(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122138
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】無線伝送装置、無線伝送方法およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
H04L 49/9057 20220101AFI20240902BHJP
H04L 47/6275 20220101ALI20240902BHJP
H04L 47/43 20220101ALI20240902BHJP
H04L 45/243 20220101ALI20240902BHJP
H04W 28/02 20090101ALI20240902BHJP
H04W 72/0457 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
H04L49/9057
H04L47/6275
H04L47/43
H04L45/243
H04W28/02
H04W72/0457 110
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029508
(22)【出願日】2023-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 崇
(72)【発明者】
【氏名】小川 嘉史
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030GA02
5K030HA08
5K030HC09
5K030JA05
5K030JL01
5K030KA01
5K030KA03
5K030LA03
5K030LB11
5K067AA14
5K067BB21
5K067EE02
(57)【要約】
【課題】複数の無線回線経由で一つのデータを分割した複数のデータフレームを受信する無線伝送装置において発生し得る送信遅延を抑制する。
【解決手段】
複数のデータフレームの分割用ヘッダに含まれる優先度に応じて組立メモリと順序メモリに振り分ける。高優先度のデータフレームは組立メモリにて組立処理が行われてパケットが生成され、低優先度のデータフレームは順序メモリにて並べ替え処理が行われる。高優先度に係るデータフレームに基づくパケットは組立処理後に所定回線へ送出され、低優先度に係るデータフレームは並べ替え処理後に所定回線へ順次送出される。高優先度に係るデータフレームは低優先度に係るデータフレームの処理を待つことなく所定回線へ送出されるため、送信遅延を抑制することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのデータを分割してなる複数のデータフレームを複数の無線回線経由で受信する無線受信部と、
前記複数のデータフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる優先度に応じて組立処理を実行してパケットを生成する組立メモリと、前記複数のデータフレームについて並べ替え処理を行う順序メモリとに前記複数のデータフレームを振り分ける組立部と、
前記組立メモリから読み出された前記パケット、または、前記順序メモリから読み出された前記複数のデータフレームを選択的に所定回線へ送出する制御部と、
を具備した無線伝送装置。
【請求項2】
前記組立部は、前記優先度として第一優先度が設定されている前記複数のデータフレームを前記組立メモリに振り分けて前記組立処理を実行して前記パケットを生成し、前記優先度として前記第一優先度より低い第二優先度が設定されている前記複数のデータフレームを前記順序メモリに振り分けて前記並べ替え処理を実行し、前記制御部は、前記第一優先度に係る前記パケットを前記組立メモリから読み出して前記所定回線に送出し、前記第二優先度に係る前記複数のデータフレームを前記順序メモリから読み出して前記所定回線に順次送出する、請求項1に記載の無線伝送装置。
【請求項3】
前記組立部において、前記順序メモリから読み出された前記複数のデータフレームの前記分割用ヘッダをフラグメント用ヘッダに付け替える、請求項1に記載の無線伝送装置。
【請求項4】
一つのデータを分割してなる複数のデータフレームを複数の無線回線経由で受信し、
前記複数のデータフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる第一優先度に応じて組立処理を実行してパケットを生成し、
前記複数のデータフレームに付与された前記分割用ヘッダに含まれる前記第一優先度より低い第二優先度に応じて並べ替え処理を実行し、
