(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122145
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 1/08 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F04D1/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029524
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 康志
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA06
3H130AA30
3H130AA32
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB68
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA74A
3H130BA74C
3H130CA01
3H130CA21
3H130CB00
3H130DA02Z
3H130DC12X
(57)【要約】
【課題】遠心ポンプにおいて軸スラスト力の発生を抑制する。
【解決手段】本発明に係る遠心ポンプ1は、モータ3と、回転軸4と、第1インペラ6と、第2インペラ7と、第1インペラが収容される第1ポンプ室23と、第2インペラが収容される第2ポンプ室24と、回転軸が挿通される挿通孔21cを備えて第1ポンプ室と第2ポンプ室とを区画する中央隔壁部21と、を有してなる。第1インペラは、取扱液を第1方向側から吸い込む第1吸込口65と、中央隔壁部に対向する第1シュラウド62と、を備える。第2インペラは、取扱液を第2方向側から吸込む第2吸込口75と、中央隔壁部に対向する第2シュラウド72と、を備える。第1インペラと中央隔壁部との間には、挿通孔と連通する第1空間S11が形成される。第2インペラと中央隔壁部との間には、挿通孔と連通する第2空間S21が形成される。第2シュラウドの外径は、第1シュラウドの外径よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動により回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられて、取扱液を吸込み、吐出する第1インペラと、
前記回転軸に取り付けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を吸込み、吐出する第2インペラと、
前記第1インペラが収容される第1ポンプ室と、
前記回転軸の軸方向において前記第1ポンプ室と並んで配置されて、前記第2インペラが収容される第2ポンプ室と、
前記回転軸が挿通される挿通孔を備えて、前記第1ポンプ室と前記第2ポンプ室とを区画する中央隔壁部と、
を有してなり、
前記軸方向において、前記第2インペラに対して前記第1インペラが配置されている方向が第1方向であり、前記第1方向の反対側の方向が第2方向であり、
前記第1インペラは、
前記第1方向に向けられて、前記取扱液を前記第1方向側から吸い込む第1吸込口と、
前記中央隔壁部に対向する第1シュラウドと、
を備えて、
前記第2インペラは、
前記第2方向に向けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を前記第2方向側から吸込む第2吸込口と、
前記中央隔壁部に対向する第2シュラウドと、
を備えて、
前記第1インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第1空間が形成されて、
前記第2インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第2空間が形成されて、
前記第2空間と前記第1空間とは、前記挿通孔を介して互いに連通して、
前記第2シュラウドの外径は、前記第1シュラウドの外径よりも大きい、
遠心ポンプ。
【請求項2】
前記第2インペラと前記第2ポンプ室とにより構成される第2ポンプ部に設定される比速度は、前記第1インペラと前記第1ポンプ室とにより構成される第1ポンプ部に設定される比速度よりも小さい、
請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記第1インペラに対して前記第1方向側に配置されて、前記中央隔壁部と共に前記第1ポンプ室を区画する第1隔壁部と、
前記第2インペラに対して前記第2方向側に配置されて、前記中央隔壁部と共に前記第2ポンプ室を区画する第2隔壁部と、
を有してなり、
前記第1インペラは、前記第1シュラウドに対して前記第1方向側に配置される第3シュラウド、を備えて、
前記第2インペラは、前記第2シュラウドに対して前記第2方向側に配置される第4シュラウド、を備えて、
前記第3シュラウドは、前記第1吸込口を構成する第1円筒部、を備えて、
前記第4シュラウドは、前記第2吸込口を構成する第2円筒部、を備えて、
前記第2隔壁部のうち前記第2円筒部に対向する部分と、前記第2円筒部と、の間の第2隙間は、前記第1隔壁部のうち前記第1円筒部に対向する部分と、前記第1円筒部と、の間の第1隙間よりも大きい、
請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記中央隔壁部は、前記第2空間に面して、前記第2空間を流れる前記取扱液の旋回成分を抑制するように構成される少なくとも1の凸部または凹部、を備える、
請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記第1シュラウドの前記外径および前記第2シュラウドの前記外径は、前記第1インペラおよび前記第2インペラが前記取扱液を吐出しているとき、前記回転軸を前記第1方向に向けて移動させるように作用する第1軸スラスト力と、前記回転軸を前記第2方向に向けて移動させるように作用する第2軸スラスト力と、が釣り合うように設定される、
請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
前記第2空間と前記挿通孔とは、前記第2インペラにより吐出された前記取扱液の一部が前記第1空間に流れるリターン流路を構成して、
前記回転軸が前記第1方向に向けて移動するにつれて前記リターン流路の一部を狭めて、前記回転軸が前記第2方向に向けて移動するにつれて前記一部を広めるように構成される可変オリフィス、を有してなる、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の遠心ポンプ。
【請求項7】
前記可変オリフィスは、
前記第2シュラウドから前記第1方向に向けて突出する突出部、および/または、
前記中央隔壁部から前記第2方向に向けて突出する突出部、
により構成される、
請求項6に記載の遠心ポンプ。
【請求項8】
前記突出部は、前記回転軸の周方向に沿うリング状で、
前記回転軸の径方向において、前記第2シュラウドの内縁部寄りに配置されて、および/または、
前記径方向において、前記中央隔壁部の内縁部寄りに配置される、
請求項7に記載の遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプは、モータ、回転軸、インペラ、および筐体を備える。インペラは、モータの動作により回転する回転軸に取り付けられて、回転軸の回転と共に回転することにより、回転軸の軸方向における一方向側から取扱液を吸込み、例えば、インペラの径方向の外方に取扱液を吐出する。インペラは、複数の羽根、正面シュラウド(側板)、および背面シュラウド(主板)を備える。軸方向において、正面シュラウドは羽根の一方向側を覆い、背面シュラウドは羽根の他方向側を覆う。インペラから吐出された高圧の取扱液の一部は、正面シュラウドと筐体との間、および、背面シュラウドと筐体との間にも流入して、正面シュラウドを背面シュラウド側に向けて押圧して、背面シュラウドを正面シュラウド側に押圧する。通常、背面シュラウドの受圧面積は、正面シュラウドの受圧面積よりも大きい。そのため、軸方向において、インペラには、インペラを一方向側に押す力(軸スラスト力)が作用している。
【0003】
遠心ポンプにおいて、吸込み性能を向上させつつ高揚程化を図るために、1の回転軸に取り付けられた複数のインペラにより取扱液を順次吐出する多段遠心ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。前述された軸スラスト力は、インペラの数(段数)に応じて大きくなる。そのため、多段遠心ポンプでは、複数のインペラが前段グループと後段グループとに分けられていて、前段グループが後段グループと背中合わせになるように回転軸に取り付けられている。前段グループのインペラの設計は、回転方向を除き、後段グループのインペラの設計と同一であるため、前段グループの軸スラスト力は後段グループの軸スラスト力と釣り合い、両軸スラスト力はキャンセルされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、前段グループと後段グループとの間に配置される隔壁と回転軸との間には、メカニカルシールが取り付けられている。そのため、後段グループの取扱液は、前段グループに流入しない。しかしながら、取扱液の粘度が低い場合、取扱液によるメカニカルシールの潤滑性能が低下するため、隔壁と回転軸との間にメカニカルシールを使用しない構成も採用され得る。後段グループを流れる取扱液の圧力は前段グループを流れる取扱液の圧力よりも高い。そのため、同構成では、後段グループの取扱液が隔壁と回転軸との間の隙間を介して前段グループに流入して、その流れにより前段グループの軸スラスト力が強まり、後段グループの軸スラスト力が弱まる。その結果、前段グループの吸込口側に向かう軸スラスト力が生じる。
【0006】
