(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122108
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ステータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029467
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪原 崇生
(72)【発明者】
【氏名】坂口 太志
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA06
5H604BB01
5H604CC01
5H604PB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】導線にかかる応力を低減できるステータ及びそれを備えるモータを提供する。
【解決手段】ステータコアと、インシュレータと、導線と、を備える。ステータコアは、コアバックと、ティースと、を有する。コアバックは、中心軸を囲み環状である。ティースは、コアバックから径方向に延びて周方向に複数配置される。インシュレータは、ティースを覆う。導線は、ティースの周囲にインシュレータを介して巻かれてコイルを形成する。インシュレータは、ティースカバー部を有する。ティースカバー部は、ティースと導線との軸方向間に配置され、ティースの軸方向の端面に接触する。ティースカバー部は、軸方向の端面の少なくとも一部に曲面状の曲面部を有する。曲面部は、径方向に直交する断面において、ティースから軸方向に離れる側に凸に湾曲する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を囲む環状のコアバックと、前記コアバックから径方向に延びて周方向に複数配置されるティースと、を有するステータコアと、
前記ティースを覆うインシュレータと、
前記ティースの周囲に前記インシュレータを介して巻かれてコイルを形成する導線と、を備えるステータであって、
前記インシュレータは、
前記ティースと前記導線との軸方向間に配置され、前記ティースの軸方向の端面に接触するティースカバー部を有し、
前記ティースカバー部は、軸方向の端面の少なくとも一部に曲面状の曲面部を有し、
前記曲面部は、径方向に直交する断面において、前記ティースから軸方向に離れる側に凸に湾曲する、ステータ。
【請求項2】
前記曲面部の周方向両端は、前記ティースから軸方向に離れて配置される、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記ティースカバー部の周方向の両端は、前記ティースの周方向の両端よりも周方向内側に位置する、請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記インシュレータは、
前記ティースの周方向の両側面を夫々覆い、前記ティースと前記導線との周方向間に配置される側面カバー部を有し、
前記側面カバー部の軸方向の端部は、前記ティースカバー部側に向かって屈曲して前記ティースカバー部に配置される、請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記曲面部は、前記ティースカバー部の軸方向一方側の端面における周方向の一方側の端から周方向の他方側の端に跨って湾曲する、請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記ティースカバー部は、
軸方向の端面の少なくとも一部に平面状の平面部を有し、
径方向に直交する断面において、前記曲面部の周方向の幅の合計は、前記平面部の周方向の幅の合計よりも長い、請求項1に記載のステータ。
【請求項7】
前記ティースカバー部は、異なる部材を軸方向に重ねて形成される、請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記コアバックの径方向内側に配置され、前記ステータに固定されるステータホルダをさらに備え、
前記インシュレータは、
周方向に複数並ぶ前記ティースカバー部の径方向内端を連結するとともに、前記コアバックの軸方向一方側の端面に接触する環状のコアバックカバー部を有し、
前記ステータホルダは、
軸方向に延びる筒部と、
前記筒部の軸方向一方側の端部から径方向外側に突出する環状のフランジ部を有し、
前記コアバックカバー部の軸方向一方側の端面は、平面状に形成され、前記フランジ部が配置される、請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
前記コアバックカバー部の軸方向一方側の端面は、前記ティースカバーの軸方向一方側の端面よりも軸方向他方側に位置する、請求項8に記載のステータ。
【請求項10】
環状の絶縁プレートをさらに備え、
前記絶縁プレートは、
前記フランジ部上に配置される環状部と、
前記環状部から径方向に突出する突出部と、を有し、
