(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122130
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 27/24 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
D05B27/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029497
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能本 幸代
(72)【発明者】
【氏名】本澤 剛
(72)【発明者】
【氏名】中西 公紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 力
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA02
3B150CB03
3B150CE23
3B150DE06
3B150DE14
3B150DE22
3B150DE28
3B150DE33
3B150JA17
3B150JA28
3B150QA06
(57)【要約】
【課題】送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方を効率良く調整すること。
【解決手段】ミシンは、ミシンモータと、調整モータと、ミシン針を保持する針棒と、針棒の下方において縫製対象物を下方から支持する針板と、針板に支持される縫製対象物を送る送り歯と、ミシンモータが発生した動力に基づいて、針棒及び送り歯のそれぞれを作動させるミシン動力伝達機構と、調整モータが発生した動力に基づいて、針板に対する送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する送り歯調整機構と、を備える。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンモータと、
調整モータと、
ミシン針を保持する針棒と、
前記針棒の下方において縫製対象物を下方から支持する針板と、
前記針板に支持される前記縫製対象物を送る送り歯と、
前記ミシンモータが発生した動力に基づいて、前記針棒及び前記送り歯のそれぞれを作動させるミシン動力伝達機構と、
前記調整モータが発生した動力に基づいて、前記針板に対する前記送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する送り歯調整機構と、を備える、
ミシン。
【請求項2】
前記ミシン動力伝達機構は、前記ミシンモータが発生した動力に基づいて、前記送り歯を水平方向に往復移動させる水平送り機構と、前記送り歯を上下方向に往復移動させる上下送り機構と、を含み、
前記水平送り機構は、
前記ミシンモータが発生した動力により回転する第1水平送りシャフトと、
水平フレキシブルカップリングを介して前記第1水平送りシャフトに連結される第2水平送りシャフトと、
前記第2水平送りシャフトに支持され、前記第2水平送りシャフトの回転に基づいて前記送り歯を水平方向に往復移動させる水平送りアームと、を有し、
前記上下送り機構は、
前記ミシンモータが発生した動力により回転する第1上下送りシャフトと、
上下フレキシブルカップリングを介して前記第1上下送りシャフトに連結される第2上下送りシャフトと、
前記第2上下送りシャフトに支持され、前記第2上下送りシャフトの回転に基づいて前記送り歯を上下方向に往復移動させる上下送りアームと、を有し、
前記送り歯調整機構は、
前記第2水平送りシャフトを支持し、前記調整モータが発生した動力に基づいて、前記第2水平送りシャフトが前記第1水平送りシャフトに対して上下方向に偏心するように回動する水平偏心スリーブと、
前記第2上下送りシャフトを支持し、前記調整モータが発生した動力に基づいて、前記第2上下送りシャフトが前記第1上下送りシャフトに対して上下方向に偏心するように回動する上下偏心スリーブと、を有する、
請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記送り歯調整機構は、
前記調整モータの出力シャフトに固定される水平カムと、
前記調整モータの出力シャフトに固定される上下カムと、
前記水平偏心スリーブに固定される水平揺動カラーと、
前記上下偏心スリーブに固定される上下揺動カラーと、
前記水平カムと前記水平揺動カラーとを連結する水平リンク機構と、
前記上下カムと前記上下揺動カラーとを連結する上下リンク機構と、を有し、
前記出力シャフトの回動角度に基づいて、前記第2水平送りシャフトの上下方向の位置が決定され、
前記出力シャフトの回動角度に基づいて、前記第2上下送りシャフトの上下方向の位置が決定される、
請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記水平カムと前記上下カムとは、別体である、
請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記水平カムと前記上下カムとは、一体である、
請求項3に記載のミシン。
【請求項6】
前記針板の下方に配置される糸切りと、
前記調整モータが発生した動力に基づいて、前記糸切りを作動させる糸切り機構と、を備える、
請求項1に記載のミシン。
【請求項7】
前記送り歯調整機構及び前記糸切り機構のそれぞれは、前記調整モータの出力シャフトに接続され、
前記出力シャフトの第1回動範囲において、前記送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整され、
前記出力シャフトの第2回動範囲において、前記糸切りが作動する、
請求項6に記載のミシン。
【請求項8】
前記出力シャフトは、前記調整モータから一方側及び他方側のそれぞれに突出し、
前記送り歯調整機構は、前記一方側に突出する前記出力シャフトに接続され、
前記糸切り機構は、前記他方側に突出する前記出力シャフトに接続される、
請求項7に記載のミシン。
【請求項9】
前記針板の下方に配置される糸切りと、
前記調整モータが発生した動力に基づいて、前記糸切りを作動させる糸切り機構と、を備え、
前記送り歯調整機構及び前記糸切り機構のそれぞれは、前記調整モータの出力シャフトに接続され、
前記糸切り機構は、
前記出力シャフトに固定される糸切りレバーと、
前記糸切りレバーにより回動する糸切りアームと、
前記糸切りアームにより回動する糸切りシャフトと、を有し、
前記糸切りシャフトの回動により前記糸切りが作動し、
前記出力シャフトの第1回動範囲において、前記送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整され、
前記出力シャフトの第2回動範囲において、前記糸切りが作動する、
請求項3に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、送り歯を有するミシンが知られている。例えば縫製対象物の厚みや硬さに基づいて、送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、送り歯の高さ及び傾きの調整が手動で行われていた。すなわち、作業者が工具を用いて送り歯の高さ及び傾きを調整していた。そのため、送り歯の高さ及び傾きの調整に時間と手間がかかっていた。
【0005】
本明細書で開示する技術は、送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方を効率良く調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ミシンモータと、調整モータと、ミシン針を保持する針棒と、針棒の下方において縫製対象物を下方から支持する針板と、針板に支持される縫製対象物を送る送り歯と、ミシンモータが発生した動力に基づいて、針棒及び送り歯のそれぞれを作動させるミシン動力伝達機構と、調整モータが発生した動力に基づいて、針板に対する送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する送り歯調整機構と、を備える、ミシンを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、送り歯の高さ及び傾きの少なくとも一方が効率良く調整される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミシンを示す左上後方からの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るミシンフレームの内部を示す左上後方からの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るミシンフレームの内部を示す右上前方からの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るミシンフレームの内部を後方から見た図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るミシンフレームの内部を前方から見た図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るミシンフレームの内部を左方から見た図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るミシンフレームの内部を右方から見た図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るミシンフレームの内部を上方から見た図