(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122090
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ESD保護素子及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240902BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H02H9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029425
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森田 健士
【テーマコード(参考)】
5F038
5G013
【Fターム(参考)】
5F038AV04
5F038BH04
5F038BH13
5F038CA02
5G013AA16
5G013BA02
5G013CB15
5G013DA10
(57)【要約】
【課題】レイアウト面積を広げることなく耐圧を向上させることができるESD保護素子の提供。
【解決手段】V
DD端子とV
SS端子との間に接続され、内部回路Cと並列に接続して内部回路Cを静電気放電から保護するESD保護素子100であって、P型半導体基板180の表面に形成されているP型ウェル領域160と、P型ウェル領域160に囲まれるようにP型半導体基板180の表面に形成されているN型ウェル領域170と、N型ウェル領域170の表面に形成され、V
DD端子に接続されているP型高濃度領域110と、P型高濃度領域110の外周側面に接触するようにN型ウェル領域170に形成され、P型高濃度領域110よりも深いP型中濃度領域111と、P型中濃度領域111と離間して囲うようにN型ウェル領域170の表面に形成され、V
SS端子及びP型ウェル領域160と接続されているP型高濃度領域130と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と第2の端子との間に接続され、被保護回路と並列に接続して前記被保護回路を静電気放電から保護するESD保護素子であって、
P型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成されているP型ウェル領域と、
平面視において前記P型ウェル領域に囲まれるように前記半導体基板の表面に形成されているN型ウェル領域と、
前記N型ウェル領域の表面に形成され、前記第1の端子に電気的に接続されている第1のP型高濃度領域と、
平面視において前記第1のP型高濃度領域の外周側面に接触するように前記N型ウェル領域に形成され、前記第1のP型高濃度領域よりも深いP型中濃度領域と、
平面視において前記P型中濃度領域と離間して囲うように前記N型ウェル領域の表面に形成され、前記第2の端子及び前記P型ウェル領域と電気的に接続されている第2のP型高濃度領域と、
を有することを特徴とするESD保護素子。
【請求項2】
平面視において前記第1のP型高濃度領域と前記第2のP型高濃度領域との間の前記N型ウェル領域の表面に形成され、VDD電位に固定されているN型高濃度領域を更に有する、請求項1に記載のESD保護素子。
【請求項3】
前記第1のP型高濃度領域の下面及び前記P型中濃度領域の内周側面に接触にするように形成され、前記P型中濃度領域よりも浅いP型低濃度領域を更に有する、請求項1に記載のESD保護素子。
【請求項4】
前記P型低濃度領域は、平面視において前記第1のP型高濃度領域よりも面積が小さい、請求項3に記載のESD保護素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のESD保護素子と、前記ESD保護素子により静電気放電から保護される被保護回路とが並列に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
平面視において前記第1のP型高濃度領域と前記第2のP型高濃度領域との間の前記N型ウェル領域の表面に形成され、VDD電位に固定されているN型高濃度領域を更に有する、請求項3又は4に記載のESD保護素子。
【請求項7】
請求項6に記載のESD保護素子と、前記ESD保護素子により静電気放電から保護される被保護回路とが並列に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ESD保護素子及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)に弱く、容易に破壊されるおそれがある。具体的には、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造を有する素子が半導体集積回路に含まれていれば、ゲート絶縁膜破壊が発生するおそれがある。このため、半導体集積回路は、静電気放電から内部回路を保護するためのESD保護素子を備えることが多い。
【0003】
ESD保護素子としては、例えば、降伏現象を利用したダイオード型ESD保護素子、NMOS(NチャネルMOS)トランジスタのスナップバック動作を利用したgg(gate grounded)NMOS型ESD保護素子などが挙げられる。
