(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122150
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】情動判定システム及び情動判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240902BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61B5/16 100
A61B5/0245 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029529
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】515162408
【氏名又は名称】株式会社コルラボ
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚志
(72)【発明者】
【氏名】成田 博城
(72)【発明者】
【氏名】張本 和芳
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
(72)【発明者】
【氏名】野村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】橋村 圭亮
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC21
4C017BC23
4C017BD04
4C038PP01
4C038PP03
4C038PP05
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べて判定対象者の情動状態を精度良く判定できる情動判定装置及び情動判定プログラムを提供する。
【解決手段】判定対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、生体情報から第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出する指標算出部と、判定期間が経過するごとに、判定期間内において下記の(1)及び(2)の条件を満たす回数を算出し、算出時刻における回数の変化の割合を算出する情動判定部を有し、第1自律神経関連指標は、心拍間隔の平均値、脈拍間隔の平均値、脈拍間隔の中央値、又は自律神経指標であり、第2自律神経関連指標は、第1自律神経関連指標とは異なる指標で、かつ自律神経指標であり、情動判定部は、回数の変化の割合が評価閾値超過であると所定の情動状態であると判定する。
(1)第1自律神経関連指標が第1選別範囲に収まる。
(2)第2自律神経関連指標が第2選別範囲に収まる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象者が所定の情動状態であるかを判定する情動判定システムであって、
前記判定対象者の一又は複数の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から少なくとも第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出する指標算出部と、
判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記の(1)及び(2)の条件を満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出する情動判定部を有し、
前記第1自律神経関連指標は、所定の期間における心拍間隔の平均値、前記心拍間隔の中央値、脈拍間隔の平均値、脈拍間隔の中央値、又は自律神経指標であり、
前記第2自律神経関連指標は、前記第1自律神経関連指標とは異なる指標であって、かつ自律神経指標であり、
前記情動判定部は、前記回数の変化の割合が評価閾値超過であることを条件として前記所定の情動状態であると判定する、情動判定システム。
(1)前記第1自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第1選別範囲に収まる。
(2)前記第2自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第2選別範囲に収まる。
【請求項2】
前記回数の変化の割合は、時間に対する前記回数の累積関数を求めて前記所定の期間ごとに前記回数の累積関数の微分値を算出し、前記判定期間内における前記微分値を累計することで算出する、請求項1に記載の情動判定システム。
【請求項3】
前記回数の変化の割合は、時間に対する前記回数の累積関数において、前記算出時刻における前記回数の累積関数の微分値である、請求項1に記載の情動判定システム。
【請求項4】
前記情動判定部は、前記回数の変化の割合が2回以上連続して前記評価閾値超過であることを条件として前記所定の情動状態であると判定する、請求項2又は3に記載の情動判定システム。
【請求項5】
時間に対する前記回数の累積関数の微分値又は前記回数の累積関数の累積値が報知閾値以上であることを条件として、前記所定の情動状態であること及び/又は前記所定の情動状態に付随する状態であることを前記判定対象者に報知する報知部を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項6】
前記所定の情動状態は、疲労、眠気、リフレッシュ、緊張、及び集中のいずれかである、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項7】
前記第1自律神経関連指標は、前記心拍間隔又は前記脈拍間隔の平均値であり、
前記第2自律神経関連指標は、前記心拍間隔又は前記脈拍間隔の変動を周波数解析して得られるパワースペクトルにおける前記所定の期間での低周波帯域の積分値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項8】
前記低周波帯域は、0.05Hz以上0.15Hz以下の範囲である、請求項7に記載の情動判定システム。
【請求項9】
前記指標算出部は、前記生体情報から前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標に加えて、さらに副交感神経指標及び呼吸性洞性不整脈を算出するものであり、
前記情動判定部は、前記判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記(3)~(5)の条件を全て満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出し、さらに前記回数の変化の割合が前記評価閾値超過であることを条件に前記所定の情動状態であると判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
(3)前記第1自律神経関連指標が前記第1選別範囲に収まる。
(4)前記第2自律神経関連指標が前記第2選別範囲に収まる。
(5)前記呼吸性洞性不整脈が第3選別範囲に収まる、又は前記副交感神経指標が第4選別範囲に収まる。
【請求項10】
前記判定期間は、10分以上60分以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項11】
前記生体情報取得部で取得する前記生体情報の中には、前記心拍間隔を特定する心拍特定情報又は前記脈拍間隔を特定する脈拍特定情報を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項12】
前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標のうち少なくとも一方の自律神経関連指標は、前記指標算出部によって、複数の異なる種類の生体情報に基づいて算出される、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項13】
前記生体情報取得部は、撮影部を含み、前記撮影部が前記判定対象者を撮影し、撮影画像から生体情報を取得する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項14】
前記生体情報取得部は、前記判定対象者の複数の生体情報を取得するものであり、
前記指標算出部は、各生体情報において前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標をそれぞれ算出し、