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るミシンフレームの内部を下方から見た図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るミシンを示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るミシンフレームの内部の一部を示す右上前方からの斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る偏心カムを示す右上前方からの斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る偏心カムを示す左上後方からの斜視図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るピッチ調整機構を示す右上前方からの斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る第1調整モータの動作を説明するための図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る送り歯調整機構を示す左上後方からの斜視図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る送り歯調整機構を左方から見た図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る送り歯調整機構を示す断面図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る送り歯の動作を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る送り歯の動作を模式的に示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る糸切り機構を示す右上前方からの斜視図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る糸切り機構を右方から見た図である。
【
図23】
図23は、実施形態に係る糸切り機構を示す左上後方からの斜視図である。
【
図24】
図24は、実施形態に係る第2調整モータの動作を説明するための図である。
【
図25】
図25は、他の実施形態に係る押さえ上げ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、X軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθZ方向とする。また、X軸及びY軸を含む平面を適宜、XY平面、と称する。X軸及びZ軸を含む平面を適宜、XZ平面、と称する。Y軸及びZ軸を含む平面を適宜、YZ平面、と称する。XY平面は、所定面と平行である。XY平面とXZ平面とYZ平面とは直交する。
【0010】
実施形態においては、XY平面と水平面とが平行であることとする。X軸方向は、前後方向である。Y軸方向は、左右方向である。Z軸方向は、上下方向である。+X方向は、前方向であり、-X方向は、後方向である。+Y方向は、左方向であり、-Y方向は、右方向である。+Z方向は、上方向であり、-Z方向は、下方向である。なお、XY平面が水平面に対して傾斜してもよい。水平方向は、前後方向及び左右方向を含む。
【0011】
[ミシンの概要]
図1は、実施形態に係るミシン1を示す左上後方からの斜視図である。実施形態において、ミシン1は、工業用ミシンである。ミシン1は、所謂本縫いミシンである。
図1に示すように、ミシン1は、ミシンテーブル2に設置される。ミシン1は、ミシンフレーム3を有する。
【0012】
ミシンフレーム3は、アーム3Aと、ベッド3Bと、ベース3Cと、ヘッド3Dと、を有する。アーム3Aは、左右方向に長い。ベッド3Bは、アーム3Aの下方に配置される。ベッド3Bは、左右方向に長い。ベッド3Bは、アーム3Aと対向する。ベース3Cは、アーム3Aの右端部とベッド3Bとを繋ぐ。ベース3Cは、上下方向に長い。ヘッド3Dは、アーム3Aの左端部に設けられる。ヘッド3Dは、アーム3Aの左端部から下方に突出する。
【0013】
図2は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を示す左上後方からの斜視図である。
図3は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を示す右上前方からの斜視図である。
図4は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を後方から見た図である。
図5は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を前方から見た図である。
図6は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を左方から見た図である。
図7は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を右方から見た図である。
図8は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を上方から見た図である。
図9は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部を下方から見た図である。
図10は、実施形態に係るミシン1を示すブロック図である。
【0014】
図1から
図10に示すように、ミシン1は、針棒6と、天秤5と、針板7と、押さえ8と、糸調子9と、送り歯13と、釜14と、糸切り15と、ミシンモータ10と、第1調整モータ11と、第2調整モータ12と、ミシン動力伝達機構16と、押さえ上げ機構17と、ピッチ調整機構18と、送り歯調整機構19と、糸切り機構20と、コントローラ21と、ペダル22と、操作パネル23と、プーリ100と、を備える。
【0015】
針棒6は、ミシン針4を保持する。針棒6は、ミシン針4とZ軸とが平行となるようにミシン針4を保持する。針棒6は、上下方向に往復移動する。針棒6は、ヘッド3Dに支持される。ミシン針4は、上糸が通過する糸通し孔を有する。ミシン針4は、糸通し孔の内面で上糸を保持する。針棒6が上下方向に往復移動することにより、ミシン針4は、上糸を保持した状態で上下方向に往復移動する。
【0016】
天秤5は、ミシン針4に上糸を供給する。天秤5は、上下方向に往復移動する。天秤5は、アーム3Aに支持される。天秤5は、上糸を保持した状態で上下方向に往復移動する。天秤5は、上糸が通過する保持孔を有する。天秤5は、保持孔の内面で上糸を保持する。天秤5は、上下方向に往復移動することによって、縫製対象物の縫製に使用される上糸を繰り出したり、上糸を引き上げたりする。
【0017】
針板7は、針棒6の下方に配置される。針板7は、縫製対象物を下方から支持する。針板7は、針棒6の下方において縫製対象物を支持する。針棒6に保持されているミシン針4と針板7とは対向する。針板7は、ミシン針4が通過可能な針穴を有する。針板7に支持される縫製対象物を貫通したミシン針4は、針穴を通過する。
【0018】
押さえ8は、針板7に支持される縫製対象物を上方から押さえる。押さえ8は、ミシン針4の周囲の少なくとも一部に配置される。押さえ8は、押さえ棒48の下端部に固定される。押さえ棒48は、ヘッド3Dに支持される。押さえ棒48は、上下方向に移動可能である。押さえ棒48の上端部の周囲に押さえばね49が配置される。押さえばね49は、押さえ棒48を介して押さえ8を下方に移動させる弾性力を発生する。押さえ8は、押さえばね49が発生する弾性力により縫製対象物に上方から押し付けられる。押さえばね49の上端部は、ばね押さえ部材50に支持される。
【0019】
糸調子9は、天秤5と針棒6との間において、ミシン針4に供給される上糸に張力を付与する。糸調子9は、ヘッド3Dに支持される。
【0020】
送り歯13は、針板7に支持される縫製対象物を前方に送るように作動する。送り歯13は、所定の送り軌道に従って移動することにより、縫製対象物を前方に送る。送り歯13は、針板7の下方に配置される。送り歯13は、送り軌道に従って移動することにより、針板7に設けられた開口から出没する。縫製対象物を送るとき、送り歯13の少なくとも一部は、針板7に設けられた開口を介して、針板7の上面から上方に突出する。送り歯13は、送り歯台71に支持される。
【0021】
釜14は、縫製対象物に下糸を供給する。釜14は、送り歯13よりも下方に配置される。釜14は、θX方向に回転可能である。
【0022】
糸切り15は、上糸及び下糸を切る。糸切り15は、針板7の下方に配置される。
【0023】
ミシンモータ10は、針棒6、送り歯13、及び釜14のそれぞれを作動させるための動力を発生する。ミシンモータ10は、針棒6を上下方向に往復移動させるための動力を発生する。ミシンモータ10は、釜14をθX方向に回転させるための動力を発生する。ミシンモータ10は、送り歯13を送り軌道に従って移動させるための動力を発生する。ミシンモータ10は、パルスモータを含む。ミシンモータ10は、アーム3Aの右部に支持される。
【0024】
第1調整モータ11は、押さえ8を上昇させるための動力を発生する。第1調整モータ11は、送り歯13の前後方向の振幅を変更するための動力を発生する。第1調整モータ11は、パルスモータを含む。第1調整モータ11は、ミシンモータ10の下方に配置される。第1調整モータ11は、ヘッド3Dに配置される。
【0025】