前記ティースカバー部は、
軸方向一方側の端面の径方向内側の端部に平面状の平坦部を有し、
前記突出部は、前記平坦部上に配置される、請求項9に記載のステータ。
【請求項11】
前記絶縁プレートの軸方向一方側の端面は、前記ティースカバー部上に配置される前記導線の軸方向一方側の端よりも軸方向一方側に配置される、請求項10に記載のステータ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に対向するマグネットを有するロータと、
を有する、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のステータは、ステータコアと、インシュレータと、導線と、を備える。ステータコアは、コアバックと、ティースと、を有する。コアバックは、中心軸を囲み環状である。ティースは、コアバックから径方向に延びて周方向に複数配置される。インシュレータは、ティースを覆う。導線は、ティースの周囲にインシュレータを介して巻かれてコイルを形成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のステータでは、モータの出力を上げるために導線の線径を大きくした場合に、ティースに巻かれた導線にかかる応力が大きくなる可能性があった。
【0005】
本開示は、導線にかかる応力を低減できるステータ及びそれを備えるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的なステータは、ステータコアと、インシュレータと、導線と、を備える。ステータコアは、コアバックと、ティースと、を有する。コアバックは、中心軸を囲み環状である。ティースは、コアバックから径方向に延びて周方向に複数配置される。インシュレータは、ティースを覆う。導線は、ティースの周囲にインシュレータを介して巻かれてコイルを形成する。インシュレータは、ティースカバー部を有する。ティースカバー部は、ティースと導線との軸方向間に配置され、ティースの軸方向の端面に接触する。ティースカバー部は、軸方向の端面の少なくとも一部に曲面状の曲面部を有する。曲面部は、径方向に直交する断面において、ティースから軸方向に離れる側に凸に湾曲する。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、導線にかかる応力を低減できるステータ及びそれを備えるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る電動バイクの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係るモータの構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係るステータの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係るステータのステータコアを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係るステータの上面カバー部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係るステータの側面カバー部を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係るステータの一部を示す概略平面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に係るステータの変形例を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態に係るステータの変形例を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の第2実施形態に係るステータの一部を示す概略断面である。
【
図13】
図13は、本開示の第3実施形態に係るステータの上面カバー部の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本開示の第3実施形態に係るステータを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、本開示の実施形態に係るモータ100を有する電動バイク200の説明に際して、電動バイク200を運転する運転者を基準として前後の表現を用いる。また、モータおよびステータの説明に際して、
図2に示すモータ100の中心軸Jの延びる方向を単に「軸方向」と呼び、モータ100の中心軸Jを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。また、本明細書では、モータおよびステータの説明に際して、
図2に示す方向にモータ100を配置した場合の軸方向と平行な方向を上下方向と定義する。本明細書で定義される方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。
