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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122100
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/032 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B65H23/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029446
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】前田 和紀
【テーマコード(参考)】
3F104
【Fターム(参考)】
3F104CA09
3F104CA17
(57)【要約】
【課題】基材の幅方向における端部の位置を調節することができる搬送装置を提供することを目的としている。
【解決手段】帯状の基材を基材の長手方向に向かって搬送する搬送部と、前記搬送部による基材の搬送を補助し、前記搬送部により搬送される基材の所定面をベルト部材に形成された吸着部に吸着させた状態で前記ベルト部材を走行させることによって、基材をその基材が吸着されている前記吸着部の進行方向に送る少なくとも一組のコンベアユニットと、を備えた搬送装置であって、前記一組の前記コンベアユニットは、基材の幅方向における基材の両端部の近傍で基材の前記所定面を前記ベルト部材の前記吸着部に吸着させるよう配置されており、前記一組の前記コンベアユニットには、各々の前記ベルト部材の前記吸着部の進行方向を調節する進行方向調節部が設けられている構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材を基材の長手方向に向かって搬送する搬送部と、
前記搬送部による基材の搬送を補助し、前記搬送部により搬送される基材の所定面をベルト部材に形成された吸着部に吸着させた状態で前記ベルト部材を走行させることによって、基材をその基材が吸着されている前記吸着部の進行方向に送る少なくとも一組のコンベアユニットと、を備えた搬送装置であって、
前記一組の前記コンベアユニットは、基材の幅方向における基材の両端部の近傍で基材の前記所定面を前記ベルト部材の前記吸着部に吸着させるよう配置されており、
前記一組の前記コンベアユニットには、各々の前記ベルト部材の前記吸着部の進行方向を調節する進行方向調節部が設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
基材の幅方向における両端部の位置を検出する端部位置検出部をさらに備え、
前記進行方向調節部は、前記端部位置検出部による検出結果に基づいて前記吸着部の進行方向を調節することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記進行方向調節部は、前記吸着部の進行方向が基材の幅方向において前記搬送部による基材の搬送方向よりも外側に向くように調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記一組の前記コンベアユニットには、前記進行方向調節部により調節される各々の前記吸着部の進行方向に応じて基材に対する各々の前記吸着部の相対速度を調節する速度調節部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記コンベアユニットを前記搬送部による基材の搬送方向の前後に移動させる第1の移動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記コンベアユニットを基材の前記所定面に接近する方向と離間する方向に移動させる第2の移動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項7】
基材の幅方向における基材の中央部の高さ位置を検出する懸垂量検出部をさらに備え、
前記進行方向調節部は、前記懸垂量検出部による検出結果に基づいて前記吸着部の進行方向を調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の基材を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や銅箔などの帯状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。また、リチウムイオン電池を高容量化させるために、基材の両面に対して厚みが均一な塗膜を形成することが求められている。
【0003】
従来の技術として下記特許文献1には、基材に所定の張力を付与しながら搬送する複数のロールと、基材を吸引して保持することによって基材の搬送を補助する吸引コンベアと、を有する搬送装置により搬送される基材の両面に対してスラリーを塗布して塗膜の形成を行う両面塗工装置が開示されている。
【0004】
この両面塗工装置は、搬送装置が有する複数のロールの一つであるバックアップロールに所定の抱き角をもって巻き付けられた基材と対向するように、基材の表面にスラリーを塗布する第1の塗布部を配置することで、第1の塗布部と基材との間隔を一定に保たせた状態で、基材の表面にスラリーを塗布している。これにより、基材の表面に一定の厚みを有する塗膜が形成される。また、両面塗工装置では、吸引コンベアにより基材の表面側から吸引して保持された基材と対向するように、基材の裏面にスラリーを塗布する第2の塗布部を配置することで、第2の塗布部と基材との間隔を一定に保たせた状態で、基材の裏面にスラリーを塗布している。これにより、基材の裏面に一定の厚みを有する塗膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-040467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記搬送装置では、基材を安定した状態で搬送することができないという問題があった。