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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012214
(43)【公開日】2024-01-26
(54)【発明の名称】グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20240119BHJP
   C10M 113/06 20060101ALI20240119BHJP
   C10M 129/08 20060101ALI20240119BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/06 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/08 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/10 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/14 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 10/16 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240119BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M113/06
C10M129/08
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:06
C10N10:08
C10N10:10
C10N10:12
C10N10:14
C10N10:16
C10N30:00 Z
C10N30:08
C10N40:02
C10N40:04
C10N50:10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021058320
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】517436615
【氏名又は名称】シェルルブリカンツジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】矢野 敬規
(72)【発明者】
【氏名】阿部 国敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓司
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA13B
4H104AA16B
4H104AA17B
4H104AA18B
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB04C
4H104CA04A
4H104DA02A
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA03
4H104FA04
4H104FA05
4H104FA06
4H104FA07
4H104FA08
4H104LA20
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】 グリースとしての主要な特性(混和ちょう度、滴点、耐熱性)と、環境適合性と、に優れたグリース組成物を提供する。
【解決手段】 基油として、アメリカ石油協会(API)が定める基油カテゴリーにおいてグループ1~5に属する潤滑油又はこれらの混合油と、
増ちょう剤として、構造式(1)であらわされる粒子
[A0~0.2][B1~8][C0~5|D2n5n]・mHO・・・(式1)
A:[Ca,Ba,K,Na,Rb,Cs,NH
B:[Ti,Al,Cr,V,Fe,Mn,Mg,Li]
C:[S,OH,F,Cl]
D:[Si,Al,Fe,B,Be]
n=1~10
m=5~15
と、
添加剤として、2価アルコールもしくは3価アルコールと、
を含有するグリース組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(a)と、増ちょう剤(b)を含有するグリース組成物であって、
前記増ちょう剤(b)が構造式(1)であらわされる粒子
[A0~0.2][B1~8][C0~5|D2n5n]・mHO・・・(式1)
A:[Ca,Ba,K,Na,Rb,Cs,NH
B:[Ti,Al,Cr,V,Fe,Mn,Mg,Li]
C:[S,OH,F,Cl]
D:[Si,Al,Fe,B,Be]
n=1~10
m=5~15
であるグリース組成物。
【請求項2】
前記増ちょう剤(b)の元素A,B,C,Dが
A:なし
B:[Mg,Mn,Fe]
C:[OH]
D:[Si]
