(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122095
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】冷却部材、保持装置、及び冷却部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029435
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 要
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】松丸 郁子
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA01
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB18
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】冷却部材及び保持装置の熱交換効率を高める。
【解決手段】冷却部材20は、熱媒体が流れる流路30が内部に形成された冷却部材20であって、冷却部材20は、板状体21が第1方向に複数重ねられて接合されたものであり、流路30は、第1流路31を含み、第1流路31を構成する内壁は、第1方向に直交する第1面31Aと、第1方向に直交し、第1面31Aと第1方向に対向する第2面31Bと、第1面31Aと第2面31Bとを接続する側面31Cと、を備え、複数の板状体21は、第1方向について第1面31Aと第2面31Bとの間に配され、第1方向に連続して重ねられる複数の第1板状体24を含み、各第1板状体24は、側面31Cの一部を構成する側壁部26を備え、側面31Cは、第1方向に隣接する2つの側壁部26の境界部分に形成され、流路30の延びる方向から見た断面形状が段差状、またはV字状をなすエッジ部31Dを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流れる流路が内部に形成された冷却部材であって、
前記冷却部材は、板状体が第1方向に複数重ねられて接合されたものであり、
前記流路は、第1流路を含み、
前記第1流路を構成する内壁は、前記第1方向に直交する第1面と、前記第1方向に直交し、前記第1面と前記第1方向に対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面と、を備え、
複数の前記板状体は、前記第1方向について前記第1面と前記第2面との間に配され、前記第1方向に連続して重ねられる複数の第1板状体を含み、
各前記第1板状体は、前記側面の一部を構成する側壁部を備え、
前記側面は、前記第1方向に隣接する2つの前記側壁部の境界部分に形成され、前記流路の延びる方向から見た断面形状が段差状、またはV字状をなすエッジ部を有する、冷却部材。
【請求項2】
前記流路は、前記第1流路に加えて、前記第1流路と前記第1方向に並んで配される第2流路をさらに有し、
前記複数の板状体は、前記第1方向について前記第1流路と前記第2流路との間に配される少なくとも1つの第2板状体をさらに含む、請求項1に記載の冷却部材。
【請求項3】
前記側壁部は、テーパー形状をなし、
前記第1方向の一方側から他方側に向かうにつれて、前記流路の幅が減少または増大している、請求項1または請求項2に記載の冷却部材。
【請求項4】
前記側面は、前記第1方向に隣接する3つの前記側壁部と、複数の前記エッジ部と、を備え、
前記3つの側壁部は、前記第1方向について最も前記第1面側に配される第1側壁部と、前記第1方向について最も前記第2面側に配される第3側壁部と、前記第1方向について前記第1側壁部と前記第3側壁部の間に配される第2側壁部とを備え、
前記複数のエッジ部は、前記第1側壁部と前記第2側壁部との境界部分に形成される第1エッジ部と、前記第2側壁部と前記第3側壁部との境界部分に形成される第2エッジ部と、を備え、
前記第1エッジ部と前記第2エッジ部とは、前記流路の幅方向について異なる位置に配されている、請求項3に記載の冷却部材。
【請求項5】
前記側面は、前記第1方向に隣接する3つの前記側壁部を備え、
前記3つの側壁部は、前記第1方向について最も前記第1面側に配される第1側壁部と、前記第1方向について最も前記第2面側に配される第3側壁部と、前記第1方向について前記第1側壁部と前記第3側壁部の間に配される第2側壁部とを備え、
前記第2側壁部は、前記第1側壁部及び前記第3側壁部と比較して、前記流路の幅方法について前記流路の内方に配されている、請求項1または請求項2に記載の冷却部材。
【請求項6】
前記流路を構成する内壁は、前記流路の延びる方向に交差するステップ面を備え、
前記ステップ面は、前記流路の延びる方向にずれて配される前記第1面同士または前記第2面同士を接続し、
前記流路の延びる方向において前記ステップ面の前後で前記流路の前記第1方向における寸法が異なっている、請求項1または請求項2に記載の冷却部材。
【請求項7】
前記複数の板状体は、窒化アルミニウム、炭化珪素およびチタン化合物を含む複合材料からなる、請求項1または請求項2に記載の冷却部材。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の冷却部材と、
対象物を保持する保持面を有する保持部材と、
前記冷却部材と前記保持部材とを接合する接合部と、を備え、
前記冷却部材を構成する材料の熱膨張係数と前記保持部材を構成する材料の熱膨張係数との差は、0.3×10-6/K以内である、保持装置。
【請求項9】
流路が内部に形成された冷却部材の製造方法であって、
主としてセラミックス材料から構成される焼結体または仮焼体に貫通孔となる部分の外形に沿って切れ目を入れて前記貫通孔を形成することで板状体を形成する板状体形成工程と、
複数の前記板状体を前記第1方向に重ねて接合し、複数の前記貫通孔を連通させて前記流路を形成する接合工程と、を含む、冷却部材の製造方法。
【請求項10】
前記接合工程では、前記複数の板状体をロウ付けにより接合する、請求項8に記載の冷却部材の製造方法。
【請求項11】
前記板状体形成工程では、前記貫通孔内に配される中州部をさらに備える前記板状体を形成する、請求項8または請求項9に記載の冷却部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却部材、保持装置、及び冷却部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ等の対象物を保持する半導体製造装置用部材として、特許第5666748号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。この半導体製造装置用部材は、静電チャックと、冷却板と、静電チャックと冷却板とを接合する冷却板-チャック接合層と、を備える。冷却板の内部には、水やフッ素系不活性液体等の冷媒が流される冷媒通路が形成されている。
