(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122155
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールおよび太陽電池システム
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240902BHJP
H01L 31/042 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/04 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029536
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入川 淳平
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251AA08
5F251BA11
5F251EA20
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA13
5F251FA14
5F251GA04
5F251JA03
5F251JA27
(57)【要約】
【課題】銅害による樹脂の劣化を抑制しつつ、製造コストを下げることができる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である太陽電池モジュール10は、マトリクス状に配置された複数の太陽電池セル11を備える太陽電池モジュールである。複数の太陽電池セル11は、銅を主成分とする電極が太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第1太陽電池セル11Aと、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみが太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第2太陽電池セル11Bと、を有し、太陽電池モジュール10の平面視において、最外周に配置された太陽電池セル11のうち少なくとも1つは、第2太陽電池セル11Bである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールであって、
複数の前記太陽電池セルは、
銅を主成分とする電極が前記太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第1太陽電池セルと、
銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみが前記太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第2太陽電池セルと、
を有し、
前記太陽電池モジュールの平面視において、最外周に配置された前記太陽電池セルのうち少なくとも1つは、前記第2太陽電池セルである、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールの平面視において、最外周に配置された前記太陽電池セルは、前記第2太陽電池セルである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールの平面視において、最外周に配置された前記太陽電池セルよりも内側に配置された前記太陽電池セルは、前記第1太陽電池セルである、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールの平面視において、前記太陽電池モジュールの最外周から8cm以上離れた位置に配置された前記太陽電池セルは、前記第1太陽電池セルである、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記太陽電池モジュールの平面視において、前記第1太陽電池セルの面積の合計は、前記第2太陽電池セルの面積の合計よりも大きい、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記太陽電池モジュールの受光面側に配置された第1保護部材と、
前記太陽電池モジュールの裏面側に配置された第2保護部材と、
をさらに備え、
前記第1保護部材および前記第2保護部材の酸素透過度は、0.01cc/m2/day以下である、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記第2保護部材の一部に開口部が形成されており、前記太陽電池モジュールの平面視において、前記開口部と重なる、または前記開口部を囲む前記太陽電池セルは、前記第2太陽電池セルである、請求項6に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池モジュールの平面視において、前記開口部の外縁から8cm以上離れた位置に配置された前記太陽電池セルは、前記第1太陽電池セルである、請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池モジュールの平面視において、前記第1太陽電池セルが配置される領域、または前記第2太陽電池セルが配置される領域は、直線形状、十字形状、円形、多角形または特定の文字のいずれかの形状を有する、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記太陽電池モジュールの受光面または裏面を所定の角度から視認した場合の前記太陽電池モジュールの見え方が、前記太陽電池モジュールの受光面または裏面を正面から視認した場合の前記太陽電池モジュールの見え方と異なり、
