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特開2024-122135遺伝子分析方法、遺伝子分析用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122135
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】遺伝子分析方法、遺伝子分析用キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20240902BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240902BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20240902BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/68
C12Q1/6874 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029502
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】横井 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】万里 千裕
(72)【発明者】
【氏名】石田 猛
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA17
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キャピラリー電気泳動のフラグメント解析による遺伝子変異の定量検出技術において、検出する遺伝子変異の標的数の増大とともに、隣接する遺伝子標的の蛍光信号が近づき、その蛍光信号の重なりが変異型遺伝子の定量性を損なわせることを回避する、遺伝子分析方法を提供する。
【解決手段】標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質とを用いた一塩基伸長反応を行う工程、前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程を含む遺伝子分析方法である。前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法。
【請求項2】
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程が、前記蛍光強度の大きさに基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型の含有比を定量する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記野生型と変異型の含有比が定量される前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、他の一塩基伸長反応用プライマーよりも短い塩基長を有するように設計される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記野生型に対する前記変異型の含有比が0.01%から10%の範囲である前記標的塩基配列について分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記2種以上の標的塩基配列が、20種類以上の標的塩基配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標的塩基配列の変異型が複数種の変異型を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記野生型に対する前記変異型の含有比が0.01%から10%の範囲である第1の前記標的塩基配列について、第2の前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、第1の前記標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、電気泳動の移動度としての差が少なくとも4.46~3.16塩基となるように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法。
【請求項11】
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を含み、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法に使用するための遺伝子分析用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動のフラグメント解析を利用する遺伝子分析方法、及びかかる方法に使用するための遺伝子分析用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
がん研究は近年急速に進展しており、遺伝子解析技術により腫瘍由来の遺伝子変異を検出することの重要性が増している。特に、血液中の腫瘍由来の遺伝子変異を検出して医療診断を行う検査はリキッドバイオプシーと呼ばれ、がんの早期診断や、術後の治療選択最適化、残存腫瘍のモニタリング等への応用が期待されている。バイオマーカーとなる腫瘍関連の遺伝子変異の探索では、現在、次世代シーケンサー(NGS;Next Generation Sequencer)を使って大規模かつ高速の解析が可能となり、リキッドバイオプシーで必要となる遺伝子変異の項目抽出が容易になりつつある。そのため、例えばがん診断においては、NGSでの網羅的分析の結果に基づいて特定された腫瘍由来の遺伝子変異を、コストや検出感度の観点でNGSよりも有利な遺伝子変異の検出技術で測定することによって、検査技術としての汎用性を上げる潮流下にある。
【0003】
