(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122116
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】排水口周り用部材、浴室床構造及び浴室床の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20240902BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20240902BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E04F15/00 F
E03C1/12 A
E03C1/20 A
E04F15/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029477
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】笹川 幸亮
【テーマコード(参考)】
2D061
2E220
【Fターム(参考)】
2D061CA02
2D061CB02
2D061CB06
2D061CC15
2E220AA08
2E220AA10
2E220AA26
2E220AA27
2E220AB03
2E220AB22
2E220AB23
2E220BA19
2E220BB12
2E220EA02
2E220EA03
2E220FA11
2E220GA07X
2E220GA24X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB37X
(57)【要約】
【課題】浴室床の表面に敷設される表面床シート及び床下地材と浴室床に形成された排水口との間に設置される排水口周り用部材、排水口周り用部材を備えた浴室床構造、及び、排水口周り用部材を用いた浴室床の施工方法を提供する。
【解決手段】排水口周り用部材1は、浴室床の表面Fに敷設される床下地材11及び表面床シート10と排水口Dとの間に設置される。排水口周り用部材1の表面床シート10及び床下地材11に隣接する側の外側面4は、床下地材11に面する下側の第一壁面40と、第一壁面40よりも排水口D側に位置しかつ表面床シート10に面する上側の第二壁面41と、第一壁面40及び第二壁面41を繋ぎかつ表面床シート10の第二壁面41に面する部分100を載置できるシート支持面42とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室床の表面に敷設される床下地材及び表面床シートと前記浴室床に形成された排水口との間に設置され、かつ、外側面が前記表面床シート及び前記床下地材に隣接する排水口周り用部材であって、
前記外側面は、
前記床下地材に面する下側の第一壁面と、
前記第一壁面よりも前記排水口側に位置しかつ前記表面床シートに面する上側の第二壁面と、
前記第一壁面及び前記第二壁面を繋ぎかつ前記表面床シートにおいて前記第二壁面に面する部分を載置できるシート支持面と、
を含む、排水口周り用部材。
【請求項2】
前記第二壁面の上端縁に連接する上面が、前記排水口側に向かって下る傾斜面を含む、請求項1に記載の排水口周り用部材。
【請求項3】
前記外側面の反対側に位置する前記排水口側の内側面は、
前記第二壁面の上端縁に連接する上面において前記内側面側の端縁から垂下する上側の第三壁面と、
前記第三壁面よりも前記排水口側に位置する第四壁面と、
前記第三壁面及び前記第四壁面を繋ぎかつ前記排水口の上方に設ける目皿の一部分を載置できる目皿支持面と、を含む、請求項1に記載の排水口周り用部材。
【請求項4】
浴室床の表面の排水口の周りに設置される請求項1から3のいずれか一項に記載の排水口周り用部材と、
前記浴室床の表面に敷設された床下地材であって、前記第一壁面に面する部分が前記第一壁面に対向する床下地材と、
前記床下地材上に敷設された表面床シートであって、前記第二壁面に面する部分が前記第二壁面との間に隙間を有する表面床シートと、
前記隙間に充填される第一シーリング剤と、
を備える浴室床構造。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の排水口周り用部材を浴室床の表面の排水口の周りに設置する工程と、
前記浴室床の表面に床下地材を、前記第一壁面に面する部分が前記第一壁面に対向するように敷設する工程と、
前記床下地材上に表面床シートを、前記第二壁面に面する部分が前記第一壁面と隙間を有するように敷設する工程と、
前記隙間をシーリング剤で充填する工程と、
を有する、浴室床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口周り用部材、排水口周り用部材が用いられた浴室床構造及び浴室床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建て、マンション、寮、ホテル、旅館、温浴施設、老人保健施設、介護福祉施設、病院等の建物においてリフォームが盛んに行われており、簡易な浴室のリフォームが求められている。簡易な浴室のリフォームとして、浴室床の表面に樹脂製の浴室用床シート(本開示では「表面床シート」という。)を敷設する方法が提案されている。例えば、浴室床の表面が陶磁器製タイル張りの場合、陶磁器製タイル材の上に表面床シートを接着剤等によって敷設することにより、浴室床の表面を改装する。この方法によれば、浴室床を手軽にかつ低コストでリフォームできる。
【0003】
ここで、浴室床には排水口が形成されており、浴室床の表面に敷設される表面床シートは、排水口が表面床シートに覆われて閉塞することがないように、浴室床の表面において排水口を除いた部分に敷設される。この際に、排水口の周囲に見切り材を設置する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1では、排水口の周囲に見切り材を設置し、表面床シートと見切り材との間にシーリング剤を充填することで、表面床シートにおいて排水口に面する部分が露出するのを防止している。これにより、特許文献1では、表面床シートが排水口に面する部分から剥がれるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面床シートは、クッション性や断熱性を有している。表面床シートのクッション性により、利用者が滑って転倒した際に頭や身体を浴室床に打ち付けた場合でも多少の衝撃を吸収できる。また、表面床シートの断熱性により、冬場の浴室床の冷たさを原因として発生するヒートショックを軽減できる。
【0006】
このように、表面床シートによってある程度の衝撃吸収性、クッション性、断熱性を浴室床に付与できるものの、さらなる衝撃吸収性、クッション性、断熱性の向上が浴室床に求められている。そのため、浴室床の表面に、表面床シートとともに衝撃吸収材、クッション材、断熱材等の床下地材を敷設することが行われている。しかし、表面床シートの下に衝撃吸収性材、クッション材、断熱材等の床下地材を設けた場合、特許文献1の見切り材は床下地材を考慮していないため、見切り材を排水口の周囲に設置しても、足裏や椅子による加重によって床下地材が沈み込んだ際、見切り材と表面床シートとの間の止水性が損なわれて、表面床シートの下に水が入り込むおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、浴室床の表面に敷設される表面床シート及び床下地材と浴室床に形成された排水口との間に設置される排水口周り用部材、この排水口周り用部材を備えた浴室床構造、及び、この排水口周り用部材を用いて表面床シート及び床下地材を浴室床の表面に施工する浴室床の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の排水口周り用部材を主題として包含する。
【0009】
項1.浴室床の表面に敷設される床下地材及び表面床シートと前記浴室床に形成された排水口との間に設置され、かつ、外側面が前記表面床シート及び前記床下地材に隣接する排水口周り用部材であって、
前記外側面は、
前記床下地材に面する下側の第一壁面と、
前記第一壁面よりも前記排水口側に位置しかつ前記表面床シートに面する上側の第二壁面と、
前記第一壁面及び前記第二壁面を繋ぎかつ前記表面床シートの前記第二壁面に面する部分を載置できるシート支持面と、
を含む、排水口周り用部材。
【0010】
本発明の排水口周り用部材は、上記項1に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項2に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0011】
項2.前記第二壁面の上端縁に連接する上面が、前記排水口側に向かって下る傾斜面を含む、項1に記載の排水口周り用部材。
【0012】
また、本発明の排水口周り用部材は、上記項2に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項3に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0013】
項3.前記上面が、前記第二壁面の上端縁から前記排水口側に向けて水平に延びる平坦面をさらに含む、項2に記載の排水口周り用部材。
【0014】
また、本発明の排水口周り用部材は、上記項2から項3に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項4に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0015】
項4.前記外側面の反対側に位置する前記排水口側の内側面は、前記上面において前記内側面側の端縁から垂下する、項2又は3に記載の排水口周り用部材。
【0016】
また、本発明の排水口周り用部材は、上記項1に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項5に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0017】
項5.前記外側面の反対側に位置する前記排水口側の内側面は、
前記第二壁面の上端縁に連接する上面において前記内側面側の端縁から垂下する上側の第三壁面と、
前記第三壁面よりも前記排水口側に位置する第四壁面と、
前記第三壁面及び前記第四壁面を繋ぎかつ前記排水口の上方に設ける目皿の一部分を載置できる目皿支持面と、を含む、項1に記載の排水口周り用部材。
【0018】
また、本発明の排水口周り用部材は、上記項5に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項6に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0019】
項6.前記排水口を囲む枠状を呈する、項5に記載の排水口周り用部材。
【0020】
また、本発明の排水口周り用部材は、上記項1から項6に記載の排水口周り用部材の好ましい態様として、以下の項7に記載の排水口周り用部材を包含する。
【0021】
項7.前記第一壁面の下端縁から外側に向けて突き出てかつ前記床下地材の一部分を載置できる板状部を備える、項1から項6のいずれか一項に記載の排水口周り用部材。
【0022】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項8に記載の浴室床構造を主題として包含する。