前記太陽電池モジュールの受光面または裏面を前記所定の角度から視認した場合に、特定の図形または文字が表示される、請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
複数の太陽電池モジュールを備え、
前記複数の太陽電池モジュールは、請求項9に記載の太陽電池モジュールを少なくとも1つ含む、太陽電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュールおよび太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、電極が形成された複数の太陽電池セルを配線材で接続して構成される太陽電池セルのストリングと、当該ストリングを挟持する2枚の保護部材と、各保護部材の間に設けられ各太陽電池セルを封止する封止層とを備える。特許文献1には、電極に銅または銀を用いた太陽電池セルがマトリクス状に配置された太陽電池モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅は銀に比べて安価のため、銅を主成分とする金属を太陽電池セルの電極に用いることで、製造コストを下げることができる。しかしながら、銅を主成分とする金属を電極に用いた場合、銅イオンが封止層中に拡散して樹脂の酸化劣化を促進する銅害が問題となり得る。そのため、銅害による樹脂の劣化を抑制しつつ、製造コストを下げることは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である太陽電池モジュールは、マトリクス状に配置された複数の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールであって、複数の太陽電池セルは、銅を主成分とする電極が太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第1太陽電池セルと、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみが太陽電池セルの受光面または裏面の少なくとも一方に形成された第2太陽電池セルと、を有し、太陽電池モジュールの平面視において、最外周に配置された太陽電池セルのうち少なくとも1つは、第2太陽電池セルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様である太陽電池モジュールによれば、銅害による樹脂の劣化を抑制しつつ、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一例である太陽電池モジュールの受光面側の平面図である。
【
図3】第1太陽電池セルおよび第2太陽電池セルの受光面側の平面図である。
【
図5】実施形態の一例である太陽電池モジュールの受光面側の平面図であり、太陽電池セルの配置を模式的に示した図である。
【
図6】実施形態の他の一例である太陽電池モジュールの受光面側の平面図であり、太陽電池セルの配置を模式的に示した図である。
【
図7A】実施形態の他の一例である太陽電池モジュールの受光面を正面から視認した場合の外観を示す図である。
【
図7B】実施形態の他の一例である太陽電池モジュールの受光面を斜めから視認した場合の外観を示す図である。
【
図8】実施形態の他の一例である太陽電池モジュールの受光面側の平面図であり、太陽電池セルの配置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池モジュールの実施形態の一例について詳細に説明する。なお、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0009】
図1は、実施形態の一例である太陽電池モジュール10の受光面側の平面図であり、
図2は、
図1中のAA線断面の一部を示す図である。
図1および
図2に示すように、太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル11と、隣り合う太陽電池セル11同士を接続する配線材12と、第1保護部材13と、第2保護部材14とを備える。第1保護部材13は、各太陽電池セル11の受光面側に設けられ、太陽電池セル11の受光面側を保護する部材である。第2保護部材14は、各太陽電池セル11の裏面側に設けられ、太陽電池セル11の裏面側を保護する部材である。また、太陽電池モジュール10は、第1保護部材13と第2保護部材14との間に設けられ、太陽電池セル11を封止する封止層15を備える。
