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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122107
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】排水構造
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20240902BHJP
   E03F 5/04 20060101ALI20240902BHJP
   E03F 5/06 20060101ALI20240902BHJP
   E03F 5/20 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E03F5/10 A
E03F5/04 A
E03F5/04
E03F5/04 D
E03F5/06
E03F5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029464
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友佑
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA02
2D063CB02
2D063CB06
2D063CB07
2D063DA02
2D063DA07
(57)【要約】
【課題】床版に形成する開口部の大きさや数を増すことなく排水能力を向上できる排水構造の提供を目的とする。
【解決手段】この排水構造は、床版a内に固定配置され、開口及び排水口54aを有する排水枡20と、排水口54aの下端に接続され、床版a内に固定配置された排水管80と、排水口54aの上端に配置され、排水管80に流入する水を整流するドレン30と、を備え、排水口54aの開口径d2が100mm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版内に固定配置され、開口及び排水口を有する排水枡と、
前記排水口の下端に接続され、前記床版内に固定配置された排水管と、
前記排水口の上端に配置され、前記排水管に流入する水を整流するドレンと、
を備え、
前記排水口の開口径が100mm以下である
ことを特徴とする排水構造。
【請求項2】
前記ドレンがリブを有し、
前記ドレンの、平面視での前記リブを含む最大外形寸法が、前記開口径よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の排水構造。
【請求項3】
前記ドレンが、前記排水枡とは別体である
ことを特徴とする請求項1に記載の排水構造。
【請求項4】
前記ドレンが、前記排水枡に対して着脱自在な嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の排水構造。
【請求項5】
前記排水枡の前記開口に配置されて複数の孔を有する金属蓋と、
前記金属蓋と前記ドレンとの間を繋ぐ吊り具と、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の排水構造。
【請求項6】
前記排水枡に固定され、前記ドレンを着脱自在に支持する支持具
をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の排水構造。
【請求項7】
前記ドレンが、前記排水枡と一体である
ことを特徴とする請求項1に記載の排水構造。
【請求項8】
道路構造物の路面に設けられている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば橋梁では、路面をなすアスファルトからなる舗装の下に、コンクリートからなる床版が設けられている。そして、この床版には、路面上の水を排水する排水桝が埋設されている。この種の排水枡の一例として、下記特許文献1に記載の構造が知られている。この排水枡は、型枠管の上端に接続された状態で床版内に埋設配置された枡本体と、枡本体の上方にある路面とほぼ同じ高さ位置に配置された金属蓋とを有する。この排水枡を有する排水構造によれば、路面上の雨水が金属蓋の網目を通して枡本体に流れ込み、そして型枠管を通して排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-001493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の排水構造では、雨水を高流量で排出可能とすることが望まれるが、雨水と共に排水枡内に入り込む空気によって渦流が発生し、排水性能を制限していた。そのため、排水性能を向上させる対策としては、雨水を流す配管の口径を大きくするか、あるいは、排水枡の設置数を増やすことが考えられる。しかしながら、これらの何れにおいても、床版に大きな開口部を形成する必要が生じる。すなわち、配管の口径を大きくした場合には、その分、配管が貫通する床版の穴径を拡径する必要がある。また、排水枡の設置数を増やした場合には、その増設数分、床版に形成する開口部の数も増やす必要がある。
【0005】
ここで、床版に開口部を形成する場合、開口部には鉄筋を通せないため、開口部の周囲を、開口部が無い箇所よりも鉄筋量を増して補強する必要が有る。よって、開口部の寸法を大きくした場合、及び、開口部の形成数を増した場合の何れにおいても、その強度低下分を考慮した強度設計を行い、補強鉄筋量を増やす必要が生じる。しかし、このような鉄筋量の増加は、橋脚等への負担増となる上に、施工コストにも影響を及ぼすので、好ましいものではない。このような理由により、床版に形成する開口部の大きさや数を増やすことなく排水能力を向上できる排水構造が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、床版に形成する開口部の大きさや数を増すことなく排水能力を向上できる排水構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る排水構造は、
床版内に固定配置され、開口及び排水口を有する排水枡と、
前記排水口の下端に接続され、前記床版内に固定配置された排水管と、
前記排水口の上端に配置され、前記排水管に流入する水を整流するドレンと、
を備え、
前記排水口の開口径が100mm以下である。
【0008】
