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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122119
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びレーダー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20240902BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 19/06 20060101ALI20240902BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240902BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q13/02
H01Q13/08
H01Q21/06
H01Q23/00
H01Q1/52
H01Q19/06
G01S7/03 246
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029481
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5J045
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB01
5J020BC04
5J020BC06
5J020BC13
5J020DA02
5J020DA03
5J020DA04
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021AB07
5J021BA03
5J021CA03
5J021FA13
5J021GA04
5J021GA05
5J021GA08
5J021HA04
5J021JA08
5J045AA05
5J045AA26
5J045DA01
5J045DA10
5J045FA02
5J045HA03
5J045MA04
5J045NA07
5J046AA04
5J046AB02
5J046AB03
5J046AB09
5J046AB13
5J046UA03
5J046UA04
5J070AB24
5J070AD05
5J070AD10
5J070AE20
5J070AF03
5J070AF05
5J070AK22
5J070BF11
(57)【要約】
【課題】電波の指向性の向上を図ることが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、誘電体基板と、誘電体基板の第1主表面上に形成され、第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナと、誘電体基板の第1主表面上に固定され、第1主表面の法線方向に見たときに複数のパッチアンテナを囲むホーン穴が形成され、少なくともホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の第1主表面上に形成され、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含むアンテナ列と、
前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記アンテナ列を囲むホーン穴が形成され、少なくとも前記ホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、
を備える、アンテナ装置。
【請求項2】
前記ホーン穴の前記第1方向の幅は、前記第2方向の幅よりも大きい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、前記アンテナ列から離れるに従って広がる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、一定である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成されたグラウンドパターンをさらに備え、
前記ホーン部材の前記導体は、前記グラウンドパターンと接触する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記誘電体基板の前記第1主表面上に実装された回路素子をさらに備え、
前記ホーン部材の前記第1主表面と対向する面に、前記回路素子を収容する凹部が形成される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成され、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む別のアンテナ列をさらに備え、
前記ホーン部材には、前記法線方向に見たときに前記別のアンテナ列を囲む別のホーン穴がさらに形成される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記ホーン部材の前記ホーン穴と前記別のホーン穴の間に、電波の伝搬を抑制する伝搬抑制機構が形成される、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記ホーン穴を塞ぐ、誘電体で形成されたカバーをさらに備える、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記カバーは、前記ホーン穴に対応する位置にレンズ部を有する、
請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成された、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ複数のアンテナ列であって、各々のアンテナ列が、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む、複数のアンテナ列と、
前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記複数のアンテナ列をそれぞれ囲む複数のホーン穴が形成され、少なくとも前記複数のホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、
を備える、アンテナ装置。
【請求項12】