前記情動判定部は、判定期間が経過するごとに、各生体情報から算出した前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標を用いて、算出時刻における前記回数の変化の割合をそれぞれ算出し、各回数の変化の割合のうち最も大きい前記回数の変化の割合を前記評価閾値と比較して前記所定の情動状態を判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項15】
前記指標算出部は、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から、前記心拍間隔の平均値、前記脈拍間隔の平均値、及び複数の自律神経指標のうち少なくとも一つを算出し、
前記心拍間隔の平均値、前記脈拍間隔の平均値、及び前記複数の自律神経指標のうち、最も前記回数の変化の割合が大きくなると予想される組み合わせを前記第1自律神経関連指標と前記第2自律神経関連指標に設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情動判定システム。
【請求項16】
判定対象者の一又は複数の生体情報を取得する生体情報取得部が接続されたコンピュータに、
前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から少なくとも第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出する機能と、
判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記の(6)及び(7)の条件を満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出する機能と、
前記回数の変化の割合が評価閾値超過であることを条件として所定の情動状態であると判定する機能と、を実現させるためのものであり、
前記第1自律神経関連指標は、所定の期間における心拍間隔の平均値、心拍間隔の中央値、脈拍間隔の平均値、脈拍間隔の中央値、又は自律神経指標であり、
前記第2自律神経関連指標は、前記第1自律神経関連指標とは異なる指標であって、かつ自律神経指標である、情動判定プログラム。
(6)前記第1自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第1選別範囲に収まる。
(7)前記第2自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第2選別範囲に収まる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定対象者の情動状態を判定する情動判定システム及び情動判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から労働環境を改善するために、労働者の疲労度を評価する疲労度評価システムが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の疲労度評価システムは、勤務者の勤務データの入力部と、勤務データに基づいて勤務者を評価対象として疲労度の評価を行う疲労度評価演算処理部と、評価結果を出力する出力部とを備えている。そして、特許文献1によれば、複数の勤務時間帯の種別を規定したシフトパターンデータと、勤務者の勤務開始時刻と勤務終了時刻を含む勤務データに基づいて、勤務間隔における疲労回復を考慮して実際の疲労度を演算できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の疲労度評価システムは、労働者のシフトパターンデータと勤務データから疲労度を推定するものであり、実際の労働者の生体情報を取得するものではない。
労働者の疲労度は、勤務時間外での影響も大きく受けるため、特許文献1の疲労度評価システムでは、労働者の実態に合わせた疲労度を正確に評価することができない問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べて判定対象者の情動状態を精度良く判定できる情動判定システム及び情動判定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、多数の判定対象者に対して疲労に関するアンケートを行い、判定対象者の中で強い疲労状態であると回答した判定対象者と、その心拍変動から算出した自律神経に関連する指標の関係について検討したところ、2つの異なる自律神経に関連する指標をX軸、Y軸とする自律神経テーブルを作成すると、多少ノイズが発生するものの、概ね自律神経テーブルの特定のエリアに集中してプロットされる傾向があることを発見した。
そこで、本発明者らは、疲労、眠気、リフレッシュ、集中、緊張、及びリラックスといった他の情動状態についても検討したところ、同様に自律神経テーブルの特定のエリアに集中してプロットされる傾向があった。
これらの結果から、本発明者らは、各情動状態の自律神経に関連する指標が自律神経テーブルの特定エリアにそれぞれ帰属すると考え、自律神経テーブルにおける特定のエリアに属する回数の変化をとらえることで、ノイズを踏まえた判定対象者の情動状態の変化をとらえ、現在の情動状態を正確に判定できると考えた。
【0007】
上記の考えのもと導き出された本発明の一つの様相は、判定対象者が所定の情動状態であるかを判定する情動判定システムであって、前記判定対象者の一又は複数の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から少なくとも第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出する指標算出部と、判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記の(1)及び(2)の条件を満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出する情動判定部を有し、前記第1自律神経関連指標は、所定の期間における心拍間隔の平均値、前記心拍間隔の中央値、脈拍間隔の平均値、脈拍間隔の中央値、又は自律神経指標であり、前記第2自律神経関連指標は、前記第1自律神経関連指標とは異なる指標であって、かつ自律神経指標であり、前記情動判定部は、前記回数の変化の割合が評価閾値超過であることを条件として前記所定の情動状態であると判定する、情動判定システムである。
(1)前記第1自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第1選別範囲に収まる。
(2)前記第2自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第2選別範囲に収まる。
【0008】
本様相によれば、判定対象者の情動状態を精度良く判定できる。
【0009】
好ましい様相は、前記回数の変化の割合は、時間に対する前記回数の累積関数を求めて前記所定の期間ごとに前記回数の累積関数の微分値を算出し、前記判定期間内における前記微分値を累計することで算出することである。
【0010】
好ましい様相は、前記回数の変化の割合は、時間に対する前記回数の累積関数を求め、前記算出時刻における前記回数の累積関数の微分値である。
【0011】
より好ましい様相は、前記情動判定部は、前記回数の変化の割合が2回以上連続して前記評価閾値超過であることを条件として前記所定の情動状態であると判定することである。
【0012】
好ましい様相は、時間に対する前記回数の累積関数の微分値又は前記回数の累積関数の累積値が報知閾値以上であることを条件として、前記所定の情動状態であること及び/又は前記所定の情動状態に付随する状態であることを前記判定対象者に報知する報知部を備えることである。
【0013】
ここでいう「情動状態に付随する状態」とは、情動状態に関連して生じる状態をいい、情動状態に一定の因果関係がある状態をいう。
すなわち、「所定の情動状態に付随する状態であることを判定対象者に報知する」とは、例えば、所定の情動状態が疲れや緊張などのネガティブな情動状態の場合には、判定対象者にとって好ましくない状態であることを判定者に報知することなどが挙げられる。
【0014】
好ましい様相は、前記所定の情動状態は、疲労、眠気、リフレッシュ、緊張、及び集中のいずれかである。
【0015】
好ましい様相は、前記第1自律神経関連指標は、前記心拍間隔又は前記脈拍間隔の平均値であり、前記第2自律神経関連指標は、前記心拍間隔又は前記脈拍間隔の変動を周波数解析して得られるパワースペクトルにおける前記所定の期間での低周波帯域の積分値である。
【0016】
より好ましい様相は、前記低周波帯域は、0.05Hz以上0.15Hz以下の範囲である。
【0017】