前記第一優先度に係る前記パケットを前記組立処理の実行後に所定回線へ送出し、
前記第二優先度に係る前記複数のデータフレームを前記並べ替え処理の実行後に前記所定回線へ順次送出する、
無線伝送方法。
【請求項5】
前記一つのデータは、無線伝送の全周波数帯域に応じた帯域制御後に固定長のデータフレームに分割して、前記複数のデータフレームとされて前記複数の無線回線に振り分けて送信される、請求項4に記載の無線伝送方法。
【請求項6】
一つのデータを分割してなる複数のデータフレームの分割用ヘッダに含まれる優先度を検出し、
前記優先度として第一優先度が設定されている前記複数のデータフレームに組立処理を実行してパケットを生成し、
前記第一優先度に係るパケットを前記組立処理後に出力し、
前記優先度として前記第一優先度より低い第二優先度が設定されている前記複数のデータフレームに並べ替え処理を実行し、
前記第二優先度に係る前記複数のデータフレームを前記並べ替え処理後に順次出力する、
データ処理方法。
【請求項7】
前記一つのデータは分割順序に従って固定長のデータフレームに分割されており、前記組立処理は前記分割順序に応じて前記複数のデータフレームを組み立てる、請求項6に記載のデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフィックボンディングによってデータ伝送を行う無線伝送装置、無線伝送方法およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線伝送装置間で複数の無線回線を介して大容量のデータを伝送するとき、元のデータを分割して送信し、受信側で分割データを所定順序に組み立てて元のデータを復元することが行われている。特許文献1は、送信側の無線伝送装置にて元のデータを複数の分割データに分けて送信し、受信側の無線伝送装置にて分割データの識別情報に関連付けられた複数の組立メモリに分割データを振り分けて元のデータを再構成する技術を開示している。特許文献2は、無線伝送システムにおいてパケットの優先度に応じて高優先パケットと低優先パケットに分類し、送信側で高優先パケットは無線伝送リンクで送信するとともに、低優先パケットは固定長のセルに分割して無線伝送リンクで送信し、受信側で低優先パケットのセルを分割前の低優先パケットに復元する技術を開示している。特許文献3は、フレーム分割処理を伴う伝送システムにおいて、分割回路は優先度別のキューを有しており、入力フレームを分割サイズに応じて分割して複数の分割フレームを生成し、優先度判定基準に基づいて判定した入力フレームの優先度に対応するキューに分割振分し、優先度別のキューから優先制御アルゴリズムに基づいてフレーム読出を行う技術を開示している。特許文献4は、ストリーム配信方法において、一つのコンテンツのストリームデータが分割パケットで転送されても全てのパケットが揃うまで待つことなく、個々のパケット単位で転送処理を行い、高速かつ大容量なストリーム配信を実現する技術を開示している。
【0003】
パケット伝送ネットワークにおいて、無線回線を介してデータを伝送する場合、1つの無線回線のみでは伝送できる容量が小さいので、複数の無線回線を束ねて仮想的に1本の無線回線として伝送容量を拡張している。つまり、データを伝送する際に複数の分割データを複数の無線回線に分散させることによって、無線回線全体として伝送容量を確保し、大容量データを一括伝送することが可能となる。複数の無線回線を仮想的に一纏めした仮想的な回線でデータ伝送することをトラフィックボンディングという。トラフィックボンディングでは、データ伝送に係るパケットを複数のデータフレームに分割し、当該データフレームを無線回線にラウンドロビン方式にて振り分けることによって、複数の無線回線を束ねた無線帯域を最大限に活用して大容量伝送を可能にする。近年、パケット伝送において時刻同期や第5世代通信システム(5G)など低遅延が要求されるシステムが増加しているため、トラフィックボンディング技術は有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-134251号公報
【特許文献2】再公表WO2013/111772号公報
【特許文献3】特開2007-288491号公報
【特許文献4】特開2002-118589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
元のデータを分割した複数の分割データを受信する場合、受信側で複数の分割データを所定順序で組み立てて元のデータを復元し、或いは、個別のデータの優先度に応じて並べ替える必要がある。しかし、上述の技術では、データ組立とデータ並べ替えが統一されておらず、使用可能な無線回線数が制限されている場合、低優先データが無線回線を占有すると高優先データの送信遅延が発生するという課題がある。
