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特開2024-122140前発酵型のヨーグルト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122140
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】前発酵型のヨーグルト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
A23C9/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029516
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛笠 秀昭
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC31
4B001BC08
4B001BC12
4B001BC13
4B001BC14
4B001EC01
4B001EC04
(57)【要約】
【課題】滑らかでとろみのある食感と、雑味がなく乳本来の濃厚な風味を両立する前発酵型のヨーグルトを提供すること。
【解決手段】前発酵型のヨーグルトであって、原料中、生乳及び/又は牛乳を60~97重量%含有し、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有することを特徴とする、前発酵型のヨーグルト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前発酵型のヨーグルトであって、原料中、生乳及び/又は牛乳を60~97重量%含有し、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有することを特徴とする、前発酵型のヨーグルト。
【請求項2】
前記原料中の乳固形分の含有量が14.5~18重量%、乳タンパク質の含有量が4.5~6.5重量%である、請求項1に記載の前発酵型のヨーグルト。
【請求項3】
前記原料中の乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が18~22重量%である、請求項1又は2に記載の前発酵型のヨーグルト。
【請求項4】
前記原料中、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が乾燥重量で0.5~7重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC)の含有量が乾燥重量で0.2~3重量%である、請求項1又は2に記載の前発酵型のヨーグルト。
【請求項5】
カードのメジアン径が5~70μmである、請求項1又は2に記載の前発酵型のヨーグルト。
【請求項6】
前発酵型のヨーグルトの製造方法であって、
生乳及び/又は牛乳を60~97重量%と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有するヨーグルトミックスを加熱処理する工程と、
乳酸菌スターターを添加した前記加熱処理後のヨーグルトミックスを、pHが4.1~4.85となるまで発酵する工程と、
前記発酵後のヨーグルトミックスのカードを、メジアン径が5~70μmとなるように粉砕する工程を含む、前発酵型のヨーグルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前発酵型のヨーグルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヨーグルトはその健康増進効果が注目されていたが、近年の食の多様化に伴い、最近では、ヨーグルトそのものの食感や風味自体を楽しむ嗜好性重視の傾向が強まっており、特に、滑らかでとろみのある食感と、ヨーグルトの主原料である乳本来の濃厚な風味とを両立することが求められている。
【0003】
ヨーグルトの製造方法には、ヨーグルトの原料の混合物であるヨーグルトミックスに乳酸菌スターターを添加して発酵させた後に、発酵により形成されたカードを粉砕してから容器に充填する前発酵型製法と、ヨーグルトミックスと乳酸菌スターターを容器に充填してから容器内で発酵させる後発酵型製法の2種類の製造方法が存在する。液状ヨーグルトやソフトヨーグルトなど、滑らかさやとろみのある食感が求められるヨーグルトは、発酵させカードを粉砕した後に容器に充填する前発酵型製法により通常製造される。
【0004】
前発酵型製法によって製造されるヨーグルトに、乳の濃厚な風味を付与するために、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、乳清たんぱく質を含む乳たんぱく質を含有した発酵乳ベースに乳酸菌スタータを添加した後に発酵させ、特定の粒子径及び粘度となるように破砕及び増粘させることにより、濃厚な飲みごたえ感を有する前発酵型のドリンクヨーグルトが得られることが開示されている。特許文献2には、乳原料を含む調乳液を発酵させ得られた発酵物を所定の条件で濃縮することで、濃厚感を有し、食感のなめらかさに優れた発酵乳が得られることが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された手法は、いずれもヨーグルトの原料として脱脂濃縮乳を大部分使用するものであり、生乳や牛乳を用いていないことから、乳風味の濃厚さは得られるものの、乳本来の風味が損なわれており、未だ改善の余地があった。
【0006】
また、特許文献3には、濃縮等の操作を行っていない牛乳を原料中70%含有するドリンクヨーグルトが開示されており、原料混合物に、熱可逆性を有し加熱凝固するハイドロコロイドを含有させることによって、カードを形成せずなめらかで均一なヨーグルトを得られることが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の方法によって得られるヨーグルトは、乳本来の風味を感じやすい一方で、使用する増粘多糖類に起因して、食感に違和感があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-22406号公報
【特許文献2】特開2017-60449号公報