第2調整モータ12は、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を変更するための動力を発生する。第2調整モータ12は、糸切り15を作動させるための動力を発生する。第2調整モータ12は、パルスモータを含む。第2調整モータ12は、ミシンモータ10及び第1調整モータ11よりも下方に配置される。第2調整モータ12は、ベッド3Bに配置される。
【0026】
ミシン動力伝達機構16は、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、針棒6、送り歯13、及び釜14のそれぞれを作動させる。ミシン動力伝達機構16は、ミシンモータ10が発生した動力を、針棒6、送り歯13、及び釜14のそれぞれに伝達する。
【0027】
針棒6及び針棒6に保持されているミシン針4は、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、上下方向に往復移動する。釜14は、針棒6の上下方向の往復移動と同期して、縫製対象物に下糸が供給されるようにθX方向に回転する。送り歯13は、針棒6の上下方向の往復移動と同期して、縫製対象物を前方に送るように前後方向及び上下方向に揺動する。ミシン1は、針棒6に保持されているミシン針4と釜14との協働により縫製対象物を縫製する。
【0028】
押さえ上げ機構17は、第1調整モータ11が発生した動力に基づいて、押さえ8を上昇させる。押さえ上げ機構17は、第1調整モータ11が発生した動力を、押さえ8に伝達する。
【0029】
ピッチ調整機構18は、第1調整モータ11が発生した動力に基づいて、送り歯13の前後方向の振幅を調整する。ミシンモータ10が発生した動力に基づいて送り歯13が移動しているときに、送り歯13の前後方向の振幅が変更されることにより、送り歯13の送り軌道が変更される。
【0030】
送り歯調整機構19は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、針板7に対する送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する。
【0031】
糸切り機構20は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、糸切り15を作動させる。
【0032】
コントローラ21は、ミシンモータ10、第1調整モータ11、及び第2調整モータ12のそれぞれを制御する。コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリと、信号及びデータを入出力可能な入出力回路を含む入出力インターフェースとを有する。
【0033】
ペダル22は、ミシン1のオペレータに操作される。オペレータは、ペダル22を足で操作する。ペダル22が操作されることにより生成された操作信号は、コントローラ21に送信される。ペダル22の操作状態に基づいて、ミシンモータ10が駆動又は停止する。ペダル22の操作状態に基づいて、押さえ8が上昇する。ペダル22の前部が下方に移動するようにペダル22が操作されると、コントローラ21は、ミシンモータ10を駆動する。ミシンモータ10が駆動することにより、縫製対象物が縫製される。縫製対象物が縫製される場合、押さえ8は、縫製対象物を上方から押さえる。ペダル22の後部が下方に移動するようにペダル22が操作されると、コントローラ21は、ミシンモータ10を停止して、押さえ8が上昇するように第1調整モータ11を制御する。
【0034】
操作パネルは、フラットパネルディスプレイ及びタッチパネルを含む。操作パネル23は、ミシン1のオペレータに操作される。操作パネル23は、ミシンフレーム3の少なくとも一部に設けられる。オペレータは、操作パネル23を指で操作する。オペレータは、操作パネル23を操作して、送り歯13の送り軌道を選択することができる。オペレータは、操作パネル23を操作して、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整することができる。操作パネル23が操作されることにより生成された操作信号は、コントローラ21に送信される。上述のように、送り歯13の送り軌道は、送り歯13の前後方向の振幅を調整することにより調整される。コントローラ21は、操作パネル23により選択された送り軌道で送り歯13が移動するように、第1調整モータ11を制御する。コントローラ21は、送り歯13が操作パネル23により設定された高さ及び傾きになるように、第2調整モータ12を制御する。
【0035】
[ミシン動力伝達機構]
ミシン動力伝達機構16は、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、針棒6を上下方向に往復移動させる針棒駆動機構16Aと、釜14をθX方向に回転させる釜駆動機構16Bと、送り歯13を前後方向に往復移動させる水平送り機構16Cと、送り歯13を上下方向に往復移動させる上下送り機構16Dと、を含む。
【0036】
図11は、実施形態に係るミシンフレーム3の内部の一部を示す右上前方からの斜視図である。
図11は、
図3の一部を拡大した図に相当する。
図2から
図11に示すように、針棒駆動機構16Aは、ミシンシャフト24と、変換機構25とを有する。
【0037】
ミシンシャフト24は、ミシンモータ10に取り付けられる。ミシンシャフト24は、左右方向に長い。ミシンシャフト24は、ミシンモータ10が発生した動力により回転する。ミシンシャフト24は、ミシンシャフト24の中心軸を中心にθY方向に回転する。ミシンシャフト24は、スリーブ101に回転可能に支持される。
【0038】
変換機構25は、ミシンシャフト24の左端部に設けられる。針棒6の上端部は、変換機構25に接続される。ミシンシャフト24の回転は、変換機構25に伝達される。変換機構25は、ミシンシャフト24の回転力に基づいて、針棒6を上下方向に往復移動させる。
【0039】
プーリ100は、ミシンモータ10を介してミシンシャフト24に連結される。プーリ100は、ミシンシャフト24と連動する。プーリ100は、ミシンシャフト24と一緒に回転する。
【0040】
釜駆動機構16Bは、第1ベベルギヤ26と、第2ベベルギヤ27と、第1釜シャフト28と、第3ベベルギヤ29と、第4ベベルギヤ30と、第2釜シャフト31とを有する。第1釜シャフト28は、上下方向に長い。第2釜シャフト31は、左右方向に長い。第1ベベルギヤ26は、ミシンシャフト24の右部に固定される。第2ベベルギヤ27は、第1釜シャフト28の上端部に固定される。第3ベベルギヤ29は、第1釜シャフト28の下部に固定される。第4ベベルギヤ30は、第2釜シャフト31の右端部に固定される。釜14は、第2釜シャフト31の左端部に接続される。第1ベベルギヤ26と第2ベベルギヤ27とは、噛み合う。第3ベベルギヤ29と第4ベベルギヤ30とは、噛み合う。
【0041】
ミシンシャフト24と第1釜シャフト28とは、第1ベベルギヤ26及び第2ベベルギヤ27を介して連結されるので、ミシンシャフト24が回転すると、第1釜シャフト28は、第1釜シャフト28の中心軸を中心にθZ方向に回転する。第1釜シャフト28と第2釜シャフト31とは、第3ベベルギヤ29及び第4ベベルギヤ30を介して連結されるので、第1釜シャフト28が回転すると、第2釜シャフト31は、第2釜シャフト31の中心軸を中心にθY方向に回転する。第2釜シャフト31が回転することにより、第2釜シャフト31に接続される釜14が回転する。
【0042】
水平送り機構16Cは、偏心カム32と、水平コネクティングロッド33と、ピッチ調整機構18と、第1水平送りシャフト38と、水平フレキシブルカップリング39と、第2水平送りシャフト40と、水平送りアーム41とを有する。
【0043】
上下送り機構16Dは、偏心カム32と、上下コネクティングロッド42と、リンク機構43と、第1上下送りシャフト44と、上下フレキシブルカップリング45と、第2上下送りシャフト46と、上下送りアーム47とを有する。
【0044】
図12は、実施形態に係る偏心カム32を示す右上前方からの斜視図である。
図13は、実施形態に係る偏心カム32を示す左上後方からの斜視図である。偏心カム32は、ミシンシャフト24に固定される。偏心カム32は、水平支持部32Aと、上下支持部32Bと、連結部32Cと、孔32Dとを有する。
【0045】
水平支持部32Aは、水平コネクティングロッド33の上部を支持する。水平コネクティングロッド33の上部は、水平支持部32Aの周囲に配置される。上下支持部32Bは、上下コネクティングロッド42の上部を支持する。上下コネクティングロッド42の上部は、上下支持部32Bの周囲に配置される。上下支持部32Bは、水平支持部32Aよりも左方に配置される。連結部32Cは、水平支持部32Aと上下支持部32Bとを連結する。ミシンシャフト24は、孔32Dに挿入される。
【0046】
水平支持部32A、上下支持部32B、及び連結部32Cのそれぞれは、ミシンシャフト24の周囲に配置される。水平支持部32Aは、水平コネクティングロッド33の上部を支持する外周面を有する。上下支持部32Bは、上下コネクティングロッド42の上部を支持する外周面を有する。Y軸に直交する断面において、水平支持部32Aの外周面は、円形状である。Y軸に直交する断面において、上下支持部32Bの外周面は、円形状である。Y軸に直交する断面において、ミシンシャフト24の中心(孔32Dの中心)と、水平支持部32Aの外周面の中心とは、ずれている。Y軸に直交する断面において、ミシンシャフト24の中心(孔32Dの中心)と、上下支持部32Bの外周面の中心とは、一致する。
【0047】