本発明は、多段遠心ポンプにおいて軸スラスト力の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様における遠心ポンプは、モータと、前記モータの駆動により回転する回転軸と、前記回転軸に取り付けられて、取扱液を吸込み、吐出する第1インペラと、前記回転軸に取り付けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を吸込み、吐出する第2インペラと、前記第1インペラが収容される第1ポンプ室と、前記回転軸の軸方向において前記第1ポンプ室と並んで配置されて、前記第2インペラが収容される第2ポンプ室と、前記回転軸が挿通される挿通孔を備えて、前記第1ポンプ室と前記第2ポンプ室とを区画する中央隔壁部と、を有してなり、前記軸方向において、前記第2インペラに対して前記第1インペラが配置されている方向が第1方向であり、前記第1方向の反対側の方向が第2方向であり、前記第1インペラは、前記第1方向に向けられて、前記取扱液を前記第1方向側から吸い込む第1吸込口と、前記中央隔壁部に対向する第1シュラウドと、を備えて、前記第2インペラは、前記第2方向に向けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を前記第2方向側から吸込む第2吸込口と、前記中央隔壁部に対向する第2シュラウドと、を備えて、前記第1インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第1空間が形成されて、前記第2インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第2空間が形成されて、前記第2空間と前記第1空間とは、前記挿通孔を介して互いに連通して、前記第2シュラウドの外径は、前記第1シュラウドの外径よりも大きい、遠心ポンプである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多段遠心ポンプにおいて軸スラスト力の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る遠心ポンプの実施の形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図1の遠心ポンプが備える中央隔壁部の模式後面図である。
【
図4】
図1の遠心ポンプが備える第2インペラの模式前面図である。
【
図5】(a)は、従来ポンプにおける軸スラスト力を説明する模式部分拡大断面図であり、(b)は、メカニカルシールを備えていない従来ポンプにおける軸スラスト力を説明する模式部分拡大断面図である。
【
図6】
図1の遠心ポンプにおける軸スラスト力に対する
図4の第2インペラの影響を説明する模式部分拡大断面図である。
【
図7】
図1の遠心ポンプにおける軸スラスト力に対する、
図1の遠心ポンプが備える第2固定オリフィスの影響を説明する模式部分拡大断面図である。
【
図8】
図1の遠心ポンプにおける軸スラスト力に対する、
図4の第2インペラが備える凸部の影響を説明する模式部分拡大断面図であり、(a)は第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合っている状態を示していて、(b)は第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも大きい状態を示していて、(c)は第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも小さい状態を示している。
【
図9】第1変形例に係る遠心ポンプの模式部分拡大断面図である。
【
図10】(a)は第2変形例に係る遠心ポンプの模式部分拡大断面図であり、(b)は第3変形例に係る遠心ポンプの模式部分拡大断面図であり、(c)は第4変形例に係る遠心ポンプの模式部分拡大断面図である。
【
図11】第5変形例に係る遠心ポンプを示す模式部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る遠心ポンプの実施の形態が、以下に説明される。以下の説明において、各図面は、適宜参照される。各図面において、同一の部材および要素については同一の符号が付されて、重複する説明は省略される。また、各要素の寸法比率は、説明の便宜上、誇張されている場合が有り、各図面に示されている比率に限定されない。
【0011】
●遠心ポンプ●
●遠心ポンプの構成
図1は、本発明に係る遠心ポンプの実施の形態を示す模式断面図である。
同図では、後述される筐体2の一部が模式断面図として示されていて、他の部分は簡略化されて示されている。同図は、遠心ポンプ1が後述される回転軸4の軸方向に沿って、同回転軸4の軸中心を通るように上下方向に切断された状態の断面(
図2、および
図5~
図11も同じ。)、を模式的に示している。
【0012】
遠心ポンプ1は、取扱液を吸込み、吐出する(送液する)。遠心ポンプ1は、筐体2、モータ3、回転軸4、軸受51,52、第1インペラ6、および第2インペラ7を有してなる。すなわち、遠心ポンプ1は、2つのインペラ(第1インペラ6、第2インペラ7)を備える、2段遠心ポンプであり、本発明における遠心ポンプの一例である。
【0013】
「取扱液」は、遠心ポンプ1に取り扱われる(送液される)液体である。本実施の形態において、取扱液は、低粘度の液体であり、例えば、極低温の液化ガス(例えば、液化天然ガス、液体水素など)である。
【0014】
以下の説明において、「前方向」はモータ3に対して第1インペラ6および第2インペラ7が位置する方向であり、「後方向」は第1インペラ6および第2インペラ7に対してモータ3が位置する方向である。「軸方向」は回転軸4の軸中心線に沿う方向(前後方向)であり、「径方向」は回転軸4の半径方向であり、「周方向」は回転軸4の円周方向である。「上流側」は取扱液の筐体2内の流れにおける上流側であり、「下流側」は取扱液の筐体2内の流れにおける下流側である。前方向は本発明における第1方向の一例であり、後方向は本発明における第2方向の一例である。
【0015】
筐体2は、モータ3、回転軸4、軸受51,52、第1インペラ6、および第2インペラ7を収容する。筐体2は、第1隔壁部20、中央隔壁部21、第2隔壁部22、第1ポンプ室23、第2ポンプ室24、連結流路25、吐出流路26、吸込管27、吐出管28、およびモータ室29を備える。
【0016】
図2は、遠心ポンプ1の部分拡大断面図である。
同図は、第1インペラ6および第2インペラ7を中心とする遠心ポンプ1の上半部の断面を示している。以下の説明において、
図1も適宜参照される。
【0017】
第1隔壁部20は、中央隔壁部21と共に、第1ポンプ室23を区画する隔壁である。第1隔壁部20は、第1インペラ6に対して前方であって、筐体2の前端部に配置されている。第1隔壁部20は、内面20aおよび第1貫通孔20bを備える。
【0018】
内面20aは、後述される第1インペラ6の第1正面シュラウド63の形状に沿うように前方へ向けて略円錐台状に凹む湾曲面である。
【0019】
軸方向視において、第1貫通孔20bは、第1隔壁部20の中央部を軸方向に沿って2段円柱状に貫通する貫通孔である。第1貫通孔20bは、第1ポンプ室23および吸込管27と連通している。第1貫通孔20bは、小径部20c、大径部20d、および段部20eを備える。小径部20cの内径は、大径部20dの内径よりも小さい。軸方向において、小径部20cは大径部20dの前方に、大径部20dに隣接して配置されている。段部20eは、小径部20cと大径部20dとの間に配置されていて、小径部20cと大径部20dそれぞれに連続している面である。軸方向視において、段部20eの形状は、リング状である。小径部20cは取扱液を第1インペラ6へと導入する流路として機能している。
【0020】
中央隔壁部21は、第1隔壁部20と共に第1ポンプ室23を区画すると共に、第2隔壁部22と共に第2ポンプ室24を区画する隔壁である。中央隔壁部21は、第1隔壁部20の後方に配置されている。中央隔壁部21は、前面21a、後面21b、中央貫通孔21c、および8個の凹部21dを備える。前面21aは前方に向けられている面であり、後面21bは後方に向けられている面である。
【0021】
軸方向視において、中央貫通孔21cは、中央隔壁部21の中央部を軸方向に沿って円柱状に貫通する貫通孔である。中央貫通孔21cには回転軸4が挿通されている。中央貫通孔21cは、本発明における挿通孔の一例である。
【0022】
図3は、中央隔壁部21の模式後面図である。
同図は、中央隔壁部21を後方から見た状態を模式的に示している。同図は、回転軸4、後述される第1ハブ部64も併せて示している。また、同図は、説明の便宜上、第2インペラ7および凸部72cも二点鎖線で仮想的に示している。以下の説明では、
図2も適宜参照される。
【0023】
凹部21dは、後述される第2背面側空間S21を流れる取扱液の旋回成分を抑制する。中央隔壁部21の後面21bの一部は、前方に向けて矩形状に凹んでいて、凹部21dを形成している。周方向において、8個の凹部21dは、後面21bに等角度(本実施の形態では45度)間隔で配置されている。軸方向視において、凹部21dの形状は、凹部21dの長手方向が径方向に沿う長方形状である。軸方向視において、凹部21dの内縁部(径方向の内方側の縁部)は、後述される第2インペラ7の凸部72cの外縁部と同じ位置に配置されている。軸方向視において、凹部21dの外縁部(径方向の外方側の縁部)は、第2インペラ7の内縁部と外縁部との中間部と略同じ位置に配置されている。
【0024】
本説明において主に参照される図面は、
図1および
図2に戻る。
第2隔壁部22は、中央隔壁部21と共に、第2ポンプ室24を区画する隔壁である。第2隔壁部22は、第2インペラ7に対して後方であって、中央隔壁部21の後方に配置されている。第2隔壁部22は、内面22aおよび第2貫通孔22bを備える。
【0025】
内面22aは、後述される第2インペラ7の第2正面シュラウド73の形状に沿うように後方へ向けて略円錐台状に凹む湾曲面である。
【0026】
軸方向視において、第2貫通孔22bは、第2隔壁部22の中央部を軸方向に沿って円柱状に貫通する貫通孔である。第2貫通孔22bは、第2ポンプ室24および連結流路25と連通している。第2貫通孔22bは、小径部22c、大径部22d、第1段部22e、挿通部22f、および第2段部22gを備える。小径部22cの内径は、挿通部22fの内径よりも大きく、大径部22dの内径よりも小さい。軸方向において、挿通部22fは小径部22cの後方に小径部22cに隣接して配置されていて、大径部22dは小径部22cの前方に小径部22cに隣接して配置されている。第1段部22eは、小径部22cと大径部22dとの間に配置されていて、小径部22cと大径部22dそれぞれに連続している面である。第2段部22gは、挿通部22fと小径部22cとの間に配置されていて、挿通部22fと小径部22cそれぞれに連続している面である。軸方向視において、第1段部22eおよび第2段部22gの形状は、リング状である。第2貫通孔22bには回転軸4が挿通されていて、小径部22cと回転軸4との間には、取扱液を第2インペラ7へと導入する流路として機能する円筒状の空間が形成されている。
【0027】
第1ポンプ室23は、第1インペラ6を収容している。第2ポンプ室24は、第2インペラ7を収容している。軸方向において、第1ポンプ室23は、第2ポンプ室24の前方に、中央隔壁部21を挟んで第2ポンプ室24と軸方向に並んで配置されている。すなわち、軸方向において、第1インペラ6は、第2インペラ7の前方に配置されている。
【0028】
連結流路25は、第1インペラ6により吐出された取扱液を小径部22c内の空間へ案内する流路である。連結流路25は、例えば、筐体2の一部により構成されていて、第1ポンプ室23および小径部22c内の空間と連通している。
図1および
図2において、連結流路25は、簡略されて太い実線矢印で示されている。
【0029】
吐出流路26は、第2インペラ7により吐出された取扱液を吐出管28へ案内する流路である。吐出流路26は、例えば、筐体2の一部により構成されていて、第2ポンプ室24および吐出管28と連通している。