請求項1に記載のアンテナ装置を備えるレーダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及びレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のホーンアンテナと、ホーンアンテナと給電ポートとをそれぞれ接続するための複数の導波管用溝を有する基体と、基体の裏面に密着するように配され、給電ポートとなる貫通孔を有する背面板とを備えるホーンアレイアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-88861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、パッチアレイアンテナの開発が進んでいる。パッチアレイアンテナが設けられる基板は非常に薄いため、反りが生じた場合に、ビーム幅が広がる、サイドローブレベルが上がるといった問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電波の指向性の向上を図ることが可能なアンテナ装置及びレーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様のアンテナ装置は、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1主表面上に形成され、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含むアンテナ列と、前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記アンテナ列を囲むホーン穴が形成され、少なくとも前記ホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、を備える。これによれば、電波の指向性の向上を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記ホーン穴の前記第1方向の幅は、前記第2方向の幅よりも大きくてもよい。これによれば、パッチアンテナが配列する第1方向だけでなく、第2方向における指向性の向上も図ることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、前記アンテナ列から離れるに従って広がってもよい。これによれば、パッチアンテナが配列する第1方向だけでなく、第2方向における指向性の向上も図ることが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、一定であってもよい。これによれば、パッチアンテナが配列する第1方向だけでなく、第2方向における指向性の向上も図ることが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成されたグラウンドパターンをさらに備え、前記ホーン部材の前記導体は、前記グラウンドパターンと接触してもよい。これによれば、ホーン部材の導体を接地することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記誘電体基板の前記第1主表面上に実装された回路素子をさらに備え、前記ホーン部材の前記第1主表面と対向する面に、前記回路素子を収容する凹部が形成されてもよい。これによれば、回路素子の保護を図ることが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成され、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む別のアンテナ列をさらに備え、前記ホーン部材には、前記法線方向に見たときに前記別のアンテナ列を囲む別のホーン穴がさらに形成されてもよい。これによれば、電波の指向性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記ホーン部材の前記ホーン穴と前記別のホーン穴の間に、電波の伝搬を抑制する伝搬抑制機構が形成されてもよい。これによれば、ホーン穴間の電波の伝搬を抑制することが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記ホーン穴を塞ぐ、誘電体で形成されたカバーをさらに備えてもよい。これによれば、ホーン穴への異物の混入を抑制することが可能となる。
【0015】
上記態様において、前記カバーは、前記ホーン穴に対応する位置にレンズ部を有してもよい。これによれば、電波の指向性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様のアンテナ装置は、前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成された、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ複数のアンテナ列であって、各々のアンテナ列が、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む、複数のアンテナ列と、前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記複数のアンテナ列をそれぞれ囲む複数のホーン穴が形成され、少なくとも前記複数のホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、を備える。これによれば、電波の指向性の向上を図ることが可能となる。
【0017】
また、本発明の他の態様のレーダーは、上記のアンテナ装置を備える。これによれば、電波の指向性の向上を図ることが可能なアンテナ装置を備えるレーダーを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レーダーの例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図3】アンテナによる電波の指向性を説明するための図である。
図4】第2実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図5】アンテナによる電波の指向性を説明するための図である。