好ましい様相は、前記指標算出部は、前記生体情報から前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標に加えて、さらに副交感神経指標及び呼吸性洞性不整脈を算出するものであり、前記情動判定部は、前記判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記(3)~(5)の条件を全て満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出し、さらに前記回数の変化の割合が前記評価閾値超過であることを条件に前記所定の情動状態であると判定することである。
(3)前記第1自律神経関連指標が前記第1選別範囲に収まる。
(4)前記第2自律神経関連指標が前記第2選別範囲に収まる。
(5)前記呼吸性洞性不整脈が第3選別範囲に収まる、又は前記副交感神経指標が第4選別範囲に収まる。
【0018】
好ましい様相は、前記判定期間は、10分以上60分以下である。
【0019】
好ましい様相は、前記生体情報取得部で取得する前記生体情報の中には、前記心拍間隔を特定する心拍特定情報又は前記脈拍間隔を特定する脈拍特定情報を含むことである。
【0020】
好ましい様相は、前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標のうち少なくとも一方の自律神経関連指標は、前記指標算出部によって、複数の異なる種類の生体情報に基づいて算出されることである。
【0021】
好ましい様相は、前記生体情報取得部は、撮影部を含み、前記撮影部が前記判定対象者を撮影し、撮影画像から生体情報を取得することである。
【0022】
好ましい様相は、前記生体情報取得部は、前記判定対象者の複数の生体情報を取得するものであり、前記指標算出部は、各生体情報において前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標をそれぞれ算出し、前記情動判定部は、判定期間が経過するごとに、各生体情報から算出した前記第1自律神経関連指標及び前記第2自律神経関連指標を用いて、算出時刻における前記回数の変化の割合をそれぞれ算出し、各回数の変化の割合のうち最も大きい前記回数の変化の割合を前記評価閾値と比較して前記所定の情動状態を判定することである。
【0023】
好ましい様相は、前記指標算出部は、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から、前記心拍間隔の平均値、前記脈拍間隔の平均値、及び自律神経指標のうち少なくとも一つを算出し、前記心拍間隔の平均値、前記脈拍間隔の平均値、及び前記複数の自律神経指標のうち、最も前記回数の変化の割合が大きくなると予想される組み合わせを前記第1自律神経関連指標と前記第2自律神経関連指標に設定することである。
【0024】
本発明の一つの様相は、判定対象者の一又は複数の生体情報を取得する生体情報取得部が接続されたコンピュータに、前記生体情報取得部で取得した前記生体情報から少なくとも第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出する機能と、判定期間が経過するごとに、前記判定期間内において下記の(6)及び(7)の条件を満たす回数を算出し、算出時刻における前記回数の変化の割合を算出する機能と、前記回数の変化の割合が評価閾値超過であることを条件として所定の情動状態であると判定する機能と、を実現させるためのものであり、前記第1自律神経関連指標は、所定の期間における心拍間隔の平均値、心拍間隔の中央値、脈拍間隔の平均値、脈拍間隔の中央値、又は自律神経指標であり、前記第2自律神経関連指標は、前記第1自律神経関連指標とは異なる指標であって、かつ自律神経指標である、情動判定プログラムである。
(6)前記第1自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第1選別範囲に収まる。
(7)前記第2自律神経関連指標が前記所定の情動状態に対応した一又は複数の第2選別範囲に収まる。
【0025】
本様相によれば、判定対象者の情動状態を精度良く判定できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の情動判定システム及び情動判定プログラムによれば、従来に比べて判定対象者の情動状態を精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態の情動判定システムの構成図である。
【
図2】
図1の情動判定システムにおいて判定対象者がクライアントコンピュータを操作する際の状況を示す斜視図である。
【
図3】
図1の情動判定システムにおける情動判定動作を表すフローチャートである。
【
図4】
図1の情動判定システムにおける変化の割合算出動作を表すフローチャートである。
【
図5】
図4の変化の割合算出動作に使用される自律神経テーブルの説明図であり、縦軸が第1自律神経関連指標、横軸が第2自律神経関連指標を表しており、疲労に対応する各情動エリアを太線で囲んでいる。
【
図6】心拍間隔のローレンツプロットの一例を示すグラフである。
【
図7】本発明の第2実施形態の情動判定システムにおける変化の割合算出動作を表すフローチャートである。
【
図8】本発明の第3実施形態の情動判定システムにおける情動判定動作を表すフローチャートである。
【
図9】本発明の第3実施形態の情動判定動作の説明図であり、(a)は累積関数及び微分値関数を示すグラフであり、(b)は抽出関数を示すグラフである。
【
図10】本発明の第4実施形態の情動判定システムの構成図である。
【
図11】本発明の実験例で使用した自律神経テーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明の第1実施形態の情動判定システム1は、情動判定プログラム20に基づいて情動判定動作を実行し、クライアントコンピュータ3を操作する判定対象者100が所定の情動状態であるかを判定するものである。
情動判定システム1は、
図1のように、管理サーバー2と、一又は複数のクライアントコンピュータ3がインターネットやイントラネット等のネットワーク5を介して接続されて構成されている。
本実施形態の情動判定システム1で判定できる情動状態は、例えば、疲労、緊張、眠気、集中、リフレッシュ、リラックスなどがあり、特に疲労、緊張、眠気、集中、リフレッシュのいずれかを判定する際に好適に使用されるものである。
以下の説明においては、情動判定システム1で所定の情動状態として「疲労」を判定する場合について説明する。
【0030】
管理サーバー2は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータであり、
図1のように、主要構成部位として、データ蓄積部10と、情動判定部11と、指標算出部12と、サーバー側通信部13を備えている。
データ蓄積部10は、情動判定プログラム20が格納されており、さらに各クライアントコンピュータ3を経由して取得した生体情報、自律神経テーブル、第1自律神経関連指標、第2自律神経関連指標、呼吸性洞性不整脈、副交感神経指標、及び関連する時刻情報などの各種データが格納されている。
【0031】
情動判定部11は、管理サーバー2から受信した情動判定プログラム20に基づいて、判定対象者100の情動状態を判定する部位である。
指標算出部12は、第1生体情報取得部32で取得した生体情報及び/又は外部端末6の第2生体情報取得部40で取得した生体情報から第1自律神経関連指標、第2自律神経関連指標、呼吸性洞性不整脈(RSA;Respiratory Sinus Arrhythmia)、及び副交感神経指標(CVI;Cardiac Vagal Index)を算出する部位である。
サーバー側通信部13は、ネットワーク5と相互通信可能な部位である。
【0032】
クライアントコンピュータ3は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータである。
クライアントコンピュータ3は、
図1のように、主要構成部位として、第1生体情報取得部32と、データ記憶部33と、コンピュータ側送受信部34と、クライアント側通信部35と、報知部36を備えている。
【0033】
第1生体情報取得部32は、判定対象者100の一又は複数の生体情報を取得する部位である。
本実施形態の第1生体情報取得部32は、撮影部を有し、撮影部によって撮影された判定対象者100の撮影画像から生体情報を抽出可能となっている。
具体的には、第1生体情報取得部32は、判定対象者100の体動や瞬目などの生体情報を取得可能となっている。なお、第1生体情報取得部32は、サーモグラフィによって温度変化などの生体情報を取得してもよい。
本実施形態の第1生体情報取得部32は、生体情報として判定対象者100の心拍を特定する心拍特定情報を取得可能となっている。
【0034】