【特許文献3】特開2015-156830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、滑らかでとろみのある食感と、雑味がなく乳本来の濃厚な風味を両立する前発酵型のヨーグルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生乳及び/又は牛乳を主成分とし、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含む原料から得られる前発酵型のヨーグルトによれば、滑らかでとろみのある食感と、雑味がなく乳本来の濃厚な風味を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第一は、前発酵型のヨーグルトであって、原料中、生乳及び/又は牛乳を60~97重量%含有し、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有することを特徴とする、前発酵型のヨーグルトに関する。前記前発酵型のヨーグルトにおいて、前記原料中の乳固形分の含有量が14.5~18重量%、乳タンパク質の含有量が4.5~6.5重量%であってよい。前記前発酵型のヨーグルトにおいて、前記原料中の乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が18~22重量%であってよい。前記前発酵型のヨーグルトにおいて、前記原料中、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が乾燥重量で0.5~7重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC)の含有量が乾燥重量で0.2~3重量%であってよい。前記前発酵型のヨーグルトにおいて、カードのメジアン径が5~70μmであってよい。本発明の第二は、前発酵型のヨーグルトの製造方法であって、生乳及び/又は牛乳を60~97重量%と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有するヨーグルトミックスを加熱処理する工程と、乳酸菌スターターを添加した前記加熱処理後のヨーグルトミックスを、pHが4.1~4.85となるまで発酵する工程と、前記発酵後のヨーグルトミックスのカードを、メジアン径が5~70μmとなるように粉砕する工程を含む、前発酵型のヨーグルトの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従えば、滑らかでとろみのある食感と、雑味がなく乳本来の濃厚な風味を両立する前発酵型のヨーグルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本明細書における乳及び乳製品に関する用語について説明する。
・「生乳」とは、搾取したままの牛の乳をいう。
・「牛乳」とは、直接飲用に供する目的又はこれを原料とした食品の製造若しくは加工の用に供する目的で販売する牛の乳をいうが、生乳から乳脂肪分その他の成分の一部を除去したものは含まない。
・「特別牛乳」とは、牛乳であって特別牛乳として販売するものをいう。なお、「特別牛乳」には「牛乳」の中でも特定の製造の方法の基準等が設けられている(昭和二十六年十二月二十七日厚生省令第五十二号「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に規定されるとおり)。
・「脱脂乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳の乳脂肪分を除去したものをいう。本開示において、低脂肪牛乳及び無脂肪牛乳は脱脂乳に含まれるものとする。
・「脱脂濃縮乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から乳脂肪分を除去したものを濃縮したものをいう。
・「脱脂粉乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳の乳脂肪分を除去したもの(つまり、脱脂乳)からほとんど全ての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。
・「乳タンパク質濃縮物(MPC:Milk Protein Concentrate)」とは、一般に脱脂乳を除菌した後、限外ろ過膜等の膜処理により乳糖及び塩類等を少なくとも部分的に除去して乳タンパク質を濃縮したものを、必要に応じて更に加熱、濃縮、乾燥したものである。本開示において、乳タンパク質濃縮物(MPC)は、同様な製造方法で得られる乳タンパク質濃縮物、例えば、ミルクプロテインアイソレート(MPI)、高純度乳タンパク質(TMP:Total Milk Protein)等も含むものとするが、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)は含まれない。
・「ヨーグルトミックス」とは、ヨーグルトの原料からなる混合物をいい、本開示においては、特に、生乳及び/又は牛乳;脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種;乳タンパク質濃縮物(MPC);並びにその他必要に応じて配合した任意成分からなる混合物をいう。
【0013】
本開示のヨーグルトは、特定量の生乳及び/又は牛乳と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を原料として用いる前発酵型のヨーグルトである。
【0014】
前記生乳及び/又は牛乳の含有量は、ヨーグルトの原料である発酵前のヨーグルトミックス中60~97重量%が好ましく、75~97重量%がより好ましく、90~97重量%が更に好ましい。含有量が60重量%より少ないと、乳本来の濃厚な風味が不足する場合がある。97重量%より多いと、とろみのある食感を得ることが困難となる場合がある。
【0015】
使用する生乳及び/又は牛乳の種類は特に限定されないが、乳本来の濃厚な風味を高める観点から、前記生乳及び/又は牛乳のタンパク還元価は2~9が好ましく、4~9がより好ましい。
【0016】
生乳と牛乳は、それぞれ単独で使用してもよく、生乳と牛乳を混合して使用してもよいが、生乳を単独で使用すると、乳本来の濃厚な風味が殺菌工程等で損なわれず、より乳本来の風味の濃厚なヨーグルトを得ることができる。前記生乳と牛乳を混合して使用する場合、混合割合は特に限定されないが、生乳と牛乳の混合物のタンパク還元価が前記範囲となることが好ましい。
【0017】
タンパク還元価は、公知の方法で測定することができる。タンパク還元価の測定方法としては、例えば、「日本薬学会編 乳製品試験法・注解」(金原出版株式会社、p.131、昭和59年3月20日発行)に記載される方法等が挙げられる。
【0018】
本開示のヨーグルトは、ヨーグルトの原料である発酵前のヨーグルトミックス中の乳固形分の含有量が14.5~18重量%であることが好ましく、14.5~17重量%であることがより好ましく、15.5~16.5重量%であることが更に好ましい。乳固形分の含有量が14.5重量%以上であると、14.5重量%より少ない場合に比べ乳本来の濃厚な風味がより強く感じられる。18重量%以下であると、18重量%より多い場合に比べ滑らかでとろみのある食感がより強く感じられる。