すなわち、上記搬送装置では、吸引コンベアが基材に形成された未乾燥な状態の塗膜に接触することによって生じる塗膜の不良を防止するため、基材の塗膜が形成されていない部分を吸引して保持することが可能な位置に吸引コンベアを予め固定して配置している。そのため、基材の搬送経路における吸引コンベアの手前側で、形成された塗膜の重さによる基材の懸垂や基材の振動によって基材の幅方向における端部に位置ずれが生じていたとしても、吸引コンベアでは基材の幅方向における端部の位置を調節して正常な位置に戻すことができなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、基材の幅方向における端部の位置を調節することができる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の搬送装置は、帯状の基材を基材の長手方向に向かって搬送する搬送部と、前記搬送部による基材の搬送を補助し、前記搬送部により搬送される基材の所定面をベルト部材に形成された吸着部に吸着させた状態で前記ベルト部材を走行させることによって、基材をその基材が吸着されている前記吸着部の進行方向に送る少なくとも一組のコンベアユニットと、を備えた搬送装置であって、前記一組の前記コンベアユニットは、基材の幅方向における基材の両端部の近傍で基材の前記所定面を前記ベルト部材の前記吸着部に吸着させるよう配置されており、前記一組の前記コンベアユニットには、各々の前記ベルト部材の前記吸着部の進行方向を調節する進行方向調節部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記搬送装置によれば、進行方向調節部によって、基材の幅方向における基材の両端部の近傍で基材の所定面をベルト部材の吸着部に吸着させる一組のコンベアユニットの各々のベルト部材の吸着部の進行方向を調節できるため、この調節された各々のベルト部材の吸着部の進行方向に向かって、基材の端部を引っ張ることができる。これにより、搬送される基材の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【0010】
また、基材の幅方向における両端部の位置を検出する端部位置検出部をさらに備え、前記進行方向調節部は、前記端部位置検出部による検出結果に基づいて前記吸着部の進行方向を調節する構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、進行方向調節部が、端部位置検出部による検出結果に基づいて吸着部の進行方向を調節するため、基材の幅方向における端部の位置の調節をより正確に行うことができる。
【0012】
また、前記進行方向調節部は、前記吸着部の進行方向が基材の幅方向において前記搬送部による基材の搬送方向よりも外側に向くように調節する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、一組のコンベアユニットによって、基材の幅方向における各端部の外側に向かって基材を引っ張ることができるため、基材の懸垂を緩和することができる。
【0014】
また、前記一組の前記コンベアユニットには、前記進行方向調節部により調節される各々の前記吸着部の進行方向に応じて基材に対する各々の前記吸着部の相対速度を調節する速度調節部が設けられている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、速度調節部によって、搬送中の基材が一組のコンベアユニットの各々のベルト部材の吸着部上で詰まることがないように吸着部の進行速度を調節できるため、搬送部による基材の搬送を阻害することなく基材の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【0016】
また、前記コンベアユニットを前記搬送部による基材の搬送方向の前後に移動させる第1の移動機構をさらに備えている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1の移動機構によって、一組のコンベアユニットのそれぞれを基材の搬送方向の前後に移動させることができるため、それぞれのコンベアユニットにより基材の端部を引っ張る方向を広範囲に設定することができる。
【0018】
また、前記コンベアユニットを基材の前記所定面に接近する方向と離間する方向に移動させる第2の移動機構をさらに備えている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、基材の所定面と直交する方向においても基材の位置を調節することができる。
【0020】
基材の幅方向における基材の中央部の高さ位置を検出する懸垂量検出部をさらに備え、
前記進行方向調節部は、前記懸垂量検出部による検出結果に基づいて前記吸着部の進行方向を調節する構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、進行方向調節部が、懸垂量検出部による検出結果に基づいて吸着部の進行方向を調節するため、基材の懸垂を緩和しやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の搬送装置によれば、基材の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態における搬送装置を備える両面塗布システムを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における搬送装置が備えるコンベアユニットを示す図であり、(a)はコンベアユニット3の側面図であり、(b)は進行方向調節部の動作を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態における搬送装置が備える一組のコンベアユニットを基材の表面側から見た図である。
