(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122104
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】配線補助具、可動型長尺構造体、可動型長尺構造器具、医療システム、ツール、マニピュレータ、ロボット、医療用ロボット、挿通方法、ロボットの操作方法、可動型長尺構造体の操作方法、軟性内視鏡及び操舵カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240902BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20240902BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20240902BHJP
A61B 17/3201 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B17/29
A61M25/092 500
A61B34/30
A61B17/3201
【審査請求】未請求
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029460
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA18
4C130AA49
4C130AB10
4C160FF15
4C160GG08
4C160GG29
4C267AA32
4C267BB03
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB18
4C267BB52
4C267CC07
(57)【要約】
【課題】配線補助具が不用意に外れることがなく、組付け性の高い可動型長尺構造体、可動型長尺構造体に用いる配線補助具、可動型長尺構造器具等を提供することを目的とする。
【解決手段】可動型長尺構造体10は、可撓性を有する長尺状に形成され、内部に長手方向Lに貫通するメインルーメン31を有する、少なくとも2本の可撓チューブ20と、可撓性を有する長尺状の牽引ワイヤー50と、直列状に配置された2本の可撓チューブ20同士の間に配置され、牽引ワイヤー50により保持されるシリンダ42を有し、可撓チューブ20に固定されないスペーサ40と、可撓チューブ20の少なくとも一方に対して、スペーサ40が少なくとも長手方向Lに交差する径方向に移動することを規制する位置規制凸部47とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺状に形成され、内部に長手方向に貫通する内部空間を有する、少なくとも2本の管状体と、
可撓性を有する長尺状の牽引操作体と、
直列状に配置された2本の前記管状体同士の間に配置され、前記牽引操作体により保持される筒状部を有し、前記管状体に固定されない配線補助具と、
前記管状体の少なくとも一方に対して、該配線補助具が長手方向に交差する径方向に移動することを規制する移動規制部とを備えた
可動型長尺構造体。
【請求項2】
前記牽引操作体は、前記管状体の管壁に設けられた長手方向に沿う一対の貫通路を挿通するとともに、複数本設けた
請求項1に記載の可動型長尺構造体。
【請求項3】
前記配線補助具は、
前記筒状部の端部に配置されるとともに、径外側に突出する突縁部を備え、
前記牽引操作体は、前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、
前記移動規制部は、前記筒状部の端部面から少なくとも一方の前記管状体に向かって突出する突起部である
請求項2に記載の可動型長尺構造体。
【請求項4】
前記突起部は、柱状である
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項5】
前記突起部は、リング状部材から突起する柱状である
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項6】
前記突起部は、前記管壁の端面に設けられた嵌合凹部に挿入される
請求項4に記載の可動型長尺構造体。
【請求項7】
前記突起部は、
前記管状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して嵌合する環状突起である
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項8】
前記突起部は、前記管状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して周方向において複数箇所で当接する小片状突起部である
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項9】
前記突起部は、前記管状体の内周面に対して周方向において複数箇所で当接するテーパー状小片突起部である
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項10】
前記テーパー状小片突起部は、挿着状態において前記内周面に対して不用意な抜け出しを防止する抜出し防止部を有する
請求項9に記載の可動型長尺構造体。
【請求項11】
前記配線補助具は、
前記筒状部の端部に配置され、径外側に突出する突縁部を備え、
前記牽引操作体は、
前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、
前記移動規制部は、少なくとも一方の前記管状体の端面と前記突縁部とを接着する接着層である
請求項2に記載の可動型長尺構造体。
【請求項12】
前記配線補助具は、
前記筒状部の端部に配置され、径外側に突出する突縁部を備え、
前記牽引操作体は、
前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、
前記移動規制部は、少なくとも一方の前記管状体の前記内部空間と前記筒状部の内部空間とにわたって挿通される規制管状体である
請求項2に記載の可動型長尺構造体。
【請求項13】
前記配線補助具は、
前記筒状部が少なくとも一方の前記管状体の前記内部空間に挿通され、
前記移動規制部は、
前記筒状部のうち、前記管状体の前記内部空間に挿通された部分で構成された
請求項2に記載の可動型長尺構造体。
【請求項14】
前記移動規制部は、前記配線補助具が前記牽引操作体による保持から不用意に外れることを防止する構成とする
請求項1に記載の可動型長尺構造体。
【請求項15】
前記移動規制部は、両方の前記管状体に対する前記配線補助具の径方向の移動を規制する
請求項1に記載の可動型長尺構造体。
【請求項16】
前記牽引操作体は可撓性を有するワイヤーであり、
前記径外側に突出する突縁部はフランジである
請求項3に記載の可動型長尺構造体。
【請求項17】
前記フランジの外周部に前記ワイヤーを内側に配置する切り欠き部を設けた
請求項16に記載の可動型長尺構造体。
【請求項18】
前記フランジの外周部に前記ワイヤーが挿通される穴部を設けた
請求項16に記載の可動型長尺構造体。
【請求項19】
直列状に配置された2本の前記管状体のうち先端側の前記管状体を、
前記内部空間を有する弾性レトラクタ、弾性グリッパ、鉗子あるいはハサミとし、前記ワイヤーでその開閉を行う
請求項15に記載の可動型長尺構造体。
【請求項20】
請求項1~請求項19のうちいずれかに記載の可動型長尺構造体に用いられる
配線補助具。
【請求項21】
請求項1~請求項19のうちいずれかに記載の可動型長尺構造体と、
一対の前記牽引操作体を牽引する牽引駆動部とが備えられ、
前記牽引駆動部で一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を変形させる
可動型長尺構造器具。
【請求項22】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具と、
前記牽引駆動部を駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有する
医療システム。
【請求項23】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具と、
前記可動型長尺構造体における前記基端側管状体をロボットアームの先端に取付ける取付部と、
ロボットアーム側において前記牽引駆動部を駆動する駆動機構と接続する接続部とが備えられた
ツール。
【請求項24】
請求項23に記載されたツールと、
前記ツールを先端に設けたロボットアームと、
前記牽引駆動部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有する
ロボット。
【請求項25】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具と、
前記可動型長尺構造体における基端側の前記管状体の基端に設けられた本体部と、
前記本体部において前記牽引駆動部を操作する操作部とが備えられた
マニピュレータ。
【請求項26】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、
リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、
前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、
該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって所定の前記牽引操作体を牽引して少なくとも先端側の前記管状体を所望の方向に変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備えた
ロボット。
【請求項27】
請求項26に記載のロボットを備え、
前記出力ユニットは、前記可動型長尺構造体を機械的に駆動する外部に設けられた駆動ユニットに駆動信号を提供する
医療用ロボット。
【請求項28】
請求項1~請求項19のうちいずれかに記載された可動型長尺構造体を管路に挿通し、
一対の前記牽引操作体を牽引する牽引駆動部を駆動制御して先端側の前記管状体を変形させ、分岐する管路に先端側管状体を挿通させる
挿通方法。
【請求項29】
請求項14に記載の可動型長尺構造体を管路に挿通し、
牽引駆動部を駆動制御して先端側の前記管状体を変形させ、分岐する管路に先端側管状体を挿通させる
挿通方法。
【請求項30】
前記管路が管腔臓器、脈管及び血管の少なくともひとつである
請求項28に記載の挿通方法。
【請求項31】
前記管路が管腔臓器、脈管及び血管の少なくともひとつである
請求項29に記載の挿通方法。
【請求項32】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具を備えたロボットに対し、有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットがリアルタイムに操作信号を受信し、
演算ユニットが、受信した前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行すると、
該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を所望の方向に変形する
ロボットの操作方法。
【請求項33】
一対の前記牽引操作体を牽引して、請求項14に記載の可動型長尺構造体における先端側の前記管状体を変形させる
可動型長尺構造体の操作方法。
【請求項34】
複数対の前記牽引操作体が備えられ、
複数対の前記牽引操作体のうち所定の一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を所望の方向に変形させる
請求項33に記載の可動型長尺構造体の操作方法。
【請求項35】
請求項1~請求項19のうちいずれかに記載の可動型長尺構造体と、
一対の前記牽引操作体を牽引する複数の牽引操作部とが備えられ、
前記牽引操作体で一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を変形させる
軟性内視鏡。
【請求項36】
請求項1~請求項19のうちいずれかに記載の可動型長尺構造体と、
一対の前記牽引操作体を牽引する複数の牽引操作部とが備えられ、
前記牽引操作体で一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を変形させる
操舵カテーテル。
【請求項37】
請求項23に記載されたツールと、
前記ツールを先端に設けたロボットアームと、
前記牽引駆動部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットが人工知能を備えた
ロボット。
【請求項38】
請求項25に記載されたマニピュレータと、
前記ツールを先端に設けたロボットアームと、
前記操作部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、
該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットが人工知能を備えた
ロボット。
【請求項39】
請求項21に記載された可動型長尺構造器具に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、
リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、
前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、
該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって所定の前記牽引操作体を牽引して少なくとも先端側の前記管状体を所望の方向に変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備え、
前記演算ユニットが人工知能を備えた
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、管腔臓器や脈管、血管などの管路に挿通し、分岐部などにおいて所定の向きに先端部分を曲げるような可動型長尺構造体、可動型長尺構造体に用いる配線補助具、可動型長尺構造器具、医療システム、ツール、マニピュレータ、ロボット、医療用ロボット、挿通方法、ロボットの操作方法、可動型長尺構造体の操作方法、軟性内視鏡及び操舵カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、カテーテルや内視鏡など体腔内に挿通する長尺状の医療機器が多用されている。このような長尺状の医療機器は、例えば、特許文献1に記載の医療用マニピュレータのように、先端部分を曲げて分岐部などに挿入する。
【0003】