【0019】
前記乳固形分の含有量とは、乳脂肪分と無脂乳固形分の合計量を指す。前記乳脂肪分及び無脂乳固形分の含有量は、それぞれ日本国における厚生省令第五十二号「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の定量法である「牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳の乳脂肪分の定量法」(言い換えれば、レーゼゴットリーブ法)及び「乳及び乳製品の無脂乳固形分の定量法」に基づき測定することができる。
【0020】
本開示のヨーグルトは、ヨーグルトの原料である発酵前のヨーグルトミックス中の乳タンパク質の含有量が4.5~6.5重量%であることが好ましく、4.5~6重量%であることがより好ましく、4.7~5.2重量%であることが更に好ましい。乳タンパク質の含有量が4.5重量%以上であると、4.5重量%より少ない場合に比べ乳本来の濃厚な風味、及びとろみのある食感がより強く感じられる。6.5重量%以下であると、6.5重量%より多い場合に比べ滑らかでとろみのある食感がより強く感じられる。
【0021】
前記乳タンパク質の含有量とは、前述したヨーグルトの原料(生乳及び/又は牛乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群から選ばれる少なくとも1種、乳タンパク質濃縮物(MPC)、及び任意成分)に含まれる全ての乳由来のタンパク質の合計量を指す。
【0022】
ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中の乳タンパク質の含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、燃焼法により測定することができる。
【0023】
ヨーグルトの原料である前記ヨーグルトミックスに含まれる乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合は、より優れた風味と滑らかな食感の観点から18~22重量%が好ましく、19~21重量%がより好ましい。
【0024】
ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックスにおける乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合は、各原料におけるタンパク質の含有量と前記タンパク質中のホエイタンパク質の割合から算出される理論値として導くことができる。
【0025】
前記脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳の種類は特に限定されないが、ヨーグルトミックスの成分調整の容易さの観点から、脱脂粉乳が好ましい。
【0026】
本開示のヨーグルトは、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種を含有しないと、乳本来の濃厚な風味やとろみのある食感が得られない場合がある。
【0027】
前記脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、乾燥重量で0.5~7重量%が好ましく、1.5~6重量%がより好ましく、3~5重量%が更に好ましい。含有量が0.5重量%以上であると、0.5重量%より少ない場合に比べとろみのある食感、及び乳本来の濃厚な風味がより強く感じられる。7重量%以下であると、7重量%より多い場合に比べ雑味がより感じられず、滑らかでとろみのある食感がより強く感じられる場合がある。
【0028】
本開示のヨーグルトは、タンパク質濃縮物(MPC)を含有しないと、雑味が強い場合がある。
【0029】
前記乳タンパク質濃縮物(MPC)の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、乾燥重量で0.2~3重量%が好ましく、0.3~2重量%がより好ましく、0.4~1重量%が更に好ましい。含有量が0.2重量%以上であると、0.2重量%より少ない場合に比べ雑味がより感じられない。3重量%以下であると、3重量%より多い場合に比べ乳本来の濃厚な風味、及び滑らかさやとろみのある食感がより強く感じられる。
【0030】
本開示のヨーグルトは、乳本来の濃厚な風味や滑らかでとろみのある食感の観点からヨーグルトの原料である発酵前のヨーグルトミックス中の乳脂肪の含有量が3~5重量%であることが好ましく、3~4.5重量%であることがより好ましく、3~4重量%であることが更に好ましい。
【0031】
前記乳脂肪の含有量とは、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中に含まれる乳脂肪の合計量を指し、前述したヨーグルトの原料(生乳及び/又は牛乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群から選ばれる少なくとも1種、乳タンパク質濃縮物(MPC)、及び任意成分)に含まれる全ての乳脂肪の合計量を指す。
【0032】
ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中の乳脂肪の含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、レーゼゴットリーブ法により測定することができる。
【0033】
本開示のヨーグルトは、滑らかでとろみのある食感の観点から、粉砕後のカードのメジアン径は5~70μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、10~50μmが更に好ましい。
【0034】
ヨーグルトのカードのメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2((株)堀場製作所製)により、分散媒として水を用いて測定することができる。
【0035】
本開示のヨーグルトは、滑らかでとろみのある食感を得る観点から、BH型粘度計により、No.4のローターを用いて、2rpmの回転速度で、10℃において測定したときの粘度が20~60Pa・sであることが好ましく、23~60Pa・sであることがより好ましく、25~55Pa・sであることが更に好ましい。
【0036】
本開示のヨーグルトは、ヨーグルトの原料である発酵前のヨーグルトミックス中に、その効果を阻害しない限り、生乳、牛乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、及び乳タンパク質濃縮物(MPC)以外の任意成分を含むことができる。前記任意成分として、例えば生乳及び牛乳以外の乳や、乳製品、乳清タンパク質濃縮物、カゼインタンパク質、糖類、安定剤、油脂、乳化剤、着香料、着色料、風味材、酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