【0003】
特許文献1には、冷媒通路の形成方法として、第2基板の一方の面に冷媒通路となる溝を形成し、第1基板と第2基板とを金属接合材を挟んで熱圧接合することにより形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各種プロセスのハイパワー化が進んでいる中で、冷却板においては、冷却板と冷媒との熱交換の高効率化が求められている。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、冷却部材及び保持装置の熱交換効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の冷却部材は、熱媒体が流れる流路が内部に形成された冷却部材であって、前記冷却部材は、板状体が第1方向に複数重ねられて接合されたものであり、前記流路は、第1流路を含み、前記第1流路を構成する内壁は、前記第1方向に直交する第1面と、前記第1方向に直交し、前記第1面と前記第1方向に対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面と、を備え、複数の前記板状体は、前記第1方向について前記第1面と前記第2面との間に配され、前記第1方向に連続して重ねられる複数の第1板状体を含み、各前記第1板状体は、前記側面の一部を構成する側壁部を備え、前記側面は、前記第1方向に隣接する2つの前記側壁部の境界部分に形成され、前記流路の延びる方向から見た断面形状が段差状、またはV字状 をなすエッジ部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、冷却部材及び保持装置の熱交換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる静電チャックの外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、静電チャックの模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1板状体の貫通孔となる部分の外形を示す図である。
【
図5】
図5は、第1板状体の形成について説明する説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態2にかかる冷却部材の断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態3にかかる冷却部材の一部拡大断面図であって、実施形態1の
図8に相当する図である。
【
図12】
図12は、実施形態4にかかる冷却部材の一部拡大断面図であって、実施形態1の
図8に相当する図である。
【
図13】
図13は、実施形態5にかかる冷却部材の一部拡大断面図であって、
図4のB-B断面に相当する断面を含む図である。
【
図14】
図14は、実施形態6にかかる第1板状体の一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)本開示の冷却部材は、熱媒体が流れる流路が内部に形成された冷却部材であって、前記冷却部材は、板状体が第1方向に複数重ねられて接合されたものであり、前記流路は、第1流路を含み、前記第1流路を構成する内壁は、前記第1方向に直交する第1面と、前記第1方向に直交し、前記第1面と前記第1方向に対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する側面と、を備え、複数の前記板状体は、前記第1方向について前記第1面と前記第2面との間に配され、前記第1方向に連続して重ねられる複数の第1板状体を含み、各前記第1板状体は、前記側面の一部を構成する側壁部を備え、前記側面は、前記第1方向に隣接する2つの前記側壁部の境界部分に形成され、前記流路の延びる方向から見た断面形状が段差状、またはV字状をなすエッジ部を有する。
【0011】
このような構成によると、流路を構成する内壁はエッジ部を有するから、流路を流れる熱媒体をエッジ部により整流することができる。よって、熱媒体の流量を増加させ、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
また、エッジ部が設けられることにより、流路を構成する内壁の表面積を大きくすることができるから、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0012】
(2)(1)に記載の冷却部材において、前記流路は、前記第1流路に加えて、前記第1流路と前記第1方向に並んで配される第2流路をさらに有し、前記複数の板状体は、前記第1方向について前記第1流路と前記第2流路との間に配される少なくとも1つの第2板状体をさらに含むことが好ましい。
【0013】
このような構成によると、第1流路と第2流路とが連通する場合と比較して、流路を構成する内壁の表面積を大きくすることができる。よって、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の冷却部材において、前記側壁部は、テーパー形状をなし、前記第1方向の一方側から他方側に向かうにつれて、前記流路の幅が減少または増大していることが好ましい。
【0015】
このような構成によると、流路の内壁にエッジ部を形成しやすくなる。
【0016】
(4)(3)に記載の冷却部材において、前記側面は、前記第1方向に隣接する3つの前記側壁部と、複数の前記エッジ部と、を備え、前記3つの側壁部は、前記第1方向について最も前記第1面側に配される第1側壁部と、前記第1方向について最も前記第2面側に配される第3側壁部と、前記第1方向について前記第1側壁部と前記第3側壁部の間に配される第2側壁部とを備え、前記複数のエッジ部は、前記第1側壁部と前記第2側壁部との境界部分に形成される第1エッジ部と、前記第2側壁部と前記第3側壁部との境界部分に形成される第2エッジ部と、を備え、前記第1エッジ部と前記第2エッジ部とは、前記流路の幅方向について異なる位置に配されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によると、流路の幅方向について異なる位置に複数のエッジ部を設けることができる。よって、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0018】