図1および
図2において、吐出流路26は、簡略されて破線矢印で示されている。
【0030】
筐体2(第1隔壁部20)の前端部は、回転軸4と同軸となるように前方に向けて円筒状に延伸されていて、第1ポンプ室23に取扱液を吸い込む(導入する)吸込管27を形成している。また、筐体2のうち、第2インペラ7よりも径方向の外方側に位置する一部は、第2インペラ7の接線方向(上方)に延伸されていて、第2ポンプ室24(吐出流路26)からの取扱液を吐出する吐出管28を形成している。
【0031】
筐体2の後半部は、モータ3および軸受51,52を収容するモータ室29を区画している。
【0032】
モータ3は、回転軸4に取り付けられるロータ(不図示)、および、ロータ(不図示)を回転させるステータ(不図示)を備える公知のモータである。回転軸4は、モータ3の駆動(回転)により回転して、回転動力を第1インペラ6および第2インペラ7に伝達する。回転軸4の形状は、円柱状である。回転軸4はモータ3に取り付けられていて、回転軸4の前部4aは第1ポンプ室23内および第2ポンプ室24内に突出している。
【0033】
軸受51は、モータ3の前方に配置されていて、回転軸4を回転自在に支持している。軸受52は、モータ3の後方に配置されていて、回転軸4を回転自在に支持している。軸受51,52は、例えば、転がり軸受である。
【0034】
第1インペラ6は、取扱液を吸込み、吐出する。第1インペラ6は、回転軸4の前部4aに取り付けられていて、第1ポンプ室23に収容されている。すなわち、第1インペラ6は、第1隔壁部20と中央隔壁部21との間に配置されている。第1インペラ6は、いわゆるクローズドタイプのインペラである。第1インペラ6は、複数の第1羽根61、第1背面シュラウド62、第1正面シュラウド63、第1ハブ部64、第1吸込口65、および第1吐出口66を備える。
【0035】
第1羽根61は、回転軸4を回転中心として周方向に回転して、第1吸込口65から吸込まれた取扱液を第1吐出口66に案内する。軸方向視において、複数の第1羽根61それぞれは、第1インペラ6の中心側から外縁側に向けて放射状に延出されると共に、渦巻き状に湾曲している。第1羽根61は、第1背面シュラウド62と第1正面シュラウド63との間に配置されている。
【0036】
第1背面シュラウド62は、第1羽根61の後方を覆う板(いわゆる主板)である。第1背面シュラウド62の形状は、リング板状である。軸方向視において、第1背面シュラウド62の中央部は、前方に向けて略円錐台状に突出している。第1背面シュラウド62は、中央隔壁部21に対向している。第1背面シュラウド62は、取付孔62aおよび後面62bを備える。第1背面シュラウド62は、本発明における第1シュラウドの一例である。
【0037】
取付孔62aは、回転軸4の前部4aが挿通されている貫通孔である。軸方向視において、取付孔62aは、第1背面シュラウド62の中央部に配置されていて、同中央部を軸方向に沿って円筒状に貫通している。
【0038】
後面62bは、後方に向けられている面であり、中央隔壁部21の前面21aに対向している。後面62bと前面21aとの間には、リング板状の空間(以下「第1背面側空間S11」という。)が形成されている。第1背面側空間S11は、本発明における第1空間の一例である。
【0039】
第1正面シュラウド63は、第1羽根61の前方を覆う板(いわゆる側板)である。第1正面シュラウド63の形状は、外縁部よりも内縁部が前方に向けて凸となる、略リング板状である。第1正面シュラウド63の外径は、第1背面シュラウド62の外径よりも僅かに小さい。第1正面シュラウド63は、第1背面シュラウド62に対して前方側に配置されている。第1正面シュラウド63は、前面63aおよび円筒部63bを備える。第1正面シュラウド63は、本発明における第3シュラウドの一例である。
【0040】
前面63aは、前方に向けられていて、第1隔壁部20の内面20aに対向している面である。前面63aと内面20aとの間には、略リング板状の空間(以下「第1正面側空間S12」という。)が形成されている。
【0041】
第1正面シュラウド63の内縁部は、回転軸4と同軸となるように前方に向けて円筒状に延伸されていて、第1吸込口65として機能する円筒部63bを形成している。換言すれば、第1正面シュラウド63は、第1吸込口65として機能する円筒部63bを備える。第1インペラ6において、円筒部63bは、前方に向けられていて、第1隔壁部20の大径部20d内に配置されている。円筒部63bは、本発明における第1円筒部の一例である。径方向において、大径部20dは、円筒部63bと対向している。大径部20dと円筒部63bとの間には、円筒状の隙間(以下「第1円筒隙間S13」という。)が形成されている。径方向において、第1円筒隙間S13の長さ(大径部20dと円筒部63bとの間の間隔)は、遠心ポンプ1が通常に動作しているとき、円筒部63bが大径部20dに当接しない程度の長さであり、一般的な遠心ポンプのインペラに対して設定されている同長さと同等に設定されている。軸方向において、段部20eは、円筒部63bと対向している。段部20eと円筒部63bとの間には、リング板状の隙間(以下「第1リング隙間S14」という。)が形成されている。軸方向において、第1リング隙間S14の長さ(段部20eと円筒部63bとの間の間隔)は、遠心ポンプ1が通常に動作しているとき、円筒部63bが段部20eに当接しない程度の長さであり、一般的な遠心ポンプのインペラに設定されている同長さと同等に設定されている。第1円筒隙間S13および第1リング隙間S14は、後述される第1固定オリフィスを構成している。大径部20dおよび段部20eは、本発明における第1円筒部に対向する部分の一例である。
【0042】
第1正面側空間S12は、第1インペラ6の径方向の外方側に位置する空間、および第1円筒隙間S13と連通している。第1リング隙間S14は、第1円筒隙間S13および小径部20c内の空間と連通している。
【0043】
第1背面シュラウド62の内縁部は、回転軸4と同軸となるように後方に向けて円筒状に延出されていて、第1ハブ部64を形成している。第1ハブ部64には回転軸4の前部4aが挿通されていて、第1ハブ部64が回転軸4の前部4aに固定されることにより、第1インペラ6は同前部4aに取り付けられている。このとき、第1吸込口65は、前方に向けられている。第1ハブ部64は、回転軸4の前部4aの一部を覆っていて、中央貫通孔21c内に配置されている。
【0044】
第1羽根61の外縁部、第1背面シュラウド62の外縁部、および第1正面シュラウド63の外縁部は、第1インペラ6内の流路を流れる取扱液が吐出される第1吐出口66を形成している。
【0045】
第2インペラ7は、第1インペラ6から吐出された取扱液を吸込み、吐出する。第2インペラ7は、回転軸4の前部4aに取り付けられていて、第2ポンプ室24に収容されている。すなわち、第2インペラ7は、中央隔壁部21と第2隔壁部22との間に配置されている。第2インペラ7は、いわゆるクローズドタイプのインペラである。第2インペラ7は、複数の第2羽根71、第2背面シュラウド72、第2正面シュラウド73、第2ハブ部74、第2吸込口75、および第2吐出口76を備える。
【0046】
第2インペラ7と第2ポンプ室24とにより構成されている第2ポンプ部P2に設定されている比速度は、第1インペラ6と第1ポンプ室23とにより構成されている第1ポンプ部P1に設定されている比速度よりも小さい。この構成により、遠心ポンプ1では、第1ポンプ部P1により高い吸込み性能(吐出流量)が得られていて、第2ポンプ部P2により高い揚程が得られている。また、一般的に、インペラの外径(直径)は比速度が大きくなるにつれて小さくなる。そのため、第2インペラ7の外径(直径)は、第1インペラ6の外径(直径)よりも大きい。これらの比速度の値は、例えば、遠心ポンプ1の設計(例えば、吐出流量、揚程など)などに基づいて、適宜設定されている。
【0047】
第2羽根71は、回転軸4を回転中心として周方向に回転して、第2吸込口75から吸込まれた取扱液を第2吐出口76に案内する。軸方向視において、複数の第2羽根71それぞれは、第2インペラ7の中心側から外縁側に向けて放射状に延出されると共に、渦巻き状に湾曲している。第2羽根71は、第2背面シュラウド72と第2正面シュラウド73との間に配置されている。
【0048】
第2背面シュラウド72は、第2羽根71の前方(第2インペラ7における背面側の方向)を覆う板(いわゆる主板)である。第2背面シュラウド72の形状は、リング板状である。軸方向視において、第2背面シュラウド72の中央部は、後方に向けて円錐台状に突出している。第2背面シュラウド72は、中央隔壁部21に対向している。第2背面シュラウド72は、取付孔72a、前面72b、および凸部72cを備える。第2背面シュラウド72は、本発明における第2シュラウドの一例である。
【0049】
第2背面シュラウド72の外径(直径)は、第1背面シュラウド62の外径(直径)よりも大きい。第1背面シュラウド62の外径および第2背面シュラウド72の外径は、例えば、第1インペラ6および第2インペラ7(すなわち、遠心ポンプ1)が(最高効率点で)取扱液を吐出しているとき、後述される第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが凡そ釣り合うように設定されている。
【0050】
取付孔72aは、回転軸4の前部4aが挿通されている貫通孔である。軸方向視において、取付孔72aは、第2背面シュラウド72の中央部に配置されていて、同中央部を軸方向に沿って円筒状に貫通している。
【0051】
前面72bは、前方に向けられている面であり、中央隔壁部21の後面21bに対向している。前面72bと後面21bとの間には、リング板状の隙間(以下「第2背面側空間S21」という。)が形成されている。第2背面側空間S21は、本発明における第2空間の一例である。
【0052】
図4は、第2インペラ7の模式前面図である。
同図は、第2インペラ7を前方から見た状態を模式的に示している。以下の説明において、
図2も適宜参照される。
【0053】
凸部72cは、後述される可変オリフィスとして機能する。第2背面シュラウド72の前面72bの一部は、回転軸4と同軸となるように前方に向けてリング板状に突出していて、凸部72cを構成している。すなわち、軸方向視において、凸部72cは、回転軸4と同心円状のリング板状である。径方向において、凸部72cは、第2背面シュラウド72の内方寄り(内縁部寄り)に配置されている。凸部72cの前面72dは、中央隔壁部21の後面21bと平行な平面状である。軸方向において、凸部72cと中央隔壁部21の後面21bとの間の間隔は、凸部72cを除く前面72bと中央隔壁部21の後面21bとの間の間隔よりも狭い。凸部72cは、本発明における突出部(可変オリフィス)の一例である。
【0054】
本説明において主に参照される図面は、
図1および
図2に戻る。