前記生乳及び牛乳以外の乳としては、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、生水牛乳、成分調整牛乳、及び加工乳が例示される。前記生乳及び牛乳以外の乳の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下が更に好ましい。
【0038】
前記乳製品としては、ホエイ、脱塩ホエイ、ホエイパウダー(脱塩ホエイパウダーを含む)、乳清ミネラル、全脂粉乳、全脂濃縮乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、クリーム、発酵クリーム、バター、発酵バター、バターミルク、バターミルクパウダー、バターオイル等が例示される。前記乳製品の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、乾燥重量で5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下が更に好ましい。
【0039】
前記乳清タンパク質濃縮物としては、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)が例示される。前記乳清タンパク質濃縮物の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、乾燥重量で0.15重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0040】
前記カゼインタンパク質としては、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインペプチドが例示される。前記カゼインタンパク質の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、乾燥重量で1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0041】
各成分の乾燥重量は、常圧加熱乾燥法により測定することができる。
【0042】
前記糖類としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖、還元パラチノース、ソルビトール、乳糖、還元乳糖、L-アラビノース、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖等の糖類や糖アルコール、蜂蜜やカエデ糖等の天然の甘味料等が例示される。前記糖類の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下が更に好ましい。
【0043】
前記安定剤としては、アラビアガム、カラギナン、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、ローメトキシルペクチン(LMペクチン)、ハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、グルコマンナン、ジェランガム、キサンタンガム、プルラン、カードラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、キチン、キトサン、ゼラチン等の増粘多糖類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の生澱粉;並びに前記生澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉及びデキストリン等が例示される。前記安定剤の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0044】
前記油脂としては、大豆油、綿実油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム核油、乳脂、ラード、魚油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂等が例示される。前記油脂の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、3重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下が更に好ましい。
【0045】
前記乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸が結合したモノグリセリド誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が例示される。前記乳化剤の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.2重量%以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0046】
前記着香料としては、ヨーグルトフレーバー、フルーツフレーバー、植物フレーバー、及びこれらの混合物等が例示される。前記フルーツフレーバーとしては、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚子及びライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、及びバナナ等が例示される。前記着香料の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、0.5重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましく、0.2重量%以下が更に好ましい。
【0047】
前記着色料としては、ベニコウジ色素、クチナシ、ラック、コチニール、カロテン等が例示される。前記着色料の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、0.2重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下が更に好ましい。
【0048】
前記風味材としては、苺;桃;マンゴー;パパイヤ;スイカ;メロン;林檎;柿;梨(洋なしも含まれる);バナナ;ビワ;ザクロ;レイシ;プラム;杏;パイナップル;葡萄;キーウイ;すもも;うめ;さくらんぼ;パッションフルーツ;ブラックカラント;レッドカラント;クランベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、及びラズベリーなどのベリー類;オレンジやグレープフルーツ等の柑橘類;並びにアロエ等の果肉・葉肉・種子・果皮をカットしたり、ピューレ状、すりおろし状としたもの、また、これらのフルーツを模したゼリー、寒天ゲル、ナタデココ、杏仁豆腐などのカット品等が例示される。前記風味材の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0049】