【0006】
上記の課題について、特許文献1を例に取って説明する。
図1は、従来技術に係る無線伝送システム100を示しており、無線伝送装置10と無線伝送装置20が4つの無線回線L1~L4を介して配置されている。無線伝送装置10及び無線伝送装置20は通信事業者のネットワークに係るユーザ回線300および301(例えば、イーサネット(登録商標))に接続されており、ユーザデータを送受信している。4つの無線回線L1~L4に対応して、無線伝送装置10には4つのアンテナ101~104が設置され、無線伝送装置20には4つのアンテナ201~204が設置されている。
【0007】
図2は、無線伝送装置10(送信側)の構成例を示し、ユーザ回線300から受信したユーザデータをパケットとして受信するともに無線回線のトータルな帯域情報に応じた伝送レートするように帯域制限する帯域制御部11と、ユーザデータを固定長のデータフレームに分割する分割部12と、無線回線L1~L4の無線帯域に従ってデータフレームを振り分ける回線振分部13と、無線送信部14_1~14_4と、を具備する。
図3は、無線伝送装置20(受信側)の構成例を示し、無線回線L1~L4を介して送信されたデータフレームを受信する無線受信部21_1~21_4と、複数のデータフレームを組立てて元のパケットを復元する組立部22と、パケットの優先制御を行う制御部23と、を具備する。組立部22は、分割データフレームを所定の順序で組み立てる組立メモリ221(高優先度用組立メモリ221_1、低優先度用メモリ221_2)と、複数のデータフレームのヘッダ情報に設定されたユーザデータの優先度に応じてデータフレームを組立メモリ221_1又は221_2に振り分けるメモリ振分部222と、を具備する。
【0008】
図2に示すように送信側の無線伝送装置10にてユーザデータが分割部12で分割されてデータフレームが送信され、
図3に示すように受信側の無線伝送装置20においてデータフレームが組立部22にて組み立てられて元のデータが復元される。組立部22は高優先データフレーム用の組立メモリ221_1と低優先データフレーム用の組立メモリ221_2を具備しており、組立完了した低優先データフレーム(低1)を組立メモリ221_2から読み出している間に高優先データフレーム(高2)の組み立てが組立メモリ221_1にて完成していても、ユーザ回線301が低優先データフレームで占有されていることから読み出しができず、その結果、高優先データフレームの送信遅延が生じる。
【0009】
上記の送信遅延について、
図7のデータフレーム入出力タイミング図を用いて説明する。
図7の上側の図面は組立部22へのデータフレーム入力タイミングを時系列で示している。高優先データフレームは2分割されており、例えば、高優先データフレーム「高1」は「高1-1」、「高1-2」、高優先データフレーム「高2」は、「高2-1」、「高2-2」に夫々分割される。低優先データフレームは4分割されており、例えば、低優先データフレーム「低1」は、「低1-1」、「低1-2」、「低1-3」、「低1-4」に分割されている。
図7の下側の図面は制御部23のデータフレーム出力タイミングを時系列で示している。最初に、組立メモリ221_1にて高優先データフレーム「高1-1」、「高1-2」から高優先データフレーム「高1」への組み立てが完了すると、制御部23は高優先データフレーム「高1」をユーザ回線301へ出力する。次に、組立メモリ221_2にて低優先データフレーム「低1-1」、「低1-2」、「低1-3」、「低1-4」から低優先データフレーム「低1」への組み立てが完了すると、組立メモリ221_1にて高優先データフレーム「高2-1」が入力しているにも拘わらず、制御部23は低優先データフレーム「低1」をユーザ回線301へ出力する。その後、組立メモリ221_1に高優先データフレーム「高2-2」が入力され、既に入力した高優先データフレーム「高2-1」との組み立てが完了しても、制御部23の低優先データフレーム「低1」を出力完了を待つ必要があり、当該出力完了後に、制御部23は高優先データフレーム「高2」をユーザ回線301に出力することになる。このように、低優先データフレーム「低1」によりユーザ回線301が占有されている間、高優先データフレーム「高2」の送信遅延が発生する。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決する無線伝送装置、無線伝送方法およびデータ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、一つのデータを分割してなる複数のデータフレームを複数の無線回線経由で受信する無線受信部と、複数のデータフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる優先度に応じて組立処理を実行してパケットを生成する組立メモリと、複数のデータフレームについて並べ替え処理を行う順序メモリとに複数のデータフレームを振り分ける組立部と、組立メモリから読み出されたパケット、または、順序メモリから読み出された複数のデータフレームを選択的に所定回線へ送出する制御部と、を具備した無線伝送装置である。