(5)(1)から(3)のいずれかに記載の冷却部材において、前記側面は、前記第1方向に隣接する3つの前記側壁部を備え、前記3つの側壁部は、前記第1方向について最も前記第1面側に配される第1側壁部と、前記第1方向について最も前記第2面側に配される第3側壁部と、前記第1方向について前記第1側壁部と前記第3側壁部の間に配される第2側壁部とを備え、前記第2側壁部は、前記第1側壁部及び前記第3側壁部と比較して、前記流路の幅方法について前記流路の内方に配されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、3つの側壁部により凹凸構造を形成し、流路を構成する内壁の表面積を大きくすることができる。よって、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0020】
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の冷却部材において、前記流路を構成する内壁は、前記流路の延びる方向に交差するステップ面を備え、前記ステップ面は、前記流路の延びる方向にずれて配される前記第1面同士または前記第2面同士を接続し、前記流路の延びる方向において前記ステップ面の前後で前記流路の前記第1方向における寸法が異なっていることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、例えば熱媒体が流路を流れる方向においてステップ面の前後で流路の第1方向における寸法が小さくなるようにした場合、熱媒体がステップ面を通過することで熱媒体の流速を大きくすることができる。したがって、ステップ面の近傍の領域において、冷却部材と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0022】
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の冷却部材において、前記複数の板状体は、窒化アルミニウム、炭化珪素およびチタン化合物を含む複合材料からなることが好ましい。
【0023】
このような構成によると、冷却部材の熱伝導性を向上させることができる。
【0024】
(8)本開示の保持装置は、(1)から(7)のいずれかに記載の冷却部材と、対象物を保持する保持面を有する保持部材と、前記冷却部材と前記保持部材とを接合する接合部と、を備え、前記冷却部材を構成する材料の熱膨張係数と前記保持部材を構成する材料の熱膨張係数との差は、0.3×10-6/K以内である。
【0025】
このような構成によると、冷却部材と保持部材との熱膨張率が同程度となるから、冷却部材と保持部材とを接合する接合部として、柔軟な樹脂材料を用いなくてもよい。よって、樹脂材料よりも熱伝導性に優れた材料を接合部に使用することで、保持装置の熱伝導性を向上させることができる。
【0026】
(9)本開示の冷却部材の製造方法は、流路が内部に形成された冷却部材の製造方法であって、主としてセラミックス材料から構成される焼結体または仮焼体に貫通孔となる部分の外形に沿って切れ目を入れて前記貫通孔を形成することで板状体を形成する板状体形成工程と、複数の前記板状体を前記第1方向に重ねて接合し、複数の前記貫通孔を連通させて前記流路を形成する接合工程と、を含む。
【0027】
このような冷却部材の製造方法によると、例えば、セラミックス材料からなるグリーンシートを積層した後、当該積層体を焼成して冷却部材を製造する場合と比較して、流路を構成する内壁にエッジ部や凹凸構造、段差構造等をより明確に形成しやすい。したがって、冷却部材と流路を流れる熱媒体との熱交換の効率を高めやすい。
また、上記の製造方法によれば、例えば、冷却部材を主として構成するセラミックス材料の硬度が高い場合に、冷却部材の流路を簡便に形成しやすい。
【0028】
(10)(9)に記載の冷却部材の製造方法において、前記接合工程では、前記複数の板状体をロウ付けにより接合することが好ましい。
【0029】
このような冷却部材の製造方法によると、板状体の接合強度を向上させ、流路の密閉性を向上させることができる。
【0030】
(11)(8)または(9)に記載の冷却部材の製造方法において、前記板状体形成工程では、前記貫通孔内に配される中州部をさらに備える前記板状体を形成することが好ましい。
【0031】
このような冷却部材の製造方法によると、中州部により流路に迂回路を設けることができる。したがって、例えば、冷却部材と組み合わせて用いられる他部材との位置関係に応じて、流路を設計しやすくなる。
【0032】
[本開示の実施形態1の詳細]
本開示の実施形態1について、
図1から
図8を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。本明細書では、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向、XY平面方向を水平方向として、冷却部材及び保持装置の構成を説明するが、冷却部材及び保持装置の実際の使用態様においてはこれと異なる配置であってもよい。また、本明細書において、「直交」は実質的に直交と認識される態様の配置も含まれるものとする。
【0033】
<静電チャック>
本開示の保持装置は、半導体ウェハ、ガラス基板等の対象物(以下「ウェハW」という)を吸着保持できる静電チャック100である。静電チャック100は、例えば、図示しない半導体製造装置の処理チャンバに取り付けられ、プラズマを用いてウェハWに対する各処理(成膜、エッチング等)を行うために用いられる。
【0034】
静電チャック100は、
図1に示すように、保持部材10と、冷却部材20と、保持部材10と冷却部材20とを接合する接合部40と、を備える。静電チャック100は、ウェハWを静電引力により吸着保持できるようになっている。
【0035】
<保持部材>
保持部材10は、全体として円盤状をなし、例えば、300mm程度の直径と5mm程度の厚みをもった形状に成形することができる。保持部材10は絶縁性の基板であって、例えば、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al2O3)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する(以下同じ)。
【0036】
保持部材10の上面は、Z軸方向に直交する第1表面S1とされている。第1表面S1は円形状の平面であり、ウェハWを保持する吸着面として機能する。