上記(1)に記載の排水構造によれば、排水枡内に流れ込んだ水が排水管を介して排水する際に、ドレンにより予め水を整流させてから排水口へと流す。これにより、高流量の水が流れ込んできても、予めドレンにより水を整流させて空気の取り込みを抑制し、渦流の発生を防ぐことができるので、サイフォン現象を確実に発現させて高い排水能力を得ることができる。しかも、排水口の開口径を100mm以下に制限しているので、床版に形成する開口部の大きさを従来よりも小さくできる(従来の一般的な開口径は200mm)。したがって、排水口の小口径化と高い排水能力とを両立させることができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の排水構造において、以下の様に構成してもよい:
前記ドレンがリブを有し、
前記ドレンの、平面視での前記リブを含む最大外形寸法が、前記開口径よりも大きい。
上記(2)に記載の排水構造の場合、大きなリブによってより高い整流効果を得ることができる。したがって、より高い排水能力が得られる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の排水構造において、前記ドレンが、前記排水枡とは別体であってもよい。
上記(3)に記載の排水構造の場合、ドレンに付着したゴミ等を取り除く等のメンテナンスを行う際に、ドレンを排水枡から取り外してから作業を行えるので、メンテナンス性に優れた排水構造とすることができる。
【0011】
(4)上記(3)に記載の排水構造において、前記ドレンが、前記排水枡に対して着脱自在な嵌合部を有してもよい。
上記(4)に記載の排水構造の場合、嵌合部を排水枡に対して嵌め込むことで、簡単にドレンを排水枡に取り付けることができる。しかも、取付後のドレンは、嵌合部により排水枡に固定されているので、水流による外力を受けても容易に外れることはない。逆に、排水枡からのドレンの取り外しは、嵌合部を排水枡から外すだけで簡単に行うことができる。
【0012】
(5)上記(3)に記載の排水構造において、
前記排水枡の前記開口に配置されて複数の孔を有する金属蓋と、
前記金属蓋と前記ドレンとの間を繋ぐ吊り具と、
をさらに備えてもよい。
上記(5)に記載の排水構造の場合、例えばチェーンあるいは紐等の吊り具により、ドレンを金属蓋の下に吊り下げ支持することができる。そして、金属蓋を外すだけでドレンも同時に外せるので、ドレンを清掃する際の手間を減らしてメンテナンス性を高めることができる。
【0013】
(6)上記(3)に記載の排水構造において、
前記排水枡に固定され、前記ドレンを着脱自在に支持する支持具
をさらに備えてもよい。
上記(6)に記載の排水構造の場合、支持具により、ドレンを排水口の上端位置に位置決めして支持できる。その際、支持具は、排水枡に固定されているので、雨水等の外力を受けた際のドレンの位置ずれをより確実に防げる。
【0014】
(7)上記(1)または(2)に記載の排水構造において、前記ドレンが、前記排水枡と一体であってもよい。
上記(7)に記載の排水構造の場合、その施工の際、排水枡を設置するだけでドレンの設置も同時に完了するので、施工コストを下げることができる。また、排水口に対するドレンの相対位置がずれないので、ドレンの排水能力をより安定して発揮させることができる。
【0015】
(8)上記(1)~(7)の何れか1項に記載の排水構造は、道路構造物の路面に設けられていてもよい。
上記(8)に記載の排水構造の場合、排水口の開口径を100mm以下の小さい径に制限しているので、道路構造物の床版に形成する開口部の大きさを小さく抑えることができる。よって、道路構造物の路面強度が従来構造よりも下がらないので、補強鉄筋量を増やさずに済む。その結果、例えば、道路構造物が高架橋である場合、路面を支える橋脚等への負担増を避けられる上に、施工コストの上昇を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0016】
上記各態様の排水構造によれば、床版に形成する開口部の大きさや数を増すことなく排水能力を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態を示す図であって、道路構造物(橋梁)の路面に設置された排水構造を示す斜視図である。
図2】同排水構造の構成を示す図であって、図1のA-A矢視における縦断面図である。
図3】同排水構造に備わる排水枡の下枡を示す縦断面図である。
図4】同排水構造に備わる排水枡の下枡を示す図であって、図3のB-B矢視図である。
図5】同排水構造に備わるドレンの斜視図である。
図6】同排水構造に備わる図5のドレンを示す図であって、中心軸線を含む縦断面で切断した状態を示す斜視図である。
図7】同排水構造に備わる図5のドレンを示す図であって、図6の矢視Cより見た縦断面図である。
図8】同排水構造に備わるドレンの変形例1を示す図であって、中心軸線を含む断面で見た縦断面図である。
図9】同排水構造に備わるドレンの変形例2を示す側面図である。
図10】変形例2に係る図9のドレンの斜視図である。
図11】同排水構造に備わるドレンの変形例3を示す斜視図である。
図12】同排水構造に備わるドレンの変形例4を示す平面図である。
図13】同排水構造に備わるドレンの変形例5を示す図であって、中心軸線を含む断面で見た縦面図である。
図14】同排水構造に備わるドレンの変形例6を示す図であって、中心軸線を含む断面で見た縦面図である。
図15】同排水構造に備わるドレンの変形例7を示す図であって、中心軸線を含む断面で見た縦面図である。
図16】変形例7に係る図15のドレンの斜視図である。
図17図2に示した排水構造に対し、ドレンの脱着構造を設けた場合を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る排水構造について説明する。
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る排水構造1を高架橋(道路構造物)に設置した状態を示す斜視図である。図1に示すように、排水構造1は、高架橋200の側溝に沿って複数が配置されている。高架橋200に降った雨水(水)は、排水構造1内へと流れ込み、そして高架橋200外に排水される。
【0019】
図2は、排水構造1の構成を示す図であって、図1のA-A矢視での縦断面図である。
図2に示すように、排水構造1は、金属蓋10と、排水枡20と、ドレン30と、配管80と、を備える。
【0020】
(金属蓋)
金属蓋10は、複数の孔を有する金属製の蓋である。複数の孔は、雨の流入を妨げなければどのような形状でも良く、例えば、グレーチングのように長方形の孔が複数、網目状に配置された構成を採用できる。金属蓋10は、排水枡20に支持されており、雨水が金属蓋10の孔から排水枡20内に流れ込む。金属蓋10の外形は、本実施形態では平面視で長方形としたが、長方形のみに限らず、正方形、または四角以外の多角形、円形、あるいは楕円形であってもよい。
【0021】
(排水枡)
図2に示すように、排水枡20は、上枡21と、下枡22と、高さ調整部23と、を有する。