第2正面シュラウド73は、第2羽根71の後方(第2インペラ7における正面側の方向)を覆う板(いわゆる側板)である。第2正面シュラウド73の形状は、外縁部よりも内縁部が後方に向けて凸となる、略リング板状である。第2正面シュラウド73の外径は、第2背面シュラウド72の外径よりも僅かに小さい。第2正面シュラウド73は、第2背面シュラウド72に対して後方側に配置されている。第2正面シュラウド73は、後面73aおよび円筒部73bを備える。第2正面シュラウド73は、本発明における第4シュラウドの一例である。
【0055】
後面73aは、後方に向けられていて、第2隔壁部22の内面22aに対向している面である。後面73aと内面22aとの間には、略リング板状の空間(以下「第2正面側空間S22」という。)が形成されている。
【0056】
第2正面シュラウド73の内縁部は、回転軸4と同軸となるように後方に向けて円筒状に延伸されていて、第2吸込口75として機能する円筒部73bを構成している。換言すれば、第2正面シュラウド73は、第2吸込口75として機能する円筒部73bを備える。第2インペラ7において、円筒部73bは、後方に向けられていて、第2隔壁部22の大径部22d内に配置されている。円筒部73bは、本発明における第2円筒部の一例である。径方向において、円筒部73bは、大径部22dに対向している。大径部22dと円筒部73bとの間には円筒状の隙間(以下「第2円筒隙間S23」という。)が形成されている。径方向において、第2円筒隙間S23の長さ(大径部22dと円筒部73bとの間の間隔)は、遠心ポンプ1が通常に動作しているとき、円筒部73bが大径部22dに当接しない程度の長さであり、一般的な遠心ポンプのインペラに設定されている同長さよりも長くなるように設定されている。すなわち、径方向において、第2円筒隙間S23の長さは、第1円筒隙間S13の長さよりも長い。軸方向において、円筒部73bは第1段部22eに対向している。第1段部22eと円筒部73bとの間にはリング板状の隙間(以下「第2リング隙間S24」という。)が形成されている。軸方向において、第2リング隙間S24の長さ(第1段部22eと円筒部73bとの間の長さ)は、遠心ポンプ1が通常に動作しているとき、円筒部73bが第1段部22eに当接しない程度の長さであり、一般的な遠心ポンプのインペラに設定されている同長さよりも長くなるように設定されている。すなわち、軸方向において、第2リング隙間S24の長さは、第1リング隙間S14の長さよりも長い。
【0057】
第2正面側空間S22は、第2インペラ7の径方向の外方側の空間、および第2円筒隙間S23と連通している。第2リング隙間S24は、第2正面側空間S22および小径部22c内の空間と連通している。
【0058】
第2背面シュラウド72の内縁部は、回転軸4と同軸となるように前方に向けて円筒状に延出されていて、第2ハブ部74を構成している。第2ハブ部74には回転軸4の前部4aが挿通されていて、第2ハブ部74が回転軸4の前部4aに固定されることにより、第2インペラ7は同前部4aに取り付けられている。このとき、第2吸込口75は、後方に向けられている。第2ハブ部74は、回転軸4の前部4aの一部を覆っていて、中央貫通孔21c内に配置されている。第2ハブ部74は第1ハブ部64に当接していて、中央貫通孔21cと第1ハブ部64および第2ハブ部74との間には、円筒状の空間(以下「円筒空間S3」という。)が形成されている。円筒空間S3は、第1背面側空間S11および第2背面側空間S21と連通している。すなわち、第1背面側空間S11および第2背面側空間S21とは、円筒空間S3(中央貫通孔21c)を介して、互いに連通している。
【0059】
このように、第1インペラ6および第2インペラ7は、中央隔壁部21を挟みこむように背中合わせの状態で、1つの回転軸4に取り付けられている、2段遠心ポンプである。第1ポンプ室23と第2ポンプ室24とは、中央隔壁部21により区画されていて、円筒空間S3を介して互いに連通している。すなわち、第1ポンプ室23と第2ポンプ室24との間には、メカニカルシールなどによる軸封構造は、配置されていない。
【0060】
●遠心ポンプの動作
次に、遠心ポンプ1の動作が説明される。以下の説明において、
図1および
図2は、適宜参照される。
【0061】
遠心ポンプ1の動作が開始されると、モータ3が駆動して、回転軸4が回転する。第1インペラ6は、小径部20cに導入された取扱液を前方から吸込み、第1ポンプ室23内へ吐出する。第1ポンプ室23内へ吐出された取扱液は、連結流路25を介して、小径部22c内の空間へ送液される。このとき、第1ポンプ室23内へ吐出された取扱液の一部は、第1背面側空間S11へ流れ込み、円筒空間S3を介して第2ポンプ室24(第2背面側空間S21)へ流入する。また、第1ポンプ室23内へ吐出された取扱液の別の一部は、第1正面側空間S12、第1円筒隙間S13、および第1リング隙間S14を介して、小径部20c内の空間へ流入する(戻る)。この取扱液が戻る流れは、第1インペラ6の吸込み性能に悪影響を与える。そのため、同流れは、主に、第1円筒隙間S13および第1リング隙間S14により絞られている。すなわち、第1円筒隙間S13および第1リング隙間S14は、同流れに対する絞り(第1固定オリフィス)として機能している。第1固定オリフィス(第1円筒隙間S13、第1リング隙間S14)は、本発明における第1隙間の一例である。
【0062】
第2インペラ7は、小径部22c内の空間に送液された取扱液を後方から吸込み、第2ポンプ室24内へ吐出する。第2ポンプ室24内へ吐出された取扱液は、吐出流路26および吐出管28を介して、吐出配管(不図示)へ吐出される。このとき、第2ポンプ室24内へ吐出された取扱液の一部は、第2背面側空間S21へ流れ込む。ここで、第2ポンプ室24内の取扱液の圧力は、第1ポンプ室23内の取扱液の圧力よりも大きい。そのため、第2背面側空間S21へ流れ込んだ取扱液は、第1ポンプ室23から流入した取扱液を押し戻すように、円筒空間S3を介して、第1ポンプ室23(第1背面側空間S11)へ流入する。このように、遠心ポンプ1では、第2ポンプ室24から第1ポンプ室23へと取扱液が戻る流れ(以下「リターン流れ」という。)が、生じている。第2背面側空間S21および円筒空間S3は、第2ポンプ室24内の取扱液の一部が第1背面側空間S11(第1ポンプ室23)に流れる流路(以下「リターン流路RL」という。)を構成している。また、第2ポンプ室24内へ吐出された取扱液の別の一部は、第2正面側空間S22、第2円筒隙間S23、および第2リング隙間S24を介して、小径部22c内の空間へ流入する(戻る)。この取扱液が戻る流れは、第2インペラ7の吸込み性能に悪影響を与え得る。そのため、同流れは、主に、第2円筒隙間S23および第2リング隙間S24により絞られている。すなわち、第2円筒隙間S23および第2リング隙間S24は、同流れに対する絞り(第2固定オリフィス)として機能している。第2固定オリフィスは、第1固定オリフィスよりも大きい。したがって、第2固定オリフィスによる流量の絞り量は、第1固定オリフィスによる流量の絞り量よりも少ない。つまり、第2固定オリフィスを流れる取扱液の流量は、第1固定オリフィスを流れる取扱液の流量よりも多い。第2固定オリフィス(第2円筒隙間S23、第2リング隙間S24)は、本発明における第2隙間の一例である。
【0063】
後述のとおり、このように取扱液が流れる遠心ポンプ1では、従来の2段遠心ポンプ(以下「従来ポンプ」という)とは異なる軸スラスト力が作用している。本明細書において、「従来ポンプ」の構成は、第1インペラの外径(第1背面シュラウドの外径)と第2インペラの外径(第2背面シュラウドの外径)とが同じであり、円筒空間がメカニカルシールで軸封されている点を除き、遠心ポンプ1の構成と共通するものとする。すなわち、従来ポンプは、第1インペラおよび第2インペラが背中合わせの状態で1つの回転軸に取り付けられている、2段遠心ポンプである。遠心ポンプ1と従来ポンプとを区別するため、以下の説明において、従来ポンプを示す構成には、遠心ポンプ1と同じ符号に符号「z」が付されるものとする。
【0064】
「軸スラスト力」は、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)を軸方向に移動させるように、回転軸4に作用する力である。軸スラスト力は、回転軸4を前方に向けて移動させるように作用する第1軸スラスト力と、回転軸4を後方に向けて移動させるように作用する第2軸スラスト力と、を含む。軸スラスト力は、主に、遠心ポンプ1の第1インペラ6および第2インペラ7の正面側と背面側との圧力バランスにより生じる。
【0065】
●従来ポンプにおける軸スラスト力
ここで、遠心ポンプ1における軸スラスト力の説明の前に、従来ポンプ1z、および、メカニカルシールMzを備えていない従来ポンプ1zにおける軸スラスト力が、以下に説明される。
【0066】
図5(a)は、従来ポンプ1zにおける軸スラスト力を説明する模式部分拡大断面図であり、(b)は、メカニカルシールMzを備えていない従来ポンプ1zにおける軸スラスト力を説明する模式部分拡大断面図である。
同図では、説明の便宜上、中央隔壁部21z、回転軸4z、第1インペラ6z、第2インペラ7z、およびメカニカルシールMzのみが簡略化されて示されている。同図(b)は、リターン流れを白抜き矢印で示している。
【0067】
以下の説明において、圧力「P
f3」は第1インペラ6zの第1正面シュラウド63zが第1正面側空間S12zを流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
r3」は第1インペラ6zの第1背面シュラウド62zが第1背面側空間S11zを流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
f4」は第2インペラ7zの第2正面シュラウド73zが第2正面側空間S22zを流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
r4」は第2インペラ7zの第2背面シュラウド72zが第2背面側空間S21zを流れる取扱液から受ける圧力を示している。第1インペラ6zには、圧力「P
f3」に基づく力「F
f3」が後方へ向けて作用していて、圧力「P
r3」に基づく力「F
r3」が前方へ向けて作用している。圧力「P
f3」は圧力「P
r3」よりも小さいため、第1インペラ6zには2つの力の差分(F
r3-F
f3)に相当する力(第1軸スラスト力)が前方へ向けて作用している。同様に、第2インペラ7zには、圧力「P
f4」による力「F
f4」が前方へ向けて作用していて、圧力「P
r4」による力「F
r4」が後方へ向けて作用している。圧力「P
f4」は圧力「P
r4」よりも小さいため、第2インペラ7zには2つの力の差分(F
r4-F
f4)に相当する力(第2軸スラスト力)が後方へ向けて作用している。
図5において、細い矢印は、圧力「P
f3」「P
r3」「P
f4」「P
r4」の大きさを矢印の長さで例示している。太い矢印は、力「F
f3」「F
r3」「F
f4」「F
r4」の大きさを矢印の長さで例示している。
【0068】