図4】本発明の一実施形態における基材の状態を説明するための図であり、(a)および(b)は基材の幅方向における両端部の位置にずれが生じた状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態における搬送装置が備える第1の移動機構を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態における搬送装置が備える第2の移動機構を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態における搬送装置が備えるコンベアユニットの一つのバリエーションを示す図である。
図8】本発明の一実施形態における搬送装置が備えるコンベアユニットの配置のバリエーションを示す図である。
図9】本発明の一実施形態におけるコンベアユニットの一つのバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の搬送装置100に係る実施の形態ついて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態における搬送装置100を備える両面塗布システム900を概略的に示す図である。なお、以下の説明では、搬送装置100がリチウムイオン電池の電極を形成するための両面塗布システム900に備えられている例について説明するが、帯状の基材を搬送するものであれば、両面塗布システム900に限らず適用することができる。
【0026】
両面塗布システム900は、図1に示すように、基材1を連続搬送する搬送装置100と、基材1の両面に塗布液を塗布し塗膜11を形成する塗布機構910と、基材1に形成された塗膜11を加熱して乾燥させる乾燥機構920と、を備えている。そして、搬送装置100により搬送される帯状の基材1の両面に塗布機構910により電極材料のスラリー(以下、塗布液と呼ぶ)を塗布して塗膜11(図4(a)を参照)を形成し、形成した塗膜11を乾燥機構920により乾燥させることによって、リチウムイオン電池の正極または負極を形成する。
【0027】
基材1は、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材1は、一方向に長い帯状のシートであり、搬送装置100により両面塗布システム900を構成する各部を経由するよう搬送される。
【0028】
塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤を溶剤により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を塗布機構910により基材1に塗布することで、塗膜11が形成される。なお、本実施形態では、塗膜11がストライプ状に形成されるようになっている。この塗膜11をストライプ状に形成するとは、図3および図4(a)に示すように基材1が、塗膜11が形成された複数の塗布部12と、複数の塗布部の間に塗膜11が形成されていない不塗布部13とを有するよう基材1の幅方向に塗膜11を形成することである。
【0029】
搬送装置100は、基材1を搬送するためのものである。この搬送装置100は、図1に示すように、基材1を搬送する搬送部2と、搬送部2による基材1の搬送を補助する複数のコンベアユニット3と、を備えている。
【0030】
搬送部2は、基材1を基材1の長尺方向に連続して搬送するためのものである。この搬送部2は、図1に示すように、巻出ロール21と、巻取ロール22と、複数の搬送ロール23と、塗布ロール24と、を有している。この搬送部21が有する各々のロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0031】
巻出ロール21は、基材1を下流側に巻き出すためのものであり、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材1を巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されており、以下の説明でも同様に扱う。また、巻取ロール22は、基材1を巻き取るためのものであり、巻出ロール21と同様に制御部により回転を駆動制御され、基材1に所定の張力を付与しながら基材1を巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材1の搬送方向の張力のことである。
【0032】
搬送ロール23は、巻出ロール21から巻き出された基材1が巻取ロール22に巻き取られるまでに経由するためのものである。この搬送ロール23は、図1に示すように複数設けられ、基材1が両面塗布システム900を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール23のうち一部、またはすべての搬送ロール23は、巻出ロール21および巻取ロール22と同様に制御部により回転を駆動制御され、基材1に所定の張力を付与しながら基材1を搬送する。
【0033】
塗布ロール24は、第1の塗布部911により塗布液を塗布する位置に基材1を案内するためのものである。この塗布ロール24は、図1に示すように、第1の塗布部911と対向するよう配置され、基材1の裏面側から所定の抱き角をもって基材1を支持している。これにより、第1の塗布部911と一定の間隔を維持しながら基材1を搬送することができる。
【0034】
これら構成により、搬送部2は、所定の張力を基材1に付与しながら基材1を所定の速度で搬送している。
【0035】
また、図1に示すように、塗布ロール24とその次に基材1が経由する搬送ロール23(以下、搬送ロール25と呼ぶ)とで形成された基材1の搬送経路に沿って、基材1の裏面に塗膜11を形成する第2の塗布部912と、加熱部920が配置される。すなわち、巻出ロール21により巻き出された基材1が搬送ロール25に到達するまでに、基材1の両面への塗膜11の形成と塗膜11の乾燥が行われる。これにより、搬送部2の各々のロールが未乾燥状態の塗膜11に接触することを防いでいる。そして、コンベアユニット3は、巻出ロール21により巻き出された基材1が塗布ロール24を経由して搬送ロール25に到達するまでの間において基材1の搬送を補助している。