NGSよりも低コストの遺伝子変異の検出技術として、電気泳動、例えばキャピラリー電気泳動(CE)を用いたフラグメント解析が一例として挙げられる。図1に示すように、標的とする遺伝子配列110ごとに、分子量(塩基長)の異なる選択的プライマー111を用いて電気泳動の移動度が変わるように設計し、ポリメラーゼ反応によって、遺伝子変異に対応する選択的プライマー111の3’末端位置に、4種の蛍光色素で修飾されたddNTP 112を一塩基伸長反応で付与する。ホルムアミド処理と熱変性で二本鎖DNAを一本鎖化し、3’末端の蛍光色素を蛍光検出することで遺伝子変異が特定される。例えば、肺がん患者の多くに見られる遺伝子変異EGFR L858Rを標的とすると、EGFR遺伝子の858番目の塩基がロイシン(L:CG)からアルギニン(R:CG)に変異し、野生型の一塩基伸長反応産物のみが存在する時に比べ、変異型の一塩基伸長反応産物が生成される時には、特定の電気泳動検出タイミング(電気泳動移動度)で、変異型を由来とした蛍光信号が観測されることになる。
【0004】
本手法を用いた非特許文献1においても、遺伝子変異EGFR L858Rの検出が示されている。この手法を活用して、標的となる腫瘍由来の遺伝子配列をマルチプレックスのポリメラーゼ連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)で選択的に濃縮した後に、13のがん遺伝子における120の既知の遺伝子変異を検出できることを示している。ただし、選択的プライマーを電気泳動で分離できる泳動長の上限は120塩基程度に制限されているため、1ラン当たりの同時検出数としては数種類であり、また、遺伝子変異を特定するための蛍光色素ごとで蛍光信号の強度は異なるため、定量性は担保されていない。また、非特許文献2においても、52種の一塩基多型検出を行う際に、1ランあたり29種と23種に分割して検出する工夫がなされている。
【0005】
同時検出できる遺伝子変異数に関しては、本発明者らが最近、選択的プライマーに鎖間架橋された二本鎖DNAを連結させ、電気泳動距離を120bp以上に安定的に伸ばすことで、これまで有効活用できなかった電気泳動領域を利用し、同時検出可能な遺伝子変異数を増やすことを可能にしている。さらに、少量の遺伝子変異を定量する方法としては、特許文献1において、例えば上記の一塩基伸長反応で遺伝子変異検出をする際に、伸長プライマー(選択的プライマー)に対する鎖停止試薬の濃度を変更することで、混合物中に低い頻度又はコピー数で存在する少量核酸種の検出限界を改善した、定量測定のアプローチが考案されている。以上のように、がんに由来する標的遺伝子に関して、多項目同時検出で、少量変異を定量的に測定できる分析方法がこれまでに開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2016/172571(特表2018-512880号公報)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dias-Santagata, D. et al., EMBO Molecular Medicine 第2巻第146-158頁 (2010)
【非特許文献2】Sanchez, J. J. et al., Electrophoresis 第27巻第1713-1724頁 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
がん診断技術の手法として、例えばキャピラリー電気泳動のフラグメント解析などの電気泳動を利用した方法により既知の遺伝子変異を検出する技術が考えられる。キャピラリー電気泳動を行なう装置の改良によりフラグメント解析が可能な塩基長幅が拡大するにつれて、反応産物の鎖長も長くすることができるため、検出できる遺伝子変異の標的数も増大する。標的遺伝子の数が多いほど遺伝子領域のカバレッジが高くなるため、がん診断の確度を高めることにも繋がる。その際、例えば解析可能な塩基長幅が500bpまで拡大し、検出遺伝子の標的数を100とすると、泳動度により区別するために一標的あたりに使用できる塩基長幅は5bpとなる。しかし、泳動したときの移動度として隣接する遺伝子標的を蛍光色素の標識で検出する場合に、その蛍光信号の重なりが変異型遺伝子の定量性を損なわせることに繋がってしまう、という課題がある。これまでの研究例のように最大でも20~30の標的遺伝子を1ランで測定する場合には起きえなかった蛍光強度の重なりが生じるため、その標的の並べ方(プライマーデザイン)に工夫が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は鋭意検討を行った結果、電気泳動の移動度として隣接する遺伝子標的の野生型と変異型の標識蛍光色素を異なるものに設定し、蛍光信号の重なりを無くすことで変異型遺伝子の量を定量的に測定できることを見出した。さらに、定量したい変異型の存在割合に応じてプライマー塩基長(移動度)の長さを設定(デザイン)することで、より多くの項目をできる限り接近させて隣接したプライマーで検出することが可能であることを見出した。
【0010】
したがって、本発明は以下の態様を包含する:
[1]一態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法を提供する。
【0011】
[2]別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法を提供する。
【0012】
[3]また別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を含み、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする、前項[1]に記載の方法に使用するための遺伝子分析用キットを提供する。
【0013】
[4]さらに別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を含み、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする前項[2]に記載の方法に使用するための遺伝子分析用キットを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より多くの遺伝子標的を同時に検出することが可能となる。標的の遺伝子配列の含有比を蛍光強度の大きさから定量的に求めることができ、がん診断に必要となる野生型に対する変異の存在比、又は遺伝子変異の頻度を定量することができる。上述した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一塩基伸長反応を用いた、複数の標的塩基配列の野生型に対する変異型の割合の定量測定における、キャピラリー電気泳動のフラグメント解析の説明図である。