【0004】
2つのダイオード型ESD保護素子を組み合わせ、2つの端子間の双方向において静電気放電から内部回路を保護でき、かつ逆接続保護機能を有する双方向ダイオードが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの側面では、レイアウト面積を広げることなく耐圧を向上させることができるESD保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態におけるESD保護素子は、
第1の端子と第2の端子との間に接続され、被保護回路と並列に接続して前記被保護回路を静電気放電から保護するESD保護素子であって、
P型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成されているP型ウェル領域と、
平面視において前記P型ウェル領域に囲まれるように前記半導体基板の表面に形成されているN型ウェル領域と、
前記N型ウェル領域の表面に形成され、前記第1の端子に電気的に接続されている第1のP型高濃度領域と、
平面視において前記第1のP型高濃度領域の外周側面に接触するように前記N型ウェル領域に形成され、前記第1のP型高濃度領域よりも深いP型中濃度領域と、
平面視において前記P型中濃度領域と離間して囲うように前記N型ウェル領域の表面に形成され、前記第2の端子及び前記P型ウェル領域と電気的に接続されている第2のP型高濃度領域と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの側面によれば、レイアウト面積を広げることなく耐圧を向上させることができるESD保護素子を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるESD保護素子を有する半導体装置を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるESD保護素子を示す概略上面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
【
図4】
図4は、
図3で示したESD保護素子が動作した際の電流の流れを示す説明図である。
【
図5A】
図5Aは、
図3で示したESD保護素子が動作した際の空乏層の状態を示す説明図である。
【
図5B】
図5Bは、
図3で示したESD保護素子が動作した際の空乏層の状態を示す説明図である。
【
図5C】
図5Cは、
図3で示したESD保護素子が動作した際の空乏層の状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態におけるESD保護素子を示す概略上面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線におけるESD保護素子の断面を示すとともに、ESD保護素子が動作した際の電流の流れを示す説明図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第4の実施形態の変形例におけるESD保護素子の断面の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許文献1の
図1及び
図2に示すような、いわゆる縦型構造のPNP双方向ダイオードでは、V
DD端子側のP型領域はN型ウェル領域との接合面積が狭く、不純物濃度が高い。逆接続時に高電圧が印加された場合、このPN接合において降伏し大きな電流が流れるが、この接合面積が狭いため電流密度が高くなりやすい。また、このとき流れる電流は、V
DD端子側のP型領域と距離が近いP型半導体基板から流れ込むため、P型高濃度領域の直下の縦方向経路の電流密度が高くなりやすい。
また、平面視において同心円状に各領域が形成されているPNP双方向ダイオードでは、V
DD端子側のP型領域がその中心に位置するが、レイアウト面積が狭くなりやすく電流が集中しやすい。一方で、V
SS端子側のP型領域は、P型半導体基板まで含まれているためN型ウェル領域との接合面積が広く、電流密度は低くなる。
【0011】
したがって、このような構造の双方向ダイオードは、電圧印加において高濃度不純物での接合となるVDD端子側のP型領域のPN接合部が破壊されやすい。更にはESDなどのような大電流がこのPN接合部に集中することにより、ジュール熱が融点を超えて完全破壊に至るおそれがある。これに対し、VDD端子側のP型領域のPN接合部での電流密度を低減するために当該PN接合部の接合面積を広くすると、レイアウト面積が広くなり半導体チップのサイズが増大してしまう。
【0012】
そこで、本発明の一実施形態では、
図4に示すように、電流が集中しやすいPN接合部のP型高濃度領域110の外周側面に接触するように、同じ導電型のP型中濃度領域111をN型ウェル領域170内のLOCOS120の下面に設けている。このP型中濃度領域111を設けることにより、P型高濃度領域110とN型ウェル領域170との接合面積を実質的に広くすることができる。