【0023】
項8.浴室床の表面の排水口の周りに設置される項1から項7のいずれか一項に記載の排水口周り用部材と、
前記浴室床の表面に敷設された床下地材であって、前記第一壁面に面する部分が前記第一壁面に対向する床下地材と、
前記床下地材上に敷設された表面床シートであって、前記第二壁面に面する部分が前記第二壁面との間に隙間を有する表面床シートと、
前記隙間に充填される第一シーリング剤と、
を備える、浴室床構造。
【0024】
本発明の浴室床構造は、上記項8に記載の浴室床構造の好ましい態様として、以下の項9に記載の浴室床構造を包含する。
【0025】
項9.前記排水口周り用部材において前記外側面の反対側に位置する前記排水口側の内側面と前記排水口との間に設けられた第二シーリング剤をさらに備える、項8に記載の浴室床構造。
【0026】
本発明の浴室床構造は、上記項8から項9に記載の浴室床構造の好ましい態様として、以下の項10に記載の浴室床構造を包含する。
【0027】
項10.前記排水口周り用部材において前記第二壁面の上端に連接する上面と、前記表面床シートの上面が、前記第一シーリング剤の上面を介して面一に連なる、請求項8又は項9に記載の浴室床構造。
【0028】
本発明の浴室床構造は、上記項8から項10に記載の浴室床構造の好ましい態様として、以下の項11に記載の浴室床構造を包含する。
【0029】
項11.前記表面床シートにおいて前記第一壁面に面する部分が前記シート支持面に固定されている、項8から項10のいずれか一項に記載の浴室床構造。
【0030】
本発明の浴室床構造は、上記項8から項11に記載の浴室床構造の好ましい態様として、以下の項12に記載の浴室床構造を包含する。
【0031】
項12.前記排水口周り用部材は、複数の部材が接続されて前記排水口の周りに設置されており、
複数の前記部材の隣り合う二つの前記部材において、前記シート支持面及び前記第一壁面における継ぎ目が止水テープにより覆われている、項8から項11のいずれか一項に記載の浴室床構造。
【0032】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項13に記載の浴室床の施工方法を主題として包含する。
【0033】
項13.項1から項7のいずれか一項に記載の排水口周り用部材を浴室床の表面の排水口の周りに設置する工程と、
前記浴室床の表面に床下地材を、前記第一壁面に面する部分が前記第一壁面に対向するように敷設する工程と、
前記床下地材上に表面床シートを、前記第二壁面に面する部分が前記第一壁面と隙間を有するように敷設する工程と、
前記隙間をシーリング剤で充填する工程と、
を有する、浴室床の施工方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、浴室床の表面に敷設される表面床シート及び床下地材と浴室床に形成された排水口との間に設置される排水口周り用部材は、表面床シート及び床下地材に隣接する側の外側面に、床下地材に面する下側の第一壁面と、表面床シートに面する上側の第二壁面と、表面床シートにおいて第二壁面に面する部分が載置されるシート支持面とを備えている。
【0035】
本発明では、排水口周り用部材の外側面は、床下地材に面する下側かつ外側の第一壁面と、表面床シートに面する上側かつ内側の第二壁面との間にシート支持面を有する階段状の面であり、シート支持面に表面床シートにおいて第二壁面に面する部分を載置できる。これにより、シート支持面に表面床シートを例えば接着剤や粘着剤、両面テープ、吸着フォーム等の固定手段で固定することができる。そのため、例えば、利用者が排水口周り用部材付近の表面床シートを踏んだ際に床下地材が大きく凹んでも、表面床シートと排水口周り用部材との固定を維持でき、表面床シートと排水口周り用部材との間に行った止水処理を維持できる。よって、表面床シートと排水口周り用部材との間に水が浸入するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は第一実施形態の浴室床構造の一部を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は第一実施形態の浴室床構造が適用される浴室の一例の平面図である。
【
図4】
図4は第一実施形態の浴室床構造が適用される浴室に形成された排水口を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は表面床シートの一部拡大図であり、
図5(B)は床下地材の一部拡大図であり、
図5(C)は床下地材上に表面床シートを敷設した状態の一部拡大図である。
【
図6】
図6は第一実施形態の排水口周り用部材の斜視図である。
【
図7】
図7は第一実施形態の排水口周り用部材の底面図である。
【
図8】
図8は第一実施形態の排水口周り用部材の端面図である。
【
図9】
図9は第一実施形態の排水口周り用部材の平面図である。
【
図10】
図10は第一実施形態の排水口周り用部材の分解斜視図である。
【
図11】
図11(A)は第一実施形態の排水口周り用部材を構成する直線状部材の斜視図であり、
図11(B)は直線状部材の平面図であり、
図11(C)は直線状部材の側面図である。
【
図12】
図12(A)は第一実施形態の排水口周り用部材を構成するコーナー部材の斜視図であり、
図12(B)はコーナー部材の平面図であり、
図12(C)はコーナー部材の側面図である。
【
図13】
図13(A)から(C)は第一実施形態の排水口周り用部材を構成する部材の変形例を示す平面図である。
【
図14】
図14は第一実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図15】
図15(A)及び(B)は第一実施形態の排水口周り用部材の一方の端部を浴室の壁面に固定する状態を示す図である。
【
図16】
図16(A)及び(B)は第一実施形態の排水口周り用部材を構成する部材同士の継ぎ目を止水テープで止水処理した状態を示す図である。
【
図17】
図17は第一実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図18】
図18は第一実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図19】
図19は第一実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図20】
図20は第一実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図21】
図21(A)から(E)は第一実施形態の排水口周り用部材の変形例を示す端面図である。
【
図22】
図22は第一実施形態の排水口周り用部材の変形例を示す平面図である。
【
図23】
図23は第一実施形態の浴室床構造の変形例を示す断面図である。
【
図24】
図24は第二実施形態の浴室床構造の一部を拡大して示す平面図である。
【
図26】
図26は第二実施形態の浴室床に形成された排水口を示す斜視図である。
【
図27】
図27(A)は表面床シートの一部拡大図であり、
図27(B)は床下地材の一部拡大図であり、
図27(C)は床下地材上に表面床シートを敷設した状態の一部拡大図である。
【
図28】
図28は第二実施形態の排水口周り用部材の斜視図である。
【
図29】
図29は第二実施形態の排水口周り用部材の底面図である。
【
図30】
図30は第二実施形態の排水口周り用部材の平面図である。
【
図32】
図32は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図33】
図33は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図34】
図34は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図35】
図35は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図36】
図36は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図37】
図37は第二実施形態の浴室床構造を施工する手順を示す斜視図である。
【
図38】
図38は第二実施形態の排水口周り用部材の変形例を示す平面図である。
【
図39】
図39は第二実施形態の浴室床構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、例えば浴室のリフォームにおいて、浴室床の表面に新たに表面床シート及び床下地材を敷設することで、浴室床の表面を改装する際に好適に用いることができる。
【0038】
本発明の適用対象の浴室床の例としては、表面が陶磁器製タイル材、木材、石材等の床材で仕上げられた浴室床や、樹脂又はFRP等のパネル材で形成された浴室床等が挙げられる。表面床シート及び床下地材は、浴室床の既設の床材やパネル材の上に敷設される。なお、浴室床の既設の床材やパネル材の上に内装シートが敷設されている場合は、既設の内装シートを剥がして表面床シート及び床下地材を敷設してもよいし、既設の内装シートを剥がすことなく表面床シート及び床下地材を敷設してもよい。
【0039】
浴室は、在来工法で造られた浴室、浴槽(及び洗い場)のみが組み付けられた1点ユニットバス、浴槽とシャワー室に加えて洗面台が設置されている浴室、浴槽と洗面器の2つが一体に組み付けられた2点ユニットバス、浴槽とシャワー室に加えて洗面台及び便器が設置されている浴室、浴槽と洗面器と便器の3つが一体に組み付けられた3点ユニットバス等を挙げることができる。
【0040】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、各部材又は各部の大きさ(長さ、幅、高さ、厚み)は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0041】
第一実施形態の浴室床構造
図1及び
図2は、第一実施形態の浴室床構造1を示す。
図3及び
図4は、第一実施形態の浴室床構造が適用される浴室の一例を示す。
図3及び
図4に示す浴室は、浴槽200と、浴槽200に隣接した洗い場201とを備えている。第一実施形態の浴室床構造1は、浴室の壁面W(もしくは浴槽、排水溝)に沿って排水口Dが形成された浴室床(洗い場201の床)の表面Fに対して、表面床シート10及び床下地材11を敷設した床構造である。床下地材11が、浴室床の表面Fに、接着剤や粘着剤、両面テープ、吸着フォーム等の固定手段を用いて敷設され、表面床シート10が床下地材11の上に接着剤や粘着剤、両面テープ、吸着フォーム等の固定手段を用いて敷設される。表面床シート10は、浴室床の改装後の表面を構成する。なお、本開示において、排水口は排水が流れ込む穴を意味するが、この穴の形状は特に限定されず、溝状に形成される排水溝を含むものとする。
【0042】
図5(A)は、平面視における表面床シート10の開口縁部100と開口O1を示し、
図5(B)は、平面視における床下地材11の開口縁部110と開口O2を示す。
図5(C)は床下地材11上に表面床シート10を敷設した状態の各開口縁部100,110と各開口O1,O2を示す。表面床シート10及び床下地材11は、排水口Dを覆って閉塞することがないように、
図5(A)及び(B)に示すように、排水口Dよりも一回りサイズが大きい開口O1,O2が形成されている。第一実施形態では、表面床シート10及び床下地材11の外周縁部の一部分に開口O1,O2が形成されている。この開口O1,O2は、後述する排水口周り用部材2の平面視形状に合わせた形状を呈し、本実施形態では、排水口Dと同じで平面視矩形状である。なお、