である請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記グリース組成物全体を100質量%として、増ちょう剤(b)が0.1~10質量%である請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記グリース組成物が安定化剤(c)を含み、安定化剤(c)が炭素数2~5の2価アルコールもしくは3価アルコールで、グリース組成物100質量%として、安定化剤(c)が0.1~5質量%である請求項1~3のいずれか一項記載のグリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の粘土鉱物を含むグリース組成物に関し、環境適合性が高く、グリースとしての主要な特性を備えたグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械技術の進歩に伴い、グリースの使用環境は年々めざましく変化している。例えば、自動車や電気機器等では、各種機器の小型軽量化、高出力化によって、運転条件が高温化し、潤滑条件は過酷になってきている。鉄鋼の連続鋳造設備や熱延設備の圧延機等で使用されるグリースは、耐熱性や酸化安定性に優れたグリースが求められている。また、昨今ではグリースの高温下での性能向上のみならず、環境適合性(使用上においては人体に対する安全性が高いことや、製造上においては環境負荷の小さいこと等)を満たす材料への要求が高まっている。
【0003】
このようなグリース市場において、現在では、その50%以上をリチウムグリースが占めている。リチウムグリースは最高温度が120℃程度の高温まで使用可能であり、せん断安定性や耐水性も比較的良好で、原料である油脂や脂肪酸の入手性や取扱性も容易であり、比較的安価なコストで製造可能であることから、汎用的に使用可能なグリースとされている。また、通常のリチウムグリースより広い温度領域にて使用可能なグリースとして、リチウムコンプレックスグリース等も提案されている(特許文献1)。しかしながら、これらリチウムグリースの原料として用いられる油脂や脂肪酸とけん化反応させるための水酸化リチウムは、毒劇物指定による取り扱いに制限が生じており、また、リチウムの需要が多岐に渡るにつれて徐々に高騰している背景から、今後は、リチウムグリースの汎用品としての位置づけにも変化が生じる懸念がある。
【0004】
リチウムグリース以外のグリースとしては、ナトリウムグリースやアルミニウムグリース等もあるが、ナトリウムグリースは水が混合するとグリースが流動状に変化し軸受等から流出する課題があり、徐々にグリース市場からは淘汰されてきている。また、アルミニウムグリースは使用温度範囲がカルシウムグリースと同等以下であるため、特定の用途に限られている。
【0005】
グリースを環境適合性が高いものとするための手段としては、グリースの原料を、天然由来の鉱物や人工的に合成された無機化合物とすることが考えられる。例えば、特許文献2では、天然由来の鉱物又は人工的に合成された無機物等をグリースの増ちょう剤として用いたグリース組成物が開示されている。しかし、当該グリースは、環境負荷の低減という要求を満たすことは可能であるが、増ちょう剤量を多く配合しないとグリースの構造が維持できず、また、含水時に軟化が大きくなったり、防錆性が低下したりといった課題がある。
【0006】
耐熱グリースとして使用可能なグリースは、ウレアグリースが挙げられる。ウレアグリースは、リチウムコンプレックスグリースよりも更に高い温度で使用可能なため、耐熱用途に多く使用されている高性能なグリース組成物である。例えば、特許文献3では、ポリウレア化合物に無機化合物である炭酸カルシウムやポリテトラフルオロエチレン又は黒鉛等の固体潤滑剤を混合したグリース組成物が開示されている。当該グリース組成物によれば、高温、高荷重下でも、耐熱性及び極圧性に優れ、グリースが局部的に高温に晒されても硬化を抑制することが可能となる。
【0007】
しかしながら、このようなウレアグリースは、原料となるイソシアネートやアミン類の安全性及び取扱い性の問題から、環境適合性が低いという課題がある。更には、高度な製造技術と設備が必要となるため、コスト高となり用途も限定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1-170691号公報
【特許文献2】特開2011-57761号公報
【特許文献3】特開2008-94991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、その目的は、グリースとしての主要な特性(混和ちょう度、滴点、耐熱性)と、環境適合性と、に優れたグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、天然に産出される所定の無機化合物が、環境適合性を有するとともに、混和ちょう度をはじめとしたグリース組成物の主要な特性を向上させることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、より具体的には下記[1]~[4]を提供するものである。
[1]基油(a)と、増ちょう剤(b)を含有するグリース組成物であって、
前記増ちょう剤(b)が構造式(1)であらわされる(例えば、平均1次粒子径が0.1~200μmの)粒子
[A0~0.2][B1~8][C0~5|D2n5n]・mHO・・・(式1)
A:[Ca,Ba,K,Na,Rb,Cs,NH
B:[Ti,Al,Cr,V,Fe,Mn,Mg,Li]
C:[S,OH,F,Cl]
D:[Si,Al,Fe,B,Be]
n=1~10
m=5~15
であるグリース組成物。
[2]前記増ちょう剤(b)の元素A,B,C,Dが
A:なし
B:[Mg,Mn,Fe]
C:[OH]
D:[Si]
である前記[1]のグリース組成物。
[3]前記グリース組成物全体を100質量%として、増ちょう剤(b)が0.1~10質量%である前記[1]又は[2]のグリース組成物。