上枡21は、金属蓋10を支持する金属製の枠体である。上枡21の内側が排水枡20の開口部20aに対応し、この開口部20a内に金属蓋10が収容配置される。
上枡21は、側壁41と、蓋載置部42と、を有する。側壁41は、平面視において金属蓋10の四方周囲を囲む長方形の四角枠である。蓋載置部42は、縦断面視において側壁41の下端縁から四角枠の内側に向かうよう、側壁41に対して概ね垂直に形成されている。蓋載置部42は、平面視で長方形の四角枠をなす枠状の板部である。蓋載置部42の上面に、金属蓋10が支持される。また、側壁41より、金属蓋10の水平方向の水平方向への移動が規制される。
【0022】
図3及び図4に下枡22を示す。ここで、図3は下枡22の縦断面図であり、図4は下枡22を図3のB-B矢視で見た断面図である。
下枡22は、例えばFRPを素材とする樹脂成形品であり、側壁51と、上枡支持部52と、絞り部53と、管部54と、を有する。なお、下枡22は、樹脂製に限らず、鋳型を用いて製造した鋳鉄製であってもよい。下枡22の概略寸法を、図3及び図4に例示する。
側壁51は、平面視で上枡21の四方周囲を囲む長方形の四角枠である。
上枡支持部52は、平面視で長方形の四角枠をなす板部であり、図2に示したように蓋載置部42の真下に重なるよう配置されている。図3及び図4に示すように、上枡支持部52は、縦断面視において側壁51の下端縁から四角枠の内側に向かうよう、側壁51に対して概ね垂直に形成されている。この上枡支持部52の上方に、上枡21が支持される。図2に示すように、上枡支持部52と蓋載置部42との間には、下枡22に対する上枡21の高さ位置を調整する高さ調整部23が設けられている。
【0023】
絞り部53は、図3及び図4に示すように、その内部空間が下方に向かって先細りとなっており、上枡支持部52の真下に連なって配置されている。
絞り部53は、4枚の側壁53a~53dと、底壁53eとを有する。
これらのうち、互いに対向する一対の側壁53a,53bは、図3に示すように、その上部においては幅寸法が一定であり、またその下部においては幅寸法が下方に向かうほど狭まっている。ここで、側壁53a,53bそれぞれの一方の側縁は上下方向に沿っており、その一方で他方の側縁は高さ方向途中位置において屈曲している。すなわち、前記他方の側縁は、屈曲位置よりも上部においては上下方向に沿っており、また、屈曲位置よりも下部においては管部54に向かって緩やかに近付くように傾斜している。また、一対の側壁53a,53bは、図4に示すように、その上端縁から下端縁に向かってこれらの間隔が狭まるように傾斜配置されている。そのため、一対の側壁53a,53bの各内壁面は、その上端縁から下端縁に向かって管部54に近付くように傾斜している。
【0024】
側壁53cは、図4に示すように、その上端縁から下端縁に向かって先細りとなる逆台形状を有する。側壁53cは、図3に示すように、上下方向に沿って配置されている。よって、側壁53cの内壁面は、上下方向に沿って形成されている。
側壁53dは、側面視においては、その上端縁から下端縁に向かって先細りとなる逆台形状を有する。側壁53dは、側壁53cに対して対向配置されている。側壁53dは、図3に示すように、上下方向の途中位置において屈曲している。すなわち、この屈曲した位置よりも上部においては上下方向に沿って形成され、その一方で屈曲した位置よりも下部においては下方に向かうにしたがって側壁53cに近付くよう緩やかに傾斜している。すなわち、側壁53cの内壁面は、その上部においては上下方向に沿って形成され、また下部においては管部54に向かって徐々に近付くよう傾斜している。
【0025】
底壁53eは、4枚の側壁53a~53dの各下端縁が繋がる、平面視で長方形をなす板部である。底壁53eの上面は、各側壁53a~53dの内壁面の最下端位置に連なっている。底壁53eの平面視の中央位置には、上下方向に沿った中心軸線であるドレン軸Oを有する円形開口53e1が形成されている。円形開口53e1の開口径d1は100mm以下であり、ここでは100mmを例示する。円形開口53e1の開口径d1は、100mm以下に制限できればよいので、100mmの代わりに例えば75mmを採用してもよい。一方、開口径d1の下限値としては、例えば72mmを採用することができる。
【0026】
管部54は、図3及び図4に示すように、上下方向に中心軸線を有する円管である。管部54は、底壁53eの真下に、前記円形開口53e1と同軸をなすように接続配置されている。管部54の排水口54aの開口径d2は、円形開口53e1の開口径d1に等しく、その上端から下端の各位置において一定である。管部54の開口径d2は、開口径d1に合わせて、100mmを例示できる。管部54の開口径は、100mm以下に制限できればよく、100mm(呼び径100A)の代わりに例えば75mm(呼び径75A)を採用してもよい。一方、開口径d2の下限値としては、開口径d1に合わせて例えば72mmを採用することができる。管部54としては、樹脂管あるいは金属管を用いることができ、材質的には特に限定されない。管部54として樹脂管を用いる場合は、VP管、VU管等を用いることができる。一方、管部54として金属管を用いる場合は、鋼管、ステンレスなどを用いることができる。管部54の外径としては、76mm以上115mm以下を例示できる。また、管部54の長さとしては、600mm未満であることが好ましく、500mm未満、400mm未満、あるいは300mm未満とすることがより好ましい。
図3及び図4において、下枡22の各部寸法の一例として、L1=420mm、L2=450mm、L3=155mm、L4=250mm、L5=300mmを例示できる。ただし、各部寸法はこれら寸法に限らず、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0027】
以上説明の構成を有する下枡22は、図2に示すように、その上端開口及び管部54の下部を除き、床版a内に埋設されている。側壁51の開口は、床版a及び舗装bで覆われておらず、上枡21内に嵌め込まれた金属蓋10によって覆われている。また、管部54の下部は、床版aの下面から外部に露出している。
図1に示すように、舗装bの、上枡21に接続される側縁には、上枡21の上端に向かって低くなる傾斜iが形成されている。この傾斜による高低差hとしては、5mm~20mmを例示できる。
なお、床版aはコンクリートの打設により形成された基礎構造であり、舗装bは床版aの上面に敷設された路面をなすアスファルトである。図示を省略するが、床版a内には、下枡22の周囲を補強する補強鉄筋が埋設されている。
【0028】