ミシンシャフト24が回転すると、偏心カム32がミシンシャフト24と一緒に回転する。水平支持部32Aは、水平コネクティングロッド33の上部の内側で回転する。上下支持部32Bは、上下コネクティングロッド42の上部の内側で回転する。ミシンシャフト24が回転すると、水平コネクティングロッド33は、上下方向に揺動する。
【0048】
水平コネクティングロッド33は、偏心カム32とピッチ調整機構18とを連結する。水平コネクティングロッド33の上部は、偏心カム32に連結される。水平コネクティングロッド33の下部は、ピッチ調整機構18に連結される。ピッチ調整機構18は、水平コネクティングロッド33の下部と第1水平送りシャフト38の右部とを連結する。水平コネクティングロッド33の下部は、ピッチ調整機構18を介して、第1水平送りシャフト38の右部に連結される。
【0049】
第1水平送りシャフト38は、左右方向に長い。第1水平送りシャフト38は、第1水平送りシャフト38の中心軸を中心にθY方向に回転する。第1水平送りシャフト38は、ミシンモータ10が発生した動力により回転する。ミシンモータ10が発生した動力によりミシンシャフト24が回転すると、ミシンシャフト24の回転は、水平コネクティングロッド33及びピッチ調整機構18を介して第1水平送りシャフト38に伝達される。第1水平送りシャフト38は、ミシンシャフト24の回転力に基づいて回転する。
【0050】
水平フレキシブルカップリング39は、第1水平送りシャフト38の左端部と第2水平送りシャフト40の右端部とを連結する。第1水平送りシャフト38の回転は、水平フレキシブルカップリング39を介して、第2水平送りシャフト40に伝達される。
【0051】
第2水平送りシャフト40は、左右方向に長い。第2水平送りシャフト40は、第1水平送りシャフト38よりも左方に配置される。第2水平送りシャフト40は、水平フレキシブルカップリング39を介して、第1水平送りシャフト38に連結される。第2水平送りシャフト40は、第2水平送りシャフト40の中心軸を中心にθY方向に回転する。第2水平送りシャフト40は、第1水平送りシャフト38の回転力に基づいて回転する。
【0052】
水平送りアーム41は、第2水平送りシャフト40に支持される。水平送りアーム41は、第2水平送りシャフト40の左端部に配置される。水平送りアーム41は、第2水平送りシャフト40の回転に基づいて、送り歯13を前後方向に往復移動させる。
【0053】
上下コネクティングロッド42は、偏心カム32とリンク機構43とを連結する。上下コネクティングロッド42の上部は、偏心カム32に連結される。上下コネクティングロッド42は、リンク機構43に連結される。リンク機構43は、上下コネクティングロッド42の下部と第1上下送りシャフト44の右部とを連結する。上下コネクティングロッド42の下部は、リンク機構43を介して、第1上下送りシャフト44の右部に連結される。
【0054】
第1上下送りシャフト44は、左右方向に長い。第1上下送りシャフト44は、第1上下送りシャフト44の中心軸を中心にθY方向に回転する。第1上下送りシャフト44は、ミシンモータ10が発生した動力により回転する。ミシンモータ10が発生した動力によりミシンシャフト24が回転すると、ミシンシャフト24の回転は、上下コネクティングロッド42及びリンク機構43を介して第1上下送りシャフト44に伝達される。第1上下送りシャフト44は、ミシンシャフト24の回転力に基づいて回転する。
【0055】
上下フレキシブルカップリング45は、第1上下送りシャフト44の左端部と第2上下送りシャフト46の右端部とを連結する。第1上下送りシャフト44の回転は、上下フレキシブルカップリング45を介して、第2上下送りシャフト46に伝達される。
【0056】
第2上下送りシャフト46は、左右方向に長い。第2上下送りシャフト46は、第1上下送りシャフト44よりも左方に配置される。第2上下送りシャフト46は、上下フレキシブルカップリング45を介して、第1上下送りシャフト44に連結される。第2上下送りシャフト46は、第2上下送りシャフト46の中心軸を中心にθY方向に回転する。第2上下送りシャフト46は、第1上下送りシャフト44の回転力に基づいて回転する。
【0057】
上下送りアーム47は、第2上下送りシャフト46に支持される。上下送りアーム47は、第2上下送りシャフト46の左端部に配置される。上下送りアーム47は、第2上下送りシャフト46の回転に基づいて、送り歯13を上下方向に往復移動させる。
【0058】
[押さえ機構]
図5及び
図11に示すように、押さえ上げ機構17は、第1調整モータ11の出力シャフト51に接続される。押さえ上げ機構17は、押さえカム52と、押さえ棒48と、押さえリンク機構112とを有する。
【0059】
押さえカム52は、第1調整モータ11の出力シャフト51に固定される。押さえカム52の外周面は、押さえカム52のカム面である。第1調整モータ11が駆動することにより、出力シャフト51は、出力シャフト51の中心軸を中心にθY方向に回動する。出力シャフト51が回動することにより、押さえカム52が回動する。押さえカム52は、出力シャフト51を中心にθY方向に回動する。
【0060】
押さえ棒48は、押さえ8に固定される。押さえ8は、押さえ棒48の下端部に固定される。押さえ棒48は、上下方向に移動可能である。押さえ棒48の上端部の周囲に押さえばね49が配置される。押さえばね49は、押さえ棒48を介して押さえ8を下方に移動させる弾性力を発生する。押さえ8は、押さえばね49が発生する弾性力により縫製対象物に上方から押し付けられる。押さえばね49の上端部は、ばね押さえ部材50に支持される。押さえ上げ機構17は、押さえばね49の弾性力に抗って、押さえ8を上昇させる。
【0061】
押さえリンク機構112は、押さえカム52と押さえ棒48とを連結する。押さえカム52の回動は、押さえリンク機構112を介して、押さえ8に伝達される。押さえカム52の回動により、押さえ8が上昇する。
【0062】
押さえリンク機構112は、コロ53と、コロホルダ54と、駆動プレート55と、リンク体56と、伝達ロッド57と、レバー58と、フック部材59と、を有する。
【0063】
コロ53は、押さえカム52の上方に配置される。コロ53は、押さえカム52のカム面に接触する。出力シャフト51の中心軸に直交する面内において、押さえカム52のカム面は、非円形である。押さえカム52が回動することにより、コロ53は、カム面の形状に従って上下方向に移動する。
【0064】
コロホルダ54は、コロ53を回転可能に保持する。コロ53が上下方向に移動することにより、コロホルダ54は、コロ53と一緒に上下方向に移動する。
【0065】
駆動プレート55は、コロホルダ54に固定される。駆動プレート55は、ミシンフレーム3に移動可能に支持される。駆動プレート55は、上下方向に移動可能である。駆動プレート55は、上下方向に長い。駆動プレート55の下端部は、コロホルダ54に固定される。駆動プレート55の上端部は、コロ53よりも上方に配置される。コロホルダ54が上下方向に移動することにより、駆動プレート55は、コロホルダ54と一緒に上下方向に移動する。
【0066】
すなわち、実施形態において、押さえカム52の回動によりコロ53が上下方向に移動した場合、コロ53とコロホルダ54と駆動プレート55とが一緒に上下方向に移動する。コロ53は、押さえカム52の上方に配置されているので、押さえカム52の回動において、コロ53、コロホルダ54、及び駆動プレート55の重量(自重)により、押さえカム52のカム面に接触し続けることができる。
【0067】
リンク体56は、駆動プレート55及び伝達ロッド57のそれぞれに回動可能に連結される。リンク体56の右端部は、駆動プレート55の上部に回動可能に連結される。リンク体56の左端部は、伝達ロッド57の右端部に回動可能に連結される。リンク体56の中間部は、ピン61に回動可能に支持される。ピン61は、ミシンフレーム3に支持される。駆動プレート55が上昇すると、リンク体56は、伝達ロッド57の右端部が下降するように回動する。駆動プレート55が下降すると、リンク体56は、伝達ロッド57の右端部が上昇するように回動する。
【0068】
伝達ロッド57は、左右方向に長い。伝達ロッド57は、リンク体56及びレバー58のそれぞれに回動可能に連結される。伝達ロッド57の右端部は、リンク体56に回動可能に連結される。伝達ロッド57の左端部は、レバー58の上部に回動可能に連結される。
【0069】
レバー58は、伝達ロッド57及びフック部材59のそれぞれに回動可能に連結される。レバー58の上端部は、伝達ロッドの左端部に回動可能に連結される。レバー58の下端部は、フック部材59の上端部に回動可能に連結される。レバー58の中間部は、ピン62に回動可能に支持される。ピン62は、ミシンフレーム3に支持される。伝達ロッド57の右端部が下降すると、レバー58の上端部は、伝達ロッド57により右方に引っ張られる。伝達ロッド57の右端部が下降すると、レバー58は、フック部材59が上昇するように回動する。伝達ロッド57の右端部が上昇すると、レバー58は、フック部材59が下降するように回動する。
【0070】
フック部材59は、押さえ棒48に固定された固定部材60を引っ掛けた状態で、上下方向に移動可能である。固定部材60は、押さえ棒48の上部に固定される。固定部材60は、押さえ棒48の外面から突出する。フック部材59の下端部は、固定部材60を下方から引っ掛ける。フック部材59の上端部は、レバー58の上端部に回動可能に連結される。フック部材59が上昇するようにレバー58が回動すると、押さえ棒48及び押さえ8が上昇する。フック部材59が下降するようにレバー58が回動すると、押さえ棒48及び押さえ8が下降する。
【0071】