【0010】
ここで、太陽電池セル11の「受光面」とは光が主に入射する面を意味し、「裏面」とは受光面と反対側の面を意味する。太陽電池セル11に入射する光のうち、50%を超える光、例えば80%以上または90%以上の光が受光面側から入射する。
【0011】
太陽電池セル11は、隙間を介してマトリクス状に配置され、光照射により、電力を発生する光起電力セルである。詳しくは後述するが、太陽電池セル11は、銅を主成分とする電極を用いた第1太陽電池セル11Aと、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみを用いた第2太陽電池セル11Bとを含む。以下、単に太陽電池セル11と記載する場合、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの両方を含む。
【0012】
配線材12は、例えば、径方向断面が略真円形状の線材であって、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等の金属を主成分として構成される。配線材12は、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、または半田として使用される低融点金属などを主成分とするめっき層を有していてもよい。配線材12の直径は、例えば、0.2mm~0.4mmである。配線材12は、太陽電池セル11の受光面および裏面に対して、複数取り付けられることが好ましい。なお、
図1においては、2本の配線材12を設けているが、配線材12の本数はこれに限定されず、例えば4本以上、20本以下であってもよい。また、配線材12の断面形状は略真円形状に限定されず、略長方形形状でもよい。配線材12の断面形状が略長方形形状を有する場合、当該配線材12の厚みは、例えば0.2~0.3mmであり、幅は、例えば0.6mm~2.0mmである。
【0013】
配線材12は、ストリング16の長手方向に沿って配置され、隣り合う太陽電池セル11のうち、一方の太陽電池セル11の一方側端部から、他方の太陽電池セル11の他方側端部にわたって設けられている。配線材12の長さは、太陽電池セル11の2枚分の長さとセル間の距離とを足した長さよりもやや短い。配線材12は、隣り合う太陽電池セル11の間でモジュールの厚み方向に曲がり、一方の太陽電池セル11の受光面と他方の太陽電池セル11の裏面とに、樹脂接着剤または半田を用いてそれぞれ接合される。そして、配線材12は、太陽電池セル11のバスバー電極32(
図3参照)と電気的に接続される。
【0014】
太陽電池モジュール10は、複数の太陽電池セル11が一列に並んだストリング16を複数有することが好ましい。各ストリング16の長手方向両側には、太陽電池セル11と重ならない位置に渡り配線17,18が設けられている。渡り配線17は、ストリング16同士を接続する配線材である。渡り配線18は、ストリング16と出力用配線(図示せず)とを接続する配線材である。渡り配線17,18には、ストリング16の端に位置する太陽電池セル11に接合された配線材12Aが接続される。
【0015】
第1保護部材13には、例えば、透光性を有するガラス基板、樹脂基板等が用いられる。第1保護部材13は、一般的に平坦であるが、湾曲していてもよい。第2保護部材14には、第1保護部材13と同じく、透光性を有するガラス基板、樹脂基板等を用いてもよいし、不透明な部材を用いてもよい。第2保護部材14には、例えば、第1保護部材13よりも厚みが薄い樹脂シートを用いることができる。
【0016】
第1保護部材13および第2保護部材14に適用される樹脂基板は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される少なくとも1種で構成される。また、太陽電池モジュール1の内部への酸素の透過をさらに抑制する観点から、第1保護部材13および第2保護部材14は、金属層または酸化物層からなるバリア層を含んでいてもよい。
【0017】
第2保護部材14には、渡り配線18と接続される出力用配線を、端子ボックス19に格納されているバイパスダイオードに接続するための開口部20が形成されている。端子ボックス19は、開口部20を覆うように、第2保護部材14の裏面側から、シリコーンなどの接着剤を使用して接着される。本実施形態では、
図1に示すように、開口部20は、渡り配線18に挟まれた領域に形成されている。端子ボックス19の形状は特に限定されないが、例えば、直方体である。
【0018】
ここで、第1保護部材13および第2保護部材14の酸素透過度は、0.01cc/m2/day以下であることが好ましく、0.005cc/m2/day以下であることがより好ましい。この場合、太陽電池モジュール10の内部に酸素が侵入することを抑制できる。その結果、太陽電池セル11の電極に銅を主成分とする金属を用いた場合であっても、銅害による樹脂の劣化をより抑制できる。
【0019】
