(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122127
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】現像ローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G03G15/08 235
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029493
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 竜二
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AD06
2H077EA11
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境における耐久末期でのカブリ及び低温低湿環境におけるゴーストが良好に低減された現像ローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周面に設けられる弾性層3と、弾性層3より外側に設けられる被覆層4とを備える現像ローラであって、被覆層4が、シリコーン変性ウレタン樹脂及びシリコーンゴム粒子を含有し、被覆層4の、界面の展開面積比Sdrが、0.4以上1.5以下である現像ローラである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面に設けられる弾性層と、前記弾性層より外側に設けられる被覆層とを備える現像ローラであって、
前記被覆層が、シリコーン変性ウレタン樹脂及びシリコーンゴム粒子を含有し、
前記被覆層の、界面の展開面積比Sdrが、0.4以上1.5以下である現像ローラ。
【請求項2】
前記シリコーンゴム粒子の平均粒子径が、0.2μm以上10μm以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記シリコーンゴム粒子の含有量が、シリコーン変性ウレタン樹脂100質量部に対し、35質量部以上70質量部以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記弾性層が、シリコーンゴムを含有する請求項1記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記被覆層の、山頂点の算術平均曲率Spcが、5000/mm以上11000/mm以下である請求項1記載の現像ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、トナーに均一な摩擦電荷を付与し、かつ、所定量のトナーを現像領域に安定して搬送する機能を有する。近年、電子写真方式の複写機における消費電力の抑制や高速印刷等を目的とし、その印刷に用いられるトナーの低融点化が進められている。
【0003】
しかしながら、このような低融点トナーは、現像ローラ、他の規制部材の押圧による摩擦熱で融解しやすく、融解したトナーが現像ローラへ固着するという問題がある。さらに、高温高湿環境では、水分の影響により、トナー自体の帯電性が落ちる傾向があるため、耐久末期において、画像の白地部(背景部)に不良帯電トナーが付着する、いわゆるカブリと言われる現象が発生する。また、低温低湿環境では、現像ローラ上で一周前の画像履歴が、次の周に対応する画像に現れる、いわゆるゴーストと言われる現象が発生する。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1には、弾性層にレーザーで凹部を設けて、Sdr(界面の展開面積比、以下、単にSdrと記載する場合がある。)を5以下にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像形成装置の高速化等の要望に対応すべく、特許文献1に記載の発明よりも高いレベルでのカブリ及びゴーストの改善が望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温高湿環境における耐久末期でのカブリ及び低温低湿環境におけるゴーストが良好に低減された現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
Sdrは、その値が大きいと、トナーと現像ローラとの接触回数が増えるため、トナーを十分帯電させることができ、高温高湿環境でのカブリを改善することができる。一方で、Sdrが大きすぎると、低温低湿環境で、過剰帯電トナーが発生しやすくゴーストが悪化する。
本発明者は、鋭意検討の結果、弾性層にシリコーンゴム粒子を添加し、かつ、Sdrを特定の範囲とすることにより、高温高湿環境における耐久末期でのカブリと低温低湿環境でのゴーストの両方を改善できることを見出し、本発明に至った。
本発明は、軸体と、軸体の外周面に設けられる弾性層と、弾性層より外側に設けられる被覆層とを備える現像ローラであって、被覆層が、シリコーン変性ウレタン樹脂及びシリコーンゴム粒子を含有し、被覆層の、界面の展開面積比Sdrが、0.4以上1.5以下である現像ローラである。
【0008】
シリコーンゴム粒子の平均粒子径は、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0009】