コンピュータ側送受信部34は、Bluetooth(登録商標)通信等の無線通信によって外部端末6の端末側送受信部41とデータの送受信が可能な部位である。
コンピュータ側送受信部34は、外部端末6から第2生体情報取得部40で取得した生体情報を受信することが可能となっている。
クライアント側通信部35は、無線又は有線によってネットワーク5とデータの相互通信が可能な部位である。なお、クライアント側通信部35は、無線基地局を介してネットワーク5と接続可能となっていてもよい。
【0035】
報知部36は、情動判定部11によって判定対象者100が所定の情動状態であると判定されたときに判定対象者100に報知する部位である。
報知部36による判定対象者100への報知方法は、特に限定されるものではなく、画像、映像等の視覚を用いた報知方法であってもよいし、音等による聴覚を用いた報知方法であってもよいし、バイブレーション等の触覚を用いた報知方法であってもよい。
また報知部36は、ソーシャルネットワーキングサービスツール(SNSツール)や、ビジネスインテリジェンスツール(BIツール)、Webアプリケーションなどのアプリケーションソフトウェアと連動して所定の情動状態であることを判定対象者100に報知してもよい。
本実施形態の報知部36は、モニター及びスピーカーであり、モニターに画像又は映像を表示させ、スピーカーから音声を流すことで、判定対象者100に所定の情動状態であることを報知可能となっている。
【0036】
外部端末6は、ハードウェア構成として、各装置を制御する制御装置とデータに対する演算を行う演算装置で構成される中央処理装置と、データを記憶する記憶装置、外部からデータを入力する入力装置、外部にデータを出力する出力装置を備えたコンピュータであり、判定対象者100が装着又は着用できるものである。
外部端末6は、
図2のように加速度センサー、脈拍センサー、UVセンサー、及び温度センサーを内蔵した計器であり、判定対象者の体の一部に取り付けて使用されるウェアラブル端末である。
本実施形態では、外部端末6としてリストバンド型の活動量計を使用しているが、本発明はこれに限定されるものでない。
外部端末6は、
図1のように第2生体情報取得部40と、端末側送受信部41を備えている。
第2生体情報取得部40は、第1生体情報取得部32と同様、判定対象者100の一又は複数の生体情報を取得する部位である。
第2生体情報取得部40は、判定対象者100の脈拍や皮膚温度などの生体情報を取得可能となっている。本実施形態の第2生体情報取得部40は、生体情報として判定対象者100の心拍間隔を特定する心拍特定情報を取得可能となっている。なお、第2生体情報取得部40は、テレメトリー式心電送信機であってもよい。
端末側送受信部41は、Bluetooth(登録商標)通信等の無線通信によってクライアントコンピュータ3のコンピュータ側送受信部34とデータの送受信が可能な部位である。
【0037】
続いて、本実施形態の情動判定システム1における情動判定動作について
図3,
図4のフローチャートに則して説明する。
【0038】
情動判定システム1の情動判定動作は、管理サーバー2のデータ蓄積部10に格納された情動判定プログラム20によって実行されるものである。
【0039】
情動判定動作は、
図3のように、まず第1カウンターaをリセットし(ステップS1-1)、
図4に示される変化の割合算出動作を行う(ステップS1-2)。
【0040】
変化の割合算出動作では、
図5に示される、第1自律神経関連指標を縦軸、第2自律神経関連指標を横軸とした自律神経テーブルにおいて、判定期間T1内における判定対象者100のプロットが所定の情動状態に対する一又は複数の情動エリアA1~A3に属する回数を算出する。
【0041】
具体的には、変化の割合算出動作は、
図4のように、まずタイマーをオンにし(ステップS2-1)、回数カウンターnをリセット(n=0)にし(ステップS2-2)、さらに、指標算出部12によって生体情報から各指標(第1自律神経関連指標、第2自律神経関連指標、呼吸性洞性不整脈、及び副交感神経指標)をそれぞれ算出する(ステップS2-3)。
【0042】
ここで、判定期間T1は、適宜設定することができるが、情動状態の変化を正確にとらえる観点から5分以上1時間以下であることが好ましく、10分以上30分以下であることが好ましい。
【0043】
また、指標算出部12で算出される第1自律神経関連指標は、所定の期間T2におけるR波ピークごとの間隔たる心拍間隔(RRI:R-R Interval)の平均値、心拍間隔の中央値、又は自律神経指標である。
所定の期間T2は、判定期間T1よりも短い期間であり、30秒以上2分未満であることが好ましい。
第1自律神経関連指標に採用可能な自律神経指標には、周波数領域の自律神経指標と、時間領域の自律神経指標がある。
周波数領域の自律神経指標は、心拍変動から最大エントロピー法を用いたスペクトル解析によりパワースペクトルを計算し、所定の周波数領域のパワーを積算した指標であり、パワースペクトルの総和(TF)や、心拍血圧性変動(MWSA;Mayer Wave Sinus Arrhythmia)が含まれる0.05Hz~0.15Hzの低周波帯域の低周波成分のパワー密度(LF)、呼吸性洞性不整脈が含まれる0.15Hz~0.40Hzの高周波帯域の高周波成分のパワー密度(HF)、高周波成分と低周波成分のパワー密度比(LF/HF)などがある。
時間領域の自律神経指標は、心拍間隔の標準偏差(SDNN)や、隣接した心拍間隔の差の二乗の平均値の平方根(RMSSD)、洞調律における隣接する心拍間隔の差が対象とする時間以上である心拍数の間隔(pNN)などがある。
【0044】
本実施形態の第1自律神経関連指標は、心拍間隔の平均値であり、判定対象者100毎に所定の期間T2における心拍間隔の平均値を正規分布で正規化して、正規化後の値を使用している。具体的には、本実施形態の第1自律神経関連指標は、判定対象者100毎に所定の期間T2における心拍間隔の平均値をデータの平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化(標準化)を行う。
【0045】
指標算出部12で算出される第2自律神経関連指標は、第1自律神経関連指標とは異なる指標であり、上記に例示した自律神経指標から選択して使用できる。
本実施形態の第2自律神経関連指標は、0.05Hz~0.15Hzの低周波成分のパワー(LF)を正規分布で正規化して、正規化後の値の対数値を使用している。すなわち、本実施形態の第2自律神経関連指標は、判定対象者100毎に所定の期間T2におけるLFをデータの平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化(標準化)を行い、正規化後の値の常用対数値(logLF)を使用している。
【0046】
指標算出部12で算出される呼吸性洞性不整脈は、呼吸に伴う心拍数の変化であり、吸気時における心拍間隔と呼気時における心拍間隔との差分である。
呼吸性洞性不整脈は、例えば、RDocumentation内のRのspec.pgram function(https://www.rdocumentation.org/packages/stats/versions/3.6.2/topics/spec.pgram)を使用し、0.06Hz≦LF≦0.12Hz、0.15≦HF/RSA≦0.4と定義し、周波数分析における区間分割数を320/120secとする。そして、常用対数に変換することでRSA値を算出することができる。
本実施形態の呼吸性洞性不整脈は、上記により算出したRSA値を正規分布で正規化して、正規化後の値を使用している。すなわち、本実施形態の呼吸性洞性不整脈は、判定対象者100毎に所定の期間T2におけるRSA値をデータの平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化(標準化)を行い、正規化後の値を使用している。
【0047】
指標算出部12で算出される副交感神経指標(CVI:Cardiac Vagal Index)は、副交感神経活動の指標であり、例えば、Journal of the Autonomic Nervous System 62 (1997) 79-84などを参考にして、
図6のように、心拍変動において横軸をk拍目のRRI
k、縦軸をk+1拍目のRRI
k+1としてグラフ上にプロットしたローレンツプロットを作成し、RRI
k+1=RRI
kを長軸とした楕円状に分布させ、当該楕円を構成する点の長軸方向と短軸方向への分布の標準偏差の4倍の値をそれぞれ長軸成分Lと短軸成分Tとする。そして、このようにして求められた長軸成分Lと短軸成分Tを乗算し(L×T)、常用対数(log(L×T))を取ることで算出することができる。