特許文献1のマニピュレータに設けた内視鏡は、先端側途中部分に設けた湾曲部が上下左右の四方向に湾曲することによりその先端部の向きを上下左右に変向するように構成されている。しかしながら、その構造は複雑であり、組付け性が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、配線補助具が不用意に外れることがなく、組付け性の高い可動型長尺構造体、可動型長尺構造体に用いる配線補助具、可動型長尺構造器具、医療システム、ツール、マニピュレータ、ロボット、医療用ロボット、挿通方法、ロボットの操作方法、可動型長尺構造体の操作方法、軟性内視鏡及び操舵カテーテルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、可撓性を有する長尺状に形成され、内部に長手方向に貫通する内部空間を有する、少なくとも2本の管状体と、可撓性を有する長尺状の牽引操作体と、直列状に配置された2本の前記管状体同士の間に配置され、前記牽引操作体により保持される筒状部を有し、前記管状体に固定されない配線補助具と、前記管状体の少なくとも一方に対して、該配線補助具が長手方向に交差する径方向に移動することを規制する移動規制部とを備えた可動型長尺構造体であることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記牽引操作体は、前記管状体の管壁に設けられた長手方向に沿う一対の貫通路を挿通するとともに、複数本設けてもよい。
またこの発明の態様として、前記配線補助具は、前記筒状部の端部に配置されるとともに、径外側に突出する突縁部を備え、前記牽引操作体は、前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、前記移動規制部は、前記筒状部の端部面から少なくとも一方の前記管状体に向かって突出する突起部であってもよい。
【0008】
またこの発明の態様として、前記突起部は、柱状であってもよい。
またこの発明の態様として、前記突起部は、リング状部材から突起する柱状であってもよい。
【0009】
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記管壁の端面に設けられた嵌合凹部に挿入されてもよい。
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記管状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して嵌合する環状突起であってもよい。
【0010】
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記管状体の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して周方向において複数箇所で当接する小片状突起部であってもよい。
またこの発明の態様として、前記突起部は、前記管状体の内周面に対して周方向において複数箇所で当接するテーパー状小片突起部であってもよい。
【0011】
またこの発明の態様として、前記テーパー状小片突起部は、挿着状態において前記内周面に対して不用意な抜け出しを防止する抜出し防止部を有してもよい。
またこの発明の態様として、前記配線補助具は、前記筒状部の端部に配置され、径外側に突出する突縁部を備え、前記牽引操作体は、前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、前記移動規制部は、少なくとも一方の前記管状体の端面と前記突縁部とを接着する接着層であってもよい。
【0012】
またこの発明の態様として、前記配線補助具は、前記筒状部の端部に配置され、径外側に突出する突縁部を備え、前記牽引操作体は、前記管状体同士の間に配置した前記配線補助具を、前記突縁部を介して保持し、前記移動規制部は、少なくとも一方の前記管状体の前記内部空間と前記筒状部の内部空間とにわたって挿通される規制管状体であってもよい。
【0013】
またこの発明の態様として、前記配線補助具は、前記筒状部が少なくとも一方の前記管状体の前記内部空間に挿通され、前記移動規制部は、前記筒状部のうち、前記管状体の前記内部空間に挿通された部分で構成されてもよい。
【0014】
またこの発明の態様として、前記移動規制部は、前記配線補助具が前記牽引操作体による保持から不用意に外れることを防止する構成としてもよい。
またこの発明の態様として、前記移動規制部は、両方の前記管状体に対する前記配線補助具の径方向の移動を規制してもよい。
【0015】
またこの発明の態様として、前記牽引操作体は可撓性を有するワイヤーであり、
前記径外側に突出する突縁部はフランジであってもよい。
またこの発明の態様として、前記フランジの外周部に前記ワイヤーを内側に配置する切り欠き部を設けてもよい。
【0016】
またこの発明の態様として、前記フランジの外周部に前記ワイヤーが挿通される穴部を設けてもよい。
またこの発明の態様として、直列状に配置された2本の前記管状体のうち先端側の前記管状体を、前記内部空間を有する弾性レトラクタ、弾性グリッパ、鉗子あるいはハサミとし、前記ワイヤーでその開閉を行ってもよい。
【0017】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造体に用いられる配線補助具であることを特徴とする。
またこの発明は、上述の可動型長尺構造体と、一対の前記牽引操作体を牽引する牽引駆動部とが備えられ、前記牽引駆動部で一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を変形させる可動型長尺構造器具であることを特徴とする。
【0018】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造器具と、前記牽引駆動部を駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有する医療システムであることを特徴とする。
【0019】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造器具と、前記可動型長尺構造体における前記基端側管状体をロボットアームの先端に取付ける取付部と、ロボットアーム側において前記牽引駆動部を駆動する駆動機構と接続する接続部とが備えられたツールであることを特徴とする。
【0020】
またこの発明は、上述のツールと、前記ツールを先端に設けたロボットアームと前記牽引駆動部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有するロボットであることを特徴とする。
【0021】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造器具と、前記可動型長尺構造体における基端側の前記管状体の基端に設けられた本体部と、前記本体部において前記牽引駆動部を操作する操作部とが備えられたマニピュレータであることを特徴とする。
【0022】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造器具に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって所定の前記牽引操作体を牽引して少なくとも先端側の前記管状体を所望の方向に変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備えたロボットであることを特徴とする。
【0023】
またこの発明は、上述のロボットを備え、前記出力ユニットは、前記可動型長尺構造体を機械的に駆動する外部に設けられた駆動ユニットに駆動信号を提供する医療用ロボットであることを特徴とする。
【0024】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造体を管路に挿通し、一対の前記牽引操作体を牽引する牽引駆動部を駆動制御して先端側の前記管状体を変形させ、分岐する管路に先端側管状体を挿通させる挿通方法であることを特徴とする。
【0025】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造体を管路に挿通し、牽引駆動部を駆動制御して先端側の前記管状体を変形させ、分岐する管路に先端側管状体を挿通させる挿通方法であることを特徴とする。
またこの発明の態様として、前記管路が管腔臓器、脈管及び血管の少なくともひとつであってもよい。
【0026】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造器具を備えたロボットに対し、有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットがリアルタイムに操作信号を受信し、演算ユニットが、受信した前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行すると、該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を所望の方向に変形するロボットの操作方法であることを特徴とする。
【0027】
またこの発明は、一対の前記牽引操作体を牽引して、上述の可動型長尺構造体における先端側の前記管状体を変形させる可動型長尺構造体の操作方法であることを特徴とする。
またこの発明の態様として、複数対の前記牽引操作体が備えられ、複数対の前記牽引操作体のうち所定の一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を所望の方向に変形させてもよい。
【0028】
またこの発明は、上述の可動型長尺構造体と、一対の前記牽引操作体を牽引する複数の牽引操作部とが備えられ、前記牽引操作部で一対の前記牽引操作体を牽引して先端側の前記管状体を変形させる軟性内視鏡あるいは操舵カテーテルであることを特徴とする。
【0029】
上述のツールと、前記ツールを先端に設けたロボットアームと、前記牽引駆動部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有し、前記制御ユニットが人工知能を備えたロボットであることを特徴とする。
【0030】
上述のマニピュレータと、前記マニピュレータを先端に設けたロボットアームと、前記操作部及び前記ロボットアームを駆動する駆動ユニットと、該駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニットとを有し、前記制御ユニットが人工知能を備えたロボットであることを特徴とする。
【0031】
上述の可動型長尺構造器具に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニットと、リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、前記操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットと、該演算ユニットからの出力に基づき前記牽引駆動部によって所定の前記牽引操作体を牽引して少なくとも先端側の前記管状体を所望の方向に変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備え、前記演算ユニットが人工知能を備えたロボットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、直列状に配置された2本の前記管状体同士の間に配置され、前記牽引操作体により保持される筒状部を有し、前記管状体に固定されない配線補助具が、前記管状体の少なくとも一方に対して、長手方向に交差する径方向に移動することを規制する移動規制部を備えているため、配線補助具が不用意に外れることがなく、組付け性の高い可動型長尺構造体、可動型長尺構造体に用いる配線補助具、可動型長尺構造器具、医療システム、ツール、マニピュレータ、ロボット、医療用ロボット、挿通方法、ロボットの操作方法、可動型長尺構造体の操作方法、軟性内視鏡及び操舵カテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】可動型長尺構造体の説明図。
図1(a)は可動型長尺構造体の正面、右側面、平面を表す斜視図、
図1(b)は先端側可撓チューブ、中間チューブ、及び基端側可撓チューブを透過状態で示した可動型長尺構造体の正面、右側面、平面を表す斜視図。
【
図2】可動型長尺構造体の説明図。
図2(a)は可動型長尺構造体の正面図、
図2(b)は
図2(d)におけるA-A矢視断面図、
図2(c)は可動型長尺構造体の背面図、
図2(d)は
図2(a)におけるB-B矢視断面図、
図2(e)は
図2(a)におけるC-C矢視断面図、
図2(f)は
図2(a)におけるD-D矢視断面図。
【
図3】可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図3(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図3(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図4】スペーサの説明図。
図4(a)は当該スペーサの正面図、
図4(b)は当該スペーサの平面図、
図4(c)は
図4(d)のE-E矢視断面図、
図4(d)は当該スペーサの左側面図、
図4(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図4(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図5】可動型長尺構造体の要部の説明図。
図5(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図5(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図7】また別の実施例のスペーサの説明図。
図7(a)は当該スペーサの正面図、
図7(b)は当該スペーサの平面図、
図7(c)は
図7(d)のF-F矢視断面図、
図7(d)は当該スペーサの左側面図、
図7(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図7(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図8】また別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図8(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図8(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図9】また別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図9(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図9(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図10】さらに別の実施例のスペーサの説明図。
図10(a)は当該スペーサの正面図、