シリコーンゴム粒子の含有量は、シリコーン変性ウレタン樹脂100質量部に対し、35質量部以上70質量部以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温高湿環境における耐久末期でのカブリ及び低温低湿環境におけるゴーストが良好に低減された現像ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の現像ローラの一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[現像ローラ]
図1に示すように、本発明の現像ローラ1は、軸体2と、軸体2の外周面に設けられる弾性層3と、弾性層3より外側に設けられる被覆層4とを備える。
以下、各構成の詳細を説明する。
【0013】
<軸体>
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0014】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0015】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0016】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0017】
<弾性層>
弾性層3は、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧可能な硬度や弾性を現像ローラ1に付与するために設けられる。弾性層3は、シリコーンゴムを含む。シリコーンゴムは、押圧による圧縮応力歪みが小さいという利点がある。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらのシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0018】
弾性層3の中には、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合することで、その導電性を適宜調整することができる。電子導電性物質としては、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及びその金属酸化物が挙げられる。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことからカーボンブラック(導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボン)が好ましい。また、イオン導電性物質としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム、リチウムビスイミド、カリウムビスイミド等の無機イオン導電性物質、変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテート等の有機イオン導電性物質が挙げられる。弾性層3には、反応性のエーテル変性シリコーンオイルを添加してもよい。
【0019】
<被覆層>
被覆層4は、シリコーン変性ウレタン樹脂及びシリコーンゴム粒子を含有する。
被覆層4は、(A)シリコーン変性ポリオール、(B)イソシアネート化合物、及び(C)シリコーンゴム粒子を含有する被覆層用組成物を加熱及び硬化させることにより形成することができる。
以下に、被覆層用組成物の詳細について説明する。
【0020】
(A)シリコーン変性ポリオール
シリコーン変性ポリオールとは、変性シリコーンオイル及びイソシアネート化合物からなる組成物を重合させてプレポリマー化したものである。
シリコーン変性ポリオールの合成に用いられる、変性シリコーンオイル及びイソシアネート化合物の詳細を以下に説明する。変性シリコーンオイルには、両末端変性シリコーンオイル及び片末端変性シリコーンオイルが挙げられる。
【0021】
-両末端変性シリコーンオイル-
両末端変性シリコーンオイルは、いわゆる、反応性シリコーンオイルの1種であり、イソシアネート化合物と重合する特性を有する。よって、両末端変性シリコーンオイルは、エーテル基、アミノ基(1級又は2級アミノ基)、メルカプト基、又はヒドロキシル基により、シリコーン鎖の両末端が変性されていることが好ましい。これらの両末端変性シリコーンオイルは、両末端エーテル変性シリコーンオイル、両末端アミノ変性シリコーンオイル、両末端メルカプト変性シリコーンオイル、両末端カルボキシル変性シリコーンオイル、両末端フェノール変性シリコーンオイル、両末端カルビノール変性シリコーンオイルとして市販されている。
【0022】
ここで、本発明で用いられる好ましい両末端変性シリコーンオイルとしては、以下の一般式(1)で示される両末端変性シリコーンオイルを挙げることができる。
【0023】
【0024】
一般式(1)において、Rは、-C3H6OC2H4OH、又は-C3H6OCH2-C(CH2OH)2C2H5を示し、nは、20以下の整数を表す。
【0025】
一般式(1)で示される両末端変性シリコーンオイルの中でも、特に、両末端のRが、-C3H6OC2H4OHであり、nが約10であるシリコーンオイルを用いることが好ましい。このようなシリコーンオイルについては、市販のものを適宜入手することができる。
【0026】
なお、一般式(1)においては、ケイ素原子に結合する官能基は、メチル基となっているが、このメチル基が水素原子で置換された両末端変性シリコーンオイルであってもよい。