本実施形態の副交感神経指標は、正規分布で正規化して、正規化後の値を使用している。すなわち、本実施形態の副交感神経指標は、判定対象者100毎に所定の期間T2におけるCVIをデータの平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化(標準化)を行い、正規化後の値を使用している。
【0048】
指標算出部12によって生体情報から各指標が算出されると(ステップS2-3)、第1自律神経関連指標が
図5に示される第1選別範囲R1~R4内であるか確認する(ステップS2-4)。
【0049】
なお、第1選別範囲R1~R4は、
図5に示される自律神経テーブルにおいて、過去の結果からあらかじめ疲労の情動と関連付けられた情動エリアA1~A3に対応する縦軸の範囲である。
【0050】
第1自律神経関連指標が第1選別範囲R1~R4内である場合は(ステップS2-4でYes)、第1自律神経関連指標が属する第1選別範囲R1~R4に合わせて、第2自律神経関連指標が第2選別範囲R5,R6に属するか確認する(ステップS2-5)。
【0051】
すなわち、第1自律神経関連指標が属する第1選別範囲R1に属する場合には、第2自律神経関連指標が第2選別範囲R5,R6に属するか確認する。
第1自律神経関連指標が属する第1選別範囲R2に属する場合には、第2自律神経関連指標が第2選別範囲R6に属するか確認する。
第1自律神経関連指標が属する第1選別範囲R3に属する場合には、第2自律神経関連指標が第2選別範囲R5,R6に属するか確認する。
第1自律神経関連指標が属する第1選別範囲R4に属する場合には、第2自律神経関連指標が第2選別範囲R6に属するか確認する。
【0052】
なお、第2選別範囲R5,R6は、
図5に示される自律神経テーブルにおいて、過去の結果からあらかじめ疲労の情動と関連付けられた情動エリアA1~A3に対応する横軸の範囲である。
【0053】
第1自律神経関連指標が情動エリアA1~A3に対応する第1選別範囲R1~R4に属し、かつ第2自律神経関連指標が情動エリアA1~A3に対応する第2選別範囲R5,R6に属する場合には、呼吸性洞性不整脈が第3選別範囲外であるか確認する(ステップS2-6)。
【0054】
本実施形態の第3選別範囲は、呼吸性洞性不整脈の正規分布における下位45パーセントの範囲としており、呼吸性洞性不整脈の正規化後の値が正規分布において下位45パーセント以下の場合には、第3選別範囲内となり、45パーセント超過の場合には、第3選別範囲外となる。
【0055】
呼吸性洞性不整脈が第3選別範囲外である場合には(ステップS2-6でYes)、生体情報から副交感神経指標が第4選別範囲内であるか確認する(ステップS2-7)。
【0056】
本実施形態の第4選別範囲は、副交感神経指標の正規分布における下位45パーセントの範囲としており、副交感神経指標の正規化後の値が正規分布において下位45パーセント以下の場合には、第4選別範囲内となり、45パーセント超過の場合には、第4選別範囲外となる。
【0057】
副交感神経指標が第4選別範囲内である場合には(ステップS2-7でYes)、回数カウンターnをn+1にし(ステップS2-8)、情動エリアA1~A3に属した回数の累積関数f(t)を算出する(ステップS2-9)。
【0058】
算出時刻における回数の累積関数f(t)の微分値を算出し(ステップS2-10)、タイマーをオンにしてから判定期間T1が経過したか確認する(ステップS2-11)。
【0059】
タイマーをオンにしてから判定期間T1が経過した場合には(ステップS2-11でYes)、タイマーをリセットし(ステップS2-12)、判定期間T1における回数カウンターnの変化の割合を算出する(ステップS2-13)。
【0060】
具体的には、判定期間T1内の微分値の累計を回数カウンターnの変化の割合として算出する。
【0061】
ステップS2-4にて第1自律神経関連指標が第1選別範囲外である場合には、ステップS2-11に移行する。
同様に、ステップS2-5にて第2自律神経関連指標が第2選別範囲外である場合には、ステップS2-11に移行する。
【0062】
ステップS2-6にて、呼吸性洞性不整脈が第3選別範囲内である場合には(ステップS2-6でNo)、ステップS2-8に移行し、副交感神経指標の値にかかわらず回数カウンターnをn+1とする。
【0063】
ステップS2-7にて、副交感神経指標が第4選別範囲外である場合には(ステップS2-7でNo)、ステップS2-11に移行する。
【0064】
ステップS2-11にて、タイマーをオンにしてから判定期間T1が経過していない場合には(ステップS2-11でNo)、ステップS2-4に移行する。
【0065】
以上が、情動判定動作における変化の割合算出動作である。
【0066】
図3の情動判定動作のフローチャートの戻ると、ステップS1-2で変化の割合算出動作を実行され、情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合(以下、単に回数の変化の割合ともいう)が算出されると、回数の変化の割合が評価閾値D超過であるか確認する(ステップS1-3)。
【0067】
このとき、評価閾値Dは、所定の情動状態を評価する閾値である。
評価閾値Dは、判定対象者100の状態に合わせて適宜設定することができるが、より精度良く判定する観点から、0.3以上1.2以下であることが好ましく、0.5以上1.0以下であることがより好ましい。
【0068】
回数の変化の割合が評価閾値D超過である場合には(ステップS1-3でYes)、第1カウンターaが所定数m以上であるかを確認する(ステップS1-4)。
【0069】
このとき、所定数mは、任意の自然数であり、2以上の自然数であることが好ましい。
【0070】
ステップS1-4にて第1カウンターaが所定数m以上である場合には、第1報知動作を実行し、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態であることを報知する(ステップS1-5)。
【0071】
累積関数f(t)が報知閾値S1以上であるか確認し(ステップS1-6)、累積関数f(t)が報知閾値S1以上である場合には(ステップS1-6でYes)、第2報知動作を実行し、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態(本実施形態では疲労)が一定以上蓄積している状態であり、所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知する(ステップS1-7)。
すなわち、累積関数f(t)が報知閾値S1以上である場合には、第2報知動作を実行し、所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知する。例えば、本実施形態のように所定の情動状態が疲労の場合には、報知部36によって体操やストレッチを促すような報知を行う。
【0072】
このとき報知閾値S1は、所定の情動状態が解消するように報知する基準となる閾値である。報知閾値S1は、評価する情動状態や判定期間T1、所定の期間T2によって適宜変更されるが、50以上100以下の範囲の値であることが好ましい。
【0073】
ステップS1-7にて第2報知動作が終了すると、ステップS1-1に戻る。
【0074】
ステップS1-3において回数の変化の割合が評価閾値D以下の場合には(ステップS1-3でNo)、第1カウンターaをリセットし(ステップS1-8)、ステップS1-2に移行する。
【0075】
ステップS1-4において第1カウンターaが所定数m未満の場合には(ステップS1-4でNo)、第1カウンターaをa+1にして(ステップS1-9)、ステップS1-2に移行する。
【0076】
ステップS1-6において累積関数f(t)が報知閾値S1未満である場合には(ステップS1-6でNo)、ステップS1-1に移行する。
【0077】
本実施形態の情動判定システム1によれば、情動状態に対応付けられた情動エリアA1~A3に属する回数(回数カウンターn)の変化の割合を評価閾値Dと比較して所定の情動状態であることを判定するので、判定対象者100の情動状態を精度良く判定できる。
【0078】
本実施形態の情動判定システム1によれば、回数の変化の割合は、時間に対する回数の累積関数f(t)を求めて所定の期間T2ごとに回数の累積関数f(t)の微分値を算出し、判定期間T1内における各微分値を累計する。すなわち、回数の変化の割合が所定の期間T2ごとの回数の累積関数f(t)の微分値の累積値によって求められるので、回数の累積関数f(t)の微分値の変動が大きくても、正確に判断することができ、より正確に判定対象者100の情動状態を判定できる。
【0079】