前記酸化防止剤としては、ビタミンA、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレン、フラボノイド、ポリフェノール、リコペン、ルテイン、リグナン等が例示される。前記酸化防止剤の含有量は、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックス中、0.2重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましく、0.05重量%以下が更に好ましい。
【0050】
本開示のヨーグルトは、前発酵型のヨーグルトである。前発酵型のヨーグルトの製造方法は特に限定されないが、製造方法の一態様について以下例示する。
【0051】
本開示の前発酵型のヨーグルトは、例えば、以下の製造方法により製造することができる。生乳及び/又は牛乳を60~97重量%と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有するヨーグルトミックスを加熱処理する工程と、乳酸菌スターターを添加した前記加熱処理後のヨーグルトミックスを、pHが4.1~4.85となるまで発酵する工程と、前記発酵後のヨーグルトミックスのカードを、メジアン径が5~70μmとなるように粉砕する工程を含む、製造方法。
【0052】
(加熱処理する工程)
生乳及び/又は牛乳を60~97重量%と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有するヨーグルトミックスを加熱処理する工程について述べる。当該加熱処理する工程により、乳本来の濃厚な風味と滑らかでとろみのある食感があるヨーグルトが得られる。
【0053】
加熱処理は、生乳及び/又は牛乳と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含むヨーグルトミックスを乳化及び/又は溶解、並びに殺菌するために行うものであり、例えば、80~98℃、好ましくは85~95℃の温度に、1~50分間、好ましくは5~20分間保持すればよい。また、その加熱処理方法としては、例えば、ヨーグルトミックスを、加熱殺菌に用いる装置を用いて昇温し前記温度に到達した後、加熱及び温度保持ができる装置に入れて、所定時間保持することにより行う。これにより、ヨーグルトミックスが殺菌される。前記加熱殺菌に用いる装置としては、乳の加熱殺菌を実施するための加熱装置であれば特に限定されず、適宜選択することができるが、生産性を考慮して、流路式殺菌装置が好ましい。そのような殺菌装置としては、例えば、プレート式殺菌装置、チューブ式殺菌装置、スピンジェクション式殺菌装置、ジュール式殺菌装置等が挙げられるが、これらに限定されない。また、加熱及び温度保持ができる装置としては、保温可能なジャケット付きの容器、タンク等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
また、ヨーグルトミックスを加熱処理する工程の前に、ヨーグルトミックスの調整のために、前述したヨーグルトの原料(生乳及び/又は牛乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群から選ばれる少なくとも1種、乳タンパク質濃縮物(MPC)、及び任意成分)を混合して溶解することが好ましい。
【0055】
また、前記加熱処理する工程の前に、原料であるヨーグルトミックス中の乳に含まれる脂肪球の径をそろえて品質を安定化することを目的に、公知の均質化処理を実施してもよい。その場合、ホモジナイザー、マイクロフルダイザー、コロイドミル等の装置を用いることができる。このような均質化処理は、前記加熱処理する工程の後であって、乳酸菌スターター添加の前に行なうこともできる。
【0056】
(発酵する工程)
前記加熱処理後のヨーグルトミックスに乳酸菌スターターを添加し、pHが4.1~4.85となるまで発酵することにより、発酵工程後のヨーグルトミックスが得られる。また、前記pHは4.2~4.8が好ましく、4.2~4.7がより好ましい。
【0057】
発酵時のヨーグルトミックスの温度は、36~42℃が好ましく、38~42℃がより好ましい。前記加熱処理後のヨーグルトミックスは、乳酸菌スターターを添加する前に、予め36~42℃に温調しておくことが好ましく、38~42℃に温調しておくことがより好ましい。
【0058】
前記発酵する工程は、発酵を二段階で行うこともできる。例えば、ヨーグルトミックスの温度を36~42℃である程度発酵(一次発酵)をさせた後、ヨーグルトミックスを15~25℃となるまで冷却し、同温度条件(15~25℃)下で二次発酵することもできる。二次発酵を行うことにより、大きめのカードが再生し、ヨーグルトの濃厚な風味ととろみを向上させることができる。二次発酵時の温度条件は、15~19℃が好ましい。
【0059】
前記二次発酵を行う場合、ヨーグルトの濃厚な風味ととろみを更に向上させる観点から、ヨーグルトミックスのpHが4.2~4.75となるまで行うことが好ましく、4.2~4.6がより好ましく、4.3~4.6が更に好ましい。
【0060】
前記乳酸菌スターターは、特に限定されず、公知の乳酸菌スターターを用いることができ、例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)に属する乳酸球菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)に属する乳酸桿菌、ビフィズス菌(Bifidobacterium)等が挙げられる。具体例としては、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus、Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium lactis等が挙げられる。
【0061】
前記乳酸菌スターターの添加量は特に限定されず、ヨーグルトの作製に通常使用される量であればよい。例えば、ヨーグルトミックス100重量部に対して、0.00001~5重量部添加すればよく、凍結乾燥タイプでは0.00001~0.05重量部、発酵液タイプでは0.01~5重量部を目安とすればよい。
【0062】
(粉砕する工程)
前記発酵工程で得られた発酵後のヨーグルトミックスのカードを、メジアン径が5~70μmとなるように粉砕する。
【0063】