図5(C)に示すように、床下地材11に形成された開口O2の方が表面床シート10に形成された開口O1よりも一回りサイズが大きい。開口O1と開口O2の長手方向(
図5の左右方向)のサイズの差は、特に限定されないが、5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0043】
図1及び
図2に示すように、表面床シート10及び床下地材11は、浴室床の表面Fにおいて排水口Dを除いた部分に敷設される。表面床シート10及び床下地材11において排水口Dの周囲に位置する開口縁部100,110は、排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔のあいたスペースに、排水口周り用部材2が設置されている。排水口周り用部材2は、排水口Dの周りに設置される。排水口周り用部材2は、浴室床の表面Fに接着剤や粘着剤、両面テープ、吸着フォーム等の固定手段を用いて設置される。
【0044】
本開示において、床下地材11を浴室床の表面Fに固定する固定手段、表面床シート10を床下地材11に固定する固定手段、及び、排水口周り用部材2を浴室床の表面Fに固定する固定手段等のいずれの固定手段は、特に限定されないが、止水性が高く、浴用品の侵入を防ぐことができ、カビの発生を抑制できることから、接着剤、両面テープを好適に用いることができる。接着剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、尿素樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤及び、ゴム系接着剤を用いることができる。そのなかでも、耐水性、及び、接着性に優れる点で、エポキシ系接着剤を好適に用いることができる。なお、接着剤は、防黴剤を含有するものであってもよい。防黴剤としては、黴の発生を防止することができれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイミダゾール系防黴剤、ドデシルグアニジン塩酸塩、N-(フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド、N-ラウリル-β-アラニン等を用いることができる。そのなかでも、防黴効果に優れる点で、ベンゾイミダゾール系防黴剤を好適に用いることができる。両面テープは、特に限定されないが、例えば、東リ株式会社の「バスナテープ」を好適に用いることができる。
【0045】
排水口周り用部材2は、外側面4が表面床シート10及び床下地材11に隣接するようにして設置される。つまり、排水口周り用部材2の外側面4は、表面床シート10及び床下地材11において排水口Dの周囲に位置する開口縁部100,110と面している。なお、排水口周り用部材2においては、排水口D側を内側とし、その反対の表面床シート10及び床下地材11側を外側とする。
【0046】
床下地材11は、開口縁部110が排水口周り用部材2の外側面4に対向するように、浴室床の表面Fに敷設されている。ここで、「対向する」とは、床下地材11の開口縁部110が排水口周り用部材2の外側面4に対して両者の間に隙間を有することなく突き当たる場合と両者の間に隙間を有して向かい合う場合とを含む。表面床シート10は、開口縁部100が排水口周り用部材2の外側面4との間に隙間を有するように、床下地材11の上に敷設されている。表面床シート10の開口縁部100と排水口周り用部材2の外側面4との間の隙間には、第一シーリング剤12が充填されている。
【0047】
排水口周り用部材2は、外側面4と反対側の内側面6が排水口Dの近傍に位置しており、内側面6は排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔のあいたスペースは、第二シーリング剤13で埋められている。
【0048】
次に、第一実施形態の浴室床構造1に用いられる各種の部材について説明する。
【0049】
排水口周り用部材
図1、
図2及び
図6から
図9に示すように、排水口周り用部材2は、浴室の壁面W(もしくは浴槽、排水溝)に沿って浴室床に形成された排水口Dの周りに設置される。本実施形態では、排水口Dが平面視矩形状であるため、排水口周り用部材2の全体形状は、浴室の壁際以外の排水口Dの三方を囲むように平面視コの字状である。なお、排水口周り用部材2の全体形状は、排水口Dの周りに設置できれば平面視コの字状に限定されず、他の種々の形状であってもよい。
【0050】
排水口周り用部材2は、平坦な底面3を備える。底面3の平面形状は本実施形態ではコの字状であり、底面3は、コの字状に延びる並行な外端縁30及び内端縁31を備える。排水口周り用部材2は、底面3が浴室床の表面Fに接着剤や両面テープ等の固定手段によって固定されることで、浴室床の表面Fに固定される。
【0051】
排水口周り用部材2は、外側面4を備える。外側面4は、表面床シート10及び床下地材11に隣接する。外側面4は、下側の第一壁面40と、上側の第二壁面41と、第一壁面40及び第二壁面41を繋ぐシート支持面42と、を含む。
【0052】
第一壁面40は、底面3の外端縁30から垂直に立ち上がる平らな面である。第一壁面3は、床下地材11の開口縁部110に面している。第一壁面40の高さは、床下地材11の厚みと同等又は概ね同等である。第一壁面40は、本実施形態では床下地材11の開口縁部110と隙間をあけずに当接している。第一壁面40は、床下地材11の開口縁部110と直接に接していてもよいし、接着剤や両面テープ、シーリング剤等の接着手段を介して接していてもよい。
【0053】
シート支持面42は、第一壁面40の上端縁から内側(排水口D側)に向かって水平に延びる平らな面である。シート支持面42の平面形状は本実施形態ではコの字状であり、シート支持面42は、コの字状に延びる並行な外端縁420及び内端縁421を備える。シート支持面42の外端縁420から第一壁面40が垂下している。シート支持面42は、床下地材11の上に敷設された表面床シート10の開口縁部100を載置する。シート支持面42の幅(外端縁420と内端縁421との間の長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であり、4mm以上15mm以下であることが好ましく、6mm以上10mm以下であることがより好ましい。表面床シート10は、開口縁部100がシート支持面42に接着剤や両面テープ等の固定手段によって固定されることで、排水口周り用部材2に固定される。
【0054】
第二壁面41は、シート支持面42の内端縁421から垂直に立ち上がる平らな面である。第二壁面41は、表面床シート10の開口縁部100に面している。第二壁面41の高さは、特に限定されないが、表面床シート10の厚みと同等又は概ね同等であることが好ましい。例えば、第二壁面41の高さは、1mm以上10mm以下であり、1.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0055】
第二壁面41は、表面床シート10の開口縁部100と隙間をあけて近接している。第二壁面41と表面床シート10の開口縁部100との間の隙間は、第一シーリング剤12が充填される空間である。第一シーリング剤12により、表面床シート10と排水口周り用部材2との間の目地から水が浸入するのを抑制できる。
【0056】
第一シーリング剤12の幅(
図2において左右方向の長さ)は、特に限定されないが、2mm以上10mm以下であり、3mm以上5mm以下であることが好ましい。第一シーリング剤12の幅が2mm以上であれば、十分な水密性を確保できる。また、第一シーリング剤12の幅が10mm以下であれば、施工性を良好にでき、第一シーリング剤12の露出を目立たなくすることができる。
【0057】
第一シーリング剤12の高さは、特に限定されないが、第二壁面41の高さ及び表面床シート10の厚みと同等又は概ね同等であることが好ましい。これにより、表面床シート10の上面101、第一シーリング剤12の上面120及び排水口周り用部材2の上面5を段差のない面一に連ねることができ、排水口周り用部材2と表面床シート10との間の止水性を向上できる。また浴室の美観を損ねるのを抑制できる。
【0058】
なお、第二壁面41の高さは、表面床シート10の厚みと比べて同じであってもよいし、大きくても小さくてもよいが、第二壁面41の高さは表面床シート10の厚みよりも小さいことが好ましい。つまりは、排水口周り用部材2は、その上面5が表面床シート10の上面101よりも低く位置するように形成される。この場合には、第一シーリング剤12は、特に限定されないが、上面120が表面床シート10から排水口周り用部材2側(内側)に向かって下る傾斜面となるように、形成されることが好ましい。
【0059】
排水口周り用部材2は、上面5を備える。上面5は、第二壁面41の上端縁に連接する。上面5の平面形状は、本実施形態ではコの字状であり、上面5は、コの字状に延びる並行な外端縁52及び内端縁53を備える。上面5は、外側の平坦面50と、内側の傾斜面51と、を含む。上面5の幅(
図3において左右方向の長さ)は、特に限定されないが、5mm以上50mm以下であり、10m以上20mm以下であることが好ましい。
【0060】
平坦面50は、第二壁面41の上端縁から内側(排水口D側)に向かって水平に延びる平らな面である。平坦面50の幅(
図2において左右方向の長さ)は、特に限定されないが、2mm以上20mm以下であることが好ましい。排水口周り用部材2の上面5が平坦面50を含むことで、排水口周り用部材2の上面5の強度が上がる。そのため、利用者が排水口周り用部材2の上面5を踏むことで排水口周り用部材2に負荷がかかっても、排水口周り用部材2の形状を維持しやすくなる。
【0061】
傾斜面51は、平坦面50に連接され、かつ、第二壁面41側とは反対の内側(排水口D側)に向かって下るように斜めに傾く面である。傾斜面51の傾斜角度θ(
図2に示す)は、特に限定されないが、20°以上80°以下であることが好ましい。排水口周り用部材2の上面5が傾斜面51を含むことで、水を表面床シート10から排水口周り用部材2を介して排水口Dへスムーズに導くことができる。なお、傾斜面51は、本実施形態では、真っ直ぐに傾斜する平面であるが、曲面(凹曲面、凸曲面)であっても構わない。
【0062】
排水口周り用部材2は、内側面6を備える。内側面6は、外側面4の反対側である排水口D側に位置する。排水口周り用部材2は、内側面6が排水口Dの近傍に位置するように設置される。内側面6は、底面3の内端縁31から垂直に立ち上がり、上面5の内端縁53から垂下する平らな面である。内側面6の高さは、特に限定されないが、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0063】
内側面6は、排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔があいたスペースは、第二シーリング剤13で埋められる。第二シーリング剤13により、排水口周り用部材2と浴室床の表面Fとの間の目地から水が浸入するのを抑制できる。また、第二シーリング剤13によって排水口周り用部材2の内側面6が被覆されるので、排水口周り用部材2が内側(排水口D側)から剥がれるのを抑制できる。
【0064】
第二シーリング剤13の幅(