封止層15は、第1保護部材13と第2保護部材14との間に設けられ、各太陽電池セル11を封止する樹脂層である。封止層15は、太陽電池セル11に密着してセルの移動を拘束し、太陽電池セル11が酸素、水蒸気等に曝されないように封止する。
図2に例示する形態では、封止層15が各保護部材および各太陽電池セル11と直接接触している。太陽電池モジュール10は、受光面側から、第1保護部材13、封止層15、太陽電池セル11のストリング16、封止層15、および第2保護部材14が順に積層された積層構造を有する。なお、本実施形態では、全ての太陽電池セル11が封止層15によって封止されているが、例えば少なくとも1つの太陽電池セル11の一部が封止層15からはみ出た構成としてもよい。封止層15は、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料で形成される。これらのうち、オレフィン系樹脂(特に、エチレンを含む重合体)の使用が好ましい。
【0020】
封止層15は、第1保護部材13と太陽電池セル11との間に設けられる第1封止層15Aと、第2保護部材14と太陽電池セル11との間に設けられる第2封止層15Bとで構成される。封止層15は、第1封止層15Aを構成する樹脂部材と、第2封止層15Bを構成する樹脂部材とを用いて、ラミネート工程により形成されることが好ましい。第1封止層15Aおよび第2封止層15Bには、同じ樹脂部材を用いてもよく、異なる樹脂部材を用いてもよい。各樹脂部材の組成が同じである場合、各封止層の界面は確認できない場合がある。
【0021】
以下、
図3および
図4を参照しながら、太陽電池セル11について詳細に説明する。
図3は、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの受光面側の平面図であり、
図4は、
図3中のA-A線断面図である。
【0022】
図3に示すように、太陽電池セル11の受光面側および裏面側には、複数のフィンガー電極31と、2本のバスバー電極32とが形成されている。ここで、受光面側の2本のバスバー電極32と、裏面側の2本のバスバー電極32とは、互いに太陽電池セル11の積層方向に沿って並んでいる。ここで、積層方向に沿って並んでいるとは、太陽電池セル11の平面視において、バスバー電極32の長手方向が重なっている状態を意味する。
【0023】
フィンガー電極31は、第1太陽電池セル11Aの受光面側および裏面側に形成されるフィンガー電極31Aと、第2太陽電池セル11Bの受光面側および裏面側に形成されるフィンガー電極31Bとを含む。フィンガー電極31は、太陽電池セル11において発電された電気を集電して取り出すために設けられる電極である。フィンガー電極31は、太陽電池セル11の面内からまんべんなく集電が行われるように配置することが好適である。例えば、
図3に示すように、フィンガー電極31は、互いに平行に配置される。フィンガー電極31は、透明導電膜21,27(
図4参照)上にバスバー電極32と交差して電気的に接続されるように配置される。
【0024】
ここで、第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aは、銅を主成分とする金属で構成される。なお、銅を主成分とするとは、フィンガー電極31Aを構成する元素のうち、銅が最も原子割合の高い元素であることを意味する。銅を主成分とする金属でフィンガー電極31Aを構成することで、高価な銀の使用量を削減でき、製造コストを下げることができる。フィンガー電極31Aは、銅を主成分とする導電性ペーストを用いて形成しても良いが、電解めっきを含むめっき法により形成することが好適である。また、フィンガー電極31Aは、耐食性を向上させるために最表面に錫(Sn)等の耐腐食層を有していてもよい。
【0025】
なお、第1太陽電池セル11Aごとに、フィンガー電極31Aを構成する材料を変えてもよい。例えば、第1太陽電池セル11Aは、銅の原子割合が90%の金属をフィンガー電極31Aに用いた太陽電池セルと、銅の原子割合が60%の金属をフィンガー電極31Aに用いた太陽電池セルとを含んでいてもよい。また、例えば、第1太陽電池セル11Aは、フィンガー電極31Aにめっき層を有する太陽電池セルと、フィンガー電極31Aにめっき層を有しない太陽電池セルとを含んでいてもよい。
【0026】
第2太陽電池セル11Bのフィンガー電極31Bは、銀またはアルミニウムを主成分とする金属のみで構成される。なお、銀またはアルミニウムを主成分とするとは、フィンガー電極31Bを構成する元素のうち、銀またはアルミニウムが最も原子割合の高い元素であることを意味する。詳しくは後述するが、第2太陽電池セル11Bは、太陽電池モジュール10の平面視において、最外周に配置される。このため、第2太陽電池セル11Bのフィンガー電極31Bに銀またはアルミニウムを主成分とする金属のみを用いることで、銅害による樹脂の劣化を抑制できる。なお、本実施形態では、第2太陽電池セル11Bは、銀を主成分とする金属で構成される。フィンガー電極31Bは、例えば、銀を主成分とする導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0027】