図10(b)は当該スペーサの平面図、
図10(c)は
図10(d)のG-G矢視断面図、
図10(d)は当該スペーサの左側面図、
図10(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図10(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図11】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図11(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図11(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図12】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図12(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図12(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図13】さらに別の実施例のスペーサの説明図。
図13(a)は当該スペーサの正面図、
図13(b)は当該スペーサの平面図、
図13(c)は
図10(d)のH-H矢視断面図、
図13(d)は当該スペーサの左側面図、
図13(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図13(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図14】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図14(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図14(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図15】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図15(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図15(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図16】別の実施例のスペーサの説明図。
図16(a)は当該スペーサの正面図、
図16(b)は当該スペーサの平面図、
図16(c)は
図16(d)のI-I矢視断面図、
図16(d)は当該スペーサの左側面図、
図16(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図16(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図17】別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図17(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図17(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図18】別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図18(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図18(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図19】また別の実施例のスペーサの説明図。
図19(a)は当該スペーサの正面図、
図19(b)は当該スペーサの平面図、
図19(c)は
図19(d)のJ-J矢視断面図、
図19(d)は当該スペーサの左側面図、
図19(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図19(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図20】また別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図20(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図20(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図21】また別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図21(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図21(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図22】別の実施例のスペーサの説明図。
図22(a)は当該スペーサの正面図、
図22(b)は当該スペーサの平面図、
図22(c)は
図22(d)のK-K矢視断面図、
図22(d)は当該スペーサの左側面図、
図22(e)は当該スペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図22(f)は当該スペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図23】別の実施例の可動型長尺構造体の要部の拡大分解斜視図による説明図。
図23(a)は可動型長尺構造体の要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図23(b)は可動型長尺構造体の要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図24】別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図24(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図24(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図25】また別の実施例のスペーサの説明図。
図25(a)は当該スペーサの正面図、
図25(b)は当該スペーサの平面図、
図25(c)は
図25(d)のM-M矢視断面図、
図25(d)は当該スペーサの左側面図。
【
図26】また別の実施例のスペーサの要部の拡大斜視図による説明図。
図26(a)は別の実施例のスペーサの要部の正面、右側面、平面を表す拡大斜視図、
図26(b)は別の実施例の分解状態のスペーサの要部の正面、右側面、平面を表す拡大分解斜視図、
図26(c)は別の実施例のスペーサの要部の背面、左側面、底面を表す拡大斜視図、
図26(d)は別の実施例の分解状態のスペーサの要部の背面、左側面、底面を表す拡大分解斜視図。
【
図27】また別の実施例の可動型長尺構造体の要部の説明図。
図27(a)は組立前の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図、
図27(b)は組立状態の可動型長尺構造体の要部の拡大断面図。
【
図28】また別の実施例のスペーサの説明図。
図28(a)はまた別の実施例のスペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図28(b)はまた別の実施例のスペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図、
図28(c)はさらに別の実施例のスペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図28(d)はさらに別の実施例のスペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図29】また別の実施例のスペーサの説明図。
図29(a)はまた別の実施例のスペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図29(b)はまた別の実施例のスペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図、
図29(c)はさらに別の実施例のスペーサの正面、右側面、平面を表す斜視図、
図29(d)はさらに別の実施例のスペーサの背面、左側面、底面を表す斜視図。
【
図30】他の実施例におけるレトラクタの概略説明図。
図30(a)はレトラクタの斜視図、
図30(b)は牽引ワイヤーを透過状態で図示したレトラクタの斜視図。
【
図31】他の実施例におけるレトラクタの概略説明図。
図31(a)はレトラクタの平面図、
図31(b)は上方のワイヤールーメンを通る断面、
図31(c)は弾性レトラクタが開状態であるレトラクタの平面図。
【
図33】他の実施例における遠隔手術システムの概略図。
【
図34】遠隔手術システムにおける手術装置の概略説明図。
図34(a)は遠隔手術システムのロボットアーム組立体に装填され得る手術装置の平面図、
図34(b)は
図34(a)の手術装置の内部構成を示す図。
【
図35】遠隔手術システムに関する説明図。
図35(a)は各ユニットとの接続関係を示すブロック図、
図35(b)は遠隔手術システムの動作フロー図。
【
図36】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の説明図。
図36(a)は可動型長尺構造体の正面、右側面、平面を表す斜視図、
図36(b)は先端側可撓チューブ、及び基端側可撓チューブを透過状態で示した可動型長尺構造体の正面、右側面、平面を表す斜視図。
【
図37】さらに別の実施例の可動型長尺構造体の説明図。
図37(a)は可動型長尺構造体の正面図、
図37(b)は
図37(a)におけるN-N矢視断面図、
図37(c)は
図37(a)におけるO-O矢視断面図、
図37(d)は
図37(a)におけるP-P矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明における実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品及び構成要素には同一の符号を付す。本実施形態は、たとえば、以下のような開示を含む。
【0035】
[構成1]
可動型長尺構造体(10)は、可撓性を有する長尺状に形成され、内部に長手方向(L)に貫通する内部空間(31)を有する、少なくとも2本の管状体(20)と、可撓性を有する長尺状の牽引操作体(50)と、直列状に配置された2本の管状体(20)同士の間に配置され、牽引操作体(50)により保持される筒状部(42)を有し、管状体(20)に固定されない配線補助具(40,40a~40k)と、管状体(20)の少なくとも一方に対して、配線補助具(40,40a~40k)が少なくとも長手方向(L)に交差する径方向に移動することを規制する移動規制部(47,47a~47f,49)とを備える。
【0036】
なお、牽引操作体(50)は、管状体(20)の管壁に設けられた長手方向(L)に沿う一対の貫通路(32)を挿通するとともに、複数本設けてもよい。
配線補助具(40,40a~40k)は、筒状部(42)の端部に配置されるとともに、径外側に突出する突縁部(43,43X)を備え、牽引操作体(50)は、管状体(20)同士の間に配置した配線補助具(40,40a~40k)を、突縁部(43,43X)を介して保持し、上記配線補助具の移動規制部(47,47a~47f,49)は、筒状部(42)の端部面から少なくとも一方の管状体(20)に向かって突出する突起部であってもよい。
【0037】
突起部(47,47f)は、柱状であってもよいし、リング状部材(48)から突起する柱状であってもよいし、管壁の端面に設けられた嵌合凹部(38)に挿入されてもよいし、管状体(20)の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して嵌合する環状突起(47a,47d,49)であってもよい。
【0038】
突起部は、管状体(20)の外周面及び内周面の少なくとも一方に対して周方向において複数箇所で当接する小片状突起部(47b,47e)であってもよい。
突起部は、管状体(20)の内周面に対して周方向において複数箇所で当接するテーパー状小片突起部(47c)であってもよい。
【0039】
テーパー状小片突起部(47c)は、挿着状態において内周面に対して不用意な抜け出しを防止する抜出し防止部(係止爪)を有してもよい。
配線補助具(40,40a~40k)は、筒状部(42)の端部に配置され、径外側に突出する突縁部(43,43X)を備え、牽引操作体(50)は、管状体(20)同士の間に配置した配線補助具(40,40a~40k)を、突縁部(43,43X)を介して保持し、上記配線補助具の移動規制部は、少なくとも一方の管状体(20)の内部空間(31)と筒状部(42)の内部空間(41)とにわたって挿通される規制管状体(49)であってもよい。
【0040】
配線補助具(40,40a~40k)は、筒状部(42)が少なくとも一方の管状体(20)の内部空間(31)に挿通され、移動規制部が、筒状部(42)のうち、管状体(20)の内部空間(31)に挿通された部分で構成されてもよい。
移動規制部(47,47a~47f,49)は、配線補助具(40,40a~40k)が牽引操作体(50)による保持から不用意に外れることを防止する構成としてもよい。
【0041】
移動規制部は、両方の管状体(20)に対する配線補助具(40,40a~40k)の径方向の移動を規制してもよい。
牽引操作体(50)は可撓性を有するワイヤーであり、径外側に突出する突縁部はフランジ(43,43X)であってもよい。
【0042】
フランジ(43,43X)の外周部にワイヤーを内側に配置する切り欠き部(44)を設けてもよいし、フランジ(43,43X)にワイヤーが挿通される穴部(44a)を設けてもよい。
直列状に配置された2本の管状体(20)のうち先端側の管状体(20A)を、内部空間を有する弾性レトラクタ、弾性グリッパ、鉗子あるいはハサミとし、ワイヤ(50)でその開閉を行ってもよい。
【0043】
[構成2]
上述の可動型長尺構造体(10)に用いられる配線補助具(40)。
[構成3]
上述の可動型長尺構造体(10)と、一対の牽引操作体(50)を牽引する牽引駆動部(102,331)とが備えられ、牽引駆動部(102,331)で一対の牽引操作体(50)を牽引して先端側管状体(20A)を曲げ変形させる可動型長尺構造器具(100,317)。
【0044】
[構成4]
上述の可動型長尺構造体(10)と、一対の牽引操作体(50)を牽引する牽引駆動部(102,331)とが備えられ、牽引駆動部(102,331)は複数設けられ、所定の牽引駆動部(102,331)で一対の牽引操作体(50)を牽引して先端側管状体(20A)を所望の方向の曲げ変形及び/又は伸縮(伸展)変形させる可動型長尺構造器具(100,317)。
【0045】