図2】標的#1と標的#2を検出するためのプライマーの塩基長(すなわち電気泳動移動度)が近いため、標的#1と標的#2の野生型、変異型に標識された蛍光色素の蛍光信号が重なってしまう状態を示す説明図である。
図3】標的#1と標的#2を検出するためのプライマーの塩基長(すなわち電気泳動移動度)が離れているために、そして標的#1と標的#3を検出するためのプライマー塩基長が近くても、標的#1と標的#3の野生型、変異型に標識された蛍光色素の種類が異なるために、蛍光信号の重なりが無い状態を示す説明図である。
図4】キャピラリー電気泳動で検出される標識蛍光色素の蛍光信号をガウシアン関数と仮定した時に、どのくらいの電気泳動移動度(塩基長)で離れていれば蛍光強度ピーク比で何%に相当するかを説明する図である。
図5】遺伝子変異EGFR L858Rを標的とした時の野生型と変異型の蛍光信号の結果を示す図である。下段のAは、隣接する別の遺伝子標的プライマーが塩基長で2bp離れていると仮定した場合に、同じ蛍光信号の形状として重ね合わせて示した図である。下段のBは、隣接する別の遺伝子標的プライマーが塩基長が5bp離れていると仮定した場合に、同じ蛍光信号の形状として重ね合わせて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、一塩基伸長反応を用いた、複数の標的遺伝子の野生型に対する変異型の割合の定量測定における、キャピラリー電気泳動のフラグメント解析の説明図である。標的とする遺伝子配列110を鋳型として、配列(変異)ごとに塩基長(分子量)の異なる選択的プライマー111を用いて得られる一塩基伸長反応産物の電気泳動の移動度が変わるように、選択的プライマー111を設計する。ポリメラーゼ反応によって、遺伝子変異に対応する選択的プライマー111の3’末端位置に、末端塩基がアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)に対応する4色(4種)の蛍光色素で修飾されたddNTP 112が一塩基伸長反応で付与される(標識はA、G、C、T用の4種類)。ホルムアミド処理と熱変性で二本鎖DNAを一本鎖化し、3’末端の蛍光色素を蛍光検出することで遺伝子変異が特定される。以上のプロセスが一般的なフラグメント解析である。塩基長の異なる選択的プライマーによって、20種類以上の既知の遺伝子変異を検出できることがこれまでの研究例で示されている。このとき、プライマーの設計によって特定の長さの遺伝子配列を検出できることに加え、さらには、一塩基だけが変異している一塩基多型が検出できる。あるいは、遺伝子変異の一種である挿入(Insertion)及び欠損(Deletion)の検出も同じ原理で検出が可能であるため、本発明の適用範囲は蛍光色素で修飾されたddNTPを使用したフラグメント解析全般である。なお、従来技術では、図1の下段に示されるように、それぞれの標的塩基配列が、電気泳動の移動度として区別可能なように、隣接する標的塩基配列を検出するためのプライマーが、移動度として少なくとも4塩基長離れるように設計されていた。このように配置された場合、電気泳動のレンジには制限があることから、検出する項目数にも制限があった。
【0018】
図2は、標的#1と標的#2を検出するためのプライマー塩基長が近いため、標的#1と標的#2の野生型、変異型に標識された蛍光色素の蛍光信号が重なってしまう状態を示す説明図である。標的#1の野生型を、201で示す蛍光色素Aで標識し、標的#1の変異型を、202で示す蛍光色素Bで標識するとする。また、標的#2の野生型を、202で示す蛍光色素Bで標識し、標的#2の変異型を、201で示す蛍光色素Aで標識するとする。
【0019】
このとき、できるだけ多くの標的遺伝子を1ランで(1回の反応で)検出するために、標的#1のプライマーと標的#2のプライマーの塩基長を近づけた(塩基長の差が小さい)場合、図2の上段に示すように、ある塩基長を下回ると蛍光信号の重なり203が生じてしまう。ここでは、201で示す蛍光色素Aで標識された、標的#1の野生型と標的#2の変異型が重なり、さらに、202で示す蛍光色素Bで標識された、標的#1の変異型と標的#2の野生型が重なる状態が示されている。遺伝子の存在量は、蛍光信号のピーク強度や蛍光信号の積算値などが用いられる。そのため、蛍光信号の重なり203があると、その遺伝子の存在量の定量性は失われ、正しい遺伝子変異量が算出できなくなってしまう。
【0020】
図2の下段には、上段の現象で生じる、実際に観測される蛍光信号を示している。標的#1と標的#2のそれぞれに付いた蛍光色素から発せられる蛍光信号が重なって検出され、201で示す蛍光色素Aからの蛍光信号の合算信号204に関して、標的#2の変異型のピーク蛍光信号強度は、標的#1の野生型の蛍光信号の影響を受けて、想定よりも高く検出されていることになる。また、202で示す蛍光色素Bからの蛍光信号の合算信号205を見ると、標的#1の変異型のピーク蛍光信号強度は、標的#2の野生型の蛍光信号の影響を受けて、想定よりも高く検出されていることになる。この状態では、標的となる変異型遺伝子(例えば、腫瘍由来の変異型遺伝子)を正しく定量することができない。
【0021】