図2に示す高さ調整部23は、下枡22に対する上枡21の高さ位置を調整する。高さ調整部23は、ボルト61と、ナット62と、を有する。ボルト61は、上枡支持部52に形成された貫通孔に挿通されている。ボルト61は、上枡支持部52に対して略垂直に配置されている。ボルト61の上端が、上枡21の蓋載置部42の下面に当接している。ナット62は、貫通孔と同軸になるように上枡支持部52上に固定されている。ナット62には、ボルト61が挿通されている。ボルト61のナット62へのねじ込み量を調整することで、下枡22に対する上枡21の高さを調整できる。高さ調整部23は、上枡支持部52の対向する長辺と対向する短辺の両方に設けられていてもよいし、どちらか一方のみに設けられていてもよい。
【0029】
(ドレン)
図2に示すように、ドレン30は、下枡22の底壁53eに形成された円形開口53e1をその上から覆うよう、同軸に配置されている。このドレン30は、下枡22から管部54に排水される雨水に対してサイフォン現象の発生を誘発する。ドレン30は、排水枡20に流入した雨水の排水能力を向上させるための高排水機能を有する排水部材である。なお、本実施形態に係るドレン30は一例であり、管部54に流入する水を整流可能であればよく、後述する他のタイプを採用してもよい。
【0030】
図5図7を参照しながらドレン30の詳細を以下に説明する。図5は、ドレン30の斜視図である。図6は、ドレン30をその中心軸線を含む縦断面で切断した状態を示す斜視図である。図7は、ドレン30を図6の矢視Cより見た縦断面図である。
ドレン30は、硬質塩化ビニル樹脂やポリカーボネート、ABS、AES等の合成樹脂を用いて射出成形によって製造された樹脂製である。なお、ドレン30は、樹脂製のみに限らず、鋳型を用いた鋳鉄製、あるいはSUS製であってもよい。
【0031】
ドレン30は、蓋部材31と、複数の縦リブ33と、嵌合部32と、を有する。
蓋部材31は、上下方向に沿ったドレン軸Oを中心線とする円板である。
複数の縦リブ33は、蓋部材31の下面に、ドレン軸Oの周囲に等角度間隔を置いて固定された板材である。図示の例では、縦リブ33は、6枚が設けられており、これら6枚の縦リブ33が、ドレン軸Oを中心として約60度間隔で設けられている。ただし、縦リブ33の枚数及び配置間隔は、この例のみに限られるものではない。
【0032】
各縦リブ33は、互いに同一形状を有している。各縦リブ33は、蓋部材31の下面に接続された上辺31aと、上辺31aの真下に配置された下辺31bと、これら上辺31a及び下辺31b間を接続する内辺31c及び外辺31dと、を有する。
各上辺31aは、蓋部材31の下面を底面視した場合に、ドレン軸Oを中心とする半径方向に沿って配置されている。そして、これら上辺31aのうちでドレン軸Oに最も近い端部に対して内辺31cが接続されている。逆に、各上辺31aのうちでドレン軸Oから最も遠い端部に対して外辺31dが接続されている。各内辺31c及び各外辺31dは、ドレン軸Oに対して平行である。そして、各内辺31cは、各外辺31dよりも長い。
【0033】
上辺31a、内辺31c、外辺31dは、全て直線形状であるが、下辺31bは凹曲線形状となっている。したがって、円周状に等角度間隔で配置された各縦リブ33の下辺31b外接する面を考えた場合、この面は、ドレン軸Oに沿って上から下に向かって先細りとなる略逆円錐台形状をなす。このように各縦リブ33を纏めて見たときに各下辺31bが全体として下方に向かって先細りになっているので、図2に示したように円形開口53e1に嵌め込むことができる。しかも、各下辺31bは、互いに同一形状を有してかつドレン軸Oから互いに等しい距離に配置されているので、各縦リブ33の下辺31bを円形開口53e1に嵌め込むだけで、ドレン軸Oと管部54の中心軸線とが自然と一致するように位置決めすることができる。加えて、ドレン30を下枡22内に取り付けた状態では、下枡22の底壁53eの上方の所定高さ位置に、蓋部材31の下面が位置するように配置できる。言い換えると、底壁53e上に、各縦リブ33によって蓋部材31を支持固定できる。
【0034】
ドレン30を下枡22の底壁53eに取り付けた際、蓋部材31は、平面視で円形開口53e1を塞ぐように配置されている。また、平面視における蓋部材31の面積は、円形開口53e1の開口面積よりも大きい。
なお、本実施形態では蓋部材31の中心と円形開口53e1の中心とが鉛直方向に一致しているが、蓋部材31と円形開口53e1が共に傾いて斜めに配置される場合には、蓋部材31の蓋面積が円形開口53e1の開口面積と同じであると、鉛直方向から見て円形開口53e1を塞ぐことができず、蓋部材31と円形開口53e1との間に空気が入る隙間(渦流による空気芯)が生じることになる。そのため、鉛直方向に直交する面に対する蓋部材31の投影面積が円形開口53e1の投影面積よりも大きくなるように設定することが好ましい。
【0035】
上記構成を有するドレン30を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、底壁53eの上面と各縦リブ33の側面と蓋部材31の下面とによって区画される6つの流入開口30aが、管部54上に形成される。各縦リブ33は、流入開口30aから管部54に流入する雨水を整流する機能を有する。また、上述のように、蓋部材31は、流入開口30aから管部54に流入する雨水に空気が混ざり込むことを防ぐ。このように、これら縦リブ33及び蓋部材31の組み合わせにより、雨水を、空気の取り込みを抑制しつつ整流してから管部54に流し込むことができ、排水性能を向上させることができる。
なお、全ての流入開口30aの合計面積が、円形開口53e1の面積以上となるように、蓋部材31の大きさや各縦リブ33の高さを設定することが好ましい。すなわち、円形開口53e1の口径が100mmである場合には、全ての流入開口30aの合計面積が、7850mm以上であることが好ましい。また、円形開口53e1の口径が75mmである場合には、全ての流入開口30aの合計面積が、4416mm以上であることが好ましい。
【0036】
蓋部材31の上面(図5参照)には、上方に突出し、周方向において互いに等角度間隔を空けて配置された複数の把持リブ35が固定されている。これら把持リブ35は、ドレン30を円形開口53e1に嵌め込む際に、作業者によって把持される部分である。
【0037】