図2において左右方向の最大長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であり、3mm以上10mm以下であることが好ましい。第二シーリング剤13の幅が3mm以上であれば、十分な水密性を確保できる。また、第二シーリング剤13の幅が20mm以下であれば、施工性を良好にでき、第二シーリング剤13の露出を目立たなくすることができる。
【0065】
第二シーリング剤13は、特に限定されないが、排水口周り用部材2の内側面6と接する側が最も高く、排水口D側が最も低くなるように、その上面130が内側(排水口D側)に向かって下るように傾斜していることが好ましい。これにより、水を排水口周り用部材2から第二シーリング剤13を介して排水口Dへスムーズに導くことができる。
【0066】
排水口周り用部材2は、一対の端面7を備える。一対の端面7は、底面3の両側縁32から垂直に立ち上がる平らな面である。一対の端面7の間を外側面4,上面5及び内側面6が延びている。
【0067】
上述した形状の排水口周り用部材2は、特に限定されないが、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性等の浴室の床に用いるために必要な耐久性を満足する材料、例えば金属や樹脂で形成されるのが好ましい。排水口周り用部材2は、例えば射出成型等により全体が一体に形成されていてもよいが、複数の構成部材に分かれていて、複数の構成部材を接続して形成することが好ましい。
【0068】
本実施形態では、
図10に示すような、平面視矩形状の排水口Dの各辺に沿って延びる直線状部材20、及び、排水口Dのコーナー部に設置されるコーナー部材21を組み合わせることで、平面視コの字状の排水口周り用部材2が形成されている。本実施形態では、四つの直線状部材20及び二つのコーナー部材21の組み合わせにより、平面視コの字状の排水口周り用部材2が形成されている。なお、本実施形態では、二つのコーナー部材21の間に二つの直線状部材20を用いているが、変形例として、より長尺の一つの直線状部材20で二つのコーナー部材21の間をつないでもよい。この変形例では、排水口周り用部材2は、二つのコーナー部材21の間の直線状部材20の目地から水が浸入することがないうえ、排水口周り用部材2の強度も高まるために好ましい。
【0069】
直線状部材20及びコーナー部材21の素材は、特に限定されないが、好ましくは軟質樹脂又は半硬質樹脂が用いられる。軟質樹脂又は半硬質樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。その中でも、加工性に優れ、硬度の調整が容易であり、製造コストも抑制できるため、ポリ塩化ビニル樹脂を直線状部材20及びコーナー部材21の素材として好ましく用いることができる。直線状部材20及びコーナー部材21は、例えば上述した軟質樹脂又は半硬質樹脂を用いた押出成形により形成できる。
【0070】
直線状部材20が軟質又は半硬質であることにより、施工者はカッター等の切断器具を用いて直線状部材20を長さ方向の任意の箇所でカットできる。そのため、ある程度長い直線状部材20を用意しておき、現場で排水口Dのサイズ(一辺の長さ)に応じて直線状部材20を所望の長さでカットすることで、排水口Dのサイズが浴室によって異なっていても、排水口Dのサイズに合った排水口周り用部材2を容易に形成できる。よって、排水口周り用部材2を排水口Dの周りに、排水口Dに排水口周り用部材2が重なることなく設置できる。
【0071】
直線状部材20は、
図11(A)から(C)に示すように、一方向に真っ直ぐ延びる上述した底面3、外側面4、上面5及び内側面6と、一方向(長さ方向)における両端の一対の端面8Aを備える。コーナー部材21は、
図12(A)から(C)に示すように、L字に延びる上述した底面2、外側面3及び上面4と、L字の両端の一対の端面8Bを備える。直線状部材20の一対の端面8A及びコーナー部材21の一対の端面8Bは同じ大きさ及び形状である。
図10に示す排水口周り用部材2において、両端側の二つの直線状部材の一方の端面8Aが排水口周り用部材2の一対の端面7を構成する。
【0072】
直線状部材20及びコーナー部材21、及び、二つの直線状部材20は、例えば、それぞれの端面同士を接着剤や両面テープ、シーリング剤等の接着手段で接着することで、互いに接続できる。また、各部材20,21の端面に止水部材を挟んで、止水性を向上させてもよい。あるいは、例えば、接続する二つの部材のうちの一方の部材の端面に一つ又は複数の突起を設け、他方の部材の端面に一つ又は複数の嵌合孔を形成し、嵌合孔への突起の嵌め込みにより二つの部材を連結することで、二つの部材を互いに接続してもよい。
【0073】
直線状部材20及及びコーナー部材21は、本実施形態では中身が詰まった中実であるが、内部に空洞を有する中空であってもよい。なお、直線状部材20が中空であり、コーナー部材21が中実であってもよい。各部材20,21が中実であると各部材20,21の強度を向上でき、各部材20,21が中空であると各部材20,21の軽量化を図ることができる。直線状部材20が中空であり、コーナー部材21が中実である場合には、コーナー部材21の端面8Bに、直線状部材20の空洞に嵌まり込む突起を設け、直線状部材20の空洞への突起の嵌め込みにより直線状部材20及びコーナー部材21を連結することで、直線状部材20とコーナー部材21を接続してもよい。
【0074】
本実施形態では、四つの直線状部材20と二つのコーナー部材21の組み合わせにより、平面視コの字状の排水口周り用部材2を形成しているが、コーナー部材21を用いることなく排水口周り用部材2を形成することもできる。例えば、
図13(A)に示すように、一方の端部が斜めに切り落とされた四つの直線状部材22の組み合わせにより、平面視コの字状の排水口周り用部材2を形成してもよい。あるいは、例えば、
図13(B)に示すように、一方の端部が斜めに切り落とされた二つの直線状部材22と、両方の端部が斜めに切り落とされた一つの直線状部材23との組み合わせにより、平面視コの字状の排水口周り用部材2を形成してもよい。あるいは、例えば、
図13(C)に示すように、二つのL字状部材24の組み合わせにより、平面視コの字状の排水口周り用部材2を形成してもよい。
【0075】
表面床シート
表面床シート10は、浴室床の意匠性、機能性を向上させるシート材である。表面床シート10は、特に限定されないが、止水性及び施工性の観点から、目地のない1枚のシート材からなることが好ましい。表面床シート10は、通常、長尺の表面床シートがロール状に巻かれて保管及び運搬され、現場において、浴室床の形状及びサイズに応じてカットされる。
【0076】
表面床シート10の機能性としては、防滑性、クッション性、断熱性等の向上を挙げることができる。表面床シート10が適度なクッション性を有することで、利用者の転倒時の衝撃を吸収できる。また、表面床シート10が適度な断熱性を有することで、浴室におけるヒートショックを低減できかつ接触温熱感を高めることができる。クッション性及び断熱性の向上のため、表面床シート10は発泡層を含むことが好ましい。表面床シート10は、その全体が発泡層で形成されていてもよいが、防滑性の向上のためには、発泡層の上に、潰れにくい突部や傾斜面が表面に形成された非発泡の表面層を含むことが好ましい。つまり、表面床シート10は、単層構造であってもよいし、複数の層が積層された二層以上の多層構造であってもよい。さらに、表面床シート10は、ロール状に巻き取ることができるような柔軟性を有することが好ましい。これにより、表面床シート10を簡易に保管及び運搬できるうえ、施工時に浴室内に容易に搬入できる。
【0077】
表面床シート10は、浴室床に用いることができればその素材は特に限定されない。表面床シート10は、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の柔軟性を有する樹脂材料で形成できる。その中でも、塩化ビニル樹脂は、表面床シート10の柔軟性、加工性、耐久性、製造コストの抑制に優れるため、主たる樹脂成分として用いることが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、柔軟性に優れるため、施工後の浴室床Fの表面を柔軟にでき、さらに表面床シート10をロール状に巻き取って簡易に保管及び運搬できるとともに施工時に浴室内に容易に搬入できるというメリットもある。
【0078】
表面床シート10の表面は、特に限定されないが、光沢度を高くするよりも低くする方が好ましい。これにより、下地の不陸や凹凸が表面床シート10の表面へ表出した際に、人の目で視認し難くすることができる。表出した凹凸等を人の目で視認し難くするための光沢度(60°)は、好ましくは0.3以上60以下であり、より好ましくは0.5以上30以下である。なお、光沢度(60°)は、例えばGM-3D(株式会社村上色彩技術研究所製)等の光沢度測定器を用いて測定できる。光沢度を低くする方法としては、例えば、表面床シート10の表面層中にシリカ又はプラスチックビーズ等の艶消剤を添加する方法、防滑性を付与するために設ける突部や傾斜面とは別に表面に微細な凹凸を形成する方法等を挙げることができる。微細エンボスは、大きいよりも小さい方が、光沢度をより抑える傾向を持つ。微細な凹凸が形成されていることにより、表面床シート10の表面にあたった光が乱反射して光沢性が低くなる。微細な凹凸の表面粗さは、特に限定されないが、粗過ぎると光の反射方向によっては高い光沢を有するように見える場合があり、一方、細かすぎると鏡面状と殆ど変わらなくなる場合がある。このような観点から、表面粗さ(JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さ(Ra))は、好ましくは5μm以上15μm以下であり、より好ましくは6μm以上10μm以下である。表面床シート10の表面の凹凸や突部等は、通常はエンボス加工を行って形成する。エンボス加工方法は特に限定されず、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面など)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、Vカット状、微細網状、微細点状、ストライプ状等を挙げることができる。微細な凹凸は、エンボス加工以外に、サンドブラストや鑢がけ等によって表面を粗くしたり、フィラー等の微粒子を表面に埋め込む等の方法によっても形成することができる。このような微細な凹凸を加えることによって、表面床シート10の表面に表出した凹凸等をさらに隠蔽しやすくすることができる。
【0079】
表面床シート10又は表面床シート10の表面層は、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでいてもよい。
【0080】
表面床シート10は、その剛性を高め、形状や寸法安定性を付与するために、補強層を一つ又は複数含んでいてもよい。表面床シート10が補強層を厚み方向に含むことで、表面床シート10の表面に凹凸等が表出するのを抑制できる。補強層としては、例えば、ガラスマット、ガラスネット、樹脂製マット、樹脂製ネット、無機繊維又は有機繊維からなる不織布又はフェルト、及び、織布等を挙げることができる。その中でも、強度に優れ、かつ、寸法変化が小さいという点から、補強層にガラス繊維を用いることが好ましい。ガラス繊維は、特に限定されないが、目付量が10g/m2以上100g/m2以下のガラス繊維織布又は不織布が特に好ましい。ガラス繊維の目付量が上記範囲内であることで、表面床シート10の表面に凸凹等が表出するのを効果的に抑制できる。なお、例えばポリエステル等の他の繊維を用いた織布又は不織布についても、同程度の目付量が好ましい。