また、P型中濃度領域111をP型高濃度領域110よりも深くすることにより、P型高濃度領域110からP型高濃度領域130までの電流経路の一部をP型中濃度領域111に引き込み、P型高濃度領域110に電流が集中しないようにしている。
さらに、P型高濃度領域110及びP型中濃度領域111とN型ウェル領域170とのPN接合部に電圧が印加されると厚さが縦方向に厚く均一に近い空乏層DLが生じるため、P型高濃度領域110下部での耐圧を高め、P型中濃度領域111での破壊とその部分への電流の引き込みを促進している。
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための一形態について詳細に説明する。
なお、図面においては、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
また、図面に示すX軸、Y軸及びZ軸は互いに直交するものとする。X軸方向を「幅方向」、Y軸方向を「奥行き方向」、Z軸方向を「高さ方向」又は「厚さ方向」と称する場合がある。各膜の+Z方向側の面を「表面」又は「上面」、-Z方向側の面を「裏面」又は「下面」と称する場合がある。
さらに、図面は模式的なものであり、幅、奥行き及び厚さの比率などは示したとおりではない。複数の膜若しくは層、又はこれらを構造的に組み合わせて得られる半導体素子の数量、位置、形状、構造、大きさなどは、以下に示す実施形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数量、位置、形状、構造、大きさなどにすることができる。
またさらに、図中の「P」又は「N」は半導体領域の導電型を表し、これに付加されている「+」、「±」、「-」は不純物濃度の相対的な高低関係を示す。例えば、P-、P±、P+の順で不純物濃度は高くなる。N型についても同様である。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるESD保護素子を有する半導体装置を示す回路図である。
図1に示すように、半導体装置10は、ESD保護素子100と、内部回路Cとを有する。
ESD保護素子100は、第1の端子としてのV
DD端子と第2の端子としてのV
SS端子との間に接続されており、内部回路Cと並列に接続されている。
このESD保護素子100は、静電気放電から内部回路Cを保護するのみならず、V
DD端子とV
SS端子とを逆に接続した際にも内部回路Cを保護することができる。
【0015】
内部回路Cは、ESD保護素子100により静電気放電及び逆接続から保護される被保護回路であり、VDD端子と接地電位のVSS端子との間に印加されている動作電圧で動作する。
【0016】
図2は、第1の実施形態におけるESD保護素子を示す概略上面図である。
図3は、
図2のIII-III線におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
図2に示すように、ESD保護素子100は、P型高濃度領域110、130、150と、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)120、140とを有する。これらの領域は、平面視において、矩形状のP型高濃度領域110を中心に同心円状に形成されている。また、
図3に示すように、ESD保護素子100は、P型ウェル領域160と、N型ウェル領域170と、P型半導体基板180とを更に有する。
【0017】
P型高濃度領域110は、図示しない配線層などを介し、
図1で示したV
DD端子に電気的に接続されている。
また、P型高濃度領域110は、N型ウェル領域170の表面にP型の不純物が高濃度になるように注入して形成されている。このP型高濃度領域110は、平面視において矩形状に形成されており、その周囲をLOCOS120で囲まれている。LOCOS120の内周側の下面には、P型高濃度領域110の外周側面に接触するようにP型中濃度領域111が形成されている。
【0018】
P型中濃度領域111は、N型ウェル領域170内においてP型の不純物が中濃度になるように注入して形成されている。このP型中濃度領域111は、導電型が同じP型高濃度領域110の外周側面に接触していることから、P型高濃度領域110の平面視における面積を実質的に拡張する機能を有する。つまり、ESD保護素子100は、平面視において同心円状に各領域が配置されているため、その中心のP型高濃度領域110の面積が小さくなりやすいところ、P型中濃度領域111によりP型高濃度領域110の面積を実質的に拡張することができる。
【0019】
P型高濃度領域130は、図示しない配線層などを介し、
図1で示したV
SS端子に電気的に接続されている。
また、P型高濃度領域130は、N型ウェル領域170の表面にP型の不純物が高濃度になるように注入して形成されている。このP型高濃度領域130は、平面視においてLOCOS120の外周に沿って矩形のリング状に形成されている。LOCOS120の外周側の下面には、P型中濃度領域131が形成されている。
さらに、P型高濃度領域130は、その周囲をLOCOS140で囲まれている。LOCOS140の下面全域には、P型中濃度領域132が形成されている。
