IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-パテ状耐火組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122149
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】パテ状耐火組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240902BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240902BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240902BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240902BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K3/32
C08K5/3445
C08L21/00
C08G59/50
C09K21/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029528
(22)【出願日】2023-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4H028AA07
4H028BA01
4J002AC031
4J002AC061
4J002BB171
4J002BB183
4J002CD012
4J002CD052
4J002DE077
4J002DE147
4J002DE237
4J002DH036
4J002EN078
4J002EU118
4J002FD136
4J002FD148
4J002GJ02
4J002HA01
4J036AA01
4J036AB01
4J036AD08
4J036DC03
4J036DC10
4J036DC40
4J036FA04
4J036FB02
4J036FB05
4J036FB19
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】加工性(加工前軟度)、作業性(非付着性)、難燃性を損なわずに、燃焼前の高温時形状安定性、燃焼後の形状安定性、及び焼失による体積減少を生じない体積維持性に優れる耐火パテ状組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、エポキシ系化合物と、硬化剤と、含み、前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、前記無機化合物が、無機亜リン酸系化合物を含み、該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%であり、JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度が、30[1/10mm]以下である、パテ状耐火組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、エポキシ系化合物と、硬化剤と、含み、
前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記無機化合物が、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.10~13.00質量%であり、
JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度が、30[1/10mm]以下である、
パテ状耐火組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が、イミダゾール系化合物を含む、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項3】
前記エポキシ系化合物が、芳香族基を有する、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項4】
前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上である、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項5】
前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項6】
パテ状耐火組成物を調製するための第一剤と第二剤を含有する二剤型組成物セットであって、
前記第一剤は、エポキシ系化合物を含み、かつ硬化剤を含有せず、
前記第二剤は、硬化剤を含み、かつエポキシ系化合物を含有せず、
前記第一剤と前記第二剤の何れか一方又は両方が、それぞれ、液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、を含み、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記無機化合物は、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
二剤型組成物セット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のパテ状耐火組成物を用いて施工する施工工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。
【請求項8】
請求項6に記載の二剤型組成物セットの前記第一剤と前記第二剤を混合して、パテ状耐火組成物を調製する調製工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築物(建物や船舶等)における防火壁や床等に設けられた電線やケーブル・配管を挿通するための貫通部の隙間を閉塞するために用いられる、パテ状耐火組成物、二剤型組成物セット、及び防火区画貫通部埋め戻し処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物や船舶などの建造物では、各設備・各部屋を画分する壁や床、天井などの防火区画体に貫通孔を穿設し、その貫通孔に空調設備の配管や各種電線ケーブルなどが挿通される。しかしながら、ある空間で火災が発生するとその熱や炎で前記樹脂パイプ,空調装置の配管の発泡断熱材,電線ケーブルの被覆などが燃焼したり溶融したりして消失してしまうため、前記貫通孔が炎道になってここから隣の設備・部屋へと延焼が進んでしまう。