【0012】
本発明の第二の態様は、一つのデータを分割してなる複数のデータフレームを複数の無線回線経由で受信し、複数のデータフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる第一優先度に応じて組立処理を実行してパケットを生成し、複数のデータフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる第一優先度より低い第二優先度に応じて並べ替え処理を実行し、第一優先度に係るパケットを組立処理実行後に所定回線へ送出し、第二優先度に係る複数のデータフレームを並べ替え処理実行後に所定回線へ順次送出する、無線伝送方法である。
【0013】
本発明の第三の態様は、一つのデータを分割してなる複数のデータフレームの分割用ヘッダに含まれる優先度を検出し、優先度として第一優先度が設定されている複数のデータフレームの組立処理を実行してパケットを生成し、第一優先度に係るパケットを組立処理後に出力し、優先度として第一優先度より低い第二優先度が設定されている複数のデータフレームに並べ替え処理を実行し、第二優先度に係る複数のデータフレームを並べ替え処理後に順次出力する、データ処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一つのデータを分割してなる複数のデータフレームについて高優先度が設定されている場合に組立処理後にパケットして出力し、低優先度が設定されている場合に複数のデータフレームを並べ替えて順次出力するため、低優先度に係る複数のデータフレームの処理を待つことなく、高優先度に係るパケットを出力することができるため、送信遅延の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】無線伝送システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】無線伝送システムにおいて、受信側の無線伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】無線伝送システムにおいて、送信側の無線伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る受信側の無線伝送装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る無線伝送システムを示すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る受信側の無線伝送装置の詳細な構成例を示すブロック図である。
【
図7】受信側の無線伝送装置において発生し得る高優先データフレームの送信遅延を説明するデータフレームの入出力タイミング図である。
【
図8】本発明の一実施形態による受信側の無線伝送装置におけるデータフレームの入出力タイミング図である。
【
図9】本発明の一実施形態による受信側の無線伝送装置の処理過程を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態による受信側の無線伝送装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の一実施形態による受信側の無線伝送装置のソフトウェア構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る無線伝送装置、無線伝送方法およびデータ処理方法について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図4は、本発明の一実施形態に係る無線伝送装置1を示すブロック図である。本実施形態は、トラフィックボンディングを適用した無線伝送装置に関する。無線伝送装置1は、通信部2と、組立メモリ3と、順序メモリ4と、メモリ振分部5と、を具備する。無線伝送装置1は、トラフィックボンディングの受信側に相当し、送信側の無線伝送装置(不図示)から1つのデータが複数の分割データに分割されて送信され、各分割データの識別情報とともに受信する。