嵌合部32は、各縦リブ33のそれぞれに固定された樹脂製の棒状部品であり、弾性を有する。嵌合部32は、各縦リブ33の最下端位置からさらに真下に向かって延在する。そして、ドレン30を取り付けた際に、嵌合部32の側面が管部54の内周面に当接する。嵌合部32は、蓋部材31を底面視した場合に環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、円形開口53e1の内径寸法よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を円形開口53e1に嵌め込んだ際、弾性変形した嵌合部32の外側面が円形開口53e1の内壁面に対して押し付けられるので、これらの間で摩擦力が生じ、管部54に対してドレン30を確実かつ容易に固定できる。よって、雨水による外力を受けても容易に外れることがない。逆に、作業者は、把持リブ35を持ってドレン30を前記摩擦力に抗しながら上方に持ち上げることで、下枡22の底壁53eから取り外すことができる。このように、本実施形態のドレン30は、排水枡20とは別体であり、排水枡20に対して着脱自在である。
【0038】
なお、嵌合部32はドレン30を着脱自在に固定する手段の一つであり、その他構成を用いてもよい。例えば、図示を省略するが、金属蓋10とドレン30との間を、チェーンあるいは紐等の吊り具によって繋ぐ構成を採用してもよい。この場合、吊り具により、ドレン30を金属蓋10の下に吊り下げ支持することができる。よって、金属蓋10を外すだけでドレン30も同時に外せるので、ドレン30を清掃する際の手間を減らしてメンテナンス性を高めることができる。
あるいは、図示を省略するが、排水枡20内に固定され、ドレン30を着脱自在に支持する支持具をさらに備えてもよい。この場合、支持具により、ドレン30を管部54の上端位置に位置決めして支持できる。その際、支持具は排水枡20に固定されているので、ドレン30の位置ずれが生じないよう、より確実に固定できる。
【0039】
さらに、例えば図17に示すように、ドレン30を下枡22の底壁53eに対して着脱自在に固定するための着脱構造90を採用してもよい。この着脱構造90は、縦リブ33の外周縁の下端位置に形成された突起91と、L字形状を有する固定金具92と、底壁53eに形成された嵌合溝93とを有する。
突起91は、縦リブ33の両面に形成されており、縦リブ33の板厚方向に突出している。固定金具92は、上下方向に延在する固定部92aと、固定部92aの上端から水平方向に延在する抑え部92bとを有する。抑え部92bには、端部が開放された溝部92cが形成されている。嵌合溝93は、底壁53eの上面から板厚方向途中位置まで形成されており、底壁53eを貫通していない。
この着脱構造90によれば、まず、ドレン30を前記嵌合部32によって下枡22の底壁53eに取り付ける際に、突起91と嵌合溝93の相対位置が一致するように、ドレン軸O回りの位置を調整しておく。続いて、溝部92c内に縦リブ33を通した状態で、固定金具92の固定部92aを嵌合溝93に嵌め込む。このようにして固定金具92を底壁53eに固定すると、抑え部92bの下面が突起91を上から押さえ込む。その結果、ドレン30は、ドレン軸Oに沿った動きと、ドレン軸O回りの回転とが固定金具92によって規制されるので、確実に底壁53eに固定される。ドレン30のメンテナンス等を行う場合は、固定金具92を嵌合溝93から取り外すことで、底壁53eに対する縦リブ33の固定を解除し、ドレン30を容易に取り外すことができる。
【0040】
なお、本実施形態ではドレン30を排水枡20に対して着脱自在としたが、この構成に限らず、ドレン30を、排水枡20と一体にしてもよい。この場合、施工の際、排水枡20を設置するだけでドレン30の設置も同時に完了するので、施工コストを下げることができる。また、管部54に対するドレン30の相対位置がずれないので、ドレン30の排水能力をより安定して発揮させることができる。
【0041】
(配管)
図2に示す配管80は、上下方向に延在する排水管であり、その上端に拡径した受け口81が形成されている。そして、この受け口81内に、管部54の下端が水密に嵌め込まれて固定されている。配管80の開口径d3は、管部54の開口径d2と同じである。よって、開口径d3としては100mmを例示できる。配管80の開口径d3は、100mm以下に制限できればよく、100mm(呼び径100A)の代わりに例えば75mm(呼び径75A)を採用してもよい。一方、開口径d3の下限値としては、開口径d2に合わせて例えば72mmを採用することができる。
配管80としては、樹脂管あるいは金属管を用いることができ、材質的には特に限定されない。配管80として樹脂管を用いる場合は、VP管、VU管等を用いることができる。一方、配管80として金属管を用いる場合は、鋼管、ステンレスなどを用いることができる。配管80の外径としては、76mm以上115mm以下を例示できる。
なお、配管80としてVP管の代わりに鋼管を用いる場合には、上記75mmに代えて80mm(呼び径80A)を採用してもよい。この場合、配管80の口径に合わせて、円形開口53e1及び管部54の内径も同じ80mmとする。
配管80は、図示を省略するが、その下流側において、継手を介して他の配管(横管や縦管)等に接続されている。配管80を通って流れ落ちた水は、前述の継手や他の配管を流れた後、公共枡等に排水される。
【0042】
<作用>
高架橋200に降った雨水は、舗装bの路面に形成された傾斜に沿って金属蓋10に向かって流れる。そして、金属蓋10の孔に流れ込んだ雨水は、その真下に配置された下枡22内へと落とし込まれる。下枡22内に流れ込んだ雨水は、側壁53a~53dによって区画されて下に向かって先細りをなす内部空間に沿って流れ、底壁53eの円形開口53e1へと向かう。ここで、円形開口53e1にはドレン30が嵌め込まれているため、管部54に流れ込む前に、雨水を整流させてサイフォン現象を誘発する。加えて、円形開口53e1の上方を覆う蓋部材31により、排水する雨水への空気の取り込みを効果的に抑制する。このように、整流されてかつ空気の取り込みが抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0043】
以上説明のように、本実施形態の排水構造1によれば、排水枡20内に流れ込んだ水を排水する際に、排水口である円形開口53e1の上端に配置されたドレン30により予め整流させてから排水口へと流す。これにより、高流量の水が流れ込んできても、渦流の発生を防いで高い排水能力を確保できる。しかも、排水口の開口径を100mm以下に制限しているので、床版aに形成する開口部の大きさや数を増やさずに済む。したがって、開口部の周囲を補強する補強鉄筋量を、大口径の開口部を形成する場合に比べて減らせるので、橋脚等への負担を減らせる上に、施工コストも削減可能である。
【0044】
なお、本実施形態のドレン30に代えて、以下の変形例1~7に示す他のドレンを採用してもよい。
【0045】
{変形例1}
図8は、排水構造1に備わるドレンの変形例1を示す縦断面図である。
この変形例1に係るドレン130は、図2に示した円形開口53e1の上方に配置される蓋部131と、蓋部131の周囲に設けられる縦リブ132と、を有する。