[構成5]
上述の可動型長尺構造器具(100,317)と、牽引駆動部(102,331)を駆動する駆動ユニットと、駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニット(104,202)とを有する医療システム(200)。
【0046】
[構成6]
上述の可動型長尺構造器具(100,317)と、複数の牽引駆動部(102,331)のうち少なくともひとつを選択的に駆動する駆動ユニットと、駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニット(104,202)とを有する医療システム(200)。
複数の牽引駆動部(102,331)のうち少なくともひとつの駆動を選択的に操作する操作部が設けられるとともに、制御ユニット(104,202)に接続されてもよい。
【0047】
[構成7]
上述の可動型長尺構造器具(100,317)と、可動型長尺構造体(10)における基端側管状体(20C)をロボットアーム(312)の先端に取付ける取付部と、ロボットアーム(312)側において牽引駆動部(102,331)を駆動する駆動機構と接続する接続部(361)とが備えられたツール(317)。
【0048】
[構成8]
上述のツール(317)と、ツール(317)を先端に設けたロボットアーム(312)と牽引駆動部(102,331)及びロボットアーム(312)を駆動する駆動ユニットと、駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニット(104,202)とを有するロボット。
【0049】
[構成9]
上述の可動型長尺構造器具(100)と、本体側において牽引駆動部(102,331)を操作する操作部とが備えられたマニピュレータ(100)。
【0050】
[構成10]
上述の可動型長尺構造器具(100,317)に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニット(310a)と、リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニット(CPU)と、演算ユニット(CPU)からの出力に基づき牽引駆動部(102,331)によって所定の牽引操作体(50)を牽引して少なくとも先端側管状体(20A)を所望の方向の曲げ変形及び/又は伸縮(伸展)変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備えたロボット。
【0051】
[構成11]
上述のロボットを備え、出力ユニットは、可動型長尺構造体(10)を機械的に駆動する外部に設けられた駆動ユニットに駆動信号を提供する医療用ロボット。
[構成12]
上述の可動型長尺構造体(10)を管路に挿通し、牽引駆動部(102,331)を駆動制御して先端側管状体(20A)を曲げ変形させ、分岐する管路に先端側管状体(20A)を挿通させる挿通方法。
管路が管腔臓器、脈管及び血管の少なくともひとつであってもよい。
【0052】
[構成13]
上述の可動型長尺構造器具(100,317)を備えたロボットに対し、有線及び/又は無線で接続された入出力ユニット(310a)がリアルタイムに操作信号を受信し、演算ユニット(CPU)が、受信した操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行すると、演算ユニット(CPU)からの出力に基づき牽引駆動部(102,331)によって牽引操作体(50)を牽引して先端側管状体(20A)を所望の方向の曲げ変形及び/又は伸縮(伸展)変形するロボットの操作方法。
【0053】
[構成14]
先端側管状体(20A)と基端側管状体(20C)と牽引操作体(50)を有し、前記先端側管状体(20A)と前記基端側管状体(20C)との間で、前記牽引操作体(50)により取り外し可能に保持された配線補助具(40)が備えられた可動型長尺構造体(10)から配線補助具(40)を取り外す可動型長尺構造体の操作方法。
【0054】
[構成15]
一対の前記牽引操作体(50)を牽引して前記先端側管状体(20A)を曲げ変形させてもよいし、複数対の前記牽引操作体(50)が備えられ、複数対の前記牽引操作体(50)のうち所定の一対の前記牽引操作体(50)を牽引して前記先端側管状体(20A)を所望の方向に曲げ変形させてもよい。
【0055】
[構成16]
上述の可動型長尺構造体(10)と、一対の前記牽引操作体(50)を牽引する複数の牽引操作部(103)とが備えられ、前記牽引操作部(103)で一対の前記牽引操作体(50)を牽引して先端側(LF)の前記管状体(20A)を変形させる軟性内視鏡あるいは操舵カテーテル。
【0056】
[構成17]
上述のツール(317)と、ツール(317)を先端に設けたロボットアーム(312)と牽引駆動部(102,331)及びロボットアーム(312)を駆動する駆動ユニットと、駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニット(104,202)とを有し、前記制御ユニット(104,202)が人工知能(AI)を備えたロボット。
【0057】
[構成18]
上述のマニピュレータ(100)と、前記マニピュレータ(100)を先端に設けたロボットアーム(312)と牽引駆動部(102,331)及びロボットアーム(312)を駆動する駆動ユニットと、駆動ユニットに駆動信号を印加するように接続された制御ユニット(104,202)とを有し、前記制御ユニット(104,202)が人工知能(AI)を備えたロボット。
【0058】
[構成19]
可動型長尺構造器具(100,317)に有線及び/又は無線で接続された入出力ユニット(310a)と、リアルタイムに操作信号を受信する入力ユニットと、操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニット(CPU)と、演算ユニット(CPU)からの出力に基づき牽引駆動部(102,331)によって所定の牽引操作体(50)を牽引して少なくとも先端側管状体(20A)を所望の方向の曲げ変形及び/又は伸縮(伸展)変形する駆動信号を発生する出力ユニットとを備え、前記演算ユニット(CPU)が人工知能(AI)を備えたロボット。
【0059】
以下の実施例は、本発明の施術具の一例として医療機器について記載するが、本発明は医療機器に限定されない施術具を提供する。
図1~
図5は本発明の一実施例として、可動型長尺構造体10の構造図を示す。
【0060】
なお、可動型長尺構造体10における長手方向を長手方向Lとし、長手方向Lにおいて、基端側可撓チューブ20Cに対する先端側可撓チューブ20Aの側を先端側LFとし、先端側可撓チューブ20Aに対する基端側可撓チューブ20Cの側を基端側LBとしている。また、可動型長尺構造体10の説明の便宜上、
図1における上下方向を高さ方向Hとするとともに、上方を上方向HUとし、下方を下方向HDとしている。さらに、
図1における右上方と左下方とを結ぶ方向を幅方向Wとするとともに、右上方を右側WRとし、左下方を左側WLとしている。
【0061】
また、
図3及び
図5において、図示するスペーサ40が可動型長尺構造体10において先端側LFのスペーサ40である場合、スペーサ40より先端側LFの可撓チューブ20が先端側可撓チューブ20Aとなり、基端側LBの可撓チューブ20が中間可撓チューブ20Bとなる。これに対し、図示するスペーサ40が可動型長尺構造体10において基端側LBのスペーサ40である場合、スペーサ40より先端側LFの可撓チューブ20が中間可撓チューブ20Bとなり、基端側LBの可撓チューブ20が基端側可撓チューブ20Cとなる。なお、後述する
図8、9、11、12、14,15、17、18、20、21、23,24、27についても同様である。
【0062】
図1~5に示す可動型長尺構造体10は、長手方向Lに互いに所定間隔を隔てて直列配置した可撓チューブ20(20A,20B,20C)と、可撓チューブ20同士の間に配置するスペーサ40と、可撓チューブ20の管壁内部に挿通する牽引ワイヤー50を備えている。なお、可動型長尺構造体10は、長手方向Lに沿って外側を、図示省略する外装カバーで覆っている。また、スペーサ40の外側のみを、図示省略する外装カバーで覆ってもよい。
【0063】
可撓チューブ20は、長手方向Lに長い円筒形の可撓性を有するチューブであり、内部にメインルーメン31(
図2(d)~(f))を備えている。メインルーメン31は、長手方向Lに沿う円形断面である貫通空間であり、薬剤やカテーテルを挿通可能な管腔である。
【0064】
なお、メインルーメン31は、ひとつだけでなく、仕切られた複数のメインルーメン31であってもよい。
また、メインルーメン31の内部に電極などの適宜のツールを挿入し、充填材等を充填して固定する可動型長尺構造体のように、メインルーメン31は必ず貫通していなくてもよい。
【0065】
また、
図2(d)~(f)に示すように、可撓チューブ20におけるメインルーメン31と外周面との間の管壁内部にワイヤールーメン32(33,34,35,36)と、位置規制ルーメン37を備えている。
【0066】
ワイヤールーメン32は、管壁内部において長手方向Lに延びる円形断面の貫通空間であり、後述する牽引ワイヤー50が挿通できる径で形成している。
ワイヤールーメン32は、リング状断面である管壁における四方向に設けられている。
【0067】
具体的には、
図2(d)~(f)に示すように、リング状断面である管壁における上方向HUのワイヤールーメン33(33a,33b)、下方向HDのワイヤールーメン34(34a,34b)、右側WRのワイヤールーメン35(35a,35b)、左側WLのワイヤールーメン36(36a,36b)を備えている。
【0068】
また、上述のようにリング状断面である管壁における四方向に設けられたワイヤールーメン32は、一対構成された牽引ワイヤー50を挿通するように、円形断面における周方向に所定の間隔を隔ててそれぞれ2本ずつ備えている。
【0069】
なお、2つの貫通孔で一対構成されたワイヤールーメン33,34,35,36における反時計回り側を33a,36a,34a,35aとし、時計周り側を33b,35b,34b,36bとしている。
【0070】
また、
図3(a)に示すように、リング状断面である管壁における四方向において2本ずつ備えられたワイヤールーメン32同士の間隔は、周方向に隣り合うワイヤールーメン32(33bと35a,35bと34a,34bと36a,36bと33a)同士の間隔の半分程度の間隔で設定している。
なお、四方向において2本ずつ備えられたワイヤールーメン32を一体で構成して楕円状に形成してもよい。
【0071】
位置規制ルーメン37は、ワイヤールーメン32同士の間に配置され、管壁内部において長手方向Lに延びる円形断面の貫通空間であり、後述するスペーサ40の位置規制凸部47を挿通できる径で形成している。
ワイヤールーメン32同士の間に配置された位置規制ルーメン37は、斜め四方向に配置されている。具体的には、ワイヤールーメン33bとワイヤールーメン35aとの間、ワイヤールーメン35bとワイヤールーメン34aとの間、ワイヤールーメン34bとワイヤールーメン36aとの間、ワイヤールーメン36bとワイヤールーメン33aとの間の四か所に位置規制ルーメン37を設けている。
【0072】
なお、位置規制ルーメン37は、ワイヤールーメン32と同様に管壁内部において長手方向Lに延びる円形断面の貫通空間で形成しているが、位置規制凸部47がしっかりと挿入できれば、貫通されていなくてもよい。
【0073】
上述のような構成の可撓チューブ20は、例えば、ポリアミドエラストマー、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、或いはポリテトラフルオロエチレンなどの可撓性を有するチューブで構成することができる。
なお、可撓チューブ20のうち、長手方向Lの中間及び基端側LBに配置される中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cは、先端側可撓チューブ20Aと可撓性が異なる別素材で構成してもよい。
【0074】
先端側可撓チューブ20Aと中間可撓チューブ20Bとの間、及び中間可撓チューブ20Bと基端側可撓チューブ20Cとの間に配置したスペーサ40について説明する。
スペーサ40は、
図3に示すように、長手方向Lに貫通する円形断面である内部空間41を有するシリンダ42と、シリンダ42の長手方向Lの両端部に設けた突縁部43(43a,43b)と、誘導凸部46と、位置規制凸部47とを備えている。
【0075】
内部空間41は、上述のメインルーメン31と同径の空間で形成されている。シリンダ42は、先端側可撓チューブ20Aに設けたワイヤールーメン32及び基端側可撓チューブ20Cに設けたワイヤールーメン32に牽引ワイヤー50の挿通を妨げない径で形成されている。
【0076】
突縁部43(43a,43b)は、シリンダ42の外表面からシリンダ42の径方向に突出して形成され、ワイヤールーメン32に対応する箇所に、牽引ワイヤー50を配置する配置凹部44を設けるとともに、配置凹部44同士の間を規制部45としている。なお、突縁部43は、可撓チューブ20の外径と同等の外径で形成している。
【0077】
配置凹部44は、2本ずつ設けたワイヤールーメン32に挿通する2本の牽引ワイヤー50をまとめて配置する凹部であり、2本のワイヤールーメン32に対応する幅及び深さで形成している。
なお、シリンダ42の長手方向Lの両側に設けた突縁部43のうち先端側LFを先端側突縁部43aとし、基端側LBを基端側突縁部43bとしている。
【0078】
また、先端側突縁部43aにおいて同じ配置凹部44に配置した牽引ワイヤー50同士が周方向に離間することを、配置凹部44の両側に設けた規制部45で規制し、基端側突縁部43bにおいて周方向に隣り合う配置凹部44に配置した牽引ワイヤー50同士が周方向に近接することを、配置凹部44同士の間の規制部45で規制している。
【0079】
さらにまた、シリンダ42における長手方向Lの端部に牽引ワイヤー50を径外側に誘導する誘導凸部46を備えている。
図4(a)~(c)に示すように、誘導凸部46は、長手方向Lの端部において突縁部43の配置凹部44に対応する位置に、対応する幅で設けられ、長手方向Lの端部からシリンダ42における長手方向Lの中央に向かって徐々に突出高さが高くなる台形の縦断面形状となるように形成している。
【0080】
誘導凸部46は、長手方向Lの両端部において、四方向に設けられた配置凹部44のうち径方向に対向する位置に設けられており、対向方向が先端側LFの誘導凸部46と基端側LBの誘導凸部46とで直交するように設けられている。
【0081】
具体的には、先端側LFの誘導凸部46は幅方向Wに対向するように右側WRと左側WLとに設けられ、基端側LBの誘導凸部46は高さ方向Hに対向するように上方向HUと下方向HDとに設けられている。
【0082】
先端側突縁部43aにおける規制部45に、先端側LFに向かって突出する位置規制凸部47を設けている。