【0020】
P型中濃度領域131、132は、N型ウェル領域170内においてP型の不純物が中濃度になるように注入して形成されている。
P型中濃度領域131は、P型高濃度領域130の内周側面に接触するように、N型ウェル領域170に形成されている。
P型中濃度領域132は、P型高濃度領域130の外周側面に接触するように、N型ウェル領域170に形成されている。
【0021】
P型高濃度領域150は、P型ウェル領域160の表面にP型の不純物が高濃度になるように注入して形成されている。このP型高濃度領域150は、平面視においてLOCOS140の外周に形成されており、ガードリングの機能を有する。
【0022】
LOCOS120、140は、LOCOS法により形成された比較的膜厚の厚いシリコン酸化膜である。このLOCOS120、140は、P型高濃度領域110、130、150の間にそれぞれ矩形のリング状に形成されている。
【0023】
P型ウェル領域160は、P型半導体基板180の表面にP型の不純物を注入して形成されている。このP型ウェル領域160は、平面視においてN型ウェル領域170の周囲を囲むように形成されている。
【0024】
N型ウェル領域170は、P型半導体基板180の表面にN型の不純物を注入して形成されている。このN型ウェル領域170は、平面視において矩形状に形成されている。
【0025】
半導体基板としてのP型半導体基板180は、ウエハ状のP型シリコン半導体基板である。
【0026】
さらに、P型中濃度領域111,131を横方向に対向させることにより、P型中濃度領域111での破壊時の横方向の電流の引き込みを促進している。
図4は、
図3で示したESD保護素子が動作した際の電流の流れを示す説明図である。
図4では、V
SS端子側からV
DD端子側に流れる電流を点線矢印で示す。
図4に示すように、P型高濃度領域110の外周に配置されているP型中濃度領域111は、PN接合部の接合面積を実質的に拡張させていることから、P型高濃度領域110の電流密度を低減させることができる。
また、P型中濃度領域111は、P型高濃度領域110よりも深く形成されていることから、P型高濃度領域110の外周側に電流を引き込み、P型高濃度領域110の中央部に集中させないようすることができる。
さらに、P型中濃度領域111の不純物濃度による耐圧低下は、電流が流れる際にPN接合部に形成される空乏層の構造で抑制することができる。以下では、この空乏層の構造については、
図5A~
図5Cを参照しながら説明する。
【0027】
図5A~
図5Cは、
図3で示したESD保護素子が動作した際の空乏層の状態を示す説明図である。
静電気放電による電圧がまだ低いときには
図5Aに示すような空乏層DLであるが、電圧が高くなるにつれて
図5Bに示すような空乏層DLから
図5Cに示すような空乏層DLに変化する。電圧が高いときには、P型高濃度領域110及びP型中濃度領域111とN型ウェル領域170とのPN接合部には厚さが均一に近い空乏層DLが生じるため、P型中濃度領域111の不純物濃度による耐圧低下を抑制することができる。
【0028】
このように、ESD保護素子100は、P型高濃度領域110の外周側面においてP型高濃度領域110よりも深いP型中濃度領域111を設けることにより、レイアウト面積を広げることなく耐圧を向上させることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態におけるESD保護素子を示す概略上面図である。
図7は、
図6のVII-VII線におけるESD保護素子の断面を示すとともに、ESD保護素子が動作した際の電流の流れを示す説明図である。
図6及び
図7に示すように、第2の実施形態は、第1の実施形態において、N型ウェル領域170の表面に形成され、V
DD電位に固定されているN型高濃度領域190をLOCOS120の形成領域に設けた以外は、第1の実施形態と同様である。
このため、以下ではN型高濃度領域190についての詳細を説明する。
【0030】
N型高濃度領域190は、N型ウェル領域170の表面にN型の不純物が高濃度になるように注入して形成されている。このN型高濃度領域190は、平面視においてLOCOS120aの外周に沿って矩形のリング状に形成されており、その周囲をLOCOS120bで囲まれている。
また、N型高濃度領域190は、図示しない配線層などを介し、内部回路Cを通してVDD電位に固定されている端子Tに電気的に接続されており、N型ウェル領域170にVDD電位を与える。
【0031】
この点で、第1の実施形態におけるESD保護素子100では、N型ウェル領域170が浮遊電位であるため、N型ウェル領域170に放電電流が注入されると、ベース領域であるN型ウェル領域170の電位が速やかに上昇し瞬時にバイポーラ動作に移行する。このバイポーラ動作時に流れる電流は、N型ウェル領域170の不純物濃度が比較的低く電流増幅率が高いP型高濃度領域110直下の縦方向に集中しやすい。
【0032】