コントローラ21は、押さえ8を上昇させる場合、フック部材59が上昇するように、第1調整モータ11を制御する。
【0072】
[ピッチ調整機構]
図14は、実施形態に係るピッチ調整機構18を示す右上前方からの斜視図である。
図11及び
図14に示すように、ピッチ調整機構18は、第1調整モータ11の出力シャフト51に接続される。ピッチ調整機構18は、ピッチ調整アーム63と、ピッチ調整ロッド64と、ピッチ調整体34と、一対のリンク体35と、一対のリンク体36と、揺動アーム37とを有する。
【0073】
ピッチ調整アーム63は、第1調整モータ11の出力シャフト51に固定される。出力シャフト51は、左右方向に長い。第1調整モータ11が駆動することにより、出力シャフト51は、出力シャフト51の中心軸を中心にθY方向に回動する。出力シャフト51が回動することにより、ピッチ調整アーム63が回動する。
【0074】
ピッチ調整ロッド64は、ピッチ調整アーム63に連結される。ピッチ調整ロッド64の上端部は、ピッチ調整アーム63に回動可能に連結される。ピッチ調整アーム63の回動により、ピッチ調整ロッド64は、上下方向に移動する。
【0075】
ピッチ調整体34は、ピッチ調整ロッド64を介してピッチ調整アーム63に連結される。ピッチ調整体34の後端部は、ピッチ調整ロッド64の下端部に回動可能に連結される。ピッチ調整体34の中間部は、支持ロッド130に回動可能に支持される。支持ロッド130の位置は、固定されている。ピッチ調整ロッド64が上下方向に移動することにより、ピッチ調整体34は、ピッチ調整ロッド64と同期して回動する。ピッチ調整ロッド64が下方に移動すると、ピッチ調整体34の後端部が下方に移動し、ピッチ調整体34の前端部が上方に移動するように、ピッチ調整体34が回動する。ピッチ調整ロッド64が上方に移動すると、ピッチ調整体34の後端部が上方に移動し、ピッチ調整体34の前端部が下方に移動するように、ピッチ調整体34が回動する。
【0076】
リンク体35は、水平コネクティングロッド33及びピッチ調整体34のそれぞれに回動可能に連結される。リンク体35の後端部は、水平コネクティングロッド33の下部に回動可能に連結される。リンク体35の前端部は、ピッチ調整体34の前端部に回動可能に連結される。
【0077】
リンク体36は、水平コネクティングロッド33及び揺動アーム37のそれぞれに回動可能に連結される。リンク体36の後端部は、水平コネクティングロッド33の下部に回動可能に連結される。リンク体36の前端部は、揺動アーム37に回動可能に連結される。
【0078】
揺動アーム37は、第1水平送りシャフト38の右部に固定される。揺動アーム37は、第1水平送りシャフト38の中心軸から放射方向に突出するように設けられる。揺動アーム37の外端部は、リンク体36の前端部に回動可能に連結される。揺動アーム37の外端部が第1水平送りシャフト38の周方向に揺動すると、第1水平送りシャフト38がθY方向に往復回動する。
【0079】
ピッチ調整機構18は、ピッチ調整体34の回動により、送り歯13の前後方向の振幅を調整する。ピッチ調整体34の回動により、θY方向におけるリンク体35とリンク体36との相対位置が変更される。
【0080】
リンク体35とリンク体36とが重なるようにピッチ調整体34が回動すると、水平コネクティングロッド33が移動しても揺動アーム37が揺動しない状態となる。揺動アーム37が揺動しないので、第1水平送りシャフト38は往復回動せず、送り歯13の前後方向の振幅はゼロになる。以下の説明において、リンク体35とリンク体36が重なって送り歯13の前後方向の振幅がゼロになるピッチ調整体34の回動方向の位置を適宜、ピッチ調整体34の中立位置、と称する。
【0081】
ピッチ調整体34が中立位置から回動すると、水平コネクティングロッド33の移動に基づいて揺動アーム37が揺動する。揺動アーム37が揺動するので、第1水平送りシャフト38は往復回動し、送り歯13が前後方向に移動する。ピッチ調整体34の中立位置からの回動角度に基づいて、送り歯13の前後方向の振幅が調整される。ピッチ調整体34の中立位置からの回動角度が大きいほど、送り歯13の前後方向の振幅が大きくなる。
【0082】
コントローラ21は、送り歯13の前後方向の振幅を調整する場合、ピッチ調整体34が回動するように、第1調整モータ11を制御する。
【0083】
[第1調整モータの動作]
上述のように、押さえ上げ機構17及びピッチ調整機構18のそれぞれは、第1調整モータ11の出力シャフト51に接続される。実施形態においては、1つの第1調整モータ11により、押さえ8の上昇、及び送り歯13の前後方向の振幅の調整が実施される。
【0084】
図15は、実施形態に係る第1調整モータ11の動作を説明するための図である。実施形態においては、出力シャフト51(ピッチ調整アーム63)の回動範囲RAにおいて、送り歯13の前後方向の振幅が調整される。出力シャフト51(ピッチ調整アーム63)の回動範囲RBにおいて、押さえ8が上昇する。回動範囲RAと回動範囲RBとは、異なる。回動範囲RA及び回動範囲RBのそれぞれは、押さえカム52のカム面の形状に基づいて予め定められる。
【0085】
回動範囲RAにおいてはコロ53が上昇しないように、押さえカム52のカム面の形状が定められている。すなわち、出力シャフト51の回動範囲RAにおいて、押さえ8は上昇しない。コントローラ21は、送り歯13の前後方向の振幅を調整する場合、回動範囲RAにおいて出力シャフト51が回動するように、第1調整モータ11を制御する。回動範囲RAにおいて出力シャフト51(ピッチ調整アーム63)が回動することにより、ピッチ調整体34が中立位置から回動する。押さえ8が縫製対象物を押さえた状態で、送り歯13の前後方向の振幅が調整される。コントローラ21は、回動範囲RAにおいて出力シャフト51が回動するように第1調整モータ11を制御する場合、ミシンモータ10を駆動してもよいし停止してもよい。
【0086】
コントローラ21は、押さえ8を上昇させる場合、回動範囲RBにおいて出力シャフト51が回動するように、第1調整モータ11を制御する。回動範囲RBにおいてはコロ53が上昇するように、押さえカム52のカム面の形状が定められている。回動範囲RBにおいて出力シャフト51が回動することにより、コロ53が上昇する。コロ53の上昇に伴って、押さえ8が上昇する。コントローラ21は、回動範囲RBにおいて出力シャフト51が回動するように第1調整モータ11を制御する場合、ミシンモータ10を停止する。すなわち、コントローラ21は、第1調整モータ11を用いて押さえ8を上昇させる場合、ミシンモータ10を停止する。
【0087】
[送り歯調整機構]
図16は、実施形態に係る送り歯調整機構19を示す左上後方からの斜視図である。
図17は、実施形態に係る送り歯調整機構19を左方から見た図である。
図18は、実施形態に係る送り歯調整機構19を示す断面図である。
【0088】
送り歯調整機構19は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、針板7に対する送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する。送り歯調整機構19は、第2調整モータ12の出力シャフト90に接続される。出力シャフト90は、左右方向に長い。第2調整モータ12の駆動により、出力シャフト90は、出力シャフト90の中心軸を中心にθY方向に回動する。
【0089】
送り歯調整機構19は、水平偏心スリーブ104と、上下偏心スリーブ108と、水平カム65と、上下カム66と、水平揺動カラー103と、上下揺動カラー107と、水平リンク機構109と、上下リンク機構110と、を有する。
【0090】
上述のように、第1水平送りシャフト38の右端部は、ピッチ調整機構18に支持される。第1水平送りシャフト38の中間部は、スリーブ102に回転可能に支持される。スリーブ102は、ミシンフレーム3に支持される。第1水平送りシャフト38は、第1水平送りシャフト38の中心軸と中心にθY方向に回転する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、及びθZ方向のそれぞれにおいて、第1水平送りシャフト38の位置は、変化しない。
【0091】
水平偏心スリーブ104は、第2水平送りシャフト40を回転可能に支持する。水平偏心スリーブ104は、第2水平送りシャフト40が挿入される支持孔を有する。第1水平送りシャフト38の中心軸に対して、水平偏心スリーブ104の中心軸は、ずれている。第1水平送りシャフト38の中心軸に対して、第2水平送りシャフト40の中心軸は、ずれている。水平偏心スリーブ104は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、回動する。水平偏心スリーブ104がθY方向に回動すると、上下方向及び前後方向における第2水平送りシャフト40の位置が変化する。水平偏心スリーブ104は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、第2水平送りシャフト40が第1水平送りシャフト38に対して上下方向及び前後方向に偏心するように回動する。
【0092】
上述のように、第1水平送りシャフト38と第2水平送りシャフト40とは、水平フレキシブルカップリング39を介して連結される。水平フレキシブルカップリング39により、第2水平送りシャフト40は、第1水平送りシャフト38に対して偏心するように上下方向及び前後方向に移動することができる。第2水平送りシャフト40が上下方向及び前後方向に移動しても、第1水平送りシャフト38の回転は、水平フレキシブルカップリング39を介して第2水平送りシャフト40に伝達される。
【0093】