位置規制凸部47は、可撓チューブ20の位置規制ルーメン37に挿入可能な適宜の高さの円柱状に形成されている。
【0083】
なお、上述のように構成されたスペーサ40は、例えば、ステンレスなどの金属材料、ポリテトラフルオロエチレンなどの弾性体、ばねなどの弾性体あるいは樹脂材料などで構成することができる。
【0084】
また、スペーサ40は、シリンダ42と突縁部43とを一体で構成してもよいし、別体で構成して組み付けてもよい。なお、シリンダ42と突縁部43とを別体で構成した場合、シリンダ42と突縁部43とを同じ素材で構成してもよいし、異なる素材で構成してもよい。
【0085】
また、牽引ワイヤー50は可撓性を有するワイヤーであり、可動型長尺構造体10の長手方向Lの長さの二倍以上の長さで形成されている。
牽引ワイヤー50は、
図1及び
図2に示すように、後述する先端キャップ60の曲げ凹部61に配置される曲返し部51と、曲返し部51より基端側LBの2本の牽引部分52とで構成している。
【0086】
上述のように、曲返し部51で曲げ返され、一対の牽引部分52を有する牽引ワイヤー50は、四方向に設けたワイヤールーメン32に対応して4本備えられている。
【0087】
具体的には、牽引ワイヤー50は、
図2(d)及び
図2(f)に示す基端側可撓チューブ20Cにおいて、高さ方向Hに配置される牽引部分53(53a,53b)及び牽引部分54(54a,54b)、幅方向Wに配置される牽引部分55(55a,55b)、及び牽引部分56(56a,56b)がある。
【0088】
それぞれの牽引部分53,54,55,56における牽引部分52に対応する部分の一方を牽引部分53a,54a,55a,56aとし、他方を牽引部分53b,54b,55b,56bとしている。
なお、牽引ワイヤー50は、ステンレスなどの金属材料やナイロン,フロロカーボンなどで構成することができる。
【0089】
図1及び
図2に示すように、先端側可撓チューブ20Aにおける先端側LFの端部に先端キャップ60を備えている。
先端キャップ60は、後述する牽引ワイヤー50の曲返し部51を形成するための曲げ凹部61を備えている。曲げ凹部61は、管壁における四方向に設けられたワイヤールーメン32に対応し、四箇所に設けており、牽引ワイヤー50を挿通する挿通孔を2つずつ設けている。
【0090】
なお、先端キャップ60は、可動型長尺構造体10を用いる機器においてメインルーメン31、後述する内部空間41、メインルーメン31が連通して構成するメインルーメンに挿通する器具等によって長手方向Lに貫通する貫通孔(図示省略)などが設けられていてもよいし、貫通孔がなくてもよい。
【0091】
各要素が上述のように構成された可動型長尺構造体10の組み付けについて以下で説明する。
先ず、先端側LFから基端側LBに向かって、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40、中間可撓チューブ20B、スペーサ40及び基端側可撓チューブ20Cを長手方向Lに沿って直列状にこの順で配置する。
【0092】
このとき、
図3及び
図5に示すように、先端側LFの可撓チューブ20の位置規制ルーメン37に、スペーサ40の位置規制凸部47を差し込む。
このように配置することで、先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン32(33,34,35,36)、スペーサ40の四方向の配置凹部44、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン32、スペーサ40の四方向の配置凹部44、及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン32のそれぞれが長手方向Lに連通することとなる。
【0093】
そして、
図2に示すように、先端側可撓チューブ20Aにおける上方向HUのワイヤールーメン33における左側WLのワイヤールーメン33aに挿通する牽引部分54bは、中間可撓チューブ20Bにおける左側WLに設けたワイヤールーメン36の下方向HDのワイヤールーメン36aに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける下方向HDに設けたワイヤールーメン34の左側WLのワイヤールーメン34bに挿通される。
【0094】
そして、先端側可撓チューブ20Aにおける上方向HUのワイヤールーメン33における右側WRのワイヤールーメン33bに挿通する牽引部分54aは、中間可撓チューブ20Bにおける右側WRに設けたワイヤールーメン35の上方向HUのワイヤールーメン35aに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける上方向HUに設けたワイヤールーメン33の右側WRのワイヤールーメン33bに挿通される。
【0095】
また、先端側可撓チューブ20Aにおける下方向HDのワイヤールーメン34における右側WRのワイヤールーメン34aに挿通する牽引部分53bは、中間可撓チューブ20Bにおける右側WRに設けたワイヤールーメン35の下方向HDのワイヤールーメン35bに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける下方向HDに設けたワイヤールーメン34の右側WRのワイヤールーメン34aに挿通される。
【0096】
そして、先端側可撓チューブ20Aにおける下方向HDのワイヤールーメン34における左側WLのワイヤールーメン34bに挿通する牽引部分53aは、中間可撓チューブ20Bにおける左側WLに設けたワイヤールーメン36の上方向HUのワイヤールーメン36bに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける上方向HUに設けたワイヤールーメン34の左側WLのワイヤールーメン33aに挿通される。
【0097】
これに対し、先端側可撓チューブ20Aにおける幅方向Wのワイヤールーメン35,36には牽引部分55,56を挿通せず、中間可撓チューブ20Bにおける上方向HUに設けたワイヤールーメン33の左側WLのワイヤールーメン33aの牽引部分55aに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける左側WLに設けたワイヤールーメン36の上方向HUのワイヤールーメン36bに挿通される。
【0098】
そして、中間可撓チューブ20Bにおける上方向HUに設けたワイヤールーメン33の右側WRのワイヤールーメン33bの牽引部分55bに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける右側WRに設けたワイヤールーメン35の上方向HUのワイヤールーメン35aに挿通される。
【0099】
また、中間可撓チューブ20Bにおける下方向HDに設けたワイヤールーメン34の右側WRのワイヤールーメン34aの牽引部分56aに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける右側WRに設けたワイヤールーメン35の下方向HDのワイヤールーメン35bに挿通される。
【0100】
そして、中間可撓チューブ20Bにおける下方向HDに設けたワイヤールーメン34の左側WLのワイヤールーメン34bの牽引部分56bに挿通され、基端側可撓チューブ20Cにおける左側WLに設けたワイヤールーメン36の下方向HDのワイヤールーメン36aに挿通される。
【0101】
なお、先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン33に挿通せず、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン33と基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン33に挿通する牽引部分55,56は、先端側可撓チューブ20Aと中間可撓チューブ20Bとの間に配置したスペーサ40の突縁部43の配置凹部44eで曲返し部51が形成され、曲げ返されている。
【0102】
また、可動型長尺構造体10における先端側可撓チューブ20Aと中間可撓チューブ20Bとの間に配置したスペーサ40において、
図2(a)に示す正面側では牽引部分53aと牽引部分54bとが交差するものの、
図2(c)に示す背面側において牽引部分53bと牽引部分54aとは交差しないように配索されている。
【0103】
このように構成された可動型長尺構造体10は、牽引部分53及び牽引部分54が先端側可撓チューブ20A、中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通され、牽引部分55及び牽引部分56は中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通される。
【0104】
したがって、基端側可撓チューブ20Cと中間可撓チューブ20Bとの間に配置されたスペーサ40は、牽引部分53,54,55,56の4本が配置されるが、先端側可撓チューブ20Aと中間可撓チューブ20Bとの間に配置されたスペーサ40には牽引部分53,54の2本が配置されることとなる。
そのため、牽引ワイヤー50同士の交差が少なく、誘導凸部46(
図4)を先端側LFにのみ設けたスペーサ40を用いてもよい。
【0105】
上述のように、牽引部分53及び牽引部分54が先端側可撓チューブ20A、中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通され、牽引部分55及び牽引部分56が中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通される可動型長尺構造体10は、先端側可撓チューブ20A、中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通する牽引部分53及び牽引部分54のいずれかを基端側LBに牽引することで中間可撓チューブ20Bと基端側可撓チューブ20Cにほぼ干渉することなく、中間可撓チューブ20Bに対して先端側可撓チューブ20Aを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができる。
【0106】
これに対し、中間可撓チューブ20B及び基端側可撓チューブ20Cに挿通する牽引部分55及び牽引部分56のいずれかを基端側LBに牽引することで基端側可撓チューブ20Cにほぼ干渉することなく、基端側可撓チューブ20Cに対して中間可撓チューブ20Bを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができる。このとき、牽引部分53及び牽引部分54が牽引されていなければ、先端側可撓チューブ20Aは中間可撓チューブ20Bに対して曲がることなく、基端側可撓チューブ20Cに対して上方向HUあるいは下方向HDに曲がる中間可撓チューブ20Bに追従して曲がることとなる。このとき、牽引部分53及び牽引部分54が牽引されていれば、先端側可撓チューブ20Aは曲がった中間可撓チューブ20Bおよび基端側可撓チューブ20Cにほぼ干渉することなく、中間可撓チューブ20Bに対して上方向HUあるいは下方向HDに曲がることとなる。つまり、可動型長尺構造体10は、先端側可撓チューブ20Aと中間可撓チューブ20Bと基端側可撓チューブ20Cとでそれぞれほぼ干渉することなく曲げることができる。
【0107】
上述のように、先端側可撓チューブ20Aと基端側可撓チューブ20Cとの間に、ワイヤールーメン32を有し、長尺状の中間可撓チューブ20Bが配置されるとともに、複数対の牽引ワイヤー50が設けられ、複数対の牽引ワイヤー50のうち少なくとも一対の牽引ワイヤー50は、先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン32、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン32及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン32に挿通され、複数対の牽引ワイヤー50のうち少なくとも一対の牽引ワイヤー50は、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン32及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン32に挿通されている。そのため、基端側可撓チューブ20Cに対して、中間可撓チューブ20Bと先端側可撓チューブ20Aとをそれぞれ曲げることができる可動型長尺構造体10を構成することができる。
【0108】
詳述すると、複数対の牽引ワイヤー50のうち牽引ワイヤー55,56を中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン33,34及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン35,36に挿通し、複数対の牽引ワイヤー50のうち他の牽引ワイヤー53,54を、先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン33,34、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン35,36及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン33,34に挿通しているため、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン33,34及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン35,36に挿通した牽引ワイヤー55,56を牽引することで可動型長尺構造体10における中間部分の中間可撓チューブ20Bを基端側可撓チューブ20Cにほぼ干渉することなく曲げることができ、先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン33,34、中間可撓チューブ20Bのワイヤールーメン35,36及び基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン33,34に挿通している牽引ワイヤー53,54を牽引することで可動型長尺構造体10の先端部分である先端側可撓チューブ20Aを中間可撓チューブ20Bおよび基端側可撓チューブ20Cにほぼ干渉することなく曲げることができる。
【0109】
このように、上述の構成により、可動型長尺構造体10における中間部分の中間可撓チューブ20Bと、可動型長尺構造体10の先端部分である先端側可撓チューブ20Aとをそれぞれほぼ干渉することなく曲げることができる。
【0110】
また、上述したように、牽引ワイヤー50を牽引することで中間可撓チューブ20B(基端側可撓チューブ20C)に対して先端側可撓チューブ20A(中間可撓チューブ20B)を曲げることができる可動型長尺構造体10において、スペーサ40は、突縁部43における四方向に設けた配置凹部44に2本ずつの牽引ワイヤー50を配置しているため、つまり四方向からそれぞれ2本ずつの牽引ワイヤー50で突縁部43を囲んでいるため、可撓チューブ20同士の間にスペーサ40を保持することができる。