そこで、第2の実施形態におけるESD保護素子200では、N型高濃度領域190を新たに設けてN型ウェル領域170の電位を固定するようにし、P型高濃度領域110の中央部に電流経路を集中させないようすることができる。また、N型ウェル領域170にVDD電位を与えることにより、P型高濃度領域110-N型ウェル領域170-P型半導体基板180のPNP構造による寄生バイポーラトランジスタの動作をさせないようにし、予期せぬ電流が流れないようにした。
このように、第2の実施形態におけるESD保護素子200は、第1の実施形態におけるESD保護素子100よりもP型高濃度領域110の中央部に電流経路を集中させないようすることができ、耐圧を向上させることができる。
【0033】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
図8に示すように、第3の実施形態におけるESD保護素子300は、第1の実施形態においてP型高濃度領域110の下面側にP型低濃度領域112を設けた以外は、第1の実施形態のESD保護素子100と同様である。
このため、以下ではP型低濃度領域112についての詳細を説明する。
【0034】
P型低濃度領域112は、N型ウェル領域170内においてP型の不純物が低濃度になるように注入して、P型高濃度領域110の下面全域に接触するように形成されている。このP型低濃度領域112は、P型中濃度領域111の内周側面に接触するように、P型中濃度領域111よりも浅く形成されている。
【0035】
このように、第3の実施形態におけるESD保護素子300は、P型低濃度領域112を設けることにより、
図5A~
図5Cで示した空乏層DLの厚さが第1の実施形態よりも均一に近くなるため、不純物濃度による耐圧低下をより抑制することができる。
【0036】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態におけるESD保護素子の断面を示す説明図である。
図9に示すように、第4の実施形態におけるESD保護素子400は、第2の実施形態のN型高濃度領域190及び第3の実施形態のP型低濃度領域112の両方を設けた以外は、第1の実施形態のESD保護素子100と同様である。
N型高濃度領域190及びP型低濃度領域112については、第2の実施形態及び第3の実施形態での説明のとおりであるため省略する。
【0037】
このように、第4の実施形態におけるESD保護素子400は、第2の実施形態のN型高濃度領域190及び第3の実施形態のP型低濃度領域112の両方を設けているため、第2の実施形態及び第3の実施形態よりも耐圧を向上させることができる。
【0038】
(第4の実施形態の変形例)
図10は、第4の実施形態の変形例におけるESD保護素子の断面の一部を示す説明図である。
図10に示すように、第4の実施形態の変形例は、P型中濃度領域111をX軸方向の寸法が大きいP型中濃度領域113とし、P型低濃度領域112をX軸方向の寸法が小さいP型低濃度領域114とした以外は、第4の実施形態と同様である。
【0039】
これにより、P型高濃度領域110からP型高濃度領域130までの電流経路の一部をP型中濃度領域113に引き込みやすくなり、P型高濃度領域110に電流が集中しないようにした。また、静電気放電の電圧が高いときには、P型高濃度領域110及びP型中濃度領域111とN型ウェル領域170とのPN接合部には、厚さが均一に近い空乏層DLが生じるため、P型中濃度領域111の不純物濃度による耐圧低下を抑制することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明の一実施形態におけるESD保護素子は、半導体基板の表面に形成されているP型ウェル領域と、P型ウェル領域に囲まれるように半導体基板の表面に形成されているN型ウェル領域とを有する。また、このESD保護素子は、N型ウェル領域の表面に形成され、第1の端子に接続されている第1のP型高濃度領域と、第1のP型高濃度領域の外周側面に接触するようにN型ウェル領域に形成され、第1のP型高濃度領域よりも深いP型中濃度領域とを有する。さらに、このESD保護素子は、P型中濃度領域と離間して囲うようにN型ウェル領域の表面に形成され、第2の端子及びP型ウェル領域と接続されている第2のP型高濃度領域とを有する
これにより、このESD保護素子は、レイアウト面積を広げることなく耐圧を向上させることができる。
【0041】
なお、ESD保護素子の平面視における形状は、矩形状としたP型高濃度領域を中心に同心円状に形成されているとしたが、これに限ることなく、例えば、円形、多角形などとしてもよく、各領域において異なった形状としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 半導体装置
100 ESD保護素子
110 P型高濃度領域(VDD端子側、第1のP型高濃度領域)
111、113 P型中濃度領域
112、114 P型低濃度領域
120、120a、120b LOCOS
130 P型高濃度領域(VSS端子側、第2のP型高濃度領域)
131、132 P型中濃度領域
140 LOCOS
150 P型高濃度領域
160 P型ウェル領域
170 N型ウェル領域
180 P型半導体基板
190 N型高濃度領域
C 内部回路