フィンガー電極31A,31Bの線幅は、集電される電流の大きさ、フィンガー電極31A,31Bの厚さ等に応じて適宜決定され、例えば、20μm~50μmである。また、フィンガー電極31A,31Bのピッチは、例えば、0.5mm~2.2mmである。また、フィンガー電極31Aの線幅と、フィンガー電極31Bの線幅とは、同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。また、受光面側に形成されるフィンガー電極31の線幅と、裏面側に形成されるフィンガー電極31の線幅とは、同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0028】
バスバー電極32は、第1太陽電池セル11Aの受光面側および裏面側に形成されるバスバー電極32Aと、第2太陽電池セル11Bの受光面側および裏面側に形成されるバスバー電極32Bとを含む。バスバー電極32は、太陽電池セル11において発電された電気を取り出すために設けられる電極である。バスバー電極32は、フィンガー電極31において集電された電気をできるだけ均等に集電するように配置することが好適である。本実施形態では、上記の通り、2本のバスバー電極32が、太陽電池セル11の受光面側および裏面側に形成されている。なお、集電する上で問題がなければ、太陽電池セル11には、バスバー電極32が形成されていなくてもよい。
【0029】
第1太陽電池セル11Aのバスバー電極32Aの材料には、フィンガー電極31Aと異なる材料を用いてもよいが、銅を主成分とする金属で構成されることが好ましい。この場合、本開示の効果をより顕著に発揮できる。また、第2太陽電池セル11Bのバスバー電極32Bの材料は、銀またはアルミニウムを主成分とする金属で構成される。また、バスバー電極32A,32Bは、フィンガー電極31A,31Bと同様の方法で形成できる。
【0030】
バスバー電極32A,32Bの幅は、集電される電流の大きさ、バスバー電極32A,32Bの厚さ等に応じて適宜決定され、例えば、40μm~100μmである。また、バスバー電極32Aの線幅と、バスバー電極32Bの線幅とは、同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。また、バスバー電極32A,32Bの線幅は、フィンガー電極31A,31Bの線幅よりも広いものとする。
【0031】
図4に示すように、太陽電池セル11は、受光面側から、透明導電膜21と、p型非晶質シリコン膜22と、i型非晶質シリコン膜23と、n型単結晶シリコン基板24と、i型非晶質シリコン膜25と、n型非晶質シリコン膜26と、透明導電膜27とが積層される。なお、
図4では、第1太陽電池セル11Aの断面図を示しているが、第1太陽電池セル11Aと第2太陽電池セル11Bとは、フィンガー電極31およびバスバー電極32(
図3参照)を除いて、同一の断面構造を有する。
【0032】
n型単結晶シリコン基板24は、受光面から入射された光を受けてキャリアを生成する。なお、本実施の形態では、n型単結晶シリコン基板24とするが、これに限定されるものではなく、n型またはp型の導電型の結晶系半導体基板とすることができる。単結晶シリコン基板の他にも、例えば、多結晶シリコン基板、砒化ガリウム基板(GaAs)、インジウム燐基板(InP)等を適用することができる。
【0033】
i型非晶質シリコン膜23は、n型単結晶シリコン基板24の受光面上に積層形成されたアモルファスシリコン膜である。p型非晶質シリコン膜22は、i型非晶質シリコン膜23上に積層形成され、p型不純物がドープされたアモルファスシリコン膜である。
【0034】
透明導電膜21は、p型非晶質シリコン膜22上に積層形成される。透明導電膜21は、例えば、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、および酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物のうちの少なくとも1つを含んで構成される。ここでは、透明導電膜21はインジウム錫酸化物(ITO)を用いて形成されているものとして説明する。
【0035】
i型非晶質シリコン膜25は、n型単結晶シリコン基板24の裏面上に積層形成されたアモルファスシリコン膜である。n型非晶質シリコン膜26は、i型非晶質シリコン膜25上に積層形成され、n型不純物がドープされたアモルファスシリコン膜である。
【0036】
透明導電膜27は、n型非晶質シリコン膜26上に積層形成される。透明導電膜27は、透明導電膜21と同様の材料を含んで構成される。ここでは、透明導電膜27はインジウム錫酸化物(ITO)を用いて形成されているものとして説明する。
【0037】
以下、
図5を参照しながら、実施形態の一例である太陽電池モジュール10における、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの配置について詳細に説明する。