図2に示すように、保持部材10において、第1表面S1と反対側に配される面(すなわち下面)は第2表面S2とされている。第2表面S2は、接合部40を介して冷却部材20と接合されている。
【0037】
保持部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極50が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極50の形状は、例えば略円形である。チャック電極50に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが保持部材10の第1表面S1に吸着固定される。また、保持部材10の内部には、必要に応じてチャック電極50以外の電極(例えばヒーター等)を設けてもよい。
【0038】
上記構成の保持部材10は、例えば、セラミックスからなるグリーンシートを複数枚作製し、所定のグリーンシートにビア孔の形成やメタライズペーストの充填および印刷等の加工を行い、これらのグリーンシートを熱圧着し、切断等の加工を行った上で焼成することにより作製することができる。
【0039】
<冷却部材>
冷却部材20は、円盤状の部材であり、例えば、XY平面方向の寸法(直径)を340mm程度、Z軸方向の寸法(厚み)を35mm程度とする形状に成形することができる。
図2に示すように、冷却部材20は、保持部材10側に配される第3表面S3と、第3表面S3と反対側に配される第4表面S4と、を有する。第3表面S3は冷却部材20の上側に配され、第4表面S4は冷却部材20の下側に配されている。冷却部材20の第3表面S3は、接合部40により保持部材10の第2表面S2に接合されている。
【0040】
<流路>
冷却部材20の内部には、内部を冷媒(熱媒体の一例)が流れる流路30が設けられている。流路30は図示しない冷媒循環装置に接続されている。冷媒循環装置は、フッ素系不活性液体、水等の冷媒を流路30に循環可能に構成されている。流路30に冷媒が流されると、冷却部材20が冷却され、接合部40を介した冷却部材20と保持部材10との間の伝熱(熱引き)により、保持部材10が冷却され、保持部材10の第1表面S1で保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度を制御できる。
【0041】
<接合部>
接合部40は、冷却部材20の第3表面S3と保持部材10の第2表面S2とを接合している。一般に静電チャックの接合部には、保持部材と冷却部材との熱膨張差を緩和するため、柔軟な樹脂材料が用いられることが多い。しかし、本実施形態では、冷却部材20を構成する材料の熱膨張係数と保持部材10を構成する材料の熱膨張係数との差は、0.3×10-6/K以内とされている。このため、冷却部材20と保持部材10とを接合する接合部40として、樹脂材料を用いなくてもよい。すなわち、冷却部材20と保持部材10とを固体接合した場合でも、熱膨張によって冷却部材20から保持部材10が剥がれることを抑制することができる。本実施形態の接合部40は、樹脂材料よりも熱伝導性に優れた材料(例えば、金属やセラミックス)により構成されている。したがって、静電チャック100の熱伝導性を向上させることができる。
【0042】
<板状体>
図7に示すように、冷却部材20は、複数の板状体21がZ軸方向(第1方向の一例)に複数重ねられて接合されたものである。板状体21は、窒化アルミニウム、炭化珪素およびチタン化合物を含む複合材料を主成分として構成されている。ここで、チタン化合物とは、例えば、珪化チタン、チタンシリコンカーバイド、炭化チタン等を含む。このような構成によれば、保持部材10と近い熱膨張係数を有し、熱伝導に優れた冷却部材20を得ることができる。
【0043】
板状体21は、Z軸方向に扁平な板状をなしている。板状体21の平面視形状は、例えば略円形状である。複数の板状体21は、天井板22と、底板23と、複数(実施形態1では3つ)の第1板状体24と、を備えている。底板23には、Z軸方向に底板23を貫通する導入孔23A及び導出孔23Bが形成されている。導入孔23A及び導出孔23Bの平面視形状は例えば略円形である。
図2に示すように、天井板22は、複数の板状体21のうちZ軸方向について最も保持部材10側に配されている。すなわち、天井板22の上面は第3表面S3である。底板23は、複数の板状体21のうちZ軸方向について最も保持部材10から離間して配されている。すなわち、底板23の下面は第4表面S4である。第1板状体24はZ軸方向について天井板22と底板23との間に配されている。
【0044】
<第1板状体>
図6に示すように、第1板状体24には、Z軸方向に第1板状体24を貫通する貫通孔25が形成されている。
図4に示すように、貫通孔25は平面視において、例えばスパイラル状に延びている。第1板状体24は、貫通孔25を構成する内壁として、一対の側壁部26と接続壁部27とを備える。一対の側壁部26は貫通孔25の延びる方向と直交する幅方向に対向している。接続壁部27は、貫通孔25の延びる方向の端部において一対の側壁部26を幅方向に接続している。
【0045】
板状体21は、セラミックス(本実施形態では前述の複合材料)を主成分とする焼結体または仮焼体(以下、加工前板材21Aという)を用いて形成されている。詳細には、レーザー加工やウォータージェット加工等により、加工前板材21Aに孔を形成することで、板状体21が形成されている。ここでいう孔とは、第1板状体24の貫通孔25、底板23の導入孔23A及び導出孔23B、各種端子を挿通するための端子用孔(図示しない)、ウェハWを持ち上げるためのリフトピンを挿通するためのリフトピン用孔(図示しない)等を含む。加工前板材21Aの厚みは、レーザー加工やウォータージェット加工等により孔を形成することが容易であることや製造コストを考慮して決められる。
【0046】
本実施形態にかかる第1板状体24においては、レーザー加工により貫通孔25が形成されている。
図3に示すように、貫通孔25となる部分の外形OL1に沿って加工前板材21Aにレーザー光が照射され、切れ目が入れられる。これにより、
図5に示すように、貫通孔25を有する第1板状体24と、貫通孔25の中身に相当する端材21Bと、が得られる。一般にレーザー加工により設けられた孔の孔径は、レーザー光の光源に近い側において大きくなる。よって、
図6に示すように、第1板状体24において、貫通孔25の幅方向の寸法は、図示上方から図示下方へ向かうにつれて、減少している。言い換えると、側壁部26はテーパー形状をなしている。
【0047】