蓋部131は、下枡22内から円形開口53e1への空気の入り込みを抑制することにより、サイフォン効果を高める部品である。蓋部131は、平面視において管部54の円形開口53e1の上方を完全に覆う。蓋部131の外周縁の径は、円形開口53e1の径よりも大きい。
【0046】
縦リブ132は、下枡22の底壁53eに集まる水を整流して、空気を取り込む渦を生じさせにくくしてサイフォン現象を誘発する部材である。縦リブ132は、ドレン軸Oを含む面に沿って、ドレン軸Oから放射状に延びる板部である。縦リブ132は、ドレン軸Oから放射状に、均等な間隔で、複数枚が設けられている。なお、下枡22の内側壁面に近い位置にドレン130を配置する必要がある場合には、部分的に縦リブ132を省略することにより、内側壁面との干渉を避けてもよい。
【0047】
各縦リブ132は、互いに同一形状を有する平板である。各縦リブ132は、蓋部131の下面に接続された上辺132aと、上辺132aの真下に配置された下辺132bと、これら上辺132a及び下辺132b間を接続する内辺132c及び外辺132dと、を有する。
各上辺132aは、蓋部131の下面を底面視した場合に、ドレン軸Oを中心とする径方向に沿って配置されている。そして、これら上辺132aのうちでドレン軸Oに最も近い端部に対して内辺132cが接続されている。逆に、各上辺132aのうちでドレン軸Oから最も遠い端部に対して外辺132dが接続されている。各内辺132c及び各外辺132dは、ドレン軸Oに対して平行である。そして、各内辺132cは、各外辺132dよりも長い。なお、図示の例では、下辺132bが、ドレン軸Oに近付くにつれて下方に下がるように傾斜した直線形状としているが、図5に示したドレン30の縦リブ33と同じく、側面視で上方に凹む曲線形状としてもよい。
【0048】
各縦リブ132の下辺132bのそれぞれに、前記嵌合部32が固定されている。すなわち、各縦リブ132の最下端位置からさらに真下に向かって延在し、ドレン130を底壁53eに取り付けた際に、嵌合部32の側面が管部54の内周面に当接するように、これら嵌合部32が縦リブ132に固定されている。したがって、本変形例1においても、蓋部131を底面視した場合に、各嵌合部32が環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、管部54の開口径d2よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、ドレン130を、管部54に対して着脱自在に固定可能としている。
なお、上記実施形態のドレン30と同様に、ドレン130を前記吊り具で金属蓋10に吊り下げ支持してもよいし、または、前記支持具により排水枡20内に対し着脱自在に固定してもよい。あるいは、ドレン130を排水枡20と一体にしてもよい。
【0049】
以上説明のドレン130を下枡22内の底壁53eに取り付けることで、円形開口53e1に通じる複数の開口が形成される。すなわち、蓋部131の下面と、各縦リブ132の側面と、底壁53eの上面とによって区画された複数の開口が形成される。そして、このドレン130においても、管部54に流れ込む前に雨水を整流できる。加えて、円形開口53e1の上方を覆う蓋部131により、排水する雨水への空気の取り込みをより効果的に抑制する。このように、整流されてかつ空気の取り込みが抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0050】
{変形例2}
図9は、排水構造1に備わるドレンの変形例2を示す斜視図である。また、図10は、同ドレンの斜視図である。
この変形例2に係るドレン230は、例えば樹脂により形成され、ドレン軸Oを中心として周方向複数位置に配置された羽根231と、これら羽根231の径方向内側端に連結された内側筒部232及び漏斗部233とを有する。内側筒部232は上下方向に長い円管形状を有する。漏斗部233は、内側筒部232の上端に連なって一体に固定された逆円錐台形状の管材であり、その下端から上端に向かって拡径している。
【0051】
各羽根231は、互いに同一形状を有する平板である。各羽根231は、漏斗部233の上端外周縁から等角度間隔で水平方向に延在する上辺231aと、上辺231aの最外周端から下方に向かって延在する外辺231bと、外辺231bの下端からドレン軸Oに向かって延在する下辺231cと、を有する。各下辺231cは、側面視で上方に凹む曲線形状を有する。
【0052】
各羽根231の下辺231cそれぞれに、前記嵌合部32が固定されている。すなわち、各羽根231の最下端位置からさらに真下に向かって延在し、その側面が管部54の内周面に当接するように、嵌合部32が羽根231に固定されている。したがって、本変形例2においても、漏斗部233を底面視した場合に、各嵌合部32が環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、管部54の開口径d2よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、ドレン230を、管部54に対して着脱自在に固定可能としている。
なお、上記実施形態のドレン30と同様に、ドレン230を前記吊り具で金属蓋10に吊り下げ支持してもよいし、または、前記支持具により排水枡20内に対して着脱自在に固定してもよい。あるいは、ドレン230を排水枡20と一体にしてもよい。
【0053】
以上説明のドレン230を下枡22内の底壁53eに取り付けることで、円形開口53e1に通じる複数の開口が形成される。すなわち、漏斗部233の外周面と、各羽根231の側面と、底壁53eの上面とによって区画された複数の開口が形成される。加えて、内側筒部232及び漏斗部233を上下方向に貫く開口も形成されている。
そして、このドレン230においても、雨水が管部54に流れ込む前に、各羽根231の側面間に形成された開口を通すことで、雨水を整流させる。このように、整流されて渦流の発生が抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0054】
{変形例3}
図11は、同排水構造に備わるドレンの変形例3を示す斜視図である。
この変形例3に係るドレン330は、略リング状のベース部331と、ベース部331の内側に立設した略円錐台形状の立設部332と、を有している。また、ドレン330は、立設部332のドレン軸Oを通る断面に沿って180度位相で、立設部332の外表面から外側に向かって延在する一対の外側フィン333を有している。また、ドレン330は、立設部332のドレン軸Oを通る断面に沿って180度位相で、立設部332の内表面から中心方向に向かって延在する一対の内側フィン334も有する。内側フィン334は1枚でもよい。そして、ドレン330を底面視した場合、外側フィン333の延在方向と内側フィン334の延在方向とが互いに直交している。なお、ドレン330は、鋳物から一体的に形成することもでき、あるいはプレス成形した各パーツを、溶接により接合して形成することもできる。