[4]前記グリース組成物が安定化剤(c)を含み、安定化剤(c)が炭素数2~5の2価アルコールもしくは3価アルコールで、グリース組成物100質量%として、安定化剤(c)が0.1~5質量%である前記[1]~[3]のいずれか一つのグリース組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グリースとしての主要な特性(混和ちょう度、滴点、耐熱性)と、環境適合性と、に優れたグリース組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態に係るグリース組成物は、増ちょう剤として構造式(1)で示される粉体が添加されてなる。以下、本形態に係るグリース組成物の、具体的な成分、各成分の配合量、製造方法、物性、用途に関して詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されない。例えば、本形態に係るグリース組成物は、構造式(1)で示される粉体を特に増ちょう剤として配合したものであるが、本発明の効果を奏する限りにおいて、増ちょう剤以外の用途で、構造式(1)で示される粉体をグリース組成物に配合した場合にも、本発明の技術的範囲に属するものと解するべきである。また、本明細書及び本特許請求の範囲におけるa~bは、特記しない限り、a以上b以下を意味する。
【0014】
≪グリース組成物(成分)≫
[基油]
本形態のグリース組成物に用いられる基油は、特に限定されない。例えば、通常のグリース組成物に使用される鉱油、合成油、動植物油、これらの混合油を適宜使用することができる。具体例としては、API(アメリカ石油協会、American Petroleum Institute)の基油カテゴリーでグループ1~5のものを挙げることができる。ここで、APIの基油カテゴリーとは、潤滑油基油の指針を作成するためにアメリカ石油協会によって定義された基油材料の広範な分類である。
【0015】
本発明において、鉱油の種類は特に規定されるものではないが、好ましい例として、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの一種もしくは二種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系又はナフテン系などの鉱油を挙げることができる。
【0016】
本発明において、合成油の種類は特に規定されるものではないが、ポリα-オレフィン(PAO)又は炭化水素系合成油(オリゴマー)を好ましい例として挙げることができる。PAOとは、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体である。例えば、α-オレフィンとしては、C-C二重結合が末端にある化合物であり、ブテン、ブタジエン、ヘキセン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコセンなどが例示される。炭化水素系合成油(オリゴマー)としては、エチレン、プロピレン、又はイソブテンの単独重合体又は共重合体を例示することができる。これらの化合物は単独でも、また二種類以上の混合物としても用いることができる。また、これらの化合物はC-C二重結合が末端にある限り、とり得る異性体構造のどのような構造を有していてもよく、分枝構造でも直鎖構造でもよい。これらの構造異性体や二重結合の位置異性体の二種類以上を併用することもできる。これらのオレフィンのうち、炭素数5以下では引火点が低く、また炭素数31以上では粘度が高く実用性が低いため、炭素数6~30の直鎖オレフィンの使用がより好ましい。
【0017】
また、本発明においては、天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)を基油として用いてもよい。GTLは、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適に用いることができる。
【0018】
[増ちょう剤]
(構造式(1)で示される粉体)
本形態において使用される増ちょう剤は、構造式(1)で示される粉体である。例えば、リザルダイト、アンチゴライト、カリオピライト、ベルチェリン、カオリナイト、ディッカイト、ナクタイト、メタハロイサイト、パイロフィライト、タルク、ベメンタイト、鉄パイロスマライト、マンガンパイロスマライトなどが挙げられる。構造式(1)で示される粉体は、吸着剤や非金属導電性フィラーなどとして広く産業界で使用されており、好適には天然に存在する鉱物で、環境適合性(使用上においては人体に対する安全性が高いことや、製造上においては環境負荷の小さいこと等)の高い無機化合物である。また、表面を修飾する添加剤を加えることで、溶媒との親和性を高めることができる。修飾添加剤としては、例えば、四級アンモニウム塩処理などが挙げられる。
【0019】
一般的に広く使用されているグリースは、石けん系グリースである。その中でもリチウム石けんグリースは、ちょう度収率(グリースが硬くなる度合い)や、せん断安定性に優れており、汎用グリースとして最も多く使用されている。その理由として、上述した長所がその大きな要因でもある。このリチウム石けんグリースの構造は、増ちょう剤として機能するリチウムステアレートが基油中に紐状に分散し、絡み合い、立体的な繊維構造をとっている。グリースの基本形態は、この繊維構造の中に基油が保持されることで、半固体状のグリース物性を保っている。このように、これらの石けん系グリースの組成は、殆どが鎖長の比較的長いステアレートから構成されている。これは、炭化水素が持つ基油の保持力と繊維を構成するミセル同士の分子間力の均衡が最適な関係にある事に由来している。これにより、ちょう度収率が良好で、せん断安定性にも効果的な作用が働いている。
【0020】