【0018】
組立メモリ3は、分割データに含まれる識別情報に対応付けられたメモリである。送信側の無線伝送装置にて1つのデータを複数の分割データに分割した順序で、複数の分割データを組立て元のデータを復元する。例えば、識別情報に優先度(高優先度、低優先度)が設定されている場合、組立メモリ3は主として高優先度の分割データを組立てて元のデータを復元する。
【0019】
順序メモリ4は、分割データに含まれる識別情報に関連付けられたメモリである。順序メモリ4は、送信側の無線伝送装置にて1つのデータを複数の分割データに分割した順序で並べ替えを行う。メモリ振分部5は、分割データに設定された識別情報を用いて、各分割データを組立メモリ3または順序メモリ4に振り分ける。
【0020】
上述のように、本実施形態に係る無線伝送装置1は、1つのデータを分割してなる分割データの識別情報に関連付けられた組立メモリ3と順序メモリ4を具備している。メモリ振分部5は、分割データに設定された識別情報を用いて、組立メモリ3または順序メモリ4の何れかに分割データを振り分ける。すなわち、組立メモリ3と順序メモリ4において、組立てまたは並べ替えが並列的に分割データに対して行われる。このため、本実施形態に係る無線伝送装置1を用いることにより、一部の分割データが受信できないことに起因して生じる組立遅延を低減することができる。これにより、無線伝送装置間のデータ伝送効率を維持しつつ、通信品質を向上させることができる。
【0021】
図5は、本発明の一実施形態に係る無線伝送システムの構成例を示すブロック図であり、
図1に示す構成例と類似しているが、受信側の無線伝送装置1に相当する無線伝送装置30を具備している。無線伝送システム200は、無線伝送装置10と無線伝送装置30を具備しており、夫々、ユーザ回線300と301に接続される。無線伝送装置10、30は4つの無線回線L1~L4を介して通信接続されている。無線伝送装置10に搭載される4つのアンテナ101~104と無線伝送装置30に搭載される4つのアンテナ201~204は、無線回線L1~L4を介して電波を送受信する。なお、無線回線の数は「4」に限定されるものではなく、3つの無線回線や5つ以上の無線回線を設けてもよい。本実施形態では、説明の便宜上、無線伝送システム200に4つの無線回線L1~L4が設けられているものとする。
【0022】
上述の無線伝送装置10、30において、1つのトラフックに対して4つの無線回線L1~L4をボンディングして無線通信を行う。つまり、無線伝送装置10、30は複数の無線回線をボンディングすることによって比較的大きな伝送容量を確保する。
【0023】
また、無線伝送装置10は、ユーザ回線300を介してユーザデータをパケットとして受信し、当該パケットを複数のデータフレームに分割する。ここで、「パケット」は本実施形態では「データ」に相当し、「データフレーム」は「分割データ」に相当する。また、以下の説明において、「ユーザデータ」を単に「パケット」と称するものとする。
【0024】
無線伝送装置10は、無線回線L1~L4のトータルの帯域情報に基づいて、ユーザ回線300を介して受信したユーザデータの帯域制御を行う。無線伝送装置10は、帯域制御がなされたユーザデータを複数のデータフレームに分割し、無線回線L1~L4の何れかを介して無線伝送装置30へ送信する。無線伝送装置30は、無線回線L1~L4を介して無線伝送装置10から複数のデータフレームを受信する。無線伝送装置30は、複数のデータフレームの組立てまたは並べ替えを行って出力する。
【0025】
図2は、本実施形態の無線伝送装置10(無線伝送システム200の送信側の無線伝送装置10)の構成例を示すブロック図であり、前述の無線伝送システム100(
図1)の送信側の無線伝送装置10と同様である。本実施形態において、無線伝送装置10は、ユーザ回線300を介して受信したユーザデータを無線伝送装置30へ送信するものであり、帯域制御部11、分割部12、回線振分部13、無線送信部14_1~14_4を具備する。
【0026】
帯域制御部11は、ユーザ回線300を介して受信したユーザデータをパケットとして受信し、無線回線L1~L4のトータルの帯域情報に従ってユーザデータに対して帯域制御を行う。帯域制御部11は、帯域制御がなされたユーザデータを分割部12へ出力する。分割部12は、帯域制御がなされたユーザデータを固定長のデータフレームに分割する。分割部12は、複数のデータフレームを生成するとともに、各データフレームに分割用ヘッダを付加する。分割用ヘッダには、データフレームの優先度、データの順序を示すシーケンスナンバが含まれる。