【0027】
被覆層4を形成するための組成物に両末端変性シリコーンオイルを含有することにより、被覆層4に適度な弾性を付与することができるとともに、被覆層4の電気的特性を調整することができ、フィルミングの発生を有効に抑制することができる。
【0028】
-片末端ジオール変性シリコーンオイル-
片末端ジオール変性シリコーンオイルは、両末端変性シリコーンオイルと同様に、反応性シリコーンオイルであるが、シリコーン鎖の一方の末端に、2つのヒドロキシル基が結合しているものである。通常、両末端変性シリコーンオイルとイソシアネート化合物とを重合させた場合、直鎖状のポリウレタンが生成するが、片末端ジオール変性シリコーンオイルを併用することにより、ポリウレタンに分岐鎖が導入され、現像ローラ1のナノレベルの微細な粗さを向上させることができる。
【0029】
片末端ジオール変性シリコーンオイルとしては、以下の一般式(2)で示される片末端変性シリコーンオイルを挙げることができる。
【0030】
【0031】
一般式(2)において、R’は、-C3H6OCH2-C(CH2OH)2C2H5を示し、nは、20以下の整数を表す。
【0032】
一般式(2)で示される片末端ジオール変性シリコーンオイルの中でも、特に、nが約10であるシリコーンオイルを用いることが好ましい。なお、一般式(2)においては、ケイ素原子に結合する官能基は、メチル基となっているが、このメチル基が水素原子で置換されたシリコーンオイルであってもよい。
【0033】
本発明において、シリコーン変性ポリオールの調製のために使用する片末端ジオール変性シリコーンオイルは、両末端変性シリコーンオイル100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。両末端変性シリコーンオイルに対する片末端ジオール変性シリコーンオイルの使用量を上記の範囲内のものとすることにより、被覆層4の表面粗さを調整することにより、現像性能を良好に維持ししつつ、フィルミングを効果的に防止することができる。
【0034】
-イソシアネート化合物-
本発明において、シリコーン変性ポリオールのプレポリマー化のために使用するイソシアネート化合物としては、シリコーンオイルに導入された反応性基との反応性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、及びこれらのイソシアネートの変性体である、アダクト型、ビュレット型、イソシアヌレート型、アロファネート型等を挙げることができる。これらのイソシアネート化合物の中でも、2官能型イソシアネート化合物、イソシアヌレート型イソシアネート化合物とアダクト型イソシアネート化合物であることが好ましく、これらを単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタンを生成することができる。
【0035】
(B)イソシアネート化合物
シリコーン変性ポリオールを硬化するためのイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネート化合物、例えば、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物を用いることができる。
芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。
また、脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。
さらに、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
本発明において、被覆層4を形成するために使用する組成物におけるイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート化合物の反応率が80%以上126%以下、好ましくは95%以上112%以下となるように使用されることが好ましい。
【0037】
(C)シリコーンゴム粒子
シリコーンゴム粒子のシリコーンゴムは、ジメチルポリシロキサン、オルガノポリシロキサン、ポリオルガノシルセスオキサンを架橋した構造が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;β-フェニルエチル基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の1価ハロゲン化炭化水素基;エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等の反応性基含有有機基から選択される1種又は2種以上の炭素数1以上20以下の1価の有機基から選択される基を有するオルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製することが好ましい。また、上記オルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製される粒子を、オルガノアルコキシシランで表面処理した粒子であってもよい。
【0038】
このようなシリコーンゴム粒子としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KMP-597」、「KMP-600」や、ダウ・東レ株式会社製の「EP-5500」、「EP-2600」、「EP-2601」、「EP-2720」、「DY 33-430M」、「EP-9215Cosmetic Powder」、「9701Cosmetic Powder」等を使用することができる。