一方、無機物においては立体的な繊維構造はとらず、基油中に分散した粒子が分子間力等の相互作用によりゲル化しグリース構造を保つ場合が多い。例えば、ベントナイトは、溶媒中(水系)で結晶同士が静電気的結合を起こし膨潤し、カードハウス構造を形成することでゲル化し半固体状態に変化する。しかしながら、グリースを構成させるための基油中では、容易には静電気的結合が起こらず、膨潤/ゲル化し強固なグリース構造を形成する事ができない。従って、膨潤を促進させるために水溶性の極性溶媒をバインダーとして添加する事が多い。しかしながら、無機物の多くは、基油中で膨潤し、グリースとしての基本特性(半固体状に成り、ちょう度が測定できる)を発揮するに値する作用は殆ど無く、現在市販されている無機増ちょう剤を使用したグリースは、上述したベントナイト以外にシリカグリースが流通している程度である。
【0021】
このような状況下、本発明の増ちょう剤として用いられる構造式(1)で示される粉体は、グリース増ちょう剤としての大きな効果がある。この効果を考察すると、本化合物は、構造式(1)で示される粉体の構造内に有する空隙や1次粒子が強固に凝集した2次粒子を形成し、その2次粒子間に生じる空隙に潤滑油が吸油されやすい構造をとると考えられる。加えて、嵩比重が大きい(比表面積が大きい)こと等から、潤滑油中の分散性も高い。従って、これらの複合的な効果により、優れた増ちょう効果を発揮する事が考えられる。
【0022】
本形態に係る成分の構造式(1)で示される粉体は、平均1次粒子径が200μm以下であれば好ましく、150μm以下であればより好ましく、100μm以下であればさらに好ましい。平均1次粒子径の下限値は、特に限定されるものではないが、0.1μm以上であることが好ましい。構造式(1)で示される粉体などの微細粉体は、1次粒子からなる凝集物である2次粒子を形成することが知られている。この凝集を抑制するために結晶化抑制剤や分散剤などにより処理が行われるが、本発明に使用する構造式(1)で示される粉体はこの表面処理方法により何ら制限されるものではない。構造式(1)で示される粉体の1次粒径が小さいほど、凝集した際の2次粒子間の空隙の表面積が大きく、吸油する量が増えることから、増ちょう効果が高まりグリースが硬くなると考えられる。平均1次粒子径は、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、FFF(フィールド・フロー・フラクショネーション)法、又は電気的検知体法等によって測定することができる。本発明の平均1次粒子径は、体積平均粒子径であるが、個数平均粒子径を換算したものであってもよい。
【0023】
本形態に係る成分の構造式(1)の元素Aは、Ca,Ba,K,Na,Rb,Cs,NHであることが好ましく、Ca,Ba,K,Naであればより好ましく、Ca、K,Naであればさらに好ましい。元素Bは、Ti,Al,Cr,V,Fe,Mn,Mg,Liであれば好ましく、Fe,Mn,Mgであればより好ましく、Mgであればさらに好ましい。元素Cは、S,OH,F,Clであれば好ましく、S,OHであればより好ましく、OHであればさらに好ましい。元素Dは、Si,Al,Fe,B,Beであれば好ましく、Si,Al,Feであればより好ましく、Siであればさらに好ましい。この理由として、SiとOHが構成する構造により多孔質構造が形成されるが、その構造内にFe,Mn,Mgが挿入されることによって多孔質構造によりなりやすく、鉱物としての構造も強固になり、多孔質になるため基油を保持する部位が増えることにより増ちょう効果が増すためである。
【0024】
(他の増ちょう剤)
本形態のグリース組成物には、上記の増ちょう剤と共に、構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤(他の増ちょう剤)を用いてもよい。こうした他の増ちょう剤としては、第三リン酸カルシウム、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、その他の金属石けん、テレフタラメート金属塩、トリウレアモノウレタン、ジウレア、テトラウレア、これ以外のポリウレア、又は、硫酸バリウム、クレイ、シリカエアロゲル等のシリカ(酸化ケイ素)などの無機物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を併せて使用することができる。また、これら以外にも液状物質に粘ちょう効果を付与できるものはいずれも使用することができる。
【0025】
[添加剤]
(アルコール類)
本形態のグリース組成物には、上記の増ちょう剤からなるグリースに、特定の添加剤を加える事により、耐熱性の機能が発揮できる。本形態に使用されるアルコール類は、多価アルコールであり、このような多価アルコールとしては、好適には1,1-エタンジオール、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,1-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)などが挙げられ、少なくとも1種以上の多価アルコールを使用することが出来る。
【0026】
(4級アンモニウム塩類)