図6】第3実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図7】第4実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図8】第5実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図9】第6実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
図10】第7実施形態に係るアンテナ装置の例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0020】
[レーダー]
図1は、レーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、アンテナ装置10を備えている。「アンテナ装置10」は、以下に説明するアンテナ10A~10Gの総称である。レーダー100は、さらに、送受信部11、信号処理部12、及び制御部13を備えている。
【0021】
送受信部11は、変調部及びマグネトロンを含み、信号処理部12からのトリガー信号に応じて変調部で生成されたパルス電圧でマグネトロンを間欠駆動し、送信信号を生成する。アンテナ装置10は、送受信部11からの送信信号を電波パルスとして送信する。
【0022】
また、アンテナ装置10は、受信した反射波を受信信号に変換する。アンテナ装置10からの受信信号は、送受信部11に含まれる周波数変換・増幅回路及び検波回路などを経て、信号処理部12で信号処理され、デジタル信号として制御部13に送り込まれる。
【0023】
レーダー100は、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダーに適用される。これに限らず、レーダー100は、例えばマイクロ波を送受信する船舶用レーダーに適用されてもよい。
【0024】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るアンテナ装置10Aの例を示す分解斜視図である。以下の説明では、図中のX1-X2方向を「X方向」、Y1-Y2方向を「Y方向」、Z1-Z2方向を「Z方向」という。また、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向ともいう。X方向は第1方向の例であり、Y方向は第2方向の例である。
【0025】
アンテナ装置10Aは、誘電体材料で形成された誘電体基板2を備えている。誘電体基板2は、上方向を向いた上側主表面21(図中に現れている主表面)と、下方向を向いた下側主表面とを有している。上側主表面21は、第1主表面の例である。Z方向は、上側主表面21の法線方向である。X方向及びY方向は、上側主表面21に沿って互いに直交している。
【0026】
アンテナ装置10Aは、誘電体基板2の上側主表面21上に形成された複数のアンテナ列31,32及びそれらを囲む複数のグラウンドパターン4をさらに備えている。また、アンテナ装置10Aは、誘電体基板2の下側主表面を全体的に覆う不図示のグラウンドパターンをさらに備えている。
【0027】
アンテナ列31,32は、X方向に延び、Y方向に並んでいる。X方向はアンテナ列31,32の長手方向であり、Y方向はアンテナ列31,32の幅方向である。例えば、アンテナ列31は受信用であり、アンテナ列32は送信用である。
【0028】
各々のアンテナ列31,32は、直列給電型パッチアレイアンテナであり、X方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナ35を含んでいる。隣り合うパッチアンテナ35は、伝送線路37によって接続されている。
【0029】
パッチアンテナ35は、矩形状に形成されており、使用周波数の基本波の1/2波長に対応する幅を有している。すなわち、パッチアンテナ35の幅(Y方向の長さ)は、基本波の1/2波長とほぼ等しい。
【0030】
アンテナ列31,32及びグラウンドパターン4は、例えば、誘電体基板2の上側主表面21上に設けられた金属箔をフォトリソグラフィ技術でパターンニングすることによって形成される。このため、パッチアンテナ35と伝送線路37は、一体的に形成されている。
【0031】
アンテナ装置10Aは、誘電体基板2の上側主表面21上に固定されるホーン部材5をさらに備えている。ホーン部材5は、例えばねじ等の締結部品によって誘電体基板2に固定される。ホーン部材5は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料で形成された扁平直方体状の金属ブロックである。
【0032】
ホーン部材5には、Z方向に貫通する複数のホーン穴51,52(フレア穴ともいう)が形成されている。ホーン穴51,52の下端は誘電体基板2によって塞がれ、ホーン穴51,52の上端は上方向に向かって開口している。各々のホーン穴51,52は、Y方向に対向する一対の壁面53と、X方向に対向する一対の壁面54とを有している。
【0033】
ホーン穴51,52は、Z方向に見たときにアンテナ列31,32をそれぞれ囲んでいる。具体的には、ホーン穴51,52の下端の縁が、アンテナ列31,32と接触せずに、アンテナ列31,32をそれぞれ囲んでいる。ホーン穴51はアンテナ列31に対応し、ホーン穴52はアンテナ列32に対応する。
【0034】
ホーン穴51,52は、アンテナ列31,32と同様に、X方向に延び、Y方向に並んでいる。すなわち、ホーン穴51,52のX方向の幅は、Y方向の幅よりも大きい。言い換えると、X方向に対向する一対の壁面54の間隔は、Y方向に対向する一対の壁面53の間隔よりも大きい。
【0035】
本実施形態では、ホーン穴51,52のY方向の幅は、アンテナ列31,32から離れるに従って、すなわち上方向に向かうに従って、徐々に広がっている。言い換えると、Y方向に対向する一対の壁面53は斜め上方向を向いている。壁面53は、平面であってもよいし、上方向に凸の曲面であってもよい。
【0036】
ホーン部材5の下面は、アンテナ31,32を囲むグラウンドパターン4と接触している。具体的には、ホーン部材5のうち、アンテナ31,32を囲むホーン穴51,52の下端の縁が、グラウンドパターン4と接触している。これにより、ホーン部材5は接地される。
【0037】
なお、ホーン部材5は、必ずしも全体が金属材料で形成される必要はなく、少なくともホーン穴51,52の壁面53,54が導体で形成されていれば足りる。また、ホーン穴51,52には、誘電体材料が充填されてもよい。