【0081】
表面床シート10は、表面床シート10の下に位置する床下地材11との接着剤や両面テープ等による接着部分の接着強度を高めるとともに、非接着部分のずれを防ぐことを目的として、最下層に基材層を含んでいてもよい。基材層は、特に限定されないが、例えば、不織布、織布、紙、フェルト等の従来公知のシート材を用いることができる。不織布や織布を構成する繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン等の樹脂繊維;ガラス、カーボン等の無機繊維;天然繊維等を挙げることができる。不織布は、特に限定されないが、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。その中でも、薄くて強い補強層を構成できることから、スパンボンド不織布が好ましく、ポリプロピレン繊維で構成されたスパンボンド不織布がより好ましい。
【0082】
基材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.4mm以下であることがより好ましい。基材層の目付量は、特に限定されないが、例えば30g/m2以上70g/m2以下であることが好ましい。基材層の厚み及び目付量が上記範囲内であることで、表面床シート10の表面に凹凸等が表出するのを効果的に抑制できる。
【0083】
表面床シート10の厚みは、特に限定されないが、例えば1.8mm以上4.0mm以下であり、好ましくは2.0mm以上3.5mm以下である。表面床シート10の厚みは、エンボス加工が施されている場合等のように厚みが不均一な場合、その最大厚みを指す。表面床シート10の厚みが1.8mm以上であることで、表面床シート10の強度を十分に確保でき、表面床シート10の表面に凸凹等が表出するのを効果的に抑制できる。また、表面床シート10の厚み4.0mm以下であることで、表面床シート10の柔軟性を高めることができ、狭い浴室内で表面床シート10を施工する際の作業性が向上する。表面床シート10として、例えば、東リ株式会社製の浴室・浴場用ビニル床シートである「バスナリアルデザイン」、「バスナフローレ」、及び「バスナアルティ」を好適に用いることができる。それぞれの厚みは、「バスナリアルデザイン」及び「バスナフローレ」が3.5mmであり、「バスナアルティ」が2.8mmである。
【0084】
床下地材
床下地材11は、表面床シート10の下に配置されて、浴室床の機能性を効果的に向上させる部材である。機能性としては、例えば、衝撃吸収性、クッション性、断熱性等の向上、及び音の発生の軽減を挙げることができる。床下地材11が高い衝撃吸収性、クッション性を有することで、利用者の転倒時の衝撃を効果的に吸収できる。また、床下地材11が高い断熱性を有することで、浴室におけるヒートショックを効果的に低減できかつ接触温熱感を効果的に高めることができる。床下地材11は、このような機能を発揮できるものであれば構成は特に限定されないが、例えば、発泡タイプと、非発泡タイプとが挙げられる。
【0085】
床下地材11は、クッション材及び/又は断熱材を用いることができる。クッション材は、弾性変形可能であれば特に限定されないが、例えばウレタン、塩化ビニル、ポリエチレン等の発泡体を用いることができる。発泡体は、クッション性を有するとともに断熱性を有する。断熱材は、特に限定されないが、ニードルパンチ不織布やフェルト等を用いることができる。ニードルパンチ不織布やフェルトを構成する繊維は、特に限定されないが、例えば、ロックウールやグラスウール等を挙げることができる。
【0086】
床下地材11の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm以上50mm以下であり、好ましくは2mm以上25mm以下である。床下地材11の厚みが50mm以下であることで、施工性を良好にできる。床下地材11の厚みが0.5mm以上であることで、クッション性、衝撃吸収性、断熱性を高めることができ、また音の発生を軽減できる。床下地材11として、例えば、東リ株式会社製の長尺シートである4.5mm厚の「アンダーレイシート」を好適に用いることができる。また、床下地材11は、良好なクッション性を有するものとして、例えば、普通に歩く場合は硬くて転倒しにくいのに対して、転倒等により衝撃が加わった際には形状が変化して表面がへこむことで衝撃を吸収する弾性変形構造体を好適に用いることができる。この弾性変形構造体は、例えば、ゴム等の弾性体を用いた中空の立体構造をなしており、衝撃によって閾値以上の圧力付与されたときに弾性変形して立体構造が崩れることで衝撃を吸収し、圧力付与がなくなれば可逆的に元の立体構造に戻るものを用いることができる。また、弾性変形構造体としては、特表2019-525783号公報、特公平04-03050号公報、国際公開公報WO2022/2092111、国際公開公報WO2021/107157、特許6951741号公報、中国登録実用新案公報CNY213296986に記載のものを好適に用いることができる。
【0087】
シーリング剤
上述した第一シーリング剤12及び第二シーリング剤13は、特に限定されないが、例えば、1成分型シリコーン系シーリング剤、1成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型シリコーン系シーリング剤、2成分型変性シリコーン系シーリング剤、2成分型エポキシ系シーリング剤、2成分型ポリサルファイド系シーリング剤、1成分型ポリウレタン系シーリング剤、2成分型ポリウレタン系シーリング剤等を用いることができる。2成分型のシーリング剤は、施工前に混合する必要があるが、強固で耐久性に優れた仕上がりとなる。1成分型のシーリング剤は、事前の混合作業が不要であり、作業性に優れる。作業性に優れ、かつポリ塩化ビニル樹脂との接合性に優れる点において、1成分型変性シリコーン系シーリング剤を第一シーリング剤12及び第二シーリング剤13に好適に用いることができる。なお、一般的にコーキング剤はシーリング剤と同義で用いられていることから、本開示においても、シーリング剤にはコーキング剤が含まれるものとする。
【0088】
第一実施形態の浴室床の施工方法
次に、第一実施形態の浴室床の施工方法について説明する。まず、
図4に示す浴室床の表面Fに、大きな凹凸がある不陸や、亀裂等がある場合には、必要に応じて下地補修材を用いて平滑化処理を行う。浴室床の表面Fが陶磁器製タイル材や繊維強化プラスチック(FRP)のパネル材の場合、下地補修材として、例えば「バスナパテEPO(東リ株式会社製)」を好適に用いることができる。
【0089】
次に、
図14に示すように、浴室床の表面Fの排水口Dの周りに排水口周り用部材2を設置する。排水口周り用部材2は、接着剤や両面テープ等を用いて浴室床の表面Fに固定する。施工作業の効率性からは、両面テープを用いることが好ましい。
【0090】
両面テープは、浴室床の表面Fに排水口Dの三方に沿って貼り付けてもよいが、排水口周り用部材2の底面3に貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープと同様である。排水口周り用部材2は、排水口Dから5mm以上の間隔をあけて設置されるのが好ましい。
【0091】
排水口周り用部材2は、浴室床の表面Fに固定するだけでなく、
図15に示すように、浴室の壁面Wにも固定することが好ましい。具体的には、排水口周り用部材2の一対の端面7を接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープ15を用いて浴室の壁面Wに固定する。これにより、浴室床の表面Fに対して排水口周り用部材2を強固に固定できる。
【0092】
なお、排水口周り用部材2が
図10及び
図13に示すような複数の部材20-24の組み合わせにより形成されている場合には、
図16に示すように、隣り合って接続された二つの部材E1,E2の間の継ぎ目Sを止水テープ14で覆うことが好ましい。なお、止水テープ14には、シールテープも含まれるものとする。
【0093】
止水テープ14は、排水口周り用部材2の各面4-6における継ぎ目Sを覆うように排水口周り用部材2に貼り付けてもよいが、好ましくは、排水口周り用部材2の外側面4の第一壁面40及びシート支持面42における継ぎ目Sを覆うように排水口周り用部材2に貼り付けることができる。排水口周り用部材2の内側面6における継ぎ目Sは、第二シーリング剤13により覆われるため、止水テープ14で必ずしも覆う必要はない。また、排水口周り用部材2の外側面4の第二壁面41における継ぎ目Sは、第一シーリング剤12により覆われるため、止水テープ14で必ずしも覆う必要はない。排水口周り用部材2の上面5における継ぎ目Sは、外側面4が全て止水材で覆われているため、止水テープ14で必ずしも覆う必要はない。
【0094】
次に、
図17に示すように、浴室床の表面Fに床下地材11を敷設するため、浴室床の表面Fに接着剤や両面テープ等の固定手段を設ける。施工作業の効率性からは、浴室床の表面Fに両面テープ15を貼り付けることが好ましい。浴室床の表面Fにおいて、両面テープ15を貼り付ける箇所は、特に限定されない。浴室床の表面Fの全域に両面テープ15を貼り付けてもよいが、少なくとも床下地材11の外周縁部と開口縁部110が浴室床の表面Fに固定されれば、水が床下地材11と浴室床の表面Fとの間に浸入するのを抑制できる。そのため、施工作業の効率性からは、浴室床の表面Fの一部分にだけ両面テープ15を貼り付けてもよい。なお、浴室床の表面Fに対して床下地材11を強固に固定するためには、床下地材11の外周縁部及び開口縁部110と、床下地材11の外周縁部よりも内側の複数箇所とが浴室床の表面Fに固定されるように、浴室床の表面Fに両面テープ15を貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープ15と同様である。
【0095】
次に、
図18に示すように、浴室床の表面Fに床下地材11を敷設する。浴室床の表面Fに床下地材11を敷設する際には、床下地材11の開口縁部110を排水口周り用部材2の外側面4における第一壁面40に当接させる。このとき、床下地材11の開口縁部110を接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを用いて排水口周り用部材2の第一壁面40に固定することが好ましい。床下地材11の敷設が終わると、押圧ローラー等によって、床下地材11の上面を全域にわたって押圧する。これにより、浴室床の表面Fに対する床下地材11の固定を強固にできる。
【0096】
次に、
図19に示すように、床下地材11の上に表面床シート10を敷設するため、床下地材11の上面に接着剤や両面テープ等の固定手段を設ける。施工作業の効率性からは、床下地材11の上面に両面テープ15を貼り付けることが好ましい。床下地材11の上面において、両面テープ15を貼り付ける箇所は、特に限定されない。床下地材11の上面の全域に両面テープ15を貼り付けてもよいが、少なくとも表面床シート10の外周縁部と開口縁部100が床下地材11に固定されれば、水が床下地材11と表面床シート10との間に浸入するのを抑制できる。そのため、施工作業の効率性からは、床下地材11の上面の一部分にだけ両面テープ15を貼り付けてもよい。なお、床下地材11に対して表面床シート10を強く固定するためには、表面床シート10の外周縁部及び開口縁部100と、表面床シート10の外周縁部よりも内側の複数箇所とが床下地材11に固定されるように、床下地材11の上面に両面テープ15を貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープ15と同様である。