【0036】
コンベアユニット3は、搬送部2による基材1の搬送を補助するためのものである。このコンベアユニット3は、図2(a)に示すように、環状のベルト部材31と、回転することによりベルト部材31を走行させる2つのローラ32と、2つのローラ32を回転させるための図示しない駆動機構を収容する本体部33と、ベルト部材31の表面の一部に吸引力を付与する吸引部34と、を有している。そして、コンベアユニット3は、ベルト部材31の表面に吸引力が付与されて形成された吸着部37に基材1の所定面を吸着させながら、ベルト部材31を走行させることによって、吸着部37の進行方向に基材1を送るようになっている。
【0037】
ローラ32は、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。2つのローラ32は、図2(a)に示すように、互いに離れた位置で本体部33に固定されており、これら2つのローラ32にベルト部材31が架け渡されている。そして、2つのローラ32には、各々のローラ32を回転させるための駆動機構が接続されており、この駆動機構を動作させることにより2つのローラ32が回転し、これに伴ってベルト部材31が2つのローラ32に架け渡された状態で走行するようになっている。なお、ベルト部材31がチェーンにより形成されている場合、ローラ32に代わってスプロケットを用いるとよい。
【0038】
本体部33は、駆動機構を収容するためのものである。この本体部33に、2つのローラ32が取り付けられている。
【0039】
吸引部34は、2つのローラ32間に設けられた筐体である。この筐体の壁部において2つのローラ32間に位置するベルト部材31の裏面と対向する部分には、図2(a)に示すように、2つのローラ31間の寸法とほぼ同等の寸法を有する開口35が形成されている。そして、吸引部34には、その内部を減圧する図示しない減圧機構が接続されており、減圧機構を作動させて吸引部34の内部を外部に対して負圧にすることによって、開口35に吸引力を発生させている。ここでいう減圧機構は、たとえば、ブロアや、ポンプや、エジェクタであってもよい。
【0040】
また、ベルト部材31には、図2(b)に示すように、円形の貫通孔36が形成されており、ベルト部材31の走行中に貫通孔36が開口35に対向する位置に、貫通孔36がベルト部材31の走行方向の全周に亘って一列に形成されている。これら貫通孔36は、減圧機構を作動させた状態で、開口35と対向する位置に位置すると開口35を通じて吸引力が発生する。本実施形態では、吸引力が発生させられた各々の貫通孔36を吸着部37とする。そして、吸着部37に吸着された基材1は、吸着された状態で吸着部37の進行方向に送られる。
【0041】
これら構成を有するコンベアユニット3は、2つで一組になるように設けられている。一組のコンベアユニット3は、図3に示すように、基材1の幅方向における端部1aの近傍で基材1の所定面における不塗布部13を吸着部37に吸着させるコンベアユニット3aと、基材1の幅方向における端部1bの近傍で基材1の所定面における不塗布部13を吸着部37に吸着させるコンベアユニット3bと、を有しており、これらコンベアユニット3aとコンベアユニット3bが基材1の幅方向において並列するように配置されている。
【0042】
そして、一組のコンベアユニット3は、それぞれの吸着部37に基材1の所定面を吸着させながら基材1を吸着部37の進行方向に送っている。このとき、一組のコンベアユニット3は、基材1の幅方向における各端部の近傍で基材1の所定面における不塗布部13を吸着部37に吸着しているため、一組のコンベアユニット3は塗膜11に接触することなく、各々の吸着部37の進行方向に基材1を送ることができ、搬送部2により搬送される基材1の姿勢を保つことができる。なお、以下の説明において、コンベアユニット3a、コンベアユニット3bを特に区別しない場合には、単にコンベアユニット3と呼ぶ。
【0043】
また、本実施形態では、コンベアユニット3が複数組設けられている。図1の例では、基材1の搬送経路に沿って、基材1の裏面を吸着する一組のコンベアユニット3A、基材1の表面を吸着する一組のコンベアユニット3B、および基材1の裏面を吸着する一組のコンベアユニット3Cが設けられている。これら三組のコンベアユニット3により搬送部2による基材1の搬送が補助されるため、一組のコンベアユニット3のみにより基材1の搬送を補助するよりも基材1の搬送がより安定したものになる。そして、両面塗布システム900は、上記構成の搬送装置100により搬送される基材1に対して、塗布機構910および乾燥機構920がそれぞれの処理を実施する。なお、以下の説明において、一組のコンベアユニット3A、一組のコンベアユニット3B、一組のコンベアユニット3Cを特に区別しない場合には、単に一組のコンベアユニット3と呼ぶ。
【0044】
塗布機構910は、基材1の両面に塗布液を塗布して塗膜11を形成するためのものである。この塗布機構910は、図1に示すように、基材1の表面に塗布液を塗布する第1の塗布部911と、基材1の裏面に塗布液を塗布する第2の塗布部912と、基材1に形成された塗膜の厚みを計測する膜厚測定部913と、を有している。
【0045】
第1の塗布部911は、基材1の表面に塗布液を塗布してストライプ状の塗膜11を形成するためのものである。この第1の塗布部911は、一方向に長く形成されており、基材1の幅方向に延びるように設けられている。そして、塗布ロール24は、第1の塗布部911に対して塗布ロール24の回転軸方向と第1の塗布部911の長手方向とが平行になるように所定の間隔を空けて配置されている。以下の説明では、第1の塗布部911の長手方向を第1の塗布部911の幅方向と呼ぶ。