【0027】
回線振分部13は、無線回線L1~L4の無線帯域に従って、分割部12において分割された複数のデータフレームを無線回線L1~L4に振り分ける。具体的には、回線振分部13は、複数のデータフレームを無線回線L1~L4に対応する無線送信部14_1~14_4へ出力する。無線伝送装置10は、トラフィックボンディングを適用しているため、回線振分部13は複数のデータフレームを無線回線L1~L4の無線帯域に合わせてラウンドロビン方式にて無線回線L1~L4に振り分ける。これによって、無線伝送装置10は、無線帯域を最大限に活用して大容量の無線伝送を実現する。
【0028】
無線送信部14_1~14_4は無線回線L1~L4に対応して設けられ、回線振分部13によって振り分けられた複数のデータフレームを無線回線L1~L4経由で無線伝送装置30へ送信する。具体的には、無線送信部14_1は無線回線L1に対応し、無線回線L1に振り分けられたデータフレームを無線伝送装置30へ送信する。同様に、無線送信部14_2~14_4は無線回線L2~L4に対応し、無線回線L2~L4に振り分けられたデータフレームを無線伝送装置30へ送信する。
【0029】
図6は、本発明の一実施形態に係る受信側の無線伝送装置の詳細な構成例を示すブロック図である。無線伝送装置30は、送信側の無線伝送装置10(
図2参照)から複数のデータフレームを受信するものであり、
図3に示す無線伝送装置20における組立部22と制御部23を組立部32と制御部33に変更している。無線伝送装置30は、無線受信部21_1~21_4、組立部32、制御部33、を具備する。無線伝送装置30は、複数のデータフレームを無線伝送装置10において分割される前のパケットに組み立て、または、複数のデータフレームの並べ替えを行って、ユーザ回線301を介してパケットを順次送信する。
【0030】
詳細には、無線受信部21_1~21_4は、無線回線L1~L4に対応して設けられ、無線回線L1~L4を介して無線伝送装置10から送信された複数のデータフレームを受信して、組立部32へ出力する。組立部32は、組立メモリ321、メモリ振分部322、順序メモリ323、ヘッダ付替部324、を具備する。組立部32は、データフレームに付加された分割用ヘッダに基づいて、複数のデータフレームの並べ替えと組立て、又は、並べ替えのみを行ってパケットを生成する。ヘッダ付替部324は、順序メモリ323から読み出された並べ替え後のデータフレームの分割用ヘッダをフラグメント用ヘッダに書き換える。制御部33は、組立メモリ321から出力されたパケットと、順序メモリ323から出力されたパケットの優先制御を行う。組立メモリ321と順序メモリ323から同時にパケットが出力された場合、制御部33は、パケットのヘッダ情報に設定された分割前のユーザデータの優先度が高い方のパケットを優先的にユーザ回線301へ送信するような制御を行う。
【0031】
次に、本実施形態に係る無線伝送装置10(
図2)と通信接続された無線伝送装置30(
図6)の処理過程について
図9を参照して説明する(ステップS1~S8)。無線伝送装置10において、分割部12は、ユーザデータをトラフィックボンディングに供する無線回線L1~L4に対応して複数のデータフレームに分割して、夫々に分割用ヘッダを付与する。回線振分部13は、複数のデータフレームを無線送信部14_1~14_4経由で無線伝送装置30へ送信する。
【0032】
無線伝送装置30において、無線受信部21_1~21_4は無線回線L1~L4経由で複数のデータフレームを受信する(ステップS1)。複数のデータフレームは、組立部32へ送られる。組立部32において、メモリ振分部322は、データフレームに付与された分割用ヘッダに含まれる優先度を参照し、データフレームを組立メモリ321または順序メモリ323へ送る(ステップS2)。具体的には、高優先度のデータフレームは組立メモリ321へ送られ、低優先度のデータフレームは順序メモリ323へ送られる。高優先度のデータフレームを組立メモリ321へ書き込む際、分割用ヘッダに含まれるシーケンスナンバを使用して、データフレームを並べ替えて組み立てる(ステップS3)。一方、低優先度のデータフレームを順序メモリ323に書き込む際、分割用ヘッダに含まれるシーケンスナンバを使用して、データフレームの並べ替えのみを行う(ステップS4)。
【0033】