【0097】
次に、
図20に示すように、床下地材11の上に表面床シート10を敷設する。床下地材11の上に表面床シート10を敷設する際には、表面床シート10の開口縁部100を排水口周り用部材2の外側面4におけるシート支持面42に載置させる。このとき、表面床シート10の開口縁部100を接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを用いてシート支持面42に固定することが好ましい。なお、表面床シート10の開口縁部100と、排水口周り用部材2の外側面4における第二壁面41との間には隙間が存在する。表面床シート10の敷設が終わると、押圧ローラー等によって、表面床シート10の上面を全域にわたって押圧する。これにより、床下地材11に対する表面床シート10の固定を強固にできる。
【0098】
最後に、シーリング剤によるシール処理を行う。具体的には、
図1及び
図2に示すように、表面床シート10の開口縁部100と排水口周り用部材2の外側面4における第二壁面41との間の隙間に、コーキングガン等を用いて第一シーリング剤12を充填する。また、排水口周り用部材2の内側面6と排水口Dとの間のスペースを、コーキングガン等を用いて第二シーリング剤13により埋めて、内側面6を第二シーリング剤13で被覆する。また、表面床シート10及び床下地材11の外周縁部と、浴室の壁面Wや浴槽等との境界部に隙間がある場合に、その隙間にコーキングガン等を用いてシーリング剤を充填する。これにより、水が表面床シート10及び床下地材11と浴室床の表面Fとの間に浸入するのを抑制する。
【0099】
以上説明した施工方法により、第一実施形態の浴室床構造1が完成する。上述した施工方法に用いた接着剤や両面テープは、排水口周り用部材2や床下地材11を浴室床の表面Fに接着したり、表面床シート10を床下地材11に接着したり、表面床シート10や床下地材11を排水口周り用部材2に接着できれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。接着剤や両面テープは、接着強度、耐水性、下地不陸追従性、耐可塑剤性、クリープ性、剥離容易性等に優れるものを用いることが好ましい。例えば「バスナテープ(東リ株式会社製)」を両面テープとして好適に用いることができる。
【0100】
第一実施形態の作用・効果
以上説明した第一実施形態によれば、浴室床の表面Fに敷設される表面床シート10及び床下地材11と浴室床に形成された排水口Dとの間に設置される排水口周り用部材2は、表面床シート10及び床下地材11に隣接する側の外側面4に、床下地材11に面する下側の第一壁面40と、表面床シート10に面する上側の第二壁面41と、表面床シート10の一部分が載置されるシート支持面42と、を備えている。
【0101】
第一実施形態では、排水口周り用部材2の外側面4は、下端縁から上端縁にわたって真っ直ぐ延びる平面ではなく、床下地材11に面する下側かつ外側の第一壁面40と、表面床シート10に面する上側かつ内側の第二壁面41との間にシート支持面42を有する階段状の面である。そして、シート支持面42に表面床シート10の開口縁部100が載置されるとともに、第二壁面41と表面床シート10の開口縁部100との間の隙間に第一シーリング剤12が充填される。これにより、シート支持面42に表面床シート10の開口縁部100を接着剤や両面テープ等の固定手段で固定することで、利用者が排水口周り用部材2付近の表面床シート10を踏んで床下地材11が大きく凹んでも、表面床シート10と排水口周り用部材2との固定を維持でき、表面床シート10と排水口周り用部材2との間に行った止水処理(第一シーリング剤12)を維持できる。よって、表面床シート10と排水口周り用部材2との間に水が浸入するのを抑制できる。
【0102】
加えて、第一実施形態では、排水口周り用部材2が、床下地材11に面する部分と、表面床シート10に面する部分とを有するため、浴室床の表面Fに表面床シート10とともに床下地材11を敷設し、排水口周り用部材2を見切り材として排水口Dの周りに設置しても、最表面の表面床シート10と排水口周り用部材2との間に大きな段差が生じるのを抑制できる。よって、前記段差において利用者が躓く等の危険性が低く、安全性を高めることができるとともに、前記段差の存在により浴室の美観を損ねるのを抑制できる。
【0103】
また第一実施形態によれば、排水口周り用部材2において、上面5が排水口D側に向かって下る傾斜面51を含んでいる。排水口周り用部材2の上面5が傾斜面51を含むことで、水を表面床シート10から排水口周り用部材2を介して排水口Dへスムーズに導くことができる。
【0104】
また第一実施形態によれば、排水口周り用部材2において、上面5が外側面4の第二壁面41の上端縁から排水口D側に向けて水平に延びる平坦面50を含んでいる。排水口周り用部材2の上面5が平坦面50を含むことで、排水口周り用部材2の上面5の強度が上がる。そのため、利用者が排水口周り用部材2の上面5を踏むことで排水口周り用部材2に負荷がかかっても、排水口周り用部材2の形状を維持しやすくなる。
【0105】
また第一実施形態によれば、排水口周り用部材2において、内側面6は上面5の内端縁53から垂下する。排水口周り用部材2において、排水口Dに近い側の内側面6が浴室床の表面Fに対して垂直に立ち上がる面であることで、内側面6と排水口Dとの間のスペースに対して第二シーリング剤13を埋める際に内側面6が壁となるため、第二シーリング剤13を施工しやすくできる。
【0106】
第一実施形態の変形例
第一実施形態は、例えば以下の変形が可能である。なお、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0107】
排水口周り用部材2において、上面5は、外側(表面床シート10及び床下地材11側)の平坦面50と内側(排水口D)の傾斜面51とを必ずしも含んでいる必要はない。上面5は、
図21(A)に示すように、平坦面50のみを含んでいて平坦面50が内側面6の上端縁に連接されていてもよい。あるいは、上面5は、
図21(B)に示すように、傾斜面51のみを含んでいて傾斜面51が外側面4の第二壁面41の上端縁に連接されていてもよい。なお、傾斜面51は、真っ直ぐに傾斜する平面であってもよいし、曲面(凹曲面、凸曲面)であっても構わない。
【0108】
排水口周り用部材2において、上面5は、
図21(C)に示すように、平坦面50のみを含んでいて平坦面50が内側面6の上端縁に連接され、かつ、内側面6は、上面5の内端縁53から垂下する上側の第三壁面60と、底面3の内端縁31からから垂直に立ち上がりかつ第三壁面60よりも内側(排水口D)側に位置する第四壁面61と、第三壁面60及び第四壁面61を繋ぐ水平面62と、を含んでいてもよい。
【0109】
排水口周り用部材2は、内側面6を必ずしも備えている必要はない。
図21(D)に示すように、上面5における傾斜面51が底面3の内端縁31に連接されて、傾斜面51が平坦面50と底面3との間を延びていてもよい。あるいは、
図21(E)に示すように、上面5が傾斜面51のみを含んでいて、傾斜面51が外側面4の第二壁面41の上端縁及び底面3の内端縁31に連接されて、傾斜面51が第二壁面41と底面3との間を延びていてもよい。
【0110】
排水口周り用部材2は、
図22及び
図23に示すように、外側面4における第一壁面40の下端縁(言い換えれば外側面4の下端縁)から外側に向けて水平に突き出てかつ床下地材11の一部分を載置できる板状部9を備えていてもよい。板状部9は、排水口周り用部材2の一方の端面7から他方の端面7まで連続して延びる一つの長尺の薄板で構成することができ、本実施形態では、板状部9の平面形状はコの字状である。板状部9は、必ずしも一つの長尺の薄板で構成する必要はなく、長さの短い薄板又は小片で構成し、排水口周り用部材2の一方の端面7から他方の端面7にわたって、複数の板状部9を互いに間隔をあけて並んでいてもよい。
【0111】
板状部9の突出長さは、特に限定されないが、0.5mm以上50mm以下であることが好ましい。板状部9の厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0112】
排水口周り用部材2が一つ又は複数の板状部9を備えることで、例えば板状部9の下面に接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを貼り付け、板状部9も浴室床の表面Fに固定することで、浴室床の表面Fに対して排水口周り用部材2を強固に固定できる。また、板状部9には、排水口周り用部材2の第一壁面40に面する床下地材11の開口縁部110が載置される。そのため、板状部9の上面に接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを貼り付け、床下地材11の開口縁部110を板状部9に接着することで、床下地材11を排水口周り用部材2に固定できる。
【0113】
第二実施形態の浴室床構造
図24及び
図25は、第二実施形態の浴室床構造1を示す。なお、第二実施形態の浴室床構造1において、第一実施形態の浴室床構造1と同様の構成については同じ符号を付している。
【0114】
第二実施形態の浴室床構造1は、
図26に示すような壁際ではなく内部に排水口Dが形成された浴室床の表面Fに対して、表面床シート10及び床下地材11を敷設した床構造である。床下地材11が浴室床の表面Fに、表面床シート10が床下地材11の上に、それぞれ接着剤や両面テープ等の接着手段を用いて敷設される。表面床シート10は、浴室床の改装後の表面を構成する。
【0115】
図27(A)は、平面視における表面床シート10の開口縁部100と開口O1を示し、
図27(B)は、平面視における床下地材11の開口縁部110と開口O2を示す。
図27(C)は床下地材11上に表面床シート10を敷設した状態の各開口縁部100,110と各開口O1,O2を示す。表面床シート10及び床下地材11は、排水口Dを覆って閉塞することがないように、
図27(A)及び(B)に示すように、排水口Dよりも一回りサイズが大きい開口O1,O2が形成されている。第二実施形態では、表面床シート10及び床下地材11の外周縁よりも内側の部分に開口O1,O2が形成されている。この開口O1,O2は、排水口周り用部材2の平面視形状に合わせた形状を呈し、本実施形態では、排水口Dと同じで平面視矩形状である。なお、
図27(C)に示すように、床下地材11に形成された開口O2の方が表面床シート10に形成された開口O1よりも一回りサイズが大きい。開口O1と開口O2の縦及び横方向(
図27の上下及び左右方向)のサイズの差は、特に限定されないが、5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0116】
図24及び
図25に示すように、表面床シート10及び床下地材11は、浴室床の表面Fにおいて排水口Dを除いた部分に敷設される。表面床シート10及び床下地材11において排水口Dの周囲に位置する開口縁部100,110は、排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔のあいたスペースに、排水口周り用部材2が設置されている。排水口周り用部材2は、排水口Dの周りに設置される。排水口周り用部材2は、浴室床の表面Fに接着剤や両面テープ等の固定手段を用いて設置される。