図7に示すように、冷却部材20は、複数の板状体21がZ軸方向に重ねて接合されることで形成されている。本実施形態では、複数の板状体21はロウ付けにより接合されている。ロウ付けに使用されるロウ材は、例えばアルミニウム等の金属を主成分として構成されている。複数の板状体21が接合されることで、複数の貫通孔25、導入孔23A及び導出孔23Bが連通され、流路30が形成される。流路30は、導入孔23Aから複数の貫通孔25を通じて、導出孔23Bへと一続きに設けられている。
【0048】
以上のように、本実施形態の冷却部材20の製造方法は、加工前板材21Aに貫通孔25等の孔を形成し、板状体21を得る板状体形成工程と、複数の板状体21を接合する接合工程と、を含む。本実施形態とは異なり、予め成形したグリーンシートを積層し、この積層体を焼成することで冷却部材を製造する場合、焼成の際に流路を構成する内壁の形状が変化することが考えられる。しかし、本実施形態では、焼成または仮焼を終えた加工前板材21Aに貫通孔25等の孔が形成されるため、グリーンシートによる製造方法と比較して、流路30の形状をより精密に設計することができる。
【0049】
<第1流路>
図7に示すように、流路30は、複数の貫通孔25が連通して構成される第1流路31を有する。
図8に示すように、第1流路31を構成する内壁は、Z軸方向に直交する第1面31Aと、Z軸方向に直交し、第1面31AとZ軸方向に対向する第2面31Bと、第1面31Aと第2面31Bとを接続する側面31Cと、を備える。第1面31Aは第1流路31の上側の内壁であり、天井板22の下面の一部である。第2面31Bは第1流路31の下側の内壁であり、底板23の上面の一部である。側面31Cは、Z軸方向に連なる複数の側壁部26を備えて構成されている。
【0050】
<エッジ部>
側面31Cは、隣接する2つの側壁部26の境界部分に形成されるエッジ部31Dを有する。流路30の延びる方向から見たエッジ部31Dの断面形状は段差状となっている。エッジ部31Dは流路30の延びる方向に筋状に延びている。このため、流路30を流れる冷媒をエッジ部31Dにより整流することができる。よって、冷媒の流量を増加させ、冷却部材20と冷媒との熱交換の効率を向上させることができる。また、エッジ部31Dにより、側面31Cには凹凸形状が設けられ、流路30を構成する内壁の表面積が大きくなる。よって、冷却部材20と冷媒との熱交換の効率を向上させることができる。
【0051】
<実施形態1の効果>
以上のように、実施形態1の冷却部材20は、熱媒体(冷媒)が流れる流路30が内部に形成された冷却部材20であって、冷却部材20は、板状体21が第1方向(Z軸方向)に複数重ねられて接合されたものであり、流路30は、第1流路31を含み、第1流路31を構成する内壁は、第1方向に直交する第1面31Aと、第1方向に直交し、第1面31Aと第1方向に対向する第2面31Bと、第1面31Aと第2面31Bとを接続する側面31Cと、を備え、複数の板状体21は、第1方向について第1面31Aと第2面31Bとの間に配され、第1方向に連続して重ねられる複数の第1板状体24を含み、各第1板状体24は、側面31Cの一部を構成する側壁部26を備え、側面31Cは、第1方向に隣接する2つの側壁部26の境界部分に形成され、流路30の延びる方向から見た断面形状が段差状をなすエッジ部31Dを有する。
【0052】
このような構成によると、流路30を構成する内壁はエッジ部31Dを有するから、流路30を流れる熱媒体をエッジ部31Dにより整流することができる。よって、熱媒体の流量を増加させ、冷却部材20と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
また、エッジ部31Dが設けられることにより、流路30を構成する内壁の表面積を大きくすることができるから、冷却部材20と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0053】
実施形態1では、側壁部26は、テーパー形状をなし、第1方向の一方側から他方側に向かうにつれて、流路30の幅が減少または増大している。
【0054】
このような構成によると、流路30の内壁にエッジ部31Dを形成しやすくなる。
【0055】
実施形態1では、複数の板状体21は、窒化アルミニウム、炭化珪素およびチタン化合物を含む複合材料からなる。
【0056】
このような構成によると、冷却部材20の熱伝導性を向上させることができる。
【0057】
複合材料において、窒化アルミニウムの含有量は、30質量%以上50質量%以下であり、炭化珪素の含有量は、1質量%以上10質量%以下であってもよい。この構成によれば、複合材料において、窒化アルミニウムは、炭化珪素に比べ、約3倍以上含まれることとなる。これにより、窒化アルミニウムの固溶体がさらに形成されやすくなるため、炭化珪素の粒子間の隙間がさらに少なくなり、熱がさらに伝わりやすくなる。したがって、複合材料の熱伝導性をさらに向上させることができる。
複合材料は、チタン化合物(例えば珪化チタンTiSi2)を含むため、窒化アルミニウムと炭化珪素とから形成される複合材料の熱膨張係数を制御することができる。好ましくは、チタン化合物を25質量%以上45質量%以下含む。これにより、例えば、高温となる他の部材と、複合材料から構成される冷却部材20とを接合させて、冷却部材20を放熱部材として利用する場合、熱膨張の違いによって、他の部材が冷却部材20から剥離することを抑制できる。これにより、冷却部材20は、他の部材の熱を効率的に逃がす(抜熱する)ことができるとともに、他の部材との接合状態を維持することができる。
また、複合材料において、熱伝導率は、80W/(m・K)以上であってもよい。この構成によれば、複合材料の内部において、炭化珪素の粒子の間に窒化アルミニウムの固溶体が形成されることで、複合材料の熱伝導率を、80W/(m・K)以上とすることができる。
【0058】
実施形態1の保持装置(静電チャック100)は、冷却部材20と、対象物(ウェハW)を保持する保持面(第1表面S1)を有する保持部材10と、冷却部材20と保持部材10とを接合する接合部40と、を備え、冷却部材20を構成する材料の熱膨張係数と保持部材10を構成する材料の熱膨張係数との差は、0.3×10-6/K以内である。
【0059】
このような構成によると、冷却部材20と保持部材10との熱膨張率が同程度となるから、冷却部材20と保持部材10とを接合する接合部40として、柔軟な樹脂材料を用いなくてもよい。よって、樹脂材料よりも熱伝導性に優れた材料を接合部40に使用することで、保持装置の熱伝導性を向上させることができる。
【0060】