【0038】
本実施形態によれば、誘電体基板2にホーン部材5を補強材として固定することで、反り等の機械的変形を抑制して平坦度を維持することができ、これにより、ビーム幅が広がる、サイドローブレベルが上がるといった問題を生じさせず、電波の指向性を向上させることが可能となる。
【0039】
また、誘電体基板2にホーン部材5を補強材として固定することで、送信用のアンテナ列31と受信用のアンテナ列32の平行度を揃えることも可能となる。さらに、金属材料で形成されたホーン部材5を配置することによって、放熱性を向上させることも可能となる。
【0040】
また、アンテナ列31,32は、パッチアンテナ35が配列するX方向にビームを絞ることが可能であるが、アンテナ列31,32にホーン穴51,52を設けることで、X方向だけでなく、アンテナ列31,32の幅方向であるY方向にもビームを絞ることが可能となる。
【0041】
特に、本実施形態では、ホーン穴51,52のY方向の幅がアンテナ列31,32から離れるに従って徐々に広がった構成であるため、よりY方向にビームを絞って、利得を向上させることが可能となる。
【0042】
図3は、第1実施形態に係るアンテナ装置10Aによる電波の指向性のシミュレーション結果を示す図である。横軸は、Y方向に沿った角度範囲を表し、0°が鉛直方向(上方向)に相当する。縦軸は利得を表す。
【0043】
図中の実線は、ホーン部材5が有る場合の利得を示し、破線は、ホーン部材5が無い場合の利得を示す。シミュレーションでは、ホーン穴の深さを10mm、Y方向の最大幅を14mmとして計算した。
【0044】
同図に示すように、ホーン部材5が有る場合には、ホーン部材5が無い場合と比べて、鉛直方向(0°)に出射される電波のビーム幅がY方向に狭まり、さらに利得が5dBほど向上することが分かる。
【0045】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るアンテナ装置10Bの例を示す分解斜視図である。本実施形態では、ホーン穴51,52のY方向の幅は、一定である。すなわち、言い換えると、Y方向に対向する一対の壁面53は、垂直若しくはほぼ垂直である。加工のために、壁面53に、上方向又は下方向に向かって広がる僅かなテーパーが形成されてもよい。
【0046】
本実施形態によれば、ホーン穴51,52のY方向の幅を一定として、ホーン部材5の上面におけるホーン穴51,52の面積を最小化することで、上記第1実施形態ほどの利得の向上を期待できないにしても、Y方向にビームを絞ることを可能にし、さらに部品配置の自由度及び加工の容易性などを向上させることが可能となる。
【0047】
図5は、第2実施形態に係るアンテナ装置10Bによる電波の指向性のシミュレーション結果を示す図である。横軸は、Y方向に沿った角度範囲を表し、0°が鉛直方向(上方向)に相当する。縦軸は利得を表す。
【0048】
図中の実線は、ホーン部材5が有る場合の利得を示し、破線は、ホーン部材5が無い場合の利得を示す。シミュレーションでは、ホーン穴の深さを9mm、Y方向の幅を6mmとして計算した。
【0049】
同図に示すように、ホーン部材5が有る場合には、ホーン部材5が無い場合と比べて、鉛直方向(0°)に出射される電波のビーム幅がY方向に狭まり、さらに利得が2dBほど向上することが分かる。
【0050】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係るアンテナ装置10Cの例を示す分解斜視図である。本実施形態において、アンテナ装置10Cは、誘電体基板2の上側主表面21上に、複数の受信用のアンテナ列31及び複数の送信用のアンテナ列32を備えており、いわゆるMIMO(Multi-Input Multi-Output)レーダーアンテナを構成している。
【0051】
ホーン部材5には、複数の受信用のアンテナ列31及び複数の送信用のアンテナ列32に対応する複数のホーン穴51及び複数のホーン穴52が形成されている。複数のホーン穴51及び複数のホーン穴52は、Z方向に見たときに複数の受信用のアンテナ列31及び複数の送信用のアンテナ列32をそれぞれ囲んでいる。
【0052】
すなわち、アンテナ装置10Cは、複数の受信用のアンテナ列31及び複数の送信用のアンテナ列32に複数のホーン穴51及び複数のホーン穴52をそれぞれ設けたMIMOレーダーアンテナを実現している。これにより、遠距離性能向上と、マルチパスによる妨害波除去とが可能となる。
【0053】
本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、ホーン穴51,52のY方向の幅が一定であるため、アンテナ列31,32に合わせて、ホーン穴51,52を密集させることが可能となる。これに限らず、上記第1実施形態と同様の、上方向に向かうに従ってY方向に広がるホーン穴51,52が適用されてもよい(以降の実施形態についても同様)。
【0054】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係るアンテナ装置10Dの例を示す分解斜視図である。本実施形態では、誘電体基板2の上側主表面21上に回路素子7が実装されている。回路素子7は、例えばRF(Radio Frequency)回路を備えるIC(Integrated Circuit)である。
【0055】
誘電体基板2の上側主表面21と対向するホーン部材5の下面には、回路素子7を収容するための凹部57が形成されている。誘電体基板2にホーン部材5を固定すると、ホーン部材5の下面に形成された凹部57に回路素子7が収容される。
【0056】
一般に、60GHz、70GHzといった高周波数帯では、導波線路の損失が大きくなるといった課題があるため、RF回路とアンテナの間の線路長をできる限り短くすることが望ましい。一方、RF回路をアンテナと同一平面上に配置すると、安全性の観点からカバーによる保護が必要となる。
【0057】
そこで、本実施形態のように、誘電体基板2の上側主表面21上に回路素子7が実装するとともに、ホーン部材5に回路素子7のカバーを兼ねさせることで、回路素子7とアンテナ列31,32の間の線路長を短縮するとともに回路素子7を保護し、部品点数を削減することも可能となる。