図3は、本発明の実施形態を示し、具体的には、標的#1と標的#2を検出するためのプライマーの塩基長(電気泳動の移動度)が離れているために、そして標的#1と標的#3を検出するためのプライマーの塩基長が近くても、標的#1と標的#3の野生型、変異型に標識された蛍光色素の種類が異なるために、蛍光信号の重なりが無い状態を示す説明図である。標的#1の野生型を、301で示す蛍光色素Aで標識し、標的#1の変異型を、302で示す蛍光色素Bで標識するとする。また、標的#2の野生型を、302で示す蛍光色素Bで標識し、標的#2の変異型を、301で示す蛍光色素Aで標識するとする。さらに、標的#3の野生型を、303で示す蛍光色素Cで標識し、標的#3の変異型を、304で示す蛍光色素Dで標識する。図2と異なるのは、標的#1と標的#2のプライマーの塩基長(電気泳動の移動度)が離れていることである。標的#2のプライマー305の塩基長が長く、図2で生じていた蛍光色素Aと蛍光色素Bの蛍光信号の重なりがなくなっている。標識#3では、できるだけ多くの標的遺伝子を1ランで検出する目的で、標的#1と標的#3のプライマーの塩基長を近づけている。しかし、標的#1の野生型及び変異型の蛍光色素はそれぞれ蛍光色素A(301)と蛍光色素B(302)であり、標的#3の野生型及び変異型の蛍光色素はそれぞれ蛍光色素C(303)と蛍光色素D(304)であるため、蛍光信号の重なり306は双方の蛍光信号の合算信号に影響がない、独立の蛍光信号として検出できる。このとき、野生型が1種、変異型が3種あるような遺伝子標的も考えられる。その場合、隣接する標的遺伝子の野生型の蛍光色素と、変異型が3種ある遺伝子標的の変異型の蛍光色素を異なるようにプライマーを設計し、配置すれば、蛍光信号の重なりがなく、その信号の区別が可能となり、野生型と変異型との区別及び/又はある遺伝子と別の遺伝子との区別が可能となる。
【0022】
したがって、一態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法を提供する。
【0023】
本発明は、一塩基伸長反応と電気泳動の組み合わせによる遺伝子分析方法に基づくものであり、このような遺伝子分析方法は、例えば非特許文献1及び2、特許文献1に記載のように当該技術分野で周知である。
【0024】
一塩基伸長反応は、蛍光色素が結合した基質(ジデオキシヌクレオチド三リン酸:ddNTP)の存在下において、標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーを用いて行われる。
【0025】
本発明において、標的塩基配列とは、検出(及び定量)が望まれる塩基配列を指す。例えば、標的塩基配列は、遺伝子変異を含む塩基配列であり、野生型と変異型とを区別して標的塩基配列を検出(及び定量)する。そのような遺伝子変異としては、一塩基多型(SNP)、挿入変異、欠損変異などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、標的塩基配列の変異型は、1種の変異型を含んでもよいし、複数種の変異型を含んでもよい。例えば、野生型と2~3種類の変異型が存在する遺伝子変異があり、そのような複数種の変異型も本発明に従って区別して検出(及び定量)することができる。
【0026】
なお、本明細書中、便宜的に「第1の」及び「第2の」という修飾語を使用して標的塩基配列を区別しているが、標的塩基配列は2種に限られるものではなく、n種の標的塩基配列がそれぞれ区別されることを意図している。
【0027】
本方法に供される被検試料は、標的塩基配列について検出しようとする試料であれば特に限定されるものではなく、デオキシリボ核酸(DNA)、例えばゲノムDNA、cDNA、及びリボ核酸(RNA)、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)、並びにそれらの断片が含まれる。本発明においては、被検試料として、例えばセルフリーDNA(cfDNA、血中を遊離しているDNA)、循環腫瘍DNA(ctDNA)を使用することが好ましい。試料からの核酸の調製は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。核酸の調製を行うために、多数のメーカーからキットが販売されており、目的とする核酸を簡便に精製することが可能である。
【0028】
また、一塩基伸長反応用プライマーを準備する。一塩基伸長反応用プライマーは、DNA又はRNAのいずれでもよく、被検試料及び標的塩基配列の種類、一塩基伸長反応に使用されるポリメラーゼの種類に応じて決定される。好ましくは、プライマーはDNAであり、被検試料としてDNA又はmRNAを鋳型とした一塩基伸長反応が行われる。
【0029】
本発明では、一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含む。プライマーは標的塩基配列ごとに必要であるため、検出対象の標的塩基配列の種類に応じた数のプライマーが設計される。プライマーは、例えば20種類以上(例として20~100種類)の、好ましくは50種類以上(例として50~100種類)の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを含む。
【0030】
プライマーは、それぞれ、標的塩基配列に特異的に結合する配列を有する、すなわち標的塩基配列に対して相補的な配列を有するように設計される。プライマーの塩基配列から、検出対象の標的塩基配列が決定される。また、プライマーの塩基長は、一塩基伸長反応の反応物の塩基長(サイズ)に影響し、したがってプライマーの塩基長から電気泳動の移動度が決定される。本発明においては、プライマーの塩基配列及び塩基長を適切に設計することが必要である。
【0031】
プライマーの設計手法は当技術分野で周知であり、本発明において使用可能なプライマーは、特異的なアニーリングが可能な条件を満たす、例えば特異的なアニーリングが可能な長さ及び塩基組成(融解温度)を有するように設計される。例えば、プライマーとしての機能を有する長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは15~50塩基であり、さらに好ましくは15~30塩基、例えば約20塩基である。また設計の際には、プライマーのGC含量とプライマーの融解温度(Tm)を確認することが好ましい。Tmの確認には、公知のプライマー設計用ソフトウエアを利用することができる。設計されたプライマーは、公知のオリゴヌクレオチド合成手法により化学合成することができるが、通常は、市販の化学合成装置を使用して合成される。
【0032】