【0117】
排水口周り用部材2は、外側面4が表面床シート10及び床下地材11に隣接するようにして設置される。つまり、排水口周り用部材2の外側面4は、表面床シート10及び床下地材11において排水口Dの周囲に位置する開口縁部100,110と面している。なお、排水口周り用部材2においては、排水口D側を内側とし、その反対の表面床シート10及び床下地材11側を外側とする。
【0118】
床下地材11は、開口縁部110が排水口周り用部材2の外側面4に対向するように、浴室床の表面Fに敷設されている。ここで、「対向する」とは、床下地材11の開口縁部110が排水口周り用部材2の外側面4に対して両者の間に隙間を有することなく突き当たる場合と両者の間に隙間を有して向かい合う場合とを含む。表面床シート10は、開口縁部100が排水口周り用部材2の外側面4との間に隙間を有するように、床下地材11の上に敷設されている。表面床シート10の開口縁部100と排水口周り用部材2の外側面4との間の隙間には、第一シーリング剤12が充填されている。
【0119】
排水口周り用部材2は、外側面4と反対側の内側面6が排水口Dの近傍に位置しており、内側面6は排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔のあいたスペースは、第二シーリング剤13で埋められている。
【0120】
次に、第二実施形態の浴室床構造1に用いられる各種の部材について説明する。
【0121】
排水口周り用部材
図25及び
図28から
図31に示すように、排水口周り用部材2は、浴室床の表面Fの壁際ではなく内部に形成された排水口Dの周りに設置される。本実施形態では、排水口Dが平面視矩形状であるため、排水口周り用部材2の全体形状は、排水口Dの四方を囲むように平面視矩形の枠状である。なお、排水口周り用部材2の全体形状は、排水口Dの周りに設置できれば平面視矩形の枠状に限定されず、他の種々の形の枠状であってもよい。
【0122】
排水口周り用部材2は、平坦な底面3を備える。底面3の平面形状は本実施形態ではロの字状であり、底面3は、ロの字状に延びる並行な外端縁30及び内端縁31を備える。排水口周り用部材2は、底面3が浴室床の表面Fに接着剤や両面テープ等の固定手段によって固定されることで、浴室床の表面Fに固定される。
【0123】
排水口周り用部材2は、外側面4を備える。外側面4は、表面床シート10及び床下地材11に隣接する。外側面4は、下側の第一壁面40と、上側の第二壁面41と、第一壁面40及び第二壁面41を繋ぐシート支持面42と、を含む。
【0124】
第一壁面40は、底面3の外端縁30から垂直に立ち上がる平らな面である。第一壁面3は、床下地材11の開口縁部110に面している。第一壁面40の高さは、床下地材11の厚みと同等又は概ね同等である。第一壁面40は、本実施形態では床下地材11の開口縁部110と隙間をあけずに当接している。第一壁面40は、床下地材11の開口縁部110と直接に接していてもよいし、接着剤や両面テープ、シーリング剤等の接着手段を介して接していてもよい。
【0125】
シート支持面42は、第一壁面40の上端縁から内側(排水口D側)に向かって水平に延びる平らな面である。シート支持面42の平面形状は本実施形態ではロの字状であり、シート支持面42は、ロの字状に延びる並行な外端縁420及び内端縁421を備える。シート支持面42の外端縁420から第一壁面40が垂下している。シート支持面42は、床下地材11の上に敷設された表面床シート10の開口縁部100を載置する。シート支持面42の幅(外端縁420と内端縁421との間の長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であり、4mm以上15mm以下であることが好ましく、6mm以上10mm以下であることがより好ましい。表面床シート10は、開口縁部100がシート支持面42に接着剤や両面テープ等の固定手段によって固定されることで、排水口周り用部材2に固定される。
【0126】
第二壁面41は、シート支持面42の内端縁421から垂直に立ち上がる平らな面である。第二壁面41は、表面床シート10の開口縁部100に面している。第二壁面41の高さは、特に限定されないが、表面床シート10の厚みと同等又は概ね同等であることが好ましい。例えば、第二壁面41の高さは、1mm以上10mm以下であり、1.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0127】
第二壁面41は、表面床シート10の開口縁部100と隙間をあけて近接している。第二壁面41と表面床シート10の開口縁部100との間の隙間は、第一シーリング剤12が充填される空間である。第一シーリング剤12により、表面床シート10と排水口周り用部材2との間の目地から水が浸入するのを抑制できる。
【0128】
第一シーリング剤12の幅(
図25において左右方向の長さ)は、特に限定されないが、2mm以上10mm以下であり、3mm以上5mm以下であることが好ましい。第一シーリング剤12の幅が2mm以上であれば、十分な水密性を確保できる。また、第一シーリング剤12の幅が10mm以下であれば、施工性を良好にでき、第一シーリング剤12の露出を目立たなくすることができる。
【0129】
第一シーリング剤12の高さは、特に限定されないが、第二壁面41の高さ及び表面床シート10の厚みと同等又は概ね同等であることが好ましい。これにより、表面床シート10の上面101、第一シーリング剤12の上面120及び排水口周り用部材2の上面5を段差のない面一に連ねることができ、排水口周り用部材2と表面床シート10との間の止水性を向上できる。また浴室の美観を損ねるのを抑制できる。
【0130】
なお、第二壁面41の高さは、表面床シート10の厚みと比べて同じであってもよいし、大きくても小さくてもよいが、第二壁面41の高さは表面床シート10の厚みよりも小さいことが好ましい。つまりは、排水口周り用部材2は、その上面5が表面床シート10の上面101よりも低く位置するように形成される。この場合には、第一シーリング剤12は、特に限定されないが、上面120が表面床シート10から排水口周り用部材2側(内側)に向かって下る傾斜面となるように、形成されることが好ましい。
【0131】
排水口周り用部材2は、上面5を備える。上面5は、第二壁面41の上端縁から内側(排水口D側)に向かって水平に延びる平らな面である。上面5の平面形状は、本実施形態ではロの字状であり、上面5は、ロの字状に延びる並行な外端縁52及び内端縁53を備える。
【0132】
上面5の幅(
図25において左右方向の長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であることが好ましい。排水口周り用部材2の上面5が平坦であることで、排水口周り用部材2の上面5の強度が上がる。そのため、利用者が排水口周り用部材2の上面5を踏むことで排水口周り用部材2に負荷がかかっても、排水口周り用部材2の形状を維持しやすくなる。
【0133】
排水口周り用部材2は、内側面6を備える。内側面6は、外側面4の反対側である排水口D側(内側)に位置する。排水口周り用部材2は、内側面6が排水口Dの近傍に位置するように設置される。内側面6は、上側の第三壁面60と、下側の第四壁面61と、第三壁面60及び第四壁面61を繋ぐ目皿支持面63と、を含む。
【0134】
第三壁面60は、上面5の内端縁53、すなわち、上面5の外側面4と反対側の端縁から垂下する平らな面である。第三壁面60は、排水口周り用部材2において排水口Dの上方にセットされる目皿16の外周縁部に面している。第三壁面60の高さは、目皿16の厚みと同等又は概ね同等である。
【0135】
目皿支持面63は、第三壁面60の下端縁から内側(排水口D側)に向かって水平に延びる平らな面である。目皿支持面63の平面形状は本実施形態ではロの字状であり、目皿支持面63は、ロの字状に延びる並行な外端縁630及び内端縁631を備える。目皿支持面63の外端縁630から第三壁面60が垂直に立ち上がる。目皿支持面63は、目皿16の外周縁部を載置する。目皿支持面63の幅(外端縁630と内端縁631との間の長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であることが好ましい。目皿16は、外周縁部が目皿支持面63に支持されることで、排水口Dの上方に設置される。
【0136】
第四壁面61は、目皿支持面63の内端縁631から垂下し、底面3の内端縁31から垂直に立ち上がる平らな面である。第四壁面61の高さは、特に限定されないが、3mm以上10mm以下であることが好ましい。第四壁面61は、排水口Dとの間に間隔を有する。この間隔があいたスペースは、第二シーリング剤13で埋められる。第二シーリング剤13により、排水口周り用部材2と浴室床の表面Fとの間の目地から水が浸入するのを抑制できる。また、第二シーリング剤13によって排水口周り用部材2の第四壁面61が被覆されるので、排水口周り用部材2が内側(排水口D側)から剥がれるのを抑制できる。
【0137】
第二シーリング剤13の幅(
図25において左右方向の最大長さ)は、特に限定されないが、3mm以上20mm以下であり、3mm以上10mm以下であることが好ましい。第二シーリング剤13の幅が3mm以上であれば、十分な水密性を確保できる。また、第二シーリング剤13の幅が20mm以下であれば、施工性を良好にでき、第二シーリング剤13の露出を目立たなくすることができる。
【0138】
第二シーリング剤13は、特に限定されないが、排水口周り用部材2の内側面6と接する側が最も高く、排水口D側が最も低くなるように、その上面130が内側(排水口D側)に向かって下るように傾斜していることが好ましい。これにより、水を排水口周り用部材2から第二シーリング剤13を介して排水口Dへスムーズに導くことができる。
【0139】
上述した形状の排水口周り用部材2は、特に限定されないが、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性等の浴室の床に用いるために必要な耐久性を満足する材料、例えば金属や樹脂で形成されるのが好ましい。排水口周り用部材2は、例えば射出成型等により全体が一体に形成されている。
【0140】
排水口周り用部材2の素材は、特に限定されないが、好ましくは硬質樹脂が用いられる。硬質樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。その中でも、加工性に優れ、硬度の調整が容易であり、製造コストも抑制できるため、ポリ塩化ビニル樹脂を排水口周り用部材2の素材として好ましく挙げることができる。
【0141】
第二実施形態の浴室床構造1では、排水溝Dが浴室床の表面Dの壁際ではなく内部に位置しており、利用者が排水口Dの上に設置された排水口周り用部材2を踏むケースが頻繁にある。排水口周り用部材2が硬質であることにより、排水口周り用部材2は高い強度を有するため、排水口周り用部材2の耐久性を向上できる。
【0142】
表面床シート、床下地材、シーリング剤
表面床シート10、床下地材11、第一シーリング剤12及び第二シーリング剤13は、第一実施形態と同様であるため、第二実施形態においてはこれらの説明は省略する。
【0143】
第二実施形態の浴室床の施工方法