【0003】
これらの貫通部の防火措置としては、耐火性もしくは不燃性を持つパテが使用されている。パテは開口内に充填、もしくはケイ酸カルシウム板等の不燃性のボード等と組み合わせて、その隙間を閉塞するために使用される。ここで使用されるパテには、施工後の時間経過とともに硬化する硬化型パテと、施工後も乾燥・硬化しない非硬化型のパテが挙げられる。また、非硬化型のパテとしては、熱で膨張する膨張型パテと、膨張しない非膨張型パテがある。
【0004】
非硬化型の耐火パテとしては、例えば、液状ゴムとブチルゴムとからなるゴム成分に、特定量の熱膨張性黒鉛を配合するパテ組成物が挙げられる(特許文献1参照)。また、非膨張型の耐火パテとしては、樹脂と、水和金属化合物と、燃焼時に固化を促進させるリン系化合物と、耐熱性繊維を含むパテ状組成物が知られている(特許文献2参照)。また、耐火性パテ状組成物に熱硬化型のフェノール樹脂を用い、硬化させることで亀裂や隙間発生を防止するという技術が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-254563号公報
【特許文献2】特開平02-80468号公報
【特許文献3】特開平04-328166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のパテ組成物では、熱で膨張したときに非常に脆く形状安定性が低下しており、天井の貫通部に施工された場合は少しの衝撃で崩れてしまう場合がある。一方、特許文献2に記載の非膨張型パテは熱膨張しないため形状安定性は良好だが、バインダー等として使用しているゴムなどの有機化合物成分の焼失による体積減少が発生し、亀裂や隙間が生じて炎道になってしまう場合がある。さらに、特許文献3に記載の熱硬化型のフェノール樹脂は、高温での硬化反応に時間を要する(例えば、200℃×30分)ため、反応が終結するまでの高温下での暴露によりパテ材に変形が発生する場合が有り、燃焼前の高温時形状安定性に課題がある場合がある。
【0007】
本発明は問題点に鑑みてなされたものであり、加工性(加工前軟度)、作業性(非付着性)、難燃性を損なわずに、燃焼前の高温時形状安定性、燃焼後の形状安定性、及び焼失による体積減少を生じない体積維持性に優れる耐火パテ状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、特定の配合の組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
〔1〕
液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、エポキシ系化合物と、硬化剤と、含み、
前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記無機化合物が、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.10~13.00質量%であり、
JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度が、30[1/10mm]以下である、
パテ状耐火組成物。
〔2〕
前記硬化剤が、イミダゾール系化合物を含む、
〔1〕に記載のパテ状耐火組成物。
〔3〕
前記エポキシ系化合物が、芳香族基を有する、
〔1〕又は〔2〕に記載のパテ状耐火組成物。
〔4〕
前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のパテ状耐火組成物。
〔5〕
前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のパテ状耐火組成物。
〔6〕
パテ状耐火組成物を調製するための第一剤と第二剤を含有する二剤型組成物セットであって、
前記第一剤は、エポキシ系化合物を含み、かつ硬化剤を含有せず、
前記第二剤は、硬化剤を含み、かつエポキシ系化合物を含有せず、
前記第一剤と前記第二剤の何れか一方又は両方が、それぞれ、液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、を含み、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記無機化合物は、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
二剤型組成物セット。
〔7〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のパテ状耐火組成物を用いて施工する施工工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。
〔8〕
〔6〕に記載の二剤型組成物セットの前記第一剤と前記第二剤を混合して、パテ状耐火組成物を調製する調製工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加工性(加工前軟度)、作業性(非付着性)、難燃性を損なわずに、燃焼前の高温時形状安定性、燃焼後の形状安定性、及び焼失による体積減少を生じない体積維持性に優れる耐火パテ状組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】高温時の形状安定性における試験の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
1.パテ状耐火組成物