【0010】
<1.電動バイク>
図1は、本開示の実施形態に係る電動バイク200の構成を示す概略図である。電動バイク200は、運転者が座る座部201aを有するバイク本体部201を有する。バイク本体部201の前方には、前輪202が配置される。バイク本体部201の後方には、後輪203が配置される。バイク本体部201は、前輪202および後輪203を利用して、地面に対して移動可能に設けられる。
【0011】
座部201aに座る運転者は、前方に配置されるハンドル204を握って電動バイク200の進行方向を操作する。後輪203は、モータ100を有する。モータ100は、いわゆるインホイールモータである。ハンドル204には、不図示のスロットルが設けられている。電動バイク200においては、運転者によるスロットルの操作に応じて、モータ100の駆動が制御される。
【0012】
なお、本実施形態では、後輪203にモータ100が設けられる構成としたが、前輪202にモータ100が設けられる構成としてもよい。また、本開示のモータは、電動バイクに限らず、他の移動体に適用されてもよい。移動体には、例えば、自動車、二輪車、船舶、航空機が含まれてよい。また、本開示のモータは、移動体に限らず、家電に適用されてもよい。
【0013】
<2.モータ>
図2は、本開示の実施形態に係るモータ100の構成を示す概略断面図である。なお、
図2には、モータ100の中心軸Jを基準として、モータ100の半分の構造のみが示されている。
図2に示すように、モータ100は、ステータ1とロータ2とを有する。モータ100は、シャフト3と、ステータホルダ4と、軸受5とをさらに有する。
【0014】
シャフト3は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる柱状である。シャフト3は、電動バイク200のバイク本体部201に対して回転不能に取り付けられる。ステータホルダ4は、中心軸Jを中心とする有底筒状に形成されている。
【0015】
ステータホルダ4は、内筒部41と、連結部42と、外筒部(筒部)43と、フランジ部44と、を有する。内筒部41及び外筒部43は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる。内筒部41は、ステータホルダ4の中心に配置される。内筒部41の内部にはシャフト3が配置される。シャフト3は、内筒部41から軸方向上側及び軸方向下側に突出する。例えば、シャフト3が内筒部41に圧入や溶接されることにより、ステータホルダ4はシャフト3に固定される。
【0016】
連結部42は、内筒部41の下端部と外筒部43の下端部とを連結してステータホルダ4の底面を構成する。フランジ部44は、外筒部(筒部)43の軸方向の上端部(軸方向一方側Z1の端部)から径方向外側に突出する環状形状である。外筒部43は、内筒部41の径方向外側に配置され、ステータ1に固定される。本実施形態では、モータ100は、1枚のステータホルダ4が用いられているが、2枚のステータホルダ4が用いられてもよい。具体的には、上下方向に反転させたステータホルダ4を上下方向に重ねる。このとき、連結部42同士を接触させる。また、上側に配置される連結部42は、外筒部43の下端部(軸方向他方側Z2の端部)に連結される。下側に配置される連結部42は、外筒部43の上端部(軸方向一方側Z1の端部)に連結される。
【0017】
ステータ1は、モータ100の電機子である。ステータ1は、中心軸Jを中心とする円環状である。ステータ1は、ステータホルダ4の径方向外方に配置され、ステータホルダ4に固定される。すなわち、ステータ1は、シャフト3に対して回転不能に固定される。ステータ1の詳細については後述する。
【0018】
ロータ2は、ステータ1と径方向に対向するマグネット21を有する。本実施形態では、マグネット21は、ステータ1の径方向外方に隙間を介して配置される。マグネット21は、周方向に複数配置される。詳細には、マグネット21は、周方向に等間隔に複数配置される。ただし、マグネットは、複数でなくてもよく、1つの環状のマグネットであってもよい。
【0019】
ロータ2は、詳細には、リム22と、ヨーク(不図示)と、ホイールカバー23と、ブレーキドラム24とを有する。リム22は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる筒状である。マグネット21は、ヨークの内周面に固定される。例えば、ヨークは、リム22の径方向内周側に溶接で固定される。また、ヨークは、アルミ材や樹脂材で構成されるリム22にインサート成型により固定されてもよい。リム22の径方向外方には、不図示のタイヤが取り付けられる。
【0020】
ホイールカバー23は、リム22の上部において、径方向内方に配置される。ホイールカバー23は、玉軸受等の軸受5を介してシャフト3に対して回転可能に取り付けられる。ホイールカバー23は、外周部がリム22に固定される。これにより、ホイールカバー23は、リム22と共に、中心軸Jを中心として回転可能に設けられる。