【0111】
しかしながら、中間可撓チューブ20Bに対して先端側可撓チューブ20Aが大きく屈曲するように牽引ワイヤー50が牽引されると、スペーサ40に対して曲げ方向に外側向きの荷重が作用し、四方向から牽引ワイヤー50で囲まれて保持されたスペーサ40が可撓チューブ20同士の間から不用意に脱落しようとするが、スペーサ40の先端側突縁部43aに設けた位置規制凸部47を先端側LFの可撓チューブ20の位置規制ルーメン37に挿入しているため、スペーサ40に対して作用する曲げ方向に外側向きの荷重に抗して脱落することを防止できる。
【0112】
図6は別の実施例のスペーサ40の分解斜視図を示す。なお、上述のスペーサ40では、先端側突縁部43aから先端側LFに向かって突出するように位置規制凸部47を備えたが、
図6のスペーサ40のように、先端側突縁部43aに対して、別体構成した位置規制凸部47を取り付けてもよい。
【0113】
具体的には、スペーサ40と別体構成した取付突起部48を先端側突縁部43aに取り付けてスペーサ40に位置規制凸部47を設ける。
取付突起部48は、突縁部43と同形状の突縁部43cと、位置規制凸部47とを備えて構成し、突縁部43cを先端側突縁部43aの先端側LFに固定して構成することができる。
【0114】
これにより、取付突起部48を先端側突縁部43aに取り付けたスペーサ40は、上述のスペーサ40と同様の効果を奏する。さらに、取付突起部48を先端側突縁部43aに取り付けることで、位置規制凸部47を備えていないスペーサ40であっても、位置規制凸部47を備えたスペーサ40として用いることができる。
【0115】
図7はまた別の実施例のスペーサ40aの説明図を示し、
図8はまた別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図9はまた別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
上述のスペーサ40では、先端側突縁部43aより先端側LFに突出する位置規制凸部47を位置規制ルーメン37に挿入したが、位置規制凸部47の代わりに、
図7~
図9のスペーサ40aのように、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する突出リング47aを設け、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に突出リング47aを挿入するように構成してもよい。
【0116】
このようにスペーサ40aを用いた可動型長尺構造体10は、上述のスペーサ40を用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏する。さらに、スペーサ40aは突出リング47aをメインルーメン31に挿入するため、可撓チューブ20の断面中央で可撓チューブ20に対するスペーサ40の位置規制をすることができる。
【0117】
なお、突出リング47aを先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に挿入して、先端側LFの可撓チューブ20とスペーサ40とを組み付けるため、可撓チューブ20にはメインルーメン31とワイヤールーメン32だけを設け、位置規制ルーメン37を設けなくてもよいが、図示するように、位置規制ルーメン37を設けてもよい。
【0118】
上述のスペーサ40aでは、先端側突縁部43aより先端側LFに突出する突出リング47aを位置規制ルーメン37に挿入したが、突出リング47aの代わりに、後述する
図10~
図12に示すように、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する突出片47bを設け、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に突出片47bを挿入するように構成してもよい。
図10はさらに別の実施例のスペーサ40bの説明図を示し、
図11はさらに別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図12はさらに別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0119】
上述のスペーサ40aの突出リング47aは円形リング状に形成されていたが、スペーサ40bは、内部空間41に沿って、先端側LFに向かって突出する切片で突出片47bを形成し、周方向に所定の間隔を隔てて複数設けている。なお、
図10~
図12に図示するスペーサ40bは、4つの突出片47bを設けているが、2つ以上であればいくつであってもよい。
【0120】
突出片47bを有するスペーサ40bは、上述の突出リング47aを有するスペーサ40aと同様に、可撓チューブ20のメインルーメン31に突出片47bを挿入して可撓チューブ20と組み付けて可動型長尺構造体10を構成することとなる。
このように構成された突出片47bを有するスペーサ40bを用いた可動型長尺構造体10は、上述の突出リング47aを有するスペーサ40aを用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。
【0121】
上述のスペーサ40bでは、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する突出片47bを4つ設け、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に突出片47bを挿入するように構成したが、突出片47bの代わりに、後述する
図13~
図15に示すように、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する突出係止片47cを設け、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に突出係止片47cを挿入して係止するように構成してもよい。
図13はさらに別の実施例のスペーサ40cの説明図を示し、
図14はさらに別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図15はさらに別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0122】
突出係止片47cは、突出片47bと同様に、先端側突縁部43aから内部空間41に沿って先端側LFに向かって突出するものの、先端の外側に係止可能な係止爪を備え、周方向に対向する向きで2つ備えている。
なお、突出係止片47cを有するスペーサ40cを装着する可撓チューブ20は、
図15に示すように、メインルーメン31の基端側LBの内面に、突出係止片47cの係止爪が係止する係止凹部28を、周方向に対向する位置に設けている。
【0123】
突出係止片47cを有するスペーサ40cは、突出片47bを有するスペーサ40bと同様に、可撓チューブ20のメインルーメン31に突出係止片47cを挿入し、係止凹部28に係止爪を係止させて可撓チューブ20と組み付けて可動型長尺構造体10を構成することとなる。
このように構成された突出係止片47cを有するスペーサ40cを用いた可動型長尺構造体10は、上述の突出片47bを有するスペーサ40bを用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。さらに、突出係止片47cを有するスペーサ40cを用いた可動型長尺構造体10は、突出係止片47cの係止爪を先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に形成した係止凹部28に係止するため、より確実に可撓チューブ20に対してスペーサ40を位置規制することができる。
【0124】
上述のスペーサ40a,40b,40cでは、先端側突縁部43aより先端側LFに突出する突出リング47a,突出片47b,突出係止片47cをメインルーメン31に挿入したが、突出リング47a,突出片47b,突出係止片47cの代わりに、後述する
図16~
図18に示すように、先端側突縁部43aの外周縁に沿って先端側LFに突出するリング状の嵌合リング47dを設け、先端側LFの可撓チューブ20の外周に嵌合リング47dを嵌合するように構成してもよい。
図16は別の実施例のスペーサ40dの説明図を示し、
図17は別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図18は別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0125】
図18に示すように、スペーサ40dを用いた可動型長尺構造体10では、先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの端部の外周に対して、スペーサ40dの嵌合リング47dを基端側LBから嵌合し、先端側LFの可撓チューブ20とスペーサ40dとを組み付けた状態で、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40d、中間可撓チューブ20B、スペーサ40d及び基端側可撓チューブ20Cを先端側LFから基端側LBに向かってこの順で配置し、ワイヤールーメン32に牽引ワイヤー50を挿通して組付を完了する。
【0126】
このようにスペーサ40dを用いた可動型長尺構造体10は、上述のスペーサ40を用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏する。さらに、スペーサ40dは嵌合リング47dを先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの端部に嵌合するため、可撓チューブ20の断面全体で可撓チューブ20に対するスペーサ40の位置規制をすることができる。
【0127】
上述のスペーサ40dでは、先端側突縁部43aの外周縁より先端側LFに向かって円形状に突出する嵌合リング47dを先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの外周に嵌合したが、嵌合リング47dの代わりに、
図19~
図21に示すように、先端側突縁部43aの規制部45の外周縁に沿って先端側LFに突出する嵌合片47eを設け、先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの外周に対して嵌合片47eを複数箇所に嵌合するように構成してもよい。
【0128】
図19はまた別の実施例のスペーサ40eの説明図を示し、
図20はまた別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図21はまた別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0129】
上述のスペーサ40dの嵌合リング47dは円形リング状に形成されていたが、スペーサ40eは、先端側突縁部43aの規制部45の外周縁に沿って、先端側LFに向かって突出する切片で形成した嵌合片47eを周方向に所定の間隔を隔てて複数設けている。なお、
図19~
図21に図示するスペーサ40eは、4つの規制部45に対してそれぞれに嵌合片47eを設けているが、2つ以上であればいくつであってもよい。
【0130】
嵌合片47eを有するスペーサ40eは、嵌合リング47dを有するスペーサ40dと同様に、先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの端部の外周に対して嵌合片47eを嵌合して可撓チューブ20と組み付けて可動型長尺構造体10を構成することとなる。
このように構成された嵌合片47eを有するスペーサ40eを用いた可動型長尺構造体10は、上述の嵌合リング47dを有するスペーサ40dを用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。
【0131】
上述のスペーサ40では、先端側突縁部43aより先端側LFに突出する位置規制凸部47を位置規制ルーメン37に挿入したが、位置規制凸部47の代わりに、後述する
図22~
図24に示すように、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する突出ブロック47fを設け、先端側LFの可撓チューブ20の端部に設けた挿入凹部38に突出ブロック47fを挿入するように構成してもよい。
図22は別の実施例のスペーサ40fの説明図を示し、
図23は別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の拡大分解斜視図による説明図を示し、
図24は別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0132】
スペーサ40fは、先端側突縁部43aにおいて、スペーサ40aと同様の突出リング47aと、突出リング47aに対して径外側に設けられ、規制部45よりひと回り小さな側面視略扇状の突出ブロック47fとを備えている。
【0133】
スペーサ40fが組付けられる先端側LFの可撓チューブ20の基端側LBの端部には、ワイヤールーメン32同士の間に、突出ブロック47fが嵌合される挿入凹部38を設けている。挿入凹部38は、突出ブロック47fと同様の形状の空間である。
なお、突出ブロック47f及び挿入凹部38は、規制部45に対応して、四方向に設けている。
【0134】
突出ブロック47fを有するスペーサ40fは、突出リング47aを有するスペーサ40aと同様に、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に突出リング47aを挿入するとともに、挿入凹部38に突出ブロック47fを挿入して可撓チューブ20と組み付けて可動型長尺構造体10を構成することとなる。
【0135】
このように構成された突出ブロック47fを有するスペーサ40fを用いた可動型長尺構造体10は、上述の突出リング47aを有するスペーサ40aを用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。
【0136】
上述のスペーサ40aでは、先端側突縁部43aより先端側LFに突出する突出リング47aをメインルーメン31に挿入したが、上述の突出リング47aの代わりに、後述する
図25~
図27に示すように、先端側突縁部43aより内部空間41に沿って先端側LFに突出する挿通パイプ49を設け、先端側LFの可撓チューブ20のメインルーメン31に挿通パイプ49の一部を挿入するように構成してもよい。
図25はまた別の実施例のスペーサ40gの説明図を示し、
図26はまた別の実施例のスペーサ40の要部の拡大斜視図による説明図を示し、
図27はまた別の実施例の可動型長尺構造体10の要部の説明図を示す。
【0137】