カードの粉砕は、公知の方法により行うことができ、具体的には、メッシュフィルターを用いる方法や、タンク内での撹拌による方法などが挙げられる。簡便性とカードサイズの均一性の観点から、メッシュフィルターを用いる方法が好ましい。
【0064】
使用するメッシュフィルターのメッシュサイズとしては、例えば、10~100メッシュが好ましく、20~90メッシュがより好ましく、30~70メッシュが更に好ましい。
【0065】
メッシュフィルターを通す時の圧力条件としては、例えば、0.01~0.45MPaが好ましく、0.05~0.45MPaがより好ましく、0.1~0.4MPaが更に好ましい。
【0066】
(充填工程及び冷却工程)
以上の製造方法によって得られたヨーグルトは、任意の容器に充填することができる。任意の容器に充填した後、冷却することが好ましい。冷却温度は、保存性の観点から1~10℃が好ましく、3~10℃がより好ましい。
【0067】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
前発酵型のヨーグルトであって、原料中、生乳及び/又は牛乳を60~97重量%含有し、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有することを特徴とする、前発酵型のヨーグルト。
[項目2]
前記原料中の乳固形分の含有量が14.5~18重量%、乳タンパク質の含有量が4.5~6.5重量%である、項目1に記載の前発酵型のヨーグルト。
[項目3]
前記原料中の乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が18~22重量%である、項目1又は2に記載の前発酵型のヨーグルト。
[項目4]
前記原料中、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種の含有量が乾燥重量で0.5~7重量%、乳タンパク質濃縮物(MPC)の含有量が乾燥重量で0.2~3重量%である、項目1~3の何れか1項に記載の前発酵型のヨーグルト。
[項目5]
カードのメジアン径が5~70μmである、項目1~4の何れか1項に記載の前発酵型のヨーグルト。
[項目6]
前発酵型のヨーグルトの製造方法であって、
生乳及び/又は牛乳を60~97重量%と、脱脂乳、脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳からなる群より選択される少なくとも1種と、乳タンパク質濃縮物(MPC)を含有するヨーグルトミックスを加熱処理する工程と、
乳酸菌スターターを添加した前記加熱処理後のヨーグルトミックスを、pHが4.1~4.85となるまで発酵する工程と、
前記発酵後のヨーグルトミックスのカードを、メジアン径が5~70μmとなるように粉砕する工程を含む、前発酵型のヨーグルトの製造方法。
【実施例0068】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0069】
実施例及び比較例で使用した原料は以下の通りである。
1)生乳:(乳脂肪分:3.7%、乳タンパク質含有量:3.2%、タンパク還元価:4.4)
2)脱脂粉乳:(株)カネカ製「カネカ脱脂粉乳」(乳脂肪分:1.0%、乳タンパク質含有量:34.0%、水分含有量:3.8%)
3)MPC:Glanbia Nutritionals社製「MPC80 SOLMIKO」(乳脂肪分:1.5%、乳タンパク質含有量:80.5%、水分含有量:4.2%)
4)生クリーム:(株)明治製「明治十勝フレッシュクリーム47」(乳脂肪分:47.0%、乳タンパク質含有量:1.0%)
5)WPC:Warrnambool Cheese and Butter社製「WPC80」(乳脂肪分:4.8%、乳タンパク質含有量:76.5%)
6)乳清ミネラル:メイトー 協同乳業(株)製「乳清ミネラルNWP-20N」(乳脂肪分:1.6%、乳タンパク質含有量:16.0%)
7)乳糖:HILMAR CHEESE CO.製「ラクトース HILMAR FINE GRAIND」
8)乳酸菌スターター:Danisco社製「YO-MIX207」
【0070】
[測定方法]
<タンパク還元価の測定>
タンパク還元価の測定は、「日本薬学会編 乳製品試験法・注解」(金原出版株式会社、p.131、昭和59年3月20日発行)に記載の方法に準拠して行った。
【0071】
<ヨーグルトミックスの組成分析>
乳固形分、乳タンパク質、乳脂肪の含有量は、下記の通り、一般的な乳製品の栄養成分分析法に準じて分析した。
乳固形分:「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」に記載の定量法である「牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳の乳脂肪分の定量法」(レーゼゴットリーブ法)及び「乳及び乳製品の無脂乳固形分の定量法」に基づいて測定した。
乳タンパク質:燃焼法
乳脂肪:レーゼゴットリーブ法
【0072】
脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、及びMPCの乾燥重量は、常圧加熱乾燥法により測定した。
【0073】
ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックスにおける乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合は、各原料中のタンパク質の含有量と前記各原料中のタンパク質中のホエイタンパク質の割合から算出される理論値として算出した。具体的には、生乳、生クリーム、脱脂粉乳、及びMPCにおける全タンパク質中のホエイタンパク質の割合を20重量%とし、WPCにおける全タンパク質中のホエイタンパク質の割合を100重量%として、ヨーグルトの原料であるヨーグルトミックスにおける乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合を算出した。
【0074】
<粘度の測定>
ヨーグルトの粘度は、BH型粘度計(東京計器(株)製)により、No.4のローターを使用し、2rpmの回転速度で、10℃において測定した。
【0075】
<カードのメジアン径の測定>
ヨーグルトのカードのメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2((株)堀場製作所製)により、分散媒として水を用いて測定した。
【0076】
<官能評価>
熟練した10人のパネラーに、実施例及び比較例で得られた各ヨーグルトを10℃に温調したものを飲食してもらい、雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の観点で各々の官能評価を行い、その評価点の平均値を官能評価の評価値として表に記載した。その際の評価基準は以下の通りであった。