本実施形態の情動判定システム1によれば、情動判定部11は、回数の変化の割合が2回以上連続して評価閾値D超過であることを条件として所定の情動状態であると判定するので、判定期間T1が短い場合であっても、正確に判定できる。
【0080】
本実施形態の情動判定システム1によれば、情動判定部11が所定の情動状態であると判定した場合に、報知部36が第1報知動作を実行して所定の情動状態であることを判定対象者100に報知するので、判定対象者100自身が所定の情動状態であることを認識できる。
【0081】
本実施形態の情動判定システム1によれば、指標算出部12で算出する各指標を標準正規分布となるように正規化して使用するので、判定対象者100に合わせて情動状態を評価できる。すなわち、通常、各指標のスケールは、判定対象者100によって異なるが、各指標を標準正規化するので、複数のクライアントコンピュータ3によって複数の判定対象者100の情動判定を行う場合であっても、同一の情動判定プログラム20によって情動状態を判定できる。
【0082】
本実施形態の情動判定システム1によれば、情動エリアA1~A3に属した回数の累積関数f(t)を算出するので、回数の累積関数f(t)によって現在の時刻までの所定の情動状態の累積量を定量的に計測でき、より判定精度を向上できる。
【0083】
続いて、本発明の第2実施形態の情動判定システムについて説明する。なお、第1実施形態の情動判定システムと同様の構成及び動作については必要に応じて説明を省略する。以下、同様とする。
【0084】
第2実施形態の情動判定システムは、第1実施形態の情動判定システム1と同様の構成を有しており、変化の割合算出動作が異なる。
第2実施形態の変化の割合算出動作は、
図7のように、ステップS3-1~ステップS3-8までの動作が第1実施形態のステップS2-1~ステップS2-8までの動作と同様であるため、説明を省略する。
第2実施形態の変化の割合算出動作は、
図7のように、ステップS3-8まで実行すると、判定期間T1の経過を確認し(ステップS3-9)、タイマーをオンにしてから判定期間T1が経過した場合には(ステップS3-9でYes)、タイマーをリセットし(ステップS3-10)、回数の変化の割合を算出する(ステップS3-11)。
すなわち、第2実施形態の変化の割合算出動作では、第1実施形態の変化の割合算出動作とは異なり、ステップS3-8からステップS3-9までの間に累積関数f(t)とその微分値を算出しない。
【0085】
このとき、第2実施形態の変化の割合算出動作では、判定期間T1における総回数の変化を回数の変化の割合として算出する。
【0086】
第2実施形態の情動判定システムによれば、情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合は、判定期間T1における時間に対する回数の累積関数f(t)を求め、算出時刻(判定期間T1が終了する時刻)における回数の累積関数f(t)の微分値を使用している。そのため、所定の期間T2ごとに回数の累積関数f(t)の微分値を算出しなくても回数の変化の割合を算出できるため、計算を簡略化できる。
【0087】
本発明の第3実施形態の情動判定システムについて説明する。
【0088】
本発明の第3実施形態の情動判定システムは、第1実施形態の情動判定システム1と同様の構成を有しており、情動判定動作が第1実施形態の情動判定動作と異なる。
第3実施形態の情動判定システムの情動判定動作は、
図8のように、変化の割合算出動作を行い(ステップS4-1)、算出した回数の変化の割合は評価閾値D超過であるか確認する(ステップS4-2)。
【0089】
ステップS4-2において情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合が評価閾値D超過である場合には(ステップS4-2でYes)、第1報知動作を実行し、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態であることを報知する(ステップS4-3)。
【0090】
そして、
図9(a)に示される各判定期間T1における累積関数f(t)の微分値の累計値によって微分値関数g(t)を算出し(ステップS4-3)、微分値関数g(t)に対して評価閾値Dで減算し、0未満の値をカットオフした抽出関数h(t)を算出する(ステップS4-5)。
すなわち、抽出関数h(t)は、
図9(b)に示されるようになり、下記の式(1)で表される。
【0091】
【0092】
なお、g(t)は微分値関数を表し、Dは評価閾値を表す。
【0093】
そして、情動判定動作を開始してから全期間の抽出関数h(t)の積分値(
図9(b)のドット部分の面積)が報知閾値S2以上であるか確認する(ステップS4-6)。
すなわち、抽出関数h(t)の積分値が以下の式(2)を満たすか確認する。
【0094】
【0095】
なお、t0は評価開始時刻を表し、t1は現在の算出時刻t1を表し、S2は報知閾値を表す。
【0096】
ステップS4-6にて、
図9(b)のドットで示される抽出関数h(t)の積分値が報知閾値S2以上である場合には(ステップS4-6でYes)、第2報知動作を実行し、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態(本実施形態では疲労)が一定以上蓄積している状態であり、所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知する(ステップS4-7)。
【0097】
ステップS4-2において、回数の変化の割合が評価閾値D以下の場合には、所定の情動状態ではないとしてステップS4-1に移行する。
【0098】
ステップS4-6において、抽出関数h(t)の積分値が報知閾値S2未満である場合には(ステップS4-6でNo)、ステップS4-1に移行する。
【0099】
本発明の第3実施形態の情動判定システムによれば、抽出関数h(t)を算出するので、抽出関数h(t)が0であるかどうかで、過去及び現在において所定の情動状態であるかの履歴を確認しやすい。
【0100】
本発明の第3実施形態の情動判定システムによれば、抽出関数h(t)の積分値が報知閾値S2以上のときに第2報知動作を実行し、報知部36が所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知するので、例えば、所定の情動状態が疲労である場合には、判定対象者100が過労になることを防止できる。
【0101】
本発明の第4実施形態の情動判定システム400について説明する。
【0102】
本発明の第4実施形態の情動判定システム400は、外部記録媒体401を介して情動判定プログラム20が実行されるものである。
情動判定システム400を構成するクライアントコンピュータ403は、第1実施形態のクライアントコンピュータ3と同様、
図10のように、主要構成部位として、第1生体情報取得部32と、データ記憶部33と、コンピュータ側送受信部34と、クライアント側通信部35と、報知部36を備えており、さらに、媒体読取部407を備えている。
媒体読取部407は、外部記録媒体401から外部記録媒体401に格納された情動判定プログラム20を読み取る部位である。
【0103】
外部記録媒体401は、クライアントコンピュータ3とは別体であって記録領域を有した記録媒体であり、例えば、DVDディスクやブルーレイディスク、USBメモリなどの記録媒体である。
【0104】
第4実施形態の情動判定システム400によれば、外部記録媒体401から情動判定プログラム20を起動できるため、汎用コンピュータにおいても情動判定プログラム20を実行させることができる。
【0105】
上記した第1実施形態では、第1カウンターaが所定数m以上の場合に第1報知動作を実施したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図3のステップS1-3にて情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合が評価閾値D超過であることを条件として、ステップS1-4を省略し、第1報知動作に移行してもよい。
【0106】
上記した第2実施形態では、情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合は、判定期間T1の累積関数f(t)における判定時刻(算出時刻)の微分値を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、情動エリアA1~A3に属する回数の変化の割合を判定期間T1の累積関数f(t)における判定期間開始時刻と判定期間終了時刻(判定時刻)の変化量としてもよい。
また、例えば、回数の変化の割合は、判定期間T1における累積関数f(t)の一次の近似曲線の傾きであってもよい。さらに例えば、回数の変化の割合は、判定期間T1における移動平均値であってもよい。