次に、第二実施形態の浴室床の施工方法について説明する。まず、浴室床の表面Fに、大きな凹凸がある不陸や、亀裂等がある場合には、必要に応じて下地補修材を用いて平滑化処理を行う。浴室床の表面Fが陶磁器製タイル材や繊維強化プラスチック(FRP)のパネル材の場合、下地補修材として、例えば「バスナパテEPO(東リ株式会社製)」を好適に用いることができる。
【0144】
次に、
図32に示すように、浴室床の表面Fの排水口Dの周りに排水口周り用部材2を設置する。排水口周り用部材2は、接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを用いて浴室床の表面Fに固定する。
【0145】
両面テープは、浴室床の表面Fに排水口Dの四方に沿って貼り付けてもよいが、排水口周り用部材2の底面3に貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープと同様である。排水口周り用部材2は、排水口Dから5mm以上の間隔をあけて設置されるのが好ましい。
【0146】
次に、
図33に示すように、浴室床の表面Fに床下地材11を敷設するため、浴室床の表面Fに接着剤や両面テープ等の固定手段を設ける。施工作業の効率性からは、浴室床の表面Fに両面テープ15を貼り付けることが好ましい。浴室床の表面Fにおいて、両面テープ15を貼り付ける箇所は、特に限定されない。浴室床の表面Fの全域に両面テープ15を貼り付けてもよいが、少なくとも床下地材11の外周縁部と開口縁部110が浴室床の表面Fに固定されれば、水が床下地材11と浴室床の表面Fとの間に浸入するのを抑制できる。そのため、施工作業の効率性からは、浴室床の表面Fの一部分にだけ両面テープ15を貼り付けてもよい。なお、浴室床の表面Fに対して床下地材11を強固に固定するためには、床下地材11の外周縁部及び開口縁部110と、床下地材11の外周縁部よりも内側の複数箇所とが浴室床の表面Fに固定されるように、浴室床の表面Fに両面テープ15を貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープ15と同様である。
【0147】
次に、
図34に示すように、浴室床の表面Fに床下地材11を敷設する。浴室床の表面Fに床下地材11を敷設する際には、床下地材11の開口縁部110を排水口周り用部材2の外側面4における第一壁面40に当接させる。このとき、床下地材11の開口縁部110を接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを用いて排水口周り用部材2の第一壁面40に固定することが好ましい。床下地材11の敷設が終わると、押圧ローラー等によって、床下地材11の上面を全域にわたって押圧する。これにより、浴室床の表面Fに対する床下地材11の固定を強固にできる。
【0148】
次に、
図35に示すように、床下地材11の上に表面床シート10を敷設するため、床下地材11の上面に接着剤や両面テープ等の固定手段を設ける。施工作業の効率性からは、床下地材11の上面に両面テープ15を貼り付けることが好ましい。床下地材11の上面において、両面テープ15を貼り付ける箇所は、特に限定されない。床下地材11の上面の全域に両面テープ15を貼り付けてもよいが、少なくとも表面床シート10の外周縁部と開口縁部100が床下地材11に固定されれば、水が床下地材11と表面床シート10との間に浸入するのを抑制できる。そのため、施工作業の効率性からは、床下地材11の上面の一部分にだけ両面テープ15を貼り付けてもよい。なお、床下地材11に対して表面床シート10を強く固定するためには、表面床シート10の外周縁部及び開口縁部100と、表面床シート10の外周縁部よりも内側の複数箇所とが床下地材11に接着されるように、床下地材11の上面に両面テープ15を貼り付けることが好ましい。なお、接着剤を使用する場合であっても両面テープ15と同様である。
【0149】
次に、
図36に示すように、床下地材11の上に表面床シート10を敷設する。床下地材11の上に表面床シート10を敷設する際には、表面床シート10の開口縁部100を排水口周り用部材2の外側面4におけるシート支持面42に載置させる。このとき、表面床シート10の開口縁部100を接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを用いてシート支持面42に固定することが好ましい。なお、表面床シート10の開口縁部100と、排水口周り用部材2の外側面4における第二壁面41との間には隙間が存在する。表面床シート10の敷設が終わると、押圧ローラー等によって、表面床シート10の上面を全域にわたって押圧する。これにより、床下地材11に対する表面床シート10の固定を強固にできる。
【0150】
次に、シーリング剤によるシール処理を行う。具体的には、
図25及び
図37に示すように、表面床シート10の開口縁部100と排水口周り用部材2の外側面4における第二壁面41との間の隙間に、コーキングガン等を用いて第一シーリング剤12を充填する。また、排水口周り用部材2の内側面6における第四壁面61と排水口Dとの間のスペースを、コーキングガン等を用いて第二シーリング剤13により埋めて、第四壁面61を第二シーリング剤13で被覆する。また、表面床シート10及び床下地材11の外周縁部と、浴室の壁面Wや浴槽等との境界部に隙間がある場合に、その隙間にコーキングガン等を用いてシーリング剤を充填する。これにより、水が表面床シート10及び床下地材11と浴室床の表面Fとの間に浸入するのを抑制する。
【0151】
最後に、
図24に示すように、排水口周り用部材2の内側面6における目皿支持面63の上に目皿16を設置する。
【0152】
以上説明した施工方法により、第二実施形態の浴室床構造1が完成する。上述した施工方法に用いた接着剤や両面テープは、排水口周り用部材2や床下地材11を浴室床の表面Fに接着したり、表面床シート10を床下地材11に接着したり、表面床シート10や床下地材11を排水口周り用部材2に接着できれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。接着剤や両面テープは、接着強度、耐水性、下地不陸追従性、耐可塑剤性、クリープ性、剥離容易性等に優れるものを用いることが好ましい。例えば「バスナテープ(東リ株式会社製)」を両面テープとして好適に用いることができる。
【0153】
第二実施形態の作用・効果
以上説明した第二実施形態によれば、浴室床の表面Fに敷設される表面床シート10及び床下地材11と浴室床に形成された排水口Dとの間に設置される排水口周り用部材2は、表面床シート10及び床下地材11に隣接する側の外側面4に、床下地材11に面する下側の第一壁面40と、表面床シート10に面する上側の第二壁面41と、表面床シート10の一部分が載置されるシート支持面42と、を備えている。
【0154】
第二実施形態では、排水口周り用部材2の外側面4は、下端縁から上端縁にわたって真っ直ぐ延びる平面ではなく、床下地材11に面する下側かつ外側の第一壁面40と、表面床シート10に面する上側かつ内側の第二壁面41との間にシート支持面42を有する階段状の面である。そして、シート支持面42に表面床シート10の開口縁部100が載置されるとともに、第二壁面41と表面床シート10の開口縁部100との間の隙間に第一シーリング剤12が充填される。これにより、シート支持面42に表面床シート10の開口縁部100を接着剤や両面テープ等の固定手段で固定することで、利用者が排水口周り用部材2付近の表面床シート10を踏んで床下地材11が大きく凹んでも、表面床シート10と排水口周り用部材2との固定を維持でき、表面床シート10と排水口周り用部材2との間に行った止水処理(第一シーリング剤12)を維持できる。よって、表面床シート10と排水口周り用部材2との間に水が浸入するのを抑制できる。
【0155】
加えて、第一実施形態では、排水口周り用部材2が、床下地材11に面する部分と、表面床シート10に面する部分とを有するため、浴室床の表面Fに表面床シート10とともに床下地材11を敷設し、排水口周り用部材2を見切り材として排水口Dの周りに設置しても、最表面の表面床シート10と排水口周り用部材2との間に大きな段差が生じるのを抑制できる。よって、前記段差において利用者が躓く等の危険性が低く、安全性を高めることができるとともに、前記段差の存在により浴室の美観を損ねるのを抑制できる。
【0156】
また第二実施形態によれば、排水口周り用部材2において、上面5が平坦である。排水口周り用部材2の上面5が平坦であることで、排水口周り用部材2の上面5の強度が上がる。そのため、利用者が排水口周り用部材2の上面5を踏むことで排水口周り用部材2に負荷がかかっても、排水口周り用部材2の形状を維持しやすくなる。
【0157】
また第二実施形態によれば、排水口周り用部材2において、内側面6の第四壁面61は底面3の内端縁31から垂直に立ち上がる。排水口周り用部材2において、排水口Dに近い側の内側面6における第四壁面61が浴室床の表面Fに対して垂直に立ち上がる面であることで、第四壁面61と排水口Dとの間のスペースに対して第二シーリング剤13を埋める際に第四壁面61が壁となるため、第二シーリング剤13を施工しやすくできる。
【0158】
第二実施形態の変形例
第二実施形態は、例えば以下の変形が可能である。
【0159】
排水口周り用部材2は、
図38及び
図39に示すように、外側面4における第一壁面40の下端縁(言い換えれば外側面4の下端縁)から外側に向けて水平に突き出てかつ床下地材11の一部分を載置できる板状部9を備えていてもよい。板状部9は、排水口周り用部材2の周方向に全周にわたって延びる一つの長尺の薄板で構成することができ、本実施形態では、板状部9の平面形状はロの字状である。板状部9は、必ずしも一つの薄板で構成する必要はなく、長さの短い薄板又は小片で構成し、排水口周り用部材2の周方向に沿って、複数の板状部9を互いに間隔をあけて並んでいてもよい。
【0160】
板状部9の突出長さは、特に限定されないが、0.5mm以上50mm以下であることが好ましい。板状部9の厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0161】
排水口周り用部材2が一つ又は複数の板状部9を備えることで、例えば板状部9の下面に接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを貼り付け、板状部9も浴室床の表面Fに固定することで、浴室床の表面Fに対して排水口周り用部材2を強固に固定できる。また、板状部9には、排水口周り用部材2の第一壁面40に面する床下地材11の開口縁部110が載置される。そのため、板状部9の上面に接着剤や両面テープ等、好ましくは両面テープを貼り付け、床下地材11の開口縁部110を板状部9に接着することで、床下地材11を排水口周り用部材2に固定できる。
【0162】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形ができる。
【符号の説明】
【0163】
1 浴室床構造
2 排水口周り用部材
4 排水口周り用部材の外側面
5 排水口周り用部材の上面
6 排水口周り用部材の内側面
9 板状部
10 表面床シート
11 床下地材
12 第一シーリング剤
13 第二シーリング剤
40 外側面の第一壁面
41 外側面の第二壁面
42 外側面のシート支持面
50 上面の平坦面
51 上面の傾斜面
60 内側面の第三壁面
61 内側面の第四壁面
63 内側面の目皿支持面
F 浴室床の表面
D 排水口