第1上下送りシャフト44の右端部は、スリーブ105に回転可能に支持される。第1上下送りシャフト44の中間部は、スリーブ106に回転可能に支持される。スリーブ105及びスリーブ106のそれぞれは、ミシンフレーム3に支持される。第1上下送りシャフト44は、第1上下送りシャフト44の中心軸と中心にθY方向に回転する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、及びθZ方向のそれぞれにおいて、第1上下送りシャフト44の位置は、変化しない。
【0094】
上下偏心スリーブ108は、第2上下送りシャフト46を回転可能に支持する。上下偏心スリーブ108は、第2上下送りシャフト46が挿入される支持孔を有する。第1上下送りシャフト44の中心軸に対して、上下偏心スリーブ108の中心軸は、ずれている。第1上下送りシャフト44の中心軸に対して、第2上下送りシャフト46の中心軸は、ずれている。上下偏心スリーブ108は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、回動する。上下偏心スリーブ108がθY方向に回動すると、上下方向及び前後方向における第2上下送りシャフト46の位置が変化する。上下偏心スリーブ108は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、第2上下送りシャフト46が第1上下送りシャフト44に対して上下方向及び前後方向に偏心するように回動する。
【0095】
上述のように、第1上下送りシャフト44と第2上下送りシャフト46とは、上下フレキシブルカップリング45を介して連結される。上下フレキシブルカップリング45により、第2上下送りシャフト46は、第1上下送りシャフト44に対して偏心するように上下方向及び前後方向に移動することができる。第2上下送りシャフト46が上下方向及び前後方向に移動しても、第1上下送りシャフト44の回転は、上下フレキシブルカップリング45を介して第2上下送りシャフト46に伝達される。
【0096】
水平カム65は、第2調整モータ12の出力シャフト90に固定される。上下カム66は、第2調整モータ12の出力シャフト90に固定される。実施形態において、水平カム65及び上下カム66のそれぞれは、第2調整モータ12のステータよりも左方に配置される。水平カム65は、上下カム66よりも左方に配置される。
【0097】
水平カム65の外周面は、水平カム65のカム面である。上下カム66の外周面は、上下カム66のカム面である。第2調整モータ12が駆動することにより、出力シャフト90は、θY方向に回動する。出力シャフト90が回動することにより、水平カム65及び上下カム66のそれぞれが回動する。水平カム65及び上下カム66のそれぞれは、出力シャフト90を中心にθY方向に回動する。
【0098】
水平揺動カラー103は、水平偏心スリーブ104に固定される。実施形態において、水平揺動カラー103は、水平偏心スリーブ104の右端部に固定される。上下揺動カラー107は、上下偏心スリーブ108に固定される。実施形態において、上下揺動カラー107は、上下偏心スリーブ108の右端部に固定される。
【0099】
水平リンク機構109は、水平カム65と水平揺動カラー103とを連結する。水平リンク機構109は、コロ67と、アーム68と、ピン72とを有する。
【0100】
コロ67は、水平カム65の前方に配置される。コロ67は、水平カム65のカム面に接触する。出力シャフト90の中心軸に直交する面内において、水平カム65のカム面は、非円形である。水平カム65が回動することにより、コロ67は、水平カム65のカム面の形状に従って前後方向に移動する。
【0101】
アーム68は、コロ67を回転可能に保持する。アーム68は、ピン72を保持する。アーム68の中間部は、ピン91に回動可能に支持される。ピン91は、ミシンフレーム3に支持される。水平カム65の回動によりコロ67が移動すると、アーム68が回動する。アーム68の回動により、ピン72が移動する。
【0102】
ピン72は、水平揺動カラー103に取り付けられる。ピン72の移動により、水平揺動カラー103及び水平揺動カラー103に固定されている水平偏心スリーブ104が回動する。水平偏心スリーブ104が回動することにより、第2水平送りシャフト40が少なくとも上下方向に移動する。出力シャフト90(水平カム65)の回動角度に基づいて、コロ67及びピン72のそれぞれの移動量が決定され、水平偏心スリーブ104の回動角度が決定される。出力シャフト90(水平カム65)の回動角度に基づいて水平偏心スリーブ104の回動角度が決定されることにより、第2水平送りシャフト40の上下方向の位置が決定される。
【0103】
上下リンク機構110は、上下カム66と上下揺動カラー107とを連結する。上下リンク機構110は、コロ69と、アーム70と、ピン73とを有する。
【0104】
コロ69は、上下カム66の後方に配置される。コロ69は、上下カム66のカム面に接触する。出力シャフト90の中心軸に直交する面内において、上下カム66のカム面は、非円形である。上下カム66が回動することにより、コロ69は、上下カム66のカム面の形状に従って前後方向に移動する。
【0105】
アーム70は、コロ69を回転可能に保持する。アーム70は、ピン73を保持する。アーム70の中間部は、ピン92に回動可能に支持される。ピン92は、ミシンフレーム3に支持される。上下カム66の回動によりコロ69が移動すると、アーム70が回動する。アーム70の回動により、ピン73が移動する。
【0106】
ピン73は、上下揺動カラー107に取り付けられる。ピン73の移動により、上下揺動カラー107及び上下揺動カラー107に固定されている上下偏心スリーブ108が回動する。上下偏心スリーブ108が回動することにより、第2上下送りシャフト46が少なくとも上下方向に移動する。出力シャフト90(上下カム66)の回動角度に基づいて、コロ69及びピン73のそれぞれの移動量が決定され、上下偏心スリーブ108の回動角度が決定される。出力シャフト90(上下カム66)の回動角度に基づいて上下偏心スリーブ108の回動角度が決定されることにより、第2上下送りシャフト46の上下方向の位置が決定される。
【0107】
送り歯13は、送り歯台71に支持される。送り歯台71は、支持部71Aと、連結部71Bと、ロッド部71Cとを有する。連結部71Bは、支持部71Aの前部に接続される。連結部71Bは、支持部71Aの前方に配置される。ロッド部71Cは、支持部71Aの後方に接続される。ロッド部71Cは、支持部71Aの後方に配置される。
【0108】
支持部71Aは、送り歯13を支持する。支持部71Aは、送り歯13の下方に配置される。支持部71Aは、送り歯13を下方から支持する。支持部71Aは、送り歯13の下方に配置される。
【0109】
連結部71Bは、送り歯台71の前端部に配置される。連結部71Bは、水平送りアーム41に回動可能に連結される。水平送りアーム41は、第2水平送りシャフト40の左端部に固定される。水平送りアーム41は、送り歯台71及び送り歯台71に支持されている送り歯13が前後方向に往復移動するように、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、第2水平送りシャフト40と一緒に回転する。
【0110】
第2調整モータ12が発生する動力に基づいて水平偏心スリーブ104が回動し、第2水平送りシャフト40が上下方向に移動すると、水平送りアーム41も、第2水平送りシャフト40と一緒に上下方向に移動する。水平送りアーム41が上下方向に移動することにより、送り歯台71の前端部(連結部71B)が上下方向に移動する。水平カム65の回動角度に基づいて、送り歯台71の前端部の高さが調整される。
【0111】
ロッド部71Cは、送り歯台71の後端部に配置される。ロッド部71Cは、上下送りアーム47に支持される。上下送りアーム47は、ロッド部71Cを挟む一対の爪部を有する。上下送りアーム47は、第2上下送りシャフト46の左端部に固定される。上下送りアーム47は、送り歯台71及び送り歯台71に支持されている送り歯13が上下方向に往復移動するように、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、第2上下送りシャフト46と一緒に回転する。
【0112】
第2調整モータ12が発生する動力に基づいて上下偏心スリーブ108が回動し、第2上下送りシャフト46が上下方向に移動すると、上下送りアーム47も、第2上下送りシャフト46と一緒に上下方向に移動する。上下送りアーム47が上下方向に移動することにより、送り歯台71の後端部(ロッド部71C)が上下方向に移動する。上下カム66の回動角度に基づいて、送り歯台71の後端部の高さが調整される。
【0113】
送り歯台71の前端部の高さ及び送り歯台71の後端部の高さが調整されることにより、針板7に対する送り歯13の高さが調整される。送り歯台71の前端部の高さと送り歯台71の後端部の高さとの差が調整されることにより、針板7に対する送り歯13の前後方向の傾きが調整される。
【0114】
実施形態において、送り歯13の高さ及び傾きは、水平カム65及び上下カム66の回動角度(出力シャフト90の回動角度)に基づいて決定される。水平カム65のカム面の形状及び上下カム66のカム面の形状は、任意に設定可能である。また、水平カム65及び上下カム66を第2調整モータ12の出力シャフト90に固定するときの水平カム65と上下カム66との相対角度も、任意に設定可能である。水平カム65のカム面の形状と、上下カム66のカム面の形状と、水平カム65と上下カム66との相対角度と、出力シャフト90の回動角度とに基づいて、送り歯13を様々な高さ及び傾きに調整することができる。