【0046】
また、第1の塗布部911は、図1に示すように、供給路914に接続され幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド915と、このマニホールド915と繋がった幅方向に広いスリット916と、幅方向においてスリット916と同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口917により構成される。これにより、マニホールド915に溜められた塗布液がスリット916を経由して、吐出口917から基材1に吐出される。また、吐出口917は、塗布ロール24と基材1を挟んで対向している。すなわち、吐出口917は基材1の表面側で基材1と対向している。これにより、吐出口917と基材1との間隔を一定に保った状態で、基材1に塗布液を塗布することができるため、基材1の表面に均一な厚みを有する塗膜11を形成することができる。
【0047】
そして、第1の塗布機構911には、基材1に形成する塗膜11をストライプ状にするための図示しないシム板がさらに設けられている。シム板は、たとえば、略櫛型状を有しており、スリット916を幅方向に分割するよう配置されている。このシム板によりスリット916を幅方向に分割した状態で塗布液が塗布されると、シム板がない部分から塗布液が塗布され、シム板がある部分から塗布液が塗布されないようになる。すなわち、塗膜11をストライプ状に形成することができる。
【0048】
供給路914は、マニホールド915と塗布液が貯留されているタンク918を連結している。そして、図示しないポンプによりタンク918から供給路915を介してマニホールド915に塗布液を供給され、スリット916を経由して吐出口917から基材1に塗布される。
【0049】
これらの構成を有する第1の塗布部911によって、基材1の表面にストライプ状に塗膜11を形成することができる。
【0050】
第2の塗布部912は、第1の塗布部911と同様な構成をしており、図1に示すように第1の塗布部911よりも下流側において第2の塗布部912の吐出口917が基材1の裏面側で基材1と対向して配置されている。そして、一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3Bは、基材1の搬送経路において一組のコンベアユニット3Aと一組のコンベアユニット3Bとで第2の塗布部912の吐出口917を挟むように配置されている。
【0051】
このように一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3Bにより基材1を吸着することができるため、吐出口917と基材1との間隔を一定に保った状態で、基材1に塗布液を塗布することができる。これにより、基材1の裏面に均一な厚みを有するストライプ状の塗膜11を形成することができる。なお、第2の塗布部912により基材1の裏面に形成する塗膜11の幅は、第1の塗布部911により基材1の表面に形成する塗膜11の幅と同一であるよい。
【0052】
これら第1の塗布部911および第2の塗布部912により基材1の両面にストライプ状の塗膜11が形成される。
【0053】
膜厚測定部913は、基材1の両面に形成された塗膜11の厚みを測定するためのものである。この膜厚測定部913は、たとえば、非接触式の変位計であり、図1に示すように、基材1の搬送経路において第1の塗布部911と第2の塗布部912との間と、第2の塗布部912と乾燥機構920との間のそれぞれに1つずつ設けられている。すなわち、膜厚測定部913は、第1の塗布部911と第2の塗布部912のそれぞれにより形成された塗膜11の厚みを個別に測定している。
【0054】
そして、膜厚測定部913の測定結果が第1の塗布部911と第2の塗布部912による塗布液の塗布に反映されるようになっており、たとえば、第1の塗布部911と第2の塗布部912が塗布する塗布液の量が調節される。これにより、所定の膜厚を有する塗膜11を基材1の両面に形成することができる。
【0055】
また、一組のコンベアユニット3Aは、基材1の搬送経路において第1の塗布部911により形成された塗膜11の膜厚を測定する膜厚測定部913と第2の塗布部912との間の基材1の裏面側に配置されており、膜厚測定部913は一組のコンベアユニット3Aにより基材1が吸着された状態で基材1の表面に形成された塗膜11の膜厚を測定する。これにより、膜厚測定部913による測定の精度を向上させることができる。
【0056】
また、一組のコンベアユニット3Bおよび一組のコンベアユニット3Cは、基材1の搬送経路において第2の塗布部912により形成された塗膜11の膜厚を測定する膜厚測定部913を一組のコンベアユニット3Bと一組のコンベアユニット3Cとの間で挟むように配置されている。そして、膜厚測定部913は一組のコンベアユニット3Bおよび一組のコンベアユニット3Cにより基材1が吸着された状態で基材1の裏面に形成された塗膜11の膜厚を測定する。これにより、膜厚測定部913による測定の精度を向上させることができる。
【0057】
乾燥機構920は、塗布機構910により基材1の両面に形成された塗膜11を加熱して乾燥させるためのものである。この乾燥機構920は、図1に示すように、基材1の搬送経路において塗布機構910よりも下流側に設けられており、筐体部921と、加熱ノズル922(図8を参照)と、を有している。
【0058】
筐体部921は、基材1の搬送方向に長く形成された箱体であり、この箱体の内部に基材1が通過する空間と、この空間に基材1が出入りするための入口および出口を有している。そして、塗膜11が形成された基材1が搬送部2により筐体部921内を通過するよう搬送される。
【0059】
加熱ノズル922は、基材1に熱風を吹き付けることにより塗膜11を加熱するためのものである。この加熱ノズル922は、基材1の幅方向に長く形成されており、基材1の表面または裏面と対向する部分に熱風を吹き出す図示しない開口を有している。そして、加熱ノズル922から吹き出した熱風により筐体部921内に高温環境が形成され、この高温環境に塗膜11が晒されることによって、塗膜11が加熱されて乾燥される。