制御部33は、組立メモリ321と順序メモリ323を監視しており、組立メモリ321に組立済みのデータフレームが格納されている場合に、組立メモリ321から元のユーザデータに対応して組み立てられたデータフレームを読み出す(ステップS5)。一方、順序メモリ323に並べ替え完了後のデータフレームが格納されている場合に、順序メモリ323から所定順序に並べ替えられたデータフレームを読み出す(ステップS6)。制御部33での読出処理は、順序メモリ323に比べて組立メモリ321を優先的な読出対象とする。順序メモリ323から読み出された並べ替え後のデータフレームは、ヘッダ付替部324において分割用ヘッダからフラグメント用ヘッダに書き換える(ステップS7)。フラグメント用ヘッダは分割用ヘッダよりも大きいため、受信側の無線伝送装置30でヘッダを付け替えることにより、無線帯域を効率的に使用することができる。制御部33は、組立メモリ321または順序メモリ323から読み出されたデータフレームをパケットとしてユーザ回線301へ出力する(ステップS8)。このとき、制御部33は、順序メモリ323から読み出された低優先度のデータフレームに比べて、組立メモリ321から読み出された高優先度のデータフレームを優先的に読み出して、パケットとしてユーザ回線301へ出力する。
【0034】
次に、本実施形態の効果を実証するため、
図8のデータフレーム入出力タイミング図を用いて説明する。
図8の上側の図面は組立部32へのデータフレーム入力タイミングを時系列で示している。
図7と同様に、高優先データフレームは2分割されており、例えば、高優先データフレーム「高1」は「高1-1」、「高1-2」、高優先データフレーム「高2」は、「高2-1」、「高2-2」に夫々分割される。低優先データフレームは4分割されており、例えば、低優先データフレーム「低1」は、「低1-1」、「低1-2」、「低1-3」、「低1-4」に分割されている。
図6にて説明したように、高優先データフレームは組立メモリ321へ振り分けられ、低優先データフレームは順序メモリ323へ振り分けられる。
図8の下側の図面は制御部33のデータフレーム出力タイミングを時系列で示している。
【0035】
最初に、組立メモリ321にて高優先データフレーム「高1-1」、「高1-2」から高優先データフレーム「高1」への組み立てが完了すると、制御部33は高優先データフレーム「高1」をユーザ回線301へ出力する。低優先データフレーム「低1-1」、「低1-2」、「低1-3」、「低1-4」については、並べ替えが行われるものの組み立てられずに順序メモリ323から読み出されて、高優先データフレーム「高1」の出力後にユーザ回線301へ順次出力される。一方、組立メモリ321にて高優先データフレーム「高2-1」、「高2-2」から高優先データフレーム「高2」への組み立てが完了すると、低優先データフレーム「低1-4」の出力後に、高優先データフレーム「高2」が遅延なくユーザ回線301へ出力される。
【0036】
本実施形態では、
図8に示すように
図7と同じ条件で分割データフレームが組立部32に入力された場合においても、低優先データフレームを組み立てることなく、分割用ヘッダをフラグメント用ヘッダに付け替える処理のみを実行して制御部33からユーザ回線301へ出力するため、高優先データフレーム(例えば、「高2」)は低優先データフレームを待つことなく出力することが可能となる。
図7と
図8を比較すると明らかなように、低優先データフレーム「低1」の組み立てと出力完了を待つ必要がなく、高優先データフレームを組み立て後に順次出力できるため、送信遅延が発生しない。
【0037】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図6の無線伝送装置30の組立部32において、組立メモリ321と順序メモリ323は夫々1個ずつ設けられているが、複数個用意してもよい。無線伝送装置30の出力先の装置(不図示)において低優先データフレームに係る分割用ヘッダをフラグメント用ヘッダに付け替える処理を実行可能ならば、組立部32からヘッダ付替部324を割愛してもよい。また、組立メモリや順序メモリはRAM(ランダム・アクセスメモリ)や半導体メモリなどより構成されるが、USBを経由した外部メモリを適用してもよい。
【0038】
本実施形態では、無線伝送装置30において、低優先データフレームについて順序メモリ323で組み立てを行わずに並べ替えのみを行っているため、低優先データフレームによるユーザ回線301の占有時間を低減することができ、高優先データフレームの送信遅延を抑制することができる。また、順序メモリ323から低優先データフレームの読み出し後、ヘッダ付替部324で分割用ヘッダからユーザ回線301の接続先の装置(不図示)での認識が可能であればフラグメント用ヘッダに付け替えることで、低優先データフレームの正当性を担保することができる。ユーザ回線301がフラグメント仕様を有する回線、例えば、イーサネット(登録商標)であれば、フラグメントされた低優先データフレームをそのまま使用することが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態に係る受信側の無線伝送装置のハードウェア構成について