図5(a)に示されるように、従来ポンプ1zにおいて、第1インペラ6zの構成は、回転方向を除き、第2インペラ7zの構成と共通している。すなわち、前述のとおり、第1インペラ6zの第1背面シュラウド62zの外径は、第2インペラ7zの第2背面シュラウド72zの外径と同じである。円筒空間S3zにはメカニカルシールMzが取り付けられていて、第1ポンプ室23zは第2ポンプ室24zと連通していない。第1正面シュラウド63zの受圧面積(接液面積)は、第1背面シュラウド62zの受圧面積よりも小さく、第2正面シュラウド73zの受圧面積と同じである。また、第1背面シュラウド62zの受圧面積は、第2背面シュラウド72zの受圧面積と同じである。この構成では、圧力「P
f3」は圧力「P
f4」と同じとなり、圧力「P
r3」は圧力「P
r4」と同じとなる。その結果、第1背面シュラウド62zに作用する力「F
r3」は、第1正面シュラウド63zに作用する力「F
f3」よりも大きくなり、第2背面シュラウド72zに作用する力「F
r4」と同じとなる。第1正面シュラウド63zに作用する力「F
f3」は、第2正面シュラウド73zに作用する力「F
f4」と同じとなる。したがって、第1インペラ6zには、2つの力の差分(F
r3-F
f3)に相当する力(第1軸スラスト力)が、前方へ向けて作用している。一方、第2インペラ7zには、2つの力の差分(F
r4-F
f4)に相当する力(第2軸スラスト力)が、後方へ向けて作用している。その結果、第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とは、相互にキャンセルされている(軸スラスト力が釣り合っている)。なお、実際には、第1ポンプ室23z内の取扱液と第2ポンプ室24z内の取扱液との圧力差により、回転軸4には第1軸スラスト力が作用している。しかし、通常、同第1軸スラスト力は、軸受により吸収されている。そのため、従来ポンプ1zにおいて、回転軸4zには、問題となるような軸スラスト力は作用していない。
【0069】
次に、
図5(b)に示されるように、メカニカルシールMzを備えていない従来ポンプ1zでは、第1ポンプ室23zは、円筒空間S3zを介して、第2ポンプ室24zと連通している。この構成では、第2ポンプ室24z内の取扱液の圧力が第1ポンプ室23z内の取扱液の圧力よりも高いため、第2ポンプ室24z内の取扱液が円筒空間S3zを介して第1ポンプ室23z内へ流入する流れ(リターン流れ)が生じている。このとき、第2背面側空間S21zでは、第2インペラ7zの回転方向に旋回しながら、第2背面シュラウド72zの外縁側から内縁側へ向かう流れが生じている。そのため、
図5(b)に破線および実線で示されるように、第2背面側空間S21z内を流れる取扱液の圧力「P
r4」は、低くなる。一方、第1背面側空間S11zでは、第1インペラ6zの回転方向に旋回しながら、第1背面シュラウド62zの内縁側から外縁側へ向かう流れが生じている。そのため、
図5(b)に破線および実線で示されるように、第1背面側空間S11z内を流れる取扱液の圧力「P
r3」は、高くなる。したがって、第1背面シュラウド62zに作用する力「F
r3」は大きくなり、第2背面シュラウド72zに作用する力「F
r4」は小さくなる。その結果、回転軸4z(第1インペラ6z、第2インペラ7z)に作用する第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも大きくなり、回転軸4zには第1軸スラスト力が作用している。このように、第1ポンプ室23zが円筒空間S3zを介して第2ポンプ室24zと連通する場合、従来ポンプ1zにおける軸スラスト力の釣り合いは崩れ、回転軸4zには軸スラスト力(第1軸スラスト力)が作用している。
【0070】
これらの軸スラスト力は、モータ3の回転数が増加するにつれて大きくなる。そのため、例えば、高速回転が必要な取扱液(例えば、低粘度の取扱液)が送液される場合、軸スラスト力は軸受では吸収することができず、軸スラスト力を打ち消す機構(例えば、バランスピストン、バランスシートなど)が必要となる。この場合、従来ポンプ1z全体が大きくなるだけでなく、回転軸4zが長くなる。その結果、高速回転への対応は、難しくなる。また、取扱液が軸受の潤滑に用いられる場合、特に取扱液の粘度が低いと、僅かな軸スラスト力が生じても軸受のベアリングの摺動面に面圧が生じる。その結果、摺動面の温度が上昇して、軸受の寿命が減少する。したがって、軸スラスト力を極力生じさせない構造(理想的には、軸スラスト力が「0」になる構造)が必要となる。
【0071】
●遠心ポンプにおける軸スラスト力
次に、遠心ポンプ1における軸スラスト力が、以下に説明される。以下の説明では、
図1~
図5も適宜参照される。
【0072】
図6は、遠心ポンプ1における軸スラスト力に対する第2インペラ7の影響を説明する模式部分拡大断面図である。
同図では、説明の便宜上、中央隔壁部21、回転軸4、第1インペラ6、および第2インペラ7のみが簡略化されて示されていて、凸部72cの図示は省略されている。同図の白抜き矢印は、リターン流れを示している。また、同図では、第2インペラ7に作用する力の理解を容易にするため、第2背面シュラウド72の外径のみが第1背面シュラウド62の外径よりも大きく、第2正面シュラウド73の外径は第1正面シュラウド63の外径と同じとなるように、第2インペラ7が図示されている。
【0073】
以下の説明において、圧力「P
f1」は第1インペラ6の第1正面シュラウド63が第1正面側空間S12を流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
r1」は第1インペラ6の第1背面シュラウド62が第1背面側空間S11を流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
f2」は第2インペラ7の第2正面シュラウド73が第2正面側空間S22を流れる取扱液から受ける圧力を示していて、圧力「P
r2」は第2インペラ7の第2背面シュラウド72が第2背面側空間S21を流れる取扱液から受ける圧力を示している。第1インペラ6には、圧力「P
f1」に基づく力「F
f1」が後方へ向けて作用していて、圧力「P
r1」に基づく力「F
r1」が前方へ向けて作用している。圧力「P
f1」は圧力「P
r1」よりも小さいため、第1インペラ6には2つの力の差分(F
r1-F
f1)に相当する力(第1軸スラスト力)が前方へ向けて作用している。同様に、第2インペラ7には、圧力「P
f2」に基づく力「F
f2」が前方へ向けて作用していて、圧力「P
r2」による力「F
r2」が後方へ向けて作用している。第2インペラ7には2つの力の差分(F
r2-F
f2)に相当する力(第2軸スラスト力)が後方へ向けて作用している。
図6において、細い矢印は、圧力「P
f1」「P
r1」「P
f2」「P
r2」の大きさを矢印の長さで例示している。太い矢印は、力「F
f1」「F
r1」「F
f2」「F
r2」の大きさを矢印の長さで例示している。
【0074】
前述のとおり、第2背面シュラウド72の外径は、第1背面シュラウド62の外径よりも大きい。そのため、
図6に示されるように、第2背面シュラウド72の受圧面積は、第1背面シュラウド62の受圧面積よりも大きい。その結果、第2インペラ7に作用する力「F
r2」は、従来ポンプ1zの第2インペラ7zに作用する力「F
r4」よりも増加する。したがって、第2背面シュラウド72の外径(すなわち、第2インペラ7の外径)が第1背面シュラウド62の外径(すなわち、第1インペラ6の外径)よりも大きく設計されることにより、第2インペラ7(回転軸4)に作用する第2軸スラスト力(F
r2-F
f2)が第2インペラ7z(回転軸4z)に作用する第2軸スラスト力(F
r4-F
f4)よりも大きくなり、回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)は回転軸4zに作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)よりも小さくなる(抑制される)。その結果、回転軸4に作用する第1軸スラスト力(F
r1-F
f1)と第2軸スラスト力(F
r2-F
f2)とは、(略)釣り合う。
【0075】
図7は、遠心ポンプ1における軸スラスト力に対する第2固定オリフィス(第2円筒隙間S23および第2リング隙間S24)の影響を説明する模式部分拡大断面図である。
同図では、説明の便宜上、第1隔壁部20、中央隔壁部21、第2隔壁部22、回転軸4、第1インペラ6、および第2インペラ7のみが簡略されて示されていて、凸部72cの図示は省略されている。同図の白抜き矢印は、リターン流れを示している。また、同図では、第2固定オリフィスの影響のみを説明するため、第2インペラ7の外径が第1インペラ6の外径と同じとなるように、第2インペラ7が図示されている。
【0076】
前述のとおり、径方向において、第2円筒隙間S23の長さは、第1円筒隙間S13の長さよりも長い。軸方向において、第2リング隙間S24の長さは、第1リング隙間S14の長さよりも長い。この構成では、第2正面側空間S22に流入した取扱液が第2固定オリフィスで絞られる流量は、第1正面側空間S12に流入した取扱液が第1固定オリフィスで絞られる流量よりも少なくなる。すなわち、第2固定オリフィスを流れる取扱液の流量(
図7の破線矢印で示される流れの流量)は、第1固定オリフィスを流れる取扱液の流量よりも多くなる。そのため、第2正面シュラウド73が取扱液から受ける圧力「P
f2」は、第2固定オリフィスを通過する取扱液の流量が第1固定オリフィスを通過する取扱液の流量と同じ場合の同圧力(
図7に破線で示されている)よりも小さくなる。その結果、その結果、第2インペラ7に作用する力(第2軸スラスト力)は、第2固定オリフィスを流れる取扱液の流量が第1固定オリフィスを流れる取扱液の流量と同じ場合の同力よりも大きくなる。したがって、第2固定オリフィスを流れる取扱液の流量が第1固定オリフィスを流れる取扱液の流量よりも多くなるように設計されることにより、第2インペラ7(回転軸4)に作用する第2軸スラスト力が大きくなり、回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)は小さくなる(抑制される)。ここで、通常、第1固定オリフィスを流れる取扱液の流量が多くなると、第1インペラ6の吸込み性能が悪化して、遠心ポンプ1の効率が悪化する。一方、第2固定オリフィスを流れる取扱液の流量が多くなっても、第2インペラ7の吸込み性能への影響は少ない。そのため、本構成では、遠心ポンプ1の性能の多少の悪化は生じ得るものの、回転軸4に作用する軸スラスト力の改善による遠心ポンプ1の効率の向上が同悪化を上回る。
【0077】