プライマーは、電気泳動の移動度を調整するためのタグ(分子おもり)、例えば鎖間架橋された二重鎖DNAタグを有していてもよい。本発明者らは以前に、キャピラリー電気泳動法を用いたフラグメント解析手法を発展させ、同時に検出可能な遺伝子変異数を数十~数百種類へと拡張可能な解析手法を開発し、具体的には、プライマーに鎖間架橋された二重鎖DNAタグを連結して使用することにより、二重鎖DNAタグの長さの変更によりプライマーの塩基長を伸長して電気泳動距離を120bp以上に安定的に伸ばすことができ、同時に検出可能な遺伝子変異数を増やすことを可能とした。二重鎖DNAタグは、移動度で区別可能な長さを有し、少なくとも1つの鎖間架橋を有する。本発明において「鎖間架橋」とは、二重鎖DNAにおける一方の鎖と他方の鎖とが少なくとも1箇所において架橋されていることを意味する。そのような2つの鎖間を分子内架橋させる方法は、当技術分野で公知の方法であれば特に限定されるものではない。好ましくは、鎖間架橋は光架橋によるものである。鎖間架橋を有する二重鎖DNAタグは、電気泳動における移動距離(移動度:mobility)を規定する。すなわち、異なる長さの二重鎖DNAタグをプライマーに連結することによって、電気泳動において移動距離を変更することができる。キャピラリー電気泳動では、約600塩基長までの鎖長の核酸を検出することができるため、標的塩基配列に結合する部分のプライマーの鎖長(10~30塩基)を除いて、二重鎖DNAタグは、1~約590塩基長までの範囲の長さとすることができる。二重鎖DNAタグは、鎖間架橋を有する核酸であれば、その塩基配列は特に限定されるものではない。また、二重鎖DNAタグは、公知のオリゴヌクレオチド合成手法により化学合成することができるが、通常は、市販の化学合成装置を使用して合成される。
【0033】
本発明の方法では、蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質の存在下において、上述したプライマーを用いて一塩基伸長反応を行う。一塩基伸長反応は当技術分野で公知であり、典型的にはポリメラーゼを用いた一塩基伸長反応である。使用するポリメラーゼは、鋳型(被検試料)の種類及び使用するプライマーの種類によって選択される。例えば、DNA又はRNAを鋳型としたDNAプライマーを用いた一塩基伸長反応には、それぞれDNA依存性又はRNA依存性DNAポリメラーゼが使用される。
【0034】
一塩基伸長反応は当該技術分野において広く知られており、例えば非特許文献1等に、サイクル反応により効率的に1塩基を伸長させる方法などが説明されている。
【0035】
標的塩基配列が存在する場合には、この標的塩基配列にプライマーがハイブリダイゼーションし、プライマーの3’末端部分からポリメラーゼの合成反応によってヌクレオチドが基質として取り込まれる。この時、取り込まれるヌクレオチド(基質)として、例えばジデオキシヌクレオチド(ddNTP)を用いることにより、合成反応は一塩基伸長のみで終了する。
【0036】
本発明では、一塩基伸長反応の基質として、蛍光色素を有する基質を使用し、ここでその基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含む。蛍光色素は、基質が取り込まれたか否かを簡便に検出するため、又は取り込まれた塩基の種類を判定するために有用であり、当技術分野で公知の蛍光色素を使用することができる。蛍光色素としては、例えば限定されるものではないが、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、スルホローダミン(TR)、テトラメチルローダミン(TRITC)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、NED、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、5’-ヘキサクロロフルオレセインCE-ホスホロアミダイト(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、5’-テトラクロロフルオレセインCE-ホスホロアミダイト(TET)、ローダミン110(R110)、ローダミン6G(R6G)、VIC(登録商標)、ATTO系、Alexa Fluor(登録商標)系、Texas red、Cy系など、また泳動サイズにずれを生じない蛍光色素として、dR110(carboxy-dichloro rhodamine 110)、dR6G(dihydro rhodamine 6G)、dTAMRA(Tetramethyl rhodamine)、dROX(carboxy-X-rhodamine)などが挙げられる。例えば塩基の種類を判定しようとする場合には、4種類の塩基と参照用(参照ラダーDNAから塩基長を検出補正するため)の5種類を識別するために、異なる波長で励起かつ検出される5種類の蛍光色素を組み合わせて使用することができる。このような蛍光色素の種類や導入方法等に関しては、特に限定されることはなく、従来公知の各種手段を用いることができる。
【0037】
本発明では、蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する標的塩基配列について、第1の標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、一塩基伸長反応用プライマー及び一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される。具体的には、図3の標的#1と標的#3との検出のように、標的#1の野生型に起因する蛍光色素A301と標的#3の変異型に起因する蛍光色素D304とが異なるように、それぞれのプライマー及び基質の組み合わせが設計される。あるいは、図3において、標的#1の変異型に起因する蛍光色素B302と標的#3の野生型に起因する蛍光色素C303とが異なるように、それぞれのプライマー及び基質の組み合わせが設計される。これにより、蛍光信号の重なり306は双方の蛍光信号の合算信号に影響がない、独立の蛍光信号として検出できる(図3)。
【0038】
一実施形態では、蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する標的塩基配列について、第1の標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の標的塩基配列の野生型及び変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、一塩基伸長反応用プライマー及び一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される。これは、例えば、図3において、標的#1の野生型及び変異型に起因する蛍光色素A301及び蛍光色素B302と標的#3の野生型及び変異型に起因する蛍光色素C303及び蛍光色素D304とが異なるように、それぞれのプライマー及び取り込まれる基質の組み合わせが設計される。