【0021】
ブレーキドラム24は、リム22の下部において、径方向内方に配置される。ブレーキドラム24は、玉軸受等の軸受5を介してシャフト3に対して回転可能に取り付けられる。ブレーキドラム24は、外周部がリム22に固定される。これにより、リム22と、ホイールカバー23と、ブレーキドラム24とは、中心軸Jを中心として回転可能に設けられる。なお、実施形態では、リム22、ホイールカバー23及びブレーキドラム24各々は、異なる別体の部品であるが、ホイールカバー23、ブレーキドラム24の一方がリム22と一体の部品で構成されてもよい。
【0022】
筒状のリム22にホイールカバー23とブレーキドラム24とが取り付けられることにより、内部空間300が形成される。内部空間300には、ステータ1が配置される。ロータ2は、ステータ1に駆動電流が供給されることにより発生する周方向のトルクによって、中心軸Jを中心として回転する。
【0023】
なお、本実施形態のモータ100は、ロータ2のマグネット21がステータ1の径方向外方に配置される、いわゆるアウターロータ型のモータである。ただし、本開示の技術は、アウターロータ型のモータに限らず、ロータのマグネットがステータの径方向内方に配置される、いわゆるインナーロータ型のモータにも適用可能である。
【0024】
<3.ステータ>
(3-1.ステータの構成の概要)
図3は、ステータ1の構成を示す概略斜視図である。なお、
図3には、ステータ1の他に、シャフト3およびステータホルダ4も示されている。
図4は、ステータコア11を示す斜視図であり、
図5は、上面カバー部141の斜視図である。
図6は、側面カバー部143の斜視図である。
【0025】
ステータ1は、ステータコア11と、導線12、インシュレータ14と、回路基板13と、絶縁プレート18と、を有する。
【0026】
ステータコア11は、マグネット21の径方向内方に、マグネット21に対して隙間をあけて配置される。ステータコア11は磁性体である。本実施形態においては、ステータコア11は、電磁鋼板を積層して構成される。
【0027】
図4に示すように、ステータコア11は、コアバック111と、複数のティース112とを有する。コアバック111は、上下に延びる中心軸Jを囲む環状形状である。コアバック111は、詳細には円環状である。ティース112は、コアバック111から径方向に延びて周方向に複数配置される。本実施形態では、ティース112は、コアバック111から径方向外側に延びる。また、本実施形態では、複数のティース112は、周方向に等間隔に配置される。
【0028】
各ティース112は、コアバック111から径方向外側に延びるティース本体部112aと、アンブレラ部112bと、を有する。アンブレラ部112bは、ティース本体部112aの径方向外側の端部から周方向両側に突出する。すなわち、アンブレラ部112bは、ティース本体部112aよりも周方向の幅が広い。
【0029】
インシュレータ14は、絶縁体であり、上面カバー部141と、下面カバー部142と、側面カバー部143と、を有する(
図2参照)。上面カバー部141、下面カバー部142及び側面カバー部143は、別部材である。上面カバー部141は、ステータコア11の上面(軸方向一方側Z1の端面)を覆う。下面カバー部142は、ステータコア11の下面(軸方向他方側Z2の端面)を覆う。側面カバー部143は、ティース112の周方向の両側面を夫々覆い、ティース112と導線12との周方向間に配置される。
【0030】
本実施形態では、上面カバー部141及び下面カバー部142は、樹脂製である。側面カバー部143は、樹脂製のシート状の部材である。なお、側面カバー部143は、紙製であってもよい。
【0031】
図5に示すように、上面カバー部141は、コアバックカバー部1411と、ティースカバー部1412と、を有する。すなわち、インシュレータ14は、コアバックカバー部1411と、ティースカバー部1412と、を有する。
【0032】
ティースカバー部1412は、ティース112と導線12との軸方向間に配置され、ティース112の上端面(軸方向一方側Z1の端面)に接触する。ティースカバー部1412は、ティース112の上端面(軸方向一方側Z1の端面)の少なくとも一部を覆う。ティースカバー部1412は、板状である。複数のティースカバー部1412は、周方向に等間隔に配置される。複数のティースカバー部1412の数は、複数のティース112の数と同じである。
【0033】
コアバックカバー部1411は、周方向に複数並ぶティースカバー部の径方向内端を連結するとともに、中心軸Jを囲んで環状である。より詳細には、コアバックカバー部1411は、円環状、かつ、板状である。コアバックカバー部1411は、コアバック111の上端面(軸方向一方側Z1の端面)と接触し、コアバック111の上端面(軸方向一方側Z1の端面)の少なくとも一部を覆う。
【0034】