次に、前述のとおり、中央隔壁部21の後面21bには、複数の凹部21dが配置されている。凹部21dは第2背面側空間S21に面していて、第2背面側空間S21内の取扱液の流れは凹部21dによる干渉を受ける。第2背面側空間S21内の取扱液の流れは、第2インペラ7の回転に応じて第2インペラ7と同じ回転方向に旋回する旋回流となっている。すなわち、第2背面側空間S21内の取扱液の流れは、旋回成分を多く含んでいる。第2背面側空間S21内の取扱液の流れのうち、中央隔壁部21寄りの一部の流れは、凹部21d内に流入して、凹部21dの側壁により妨げられる。このとき、凹部21d内に流入した流れの旋回成分は抑制されると共に、同流れは径方向の内方側および軸方向側へと向きを変える。そのため、同流れは凹部21d内に流入していない流れにも干渉して、干渉された流れの旋回成分も僅かに抑制される。その結果、第2背面側空間S21内の取扱液の流れの旋回成分は、抑制される。取扱液の旋回成分が多いと取扱液の圧力「Pr2」が減少するため、取扱液の旋回成分が抑制されると取扱液の圧力「Pr2」は増加する。すなわち、第2背面側空間S21内の取扱液の旋回成分が抑制されることにより、第2インペラ7に作用する力(第2軸スラスト力)が大きくなり、回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)は小さくなる(抑制される)。
【0078】
このように、遠心ポンプ1は、第2背面シュラウドの外径により軸スラスト力(第1軸スラスト力)を抑制する構成(以下「第1抑制構成」という。)、第2固定オリフィスにより軸スラスト力(第1軸スラスト力)を抑制する構成(以下「第2抑制構成」という。)、および、凹部21dにより軸スラスト力(第1軸スラスト力)を抑制する構成(以下「第3抑制構成」という。)を備える。遠心ポンプ1では、回転軸4に作用する軸スラスト力が釣り合うように、第1~第3抑制構成が組み合わされている。
【0079】
図8は、遠心ポンプ1における軸スラスト力に対する凸部72cの影響を説明する模式部分拡大断面図であり、(a)は第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合っている状態を示していて、(b)は第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも大きい状態を示していて、(c)は第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも小さい状態を示している。同図では、説明の便宜上、中央隔壁部21、回転軸4、および第2インペラ7のみが簡略されて示されている。
【0080】
図8(a)に示されるように、第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合っている状態では、軸方向において、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)は、所定の位置に配置されている。このとき、軸方向において、凸部72cと中央隔壁部21の後面21bとの間には、「L1」の間隔の隙間S4が形成されている。第2背面側空間S21内の取扱液は第2インペラ7の外縁側から内縁側に向けて旋回しながら流れていて、その流量は隙間S4において絞られている。
【0081】
次に、
図8(b)に示されるように、第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも大きい状態では、軸方向において、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)は前方へ移動して、隙間S4の間隔は狭くなり「L2」となっている。このとき、凸部72cによる取扱液の絞り量は、多くなる。そのため、第2背面側空間S21内において、凸部72cよりも上流側(径方向の外方側)の取扱液の圧力「P
r2」は、大きくなる。また、円筒空間S3を流れる取扱液の流量が減少して、第1背面側空間S11の取扱液の圧力「P
r1」が小さくなる。その結果、第2インペラ7に作用する力「F
r2」が大きくなり、第1インペラ6に作用する力「F
r1」が小さくなり、最終的に、第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合うようになる。このように、凸部72cは、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)が前方に移動するにつれて、第2背面側空間S21の一部(すなわち、リターン流路RLの一部)を狭めて、回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力、第2軸スラスト力)を釣り合わせている。
【0082】
反対に、
図8(c)に示されるように、第1軸スラスト力が第2軸スラスト力よりも小さい状態では、軸方向において、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)は後方へ移動して、隙間S4の間隔は広くなり「L3」となっている。このとき、凸部72cによる取扱液の絞り量は、少なくなる。そのため、第2正面側空間S22内において、凸部72cよりも上流側の取扱液の圧力「P
r2」は、小さくなる。また、円筒空間S3を流れる取扱液の流量が増加して、第1背面側空間S11の取扱液の圧力「F
r1」が大きくなる。その結果、第2インペラ7に作用する力「F
r2」が小さくなり、第1インペラ6に作用する力「F
r1」が大きくなり、最終的に、第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合うようになる。このように、凸部72cは、回転軸4(第1インペラ6、第2インペラ7)が後方に移動するにつれて、第2背面側空間S21の一部(すなわち、リターン流路RLの一部)を広めて、回転軸4に作用する軸スラスト力を釣り合わせている。
【0083】
このように、凸部72cは、回転軸4に作用している軸スラスト力に応じて第2正面側空間S22内の取扱液の流量(結果として、回転軸4に作用する軸スラスト力)を調整する可変オリフィスとして機能している。
【0084】
前述のとおり、第2背面側空間S21は、リング板状の空間である。そのため、周方向に沿う切断面における第2背面側空間S21の断面積(流路の横断面積)は、切断面が第2背面シュラウド72の内縁部に近づくにつれて小さくなる。すなわち、切断面が第2背面シュラウド72の内縁部に近づくにつれて、軸方向における凸部72cの移動量に対する可変オリフィスの絞り量は増加する。したがって、凸部72cが第2背面シュラウド72の内縁寄りに配置されていると、軸方向における凸部72cの移動量が小さくても、凸部72cよりも上流側の取扱液の圧力「Pr2」の変化量は大きくなる。
【0085】
このように、遠心ポンプ1では、第1~第3抑制構成により、第2インペラ7に作用する力「Fr2」が大きくなるように設計されている。そのため、回転軸4に作用する第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが完全に釣り合うように第1~第3抑制構成が設計されることにより、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3(リターン流路RL)を介して第1ポンプ室23内へ流入していても、回転軸4には、軸スラスト力が作用しない。ここで、本実施形態では、回転軸4に作用する第1軸スラスト力と第2軸スラスト力との釣り合いは、第1抑制調整により凡そ調整(粗調整)されていて、第2抑制構成および第3抑制構成により補助的に調整(微調整)されている。また、仮に、回転軸4に軸スラスト力が作用したとしても、同軸スラスト力は第1~第3抑制構成により僅かな力にまで抑制されているため、その軸スラスト力は可変オリフィスにより容易かつ自動的に調整される。
【0086】
●まとめ
以上説明された実施の形態によれば、遠心ポンプ1は、中央隔壁部21、第1ポンプ室23、第2ポンプ室24、回転軸4、第1インペラ6、および第2インペラ7を備える。中央隔壁部21は、回転軸4が挿通されている中央貫通孔21cを備える。第1ポンプ室23は、中央隔壁部21により第2ポンプ室24と区画されていて、第2ポンプ室24の前方に第2ポンプ室24と並んで配置されている。第1インペラ6の第1吸込口65は前方に向けられていて、第2インペラ7の第2吸込口75は後方に向けられている。第1インペラ6と中央隔壁部21との間には第1背面側空間S11が形成されていて、第2インペラ7と中央隔壁部21との間には第2背面側空間S21が形成されていて、第1背面側空間S11は円筒空間S3を介して第2背面側空間S21と連通している。第2背面シュラウド72の外径は、第1背面シュラウド62の外径よりも大きい。この構成によれば、第2背面シュラウド72の受圧面積が増加することにより、第2インペラ7に作用する力「Fr2」が増加する。そのため、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3を介して第1ポンプ室23内に流れていても、回転軸4に作用する軸スラスト力は抑制される。したがって、回転軸4に作用する軸スラスト力が釣り合うように第2背面シュラウド72の外径が調整されることにより、回転軸4に作用する軸スラスト力は最小限まで抑制可能である。
【0087】
また、以上説明された実施の形態によれば、第1インペラ6と第1ポンプ室23とにより構成される第1ポンプ部P1に設定される比速度は、第2インペラ7と第2ポンプ室24とにより構成される第2ポンプ部P2に設定される比速度よりも大きい。一般的に、比速度が大きくなるにつれて、インペラの羽根間の吸込み側の開口は大きくなり、インペラの外径は小さくなる。そのため、この構成によれば、第1ポンプ部P1による吸込み性能(吐出流量)が向上すると共に、第2ポンプ部P2による揚程が向上して、遠心ポンプ1の性能が向上する。また、必然的に、第2背面シュラウド72の外径が第1背面シュラウド62の外径よりも大きくなる。その結果、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3を介して第1ポンプ室23内に流れていても、回転軸4に作用する軸スラスト力は抑制される。
【0088】
さらに、以上説明された実施の形態によれば、遠心ポンプ1は、第1隔壁部20および第2隔壁部22を備える。第1インペラ6は、第1正面シュラウド63、および第1吸込口65として機能する円筒部63bを備える。第2インペラ7は、第2正面シュラウド73、および第2吸込口75として機能する円筒部73bを備える。第1隔壁部20のうち、大径部20dおよび段部20eは、円筒部63bに対向している。第2隔壁部22のうち、大径部22dおよび第1段部22eは、円筒部73bに対向している。第2円筒隙間S23および第2リング隙間S24(第2固定オリフィス)の大きさ(長さ)は、第1円筒隙間S13および第1リング隙間S14(第1固定オリフィス)の大きさ(長さ)よりも大きい(長い)。この構成によれば、第2正面シュラウド73が取扱液から受ける圧力「Pf2」は、第2固定オリフィスを通過する取扱液の流量が第1固定オリフィスを通過する取扱液の流量と同じ場合の同圧力「Pf2」よりも小さくなる。その結果、第2インペラ7に作用する力(第2軸スラスト力)は、第2固定オリフィスを通過する取扱液の流量が第1固定オリフィスを通過する取扱液の流量と同じ場合の同力(第2軸スラスト力)よりも大きくなる。そのため、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3を介して第1ポンプ室23内に流れていても、回転軸4に作用する軸スラスト力はさらに抑制される。