【0058】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態に係るアンテナ装置10Eの例を示す分解斜視図である。本実施形態では、ホーン部材5のホーン穴51,52の間に、電波の伝搬を抑制する伝搬抑制機構8が設けられている。これにより、送信用のアンテナ列32から受信用のアンテナ列31へ不要な電波が伝搬することを抑制して、受信感度を向上させることが可能となる。
【0059】
伝搬抑制機構8は、例えば、ホーン部材5の上面のホーン穴51,52の間でマトリクス状に配列した複数の1/4波長線路58により構成される。1/4波長線路58は、基本波の1/4波長の長さを有する線路である。1/4波長線路58は、ホーン部材5の上面を切削することにより形成される。
【0060】
これに限らず、伝搬抑制機構8は、例えば、ホーン部材5のホーン穴51,52の間に配置される電波吸収体であってもよい。
【0061】
[第6実施形態]
図9は、第6実施形態に係るアンテナ装置10Fの例を示す分解斜視図である。本実施形態では、アンテナ装置10Fは、ホーン穴51,52を塞ぐ、誘電体で形成されたカバー6をさらに備えている。これにより、ホーン穴51,52への異物の混入を防ぐことが可能となる。
【0062】
カバー6は、板状に形成され、ホーン部材5上に配置されてホーン穴51,52の上端を塞ぐ。また、カバー6は、ホーン部材5とともにねじ等の締結部品により誘電体基板2に固定される。カバー6は、板状に限らず、例えばホーン穴51,52に挿入可能な形状であってもよい。
【0063】
[第7実施形態]
図10は、第7実施形態に係るアンテナ装置10Gの例を示す分解斜視図である。本実施形態では、カバー6のホーン穴51,52に対応する位置にレンズ部61,62が設けられている。すなわち、レンズ部61,62は、誘電体レンズを構成している。これにより、電波の指向性のさらに向上させることが可能となる。
【0064】
具体的には、レンズ部61,62は、カバー6の上面が盛り上がるように形成されており、X方向を軸方向として上方向に凸のシリンドリカルレンズを構成している。これにより、よりY方向にビームを絞ることが可能となる。なお、カバー6の下面から突出してホーン穴51,52に挿入されるレンズ部が形成されてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0066】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0067】
(1)
誘電体基板と、
前記誘電体基板の第1主表面上に形成され、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含むアンテナ列と、
前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記アンテナ列を囲むホーン穴が形成され、少なくとも前記ホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、
を備える、アンテナ装置。
【0068】
(2)
前記ホーン穴の前記第1方向の幅は、前記第2方向の幅よりも大きい、
(1)に記載のアンテナ装置。
【0069】
(3)
前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、前記アンテナ列から離れるに従って広がる、
(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
【0070】
(4)
前記ホーン穴の前記第2方向の幅は、一定である、
(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
【0071】
(5)
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成されたグラウンドパターンをさらに備え、
前記ホーン部材の前記導体は、前記グラウンドパターンと接触する、
(1)ないし(3)の何れかに記載のアンテナ装置。
【0072】
(6)
前記誘電体基板の前記第1主表面上に実装された回路素子をさらに備え、
前記ホーン部材の前記第1主表面と対向する面に、前記回路素子を収容する凹部が形成される、
(1)ないし(5)の何れかに記載のアンテナ装置。
【0073】
(7)
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成され、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む別のアンテナ列をさらに備え、
前記ホーン部材には、前記法線方向に見たときに前記別のアンテナ列を囲む別のホーン穴がさらに形成される、
(1)ないし(6)の何れかに記載のアンテナ装置。
【0074】
(8)
前記ホーン部材の前記ホーン穴と前記別のホーン穴の間に、電波の伝搬を抑制する伝搬抑制機構が形成される、
(7)に記載のアンテナ装置。
【0075】
(9)
前記ホーン穴を塞ぐ、誘電体で形成されたカバーをさらに備える、
(1)ないし(8)の何れかに記載のアンテナ装置。
【0076】
(10)
前記カバーは、前記ホーン穴に対応する位置にレンズ部を有する、
(9)に記載のアンテナ装置。
【0077】
(11)
前記誘電体基板の前記第1主表面上に形成された、前記第1主表面に沿った互いに直交する第1及び第2方向のうち、前記第1方向に延び、前記第2方向に並んだ複数のアンテナ列であって、各々のアンテナ列が、前記第1方向に配列され、直列に接続された複数のパッチアンテナを含む、複数のアンテナ列と、
前記誘電体基板の前記第1主表面上に固定され、前記第1主表面の法線方向に見たときに前記複数のアンテナ列をそれぞれ囲む複数のホーン穴が形成され、少なくとも前記複数のホーン穴の壁面が導体で形成されたホーン部材と、
を備える、アンテナ装置。
【0078】
(12)
(1)ないし(11)の何れかに記載のアンテナ装置を備えるレーダー。
【符号の説明】
【0079】
10 アンテナ装置、11 送受信部、12 信号処理部、13 制御部、2 誘電体基板、21 上側主表面、31 アンテナ列、32 アンテナ列、35 パッチアンテナ、37 伝送線路、4 グラウンドパターン、5 ホーン部材、51 ホーン穴、52 ホーン穴、53 壁面、54 壁面、57 凹部、58 1/4波長線路、6 カバー、61 レンズ部、62 レンズ部、7 回路素子、8 伝搬抑圧機構、100 レーダー

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10