コアバックカバー部1411の上端面(軸方向一方側Z1の端面)は平面状に形成され、フランジ部44が配置される(
図8参照)。これにより、フランジ部44が、コアバックカバー部1411に対してガタつくことを防止され、ステータホルダ4をステータ1に対して安定して固定できる。なお、フランジ部44は、外筒部(筒部)43の軸方向の下端部(軸方向他方側Z2の端部)から径方向外側に突出させてもよい。また、上述したように、2枚のステータホルダ4を上下方向に重ねて用いられる場合に、下側に配置されるステータホルダ4のフランジ部44は、外筒部(筒部)43の軸方向の下端部(軸方向一方側Z2の端部)から径方向外側に突出させてもよい。このとき、下面カバー部142の下端面(軸方向他方側Z2の端面)は平面状に形成され、フランジ部44が配置される。
【0035】
コアバックカバー部1411の上端面(軸方向一方側Z1の端面)は、ティースカバー部1412の上端面(軸方向一方側Z1の端面)よりも軸方向下側(軸方向他方側Z2)に位置する。すなわち、コアバックカバー部1411の軸方向の端面は、ティースカバー部1412の軸方向の端面よりもコアバック111側に位置する。これにより、ステータホルダ4の外筒部(筒部)43の軸方向の高さを抑えて、モータ100全体の軸方向の大型化を抑えることができる。
【0036】
下面カバー部142は、上面カバー部141と同一形状であり、コアバックカバー部(不図示)と、ティースカバー部(不図示)と、を有する。下面カバー部142のティースカバー部は、ティース112と導線12との軸方向間に配置され、ティース112の下端面(軸方向他方側Z2の端面)に接触し、ティース112の下端面(軸方向他方側Z2の端面)の少なくとも一部を覆う。
【0037】
下面カバー部142のコアバックカバー部は、コアバック111の下面(軸方向他方側Z2の端面)と接触し、コアバック111の他面(軸方向他方側Z2の端面)の少なくとも一部を覆う。
【0038】
側面カバー部143は、周方向に隣り合うティース112の間であるスロット15内に配置される。なお、複数のスロット15は、複数のティース112の数と同数である。側面カバー部143は、軸方向から視てU字状に形成され、スロット15内に配置される。
【0039】
図6に示すように、側面カバー部143は、一対のティース接触部1431と、コアバック接触部1432とを有する。コアバック接触部1432は、一対のティース接触部1431の径方向内端を連結する。
【0040】
一対のティース接触部1431の一方は、周方向に隣り合う2つのティース112の一方の周方向の側面と接触する。一対のティース接触部1431の他方は、周方向に隣り合う2つのティース112の他方の周方向の側面と接触する。コアバック接触部1432は、コアバック111の径方向の外周面と接触する。
【0041】
側面カバー部143は、ティース112の周方向の両側面を夫々覆い、ティース112と導線12との周方向間に配置される。詳細には、ティース接触部1431が、ティース112と導線12との周方向間に配置される。側面カバー部143を絶縁性のシート状部材で構成することにより、側面カバー部143を樹脂製の成型部材で構成する場合に比べて、スロット15内における絶縁体の体積を減らすことができる。これにより、スロット15の体積を大きくして導線12の巻き数を増やすことができる。
【0042】
導線12は、ティース112の周囲にインシュレータ14を介して巻かれてコイルを形成する。導線12は、絶縁体で被覆された導線をティースに巻き付けて形成される。詳細には、導線12は、ティース本体部112aに巻き付けてコイルが形成される。
【0043】
なお、本実施形態のモータ100は、U相、V相、および、W相を有する3相モータである。このために、導線12を構成する導線には、U相導線と、V相導線と、W相導線が含まれる。導線12に駆動電流が供給されると、ティース112に径方向の磁束が発生する。これにより、マグネット21を有するロータ2に周方向のトルクが発生して、ロータ2が中心軸Jを中心として回転する。
【0044】
回路基板13には、例えば、ロータ2の回転位置を検出するホールセンサなどの電子部品及び配線パターンが搭載される。配線パターンは、電子部品に電力を供給したり、信号を出力する。また、不図示の外部ドライバからの出力電流を導線12に供給するための配線パターンが設けられてもよい。回路基板13は、導線12の軸方向上方に配置される。回路基板13は、軸方向と直交する面と平行な方向に広がる。本実施形態では、
図3に示すように、回路基板13は、軸方向からの平面視において、ステータ1の周方向の一部分に配置される。回路基板13は、絶縁プレート18上に配置される。
【0045】
絶縁プレート18は、フランジ部44上に配置される環状部18aを有する。絶縁プレート18は、回路基板13とフランジ部44とを絶縁する。また、絶縁プレート18の上端面(軸方向一方側Z1の端面)は、ティースカバー部1412上に配置される導線12の軸方向上側(軸方向一方側Z1)の端よりも軸方向上側(軸方向一方側Z1)に配置される。これにより、絶縁プレート18上に配置される回路基板13が、導線12と接触することを防止できる。