図5は、実施形態の一例である太陽電池モジュール10の受光面側の平面図であり、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの配置を模式的に示した図である。なお、
図5は、
図1に対応するように示しており、
図5では、配線材12の図示を省略している。また、銅を主成分とする電極を用いた第1太陽電池セル11Aをハッチングして示し、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみを用いた第2太陽電池セル11Bをハッチングせずに示している。
【0038】
図5に示すように、太陽電池モジュール10の平面視において、第1太陽電池セル11Aと第2太陽電池セル11Bとがマトリクス状に配置されており、セルマトリクスの最外周には少なくとも1つ以上の第2太陽電池セル11Bが配置されている。最外周に配置される太陽電池セルは、太陽電池モジュール10の外部から侵入する酸素等の影響を受けやすい。そのため、第2太陽電池セル11Bを最外周に配置することで、銅害による樹脂の劣化を抑制できる。なお、本実施形態では、最外周に配置された太陽電池セルは、すべて第2太陽電池セル11Bである。
【0039】
本実施形態では、最外周の太陽電池セルから1つ内側の太陽電池セルは、すべて第1太陽電池セル11Aであるが、第2太陽電池セル11Bであってもよい。第2太陽電池セル11Bの個数を増やすことで、製造コストの削減効果は小さくなるものの、銅害による樹脂の劣化をより抑制できる。また、銅害による樹脂の劣化を抑制する観点から、太陽電池モジュール10の最外周から8cm未満の位置には、第2太陽電池セル11Bが配置されることが好ましい。換言すると、太陽電池モジュール10の最外周から8cm以上離れた位置には、第1太陽電池セル11Aが配置されることが好ましい。
【0040】
太陽電池モジュール10の平面視において、第1太陽電池セル11Aの面積の合計は、第2太陽電池セル11Bの面積の合計よりも大きいことが好ましい。この場合、製造コストをより下げることができる。本実施形態では、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bは、太陽電池セル1つあたりの面積が同一である。そのため、第1太陽電池セル11Aの面積の合計が第2太陽電池セル11Bの面積の合計よりも大きいとは、第1太陽電池セル11Aの個数が第2太陽電池セル11Bの個数よりも多いことを意味する。
【0041】
また、本実施形態では、全ての第1太陽電池セル11Aにおいて、フィンガー電極31Aが同一の材料で構成されているが、太陽電池モジュール10の面内で、フィンガー電極31Aを構成する材料を変えてもよい。例えば、太陽電池モジュール10の中央側に配置される第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aの銅の割合を、太陽電池モジュール10の外周側に配置される第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aの銅の割合よりも高くしてもよい。太陽電池モジュール10の中央側に配置される太陽電池セルは、太陽電池モジュール10の外部から侵入する酸素等の影響を受けにくい。そのため、中央側に配置される第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aの銅の割合をより高めることで、銅害による樹脂の劣化を抑制しつつ、製造コストをより下げることができる。
【0042】
ここで、第1太陽電池セル11Aが配置される領域を第1領域40A、第2太陽電池セル11Bが配置される領域を第2領域40Bとする。この場合、第1領域40Aは銅の色調が主体の外観となり、第2領域40Bは銀の色調が主体の外観となる。そのため、第1領域40Aまたは第2領域40Bが、直線形状、十字形状、円形、多角形または特定の文字のいずれかの形状となるように、第1太陽電池セル11Aまたは第2太陽電池セル11Bを配置することで、太陽電池モジュール10の意匠性を高めることができる。
図5に示す例では、第1領域40Aは長方形状を有している。また、
図6に示す例では、第1領域40Aは数字の「6」の形状を有している。
【0043】
図7は、第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aの表面にSn層が耐腐食層として形成された場合の太陽電池モジュール10の外観の模式図を示す。
図7Aは、太陽電池モジュール10を正面から視認した場合の外観を示し、
図7Bは、太陽電池モジュール10を所定の角度から視認した場合の外観を示す。
図7に示すように、第1太陽電池セル11Aのフィンガー電極31Aの表面にSn層を形成することで、太陽電池モジュール10を正面から視認した場合の見え方と、太陽電池モジュール10を所定の角度から視認した場合の見え方とを変えることができる。より詳細には、太陽電池モジュール10を正面から視認した場合は、フィンガー電極31Aの表面に形成されたSn層が視認されるため、第1領域40AはSnの色調が主体の外観となり、第2太陽電池セル11Bの銀またはアルミニウムの色調に近い外観を有する。一方、太陽電池モジュール10を斜めから視認した場合は、Sn層の下部の銅を主成分とする金属層が視認されるため、第1領域40Aは赤みがかった銅の色調が主体の外観となる角度が存在する。なお、