本実施形態のパテ状耐火組成物は、液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、エポキシ系化合物と、硬化剤と、含み、無機化合物の含有量が、ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、液状ゴムの含有量が、ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、無機化合物が、無機亜リン酸系化合物を含み、該無機亜リン酸系化合物の含有量が、無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%であり、JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度が、30[1/10mm]以下である。
【0014】
従来の熱膨張型パテ組成物では、積極的な熱膨張性を訴求した結果、熱膨張による形状安定性の低下を生じ、また、非膨張型パテ組成物では有機化合物成分の焼失による体積減少が発生するため、亀裂や隙間が生じて炎道となる可能性がある。これに対して、本実施形態のパテ状耐火組成物は、無機亜リン酸系化合物を所定量含むことにより微膨張性を付すことができ、熱膨張による形状安定性の低下や有機化合物成分の焼失による体積減少を回避し、燃焼後の形状安定性、及び焼失による体積減少を生じない体積維持性に優れる耐火パテ状組成物を提供することができる。また、ポリマー成分Aに加えて、エポキシ系化合物と硬化剤と所定量の無機化合物を含むことにより、高温での硬化反応が速やかに進行し、燃焼前の高温時形状安定性にも優れ、加工性(加工前軟度)、作業性(非付着性)、難燃性にも優れる耐火パテ状組成物を提供することができる。以下、各成分について詳説する。
【0015】
1.1.ポリマー成分A
ポリマー成分Aは、液状ゴム及び固形エラストマーからなる。パテ状耐火組成物はポリマー成分A以外のその他のポリマーを含んでもよい。しかし、ポリマー成分Aは、液状ゴム及び固形エラストマーのみで構成され、その他のポリマーはポリマー成分Aには含まれない。なお、その他のポリマーとしては、液状ゴムでも固形エラストマーでもない樹脂(ポリオレフィン、ポリスチレンなど)などが挙げられる。
【0016】
1.1.1.液状ゴム
液状ゴムとしては、室温において流動性のある液状であり、架橋反応や鎖延長反応などによってゴム弾性となるポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリクロロプレン、液状ポリブテン、液状ブチルゴムなどが挙げられる。液状ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
このなかでも、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、及び液状ポリブテンが好ましい。このような液状ゴムを用いることにより、加工性、作業性、及び高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0018】
液状ゴムの含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部である。
【0019】
上記液状ゴムの含有量の下限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、55質量部以上であり、60質量部以上であり、65質量部以上であり、70質量部以上であり、75質量部以上であり、80質量部以上であり、85質量部以上である。上記液状ゴムの含有量の下限が上記値以上であることにより、加工性がより向上する傾向にある。
【0020】
上記液状ゴムの含有量の上限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、93質量部以下であり、90質量部以下であり、85質量部以下であり、80質量部以下であり、75質量部以下であり、70質量部以下である。上記液状ゴムの含有量の上限が上記値以下であることにより、作業性や高温時形状安定性がより向上する傾向にある。液状ゴムの質量比は、ポリマー成分Aの総量100から固形エラストマーの質量比を引いた値であってもよい。
【0021】
1.1.2.固形エラストマー
固形エラストマーとしては、常温(25℃)で固形の弾性体であれば特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、再生ゴムなどの架橋可能なゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0022】
このなかでも、ブチルゴムが好ましい。このような固形エラストマーを用いることにより、加工性、作業性、高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0023】
固形エラストマーの含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、5~50質量部である。
【0024】
上記固形エラストマーの含有量の下限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、7質量部以上であり、10質量部以上であり、15質量部以上であり、20質量部以上であり、25質量部以上であり、30質量部以上である。上記液状ゴムの含有量の下限が上記値以上であることにより、作業性や高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0025】
上記固形エラストマーの含有量の上限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、45質量部以下であり、40質量部以下であり、35質量部以下であり、30質量部以上であり、25質量部以下であり、20質量部以下であり、15質量部以下である。上記液状ゴムの含有量の上限が上記値以下であることにより、加工性がより向上する傾向にある。
【0026】
1.2.無機化合物
無機化合物としては、無機亜リン酸系化合物を含み、その他の無機化合物を含んでもよい。以下、その他の無機化合物を無機亜リン酸系化合物(第1無機化合物)に対して、第2無機化合物ともいう。無機亜リン酸系化合物を含むことにより、体積維持性がより向上する傾向にある。
【0027】
無機化合物の含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部である。
【0028】