実施形態1の冷却部材20の製造方法は、流路30が内部に形成された冷却部材20の製造方法であって、主としてセラミックス材料から構成される焼結体または仮焼体(加工前板材21A)に貫通孔25となる部分の外形OL1に沿って切れ目を入れて貫通孔25を形成することで板状体21を形成する板状体形成工程と、複数の板状体21を第1方向に重ねて接合し、複数の貫通孔25を連通させて流路30を形成する接合工程と、を含む。
【0061】
このような冷却部材20の製造方法によると、例えば、セラミックス材料からなるグリーンシートを積層した後、当該積層体を焼成して冷却部材を製造する場合と比較して、流路30を構成する内壁にエッジ部31Dや凹凸構造、段差構造等をより明確に形成しやすい。したがって、冷却部材20と流路30を流れる熱媒体との熱交換の効率を高めやすい。
また、上記の製造方法によれば、例えば、冷却部材20を主として構成するセラミックス材料の硬度が高い場合に、冷却部材20の流路30を簡便に形成しやすい。
【0062】
実施形態1の冷却部材20の製造方法において、接合工程では、複数の板状体21をロウ付けにより接合することが好ましい。
【0063】
このような冷却部材20の製造方法によると、板状体21の接合強度を向上させ、流路30の密閉性を向上させることができる。
【0064】
[本開示の実施形態2の詳細]
本開示の実施形態2について、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。実施形態2の冷却部材120は第1流路131の側面131Cの構成を除いて、実施形態1の冷却部材20と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の部材に対しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、冷却部材120の内部には流路130が形成されており、流路130は第1流路131を含んでいる。第1流路131を構成する内壁には、第1面31Aと、第2面31Bと、第1面31Aと第2面31Bとを接続する側面131Cと、が含まれる。
【0066】
冷却部材120は、Z軸方向に重ねて接合された3つの第1板状体124を備えている。3つの第1板状体124は、Z軸方向について最も天井板22側に配される上側第1板状体124Aと、Z軸方向について最も底板23側に配される下側第1板状体124Cと、Z軸方向について上側第1板状体124Aと下側第1板状体124Cの間に配される中間第1板状体124Bと、を含む。上側第1板状体124Aは、貫通孔125Aと、一対の第1側壁部126Aと、を有する。中間第1板状体124Bは、貫通孔125Bと、一対の第2側壁部126Bと、を有する。下側第1板状体124Cは、貫通孔125Cと、一対の第3側壁部126Cと、を有する。貫通孔125A,125B,125Cの幅寸法は略同一に形成されている。
【0067】
一対の第1側壁部126A及び一対の第3側壁部126Cは、Z軸方向について図示上方から図示下方に向かうにつれて、互いに近づくように傾斜するテーパー形状を有する。貫通孔125A,125Cの幅方向の寸法は、Z軸方向について図示上方から図示下方に向かうにつれて、減少している。一方、一対の第2側壁部126Bは、Z軸方向について図示上方から図示下方に向かうにつれて、互いに離間するように傾斜するテーパー形状を有する。貫通孔125Bの幅方向の寸法は、Z軸方向について図示上方から図示下方に向かうにつれて、増大している。
【0068】
図10に示すように、側面131Cは、3つの側壁部126(第1側壁部126A、第2側壁部126B、第3側壁部126C)及び複数のエッジ部131Dを備える。複数のエッジ部131Dは、第1エッジ部131D1と、第2エッジ部131D2と、を備える。第1エッジ部131D1は、第1側壁部126Aと第2側壁部126Bとの境界部分に形成されている。第1エッジ部131D1は、第1流路131の内方に向かって山形状に突出している。第1流路131の延びる方向から見た場合の第1エッジ部131D1の断面形状はV字状をなしている。第2エッジ部131D2は、第2側壁部126Bと第3側壁部126Cとの境界部分に形成されている。第2エッジ部131D2は、第1流路131の外方に向かって谷形状に凹んでいる。第1流路131の延びる方向から見た場合の第2エッジ部131D2の断面形状はV字状をなしている。第1エッジ部131D1は、幅方向について第2エッジ部131D2より第1流路131の内方に配されている。
【0069】
<実施形態2の効果>
【0070】
実施形態2の冷却部材120において、側面131Cは、第1方向に隣接する3つの側壁部126と、複数のエッジ部131Dと、を備え、3つの側壁部126は、第1方向について最も第1面31A側に配される第1側壁部126Aと、第1方向について最も第2面31B側に配される第3側壁部126Cと、第1方向について第1側壁部126Aと第3側壁部126Cの間に配される第2側壁部126Bとを備え、複数のエッジ部131Dは、第1側壁部126Aと第2側壁部126Bとの境界部分に形成される第1エッジ部131D1と、第2側壁部126Bと第3側壁部126Cとの境界部分に形成される第2エッジ部131D2と、を備え、第1エッジ部131D1と第2エッジ部131D2とは、流路130の幅方向について異なる位置に配されている。
【0071】
このような構成によると、流路130の幅方向について異なる位置に複数のエッジ部131Dを設けることができる。よって、冷却部材120と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0072】
[本開示の実施形態3の詳細]
本開示の実施形態3について、
図11を参照しつつ説明する。実施形態3の冷却部材220は第1流路231の側面231Cの構成を除いて、実施形態1の冷却部材20と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の部材に対しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
冷却部材220の内部には流路230が形成されており、流路230は第1流路231を含んでいる。第1流路231を構成する内壁には、第1面31Aと、第2面31Bと、第1面31Aと第2面31Bとを接続する側面231Cと、が含まれる。
【0074】