【0107】
上記した実施形態では、所定の情動状態として疲労状態を判定する場合に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。所定の情動状態として他の情動状態、例えば、緊張、眠気、集中、リフレッシュ、リラックスなどを判定してもよい。
【0108】
上記した実施形態では、管理サーバー2のデータ蓄積部10に情動判定プログラム20を格納したが、本発明はこれに限定されるものではない。各クライアントコンピュータ3のデータ記憶部33に情動判定プログラム20を格納してもよい。
【0109】
上記した実施形態では、所定の情動状態の種類に関係なく、特定の組み合わせの生体情報を選択していたが、本発明はこれに限定されるものではない。判定する所定の情動状態の種類に合わせて使用する生体情報を選択したり、生体情報を取得する生体情報取得部32,40を選択したりしてもよい。
【0110】
上記した実施形態では、一回の情動判定動作によって一つの情動状態を判定していたが、本発明はこれに限定されるものではない。一回の情動判定動作によって複数の情動状態を同時に判定してもよい。この場合、判定する情動状態ごとに第1自律神経関連指標と第2自律神経関連指標との組み合わせを変更してもよい。
【0111】
上記した実施形態では、第1生体情報取得部32で取得した生体情報と第2生体情報取得部40で取得した生体情報の異なる2種類以上の生体情報に基づいて第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1生体情報取得部32で取得した生体情報と第2生体情報取得部40で取得した生体情報のうち、一方の生体情報取得部32,40で取得した生体情報のみを使用して、第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を算出してもよい。
【0112】
上記した実施形態では、副交感神経指標が第4選別範囲に属するかどうかを回数の算出の基準としたが、本発明はこれに限定されるものではない。副交感神経指標の代わりに、又は副交感神経指標に加えて、交感神経指標(CSI:Cardiac Sympathetic Index)や交感神経・副交感神経相関係数(SPC:Sympathetic-Parasympathetic-Correlation)を回数(回数カウンターn)の算出の基準としてもよい。
CSIは、CVIと同様、例えば、Journal of the Autonomic Nervous System 62 (1997) 79?84などを参考にして、
図6のローレンツプロットにおいて、長軸成分Lと短軸成分の比(L/T)を算出することで算出できる。また、SPCは、特開2019-201720号公報に記載の方法により算出できる。すなわち、SPCは、CSIとCVIとのピアソン積率相関係数である。
交感神経指標は、交感神経活動の指標であり、
図6における心拍変動のローレンツプロットに対して主成分分析を行い、長軸成分Lを短軸成分Tで除算すること(L/T)で算出することができる。すなわち、L/Tとは、R-R間隔の変動に対し隣り合う点を使ってローレンツプロットを行い、長軸成分Lと短軸成分Tの比を取ったものである。
交感神経・副交感神経相関係数は、CSIとCVIとのピアソンの積率相関係数である。
【0113】
上記した実施形態では、外部端末6は、リストバンド型のウェアラブル端末であったが、本発明はこれに限定されるものではない。外部端末6は、他の形態のウェアラブル端末であってもよい。例えば、眼鏡型のウェアラブル端末であってもよい。
【0114】
上記した実施形態では、報知部36は、クライアントコンピュータ3に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。報知部36は、クライアントコンピュータ3とは別途設けられていてもよい。この場合、報知部36は、クライアントコンピュータ3と無線又は有線を介して接続されていることが好ましい。
【0115】
上記した実施形態では、外部端末6は、ウェアラブル端末であったが、本発明はこれに限定されるものではない。外部端末6は、判定対象者の体に接触させないで使用する端末であってもよい。外部端末6は、例えば、第2生体情報取得部40としてドップラーセンサー等の非接触式センサーを使用したり、外部カメラを使用したりすることで判定対象者の体に非接触で一又は複数の生体情報を取得することができる。
【0116】
上記した実施形態では、1台のクライアントコンピュータ3に対して1台の外部端末6を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。1台のクライアントコンピュータ3に対して複数台の外部端末6を設けてもよいし、複数台のクライアントコンピュータ3に対して1台の外部端末6を設けてもよい。
【0117】
上記した実施形態では、外部端末6は、無線通信を介して直接クライアントコンピュータ3と接続していたが、本発明はこれに限定されるものではない。外部端末6は、ネットワーク5を経由してクライアントコンピュータ3と接続してもよい。この場合、ネットワーク5には、直接接続してもよいし、無線基地局を介して接続してもよい。
【0118】
上記した実施形態では、指標算出部12で算出する各指標をデータの平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化していたが、本発明はこれに限定されるものではない。指標算出部12で算出する各指標を正規化しなくてもよいし、別の基準で正規化(規格化)してもよい。
【0119】
上記した実施形態では、管理サーバー2に情動判定部11や指標算出部12を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。クライアントコンピュータ3に情動判定部11や指標算出部12を設けてもよい。
【0120】
上記した実施形態では、第1報知動作として、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態であることを報知したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1報知動作として、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態であることを報知することに加えて、又は報知することの代わりに所定の情動状態に付随する状態であることを報知してもよい。
例えば、所定の情動状態が疲れや緊張などのネガティブな情動状態の場合には、判定対象者にとって好ましくない状態(例えば、少し注意状態、注意状態、要注意状態など)であることを報知部36によって判定対象者100に報知してもよい。
【0121】
上記した実施形態では、累積関数f(t)が報知閾値S1以上である場合に、第2報知動作として、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態が一定以上蓄積している状態であり、所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知したが、本発明はこれに限定されるものではない。
報知閾値S1を複数設定し、累積関数f(t)が設定した報知閾値S1以上になるごとに、判定対象者100に同一又は異なる報知を行ってもよい。
例えば、所定の情動状態が疲労であり、報知閾値S1をa1、a2、a3と設定した場合に、累積関数f(t)が報知閾値a1以上となった場合に、「少し注意状態です。ご注意下さい。」と報知し、累積関数f(t)が報知閾値a2以上となった場合に、「注意状態です。休憩して下さい。」と報知し、累積関数f(t)が報知閾値a3以上となった場合に、例えば、「危険状態です。今すぐ休憩して下さい。」と報知することで、判定対象者100に対して段階的に所定の情動状態を解消するように促すことができる。
【0122】
上記した実施形態では、所定の情動状態が疲労であり、ネガティブな情動状態であったため、第2報知動作として、報知部36によって判定対象者100に所定の情動状態が一定以上蓄積している状態であり、所定の情動状態が解消するように判定対象者100に報知したが、本発明はこれに限定されるものではない。所定の情動状態がリフレッシュやリラックスなどのポジティブな情動状態の場合には、第2報知動作として、所定の情動状態を継続するように判定対象者100に報知してもよい。
【0123】
上記した実施形態では、心拍の情報を使用して情動状態を判定したが、本発明はこれに限定されるものではない。脈拍の情報を使用して情動状態を判定してもよいし、脈拍の情報と心拍の情報の双方を使用して情動状態を判定してもよい。