【0039】
本発明において使用するシリコーンゴム粒子は、100℃以上の温度でも変形又は溶融しない耐熱性を有することが好ましく、130℃から180℃での耐熱性を有することがより好ましい。これにより、被覆層4の架橋温度においても、これらのシリコーンゴム粒子が変形することを防止することができる。シリコーンゴム粒子の耐熱性は、メルトフローインデクサーにおいて、圧力と熱を与えてもシリコーンゴム粒子が溶けて流れ出すことがないことを確認することにより、評価することができる。
【0040】
シリコーンゴム粒子の硬度は、デュロメータA(瞬時)(JIS K 6253:1997)により測定して20度以上80度以下であることが好ましく、50度以上75度以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子の硬度が、上記の範囲内のものであることにより、シリコーンゴム粒子の破壊や変形による、被覆層4の摩擦係数の上昇を効果的に防止できる。また、被覆層4の硬度が上がりすぎることによる、被覆層4におけるクラックや割れの発生を防止することができ、トナーに過剰なストレスを与えることを防止できる。
【0041】
シリコーンゴム粒子の含有量は、シリコーン変性ウレタン樹脂100質量部に対して、35質量部以上70質量部以下であることが好ましく、40質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子の使用量を、上記使用量の範囲内のものとすることにより、正帯電トナーの帯電性を向上することができるので、カブリが改善される。
シリコーンゴム粒子は、被覆層4に、1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0042】
シリコーンゴム粒子の平均粒子径は、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子の平均粒子径を上記の範囲内のものとすることにより、弾性ローラ1の表面粗さが適切に維持され、現像剤搬送性が良好に保たれる一方で、解像度を高い水準に維持して、画質の悪化を防止することができる。
シリコーンゴム粒子の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定することができる。
【0043】
被覆層4の厚さは、5μm以上13μm以下があることが好ましく、6μm以上11μm以下であることがより好ましい。
【0044】
(界面の展開面積比Sdr)
被覆層4の界面の展開面積比Sdrは、0.4以上1.5以下であり、好ましくは、0.4以上1.4以下である。界面の展開面積比Sdrが0.4以上であることにより、高温高湿環境でのカブリを良好に防止することができる。また、界面の展開面積比Sdrが1.5以下であることにより、低温低湿環境でのゴーストを良好に防止することができる。
【0045】
(山頂点の算術平均曲率Spc)
被覆層4の山頂点の算術平均曲率Spcは、5000/mm以上11000/mm以下であることが好ましく、6000/mm以上10500/mm以下であることがより好ましい。被覆層4の山頂点の算術平均曲率Spcが、5000/mm以上であることにより、高温高湿環境でのカブリを良好に防止することができる。また、山頂点の算術平均曲率Spcが、11000/mm以下であることにより、低温低湿環境でのゴーストを良好に防止することができる。
【0046】
(被覆層の表面の抵抗値)
本発明の現像ローラ1の被覆層4の表面の抵抗値は、1×107Ω以上9×109Ω以下であることが好ましく、1×107Ω以上3×109Ω以下であることがより好ましい。抵抗値が9×109Ω以下であることにより画質が良好である。抵抗値の下限値は、導電剤無しで実現できる限界の抵抗値である。
現像ローラ1の表面の抵抗値は、被覆層4のシリコーン変性ポリオールとイソシアネート化合物の種類の組み合わせで調整することが可能である。必要であれば、反応性エーテル変性シリコーンオイルを添加することによって抵抗値をコントロールすることが可能である。
被覆層4の表面の抵抗値は、後述の実施例で説明する方法により測定する値とする。
【0047】
(被覆層の静電容量)
現像ローラ1の被覆層4の静電容量は、0.1Hzにおいて11nF以下であることが好ましく、得られる画像濃度の諧調性を良好に維持する観点から、下限は、0.5nF程度であることが好ましい。すなわち、静電容量は、0.5nF以上11nF以下であることがより好ましい。静電容量が、上記範囲であることにより、トナーの離型性が良く、フィルミングを良好に抑制することができる。
被覆層4には、カーボンやイオン導電材などの導電性付与剤は、キャパシタンス上昇に起因するため、結果としてトナー離型性が劣ることとなり、使用しない。
【0048】
(MD-1硬度)
被覆層4のMD-1硬度は、20°以上60°以下であることがより好ましく、30°以上50°以下であることがさらに好ましい。被覆層4のMD-1硬度を上記の範囲に調整することにより、現像剤への負荷を軽減しつつ、現像剤の搬送量を保つことができる。
MD-1硬度の測定にはMD-1硬度計(高分子計器(株)製、「マイクロゴム硬度計MD-1)を用いることができる。本発明においては、ローラ表面にMD-1硬度計の押針を押し当て、ピークホールドモード、ホールド時間を3秒で読み取った値を、MD-1硬度とする。なお、MD-1硬度計は、原理的にはJIS K6253に記載のタイプAデュロメータに準じたものである。