【0046】
(3-2.ティースカバーの構成の概要)
図7は、ステータ1の一部を示す概略平面図である。
図8は、
図7中のA-A断面図であり、径方向に直交する断面を示す。
図9は、
図7中のB-B断面図であり、周方向に直交する断面を示す。
【0047】
本実施形態では、ティースカバー部1412とコアバックカバー部1411とは同一部材から成り、一体成形されている。
【0048】
ティースカバー部1412は、上端面(軸方向一方側Z1の端面)の少なくとも一部に曲面部1412aを有する。曲面部1412aは、径方向に直交する断面において、軸方向上側(軸方向一方側Z1)に凸に湾曲する。すなわち、曲面部1412aは、ティース112から軸方向に離れる側に凸に湾曲する。これにより、導線12は、曲面部1412aに沿って緩やかに湾曲しながら巻き回される。従って、導線12にかかる応力を低減できる。これにより、大きい線径の導線12を用いることができ、高出力・高トルクのモータ100を提供できる。
【0049】
本実施形態では、曲面部1412aは、ティースカバー部1412の上端面(軸方向一方側Z1の端面)における周方向の一方側の端P1から周方向の他方側の端P2に跨って湾曲する。これにより、導線12は、曲面部1412aに沿ってより緩やかに湾曲しながら巻き回される。従って、導線12にかかる応力をより低減できる。
【0050】
また、曲面部1412aの周方向両端P1,P2は、ティース112(ティース本体部112a)の上端面(軸方向一方側Z1の端面)から軸方向上側(軸方向一方側Z1)に離れて配置される。すなわち、曲面部1412aの周方向両端P1,P2は、ティース112(ティース本体部112a)から軸方向に離れて配置される。これにより、ティースカバー部1412の周方向の両端部は、軸方向の厚みが大きくなり、ティースカバー部1412の強度を向上できる。
【0051】
また、ティースカバー部1412の周方向の両端(本実施形態では、端P1、P2)は、ティース112(ティース本体部112a)の周方向の両端よりも周方向内側に位置する。樹脂製のティースカバー部1412は、金属製のティース112よりも寸法精度が悪い。また、ティースカバー部1412の方がティース112よりも膨張率が大きい。このため、ティースカバー部1412の周方向側面とティース112(ティース本体部112a)の周方向端面を面一に形成した場合に、導線12の発熱により、ティースカバー部1412の周方向の両端がティース112(ティース本体部112a)の周方向の両端よりも周方向外側に突出する可能性があった。
【0052】
本実施形態では、ティースカバー部1412の周方向の両端(本実施形態では、端P1、P2)を、ティース112(ティース本体部112a)の周方向の両端よりも周方向内側に配置することにより、ティースカバー部1412の周方向の両端がティース112(ティース本体部112a)の周方向の両端よりも周方向外側に突出することを防止できる。これにより、導線12が、ティースカバー部1412によって周方向外側に押圧されることを防止できる。従って、導線12にかかる応力をより低減できる。
【0053】
このとき、ティース112(ティース本体部112a)の上端面(軸方向一方側Z1の端面)における周方向の両端部が露出するが、側面カバー部143の上端部(軸方向一方側Z1の端部)は、ティースカバー部1412側に向かって屈曲してティースカバー部1412上に配置される。すなわち、側面カバー部143の軸方向の端部は、ティースカバー部1412側に向かって屈曲してティースカバー部1412に配置される。これにより、ティース112(ティース本体部112a)の露出面がティースカバー部1412により覆われ、導線12に対して絶縁される。
【0054】
下面カバー部142のティースカバー部も上面カバー部141のティースカバー部1412と同一形状であり、同様の効果を有する。具体的には、下面カバー部142のティースカバー部は、下端面(軸方向他方側Z2の端面)の少なくとも一部に曲面部を有する。下面カバー部142の曲面部は、径方向に直交する断面において、軸方向下側(軸方向他方側Z2)に凸に湾曲する。また、下面カバー部142の曲面部は、ティースカバー部1412の下端面(軸方向他方側Z2の端面)における周方向の一方側の端から他方側の端に跨って湾曲する。
【0055】
また、下面カバー部142のティースカバー部の下端面(軸方向他方側Z2の端面)の周方向両端は、ティース112(ティース本体部112a)の下端面(軸方向他方側Z2の端面)から軸方向下側(軸方向他方側Z2)に離れて配置される。
【0056】
また、下面カバー部142のティースカバー部の周方向の両端は、ティース112(ティース本体部112a)の周方向の両端よりも周方向内側に位置する。このとき、側面カバー部143の下端部(軸方向他方側Z2の端部)は、ティースカバー部1412側に向かって屈曲して下面カバー部142のティースカバー部の下側に配置される。