本形態に添加剤として使用される4級アンモニウム塩類は、好適には4級塩化アンモニウム塩であり、このような塩としては、特に硬化牛脂アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルメチルベンジルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムクロライドからなる群より1種以上の4級アンモニウム塩を挙げることができる。また、4級アンモニウム塩類は、増ちょう剤としての構造式(1)で示される粉体100質量%に対して5~15質量%の割合、すなわちグリース組成物を100質量%としたときの0.005~7.5質量%の間の任意の量を添加してもよい。4級アンモニウム塩を添加することにより、構造式(1)で示される粉体のちょう度収率を向上させることが可能であり、増ちょう剤としての機能を向上させることができる。
【0027】
多価アルコールや4級アンモニウム塩は、作動油の油性向上剤や分散剤として用いられ、潤滑対象の金属表面などに吸着し吸着膜を形成することで潤滑を行う効果を示すことが知られているが、本発明の構造式(1)で示される粉体を増ちょう剤とするグリースに配合するこれらの添加剤の機能と、上述した作動油の添加剤としての期待する機能は同じではない。本発明においては、多価アルコールや4級アンモニウム塩が無機粉体である構造式(1)で示される粉体を基油中で均質な分散状態を維持させ、熱による構造の脆弱化や空気中の水分や外部から混入する水分の影響によるグリース構造の脆弱化と軟化、並びに、不十分な水分散性による錆の発生と潤滑性の低下などといったグリースとしての基本的な機能を改善する作用がある。
【0028】
本発明の増ちょう剤として用いられる構造式(1)で示される粉体は、基本的に、構造内に有する空隙や1次粒子が強固に凝集した2次粒子を形成し、その2次粒子間に生じる空隙に潤滑油が吸油されやすい構造をとっており、グリース増ちょう剤とのネットワークをとっているが、その構造は、上述した添加剤の効果により、より強固になるものと考えられ、グリースとしての、基本的な性能を発揮できるものである。従って、これらを添加することでグリースの耐熱性やちょう度収率を向上する事ができる。これらの性能は実用環境において、必要な性能の一つであり、これらの性能が付加された場合は、より広い範囲で使用が可能となる。
【0029】
[任意の成分]
本形態のグリース組成物には、更に任意の酸化防止剤、防錆剤、油性剤、極圧剤、耐摩耗剤、固体潤滑剤、金属不活性剤、ポリマー、非金属系清浄剤、着色剤等の添加剤を、グリース組成物全体を100質量%として、任意の成分全体で約0.1~20質量%加えることができる。例えば、酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-α-ナフチルアミン、フェノチアジン等がある。例えば、防錆剤としては、酸化パラフィン、カルボン酸金属塩、スルホン酸金属塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、サリチル酸エステル、コハク酸エステル、ソルビタンエステルや各種アミン塩等がある。例えば、油性剤や極圧剤並びに耐摩耗剤としては、硫化ジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫化ジアリルジチオリン酸亜鉛、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛、硫化ジアリルジチオカルバミン酸亜鉛、硫化ジアルキルジチオリン酸モリブテン、硫化ジアリルジチオリン酸モリブテン、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブテン、硫化ジアリルジチオカルバミン酸モリブテン、有機モリブテン錯体、硫化オレフィン、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフォロチオネート、トリクレジンフォスフェート、その他リン酸エステル類、硫化油脂類等がある。例えば、固体潤滑剤としては、二硫化モリブテン、グラファイト、窒化ホウ素、メラミンシアヌレート、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、二硫化タングステン、フッ化黒鉛等がある。例えば、金属不活性剤としては、N,N’ジサリチリデン-1,2-ジアミノプロパン、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾール等がある。例えば、ポリマーとしては、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリメタクリレート等が挙げられる。例えば、非金属系清浄剤として、コハク酸イミド等を挙げることができる。
【0030】
≪グリース組成物(各成分の配合量)≫
次に、本形態に係るグリース組成物における、基油及び増ちょう剤又は添加剤の配合量を説明する。尚、任意の成分の配合量に関しては、必要であれば上述の配合量にて適宜配合すればよい。
【0031】
[基油]
基油の配合量としては、グリース組成物全体を100質量%として、好ましくは50~98質量%であり、更に好ましくは70~97質量%である。
【0032】
[増ちょう剤]
増ちょう剤全体の配合量としては、グリース組成物全体を100質量%として、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、更に好ましくは3~10質量%配合することができる。
【0033】
ここで、前述のとおり、本形態に係るグリース組成物は、少なくとも構造式(1)で示される粉体を増ちょう剤として含み、その他の増ちょう剤を適宜合わせてなるものであるが、構造式(1)で示される粉体のみを増ちょう剤とした場合、すなわち、構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤を実質的に含まない場合においても、高い増ちょう効果を発現させること(即ち、高い増ちょう効果を有するグリース組成物を製造すること)が可能となる。更に、構造式(1)で示される粉体が高い環境適合性を有することから、増ちょう剤全体におけるその他の増ちょう剤の配合割合を少なくすることは、環境適合性の面からも好適である。