【0115】
なお、水平カム65と上下カム66とは、別体でもよいし、一体でもよい。また、水平カム65及び上下カム66は、第2調整モータ12のステータよりも右方に配置されてもよい。水平カム65と上下カム66とが別体である場合、水平カム65が第2調整モータ12のステータよりも左方に配置され、上下カム66が第2調整モータ12のステータよりも右方に配置されてもよい。水平カム65と上下カム66とが別体である場合、水平カム65が第2調整モータ12のステータよりも右方に配置され、上下カム66が第2調整モータ12のステータよりも左方に配置されてもよい。
【0116】
[ミシンの動作]
送り歯13の高さ及び傾きを調整する場合、ミシン1のオペレータは、操作パネル23を操作して、送り歯13の高さの目標値及び傾きの目標値を入力する。コントローラ21は、操作パネル23からの操作信号に基づいて、送り歯13の高さ及び傾きのそれぞれが目標値になるように、第2調整モータ12の出力シャフト90の回動角度を決定する。コントローラ21は、送り歯13の高さ及び傾きのそれぞれが目標値になるように、第2調整モータ12を制御する。
【0117】
第2調整モータ12が駆動されることにより、水平偏心スリーブ104及び上下偏心スリーブ108のそれぞれが回動する。水平偏心スリーブ104が回動することにより、第1水平送りシャフト38に対する第2水平送りシャフト40及び水平送りアーム41の高さが調整される。上下偏心スリーブ108が回動することにより、第1上下送りシャフト44に対する第2上下送りシャフト46及び上下送りアーム47の高さが調整される。水平送りアーム41及び上下送りアーム47のそれぞれの高さが調整されることにより、送り歯13の高さ及び傾きが調整される。
【0118】
オペレータは、ペダル22の前部が下方に移動するようにペダル22を操作する。コントローラ21は、ペダル22からの操作信号に基づいて、ミシンモータ10を駆動する。ミシンモータ10が駆動することにより、針棒6が上下方向に往復移動し、釜14が回転し、送り歯13が縫製対象物を前方に送るように前後方向及び上下方向に揺動する。また、ミシンモータ10が駆動されるとき、コントローラ21は、押さえ8が縫製対象物を押さえるように、第1調整モータ11を制御する。
【0119】
図19は、実施形態に係る送り歯13の動作を模式的に示す図である。ミシンモータ10が駆動されることにより、送り歯13は、所定の送り軌道に従って前後方向及び上下方向のそれぞれに往復移動する。
図19は、送り軌道が楕円形である例を示す。針板7に対する送り歯13の高さ及び傾きとは、送り軌道の上端部(上死点)に送り歯13が配置されたときの送り歯13の高さ及び傾きをいう。送り歯13の高さは、針板7の上面からの送り歯13の突出量を含む。送り歯13の傾きは、前後方向(縫製対象物の送り方向)の傾斜角度を含む。
【0120】
図19(A)に示すように、送り歯13が送り軌道の上死点に配置された場合、送り歯13が水平になるように、送り歯13の傾きが調整されてもよい。
図19(B)に示すように、送り歯13が送り軌道の上死点に配置された場合、送り歯13の後端部が送り歯13の前端部よりも下方に配置されるように、送り歯13の傾きが調整されてもよい。
図19(C)に示すように、送り歯13が送り軌道の上死点に配置された場合、送り歯13の前端部が送り歯13の後端部よりも下方に配置されるように、送り歯13の傾きが調整されてもよい。
【0121】
図20は、実施形態に係る送り歯13の動作を模式的に示す図である。
図20に示すように、コントローラ21は、ミシンモータ10が駆動している状態で、第1調整モータ11の出力シャフト51が回動範囲RAにおいて回動するように第1調整モータ11を駆動して、送り歯13の送り軌道を変更することができる。
図20(A)は、送り軌道が矩形状である例を示す。
図20(B)は、送り軌道の前部が円弧状であり、送り軌道の後部が矩形状である例を示す。
図20(C)は、送り軌道の後部が円弧状であり、送り軌道の前部が矩形状である例を示す。
【0122】
[糸切り機構]
図21は、実施形態に係る糸切り機構20を示す右上前方からの斜視図である。
図22は、実施形態に係る糸切り機構20を右方から見た図である。
図23は、実施形態に係る糸切り機構20を示す左上後方からの斜視図である。
【0123】
糸切り機構20は、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、糸切り15を作動させる。糸切り15は、可動歯15Aと、固定歯15Bとを含む。糸切り15を作動させることは、可動歯15Aが固定歯15Bに接近するように可動歯15Aを移動させることを含む。可動歯15Aと固定歯15Bとの間に上糸及び下糸が配置された状態で、可動歯15Aが固定歯15Bに接近することにより、上糸及び下糸が切断される。
【0124】
糸切り機構20は、第2調整モータ12の出力シャフト90に接続される。実施形態において、出力シャフト90は、第2調整モータ12から左方側及び右方側のそれぞれに突出する。送り歯調整機構19は、第2調整モータ12から左方側に突出する出力シャフト90に接続される。糸切り機構20は、第2調整モータ12から右方側に突出する出力シャフト90に接続される。
【0125】
糸切り機構20は、糸切りレバー74と、糸切りアーム75と、糸切りシャフト77と、アーム78と、リンク体79と、可動歯支持部材80と、を有する。
【0126】
糸切りレバー74は、第2調整モータ12の出力シャフト90に固定される。糸切りレバー74は、第2調整モータ12から右方側に突出する出力シャフト90に固定される。第2調整モータ12の駆動により、出力シャフト90が回動する。糸切りレバー74は、出力シャフト90と一緒に回動する。
【0127】
糸切りアーム75は、ピン76に回動可能に支持される。ピン76は、ミシンフレーム3に支持される。糸切りアーム75は、糸切りレバー74よりも前方に配置される。糸切りレバー74は、糸切りアーム75に接触可能である。糸切りアーム75は、糸切りレバー74により回動する。糸切りレバー74と糸切りアーム75とが接触した状態で、糸切りレバー74が回動することにより、糸切りアーム75は、ピン76を中心にθY方向に回動する。
【0128】
糸切りシャフト77は、糸切りアーム75に固定される。糸切りシャフト77は、糸切りアーム75により回動する。糸切りシャフト77は、左右方向に長い。糸切りシャフト77の右端部が糸切りアーム75に固定される。糸切りシャフト77は、糸切りアーム75から左方に伸びるように配置される。糸切りアーム75が回動すると、糸切りシャフト77は、第2釜シャフト31の周囲の一部を旋回するように移動する。
【0129】
アーム78は、糸切りシャフト77の左端部に固定される。アーム78は、糸切りシャフト77と一緒に移動する。糸切りシャフト77が第2釜シャフト31の周囲の一部を旋回するように移動した場合、アーム78は、釜14の周囲の一部を旋回するように回動する。
【0130】
リンク体79は、アーム78及び可動歯支持部材80のそれぞれに連結される。リンク体79は、アーム78に回動可能に連結される。リンク体79は、可動歯支持部材80に回動可能に連結される。
【0131】
可動歯支持部材80は、可動歯15Aを支持する。可動歯支持部材80は、第2釜シャフト31の周囲の少なくとも一部に配置される。可動歯支持部材80は、リンク体79を介してアーム78に連結される。
【0132】
糸切りシャフト77の回動により、糸切り15が作動する。第2調整モータ12の駆動により糸切りレバー74が回動し、糸切りレバー74の回動により、糸切りアーム75及び糸切りシャフト77が回動すると、アーム78が釜14の周囲の一部を旋回するように回動する。アーム78が回動すると、リンク体79を介してアーム78に連結されている可動歯支持部材80は、可動歯15Aを固定歯15Bに接近させるように回動する。可動歯15Aが固定歯15Bに接近するように糸切り15が作動することにより、上糸及び下糸が切断される。
【0133】
図24は、実施形態に係る第2調整モータ12の動作を説明するための図である。実施形態においては、出力シャフト90(糸切りレバー74)の回動範囲RCにおいて、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整される。出力シャフト90(糸切りレバー74)の回動範囲RDにおいて、糸切り15が作動する。回動範囲RCと回動範囲RDとは、異なる。回動範囲RC及び回動範囲RDのそれぞれは、水平カム65のカム面の形状、上下カム66のカム面の形状、及び糸切りレバー74の形状に基づいて予め定められる。
【0134】
回動範囲RCにおいては、糸切りレバー74と糸切りアーム75とは接触しない。実施形態において、糸切りアーム75が回動範囲RDから回動範囲RCに入り込まないように、糸切りアーム75の回動が不図示のストッパにより制限される。すなわち、ストッパにより、回動範囲RDに存在する糸切りアーム75が回動範囲RCと回動範囲RDとの境界RTを超えて回動範囲RCに入り込むことが抑制される。
【0135】
コントローラ21は、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する場合、回動範囲RCにおいて出力シャフト90が回動するように、第2調整モータ12を制御する。回動範囲RCにおいて出力シャフト90(水平カム65及び上下カム66)が回動することにより、水平偏心スリーブ104及び上下偏心スリーブ108が回動して、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整される。出力シャフト90が回動範囲RCを回動する場合、糸切りアーム75が回動しないので、糸切り15は作動しない。