脈拍の情報を使用する場合は、上記した実施形態において、心拍を脈拍、心拍数を脈拍数、心拍変動を脈拍変動、心拍間隔を脈拍間隔、心拍特定情報を脈拍特定情報に読み替えることで、情動状態を判定できる。
また、上記した自律神経関連指標は、外部端末6に判定対象者の脳波を取得する脳波センサーを内蔵させ、脳波計測データに基づき推測させてもよい。
【0124】
上記した第1,2実施形態では、ステップS1-7にて第2報知動作が終了すると、ステップS1-1に戻り、情動判定動作を繰り返し行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。ステップS1-7にて第2報知動作が終了すると、情動判定動作を終了してもよい。
同様に、上記した第3実施形態では、ステップS4-7にて第2報知動作が終了すると、ステップS4-1に戻り、情動判定動作を繰り返し行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。ステップS4-7にて第2報知動作が終了すると、情動判定動作を終了してもよい。
【0125】
上記した実施形態の応用例としては、生体情報取得部32,40で複数の生体情報を取得し、各生体情報において第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標をそれぞれ算出する。そして、情動判定部11は、判定期間T1が経過するごとに、各生体情報から算出した第1自律神経関連指標及び第2自律神経関連指標を用いて、算出時刻における回数の変化の割合をそれぞれ算出し、各回数の変化の割合のうち最も大きい回数の変化の割合を評価閾値Dと比較して所定の情動状態を判定してもよい。
こうすることで、判定対象者100の特性に応じて最も情動状態の判定に適した生体情報によって情動状態を判定できるので、より精度良く判定できる。
【0126】
上記した実施形態の応用例としては、指標算出部12は、生体情報取得部32,40で取得した生体情報から、判定期間T1における心拍間隔の平均値及び複数の自律神経指標を算出し、心拍間隔の平均値及び複数の自律神経指標のうち、過去の測定結果又は現在の測定結果から最も前記回数の変化の割合が大きくなると予想される組み合わせを第1自律神経関連指標と第2自律神経関連指標に設定してもよい。
こうすることで、判定対象者100の特性に応じて第1自律神経関連指標と第2自律神経関連指標の組み合わせを算出される回数の変化の割合を見越して設定するので、回数の変化の割合の値の変動を検知しやすく、速やかに判定対象者100の情動状態の変化を判定できる。
【0127】
上記した実施形態の応用例としては、判定期間T1と評価閾値Dは、機械学習プログラムを用いて算出することもできる。例えば、教師あり学習を行う機械学習プログラムによって機械学習を行う場合には、判定期間T1と評価閾値Dを含むパラメータを入力層に入力し、出力層から判定結果を出力し、アンケート結果を教師データとして、当該判定結果をアンケート結果と比較することで最適な判定期間T1と評価閾値Dを設定できる。
【0128】
上記した実施形態の応用例としては、情動判定部11が所定の情動状態と判定したときに、報知部36による判定対象者100への報知に加えて、ネットワーク5に接続された他のコンピュータにも判定対象者100が所定の情動状態であることを報知してもよい。
こうすることで、判定対象者100の情動状態を他のコンピュータで管理することができる。
【0129】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0130】
以下、実施例として各実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例により限定されるものではない。
【0131】
(実験例1)
被験者に1日につき8時30分、11時30分、13時、15時30分、18時の5回のタイミングで90日間アンケートをとり、原則として30分前の自己の情動状態について、疲労、眠気、リフレッシュ、集中、及び緊張の5項目について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によって0~1000までの点数付けを行った。
そして、各項目において点数が上位30%となるアンケート結果を抽出データとして抽出し、その日時を特定した。
【0132】
また、上記した90日間の間、6時45分から20時15分において、リストバンド型活動量計を使用して脈拍を測定し、2分毎に第1自律神経関係指標として脈拍間隔の平均値(RRI)、第2自律神経関連指標として交換神経指標(LF)、副交感神経指標(CVI)、及び呼吸性洞性不整脈(RSA)をそれぞれ算出し、これらの指標をそれぞれ平均が0、分散が1の標準正規分布となるように正規化した。
そして、
図11の自律神経テーブルに従い、第1自律神経関連指標と第2自律神経関連指標がそれぞれに対応する情動エリアに属するか否かを判定した。
なお、
図11の自律神経テーブルは、縦軸が脈拍間隔の平均値(RRI)を正規化した値であり、横軸が正規化したLFの常用対数値である。
【0133】
疲労を判定する場合は、以下の条件(A)~(C)のいずれかを満たす場合に回数を数えた。
(A)疲労エリア(a)に属し、かつ、CVIが45%以下又はRSAが45%以下である。
(B)疲労エリア(b)に属し、かつ、RSAが45%以下である。
(C)疲労エリア(c)に属し、かつ、CVIが45%以下又はRSAが45%以下である。
【0134】
眠気を判定する場合は、以下の条件(D)~(F)のいずれかを満たす場合に回数を数えた。
(D)眠気エリア(a)に属し、かつ、CVIが55%以上又はRSAが55%以上である。
(E)眠気エリア(b)に属し、かつ、RSAが55%以上である。
(F)眠気エリア(c)に属し、かつ、CVIが55%以上又はRSAが55%以上である。
すなわち、眠気エリア(a)~(c)は、疲労エリア(a)~(c)と同様であり、CVI及びRSAの条件が異なる。
【0135】
リフレッシュを判定する場合は、以下の条件(G)又は条件(H)を満たす場合に回数を数えた。
(G)リフレッシュエリア(d)に属し、かつ、CVIが55%以上又はRSAが55%以上である。
(H)リフレッシュエリア(e)に属し、かつ、CVIが55%以上又はRSAが55%以上である。
【0136】
集中を判定する場合は、以下の条件(I)又は条件(J)を満たす場合に回数を数えた。
(I)集中エリア(f)に属し、かつ、CVIが55%以上又はRSAが55%以上である。
(J)集中エリア(g)に属する。
【0137】
緊張を判定する場合は、以下の条件(K)又は条件(L)を満たす場合に回数を数えた。
(K)緊張エリア(h)に属し、かつ、CVIが45%以下又はRSAが45%以下である。
(L)緊張エリア(i)に属する。
【0138】
上記の基準によって、各情動エリアに属する回数を累積して累積関数f(t)を算出し、累積関数f(t)において各算出時刻での各情動状態の微分値を算出していき、判定期間T1を30分として、判定期間T1毎に微分値を累計した微分値関数g(t)を算出し、評価閾値Dを1.0とし、微分値関数g(t)と評価閾値Dの関係から抽出関数h(t)を算出した。
【0139】
そして、上記したアンケートにおいて、各情動状態の抽出データの日時の30分前の時刻(以下、評価時刻ともいう)における抽出関数h(t)の値をそれぞれ算出し、抽出関数h(t)の値を各情動状態の抽出データと比較した。
すなわち、評価時刻において抽出関数h(t)>0の場合は、一致していると判定し、評価時刻において抽出関数h(t)=0の場合は、一致していないと判定した。
【0140】
(実験例2)
判定期間T1を10分にし、評価閾値Dを0.5にしたこと以外は実験例1と同様にしてこれを実験例2とした。
【0141】
実験例1,2における各情動状態における再現率を表1に示し、各評価時刻における疲労の再現率を表2に示す。なお、再現率は、以下の式で算出した。
再現率(%)=100*(一致データ数)/(抽出データ数)
【0142】
【0143】
【0144】
表1のように、実験例1,2のいずれにおいても各情動状態の再現率が50%以上であり、高い再現率となった。特に実験例2においては、疲労、眠気、リフレッシュ、緊張がいずれも60%以上となり、特に高い再現率となった。
また、表2のように実験例1,2のいずれにおいても、各評価時刻において60%を超える高い再現率であった。
【0145】
以上のことから、判定期間T1と評価閾値Dを適宜設定することで、微分値関数g(t)が評価閾値D超過となる部分、すなわち、抽出関数h(t)が正の実数になる部分が所定の情動状態と対応していることがわかった。言い換えると、微分値関数g(t)の値が評価閾値D超過となるかどうかを確認することで判定対象者が所定の情動状態であることを推定できることがわかった。