【0060】
そして、加熱ノズル922は、筐体部921内で基材1の下方に配置されて基材1の裏面に熱風を吹き付ける下側ノズル922a(図8を参照)と、筐体921内で基材1の上方に配置されて基材1の表面に熱風を吹き付ける上側ノズル922b(図8を参照)と、があり、これら下側ノズル922aと上側ノズル922bは、基材1の搬送方向に交互に配置されている。そのため、基材1に揚力が付与されて基材1が浮揚した状態で、基材1は略直線方向に搬送される。
【0061】
これらの構成を有する乾燥機構920により基材1の両面に形成された塗膜11を乾燥させることができる。
【0062】
また、巻出ロール21により巻き出された基材1が搬送ロール23を経由して巻取ロール22に巻き取られるまでの間で基材1の幅方向における端部に位置ずれが生じる場合がある。この位置ずれは、特に、搬送部2による基材1の搬送経路において塗布ロール24と搬送ロール25との間で生じる可能性が高くなっている。これは、塗布機構910により基材1に形成された塗膜11の重みによって基材1に懸垂が生じたり、乾燥機構920により吹き付けられた熱風によって基材1が振動したりするからである。
【0063】
ここで、一組のコンベアユニット3には、各々のベルト部材31の吸着部37の進行方向を調節する進行方向調節部38が設けられている。この進行方向調節部38は、本実施形態では、図2(a)に示すように本体部33をZθ方向に回転させて任意の角度で静止させる回転機構38aにより構成される。
【0064】
この回転機構38aは、図2(a)に示すように本体部33を支持する支持部38bと、本体部33を回転させるための回転軸であって本体部33と支持部38bを接続する駆動軸38cと、を有している。この駆動軸38cは、図示しない駆動機構と接続されており、駆動機構を作動させることによって、本体部33を回転させるようになっている。そして、回転機構38aにより本体部33を回転させることによって、吸着部37の進行方向が調節され、この調節された吸着部37の進行方向に向かって、吸着部37に吸着された基材1の幅方向における端部を引っ張ることができる。これにより、基材1の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【0065】
また、搬送装置100は、図1に示すように基材1の幅方向における両端部の位置を検出する端部位置検出部41をさらに備えている。この端部位置検出部41は、基材1の幅方向における端部の位置を検知するためのセンサであり、一組のコンベアユニット3の近傍に位置するように基材1における幅方向における両端部のそれぞれの近傍に配置されている。そして、端部位置検出部41は、基材1の幅方向における端部の位置情報を制御部に伝達する。
【0066】
そして、制御部は、端部位置検出部41により伝達された基材1の幅方向における両端部の位置情報を基に進行方向調節部38の動作を制御し、吸着部37の進行方向を調節させる。すなわち、進行方向調節部38は、端部位置検出部41による基材1の幅方向両端部の位置の検出結果に基づいて吸着部37の進行方向を調節している。
【0067】
また、制御部は、端部位置検出部41により伝達された基材1の幅方向における両端部の位置と正常搬送時における基材1の幅方向における両端部の位置を比較して、基材1の幅方向における両端部の位置にずれが生じているか否かを判断する。ここでいう正常搬送時とは、基材1に位置ずれが全く生じることなく基材1が搬送されている理想的な搬送状態を中心に所定の許容誤差範囲内で基材1が搬送されているときをいう。なお、理想的な搬送状態における基材1の幅方向における両端部の位置は、図4(a)および図4(b)において鎖線で示す位置Tのことである。
【0068】
そして、制御部が基材1の幅方向における両端部の位置にずれが生じていると判断した場合、進行方向調節部38により吸着部37の進行方向を調節することによって、基材1の幅方向における両端部の位置を正常な位置に調節するようになっている。なお、進行方向調節部38による一組のコンベアユニット3の各々の吸着部37の進行方向の調節は、制御部が端部位置検出部41により検出された基材1の幅方向における各端部の位置情報に基づいて基材1の幅方向における両端部が正常な位置にあると判断するまで行われる。
【0069】
具体的には、進行方向調節部38は、一組のコンベアユニット3の各々の吸着部37の進行方向を調節するごとに、制御部から基材1の幅方向における両端部の位置についてフィードバックを受け、これを基に一組のコンベアユニット3の各々の吸着部37の進行方向を調節する。これを繰り返し行うことによって、基材1の幅方向における両端部の位置を正常な位置に維持することができる。
【0070】
より具体的に説明する。たとえば、一組のコンベアユニット3の近傍で、図4(a)に示すように基材1に懸垂が生じて基材1の幅方向における両端部の位置が中央部に向かって位置ずれしている場合、進行方向調節部38は、一組のコンベアユニット3の各々の吸着部37の進行方向が各々の吸着部37の調節前の進行方向よりも基材1の幅方向において搬送部2による基材1の搬送方向よりも外側に向くように調節する。これにより、一組のコンベアユニット3は、進行方向調節部38により各々の吸着部37の進行方向が調節される前の状態よりも基材1の幅方向における各端部の外側に向かって基材1を引っ張ることができるため、基材1の懸垂が緩和され基材1の幅方向における両端部の位置を正常な位置に近づけることができる。
【0071】