【0136】
コントローラ21は、糸切り15を作動させる場合、回動範囲RDにおいて出力シャフト90が回動するように、第2調整モータ12を制御する。回動範囲RCにおいて出力シャフト90(糸切りレバー74)が回動することにより、糸切りレバー74と糸切りアーム75とが接触した状態で、糸切りアーム75が回動する。糸切りアーム75が回動し、糸切りシャフト77が回動することにより、糸切り15が作動し、上糸及び下糸が切断される。出力シャフト90が回動範囲RDを回動する場合、水平リンク機構109及び上下リンク機構110が作動しないように、水平カム65のカム面の形状及び上下カム66のカム面の形状が定められる。なお、出力シャフト90が回動範囲RDを回動する場合において、水平リンク機構109及び上下リンク機構110が作動してもよい。
【0137】
[効果]
以上説明したように、実施形態に係るミシン1は、ミシンモータ10と、第2調整モータ12と、ミシン針4を保持する針棒6と、針棒6の下方において縫製対象物を下方から支持する針板7と、針板7に支持される縫製対象物を送る送り歯13と、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、針棒6及び送り歯13のそれぞれを作動させるミシン動力伝達機構16と、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、針板7に対する送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方を調整する送り歯調整機構19と、を備える。
【0138】
実施形態によれば、第2調整モータ12及び送り歯調整機構19により、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が効率良く調整される。
【0139】
ミシン動力伝達機構16は、ミシンモータ10が発生した動力に基づいて、送り歯13を前後方向に往復移動させる水平送り機構16Cと、送り歯13を上下方向に往復移動させる上下送り機構16Dと、を含む。水平送り機構16Cは、ミシンモータ10が発生した動力により回転する第1水平送りシャフト38と、水平フレキシブルカップリング39を介して第1水平送りシャフト38に連結される第2水平送りシャフト40と、第2水平送りシャフト40に支持され、第2水平送りシャフト40の回転に基づいて送り歯13を水平方向に往復移動させる水平送りアーム41と、を有する。上下送り機構16Dは、ミシンモータ10が発生した動力により回転する第1上下送りシャフト44と、上下フレキシブルカップリング45を介して第1上下送りシャフト44に連結される第2上下送りシャフト46と、第2上下送りシャフト46に支持され、第2上下送りシャフト46の回転に基づいて送り歯13を上下方向に往復移動させる上下送りアーム47と、を有する。送り歯調整機構19は、第2水平送りシャフト40を支持し、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、第2水平送りシャフト40が第1水平送りシャフト38に対して上下方向に偏心するように回動する水平偏心スリーブ104と、第2上下送りシャフト46を支持し、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、第2上下送りシャフト46が第1上下送りシャフト44に対して上下方向に偏心するように回動する上下偏心スリーブ108と、を有する。
【0140】
上記の構成では、水平偏心スリーブ104及び上下偏心スリーブ108のそれぞれが回動することにより、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が効率良く調整される。
【0141】
送り歯調整機構19は、第2調整モータ12の出力シャフト90に固定される水平カム65と、第2調整モータ12の出力シャフト90に固定される上下カム66と、水平偏心スリーブ104に固定される水平揺動カラー103と、上下偏心スリーブ108に固定される上下揺動カラー107と、水平カム65と水平揺動カラー103とを連結する水平リンク機構109と、上下カム66と上下揺動カラー107とを連結する上下リンク機構110と、を有する。出力シャフト90(水平カム65)の回動角度に基づいて、第2水平送りシャフト40の上下方向の位置が決定される。出力シャフト90(上下カム66)の回動角度に基づいて、第2上下送りシャフト46の上下方向の位置が決定される。
【0142】
上記の構成では、水平カム65及び上下カム66のそれぞれが回動することにより、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が効率良く調整される。
【0143】
ミシン1は、針板7の下方に配置される糸切り15と、第2調整モータ12が発生した動力に基づいて、糸切り15を作動させる糸切り機構20と、を備える。
【0144】
上記の構成では、1つの第2調整モータ12で、送り歯13の高さ及び傾きの調整と、上糸及び下糸の切断とが実施される。そのため、ミシン1の大型化及び高コスト化が抑制される。
【0145】
送り歯調整機構19及び糸切り機構20のそれぞれは、第2調整モータ12の出力シャフト90に接続される。出力シャフト90の回動範囲RCにおいて、送り歯13の高さ及び傾きの少なくとも一方が調整される。出力シャフト90の回動範囲RDにおいて、糸切り15が作動する。
【0146】
上記の構成では、送り歯13の高さ及び傾きの調整と、上糸及び下糸の切断とのそれぞれが、円滑に実施される。
【0147】
出力シャフト90は、第2調整モータ12から左方側及び右方側のそれぞれに突出する。送り歯調整機構19は、第2調整モータ12から左方側に突出する出力シャフト90に接続される。糸切り機構20は、第2調整モータ12から右方側に突出する出力シャフト90に接続される。
【0148】
上記の構成では、ミシン1の大型化が抑制される。また、送り歯13の高さ及び傾きの調整と、上糸及び下糸の切断とのそれぞれが、円滑に実施される。
【0149】
[他の実施形態]
図25は、他の実施形態に係る押さえ上げ機構17を示す図である。
図25に示す実施形態のうち、上述の実施形態と同一の又は同等の構成要素については、同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0150】
図25に示す例において、コロ53は、押さえカム52よりも下方に配置される。コロ53は、押さえカム52のカム面に接触する。コロホルダ54は、接続部材550を介してリンク体560に接続される。コロホルダ54は、接続部材550の右端部に固定される。接続部材550の左端部は、リンク体560の下端部に固定される。リンク体560の上端部は、伝達ロッド57の右端部に回動可能に連結される。コロ53が上下方向に移動すると、コロ53とコロホルダ54と接続部材550とリンク体560とが一緒に上下方向に移動する。リンク体560が下方に移動すると、押さえ8が上昇する。リンク体560が上方に移動すると、押さえ8が下降する。
【符号の説明】
【0151】
1…ミシン、2…ミシンテーブル、3…ミシンフレーム、3A…アーム、3B…ベッド、3C…ベース、3D…ヘッド、4…ミシン針、5…天秤、6…針棒、7…針板、8…押さえ、9…糸調子、10…ミシンモータ、11…第1調整モータ、12…第2調整モータ、13…送り歯、14…釜、15…糸切り、15A…可動歯、15B…固定歯、16…ミシン動力伝達機構、16A…針棒駆動機構、16B…釜駆動機構、16C…水平送り機構、16D…上下送り機構、17…押さえ上げ機構、18…ピッチ調整機構、19…送り歯調整機構、20…糸切り機構、21…コントローラ、22…ペダル、23…操作パネル、24…ミシンシャフト、25…変換機構、26…第1ベベルギヤ、27…第2ベベルギヤ、28…第1釜シャフト、29…第3ベベルギヤ、30…第4ベベルギヤ、31…第2釜シャフト、32…偏心カム、32A…水平支持部、32B…上下支持部、32C…連結部、32D…孔、33…水平コネクティングロッド、34…ピッチ調整体、35…リンク体、36…リンク体、37…揺動アーム、38…第1水平送りシャフト、39…水平フレキシブルカップリング、40…第2水平送りシャフト、41…水平送りアーム、42…上下コネクティングロッド、43…リンク機構、44…第1上下送りシャフト、45…上下フレキシブルカップリング、46…第2上下送りシャフト、47…上下送りアーム、48…押さえ棒、49…押さえばね、50…ばね押さえ部材、51…出力シャフト、52…押さえカム、53…コロ、54…コロホルダ、55…駆動プレート、56…リンク体、57…伝達ロッド、58…レバー、59…フック部材、60…固定部材、61…ピン、62…ピン、63…ピッチ調整アーム、64…ピッチ調整ロッド、65…水平カム、66…上下カム、67…コロ、68…アーム、69…コロ、70…アーム、71…送り歯台、71A…支持部、71B…連結部、71C…ロッド部、72…ピン、73…ピン、74…糸切りレバー、75…糸切りアーム、76…ピン、77…糸切りシャフト、78…アーム、79…リンク体、80…可動歯支持部材、90…出力シャフト、91…ピン、92…ピン、100…プーリ、101…スリーブ、102…スリーブ、103…水平揺動カラー、104…水平偏心スリーブ、105…スリーブ、106…スリーブ、107…上下揺動カラー、108…上下偏心スリーブ、109…水平リンク機構、110…上下リンク機構、112…押さえリンク機構、130…支持ロッド、550…接続部材、560…リンク体、RA…回動範囲、RB…回動範囲、RC…回動範囲、RD…回動範囲、RT…境界。