【0039】
例えばキャピラリー電気泳動(CE)装置は、約500~600bp塩基長のレンジで核酸を検出することができるが、実際に定量的に使用できる電気泳動の範囲は約200~300塩基長である。従来技術では、電気泳動の移動度として少なくとも4塩基長の差を設けてプライマーを設計することが知られており、同時に検出可能な標的塩基配列の種類として50項目の検出が困難であった。本発明では、電気泳動の移動度の差が4塩基長未満であっても、蛍光信号の重なりによる影響を受けずに、同時に複数の、例えば20種類以上(例として20~100種類)の、好ましくは50種類以上(例として50~100種類)の標的塩基配列を定量的に検出することが可能となる。
【0040】
別の実施形態では、蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する標的塩基配列について、標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて電気泳動の移動度の差を調整するように、一塩基伸長反応用プライマーが設計される。電気泳動の移動度の差は、例えば、プライマーの塩基長の調整により、及び/又はプライマーに付加するタグ(分子おもり)の調整により行うことができる。この実施形態について、図4を用いて説明する。
【0041】
図4は、キャピラリー電気泳動で検出される標識蛍光色素の蛍光信号をガウシアン関数と仮定した時に、どのくらいの電気泳動移動度(塩基長)で離れていれば蛍光強度ピーク比で何%に相当するかを説明する図である。キャピラリー電気泳動で検出される標識蛍光色素の蛍光信号を下記式(1)のガウシアン関数f(x)と仮定する。
【数1】
ここで、σは分散、μは平均を指す。下記式(2)の半値全幅FWHM:
【数2】
を1bpとした時の信号形状401が図4に示されている。蛍光強度のピーク比で考えた時、中心ピークに比して10%、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%の信号値が出ているのが、電気泳動移動度(塩基長)が中心からそれぞれ0.91bp、1.29bp、1.58bp、1.82bp、2.04bp、2.23bp離れた塩基位置となっている。実際には、蛍光信号のテイリングによってガウシアン関数そのものになることは無く、その半値幅も広がることには注意が必要である。
【0042】
野生型に対する変異型の存在比を定量的に測定するために、隣接する標的塩基配列のためのプライマーの移動度として塩基長でどれくらい離れる必要があるかを、この図4に示す関係表から決めることができる。例えば、野生型に対する変異型の存在比1%を検出できる検出感度で定量測定をする際は、変異1%の蛍光信号ピークに、隣接する標的の蛍光信号が重ならないようにする必要がある。信号に影響が無いレベルとして、変異1%の蛍光信号の1/100、すなわち0.01%相当のピーク比(感度)と考えると、塩基長で1.82bp以上離れる必要がある。ガウシアン関数がグラフの両側に広がることを考えると、隣接する標的塩基配列のためのプライマーの塩基長としては、1.82bpの2倍の、3.65bp以上離れるように、隣接するプライマーを設計(デザイン)することが好ましいと決定できる。なお、電気泳動の泳動条件(注入電圧、注入時間、泳動電圧、泳動時間、温度など)やキャピラリー電気泳動装置そのものの仕様によっても蛍光信号の形状は変化する(理論的にはいずれもガウシアン関数であるがその分散や半値全幅などは異なる)。
【0043】
このように、野生型に対する変異型の存在比を予め予測できる場合には、その存在比を基に蛍光信号に影響がないようにプライマーを設計することができる。例えば、野生型に対する変異型の含有比が0.01%以上であると予め予測できる場合には、0.01%の1/100(0.0001%)に相当する4.46塩基分が離れるようにプライマーを設計すれば、蛍光信号に影響がないと考えられる。したがって、一実施形態において、野生型に対する変異型の含有比が0.01%から10%の範囲である第1の標的塩基配列について、第2の標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、第1の標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、電気泳動の移動度としての差が少なくとも4.46~3.16塩基となるように、一塩基伸長反応用プライマーが設計される。また例えば、野生型に対する変異型の含有比が0.1%から10%の範囲である第1の標的塩基配列について、第2の標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーが、第1の標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、電気泳動の移動度としての差が少なくとも4.08~3.16塩基となるように、一塩基伸長反応用プライマーが設計される。複数の標的遺伝子の野生型に対する変異型の割合を定量測定する従来の方法では、典型的には5%程度までの変異型アレル頻度検出とされているが、本発明の遺伝子分析方法を用いることで10%未満の定量測定を効果的に行うことができる。
【0044】
一塩基伸長反応後、得られた反応物を電気泳動に供して解析する。電気泳動は、電気泳動によるフラグメント解析ができる測定方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、キャピラリー電気泳動(CE)、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)のような微小流路における電気泳動を利用することができる。好ましい実施形態では、電気泳動はキャピラリー電気泳動(CE)である。
【0045】