上記無機化合物の含有量の下限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、450質量部以上であり、500質量部以上であり、550質量部以上であり、600質量部以上であり、650質量部以上であり、700質量部以上である。上記無機化合物の含有量の下限が上記値以上であることにより、難燃性がより向上する傾向にある。
【0029】
上記無機化合物の含有量の上限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、1150質量部以下であり、1100質量部以下であり、1050質量部以下であり、1040質量部以下であり、1000質量部以下であり、950質量部以下であり、900質量部以下であり、870質量部以下であり、850質量部以下であり、800質量部以下であり、750質量部以下である。上記無機化合物の含有量の上限が上記値以下であることにより、パテとしての柔軟性や加工性がより向上する傾向にある。
【0030】
1.2.1.無機亜リン酸系化合物(第1無機化合物)
無機亜リン酸系化合物としては、特に限定されないが、例えば、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛等の亜リン酸化合物;亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸水素カルシウム、亜リン酸水素亜鉛等の亜リン酸水素化合物が挙げられる。
【0031】
このなかでも、亜リン酸水素化合物が好ましく、亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸水素ナトリウムがより好ましい。このような無機亜リン酸系化合物を用いることにより、体積維持性がより向上する傾向にある。
【0032】
無機亜リン酸系化合物の含有量は、無機化合物の総量に対して、0.10~13.00質量%である。
【0033】
上記無機亜リン酸系化合物の含有量の下限は、無機化合物の総量に対して、好ましくは、0.13質量%以上であり、0.15質量%以上であり、0.50質量%以上であり、0.88質量%以上であり、0.99質量%以上であり、1.00質量%以上であり、1.02質量%以上であり、1.50質量%以上であり、1.62質量%以上であり、1.82質量%以上であり、1.88質量%以上であり、2.00質量%以上であり、2.50質量%以上である。上記無機亜リン酸系化合物の含有量の下限が上記値以上であることにより、体積維持性がより向上する傾向にある。
【0034】
また、無機亜リン酸系化合物の含有量の上限は、無機化合物の総量に対して、好ましくは、12.80質量%以下であり、12.50質量%以下であり、12.00質量%以下であり、11.50質量%以下であり、11.24質量%以下であり、11.00質量%以下であり、10.50質量%以下であり、10.00質量%以下であり、9.93質量%以下であり、9.68質量%以下であり、9.50質量%以下であり、9.00質量%以下であり、8.67質量%以下であり、8.50質量%以下であり、8.00質量%以下であり、7.50質量%以下であり、7.00質量%以下であり、6.85質量%以下であり、6.67質量%以下であり、6.50質量%以下であり、6.00質量%以下であり、5.95質量%以下であり、5.50質量%以下であり、5.00質量%以下であり、4.50質量%以下であり、4.00質量%以下であり、3.50質量%以下であり、3.00質量%以下である。上記無機亜リン酸系化合物の含有量の上限が上記値以下であることにより、体積維持性及び燃焼後形状安定性がより向上する傾向にある。
【0035】
また、無機亜リン酸系化合物の含有量は、パテ状耐火組成物の総量に対して、好ましくは、0.14~12.50質量%である。
【0036】
上記無機亜リン酸系化合物の含有量の下限は、パテ状耐火組成物の総量に対して、好ましくは、0.15質量%以上であり、0.50質量%以上であり、0.81質量%以上であり、0.88質量%以上であり、0.99質量%以上であり、1.00質量%以上であり、1.02質量%以上であり、1.49質量%以上であり、1.50質量%以上であり、1.62質量%以上であり、1.82質量%以上であり、1.88質量%以上であり、2.00質量%以上であり、2.50質量%以上である。上記無機亜リン酸系化合物の含有量の下限が上記値以上であることにより、体積維持性がより向上する傾向にある。
【0037】
また、無機亜リン酸系化合物の含有量の上限は、パテ状耐火組成物の総量に対して、好ましくは、12.00質量%以下であり、11.50質量%以下であり、11.24質量%以下であり、11.00質量%以下であり、10.50質量%以下であり、10.00質量%以下であり、9.93質量%以下であり、9.68質量%以下であり、9.50質量%以下であり、9.00質量%以下であり、8.67質量%以下であり、8.50質量%以下であり、8.02質量%以下であり、8.00質量%以下であり、7.50質量%以下であり、7.00質量%以下であり、6.85質量%以下であり、6.67質量%以下であり、6.50質量%以下であり、6.00質量%以下であり、5.95質量%以下であり、5.50質量%以下であり、5.49質量%以下であり、5.00質量%以下であり、4.50質量%以下であり、4.00質量%以下であり、3.50質量%以下であり、3.00質量%以下である。上記無機亜リン酸系化合物の含有量の上限が上記値以下であることにより、体積維持性及び燃焼後形状安定性がより向上する傾向にある。
【0038】
さらに、無機亜リン酸系化合物の含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対し、好ましくは、0.7~102質量部である。
【0039】
上記無機亜リン酸系化合物の含有量の下限は、ポリマー成分A 100質量部に対し、好ましくは、1.0質量部以上であり、5.0質量部以上であり、7.0質量部以上であり、10質量部以上であり、13質量部以上であり、15質量部以上であり、20質量部以上である。無機亜リン酸系化合物の含有量の下限が上記値以上であることにより、体積維持性がより向上し、燃焼時のパテ材の体積減少による壁や床との間の隙間の発生が抑制される傾向にある。
【0040】