【0034】
従って、グリース組成物中における増ちょう剤全体の配合量と合わせ、グリース組成物全体を100質量%として、構造式(1)で示される粉体を、0.5~50質量%とすることが好ましく、2~30質量%とすることがより好ましく、3~28質量%とすることがさらに好ましい。また、構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤(その他の増ちょう剤)を、20質量%以下とすることが好適であり、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0035】
[添加剤]
添加剤としての多価アルコール類、例えば、1,1-エタンジオール、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,1-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-プロパンジオール、1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)からなる群より選択される少なくとも1種以上の多価アルコールの配合量としては、グリース組成物全体を100質量%として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~4質量%であり、さらに好ましくは0.5~3質量%である。
【0036】
添加剤としての4級アンモニウム塩、例えば、硬化牛脂アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルメチルベンジルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムクロライドからなる群より選択される少なくとも1種以上の4級アンモニウム塩の配合量としては、グリース組成物全体を100質量%として、好ましくは0.005~7.5質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、さらに好ましくは0.15~1.5質量%である。
【0037】
≪グリース組成物の製造方法≫
[構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤を実質的に含まない場合]
本形態に係るグリース組成物の製造方法としては、既存の手法を適宜用いることが可能であるが、例えば、以下の工程により製造することが可能である。基油、増ちょう剤及び添加剤を配合し、グリース専用の製造装置(プログラム式グリース試作装置)内に投入する。次に、常温(例えば25℃程度)にて撹拌(撹拌条件は、例えば、攪拌回転数20~300rpm、撹拌時間10~15分)を行い、その後、均質化装置(例えば、三本ロールミル等)により処理した後、真空脱泡し、均質なグリース組成物を得る。尚、その他の任意の成分(添加剤等)を用いる場合には、あらかじめ適当な温度(例えば80~100℃の温度)にて基油と添加剤とを混合した後、常温に戻し、構造式(1)で示される粉体を加えてもよい(又は、常温にて構造式(1)で示される粉体を基油に混ぜて混合した後、温度を上昇させ、添加剤を混合してもよい)。
【0038】
ここで、構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤を実質的に含まない場合には、増ちょう剤を添加し撹拌する際、特別な化学反応を伴わないため、温度を上昇させる過程を含まずともグリースを製造することが出来る(又は、添加剤の混合に高温の加熱が必要な場合には、高温を維持する工程を短くすることが出来る)ため、低エネルギー化及び低コスト化を図ることが可能となる。尚、構造式(1)で示される粉体、基油及び添加剤との混合及び撹拌過程において、常温での処理ではなく、加熱処理(例えば約140℃未満)を行っても差し支えない。
【0039】
[構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤を併用する場合]
次に、構造式(1)で示される粉体と、構造式(1)で示される粉体以外の増ちょう剤(他の増ちょう剤)を、グリース組成物の増ちょう剤として併用する場合の本形態に係るグリース組成物の製造方法を、他の増ちょう剤としてウレア増ちょう剤を用いる場合を一例として説明する。まず、ウレア増ちょう剤の原料(ジイソシアネート、一級モノアミン、一級ジアミン等)を適宜配合し、基油中で合成反応させた後、180℃程度の温度まで上昇させる、その後冷却し、80~100℃の温度で、添加剤等を混入し、十分に撹拌混合させた後、室温まで冷却させる。その後、構造式(1)で示される粉体を配合して、攪拌して得た分散体を、混練機(例えば、三本ロールミル等)を使用して、均質化することで、グリース組成物を得る事が出来る。
【0040】
このように、従来の増ちょう剤と、構造式(1)で示される粉体を併用する場合には、従来の増ちょう剤によって、一般的に行われるグリースの製造方法に従って一度グリース組成物を形成した後に、更に構造式(1)で示される粉体を投入し、増ちょう性を向上させ、グリース組成物を完成させることが可能である。更には、構造式(1)で示される粉体と、他の増ちょう剤と、を同じ工程(タイミング)にて配合し、一般的なグリースの製造方法に従ってグリース組成物を製造してもよい。また、上述の構造式(1)で示される粉体を増ちょう剤として製造したグリース組成物と、構造式(1)で示される粉体以外を増ちょう剤とした従来のグリース組成物と、を別途製造し、それらを混合してもよい。