スペーサ40aは、内部空間41に沿って先端側LFに向かって突出する突出リング47aを設けたが、スペーサ40gは、上述の突出リング47aの代わりに別体構成された挿通パイプ49を備えている。
詳述すると、スペーサ40gは、スペーサ40aにおける突出リング47aを除いた構成であり、内部空間41を有するシリンダ42と、シリンダ42の長手方向Lの両側に備えた突縁部43(43a,43b)と、シリンダ42の外周に設けた誘導凸部46とを一体構成するとともに、別体構成された挿通パイプ49を備えている。
【0138】
挿通パイプ49は、内部空間41及びメインルーメン31に挿通可能な外径を有するとともに、長手方向Lに貫通する内部空間を有するパイプ体であり、所定の外力によって弾性変形する弾性素材で構成している。
そして、スペーサ40gは、内部空間41に挿通パイプ49を挿通し、先端側突縁部43aと基端側突縁部43bから長手方向Lの外側に向かって同程度の長さ突出するように組み付けて構成される。
【0139】
挿通パイプ49を有するスペーサ40gは、先端側LF及び基端側LBの可撓チューブ20のメインルーメン31に、突出する挿通パイプ49を挿入して可撓チューブ20と組み付けて可動型長尺構造体10を構成することとなる。
このように構成された挿通パイプ49を有するスペーサ40gを用いた可動型長尺構造体10は、上述の突出リング47aを有するスペーサ40aを用いた可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。さらに、挿通パイプ49を有するスペーサ40gを用いた可動型長尺構造体10は、先端側LFと基端側LBの両方の可撓チューブ20のメインルーメン31に突縁部43より突出する挿通パイプ49を挿入するため、長手方向Lの両側の可撓チューブ20に対して位置規制されることとなる。
【0140】
なお、挿通パイプ49を有するスペーサ40gにおいて、突縁部43より長手方向Lの一方側に挿通パイプ49を突出させ、挿通パイプ49が突出する側の可撓チューブ20のメインルーメン31に挿通パイプ49を挿入して位置規制するように構成してもよい。
【0141】
また、挿通パイプ49における突縁部43より長手方向Lに突出する長さが短い、つまり、可撓チューブ20のメインルーメン31に挿通される長さが短い場合は、可撓チューブ20の可撓性に与える影響が少なくなるため、挿通パイプ49は、スペーサ40と同様の素材で構成してもよい。
【0142】
また、上述のスペーサ40gでは、挿通パイプ49を別体で構成し、内部空間41に挿通したが、シリンダ42を挿通パイプ49と同様の長いパイプ状に構成し、シリンダ42に対して所定位置に突縁部43を固定して構成してもよい。この場合であっても、上述のスペーサ40gと同様の効果を奏するとともに、スペーサ40gより部品点数を削減することができる。
【0143】
上述のスペーサ40では、配置凹部44と規制部45とが周方向に交互に配置された突縁部43の先端側突縁部43aより先端側LFに突出する位置規制凸部47を先端側LFの可撓チューブ20の位置規制ルーメン37に挿入したが、
図28(a),(b)に示すように、配置凹部44の代わりに2つずつの貫通する貫通孔44aを有する突縁部43Xで構成する先端側突縁部43aに位置規制凸部47を設けたスペーサ40hであってもよい。さらには、
図28(c),(d)に示すように、スペーサ40hにおける誘導凸部46を備えていないスペーサ40iであってもよい。
【0144】
このように構成したスペーサ40h,40iは、突縁部43が突縁部43Xであったとしても、上述の位置規制凸部47を備えたスペーサ40と同様の効果を奏することができる。
もちろん、配置凹部44と規制部45とを周方向に交互に配置した突縁部43で構成するスペーサ40において誘導凸部46を設けない構成であっても同様の効果を奏することができる。
【0145】
上述のスペーサ40では、配置凹部44と規制部45とが周方向に交互に配置された突縁部43の先端側突縁部43aより先端側LFに突出する突出リング47aを先端側LFのメインルーメン31に挿入したが、
図29(a),(b)に示すように、配置凹部44の代わりに2つずつの貫通する貫通孔44aを有する突縁部43Xで構成する先端側突縁部43aに突出リング47aを設けたスペーサ40jであってもよい。さらには、
図29(c),(d)に示すように、貫通孔44aを有する突縁部43Xで構成する先端側突縁部43aに突出片47bを設けたスペーサ40kであってもよい。
【0146】
このように構成したスペーサ40j,40kは、突縁部43が突縁部43Xであったとしても、上述の突出リング47aを備えたスペーサ40aと同様の効果を奏することができる。
もちろん、スペーサ40a,40b,40j,40kにおいて誘導凸部46を設けない構成であっても同様の効果を奏することができる。
【0147】
また、後述する
図30及び
図31に図示するように、可動型長尺構造体10を利用してレトラクタ300を構成してもよい。
図30はレトラクタ300の概略説明図を示している。
図30(a)はレトラクタ300の斜視図を示し、
図30(b)は牽引ワイヤー50を透過状態で図示したレトラクタ300の斜視図を示している。
【0148】
図31はレトラクタ300の概略説明図を示している。
図31(a)はレトラクタ300の平面図を示し、
図31(b)は上方のワイヤールーメンを通る断面、
図31(c)は弾性レトラクタ301が開状態であるレトラクタ300の平面図を示している。
【0149】
レトラクタ300は、上述の可動型長尺構造体10を利用し、可動型長尺構造体10における先端側可撓チューブ20Aの代わりに、スペーサ40の先端側LFに弾性レトラクタ301を備えている。詳しくは、
図2に示す可動型長尺構造体10を、幅方向Wが高さ方向Hとなる向きで用いている。
【0150】
なお、レトラクタ300におけるスペーサ40は、可動型長尺構造体10における先端側LFのスペーサ40よりも、シリンダ42の長手方向Lの長さを短く形成しているが、その他の構成については同じである。また、牽引ワイヤー50の配索についても、可動型長尺構造体10における配索と同じであるため、説明は省略する。
【0151】
弾性レトラクタ301は、幅方向Wに対向する向きで配置された2つがスペーサ40の先端側LFに固定されている。
弾性レトラクタ301は、先端側LFに延びる弾性本体302と、弾性本体302から幅方向Wの外側に突出する複数のプレート部303とで構成している。
【0152】
弾性本体302は、高さ方向Hより長手方向Lに長い所定の厚みを有する長方形状の板体であり、プレート部303は、幅方向Wより高さ方向Hに長い所定の厚みを有する長方形状の板体である。
プレート部303は、長手方向Lに所定間隔を隔てて複数配置され、弾性本体302と一体構成されて、幅方向Wよりも高さ方向Hに長く、高さ方向Hより長手方向Lに長い略直方体状に形成されている。
【0153】
長手方向Lに所定間隔を隔てて複数配置されたプレート部303には、可動型長尺構造体10における先端側可撓チューブ20Aのワイヤールーメン32(33,34)に対応し、牽引ワイヤー50(54,53)が挿通される挿通孔304が形成されている。
【0154】
このように構成された弾性レトラクタ301は、スペーサ40の先端側LFにおいて、幅方向Wに所定の間隔を隔てて対向する向き、つまり弾性本体302に対するプレート部303が突出する方向が幅方向Wの外側になるように配置されている。
そして、左側WLの弾性レトラクタ301の挿通孔304には牽引部分53が挿通され、右側WRの弾性レトラクタ301の挿通孔304には牽引部分54が挿通される。
【0155】
このように構成されたレトラクタ300は、基端側LBにおいて高さ方向Hに配置された牽引部分55,56を基端側LBに牽引することで、
図30(a)において矢印で示すように、中間可撓チューブ20Bを幅方向Wに曲げることができる。
【0156】
具体的には、基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン34,36における左側WLのワイヤールーメン34b、36aに挿通される牽引部分56を基端側LBに牽引することで中間可撓チューブ20Bを左側WLに曲げることができる。
【0157】
逆に、基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン34,36における右側WRのワイヤールーメン34a、36bに挿通される牽引部分55を基端側LBに牽引することで中間可撓チューブ20Bを右側WRに曲げることができる。
そして、牽引部分55や牽引部分56の牽引を解除することで、中間可撓チューブ20Bの弾性力で牽引部分55や牽引部分56の牽引による曲げは解消される。
【0158】
そして、基端側LBにおいて幅方向Wの基端側可撓チューブ20Cのワイヤールーメン33,35に挿通された牽引部分53,54を牽引することで弾性レトラクタ301を開状態とすることができる。
具体的には、左側WLの弾性レトラクタ301の挿通孔304に挿通された牽引部分53を牽引することで、中間可撓チューブ20Bを曲げることなく、
図30(a)において矢印で示すように、左側WLの弾性レトラクタ301を幅方向Wの外側である左側WLに曲げることができる。
【0159】
逆に、右側WRの弾性レトラクタ301の挿通孔304に挿通された牽引部分54を牽引することで、中間可撓チューブ20Bを曲げることなく、
図30(a)において矢印で示すように、右側WRの弾性レトラクタ301を幅方向Wの外側である右側WRに曲げることができる。
【0160】
したがって、牽引部分53と牽引部分54とを同時に牽引すると、
図31(c)に示すように、幅方向Wの両側の弾性レトラクタ301を、幅方向Wの外側に向けて曲げることで、レトラクタ300を、所定部位を開く開創器として用いることができる。
なお、牽引部分53及び/又は牽引部分54の牽引を解除することで、弾性レトラクタ301(302)の弾性による復元力で牽引部分53及び/又は牽引部分54の牽引による曲げは解消される。
【0161】
さらにまた、上述のレトラクタ300では、弾性本体302の幅方向Wの外側にプレート部303が設けられた弾性レトラクタ301を用いたが、弾性本体302を幅方向Wの外側に配置し、弾性本体302から幅方向Wの内側にプレート部303が設けられた弾性レトラクタ301を用いることで、牽引部分53及び/又は牽引部分54の牽引により、弾性レトラクタ301が幅方向Wの内側に曲がる鉗子として用いることができる。
【0162】
また、上述の可動型長尺構造体10では、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40(40a~40k)、中間可撓チューブ20B、スペーサ40(40a~40k)及び基端側可撓チューブ20Cを先端側LFから基端側LBに向かってこの順で配置して構成したが、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40(40a~40k)及び基端側可撓チューブ20Cを先端側LFから基端側LBに向かってこの順で配置して構成してもよい。この場合のワイヤールーメン32に対する牽引ワイヤー50の配策方法については従来技術と同様の配策方法となるため、詳細な説明を省略する。このように、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40(40a~40k)、及び基端側可撓チューブ20Cで構成した可動型長尺構造体10も、上述の可動型長尺構造体10と同様の効果を奏することができる。
【0163】
以下において、
図32に示す、本発明の可動型長尺構造体10を用いた他の実施例における医療機器であるマニピュレータ100について説明する。ここでは、先端側可撓チューブ20A、スペーサ40及び基端側可撓チューブ20Cをこの順で配置した可動型長尺構造体10を用いた例について説明するがこれに限定されない。なお、
図32は本発明の可動型長尺構造体10を用いた他の実施例における医療機器であるマニピュレータ100の概略図を示している。
【0164】
マニピュレータ100は、血管、管腔あるいは管腔臓器内部などの分岐路を有する管路に挿入し、先端が所定箇所に到達した後所定の処置をするための医療機器であり、術者が把持するグリップを有するマニピュレータ本体101と、マニピュレータ本体101の先端から先端側LFに延びる可動型長尺構造体10を備えている。
【0165】
マニピュレータ本体101には、可動型長尺構造体10の基端側LBから延びる牽引ワイヤー50(図示省略する)の牽引部分52(図示省略する)を牽引する牽引駆動部102と、牽引駆動部102で牽引部分52を牽引して可動型長尺構造体10の曲げ方向を手動操作する操作ハンドル103(103a,103b)と、操作ハンドル103の手動操作によって8本の牽引部分52をどのように牽引駆動部102で牽引するかを制御する制御ユニット104を備えている。
【0166】
牽引駆動部102及び制御ユニット104はマニピュレータ本体101の内部に配置され、操作ハンドル103はマニピュレータ本体101の外部に配置している。
操作ハンドル103は、可動型長尺構造体10を高さ方向Hに曲げる上下方向操作ハンドル103aと、幅方向に曲げる幅方向操作ハンドル103bとを備えている。
【0167】
術者は、上下方向操作ハンドル103aを手動操作することで可動型長尺構造体10の先端側LFを高さ方向Hの上方向HUか下方向HDに曲げることができるとともに、上下方向操作ハンドル103aの操作量によって所望の曲げ量で曲げることができる。
【0168】
また、術者は、幅方向操作ハンドル103bを手動操作することで可動型長尺構造体10の幅方向の右側か左側に曲げることができるとともに、幅方向操作ハンドル103bの操作量によって所望の曲げ量で曲げることができる。
【0169】
そして、術者は、上下方向操作ハンドル103aと幅方向操作ハンドル103bとの両方を同時、あるいは順番に手動操作することで、可動型長尺構造体10の先端側LFを高さ方向H及び幅方向に交差する斜め方向に曲げることができるとともに、上下方向操作ハンドル103a及び幅方向操作ハンドル103bの操作量によって、全方向における所望の曲げ方向に曲げることができる。
【0170】
なお、上述のマニピュレータ100に用いる可動型長尺構造体10は、スペーサ40~40kのいずれを用いてもよい。この場合、曲げる方向、つまり牽引ワイヤー50(牽引部分52)の本数に応じた牽引駆動部102や、曲げる方向に対応した操作ハンドル103を設けるとよい。
また、必要により操作ハンドル103a、103bを別ユニットに設け、マニピュレータ本体101と有線又は無線で接続する構造としてもよい。
【0171】
なお、マニピュレータ本体101に対して、可動型長尺構造体10の長さを長く形成し、チャンネルとしてメインルーメン31及び内部空間41に処置具等を挿入することで、マニピュレータ100は操作ハンドル103で操作可能な操舵カテーテルとして用いることができる。
【0172】