冷却部材220は、Z軸方向に重ねて接合された3つの第1板状体224を備えている。3つの第1板状体224は、Z軸方向について最も天井板22側に配される上側第1板状体224Aと、Z軸方向について最も底板23側に配される下側第1板状体224Cと、Z軸方向について上側第1板状体224Aと下側第1板状体224Cの間に配される中間第1板状体224Bと、を含む。上側第1板状体224Aは、貫通孔225Aと、一対の第1側壁部226Aと、を有する。中間第1板状体224Bは、貫通孔225Bと、一対の第2側壁部226Bと、を有する。下側第1板状体224Cは、貫通孔225Cと、一対の第3側壁部226Cと、を有する。貫通孔225A,225Cの幅寸法は略同一に形成されている。貫通孔225Bの幅寸法は、貫通孔225A,225Cの幅寸法より小さく設定されている。第2側壁部226Bは、幅方向について第1側壁部226A及び第3側壁部226Cより流路230の内方に配されている。これにより、側面231Cには、段差状のエッジ部231Dが設けられ、凹凸構造が形成される。
【0075】
<実施形態3の効果>
実施形態3の冷却部材220において、側面231Cは、第1方向に隣接する3つの側壁部226を備え、3つの側壁部226は、第1方向について最も第1面31A側に配される第1側壁部226Aと、第1方向について最も第2面31B側に配される第3側壁部226Cと、第1方向について第1側壁部226Aと第3側壁部226Cの間に配される第2側壁部226Bとを備え、第2側壁部226Bは、第1側壁部226A及び第3側壁部226Cと比較して、流路230の幅方法について流路230の内方に配されている。
【0076】
このような構成によると、3つの側壁部226により凹凸構造を形成し、流路230を構成する内壁の表面積を大きくすることができる。よって、冷却部材220と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0077】
[本開示の実施形態4の詳細]
本開示の実施形態4について、
図12を参照しつつ説明する。実施形態4の冷却部材320は第1板状体324に加えて第2板状体328を備える点を除いて、実施形態1の冷却部材20と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の部材に対しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
冷却部材320の内部には流路330が形成されている。流路330は第1流路331と第2流路332とを含む。第2流路332はZ軸方向について第1流路331と並んで配置されている。第1流路331は、第2流路332より上側(天井板22側)に配されている。
【0079】
冷却部材320は、複数の板状体321が接合されて構成されている。複数の板状体321は、天井板22と、底板23と、3つの第1板状体324と、第2板状体328と、を含む。第2板状体328の下側には1つの第1板状体324が配されている。第2板状体328の上側にはZ軸方向に連続する2つの第1板状体324が配されている。第2板状体328は、Z軸方向に隣接する第1板状体324の貫通孔325を閉じる隔壁部328Aを備える。
【0080】
第1流路331は、第1面31Aと第2面331Bと側面331Cとから構成されている。第2面331Bは第2板状体328の隔壁部328Aの上面である。側面331Cは、Z軸方向に並んで配される2つの側壁部326と、エッジ部331Dと、を備える。第2流路332は、隔壁部328Aの下面と、第1板状体324の側壁部326と、底板23の上面と、から構成されている。
【0081】
<実施形態4の効果>
実施形態4の冷却部材320において、流路330は、第1流路331に加えて、第1流路331と第1方向に並んで配される第2流路332をさらに有し、複数の板状体321は、第1方向について第1流路331と第2流路332との間に配される少なくとも1つの第2板状体328をさらに含む。
【0082】
このような構成によると、第1流路331と第2流路332とが連通する場合(例えば実施形態1の
図8の場合)と比較して、流路330を構成する内壁の表面積を大きくすることができる。よって、冷却部材320と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0083】
[本開示の実施形態5の詳細]
本開示の実施形態5について、
図13を参照しつつ説明する。実施形態5の冷却部材420はステップ面433を備える点を除いて、実施形態1の冷却部材20と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の部材に対しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
図13は、実施形態5の流路430(第1流路431)が延びる方向に冷却部材420を切断した断面を表している。
図13は、例えば、
図4におけるB-B断面において冷却部材420を切断した場合の断面に相当する。第1流路431を構成する内壁は、第1面31Aと、第1流路431の延びる方向について異なる位置に配される3つの第2面431B1,431B2,431B3と、側面431Cと、ステップ面433と、を含む。第2面431B1は底板23の上面の一部である。第2面431B2,431B3は次述する第1板状体424C,424Dの上面の一部である。ステップ面433は、第1流路431の延びる方向に交差する面とされている。ステップ面433は、第2面431B1と第2面431B2とを接続する第1ステップ面433Aと、第2面431B2と第2面431B3とを接続する第2ステップ面433Bと、を有する。
【0085】
冷却部材420は、4つの第1板状体424を備える。4つの第1板状体424は、天井板22から底板23に向かって第1板状体424A,424B,424C,424Dの順で重ねて接合されている。側面431Cは、第1板状体424A,424B,424C,424Dの側壁部426A,426B,426C,426Dを備える。底板23側に配される2つの第1板状体424C,424Dは、
図13の図示範囲において、それぞれ一対の側壁部426C,426Dを接続する接続壁部427C,427Dを備える(
図4の接続壁部27を参照)。接続壁部427Cは第1ステップ面433Aである。接続壁部427Dは第2ステップ面433Bである。
【0086】
第1流路431は、図示右側において、図示左側よりもZ軸方向に幅狭になっている。詳細には、図示右端部の第1流路431のZ軸方向における寸法L3(第1面31Aと第2面431B3との間隔)は、図示中央部における第1流路431のZ軸方向における寸法L2(第1面31Aと第2面431B2との間隔)よりも小さくなっている。また、図示中央部における第1流路431のZ軸方向における寸法L2(第1面31Aと第2面431B2との間隔)は、図示左端部における第1流路431のZ軸方向における寸法L1(第1面31Aと第2面431B1との間隔)より小さくなっている。これにより、図示左側から図示右側へと冷媒が第1流路431を通過する場合、冷媒の流速が大きくなる。よって、ステップ面433の近傍において、熱交換効率を高めることができる。