図10を参照して説明する。
図10は、無線伝送装置40のハードウェア構成を示すブロック図であり、プロセッサ41、通信モジュール42、メモリ部43、出力部44を具備している。プロセッサ41は無線伝送装置40の処理を制御するものであり、例えば、CPU(中央処理装置)がデータフレーム処理に係る所定のプログラム(例えば、組込み用のC言語)を実行することにより所定機能を達成する。通信モジュール42は、トラフィックボンディングに供する複数の無線回線L1~Ln(nは2以上の整数)をリンクアグリゲーションして送信側の無線伝送装置(不図示)から送信される複数のデータフレームを受信する。メモリ部43は、上述の組立メモリ321や順序メモリ323を包含するものであり、複数のメモリを組み合わせてもよく、単一のメモリにおいて複数のメモリ領域を形成してもよい。出力部44は、メモリ部43において高優先データフレームの組み立て終了後にパケットとして順次出力する。また、出力部44は、メモリ部43において低優先データフレームを並べ替え後にパケットとして順次出力する。
【0040】
次に、無線伝送装置40の処理過程について
図11のフローチャートを参照して説明する。
図11は、無線伝送装置40のソフトウェア構成を示すフローチャートである(ステップS11~S16)。最初に、通信モジュール42は、複数の無線回線L1~Ln経由で複数のデータフレームを受信する(ステップS11)。複数のデータフレームはメモリ部43へ送出されるが、分割用ヘッダに含まれる優先度に応じて、高優先データフレームと低優先データフレームで異なるメモリ領域又は異なるメモリへ振り分けられる。高優先データフレームがメモリ部43に読み込まれると(ステップS12)、送信元の無線伝送装置(不図示)におけるデータ分割順序に応じて、高優先データフレームを組み立てて元のデータを復元する(ステップS13)。一方、低優先データフレームがメモリ部43に読み込まれると(ステップS14)、シーケンスナンバなどに応じて所定順序で並べ替えられる(ステップS15)。ステップS15において、低優先データフレームの分割用ヘッダをフラグメント用ヘッダに付け替えてもよい。その後、メモリ部43から高優先データフレームと低優先データフレームが読み出されて出力部44から外部へ送出される(ステップS16)。
【0041】
上述の実施形態において、受信側の無線伝送装置は、送信側の無線伝送装置からトラフィックボンディングで送信された複数のデータフレームを受信して所定の処理過程(組立処理、並べ替え処理)を実行するが、当該処理過程を実施するためのプログラムを記憶媒体(ROM、RAMや半導体メモリ)に格納してプロセッサ(CPUなど)で実行する。プログラム自体を無線伝送装置に記憶しておく必要はなく、他の装置から配信するようにしてもよい。また、プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(又は、差分プログラム)であっても良い。
【0042】
最後に、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、送信側の無線伝送装置の構成も
図2に示される構成に限定されるものではなく、受信側の無線伝送装置の構成も
図4や
図6に示される構成に限定されるものではない。上述の実施形態は、複数の無線回線を経由したトラフィックボンディングについて説明したが、これ以外に、リンクアグリゲーション技術を用いてもよい。本発明は、添付した特許請求の範囲に定義される技術的範囲内での種々の変形例や設計変更及び改造をも包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、送信側の無線伝送装置と受信側の無線伝送装置からなる無線伝送システムに関するが、基地局間通信やサーバ間の大容量データ通信にも適用可能である。特に、大容量のパケット伝送において低遅延が要求される電気通信システム(例えば、5G)に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、10、20、30、40 無線伝送装置
2 通信部
3、321 組立メモリ
4、323 順序メモリ
5、322 メモリ振分部
11 帯域制御部
12 分割部
13 回線振分部
14 無線送信部
21 無線受信部
32 組立部
33 制御部
324 ヘッダ付替部