【0041】
≪グリース組成物の物性≫
[滴点]
本形態のグリース組成物は、滴点が200℃以上又は超となるものが好ましく、220℃以上又は超となるものがより好ましく、250℃以上又は超となるものが特に好ましい。グリース組成物の滴点が200℃以上であれば、潤滑上の問題、例えば、高温での粘性喪失やそれに伴う漏洩、焼付き等が生じる可能性を抑えられると考えられる。尚、滴点は、粘性を有するグリースが、温度を上げてゆくと増ちょう剤構造を失う温度をいう。ここで、滴点の測定は、JIS K 2220 8に従って行うことができる。
【0042】
[混和ちょう度]
本形態のグリース組成物は、混和ちょう度試験において、好ましくは00号~4号(175~430)のちょう度であり、更に好ましくは1号~3号(220~340)のちょう度である。尚、ちょう度はグリースの物理的硬さを表す。ここで、ちょう度としては、JIS K 2220 7に従って測定された混和ちょう度の値を用いる。
【0043】
[耐熱性試験]
本形態のグリース組成物は、耐熱性試験において、100℃であることが好ましく、150℃であると更に好ましい。ここで、耐熱性試験の方法は下記の通りである。グリース組成物をちょう度測定用器具に充填して加熱し2時間静置後、不混和ちょう度を測定する。25℃における不混和ちょう度の値からの変化量が100以内であった場合、耐熱性試験で規定の温度の耐熱性を有すると評価した。試験温度範囲は80℃から10℃単位でちょう度の変化量が100を超えるまで実施する。尚、耐熱性が不十分でちょう度の軟化が大きいとグリース組成物が漏洩し潤滑界面に十分な油分が供給されなくなり潤滑性が損なわれる。
【0044】
≪グリース組成物の用途≫
本形態のグリース組成物は、一般に使用される機械、軸受、歯車等に使用可能であることはもちろん、より苛酷な条件下、例えば、高温条件下で優れた性能を発揮することができる。例えば、自動車では、スターター、オルターネーター及び各種アクチュエーター部のエンジン周辺、プロペラシャフト、等速ジョイント(CVJ)、ホイールベアリング及びクラッチ等のパワートレイン、電動パワーステアリング(EPS)、制動装置、ボールジョイント、ドアヒンジ、ハンドル部、冷却ファンモーター、ブレーキのエキスパンダー等の各種部品等の潤滑に好適に用いることができる。更に、パワーショベル、ブルドーザー、クレーン車等の建設機械、鉄鋼産業、製紙工業、林業機械、農業機械、化学プラント、発電設備、乾燥炉、複写機、鉄道車両、シームレスパイプのネジジョイント等の各種高温・高荷重部位に用いることも好ましい。その他の用途としては、ハードディスク軸受用、プラスチック潤滑用、カートリッジグリース等が挙げられるが、これらの用途にも好適である。
【実施例0045】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
≪原料≫
本実施例1~14及び比較例1~4で用いた原料は以下の通りである。
【0047】
(基油)
・基油A:40℃の動粘度が24.22mm/s、100℃の動粘度が4.640mm/sのパラフィン系鉱油と40℃の動粘度が480.2mm/s、100℃の動粘度が31.56mm/sのパラフィン系鉱油とを混合した40℃の動粘度が100.0mm/s、100℃の動粘度が11.55mm/sのパラフィン系鉱油。
・基油B:40℃の動粘度が143.6mm/s、100℃の動粘度が10.71mm/sのナフテン系鉱油。
・基油C:40℃の動粘度が20.50mm/s、100℃の動粘度が4.550mm/sの不飽和ポリオールエステル油。
・基油D:40℃の動粘度が102.2mm/s、100℃の動粘度が12.64mm/sのアルキルジフェニルエーテル油。
・基油E:40℃の動粘度が30.50mm/s、100℃の動粘度が6.340mm/sのポリ-α-オレフィン油と40℃の動粘度が396.5mm/s、100℃の動粘度が39.99mm/sのポリα-オレフィン油とを混合した40℃の動粘度が100.0mm/s、100℃の動粘度が15.14mm/sのポリ-α-オレフィン油。
・基油F:40℃の動粘度が44.61mm/s、100℃の動粘度が7.640mm/sのフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)油。
(増ちょう剤)
・粉体A:式(2)で示される平均一次粒子径が65μmの粉体:
Si12Mg30(OH)(OH・8HO・・・式2
・粉体B:式(3)で示される粉体(一般名:ベントナイト):
NaSi24(Al10Mg)O60・(OH)12・・・式3
・粉体C:式(4)で示される粉体(一般名:バーミキュライト):
(Mg,Fe2+,Al)(Al,Si)10(OH)・4HO・・・式4
(添加剤)
・添加剤A:グリセリン(富士フイルム和光純薬製)
・添加剤B:エチレングリコール(富士フイルム和光純薬製)
・添加剤C:硬化牛脂アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(花王製)
【0048】
≪製造方法≫
(実施例1)
基油A、粉体Aの合計量が500gになるように表1内記載の配合割合にて計量し、内容量1.0kgのグリース専用の製造装置内に投入する。常温で200rpmの攪拌回転数で15分間攪拌した分散体を、三本ロールミルを使用して処理した後、真空脱泡し、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0049】