図7においては、第2太陽電池セル11Bおよび第1太陽電池セル11AのSn層の色調をハッチングせずに図示し、銅の色調をハッチングして図示している。
【0044】
また、第1領域40Aまたは第2領域40Bの形状が異なる複数の太陽電池モジュール10を複数並べて配置し、全体として特定の図形、絵柄、および文字列等を表示する太陽電池システムを構築してもよい。なお、当該太陽電池システムには、第2太陽電池セル11Bのみがマトリクス状に配置された太陽電池モジュール1が含まれていてもよい。
【0045】
以下、
図8を参照しながら、実施形態の他の一例である太陽電池モジュール10Xにおける、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの配置について詳細に説明する。
図8は、実施形態の他の一例である太陽電池モジュール10Xの受光面側の平面図であり、第1太陽電池セル11Aおよび第2太陽電池セル11Bの配置を模式的に示した図である。なお、
図8は、
図5と同様に、配線材12の図示を省略している。また、
図8において、銅を主成分とする電極を用いた第1太陽電池セル11Aをハッチングして示し、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみを用いた第2太陽電池セル11Bをハッチングせずに示している。
【0046】
図8に示すように、太陽電池モジュール10Xは、3つの端子ボックス19を有し、かつ端子ボックス19が太陽電池モジュール10Xの中央部近傍に配置されている点で、太陽電池モジュール10と異なる。
【0047】
太陽電池モジュール10Xの平面視において、第2太陽電池セル11Bは、太陽電池モジュール10Xの最外周に加えて、太陽電池モジュール10Xの中央領域にも配置されている。より詳細には、第2太陽電池セル11Bは、太陽電池モジュール10Xの平面視において、第2保護部材14に形成された開口部20を囲むように配置されている。これにより、開口部20を介して太陽電池モジュール10Xの外部から酸素等が内部に進入した場合であっても、銅害による樹脂の劣化を抑制できる。
【0048】
また、太陽電池モジュール10Xの平面視において、開口部20の外縁から8cm未満の位置には、第2太陽電池セル11Bが配置されることが好ましい。これにより、銅害による樹脂の劣化をより抑制できる。換言すると、開口部20の外縁から8cm以上離れた位置には、第1太陽電池セル11Aが配置されることが好ましい。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0050】
上記の実施形態では、太陽電池セル11が配線材12を介して電気的に接続されているが、これに限定されない。例えば、太陽電池セル11の端部が、導電性または非導電性の接着剤等を介して太陽電池セル11の厚み方向に重なり合うことで、隣り合う太陽電池セル11同士が電気的に接続されていてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、太陽電池セル11の裏面側には、受光面側と同様のフィンガー電極31が形成されているが、これに限定されない。例えば、太陽電池セル11の裏面側には、略全域を覆う電極を形成してもよい。当該電極は、アルミニウム等を用いることができ、第1太陽電池セル11Aの場合は、当該電極に銅薄膜を用いることもできる。
【0052】
また、上記の実施形態では、太陽電池セル11はヘテロ接合型であるが、これに限定されない。例えば、太陽電池セル11は、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact cell)型、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)型、IBC(Interdigitated Back Contact)型であってもよい。太陽電池セル11が当該構造を有する場合であっても、銅を主成分とする電極が形成された第1太陽電池セル11Aと、銀またはアルミニウムを主成分とする電極のみが形成された第2太陽電池セル11Bとを作製し、所定の位置に配置することで、本開示の効果を発揮できる。
【符号の説明】
【0053】
10 太陽電池モジュール、11 太陽電池セル、11A 第1太陽電池セル、11B 第2太陽電池セル、12,12A 配線材、13 第1保護部材、14 第2保護部材、15 封止層、15A 第1封止層、15B 第2封止層、16 ストリング、17,18 渡り配線、19 端子ボックス、20 開口部、21 透明導電膜、22 p型非晶質シリコン膜、23 i型非晶質シリコン膜、24 n型単結晶シリコン基板、25 i型非晶質シリコン膜、26 n型非晶質シリコン膜、27 透明導電膜、31,31A,31B フィンガー電極、32,32A,32B バスバー電極、40A 第1領域、40B 第2領域