【0077】
(雑味のなさ)
雑味のなさについては、生乳や牛乳本来の味とは異質の後味、異味、苦味、塩味が感じられないとの観点から評価した。
5点:実施例1のヨーグルトよりも良く、雑味が全く感じられない
4点:実施例1のヨーグルトと同等で、雑味が感じられない
3点:実施例1のヨーグルトよりも少し悪く、雑味が僅かに感じられるが、品質的に問題となるレベルではない
2点:実施例1のヨーグルトよりも悪く、雑味が感じられる
1点:実施例1のヨーグルトよりも非常に悪く、雑味が明らかに感じられる
【0078】
(乳本来の濃厚な風味)
乳本来の濃厚な風味については、乳風味の濃さとコクが感じられるかとの観点から評価した。
5点:実施例1のヨーグルトよりも良く、乳本来の濃厚な風味が強く感じられる
4点:実施例1のヨーグルトと同等で、乳本来の濃厚な風味が感じられる
3点:実施例1のヨーグルトよりも少し悪く、乳本来の濃厚な風味がやや感じられ難い
2点:実施例1のヨーグルトよりも悪く、乳本来の濃厚な風味が感じられ難い
1点:実施例1のヨーグルトよりも非常に悪く、乳本来の濃厚な風味が感じられない
【0079】
(滑らかな食感)
滑らかな食感については、ざらつきがない舌触りであり、口溶けのよい食感が感じられるかとの観点から評価した。
5点:実施例1のヨーグルトよりも良く、滑らかな食感が強く感じられる
4点:実施例1のヨーグルトと同等で、滑らかな食感が感じられる
3点:実施例1のヨーグルトよりも少し悪く、滑らかな食感がやや感じられ難い
2点:実施例1のヨーグルトよりも悪く、滑らかな食感が感じられ難い
1点:実施例1のヨーグルトよりも非常に悪く、滑らかな食感が感じられない
【0080】
(とろみ感)
とろみ感については、ヨーグルトをスプーンですくった時の流動性の程度が適切であるかとの観点から評価した。
5点:実施例1のヨーグルトよりも非常に良く、とろみ感が強く感じられる
4点:実施例1のヨーグルトと同等で、とろみ感が感じられる
3点:実施例1のヨーグルトよりも少し悪く、とろみ感がやや感じられ難い
2点:実施例1のヨーグルトよりも悪く、流動性が低い又は高くてとろみ感が感じられ難い
1点:実施例1のヨーグルトよりも非常に悪く、流動性が低すぎる又は高すぎてとろみ感が全く感じられない
【0081】
(総合評価)
雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りであった。
A:雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の全てが4.0点以上5.0点以下を満たすもの。
B:雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感が全て3.5点以上5.0点以下であって、且つ3.5以上4.0未満が少なくとも一つあるもの。
C:雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感が全て3.0点以上5.0点以下であって、且つ3.0以上3.5未満が少なくとも一つあるもの。
D:雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感が全て2.0点以上5.0点以下であって、且つ2.0以上3.0未満が少なくとも一つあるもの。
E:雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の評価において、2.0点未満が少なくとも一つあるもの。
【0082】
[ヨーグルトの製造例]
(実施例1)
表1に示す配合に従って、生乳:95.6重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部、MPC:0.5重量部を添加し、溶解してヨーグルトミックスを調製した。これらを60℃に予備加熱し、高圧ホモジナイザーを用いて3.5/17MPaの圧力で均質化し、プレート式殺菌装置を用いて90℃まで昇温し、ジャケット付のタンクで、90℃で10分間保持して加熱処理した。
【0083】
その後、40℃まで冷却し、乳酸菌スターター(Streptococcus thermophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus、Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium lactis)を0.0014重量部添加し、40℃の温度条件下で、pH4.5になるまで発酵を行なった。発酵後のヨーグルトミックスを、0.22MPaの圧力で60メッシュのフィルターに通して、カードの粉砕を行った後、小売用容器に充填し、冷蔵倉庫で8℃まで冷却して、前発酵型のヨーグルトを得た。
【0084】
得られたヨーグルトについて、熟練した10人のパネラーにより官能評価を行ったところ、雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の全てに優れる良好な品質のヨーグルトと評価された。更に、粘度、及びカードのメジアン径を測定した結果を表1に示した。
【0085】
(実施例2)
表1の配合に従って、生乳:95.6重量部を60.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を7.0重量部に、MPC:0.5重量部を1.0重量部に変更し、生クリーム:3.0重量部、及び、水:29.0重量部を添加し、溶解してヨーグルトミックスを調製した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0086】
(実施例3)
表1の配合に従って、生乳:95.6重量部を97.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を2.0重量部に、MPC:0.5重量部を1.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0087】
(実施例4)
表1の配合に従って、生乳:95.6重量部を96.5重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を0.5重量部に、MPC:0.5重量部を3.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0088】
(比較例1)
表1の配合に従って、生乳:95.6重量部を40.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を7.0重量部に、MPC:0.5重量部を1.0重量部に変更し、生クリーム:4.5重量部、乳糖:2.0重量部、及び、水:45.5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0089】