また、一組のコンベアユニット3の近傍で、図4(b)に示すように基材1が幅方向における片側の端部1aに向かって位置ずれしている場合、進行方向調節部38は、一組のコンベアユニット3のうち端部1aと対になる端部1b側を吸着するコンベアユニット3bの吸着部37の進行方向が、コンベアユニット3bの吸着部37の調節前の進行方向よりも基材1の幅方向において搬送部2による基材1の搬送方向よりも外側に向くように調節する。これにより、コンベアユニット3bは、進行方向調節部38により吸着部37が調節される前の状態よりも基材1の幅方向端部1bの外側に向かって基材1を引っ張ることができるため、基材1が幅方向における端部1bに向かって引っ張られ、基材1の幅方向における両端部の位置を正常な位置に近づけることができる。
【0072】
そして、上記進行方向調節部38による一組のコンベアユニット3の各々の吸着部37の進行方向の調節を、制御部が端部位置検出部41により検出された基材1の幅方向における各端部の位置情報に基づいて基材1の幅方向における両端部が正常な位置にあると判断するまで繰り返し行う。これにより、基材1の幅方向における両端部の位置を正常な位置に調節し、維持することができる。
【0073】
また、進行方向調節部38は、基材1の幅方向端部の位置に関わらず、搬送部2による基材1の搬送中は吸着部37の進行方向が基材1の幅方向において搬送部2による基材1の搬送方向よりも外側を向くように調節している。これにより、一組のコンベアユニットによって、搬送中の基材1の幅方向における各端部の外側に向かって基材1を引っ張ることができるため、基材1の懸垂を緩和することができる。
【0074】
また、一組のコンベアユニット3には、基材1に対する各々の吸着部37の相対速度を調節する図示しない速度調節部が設けられている。本実施形態では、速度調節部は、2つのローラ32を回転させる前述の駆動機構と制御部であり、制御部により駆動機構の動作を制御して2つのローラ32の回転速度を制御することによって、ベルト部材31の走行速度、すなわち、吸着部37の進行速度を調節している。
【0075】
そして、速度調節部は、進行方向調節部38により調節される各々の吸着部37の進行方向に応じて基材1に対する各々の吸着部37の相対速度を調節している。具体的には、図2(b)に示すように、速度調節部は、吸着部37の進行速度Vxyにおいて搬送部2による基材1の搬送方向成分Vxが、搬送部2による基材1の搬送速度Vと等しくなるように、吸着部37の進行方向を調節する度に吸着部37の進行速度Vxyを調節する。
【0076】
これにより、進行方向調節部38により調節される各々の吸着部37の進行方向に応じて基材1に対する各々の吸着部37の相対速度を調節することができるため、搬送部2により搬送中の基材1が一組のコンベアユニット3の各々のベルト部材31の吸着部37上で詰まることがなくなるため、コンベアユニット3は搬送部2による基材1の搬送を阻害することなく基材1の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【0077】
また、搬送装置100は、コンベアユニット3を搬送部2による基材1の搬送方向の前後に移動させる図示しない第1の移動機構をさらに備えている。本実施形態では、第1の移動機構は、基材1の搬送方向に延びるレールと、そのレール上を移動するスライダー部とで構成され、スライダー部に前述の支持部38bが接続されている。そして、スライダー部には、スライダー部を移動および静止させる図示しない駆動機構が接続され、この駆動機構によりスライダー部をレール上で移動させることによって、コンベアユニット3を基材1の搬送方向の前後に移動させる。そして、一組のコンベアユニット3のそれぞれを基材1の搬送方向の前後に移動させることによって、それぞれのコンベアユニット3により基材1の幅方向端部を引っ張る方向を広範囲に設定することができる。
【0078】
また、第1の移動機構は、図5に示すように、一組のコンベアユニット3が基材1の搬送方向の前後にずらして配置されるように一組のコンベアユニット3のそれぞれを移動させてもよい。この場合、一組のコンベアユニット3を基材1の幅方向において並列して配置するよりも、基材1を片側のコンベアユニット3の吸着部37の進行方向に引っ張りやすくなる。これにより、基材1の幅方向端部の位置を調節しやすくなる。
【0079】
また、コンベアユニット3は、吸着部37に付与する吸引力を減圧機構により調節している。そして、本実施形態では、基材1の幅方向端部の位置を調節する際、一組のコンベアユニット3のそれぞれの吸着部37に付与される吸引力に差をもたせるように調節している。
【0080】
たとえば、一組のコンベアユニット3のうち、コンベアユニット3aの吸着部37に付与する吸引力が大きく、コンベアユニット3bの吸着部37に付与する吸引力が小さくなるように調節すると、コンベアユニット3aによる基材1の幅方向における端部1aの外側に向かって基材1を引っ張る力によって、コンベアユニット3bの吸着部37上に位置する基材1がコンベアユニット3aの吸着部37の進行方向に向かって吸着部37上を滑るようになる。これにより、基材1を片側のコンベアユニット3の吸着部37の進行方向に引っ張りやすくなる。これにより、基材1の幅方向端部の位置を調節しやすくなる。
【0081】
また、搬送装置2は、コンベアユニット3を基材1の所定面に接近する方向と離間する方向に移動させる図示しない第2の移動機構をさらに備えている。本実施形態では、第2の移動機構は、前述の支持部38bと駆動軸38cとで構成され、駆動軸38cを支持部38b内に縮めるおよび支持部38b外に伸ばすことで、コンベアユニット3が昇降するようになっている。この駆動軸38cの動作は、図示しない駆動機構により行われる。これにより、基材1の所定面と直交する方向においても基材1の位置を調節することができる。
【0082】
そして、図6に示すように、一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3B、若しくは一組のコンベアユニット3Aと一組のコンベアユニット3Bのいずれかを、第2の移動機構により基材1の所定面に接近する方向と離間する方向に移動させることによって、第2の塗布部912の吐出口917と基材1との間隔を調節することができる。