上記無機亜リン酸系化合物の含有量の上限は、ポリマー成分A 100質量部に対し、好ましくは、100質量部以下であり、95質量部以下であり、90質量部以下であり、85質量部以下であり、80質量部以下であり、75質量部以下であり、70質量部以下であり、65質量部以下であり、60質量部以下であり、55質量部以下であり、50質量部以下であり、45質量部以下であり、40質量部以下であり、35質量部以下であり、30質量部以下であり、25質量部以下である。無機亜リン酸系化合物の含有量の上限が上記値以下であることにより、燃焼後形状安定性が向上し、加熱張発生による割れや欠けの発生が抑制される傾向にある。
【0041】
1.2.2.第2無機化合物
第2無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等のカルシウム塩;ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土、パリゴルスカイト、セピオライト等の繊維状粘土、絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)、沸石(ゼオライト)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、クリストパライト、スメクタイト、カオリン、ハイドロタルサイト等の粘土鉱物;ガラス繊維(Eガラス繊維、Cガラス繊維、Sガラス繊維、Dガラス繊維)、岩綿、セラミック繊維(シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維)、ジルコニア繊維、カーボン繊維、バルクアルカリアースシリケート繊維、石膏繊維、炭素繊維、金属繊維、スラグ繊維、バサルト繊維等の繊維状無機化合物;窒化ホウ素、窒化けい、窒化アルミニウム、素などの窒化物;ガラスビーズ、リン酸塩系ガラスフリット、シリカ系バルン、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化けい素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)等が挙げられる。これらその他の無機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
このなかでも、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムがより好ましい。このような第2無機化合物を用いることにより、難燃性がより向上する傾向にある。
【0043】
第2無機化合物の含有量は、ポリマー成分 A100質量部に対して、好ましくは、377~1177質量部である。
【0044】
上記第2無機化合物の含有量の下限は、ポリマー成分 A100質量部に対して、好ましくは、400質量部以上であり、450質量部以上であり、477質量部以上であり、500質量部以上であり、550質量部以上であり、577質量部以上であり、600質量部以上であり、650質量部以上であり、700質量部以上である。第2無機化合物の含有量の下限が上記値以上であることにより、難燃性がより向上する傾向にある。
【0045】
上記第2無機化合物の含有量の上限は、ポリマー成分 A100質量部に対して、好ましくは、1150質量部以下であり、1100質量部以下であり、1050質量部以下であり、1017質量部以下であり、1000質量部以下であり、950質量部以下であり、900質量部以下であり、850質量部以下であり、847質量部以下であり、800質量部以下であり、750質量部以下であり、700質量部以下である。第2無機化合物の含有量の上限が上記値以下であることにより、加工性がより向上する傾向にある。
【0046】
1.3.エポキシ系化合物
エポキシ系化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリアミドアミンエピクロロヒドリンポリマー、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N,N-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、エポキシ系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
このなかでも、芳香族基を有するエポキシ系化合物が好ましい。芳香族基を有するエポキシ系化合物としては、特に制限されないが、例えば、N,N,N,N-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。このようなエポキシ系化合物を用いることにより、加工性、作業性、高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0048】
エポキシ系化合物の含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、1.0質量部以上であり、1.0~85質量部である。
【0049】
上記範囲において、エポキシ系化合物の含有量の下限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、2.5質量部以上であり、5.0質量部以上であり、10質量部以上であり、15質量部以上であり、20質量部以上であり、25質量部以上であり、30質量部以上である。エポキシ系化合物の含有量が上記下限値以上であることにより、加工性や高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0050】
また、上記範囲において、エポキシ系化合物の含有量の上限は、ポリマー成分A 100質量部に対して、80質量部以下であり、70質量部以下であり、60質量部以下であり、55質量部以下であり、50質量部以下である。エポキシ系化合物の含有量が上記上限値以下であることにより、作業性がより向上する傾向にある。
【0051】
1.4.硬化剤
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、重付加型硬化剤又は触媒型硬化剤が挙げられる。重付加型硬化剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。触媒型硬化剤としては、特に制限されないが、例えば、アミン化合物、イミダゾール系化合物、ルイス酸錯体等が挙げられる。