【0057】
なお、本実施形態では、上面カバー部141及び下面カバー部142が同一の構造としたが、異なる構造としてもよい。例えば、上面カバー部141及び下面カバー部142の一方にのみ本実施形態の曲面部を設けてもよい。
【0058】
図10及び
図11は、ステータ1の変形例を示す概略断面図であり、
図10は、径方向に直交する断面を示す。
図11は、周方向に直交する断面を示す。ティースカバー部1412は、異なる部材を軸方向に重ねて形成してもよい。例えば、曲面部1412aを含む上部1412d(軸方向一方側Z1の端部)が下部1412eとは別部材で構成されてもよい。より詳細には、ティースカバー部1412は、コアバックカバー部1411の上端面(軸方向一方側Z1の端部)よりも軸方向上側(軸方向一方側Z1)の上端部を別部材で構成することが好ましい。これにより、導線12の径に合わせて曲面部1412aの形状のみを変更することができる。従って、インシュレータ14の製造コストを削減できる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図12は、第2実施形態に係るステータ1の概略断面図であり、径方向に直交する断面を示す。説明の便宜上、前述の
図1~
図1に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付す。第2実施形態ではティースカバー部1412は、上端面(軸方向一方側Z1の端面)の少なくとも一部に平面状の平面部1412bを有する。すなわち、ティースカバー部1412は、軸方向の端面の少なくとも一部に平面状の平面部1412bを有する。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0060】
本実施形態では、ティースカバー部1412の頂部に平面部1412bが配置され、平面部1412bは軸方向に直交する。径方向に直交する断面において、曲面部1412aの周方向の幅の合計(W1+W2)は、平面部1412bの周方向の幅の合計(W3)よりも長いことが好ましい。これにより、導線12は、曲面部1412aに沿ってより緩やかに湾曲しながら巻き回される。
【0061】
なお、本実施形態では上面カバー部141のティースカバー部1412に平面部1412bを設けたが、下面カバー部142のティースカバー部に平面部を設けてもよい。また、上面カバー部141のティースカバー部1412に平面部1412bを設けず、下面カバー部142のティースカバー部のみに平面部を設けてもよい。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図13は、第3実施形態に係る上面カバー部141の一部を拡大して示す斜視図である。
図14は、第3実施形態に係るステータ1の概略断面図であり、周方向に直交する断面を示す。説明の便宜上、前述の
図1~
図1に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付す。第3実施形態ではティースカバー部1412は、上端面(軸方向一方側Z1の端面)の径方向内側の端部に平面状の平坦部1412cを有する。また、絶縁プレート18は、突出部18bを有する。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0063】
平坦部1412cは、コアバックカバー部1411の上端面(軸方向一方側Z1の端面)と面一に形成されている。突出部18bは、環状部18aから径方向に突出する。突出部18bは、例えば、3箇所設けられる。突出部18bは、平坦部1412c上に配置される。すなわち、ティースカバー部1412は、上端面(軸方向一方側Z1の端面)の径方向内側の端部に平面状の平坦部1412cを有する。突出部18bは、平坦部1412c上に配置される。突出部18bは、平面状のティースカバー部1412の上端面に接触することにより、ティースカバー部1412を軸方向により安定して保持できる。
【0064】
<4.留意事項>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。例えば、曲面部1412aの周方向両端P1,P2を、ティース112(ティース本体部112a)の上端面(軸方向一方側Z1の端面)上に配置してもよい。
【0065】
<5.付記>
以上のように、本開示の一態様に係るステータ(1)は、中心軸を囲む環状のコアバック(111)と、前記コアバックから径方向に延びて周方向に複数配置されるティース(112)と、を有するステータコア(11)と、前記ティースを覆うインシュレータ(14)と、前記ティースの周囲に前記インシュレータを介して巻かれてコイルを形成する導線(12)と、を備え、前記インシュレータは、前記ティースと前記導線との軸方向間に配置され、前記ティースの軸方向の端面に接触するティースカバー部(1412)を有し、前記ティースカバー部は、軸方向の端面の少なくとも一部に曲面状の曲面部(1412a)を有し、前記曲面部は、径方向に直交する断面において、前記ティースから軸方向に離れる側に凸に湾曲する(第1の構成)。