【0055】
立設部332は、環状の根元部332aと、円形の頂面332bと、根元部332aの上面と頂面332bの外周とを連結する複数の縦桟332cとを有する。頂面332bの中央には、円形開口332dが形成されているが、これを省略してもよい。
立設部332の根元部332aの外周と、ベース部331の内周とは、ドレン軸Oを中心として放射方向に延在する複数の放射桟331aにより連結されている。
外側フィン333は、それぞれベース部331に対して直交して配置される板材であり、ドレン軸Oを含む縦断面内にある放射桟331aの上面と、同縦断面内に有る縦桟332cの外側面と、立設部332の頂面332bの上面に接合している。外側フィン333の上縁333aは水平であり、外側フィン333の側縁333bは、対応する放射桟331aと略平行である。
【0056】
内側フィン334は、それぞれベース部331に対して直交して配置される矩形板状を有する。内側フィン334は、根元部332aの内周と、対応する縦桟332cの内側面の一部とに接合しており、さらに端部同士を互いに突き合わせるように配置されている。一対の内側フィン334の端部間には隙間が形成されているが、内側フィン334を単一の矩形板から形成して、根元部332aの直径にわたるように配置してもよい。
内側フィン334は、外側フィン333に対して90度位相で配置されている。ただし、かかる配置に限られず、内側フィン334を含む断面と、外側フィン333を含む断面とが互いに交差していればよい。
【0057】
ベース部331の下面に対し、この下面から下方に向かって突出するように、複数本の前記嵌合部32が固定されている。すなわち、ドレン330を下枡22の底壁53eに取り付けた際に、各嵌合部32の側面が管部54の内周面に当接するように、嵌合部32がベース部331に固定されている。したがって、本変形例3においても、ベース部331を底面視した場合に、各嵌合部32が環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、管部54の内径寸法よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、ドレン330を、管部54に対して着脱自在に固定可能としている。
なお、上記実施形態のドレン30と同様に、ドレン330を前記吊り具で金属蓋10に吊り下げ支持してもよいし、または、前記支持具により排水枡20内に対し着脱自在に固定してもよい。あるいは、ドレン330を排水枡20と一体にしてもよい。
【0058】
以上説明のドレン330を下枡22内の底壁53eに取り付けることで、円形開口53e1に通じる複数の開口が形成される。すなわち、ベース部331と立設部332のそれぞれに形成された多数の開口の全てが、円形開口53e1に通じる開口となる。
そして、このドレン330においても、雨水が管部54に流れ込む前に、各開口を通すことで雨水を整流させる。これに加え、外側フィン333及び内側フィン334によって雨水をさらに効果的に整流させる。このように整流されて渦流の発生が抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0059】
{変形例4}
図12は、排水構造1に備わるドレンの変形例4を示す斜視図である。より具体的には、上記変形例3における外側フィン333をアレンジしたものである。なお、図12において、符号Fは、平面視で下枡22を見たときの長辺方向を示す。
この変形例4に係るドレン430では、外側フィン333の枚数をさらに増やし、そしてこれら外側フィン333を、平面視で互いに平行をなすように配置している。その他構成は、上記変形例3に同じであるので、その重複説明を省略する。
このドレン430を下枡22の底壁53eに固定する際には、各外側フィン333が下枡22の長辺方向Fと平行をなすように配置する。平面視した下枡22内において円形開口53e1に向かう雨水の流れ方向は、長辺方向Fに沿う方向の成分が多いので、この長辺方向Fに各外側フィン333の方向を揃えることで、円形開口53e1に流れ込む雨水をより効果的に整流させることができる。したがって、渦流の発生をより効果的に抑制してスムーズに雨水を排水できる。
【0060】
{変形例5}
図13は、排水構造1に備わるドレンの変形例5を示す図であって、その中心軸線を含む断面で見た縦面図である。
この変形例5に係るドレン530は、環状のフランジ部531と、フランジ部531から上方に延びるとともに、ドレン軸Oの周囲に互いに等角度間隔で配置された複数のリブ532と、を備える。フランジ部531の上面よりも上方、かつ、リブ532の上縁よりも下方には、第1空間530Dが形成されている。
第1空間530Dは、ドレン軸Oに直交する方向のうちの一方向である第1方向に沿ってドレン530を貫通する空間である。ここで、第1方向は、ドレン530に向かって雨水が流れ込む横方向である。このドレン530は、前記蓋部材31に相当する構成を有しておらず、第1空間530Dは、ドレン530の側方のみならず、上方に対しても周囲空間と繋がっている。
【0061】
フランジ部531の下面に対し、この下面から下方に向かって突出するように、複数本の前記嵌合部32が固定されている。すなわち、ドレン530を下枡22の底壁53eに取り付けた際に、各嵌合部32の側面が管部54の内周面に当接するように、嵌合部32がフランジ部531の下面に固定されている。したがって、本変形例5においても、フランジ部531を底面視した場合に、各嵌合部32が環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、管部54の内径寸法よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、ドレン530を、管部54に対して着脱自在に固定可能としている。
なお、上記実施形態のドレン30と同様に、ドレン530を前記吊り具で金属蓋10に吊り下げ支持してもよいし、または、前記支持具により排水枡20内に対し着脱自在に固定してもよい。あるいは、ドレン530を排水枡20と一体にしてもよい。
【0062】
以上説明のドレン530を下枡22内の底壁53eに取り付けることで、第1空間530Dが、円形開口53e1に通じる。