【0089】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、中央隔壁部21は、8つの凹部21dを備える。凹部21dは、第2背面側空間S21に面していて、第2背面側空間S21を流れる取扱液の旋回成分を抑制するように構成されている。この構成によれば、取扱液の圧力「Pr2」は大きくなり、第2インペラ7(回転軸4)に作用する第2軸スラスト力が大きくなり、回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)はさらに抑制される。
【0090】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、第1背面シュラウド62の外径および第2背面シュラウド72の外径は、例えば、第1インペラ6および第2インペラ7が取扱液を吐出しているとき、回転軸4に作用する第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合うように設定されている。この構成によれば、回転軸4に作用する軸スラスト力は、最小限まで抑制される。
【0091】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、第2インペラ7の第2背面シュラウド72は、凸部72cを備える。凸部72cは、回転軸4が前方に向けて移動するにつれて第2背面側空間S21の一部(リターン流路RLの一部)を狭めて、回転軸4が後方に向けて移動するにつれて同一部を広める可変オリフィスとして機能している。この構成によれば、仮に、回転軸4に軸スラスト力が作用したとしても、同軸スラスト力は第1~第3抑制構成により僅かな力にまで抑制されているため、その軸スラスト力は可変オリフィスにより容易かつ自動的に調整される。
【0092】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、可変オリフィスは、第2背面シュラウド72から前方に向けてリング状に突出する凸部72cにより構成されている。この構成によれば、可変オリフィスは、第2背面シュラウド72の一部を前方に向けて突出させるという簡易な構成により、形成可能である。
【0093】
さらにまた、以上説明された実施の形態によれば、径方向において、凸部72cは、第2背面シュラウド72の内方寄りに配置されている。周方向に沿う切断面における第2背面側空間S21の断面積は、切断面が第2背面シュラウド72の内縁部に近づくにつれて小さくなる。そのため、この構成によれば、軸方向における凸部72cの移動量が小さくても、凸部72cよりも上流側の取扱液の圧力「Pr2」の変化量は大きくなる。すなわち、可変オリフィスによる圧力変動の感度が向上する。
【0094】
●変形例●
次に、遠心ポンプ1の変形例が、先に説明した実施の形態(以下「第1実施形態」という。)と異なる点を中心に、以下に説明される。以下の変形例において、説明の便宜上、第1実施形態と同じ部材、および、共通する機能を有する部材には、第1実施形態と同じ符号が付されている。また、以下の変形例において、
図1~
図8は、適宜参照される。
【0095】
●第1変形例
図9は、第1変形例に係る遠心ポンプ1Aの模式部分拡大断面図である。
同図では、説明の便宜上、中央隔壁部21、回転軸4、第1インペラ6、および第2インペラ7のみが簡略指されて示されていて、凸部72cの図示は省略されている。同図の白抜き矢印は、リターン流れを示している。
【0096】
第1変形例に係る遠心ポンプ1Aでは、第2インペラ7の形状が第1実施形態と異なる。具体的には、第2背面シュラウド72の外径は第1背面シュラウド62の外径よりも大きいが、第2インペラ7の第2正面シュラウド73の外径は第1正面シュラウド63の外径と同じである。この構成では、第2背面シュラウド72の受圧面積のみが、第1背面シュラウド62の受圧面積よりも大きくなる。そのため、第2背面シュラウド72の外径の拡大量に対する第2インペラ7に作用する力「F
r2」の大きくなる度合いは、第1実施形態における同度合いよりも大きくなる。したがって、本変形例では、第2背面シュラウド72の外径の拡大量が第1実施形態よりも小さくても、第1実施形態と同様の軸スラスト力の抑制効果が得られる。また、この構成では、
図6に示されているような第2背面シュラウド72の外径のみが大きくなっている構成と比較して、周方向において、第2羽根71も大きくなっている。その結果、
図6に示されている第2インペラ7が取扱液に与える圧力よりも、第1変形例における第2インペラ7が取扱液に与える圧力の方が大きくなる。したがって、第1変形例における第2インペラ7の力(吐出圧力)は、
図6に示されている第2インペラ7の力よりも大きくなる。
【0097】
●第2~第4変形例
図10(a)は第2変形例に係る遠心ポンプ1Bの模式部分拡大断面図であり、(b)は第3変形例に係る遠心ポンプ1Cの模式部分拡大断面図であり、(c)は第4変形例に係る遠心ポンプ1Dの模式部分拡大断面図である。
【0098】
第2~第4変形例に係る遠心ポンプ1B~1Dは、可変オリフィスの構成が第1実施形態と異なる。具体的には、第2変形例に係る遠心ポンプ1Bでは、第2背面シュラウド72は凸部72cを備えておらず、中央隔壁部21が凸部21eを備える。凸部21eは、中央隔壁部21の後面21bの内縁部寄り(中央貫通孔21c寄り)に配置されている。凸部21eは、本発明における可変オリフィスの一例である。第3変形例に係る遠心ポンプ1Cでは、中央隔壁部21が凸部21eを備えて、第2背面シュラウド72も凸部72cを備える。凸部21eと凸部72cとは、相互に対向する位置に配置されている。軸方向において、凸部72cの長さは、第1実施形態における凸部72cの長さよりも短い。凸部21e,72cは、本発明における可変オリフィスの一例である。第4変形例に係る遠心ポンプ1Dでは、第2背面シュラウド72は凸部72cを備えておらず、中央貫通孔21cの後端部が拡径されていて、拡径部21fおよび段部21gが形成されている。また、回転軸4には、環状部材Rが取り付けられている。軸方向において、環状部材Rは、第2インペラ7と段部21gとの間に配置されていて、段部21gに対向している。環状部材Rは、本発明における可変オリフィスの一例である。これらの構成では、第1実施形態と同様に、回転軸4の前後方向への移動に応じてリターン流路RLの一部の絞り量が変化する。そのため、これらの構成は、第1実施形態と同様の可変オリフィスとして機能する。
【0099】
●第5変形例
図11は、第5変形例に係る遠心ポンプ1Eを示す模式部分拡大断面図である。
【0100】
第5変形例に係る遠心ポンプ1Eは、インペラの数が第1実施形態と異なる。具体的には、遠心ポンプ1Eは、筐体2E、モータ3、回転軸4、軸受51,52、第1インペラ6、第2インペラ7、第3インペラ8、および第4インペラ9を有してなる。すなわち、遠心ポンプ1は、4つのインペラ(第1インペラ6~第4インペラ9)を備える、4段遠心ポンプである。
【0101】
筐体2Eは、モータ3、回転軸4、軸受51,52、第1インペラ6~第4インペラ9を収容する。筐体2Eは、第1隔壁部20、中央隔壁部21、第2隔壁部22、第1ポンプ室23、第2ポンプ室24、連結流路25、吐出流路26、吸込管27、吐出管28、モータ室29、前部隔壁部2a、後部隔壁部2b、第3ポンプ室2c、第4ポンプ室2dを備える。前部隔壁部2aは、第1隔壁部20の前方に配置されていて、第1隔壁部20と共に第3インペラ8を収容する第3ポンプ室2cを区画している。後部隔壁部2bは、第2隔壁部22の後方に配置されていて、第2隔壁部22と共に第4インペラ9を収容する第4ポンプ室2dを区画している。第3ポンプ室2cは第1ポンプ室23の前方に第1ポンプ室23と並んで配置されていて、第4ポンプ室2dは第2ポンプ室24の後方に第2ポンプ室24と並んで配置されている。連結流路25は、第1インペラ6により吐出された取扱液を第4インペラ9へ案内する流路である。吸込管27は、第1隔壁部20に代えて前部隔壁部2aに形成されている。
【0102】
第3インペラ8の構成は、第1インペラ6の構成と共通している。第4インペラ9の構成は、回転方向を除き、第1インペラ6の構成と共通している。すなわち、第1インペラ6、第3インペラ8、および第4インペラ9の外径は、相互に同じであり、第2インペラ7の外径よりも小さい。第3インペラ8は、第1インペラ6の前方において回転軸4の前部4aに取り付けられている。第4インペラ9は、第2インペラ7の後方において回転軸4の前部4aに取り付けられている。第1インペラ6および第2インペラ7は、第1実施形態と同様に中央隔壁部21を挟みこむように背中合わせに配置されている。第3インペラ8および第1インペラ6は前方から取扱液を吸い込む前段グループを構成していて、第4インペラ9および第2インペラ7は後方から取扱液を吸い込む後段グループを構成している。遠心ポンプ1Eにおいて、取扱液は、吸込管27、第3インペラ8、第1インペラ6、連結流路25、第4インペラ9、第2インペラ7、吐出流路26、吐出管28の順に流れる。換言すれば、第2インペラ7は、連結流路25、第4インペラ9を介して、第1インペラ6から吐出された取扱液を吸込み、吐出する。
【0103】
この構成では、第2ポンプ室24内の取扱液の圧力と第1ポンプ室23内の取扱液の圧力との差圧は、第1実施形態における同差圧の約2倍となる。そのため、リターン流路RLを流れる取扱液の流量は、第1実施形態における同流量よりも増加する。したがって、リターン流路RLを流れる取扱液により回転軸4に作用する軸スラスト力(第1軸スラスト力)は、第1実施形態における同軸スラスト力よりも大きくなる。このような場合でも、本発明における第1~第3抑制構成および可変オリフィスは、軸スラスト力を抑制して、調整することができる。
【0104】
なお、本変形例において、第4インペラ9の構成は、第2インペラ7の構成と同じでもよい。
【0105】
●その他の実施形態
なお、以上説明された実施の形態では、遠心ポンプ1は、第1抑制構成の他に、第2インペラ7に作用する力「Fr2」を大きくするための他の構成(第2~第3抑制構成)を備えていた。これに代えて、遠心ポンプ1は、他の構成のうち、一部または全部の構成を備えていなくてもよい。すなわち、例えば、第2固定オリフィスの大きさ(流量)は、第1固定オリフィスの大きさ(流量)と同じでもよい。また、例えば、中央隔壁部21は、凹部21dを備えていなくてもよい。軸スラスト力の抑制に最も寄与する構成は第1抑制構成であるため、遠心ポンプ1が第1抑制構成を備えていれば、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3を介して第1ポンプ室23内に流れていても、回転軸4に作用する軸スラスト力は抑制される。ここで、遠心ポンプ1が第1~第3抑制構成のうち第1抑制構成のみを備える場合、第1背面シュラウド62の外径および第2背面シュラウド72の外径は、例えば、第1インペラ6および第2インペラ7(すなわち、遠心ポンプ1)が(最高効率点で)取扱液を吐出しているとき、第1軸スラスト力と第2軸スラスト力とが釣り合うように設定されている。すなわち、例えば、吐出量が30m3/h、全揚程が65m、取扱液が水(比重:1、粘度:1cP)、回転数が3,000rpmという条件で2段遠心ポンプが動作するとき、第1インペラ6の外径が150mmであり、第2インペラ7の外径が158mmであるとき、第1軸スラスト力および第2軸スラスト力は共に2,100Nとなる。ここで、リターン流れの流量は、10%(3m3/h)であるものとする。