また、マニピュレータ本体101に対して、可動型長尺構造体10の長さを長く形成し、チャンネルとしてメインルーメン31及び内部空間41に処置具等を挿入するとともに、例えば、先端側可撓チューブ20Aの先端側や先端キャップ60に映像受信部としてのカメラを搭載することで、マニピュレータ100は操作ハンドル103で操作可能な軟性内視鏡として用いることができる。
【0173】
続いて、本発明の一実施例における、遠隔手術システム200について、
図33及び
図34とともに説明する。
なお、
図33は他の実施例における遠隔手術システム200の概略図を示し、
図34は遠隔手術システム200におけるツール317の概略説明図を示している。詳しくは、
図34(a)は遠隔手術システム200のロボットアーム組立体に装填され得るツール317の平面図を示し、
図34(b)はツール317の内部構成を示している。
【0174】
遠隔手術システム200は、2人の操作者D(D1、D2)のそれぞれのステーションとなる外科医コンソール201、操作者Dにより操作されるマスタ制御ユニット202、視角・コアカート340、患者側カート310のロボットを有する。
【0175】
外科医コンソール201は、手術部位の画像が操作者Dに表示されるビューア201aを備える。外科医コンソール201を使用する場合、操作者D1及び/又はD2は、一般的には、外科医コンソールの椅子に座り、自身の両目をビューア201aの前に合わせ、マスタ制御ユニット202を片手又は両手で把持する。
【0176】
遠隔手術システム200では、操作者2人が同時に操作することができるが、操作者一人でも操作することができる。操作者2人が同時に操作する場合は2者の連携操作が可能となり、全体の患者の手術時間を短縮できる利点がある。外科医コンソール201及びマスタ制御ユニット202は、必要によりそれぞれ3台以上設けるシステムにしてもよい。
【0177】
患者側カート310のロボットは、患者に隣接して設置される。使用中、患者側カート310は、手術を必要とする患者の近くに設置される。患者側カート310のロボットは、外科手術中は固定されるが移動できるように台座311にはキャスタを備える。外科医コンソール201は、患者側カートと同じ手術室内で使用されるが、患者側カート310から遠隔に設置してもよい。
【0178】
患者側カート310は、4つのロボットアーム組立体312を含むが、ロボットアーム組立体312の数は任意である。各ロボットアーム組立体312は、3次元移動を可能にする駆動装置313に接続され駆動制御される構造としている。
【0179】
表示器314は手術に関連する画像データを表示する。駆動装置313は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202により制御される。ロボットアーム組立体312のツール317の動きは、マスタ制御ユニット202の操作によって制御される。
【0180】
4つのロボットアーム組立体312のうちひとつのロボットアーム組立体312aには、内視鏡などの画像取込み機器315が配置される。画像取込み機器315の遠隔端部に視認カメラ316を含んでいる。細長いシャフト状の画像取込み機器315によって、患者(図示省略する)の手術侵入ポートを通して視認カメラ316を挿入することが可能になる。
【0181】
画像取込み機器315は、その視認カメラ316に取り込まれた画像を表示するために、外科医コンソール201のビューア201aに動作可能に接続される。
他のロボットアーム組立体312の各々は、着脱可能な手術器具であるツール317をそれぞれ支持及び含むリンク装置である。なお、複数または一つのロボットアーム組立体312のツール317の可動型長尺構造体10のメインルーメン31の一部に視認カメラを搭載し、画像取込み機器315の視認カメラ316の代わりに用いてもよい。
【0182】
ツール317は、患者の手術侵入ポートを通して挿入することを可能にするように、細長い可動型長尺構造体10を備えている。可動型長尺構造体10の動きは、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202によって制御される。可動型長尺構造体10は前述実施例の可動型長尺構造体10を利用する。
【0183】
図34は、
図33の遠隔手術システム200のロボットアーム組立体312に装填され得るツール317を手術装置の代表例として構成を示す。他のロボットアーム組立体312に装着されるツール317は同様の構成でもよいし、他の構成の手術装置であってもよい。
【0184】
図34(a)に示すツール317は、牽引ワイヤー50を有する可動型長尺構造体10、ツール317を駆動制御・モニタする手術装置331、ロボットに結合するコネクタ361を有する。手術装置331は可動型長尺構造体10内の牽引ワイヤー50を駆動する牽引駆動部を構成する。
【0185】
ツール317の内部構成を図示する
図34(b)に示すように、
図33のロボットアーム組立体312に直結するツール317を、シャフト335を介して駆動する手術装置331、手術装置331を制御する患者側カート310のロボットで構成される医療システムを示す。
【0186】
可動型長尺構造体10は、シャフト335に繋がる基端側可撓チューブ20C、配線補助具40,エンドエフェクタである先端側可撓チューブ20Aを有する。可動型長尺構造体10は前述の実施例の通り屈曲構造を有するので、先端側可撓チューブ20Aの操作角度の自由度が増し、手術の適用範囲が向上する。
【0187】
ツール317の手術装置331は、手術装置内の信号を制御する制御回路231及び患者側カート310のロボットとの信号インターフェース310aを有する。
制御回路231は、可動型長尺構造体10の所定の牽引ワイヤー50を駆動する駆動機構(図示せず)をロボット310からの制御信号に基づき制御する構成としている。
【0188】
図35にも動作説明しているが、患者側カート310のロボットは、手術装置331と信号インターフェース310aとコネクタ361を介して有線及び/又は無線で接続されており、患者側カート310のロボットの内部には、マスタ制御ユニット202からの操作信号を受信する入力ユニットと、操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットCPUと、該演算ユニットからの出力に基づき手術装置331を介してツール317の可動型長尺構造体10を駆動する駆動信号を発生する出力ユニットを備えている。前記入力ユニットと前記出力ユニットは、入出力ユニット310a(I/O)で構成される。
図35は、遠隔手術システム200の説明図であり、
図35(a)は各ユニットとの接続関係を示すブロック図であり、
図35(b)は遠隔手術システム200の動作フロー図である。
【0189】
なお、
図35に示す患者側カート310のロボットにおいて、操作信号に基づき予め定められた操作プログラムを実行する演算ユニットCPUに人工知能(AI)を備えてもよい。演算ユニットCPUに人工知能(AI)を備えた患者側カート310のロボットは、各種センサを設け、各種センサによる検知結果を蓄積するとともに評価し、評価結果に基づきツール317を制御することができる。
【0190】
視覚・コアカート340は、画像取込み機器に関連する機能を有する。手術のために遠隔手術システム200を起動すると、外科医は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202を操作し、外科医が2名の場合は、外科医コンソール201のマスタ制御ユニット202も操作し(ステップS1)、操作により生成されたコマンドは、視覚・コアカート340に送信される(ステップS2)。
次いで、視覚・コアカート340は、信号を解釈し、所望のロボットアーム組立体312を患者の手術領域に移動をさせる(ステップS3)。
【0191】
次に選択されたロボットアーム組立体312に取り付けられたツール317の可動型長尺構造体10を細長いパイプを通して患者に挿入し(ステップS4)、先端側可撓チューブ20Aの屈曲により所定箇所まで到達後、所定の処置を行って(ステップS5)、生体組織の手術を完了させる。
なお、曲げる方向、つまり牽引ワイヤー50(牽引部分52)の本数に応じた牽引駆動部102や、曲げる方向に対応した操作ハンドル103を設けるとよい。
【0192】
上述のマニピュレータ100、レトラクタ300、ツール317、及びツール317を備えた遠隔手術システム200は、可動型長尺構造体10を備えているため、上述した可動型長尺構造体10による効果に加え、それぞれの構成によって得られる効果を奏することができる。
【0193】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本発明の長手方向は長手方向Lに対応し、以下同様に、
ロボット及び医療用ロボットが患者側カート310に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0194】
また、上述のスペーサ40(40a~40k)は先端側LFの先端側突縁部43aに、先端側LFに向かって突出する位置規制凸部47(47a~47f,47h~47k)を設けたが、基端側LBの基端側突縁部43bに、基端側LBに向かって突出する位置規制凸部47(47a~47f,47h~47k)を設けてもよいし、先端側LFの先端側突縁部43aと基端側LBの基端側突縁部43bの両方に位置規制凸部47(47a~47f,47h~47k)を設けてもよい。
【0195】
さらに、先端側LFの先端側突縁部43aと基端側LBの基端側突縁部43bの両方に位置規制凸部47(47a~47f,47h~47k)を設ける場合、先端側LFの先端側突縁部43aと基端側LBの基端側突縁部43bに同種、あるいは種類の異なる位置規制凸部47(47a~47f,47h~47k)を設けてもよい。
【0196】
なお、牽引操作体として牽引ワイヤー50を用いたが帯状であってもよい。また、1本の牽引ワイヤー50を曲返し部51で折り曲げて一対の牽引部分53を構成したが、別々の牽引ワイヤー50で一対構成してもよい。また、別々で構成した一対の牽引ワイヤー50を牽引する際には、一方の牽引ワイヤー50を牽引してもよいし、両方の牽引ワイヤー50を牽引してもよい。また両方の牽引ワイヤー50を牽引するものの、それぞれの牽引ワイヤー50を異なる牽引力で牽引してもよい。
【0197】
可撓チューブ20は、内部にメインルーメン31を有する断面が円形リング状であるチューブを用いたが楕円リング状断面、あるいは三角径や四角形などの多角形リング状断面やなど様々なリング状断面である管状体であってもよく、メインルーメン31が上述のような断面形状の外径に対して相似形であってもよいし、異なる断面形状であってもよい。また、可撓チューブ20におけるメインルーメン31が可撓チューブ20の中心からずれた位置に配置されていてもよい。
【0198】
また、可撓チューブ20は、内部にメインルーメンを有する剛体を回転関節や弾性体を介して連ねた背骨構造で構成してもよい。
また、ツール317における可動型長尺構造体10の代わりに、レトラクタ300を用いて遠隔手術システム200を構成してもよい。
【0199】
さらにまた、上述の説明では、長手方向Lに長い円筒形での可撓性を有し、管壁内部にワイヤールーメン32を有するチューブである可撓チューブ20を用いたが、メッシュチューブや編組チューブ等と称される耐摩耗性を有する繊維を編み込んで構成した可撓チューブを用いてもよい。
【0200】
この場合、メインルーメン31を構成する小径のチューブと、外形を構成する大径チューブとを2層構成するとともに、層間にワイヤールーメン32を形成しながら、その隙間に可撓性を有する樹脂を充填して構成することとなる。このように、耐摩耗性を有する繊維を編み込んで構成した可撓チューブを用いた場合であっても、上述の可撓チューブ20を用いた可動型長尺構造体10と同様の作用・効果を奏することができる。
【0201】
また、上述の可動型長尺構造体10は、牽引部分53及び牽引部分54のいずれかを牽引することで中間可撓チューブ20Bに対して先端側可撓チューブ20Aを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができ、牽引部分55及び牽引部分56のいずれかを基端側LBに牽引することで基端側可撓チューブ20Cに対して中間可撓チューブ20Bを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができるが、
図36及び
図37に示す可動型長尺構造体10Aのように上方向HU、下方向HD、左側WL及び右側WRの四方向のいずれかの方向に曲げるように構成することができる。
【0202】
図36及び
図37に示す可動型長尺構造体10Aは、上述の可動型長尺構造体10における先端側可撓チューブ20Aと基端側可撓チューブ20Cとで構成しているが、可動型長尺構造体10における中間可撓チューブ20Bと基端側可撓チューブ20Cとで構成するとともに、中間可撓チューブ20Bの先端側LFの先端に先端キャップ60を構成したものと同様の構成となり、中間可撓チューブ20Bと基端側可撓チューブ20Cとのワイヤールーメン32に対する牽引ワイヤー50の配索と同様に配策することとなる。そして、先端キャップ60における高さ方向H及び幅方向Wに四方向に設けた曲げ凹部61のすべてに曲返し部51が配置されることとなる。
なお、可動型長尺構造体10Aにおいて、先端側可撓チューブ20Aと基端側可撓チューブ20Cとの間には、上述のスペーサ40,40a~40kのいずれかを配置することとなる。
【0203】
このように構成された可動型長尺構造体10Aは、牽引ワイヤー50のうち牽引部分53及び牽引部分54のいずれかを基端側LBに牽引することで基端側可撓チューブ20Cに対して先端側可撓チューブ20Aを右側WRか左側WLのいずれかに曲げることができる。
【0204】
また、可動型長尺構造体10Aは、牽引ワイヤー50のうち牽引部分55及び牽引部分56のいずれかを基端側LBに牽引することで基端側可撓チューブ20Cに対して先端側可撓チューブ20Aを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができる。
【0205】
また、可動型長尺構造体10Aは、牽引ワイヤー50のうち牽引部分55及び牽引部分56のいずれかを基端側LBに牽引することで基端側可撓チューブ20Cに対して先端側可撓チューブ20Aを上方向HUか下方向HDのいずれかに曲げることができる。
【0206】
さらに、可動型長尺構造体10Aは、牽引部分53及び牽引部分54のいずれかと、牽引部分55及び牽引部分56のいずれかとを基端側LBに牽引することで、基端側可撓チューブ20Cに対して先端側可撓チューブ20Aを、高さ方向H及び幅方向Wの斜め方向に曲げることができる。
【0207】
このように、スペーサ40,40a~40kのいずれかを先端側可撓チューブ20Aと基端側可撓チューブ20Cとの間に配置した可動型長尺構造体10Aは、可動型長尺構造体10と同様の作用・効果を奏することができるとともに、上述したように、高さ方向H及び幅方向W並びにそれらの斜め方向に先端側可撓チューブ20Aを曲げることができる。
【符号の説明】
【0208】
10,10A…可動型長尺構造体