【0087】
<実施形態5の効果>
実施形態5の冷却部材420において、流路430を構成する内壁は、流路430の延びる方向に交差するステップ面433を備え、ステップ面433は、流路430の延びる方向にずれて配される第2面431B1,431B2同士及び第2面431B2,431B3同士を接続し、流路430の延びる方向においてステップ面433の前後で流路430の第1方向における寸法が異なっている。
【0088】
このような構成によると、例えば熱媒体が流路430を流れる方向においてステップ面433の前後で流路430の第1方向における寸法が小さくなるようにした場合、熱媒体がステップ面433を通過することで熱媒体の流速を大きくすることができる。したがって、ステップ面433の近傍の領域において、冷却部材420と熱媒体との熱交換の効率を向上させることができる。
【0089】
[本開示の実施形態6の詳細]
本開示の実施形態6について、
図14及び
図15を参照しつつ説明する。実施形態6の冷却部材520は、第1板状体524が中州部529を備える点を除いて、実施形態1の冷却部材20と同様に構成されている。以下、実施形態1と同一の部材に対しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
図14に示すように、第1板状体524は貫通孔525の内部に配される中州部529を備える。中州部529には、中州部529を上下方向に貫通する中州内貫通孔529Aが形成されている。中州部529は、加工前板材21Aに貫通孔525を形成して得られる端材21Bをさらに加工することにより形成することができる(
図5参照)。中州部529を設けることにより、冷却部材520の流路530に迂回路530A,530Bを形成することができる。
【0091】
図15に示すように、冷却部材520を構成する複数の板状体521は、天井板522と、底板523と、3つの第1板状体524と、を含んでいる。天井板522は、中州内貫通孔529Aに対応する位置に、天井板522を上下方向に貫通する連通孔522Aを有する。底板523は、中州内貫通孔529Aに対応する位置に、底板523を上下方向に貫通する連通孔523Cを有する。よって、冷却部材520は、中州内貫通孔529A及び連通孔522A,523Cが連通することで形成される挿通孔H1を有する。挿通孔H1は冷却部材20を上下方向に貫通している。挿通孔H1は、例えば、各種端子を挿通するための端子用孔や、リフトピンを挿通するためのリフトピン用孔として使用することができる。したがって、中州部529及び挿通孔H1を設けることにより、端子やリフトピン等の他部材と冷却部材520との相対配置を変更することなく、流路530を設計することができる。
【0092】
<実施形態6の効果>
実施形態6の冷却部材520の製造方法において、板状体形成工程では、貫通孔525内に配される中州部529をさらに備える板状体521(第1板状体524)を形成する。
【0093】
このような冷却部材520の製造方法によると、中州部529により流路530に迂回路530A,530Bを設けることができる。したがって、例えば、冷却部材520と組み合わせて用いられる他部材との位置関係に応じて、流路530を設計しやすくなる。
【0094】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態1~6に限らず、第1流路の側面が備えるエッジ部の数及び側壁部の数は適宜変更してもよい(ただし側壁部は2つ以上)。
【0095】
(2)上記実施形態1では、側壁部26はテーパー形状をなしていたが、側壁部はテーパー形状でなくてもよい。
【0096】
(3)上記実施形態1では、流路30は平面視においてスパイラル状に延びていたが、流路の平面視における形状は他の形状であってもよい。流路が細長く延びている形態であればよい。
【0097】
(4)上記実施形態4では、第2流路332を構成する内壁はテーパー形状の側壁部326を備え、エッジ部を備えない構成であったが、第2流路を構成する内壁の形状は適宜変更してもよい。
【0098】
(5)上記実施形態5では、第1ステップ面433Aは第2面431B1,431B2同士を接続し、第2ステップ面433Bは第2面431B2,431B3同士を接続していたが、ステップ面は第1面同士を接続する態様であってもよい。また、ステップ面の数は適宜変更してもよい。
【0099】
(6)上記実施形態6では、中州部529は中州内貫通孔529Aを有していたが、中州部は中州内貫通孔を有しなくてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10…保持部材
20,120,220,320,420,520…冷却部材
21,321,521…板状体 21A…加工前板材 21B…端材
22,522…天井板 522A…連通孔
23,523…底板 23A…導入孔 23B…導出孔 523C…連通孔
24,124,224,324,424,424A,424B,424C,424D,524…第1板状体 124A,224A…上側第1板状体 124B,224B…中間第1板状体 124C,224C…下側第1板状体 25,125A,125B,125C,225A,225B,225C,325,525…貫通孔 26,126,226,326,426A,426B,426C,426D…側壁部 126A,226A…第1側壁部 126B,226B…第2側壁部 126C,226C…第3側壁部 27,427C,427D…接続壁部 328…第2板状体 328A…隔壁部 529…中州部 529A…中州内貫通孔
30,130,230,330,430,530…流路 530A,530B…迂回路 31,131,231,331,431…第1流路 31A…第1面 31B,331B,431B1,431B2,431B3…第2面 31C,131C,231C,331C,431C…側面 31D,131D,231D,331D…エッジ部 131D1…第1エッジ部 131D2…第2エッジ部 332…第2流路 433…ステップ面
433A…第1ステップ面 433B…第2ステップ面
40…接合部 50…チャック電極
100…静電チャック
H1…挿通孔 L1,L2,L3…第1流路のZ軸方向における寸法 OL1…外形 S1…第1表面 S2…第2表面 S3…第3表面 S4…第4表面
W…ウェハ