【0083】
このように、上記実施形態における搬送装置2によれば、進行方向調節部38によって、基材1の幅方向における基材1の両端部の近傍で基材1の所定面をベルト部材31の吸着部37に吸着させる一組のコンベアユニット3の各々のベルト部材31の吸着部37の進行方向を調節できるため、この調節された各々のベルト部材31の吸着部37の進行方向に向かって、基材1の端部を引っ張ることができる。これにより、搬送される基材1の幅方向における端部の位置を調節することができる。
【0084】
そして、本実施形態における両面塗布システム900は、上記実施形態における搬送装置100を備えているため、基材1の幅方向における両端部の位置ずれがなく安定した搬送されている基材1に対して塗布機構910による塗布液の塗布および乾燥機構920による塗膜11の乾燥を行うことができる。したがって、両面塗布システム900は、基材1の両面に均一な厚みを有する塗膜11を形成することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0086】
たとえば、上記実施形態では、進行方向調節部38が回転機構38aにより構成されている例について説明したが、複数のガイド部38dにより構成されてもよい。具体的に説明する。ガイド部38dは、ベルト部材31の走行経路を規定するためのものであり、図7(a)に示すように吸着部37の進行方向と直交する方向においてベルト部材31の両端を2つのローラ32のそれぞれの近傍で把持するよう二組設けられている。そして、図7(b)に示すように、これら二組のガイド部38dのそれぞれの位置を吸着部37の進行方向と直交する方向において互いに異なる方向にずらすことによって、ベルト部材31が傾き、吸着部37の進行方向が調節される。
【0087】
また、上記実施形態では、端部位置検出部41により基材1の幅方向端部の位置を検出して、この検出結果を基に進行方向調節部38が吸着部37の進行方向を調節する例について説明したが、これに限られない。たとえば、基材1の幅方向における中央部の位置を検出する図示しない懸垂量検出部を設け、この懸垂量検出部による検出結果に基づいて前記吸着部37の進行方向を調節してもよい。
【0088】
この懸垂量検出部は、基材1の幅方向における中央部の高さ方向における位置を検出するセンサであり、検出した位置情報を制御部に伝達する。制御部は、懸垂量検出部により伝達された基材1の幅方向における中央部の高さ方向における位置の情報から基材1の懸垂量を算出する。そして、制御部は、算出した基材1の懸垂量を基に進行方向調節部38の動作を制御し、一組のコンベアユニット3のそれぞれの吸着部37の進行方向を調節させる。これにより、基材1の懸垂がより緩和しやすくなる。
【0089】
また、一組のコンベアユニット3の配置は、図1に示すものに限られない。一組のコンベアユニット3は、少なくとも基材1の表面もしくは裏面のいずれか一方の面を吸着することができる位置に配置されればよく、たとえば、基材1の一方の面のみを吸着させるように複数の一組のコンベアユニット3のそれぞれを配置してもよい。
【0090】
また、一組のコンベアユニット3を筐体部921内に配置してもよい。この場合、図8に示すように、筐体部921内のそれぞれの加熱ノズル922とで基材1を挟むように一組のコンベアユニット3を設けるとよい。これにより、加熱ノズル922と対向する位置で基材1の所定面を一組のコンベアユニット3により吸着することができるため、加熱ノズル922により吹き出された熱風による基材1の振動を抑制することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、吸着部37に吸引力を付与することによって吸着部37に基材1を吸着させる例について説明したが、これに限られない。たとえば、静電気をベルト部材31の表面に発生させて、その静電気が発生した部分を吸着部37とし、吸着部37に基材1を吸着させてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、第2の塗布部912と基材1との間隔の調節を、第2の移動機構により一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3B、又は一組のコンベアユニット3Aと一組のコンベアユニット3Bのいずれかを基材1の所定面に接近する方向と離間する方向に移動させることによって行う例について説明したが、これ以外の方法で行ってもよい。たとえば、図9に示すように、コンベアユニット3をYθ方向に回転させて任意の角度で静止させる図示しない回転機構を設け、この回転機構により一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3B、又は一組のコンベアユニット3Aおよび一組のコンベアユニット3Bのいずれかのコンベアユニット3のYθ方向における角度を調節することによって、第2の塗布部912と基材1との間隔を調節してもよい。
【符号の説明】
【0093】
100 搬送装置
1 基材
11 塗膜
2 搬送部
21 巻出ロール
22 巻取ロール
23 搬送ロール
24 塗布ロール
25 搬送ロール
3 コンベアユニット
3A 一組のコンベアユニット
3B 一組のコンベアユニット
3C 一組のコンベアユニット
31 ベルト部材
32 ローラ
33 本体部
34 吸引部
35 開口
36 貫通孔
37 吸着部
38 進行方向調節部
38a 回転機構
38b 支持部
38c 駆動軸
41 端部位置検出部
900 両面塗布システム
910 塗布機構
911 第1の塗布部
912 第2の塗布部
913 膜厚測定部
914 供給路
915 マニホールド
916 スリット
917 吐出口
918 タンク
920 乾燥機構
921 筐体部
922 加熱ノズル
922a 上側ノズル
922b 下側ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9