そして、このドレン530においても、雨水が管部54に流れ込む前に、各リブ532によって雨水を整流させる。このように整流されて渦流の発生が抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0063】
{変形例6}
図14は、排水構造1に備わるドレンの変形例6を示す図であって、その中心軸線を含む断面で見た縦面図である。
この変形例6に係るドレン630は、上記変形例5におけるリブ532の形状をアレンジして第1空間530Dの範囲を下方に向かって拡張したものである。具体的には、変形例5では互いにドレン軸Oの位置で一体化していた4枚のリブ532を互いに分離し、それにより各リブ532で周囲が囲まれた第1空間530Dを形成している。この第1空間530Dは、リブ532の上下に亘って位置している。その他構成は、上記変形例5に同じであるので、その重複説明を省略する。
【0064】
以上説明のドレン630を下枡22内の底壁53eに取り付けることで、第1空間530Dが、円形開口53e1に通じる開口となる。
そして、このドレン630においても、雨水が管部54に流れ込む前に、各リブ532によって雨水を整流させる。このように整流されて渦流の発生が抑制された雨水は、管部54及び配管80を介してスムーズに排水される。
【0065】
{変形例7}
図15は、排水構造1に備わるドレンの変形例7を示す図であって、その中心軸線を含む断面で見た縦面図である。また、図16は、同ドレンの斜視図である。
この変形例7に係るドレン730は、図5に示したドレン30から縦リブ33を取り除き、その代わりに支持部材731及びフランジ732を備えた形態である。
フランジ732は、平面視で環状をなす部品である。そして、図15に示すようにドレン軸Oを含む縦断面で見た場合、フランジ732は、円形開口53e1に面する下面732aが凹曲面形状となっている。一方、同断面で見た場合におけるフランジ732の上面732bは上方に向かう凸曲面形状となっている。そして、上面732bには、ドレン軸Oを中心として互いに等角度間隔を置いて複数の支持部材731が立設されている。これら支持部材731の各上端は、蓋部材31の下面に接合されている。これにより、蓋部材31は、フランジ732の上方に、所定の間隔を開けて同軸に配置されている。
【0066】
フランジ732の下面732aに対し、この下面732aから下方に向かって突出するように、複数本の前記嵌合部32が固定されている。すなわち、ドレン730を下枡22の底壁53eに取り付けた際に、各嵌合部32の側面が管部54の内周面に当接するように、嵌合部32がフランジ732の下面732aに固定されている。したがって、本変形例7においても、フランジ732を底面視した場合に、各嵌合部32が環状に配置され、そしてこれら嵌合部32の外側面に接する外接面の径が、管部54の内径寸法よりも若干大きめになっている。そのため、嵌合部32を底壁53eの円形開口53e1に嵌め込むことで、ドレン730を、管部54に対して着脱自在に固定可能としている。
なお、上記実施形態のドレン30と同様に、ドレン730を前記吊り具で金属蓋10に吊り下げ支持してもよいし、または、前記支持具により排水枡20内に対し着脱自在に固定してもよい。あるいは、ドレン730を排水枡20と一体にしてもよい。
【実施例0067】
以上に説明した実施形態の実施可能性及び効果を確認する目的で、図2に示した排水構造1を実際に構築し、管部54の開口径d2及びドレン30の有無による排水能力への影響を調べたので、その結果を以下に説明する。
まず、発明例1の排水構造では、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て100mmに揃えた。そして、上述したドレン30を備える構成とした。
また、発明例2の排水構造では、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て75mmに揃えた。そして、上述したドレン30を備える構成とした。
また、比較例1の排水構造では、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て100mmに揃えた。ただし、上述したドレン30を取り外した構成とした。
また、比較例2の排水構造では、ドレン30を備える構成とした。ただし、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て110mmに揃えた。
また、比較例3の排水構造では、ドレン30を備える構成とした。ただし、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て150mmに揃えた。
また、比較例4の排水構造では、ドレン30を備えない構成とした。加えて、円形開口53e1、管部54、そして配管80の内径を全て150mmに揃えた。
【0068】
上記の発明例1,2と比較例1~4の試験結果を下表1に纏める。下表1において、渦流が効果的に抑えられて高い排水能力が確認されたものをG(Good)と評価し、渦流の発生等により必要な排水能力が得られなかったものをNG(NotGood)と評価した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示す通り、発明例1,2では十分な排水能力が確認された。特に、発明例2では内径を発明例1よりも細い75mmとしたが、排水能力の大きな低下は見られなかった。これは、内径が小さいとサイフォン効果がより顕著になったためと推察される。
一方、比較例1では、内径を100mmとしたものの、ドレン30を備えない構造としたため、サイフォン効果が発現できず、空気の取り込みもあって排水能力として不十分な結果となった。
また、比較例2,3では、ドレン30を装備したものの、内径を100mm超としたためにサイフォン効果が十分に発現できず、その結果、排水能力として不十分であった。
また、比較例4では、比較例3の状態からドレン30を外した結果、当然ながらサイフォン効果が発現できず、全ての実施例の中でも最も低い排水能力となった。
以上の試験結果より、ドレンを用いると共に内径を100mm以下にすることで、高排水量を実現できることが確認された。また、従来の排水構造では一般的に200mmの内径を持つ配管を用いているが、その代わりに100mm以下の細い配管80を用いることにより、床版a内において、下枡22の周囲を補強する補強鉄筋量を減らせることも確認できた。
【符号の説明】
【0071】
1…排水構造、10…金属蓋、20…排水枡、20a…開口部(開口)、30…ドレン、32…嵌合部、33…縦リブ(リブ)、54a…排水口、80…排水管、200…高架橋(道路構造物)、a…床版、b…舗装(路面)、d2…開口径。
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