(実施例2)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な1号ちょう度のグリースを得た。
【0050】
(実施例3)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な3号ちょう度のグリースを得た。
【0051】
(実施例4)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油B、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0052】
(実施例5)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油C、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0053】
(実施例6)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油D、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0054】
(実施例7)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油E、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0055】
(実施例8)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油F、粉体Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0056】
(実施例9)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な1号ちょう度のグリースを得た。
【0057】
(実施例10)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0058】
(実施例11)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤Aを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な3号ちょう度のグリースを得た。
【0059】
(実施例12)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤Bを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な2号ちょう度のグリースを得た。
【0060】
(実施例13)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤A及び添加剤Cを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な3号ちょう度のグリースを得た。
【0061】
(実施例14)
グリース製造釜内に、原料として表1内記載の配合量にて基油A、粉体A、添加剤A及び添加剤Cを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な3号ちょう度のグリースを得た。
【0062】
(比較例1)
グリース製造釜内に、原料として表2内記載の配合量にて基油A、粉体Bを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造して、均質な1号ちょう度のグリースを得た。
【0063】
(比較例2)
グリース製造釜内に、原料として表2内記載の配合量にて基油A、粉体Cを混入し、実施例1の製造法に準拠し、同様に製造したが、流動状(非グリース状)の物質となった。
【0064】
(比較例3)
増ちょう剤はリチウム12ヒドロキシステアレート石けん、鉱物油系の潤滑油を基油に使用した市販汎用リチウム系グリース(シェルルブリカンツジャパン株式会社製)であり、基油の粘度は100℃で12.2mm/sである。
【0065】
(比較例4)
鉱物油系の潤滑油を基油に使用した市販汎用ウレア系グリース(シェルルブリカンツジャパン株式会社製)であり、基油の粘度は100℃で11.3mm/sである。
【0066】
≪試験≫
実施例及び比較例について、滴点、混和ちょう度試験、耐熱性試験について、前述の試験方法により各試験を行った。得られた実施例及び比較例の各グリースの性質も表1及び2に記す。「木目の良さ」は、木目が細かく滑らかで艶がある場合に「◎」とし、木目が細かく滑らかであるが艶がない場合に「○」、木目がやや粗く艶がない場合に「△」、木目が粗く艶がない場合に「×」で示す。尚、木目の指標は、供試サンプルを直接手の指等で触れた際の感触ならびに外観から判定したものである。粘弾性(コシの強さ)は、コシが強く弾力がある場合に「◎」、コシがあり弾力がある場合に「○」、コシが弱く弾力がない場合に「△」、コシそのものを全く感じない場合(液状等)に「×」で示す。尚、粘弾性とは、供試サンプルを直接手の指等で触れた際の感触により判定したものである。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
≪結果≫
表1に示したように、実施例1~14は、いずれも、混和ちょう度、滴点、耐熱性に優れている。