【0106】
また、本発明において、第2インペラ7は、凸部72c(可変オリフィス)を備えていなくてもよい。この構成でも、第1~第3抑制構成により、回転軸4に作用する軸スラスト力は、最小限に抑制可能である。
【0107】
さらに、本発明において、中央隔壁部21は、凹部21dに代えて、凸部を備えていてもよい。この場合、凸部は、例えば、凹部21dと同じ大きさ(体積)を有する。
【0108】
さらにまた、本発明において、凹部21dの数は、本実施の形態の数に限定されない。すなわち、例えば、凹部21dの数は「1」でもよく、「3」以上の奇数でもよく、「8」を除く偶数でもよい。
【0109】
さらにまた、本発明において、中央隔壁部21は、複数の凹部21dのうち、一部の凹部21dに代えて、凸部を備えていてもよい。すなわち、例えば、中央隔壁部21は、4つの凹部21d、および、各凹部21d間に配置される4つの凸部を備えていてもよい。
【0110】
さらにまた、本発明において、凹部21dの位置は、本実施の形態の位置に限定されない。すなわち、例えば、径方向において、凹部21dの内縁部は、凸部72cよりも外方側に配置されていてもよい。
【0111】
さらにまた、本発明において、凸部72cの位置は、本実施の形態の位置に限定されない。すなわち、例えば、径方向において、凸部72cは、前面72bの中央部、または外縁部に配置されていてもよい。
【0112】
さらにまた、本発明において、第1ポンプ部P1に設定される比速度は、第1背面シュラウド62の外径と第2背面シュラウド72の外径との差分による差異を除き、第2ポンプ部P2に設定される比速度と同じでもよい。
【0113】
さらにまた、本発明において、遠心ポンプ1が備えるインペラの数は、偶数個であればよく、2つに限定されない。すなわち、例えば、同インペラの数は第5変形例に示されるように「4」でもよく、あるいは、「6」以上でもよい。
【0114】
さらにまた、本発明において、取扱液は、液化ガスに限定されない。すなわち、例えば、取扱液は、水でもよい。
【0115】
●本発明の実施態様●
次に、以上説明された各実施形態から把握される本発明の実施態様について、各実施形態において記載された用語と符号とを援用しつつ、以下に記載する。
【0116】
本発明の第1の実施態様は、モータ(例えば、モータ3)と、前記モータの駆動により回転する回転軸(例えば、回転軸4)と、前記回転軸に取り付けられて、取扱液を吸込み、吐出する第1インペラ(例えば、第1インペラ6)と、前記回転軸に取り付けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を吸込み、吐出する第2インペラ(例えば、第2インペラ7)と、前記第1インペラが収容される第1ポンプ室(例えば、第1ポンプ室23)と、前記回転軸の軸方向において前記第1ポンプ室と並んで配置されて、前記第2インペラが収容される第2ポンプ室(例えば、第2ポンプ室24)と、前記回転軸が挿通される挿通孔(例えば、中央貫通孔21c)を備えて、前記第1ポンプ室と前記第2ポンプ室とを区画する中央隔壁部(例えば、中央隔壁部21)と、を有してなり、前記軸方向において、前記第2インペラに対して前記第1インペラが配置されている方向が第1方向(例えば、前方向)であり、前記第1方向の反対側の方向が第2方向(例えば、後方向)であり、前記第1インペラは、前記第1方向に向けられて、前記取扱液を前記第1方向側から吸い込む第1吸込口(例えば、第1吸込口65)と、前記中央隔壁部に対向する第1シュラウド(例えば、第1背面シュラウド62)と、を備えて、前記第2インペラは、前記第2方向に向けられて、前記第1インペラから吐出された前記取扱液を前記第2方向側から吸込む第2吸込口(例えば、第2吸込口75)と、前記中央隔壁部に対向する第2シュラウド(例えば、第2背面シュラウド72)と、を備えて、前記第1インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第1空間(例えば、第1背面側空間S11)が形成されて、前記第2インペラと前記中央隔壁部との間には、前記挿通孔と連通する第2空間(例えば、第2背面側空間S21)が形成されて、前記第2空間と前記第1空間とは、前記挿通孔を介して互いに連通して、前記第2シュラウドの外径は、前記第1シュラウドの外径よりも大きい、遠心ポンプ(例えば、遠心ポンプ1,1A~1E)である。
この構成によれば、第2ポンプ室24内の取扱液が円筒空間S3を介して第1ポンプ室23内に流れていても、回転軸4に作用する軸スラスト力は抑制される。
【0117】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様における遠心ポンプであって、前記第2インペラと前記第2ポンプ室とにより構成される第2ポンプ部(例えば、第2ポンプ部P2)に設定される比速度は、前記第1インペラと前記第1ポンプ室とにより構成される第1ポンプ部(例えば、第1ポンプ部P1)に設定される比速度よりも小さい遠心ポンプである。
この構成によれば、遠心ポンプ1の性能が向上すると共に、回転軸4に作用する軸スラスト力は抑制される。
【0118】
本発明の第3の実施態様は、第1または第2の実施態様における遠心ポンプであって、前記第1インペラに対して前記第1方向側に配置されて、前記中央隔壁部と共に前記第1ポンプ室を区画する第1隔壁部(例えば、第1隔壁部20)と、前記第2インペラに対して前記第2方向側に配置されて、前記中央隔壁部と共に前記第2ポンプ室を区画する第2隔壁部(例えば、第2隔壁部22)と、を有してなり、前記第1インペラは、前記第1シュラウドに対して前記第1方向側に配置される第3シュラウド(例えば、第1正面シュラウド63)、を備えて、前記第2インペラは、前記第2シュラウドに対して前記第2方向側に配置される第4シュラウド(例えば、第2正面シュラウド73)、を備えて、前記第3シュラウドは、前記第1吸込口を構成する第1円筒部(例えば、円筒部63b)、を備えて、前記第4シュラウドは、前記第2吸込口を構成する第2円筒部(例えば、円筒部73b)、を備えて、前記第2隔壁部のうち前記第2円筒部に対向する部分(例えば、大径部22dおよび第1段部22e)と、前記第2円筒部と、の間の第2隙間(例えば、第2円筒隙間S23および第2リング隙間S24)は、前記第1隔壁部のうち前記第1円筒部に対向する部分(例えば、大径部20dおよび段部20e)と、前記第1円筒部と、の間の第1隙間(例えば、第1円筒隙間S13および第1リング隙間S14)よりも大きい、
である。
この構成によれば、回転軸4に作用する軸スラスト力はさらに抑制される。
【0119】
本発明の第4の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1の実施態様における遠心ポンプであって、前記中央隔壁部は、前記第2空間に面して、前記第2空間を流れる前記取扱液の旋回成分を抑制するように構成される少なくとも1の凸部または凹部(例えば、凹部21d)、を備える、遠心ポンプである。
この構成によれば、回転軸4に作用する軸スラスト力はさらに抑制される。
【0120】
本発明の第5の実施態様は、第1乃至第4のいずれか1の実施態様における遠心ポンプであって、前記第1シュラウドの前記外径および前記第2シュラウドの前記外径は、前記第1インペラおよび前記第2インペラが前記取扱液を吐出しているとき、前記回転軸を前記第1方向に向けて移動させるように作用する第1軸スラスト力と、前記回転軸を前記第2方向に向けて移動させるように作用する第2軸スラスト力と、が釣り合うように設定される、遠心ポンプである。
この構成によれば、回転軸4に作用する軸スラスト力は、最小限まで抑制される。
【0121】
本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1の実施態様における遠心ポンプであって、前記第2空間と前記挿通孔とは、前記第2インペラにより吐出された前記取扱液の一部が前記第1空間に流れるリターン流路(例えば、リターン流路RL)を構成して、前記回転軸が前記第1方向に向けて移動するにつれて前記リターン流路の一部を狭めて、前記回転軸が前記第2方向に向けて移動するにつれて前記一部を広めるように構成される可変オリフィス(例えば、凸部72c)、を有してなる、遠心ポンプである。
この構成によれば、軸スラスト力は可変オリフィスにより容易かつ自動的に調整される。
【0122】
本発明の第7の実施態様は、第6の実施態様における遠心ポンプであって、前記可変オリフィスは、前記第2シュラウドから前記第1方向に向けて突出する突出部(例えば、凸部72c)、および/または、前記中央隔壁部から前記第2方向に向けて突出する突出部(例えば、凸部21e)、により構成される、遠心ポンプ(例えば、遠心ポンプ1、1B~1D)である。
この構成によれば、可変オリフィスは、簡易な構成により形成可能である。
【0123】
本発明の第8の実施態様は、第7の実施態様における遠心ポンプであって、前記突出部は、前記回転軸の周方向に沿うリング状で、前記回転軸の径方向において、前記第2シュラウドの内縁部寄りに配置されて、および/または、前記径方向において、前記中央隔壁部の内縁部寄りに配置される、遠心ポンプである。
この構成によれば、可変オリフィスによる圧力変動の感度が向上する。
【符号の説明】
【0124】
1 遠心ポンプ
20 第1隔壁部
20d 大径部(第1円筒部に対向する部分)
20e 段部(第1円筒部に対向する部分)
21 中央隔壁部
21c 中央貫通孔(挿通孔)
21d 凹部
22 第2隔壁部
22d 大径部(第2円筒部に対向する部分)
22e 第1段部(第2円筒部に対向する部分)
3 モータ
4 回転軸
6 第1インペラ
62 第1背面シュラウド(第1シュラウド)
63 第1正面シュラウド(第3シュラウド)
63b 円筒部(第1円筒部)
65 第1吸込口
7 第2インペラ
72 第2背面シュラウド(第2シュラウド)
72e 凸部(可変オリフィス)
73 第2正面シュラウド(第4シュラウド)
73b 円筒部(第2円筒部)
75 第2吸込口
S11 第1背面側空間(第1空間)
S13 第1円筒隙間(第1隙間)
S14 第1リング隙間(第1隙間)
S21 第2背面側空間(第2空間)
S23 第2円筒隙間(第2隙間)
S24 第2リング隙間(第2隙間)
S3 円筒空間(挿通孔)
RL リターン流路