電気泳動、例えばCEは、導入された成分を荷電、大きさ及び形状などに基づく移動度の差異で分離する手法である。移動度に基づいて、標的塩基配列の種類(プライマーの種類に基づく)を同定することができる。また、蛍光色素のシグナルに基づいて標的塩基配列の有無又は標的塩基配列における特定の塩基の種類(一塩基伸長反応によって取り込まれた基質の種類に基づく)、例えば野生型と変異型を判別することができる。
【0046】
一実施形態において、本発明に係る方法の標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程は、蛍光強度の大きさに基づいて標的塩基配列の野生型と変異型の含有比を定量する工程を含む。この場合には、例えばがん診断に必要となる野生型配列に対する変異型配列の存在比、又は、遺伝子変異の頻度を定量することができる。一実施形態では、分析対象の複数の標的塩基配列が、野生型配列及び変異型配列を含み、この野生型配列に対する変異型配列の含有比が0.01%から10%の範囲、例えば0.01%から1%の範囲、さらには0.01%から0.1%の範囲である場合に、標的塩基配列について分析を行うことができる。このようにして、標的塩基配列について定量的に遺伝子分析を行うことができる。
【0047】
定量的に遺伝子分析を行うことが望まれる標的塩基配列が含まれる場合には、野生型と変異型の含有比が定量される標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーは、他の一塩基伸長反応用プライマーよりも短い塩基長を有するように設計されてもよい。フラグメント解析の性質上、電気泳動の分解能は長塩基になるほど下がる傾向があるため、より正確な定量性が求められる標的遺伝子に短塩基プライマーを用いて、検出精度を向上させることができる。
【0048】
別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を用いた一塩基伸長反応を行なう工程、
前記一塩基伸長反応の反応物を電気泳動に供する工程、
前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含む遺伝子分析方法であって、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
前記蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する前記一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする遺伝子分析方法を提供する。
【0049】
本発明のこの態様は、上記態様の実施形態と同様に実施することができる。一態様において、蛍光強度を測定する際に電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する標的塩基配列について、第1の標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、一塩基伸長反応用プライマー及び一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計され得る。
【0050】
上述した本発明に係る遺伝子分析方法は、必要な構成要素を含む遺伝子分析用キットにより、簡便かつ迅速に実施することができる。
【0051】
したがって、別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を含み、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、第1の前記標的塩基配列の野生型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素と、第2の前記標的塩基配列の変異型の一塩基伸長反応によって取り込まれる基質の蛍光色素とが異なるように、前記一塩基伸長反応用プライマー及び前記一塩基伸長反応用の基質の組み合わせが設計される
ことを特徴とする本発明に係る遺伝子分析方法に使用するための遺伝子分析用キットを提供する。
【0052】
また別の態様において、本発明は、
標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、
蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質と
を含み、
前記一塩基伸長反応用プライマーは、2種以上の標的塩基配列を検出するために異なる塩基配列及び塩基長を有するプライマーを2種以上含み、
前記蛍光色素を有する一塩基伸長反応用の基質は、異なる蛍光色素を有する2種以上の基質を含み、
電気泳動の移動度として隣接する一塩基伸長反応の反応物が由来する前記標的塩基配列について、前記標的塩基配列の野生型に対する変異型の含有比に応じて前記電気泳動の移動度の差を調整するように、前記一塩基伸長反応用プライマーが設計される
ことを特徴とする本発明に係る遺伝子分析方法に使用するための遺伝子分析用キットを提供する。
【0053】
本発明に係るキットは、上記構成要素に加えて、反応液を構成するバッファー、酵素類(ポリメラーゼ、逆転写酵素など)、校正用の標準試料などを含んでもよい。一塩基伸長反応に使用するプライマー及び基質をキットとして提供することにより、遺伝子分析をより迅速かつ簡便に行うことが可能となる。
【0054】
以下に実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のために提供するものであり、本出願において開示する発明の範囲を限定したり制限したりするものではない。
【0055】
<実施例>
がん関連の遺伝子変異を含む標準サンプルとして、OncoSpan DNA Reference Standard(Horizon)を使用し、がんドライバー遺伝子の一種であるEGFR L858を標的遺伝子とした。EGFR L858の変異は、858番目のロイシン(L:CG)がアルギニン(R:CG)に一塩基置換した配列EGFR L858Rである。最初に、EGFR L858野生型(EGFR L858WT)、及び、変異型(L858R)の遺伝子を含む上記標準サンプルを鋳型にして、クローニング用のPCRを実施した。PCR産物は大腸菌に形質転換してLB培地にて培養後、コロニーダイレクトPCRで増幅した。BigDye Terminator Sequencing Kit(Thermo Fisher Scientific社)を用いてシーケンス反応を実施し、精製後、ジェネティックアナライザSeqStudioにより配列を確認した後、プラスミドを抽出した。