【0052】
このなかでも、イミダゾール系化合物が好ましい。このような硬化剤を用いることにより、室温反応性や耐熱性がより向上する傾向にある。
【0053】
イミダゾール系化合物は、五員環若しくは六員環上に窒素原子を含む複素環式芳香族化合物アミンの一種であり、特に制限されないが、例えば、1Hイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル2ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2メチルイミダゾリル1)エチルsトリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2-ウンデシルイミダゾリル1)エチルsトリアジン、2,4-ジアミノ6(2メチル4メチルイミダゾリル1)エチルsトリアジン、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾリン-2,4-ジアミノ-6-ビニルsトリアジン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチルsトリアジン等が挙げられる。
【0054】
アミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、変性脂肪族ポリアミン、変性脂環族アミン及びポリアミドアミン、芳香族アミン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、及びジメチルチオトルエンジアミンが挙げられる。アミン化合物は、例えば、上述したような芳香族アミン化合物を変性させた変性芳香族アミン化合物であってもよい。
【0055】
硬化剤の含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、0.5質量部以上であり、0.5~40質量部であり、6.0~34質量部であり、13~27質量部である。硬化剤の含有量が0.5質量部以上であることにより、高温時形状安定性がより向上する傾向にある。また、硬化剤の含有量が40質量部以下であることにより、作業性がより向上する傾向にある。
【0056】
1.5.その他の成分
本実施形態のパテ状耐火組成物は、必要に応じて、通常のゴム配合物に使用される可塑剤(軟化剤)、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、粘着付与剤樹脂、繊維状有機化合物等を併用してもよい。その他の成分の総量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、好ましくは、0~100質量部であり、0~50質量部であり、0~20質量部である。
【0057】
1.6.軟度
JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度は、30[1/10mm]以下であり、好ましくは、25[1/10mm]以下であり、20[1/10mm]以下であり、15[1/10mm]以下であり、13[1/10mm]以下であり、11[1/10mm]以下であり、9[1/10mm]以下であり、7[1/10mm]以下であり、5[1/10mm]以下である。硬化後の軟度が30[1/10mm]以下であることにより、高温時形状安定性がより向上する傾向にある。
【0058】
硬化後の軟度の下限は、特に制限されないが、0[1/10mm]以上であり、1[1/10mm]以上であってもよい。
【0059】
硬化後の軟度は、エポキシ系化合物や硬化剤の種類や量により調整することができる。JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度は、例えば、エポキシ系化合物と硬化剤とが反応し得る状況から、言い換えると、後述する第一剤と第二剤とを混合してパテ状耐火組成物を調製してから、21℃にて7日間放置した後の値であってもよい。21℃にて7日間放置した後であれば、十分に効果が進行し、軟度の変化がなくなり、軟度が一定となる。
【0060】
2.熱膨張性パテ組成物の製造方法
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール等の公知の混練装置を用いて、上記樹脂A、上記エポキシ系化合物、上記熱膨張性黒鉛、上記無機化合物、並びに、必要に応じて、水及びその他の成分を混合・撹拌することによって製造することができる。
【0061】
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、例えば、プレス成形、ロール成形、押し出し成形、カレンダー成形等の従来公知の成形方法で成形してもよい。
【0062】
3.二剤型組成物セット
本実施形態の二剤型組成物セットは、パテ状耐火組成物を調製するための第一剤と第二剤を含有する。第一剤は、エポキシ系化合物を含み、かつ硬化剤を含有せず、第二剤は、硬化剤を含み、かつエポキシ系化合物を含有しない。なお、また、ポリマー成分Aと無機化合物については、第一剤と第二剤の何れか一方が含んでもよいし、第一剤と第二剤の両方が含んでもよい。
【0063】
硬化剤とエポキシ系化合物が併存する状況で熱膨張性パテ組成物を放置すれば、使用前に反応が進行することが想定される。そのため、本実施形態においては、熱膨張性パテ組成物を調製するための上記第一剤と上記第二剤を含有する二剤型組成物セットを提供する。これにより、第一剤と第二剤とを混合することで、混合物中で、第一剤由来のエポキシ系化合物と第二剤由来の硬化剤が共存し、硬化反応が進行し、パテ状耐火組成物が調製される。
【0064】
なお、本実施形態の二剤型組成物セットは、上記パテ状耐火組成物を調製するためのものである。そのため、本実施形態の二剤型組成物セットの第一剤と第二剤を構成する各成分の例示としては、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0065】
第一剤と第二剤を合計した際の無機化合物の含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部である。第一剤と第二剤を混合したときの無機化合物の合計含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0066】