【0066】
また、上記第1の構成において、前記曲面部の周方向両端は、前記ティースから軸方向に離れて配置される、構成としてもよい(第2の構成)。
【0067】
また、上記第1又は第2の構成において、前記ティースカバー部の周方向の両端は、前記ティースの周方向の両端よりも周方向内側に位置する、構成としてもよい(第3の構成)。
【0068】
また、上記第1から第3のいずれか構成において、前記インシュレータは、前記ティースの周方向の両側面を夫々覆い、前記ティースと前記導線との周方向間に配置される側面カバー部(143)を有し、前記側面カバー部の軸方向の端部は、前記ティースカバー部側に向かって屈曲して前記ティースカバー部上に配置される、構成としてもよい(第4の構成)。
【0069】
また、上記第1から第4のいずれか構成において、前記曲面部は、前記ティースカバー部の軸方向一方側の端面における周方向の一方側の端(P1)から周方向の他方側の端(P2)に跨って湾曲する、構成としてもよい(第5の構成)。
【0070】
また、上記第1から第5のいずれか構成において、前記ティースカバー部は、軸方向の端面の少なくとも一部に平面状の平面部(1412b)を有し、径方向に直交する断面において、前記曲面部の周方向の幅の合計は、前記平面部の周方向の幅の合計よりも長い、構成としてもよい(第6の構成)。
【0071】
また、上記第1から第6のいずれか構成において、前記ティースカバー部は、異なる部材を軸方向に重ねて形成される、構成としてもよい(第7の構成)。
【0072】
また、上記第1から第7のいずれか構成において、前記コアバックの径方向内側に配置され、前記ステータに固定されるステータホルダ(4)をさらに備え、前記インシュレータは、周方向に複数並ぶ前記ティースカバー部の径方向内端を連結するとともに、前記コアバックの軸方向一方側の端面に接触する環状のコアバックカバー部(1411)を有し、前記ステータホルダは、軸方向に延びる筒部(43)と、前記筒部の軸方向一方側の端部から径方向外側に突出する環状のフランジ部(44)を有し、前記コアバックカバー部の軸方向一方側の端面は、平面状に形成され、前記フランジ部が配置される、構成としてもよい(第8の構成)。
【0073】
また、上記第1から第8のいずれか構成において、前記コアバックカバー部の軸方向一方側の端面は、前記ティースカバーの軸方向一方側の端面よりも軸方向他方側に位置する、構成としてもよい(第9の構成)。
【0074】
また、上記第1から第9のいずれか構成において、環状の絶縁プレート(18)をさらに備え、前記絶縁プレートは、前記フランジ部上に配置される環状部(18a)と、前記環状部から径方向に突出する突出部(18b)と、を有し、前記ティースカバー部は、軸方向一方側の端面の径方向内側の端部に平面状の平坦部(1412c)を有し、前記突出部は、前記平坦部上に配置される、構成としてもよい(第10の構成)。
【0075】
また、上記第1から第10のいずれか構成において、前記絶縁プレートの軸方向一方側の端面は、前記ティースカバー部上に配置される前記導線の軸方向一方側の端よりも軸方向一方側に配置される、構成としてもよい(第11の構成)。
【0076】
また、本開示の一態様に係るモータ(10)は、上記第1から第11のいずれかの構成のステータ(1)と、前記ステータと径方向に対向するマグネット(21)を有するロータ(2)と、を有する(第12の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示の技術は、例えば電動バイクおよび自動車等の車両、船舶、航空機、ロボット、
家電等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 ステータ
2 ロータ
3 シャフト
4 ステータホルダ
5 軸受
11 ステータコア
12 導線
13 回路基板
14 インシュレータ
15 スロット
18 絶縁プレート
18a 環状部
18b 突出部
21 マグネット
22 リム
23 ホイールカバー
24 ブレーキドラム
41 内筒部
42 連結部
43 外筒部(筒部)
44 フランジ部
100 モータ
111 コアバック
112 ティース
112a ティース本体部
112b アンブレラ部
141 上面カバー部
142 下面カバー部
143 側面カバー部
200 電動バイク
201 バイク本体部
201a 座部
202 前輪
203 後輪
204 ハンドル
300 内部空間
1411 コアバックカバー部
1412 ティースカバー部
1412a 曲面部
1412b 平面部
1412d 上部
1412e 下部
1431 ティース接触部
1432 コアバック接触部
J 中心軸
P1、P2 端
Z1 軸方向一方側
Z2 軸方向他方側