することができる。
【0076】
図4Aは、他の実施の形態2における水素生成装置102の概略断面図である。
図4Aに示す水素生成装置102は、下外筒134の上端部135の構造が異なることを除いて、実施の形態1で説明した
図1に示す水素生成装置100と同一の構成を有する。そのため、同一の要素については同一の符号を用いて説明を省略する。
【0077】
図4Bは、
図4Aにおいて破線で囲ったA3部分の拡大図である。
図4Bに示すように、水素生成装置102では、上端に向かうに従って下外筒134の一部が段階的に縮径することによって上端部135が形成されている。このような構造によれば、上端部135によって棚板151の下面151bを支持しやすい。
【0078】
水素生成装置102では、上端部135は、内筒132に向かう方向に屈曲する屈曲部分135aと、屈曲部分135aに連続し、鉛直方向に延びる先端部分135bを有する。上端部135の先端部分135bによって棚板151の下面151bが支持されている。このような構造によれば、先端部分135bの外周面135bsと上外筒133の下端部133eの内周面133eiとを面接触させることができるので、上外筒133と下外筒134とをより確実に接合することができる。
【0079】
図示は省略するが、先端部分135bは水平方向に延びていてもよい。すなわち、上端部135は、内筒132に向かう方向に屈曲する屈曲部分135aに連続し、水平方向に延びる先端部分135bを有していてもよい。このような構造によれば、先端部分135bの外周面135bsと棚板151の下面151bとを面接触させることができるので、上端部135によって棚板151をより確実に支持することができる。
【0080】
水素生成装置102では、上端部135の先端部分135bの外周面135bsが上外筒133の下端部133eの内周面133eiに接するように上外筒133と下外筒134とが固定されている。このような構造によれば、上外筒133と下外筒134との位置関係が固定されるので、温度センサ150によってCO低減触媒123cの温度をより精度よく検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、複数の触媒を充填する必要がある容器に適用可能である。具体的には、一酸化炭素濃度が低い水素含有ガスを生成する水素生成装置、不純物の濃度を低減して水素ガスを供給する必要がある燃料電池発電装置、水素精製システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
100,101,102 水素生成装置
120 加熱器
121 流路
122 改質器
122c 改質触媒
123 CO低減器
123c CO低減触媒
130 隔壁
131 隔壁
132 内筒
133 上外筒
133e 上外筒の下端部
133e 上外筒の下端部
133ei 上外筒の下端部の内周面
134 下外筒
134s 下外筒の外周面
135 下外筒の上端部
135s 下外筒の上端部の外周面
136 接合部
136w 溶接ビード
140 排ガス経路
141 流路
150 温度センサ
151 棚板
151a 棚板の上面
151b 棚板の下面
151h 通気口
160 原料入口
161 燃焼排ガス出口
162 水素含有ガス出口
X 中心軸
W 水
G0 原料ガス
G1 混合ガス
G2 改質ガス
G3 水素含有ガス
Ge 排ガス