【0056】
抽出したプラスミドを鋳型(標的となる腫瘍由来の遺伝子配列)として、以下の表に示すEGFR L858プライマー0.2μM、DNAポリメラーゼ1U、蛍光色素で修飾されたddNTP(T標識:ROX-ddUTP、G標識:R110-ddGTP)(パーキンエルマー社)をそれぞれ混合し、サーマルサイクラーで[96℃×10秒→50℃×5秒→60℃×30秒]×25サイクルの条件で一塩基伸長反応を実施した。標的となる鋳型DNAの濃度は、野生型:変異型=100fmol:1fmolとした(変異型含有比1%)。
【0057】
【表1】
【0058】
一塩基伸長反応後、未反応の基質である蛍光標識ddNTPによる干渉を防ぐために、脱リン酸化反応(SAP)処理を実施した。反応産物10μLにSAP1μLを添加し、37℃で1時間反応させた後,75℃で15分間反応させた。このSAP処理後のサンプルとサイズマーカーとHi-Di Formamideを混合し、95℃×5分の熱処理後、CEシーケンサDS3000(日立ハイテク)を用いてフラグメント解析を実施した。
【0059】
図5は、遺伝子変異EGFR L858Rを標的とした時の野生型と変異型の蛍光信号強度の結果を示す図である。EGFR L858の野生型の蛍光信号501と、EGFR L858の変異型の蛍光信号502は、野生型:変異型=100fmol:1fmolに相当する蛍光信号強度が検出されている。この結果をもとに、以下を仮定する。
【0060】
図5の下段Aは、別の遺伝子標的プライマー由来の産物を泳動したときに隣接して塩基長として2bp離れていると仮定した場合に、同じ蛍光信号の形状として重ね合わせとして示した図である。隣接する別の遺伝子標的プライマーの塩基長が2bp離れている場合の野生型の蛍光信号503と、隣接する別の遺伝子標的プライマーの塩基長が2bp離れている場合の変異型の蛍光信号504を見ると、後者の変異型の蛍光信号は、EGFR L858の野生型の蛍光信号501と同じ蛍光色素である場合に、蛍光強度ピークが重なるため、蛍光強度ピークの値が正しく検出されないことになる。この場合には、蛍光信号が重なる蛍光信号502と503、及び蛍光信号501と504が、異なる蛍光色素に由来するものとすることによって、すなわちそれぞれのプライマーに取り込まれる塩基(ddNTP)を異なる蛍光色素で標識する(例えば、図3の標的#1と標的#3のように標識する)ことによって、それぞれの蛍光信号を定量可能に検出することができる。
【0061】
あるいは、図5の下段Bに示すように、別の遺伝子標的プライマー由来の産物を泳動したときに隣接して塩基長として5bp離れるように各プライマーを設計した場合に、同じ蛍光信号の形状として重ね合わせとして示した図である。隣接する別の遺伝子標的プライマーの塩基長が5bp離れている場合の野生型の蛍光信号505と、隣接する別の遺伝子標的プライマーの塩基長が5bp離れている場合の変異型の蛍光信号506では、EGFR L858の野生型の蛍光信号501ともEGFR L858の変異型の蛍光信号502とも重ならないため、蛍光強度ピークの値は正しく検出されることになる。
【0062】
このように、泳動した場合に隣接する遺伝子標的プライマーの蛍光色素を異なるものにする、及び/又は遺伝子標的プライマーの塩基長を適切に設定(デザイン)することで、相互に影響がない、遺伝子標的の定量測定ができることになる。定量したい変異型の割合に応じてプライマー塩基長の長さを設定(デザイン)することで、より多くの項目(標的塩基配列)をできる限りで接近させて隣接したプライマーで検出することを可能とする。
【0063】
なお、上記の実施例で使用した蛍光色素は、x-ローダミン(ROX)、ローダミン110(R110)を使用しているが、本発明でいう蛍光色素はこの限りではなく、一般に核酸プローブに標識する蛍光色素を使用すれば良い。ローダミン6G(R6G)やテトラメチルローダミン(TAMRA)のような他のローダミンの誘導体以外でも、例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類であるフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)や、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、Texas red等が挙げられる。使用するキャピラリー電気泳動の装置に搭載されるレーザー光の励起波長に応じて、蛍光色素を任意に決めることが可能である。
【0064】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
110:標的とする塩基配列(鋳型)
111:標的ごとに塩基長の異なるプライマー
112:蛍光色素で修飾されたddNTP
201:蛍光色素A
202:蛍光色素B
203:蛍光信号の重なり
204:蛍光色素Aからの蛍光信号の合算信号
205:蛍光色素Bからの蛍光信号の合算信号
301:蛍光色素A
302:蛍光色素B
303:蛍光色素C
304:蛍光色素D
305:標的#2のプライマー(隣接するプライマーよりも塩基長が長い)
306:蛍光信号の重なり
401:半値全幅を1bpとした時の信号形状
501:EGFR L858の野生型の蛍光信号
502:EGFR L858の変異型の蛍光信号
503:隣接する別の遺伝子標的プライマーと塩基長が2bp離れている場合の野生型の蛍光信号
504:隣接する別の遺伝子標的プライマーと塩基長が2bp離れている場合の変異型の蛍光信号
505:隣接する別の遺伝子標的プライマーと塩基長が5bp離れている場合の野生型の蛍光信号
506:隣接する別の遺伝子標的プライマーと塩基長が5bp離れている場合の変異型の蛍光信号
【配列表フリーテキスト】
【0066】
配列番号1:DNA(合成オリゴヌクレオチド)
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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