表1から明らかなように、原料中、生乳が60~97重量%の範囲にある前発酵型のヨーグルト(実施例1~4)は、いずれも雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感は良好な評価結果であった。特に、原料中の乳固形分の含有量が15.5~16.5重量%、乳タンパク質の含有量が4.7~5.2重量%の範囲にある実施例1は総合評価がAであった。一方、原料中、生乳の配合量が40.0重量%と少ない前発酵型のヨーグルト(比較例1)は、乳本来の濃厚な風味の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0090】
(比較例2)
表1の配合に従って、脱脂粉乳を配合せず、生乳:95.6重量部を93.5重量部に、MPC:0.5重量部を6.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0091】
(比較例3)
表1の配合に従って、MPCを配合せず、生乳:95.6重量部を95.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を5.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0092】
(比較例4)
表1の配合に従って、脱脂粉乳及びMPCを配合せず、生乳:95.6重量部を98.0重量部に変更し、WPC:1.0重量部、及び、乳清ミネラル:1.0重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表1に示した。
【0093】
表1から明らかなように、脱脂粉乳を含まない前発酵型のヨーグルト(比較例2)は、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感の評価が悪く、総合評価はDであった。また、MPCを含まない前発酵型のヨーグルト(比較例3)は、雑味のなさの評価が悪く、総合評価はDであった。更に、脱脂粉乳、及び、MPCを含まない前発酵型のヨーグルト(比較例4)は、乳本来の濃厚な風味、及び、とろみ感の評価が悪く、総合評価はDであった。
【0094】
【表1】
【0095】
(実施例5)
表2の配合に従って、生乳:95.6重量部を95.2重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を4.0重量部に、MPC:0.5重量部を0.8重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を実施例1及び3の結果とともに表2に示した。
【0096】
(実施例6)
表2の配合に従って、生乳:95.6重量部を87.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を7.0重量部に変更し、水:5.5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0097】
(実施例7)
表2の配合に従って、生乳:95.6重量部を70.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を6.0重量部に、MPC:0.5重量部を2.6重量部に変更し、水:21.4重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0098】
(実施例8)
表2の配合に従って、生乳:95.6重量部を95.7重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を3.6重量部に、MPC:0.5重量部を0.55重量部に変更し、WPC:0.15重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0099】
表2から明らかなように、原料中の乳固形分の含有量が14.5~18重量%、乳タンパク質の含有量が4.5~6.5重量%の範囲にある前発酵型のヨーグルト(実施例1、3、5~8)は、いずれも雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、滑らかな食感、及び、とろみ感は良好な評価結果であった。特に、原料中の乳固形分の含有量が15.5~16.5重量%、乳タンパク質の含有量が4.7~5.2重量%、乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が19~21重量%の範囲にある実施例1及び5は総合評価がAであった。また、原料中の乳固形分の含有量と乳タンパク質の含有量が実施例1と同等で、乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が22重量%である前発酵型のヨーグルト(実施例8)は、乳タンパク質中のホエイタンパク質の割合が20重量%である前発酵型のヨーグルト(実施例1)に比べて、とろみ感は良かったものの、雑味のなさ、乳本来の濃厚な風味、及び、滑らかな食感の評価が劣った。
【0100】
(比較例5)
表2の配合に従って、MPCを配合せず、生乳:95.6重量部を95.0重量部に、脱脂粉乳:3.9重量部を4.0重量部に変更し、WPC:1.0重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0101】
(比較例6)
表2の配合に従って、脱脂粉乳及びMPCを配合せず、生乳:95.6重量部を96.5重量部に変更し、WPC:3.5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0102】
表2から明らかなように、MPCを含まない前発酵型のヨーグルト(比較例5)は、雑味のなさの評価が悪く、総合評価はDであった。また、脱脂粉乳及びMPCを含まない前発酵型のヨーグルト(比較例6)は、雑味のなさ、及び、とろみ感の評価も悪く、総合評価はDであった。
【0103】
(実施例9)
表2の製造条件に従って、実施例1と同様の方法で発酵させて得られた発酵後のヨーグルトミックスについて、パドル型の撹拌羽を有するタンクにおいて、0.35回転/秒の撹拌速度で90分間の撹拌によりカードの粉砕を行った後、小売用容器に充填し、冷蔵倉庫で8℃まで冷却して、前発酵型のヨーグルトを得た。得られたヨーグルトについて、粘度、及びカードのメジアン径を測定し、官能評価を行った結果を表2に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
表2から明らかなように、実施例1と同じ配合であるもののカードの粉砕を撹拌により行い、メジアン径が大きな値を示す前発酵型のヨーグルト(実施例9)は、実施例1と比べて滑らかな食感、及び、とろみ感が劣り、総合評価がCであった。