【0049】
(その他の成分)
被覆層用組成物は、希釈溶剤、(a)シリコーン変性ポリオールと(b)イソシアネート化合物との反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
また、本発明の効果を妨げない範囲で、公知のフィラー(充填材)、例えば、シリカ、球状樹脂粒子、金属酸化物等を含有してもよい。
【0050】
<その他の構成>
本発明の現像ローラ1は、軸体2と弾性層3との間、及び弾性層3と被覆層4との間に、接着層を備えてもよい。弾性層3と被覆層4の間に、UV光等を照射することで弾性層3の表面改質を行ってもよく、又はプライマー処理することで接着層を設けてもよい。また、プラズマコートによって表面改質と接着層を同時に設けてもよい。
【実施例0051】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
以下の手順により、実施例1の現像ローラを作製した。
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM23製、直径6.0mm、長さ262.3mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0053】
(弾性層の形成)
ミラブル型シリコーンゴム組成物を用いた押出成形により、軸体の外周面上にゴム材料からなる弾性体を成形した。なお、押出成形では、シリコーンゴム組成物を、正外線加熱炉(IR炉)を用いて270℃で5分間加熱し、更に、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にゴム組成物の硬化物からなる弾性層を形成した。弾性層3は中実な層であり、弾性層3の厚さは、3.5mmであった。
【0054】
(被覆層の形成)
以下の材料を用いて、表1に示す配合で被覆層用組成物を調製した。なお、ベース樹脂は、下記のシリコーン変性ポリオールとイソシアネートとで形成されるシリコーン変性ウレタン樹脂であった。
【0055】
-(A)シリコーン変性ポリオールの調製-
以下に示す材料を、(A1)71.5質量部、(A2)3.7質量部、(A3)24.8質量部で混合して、これを100℃から120℃で、4時間から6時間保持して、シリコーン変性ポリオールを調製した。
・(A1)両末端変性シリコーンオイル(商品名「KF-6000」、信越化学工業株式会社製)
・(A2)片末端ジオール変性シリコーンオイル(商品名「X-22-176DX」、信越化学工業株式会社製)
・(A3)イソシアネート(商品名「D201」、旭化成株式会社製)
上記組成物の調製には、適宜触媒及び希釈溶剤を加える。
【0056】
-被覆層用組成物-
・(A)シリコーン変性ポリオール 89.4質量部
・(B)イソシアネート(商品名「TPA-100」、旭化成株式会社製) 10.6質量部
・(C)シリコーンゴム粒子(商品名「KMP-600」、平均粒子径5μm、信越化学工業株式会社製) 41.8質量部
上記被覆層用組成物には、適宜触媒及び希釈溶剤を加える。
【0057】
次に、弾性層の外周面をUV処理した。その後、UV処理された弾性層上に被覆層用組成物をスプレー法によって塗布した。塗布された組成物を150℃から160℃で30分間加熱し現像ローラを得た。乾燥後の被覆層の厚さは9μmであった。
【0058】
[実施例2、実施例3、比較例1、及び比較例2]
表1に示すように、シリコーンゴム粒子の含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様に現像ローラを作製した。
【0059】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
(カブリの評価方法)
上記実施例及び比較例で作製した現像ローラを、画像形成装置「HL-1110(ブラザー工業株式会社製」に装着して、高温高湿環境(32℃、80%RH)で、0.3%dutyの印刷1500枚行い、白ベタ印刷を瞬断で止めて、感光ドラムにテープ貼り付け白い紙上に転写した。基準の紙にテープを貼り、基準値と転写した部分の色差ΔEを測定した。なお、表1の評価項目には、「HHカブリ」と記載する。
〇:ΔEが1.0未満
△:ΔEが1.0以上1.5未満
×:ΔEが1.5以上
【0061】
(ゴーストの評価方法)
低温低湿環境(10℃、20%RH)で、ベタ画像後に50%ハーフトーン画像を施した原稿を印刷し、その残像を濃度差により評価した。なお、表1の評価項目には、「LLゴースト」と記載する。
〇:濃度差が0.05未満
△:濃度差が0.05以上0.1未満
×:濃度差が0.1以上
【0062】
(面粗さISO 25178パラメータの測定)
作製した現像ローラにおける被覆層について、形状解析レーザー顕微鏡VK-X1000(株式会社キーエンス製)を使用して、下記の測定条件で、界面の展開面積比Sdr及び山頂点の算術平均曲率Spcを算出した。
<測定条件>
観察倍率:1200倍
観察面積:60000μm2
傾き補正:面傾き補正(自動)
S-フィルター:無し
F-オペレーション:無し
L-フィルター:無し
【0063】
【0064】
表1に示すように、本発明の現像ローラの弾性層のSdrが、0.4以上1.5以下であることにより、カブリとゴーストの両方が改善されることがわかる。