また、無機亜リン酸系化合物の含有量は、無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%である。第一剤と第二剤を混合したときの無機亜リン酸系化合物の合計含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0067】
第一剤と第二剤を合計した際の液状ゴムの含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部である。第一剤と第二剤を混合したときの液状ゴムの合計含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0068】
第一剤と第二剤を合計した際の固形エラストマーの含有量は、ポリマー成分A 100質量部に対して、5~50質量部である。第一剤と第二剤を混合したときの固形エラストマーの合計含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0069】
第一剤と第二剤を合計した際のエポキシ系化合物の含有量が、ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上である。第一剤と第二剤を混合したときのエポキシ系化合物の含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0070】
第一剤と第二剤を合計した際の硬化剤の含有量が、ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である。第一剤と第二剤を混合したときの硬化剤の含有量の好ましい値及びその効果は、上記パテ状耐火組成物で例示したものと同様のものを例示することができる。
【0071】
4.防火区画貫通部埋め戻し処理方法
本実施形態の防火区画貫通部埋め戻し処理方法は、上記熱膨張性パテ組成物を用いて施工する施工工程を有する。施工方法は特に制限されず、従来より、熱膨張性パテ組成物を用いて行うことのできる施工方法を全般的に使用することができる。
【0072】
例えば、防火区画貫通部埋め戻し処理方法は、上記二剤型組成物セットの第一剤と第二剤を混合して、熱膨張性パテ組成物を調製する調製工程をさらに有してもよい。これにより、樹脂Aとエポキシ系化合物が併存する状況で熱膨張性パテ組成物を保管などする必要がなく、使用前に反応が進行することを回避し得る。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
1.パテ状耐火組成物の作製
表1~表3に各パテ状耐火組成物で使用した成分と、パテ状耐火組成物の全体における成分の含有量を示す。表1~表3に示す組成のうち、ポリマー成分A、無機リン系化合物、その他無機化合物に関してはその半量と、エポキシ化合物を全量配合し、ニーダーミキサーを用いて80℃で10分間混練して、パテ状耐火組成物の第一剤を得た。
【0075】
続いて、ポリマー成分、無機リン系化合物、その他無機化合物の残りの半量と、硬化剤を全量配合し、ニーダーミキサーを用いて80℃で10分間混練して、パテ状耐火組成物の第二剤を得た。
【0076】
最後に、パテ状耐火組成物第一剤と、パテ状耐火組成物第二剤の同量を、ニーダーミキサーを用いて80℃で10分間混練して、実施例及び比較例のパテ状耐火組成物を得た。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
表中の成分の詳細は、以下の通りである。
(1)ポリマー成分
(1-1)液状ゴム
・ポリイソプレンゴム:株式会社クラレ製「LIR-30」、分子量28000、Tg-63℃、粘度70Pa.s(38℃)
・ポリブタジエンゴム:株式会社クラレ製「LBR-302」、分子量5500、Tg-85℃、粘度0.6Pa.s(38℃)
・ポリブテン :JXエネルギー株式会社製、「HV-100」、分子量980、動粘度9,500mm2/s(40℃)
(1-2)固形エラストマー
・ブチルゴム :JSR株式会社製「ブチル268」、ゴム状(40℃)
(2)無機化合物
(2-1)無機亜リン酸系化合物
・亜リン酸水素アルミニウム:太平化学産業株式会社製「NSF」
・亜リン酸ナトリウム :米山化学工業株式会社製「亜リン酸ナトリウム」
(2-2)その他の無機化合物
・リン酸塩系ガラスフリット:岡谷理化株式会社製「FRM」
・水酸化アルミニウム :住友化学株式会社製「C-301N」
・水酸化マグネシウム :協和化学子業株式会社性「KISMA5A」
・炭酸カルシウム :秩父石灰工業株式会社製「TA-044」
(3)エポキシ系化合物
・ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂 :三菱ケミカル株式会社製「jER828」
・エチレングリコールジグリシジルエーテル:ナガセケムテックス株式会社製「デナコールEX-810」
(4)硬化剤
・イミダゾール系化合物:四国化成工業株式会社製「キュアゾール2E4MZ」
・芳香族アミン化合物:日本化薬株式会社製「カヤハードAA」、4,4’-ジアミノジフェニルメタン
【0081】
2.評価
各実施例及び比較例のパテ状耐火組成物について、以下の測定及び評価を行った。結果を表1~表3に示す。
【0082】
2.1.硬化後の軟度
第一剤と第二剤を混ぜ合わせてパテ状耐火組成物を調製したあと、21℃にて7日間放置した。その後の試験片パテに対して、JIS A5752に準拠し、荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。具体的には、規定の円錐を試験片パテに垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。
【0083】
2.2.加工性(硬化前軟度)
第一剤と第二剤を混ぜ合わせて10分後の試験片パテを、JIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。具体的には、規定の円錐を試験片に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。そして、貫入深さに基づいて、加工性を以下の基準で判定した。
◎:60[1/10mm]以上
○:50[1/10mm]以上60[1/10mm]未満
△:40[1/10mm]以上50[1/10mm]未満
×:40[1/10mm]未満
【0084】
2.3.作業性(非付着性)
ラテックスゴム手袋を装着し、第一剤と第二剤を混ぜ合わせて10分後の試験片パテを10回握った後の手袋の付着物の重量を測定し、以下の式に基づいて付着物重量を算出した。そして、付着物重量に基づいて、作業性を以下の基準で判定した。なお、付着物量が少ないほど作業性が良いことを示す。
付着物重量(g)=(パテを10回握った後の手袋の重量)-(元の手袋の重量)
◎:0.02[g]未満
○:0.02[g]以上0.05[g]未満
△:0.05[g]以上0.10g未満
×:0.10[g]以上
【0085】
2.4.高温時の形状安定性
第一剤と第二剤を混ぜ合わせて10分後の試験片パテ10gを球状にし、21℃にて7日間放置。その後、JIS H4000(A1050)で定めるアルミ板に載せ、200℃で60分加熱した。その後試験片パテを取り外し、アルミ板に残った跡の直径を測定した。本試験の概略図を図1に示す。
◎:跡が10mm以下
〇:跡が10mm超15mm以下
△:跡が15mm超20mm以下
×:跡が20mm超
【0086】
2.5.体積維持性
第一剤と第二剤を混ぜ合わせて10分後の試験片パテを、厚さ4mm、幅30mm、長さ30mmの試験片(体積A:3600mm3)にし、21℃にて7日間放置。その後、試験片を800℃で1時間加熱した後の体積Bを測定し、その体積から体積維持率(体積B/体積A)を算出した。そして、体積維持率を以下の基準で判定した。なお、体積維持率は組成によって、800℃の加熱により体積を減少させる成分と体積を増加させる成分の関係性から、1.0倍を超えることもある。
◎:1.0倍以上
○:0.85倍以上、1.0倍未満
△:0.7倍以上、0.85倍未満
×:0.7倍未満
【0087】
2.6.燃焼後形状安定性
第一剤と第二剤を混ぜ合わせて10分後の試験片パテを、厚さ4mm、幅30mm、長さ30mmの試験片にし、21℃にて7日間放置。その後、試験片を800℃で1時間加熱し、外観を目視にて観察した。
◎:ひび割れ自体が無い
○:ひび割れ有るが表面のみ
×:内部までひび割れ有り
【0088】
2.7.難燃性
第一剤と第二剤を混ぜ合わせて21℃にて7日間放置した試験片を、JIS K6269に準じて燃焼試験装置(スガ試験機(株)製,ON-1型)を用いて酸素指数を測定し、以下の基準で難燃性を判定した。なお、酸素指数が大きいほど、難燃性が高いことを示す。
◎:酸素指数が65以上
○:酸素指数が60以上65未満
△:酸素指数が55以上60未満
×:酸素指数が55未満
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、建材用途などに用いる熱膨張性パテ組成物として、産業上の利用可能性を有する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、エポキシ系化合物と、硬化剤と、含み、
前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0~85質量部であり、
前記無機化合物が、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.10~13.00質量%であり、
JIS A 5752に準拠して測定した硬化後の軟度が、30[1/10mm]以下である、
パテ状耐火組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が、イミダゾール系化合物を含む、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項3】
前記エポキシ系化合物が、芳香族基を有する、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項4】
前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
請求項1に記載のパテ状耐火組成物。
【請求項5】
パテ状耐火組成物を調製するための第一剤と第二剤を含有する二剤型組成物セットであって、
前記第一剤は、エポキシ系化合物を含み、かつ硬化剤を含有せず、
前記第二剤は、硬化剤を含み、かつエポキシ系化合物を含有せず、
前記第一剤と前記第二剤の何れか一方又は両方が、それぞれ、液状ゴム及び固形エラストマーからなるポリマー成分Aと、無機化合物と、を含み、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記無機化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、400~1200質量部であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記液状ゴムの含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0~85質量部であり、
前記無機化合物は、無機亜リン酸系化合物を含み、
該無機亜リン酸系化合物の含有量が、前記無機化合物の総量に対して、0.1~13.0質量%であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記エポキシ系化合物の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、1.0質量部以上であり、
前記第一剤と前記第二剤を合計した際の前記硬化剤の含有量が、前記ポリマー成分A 100質量部に対して、0.5質量部以上である、
二剤型組成物セット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のパテ状耐火組成物を用いて施工する施工工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。
【請求項7】
請求項に記載の二剤型組成物セットの前記第一剤と前記第二剤を混合して、パテ状耐火組成物を調製する調製工程を有する、
防火区画貫通埋め戻し処理方法。