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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122163
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】折版用吊具及び雨樋構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E04D13/072 501J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029548
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 保広
(57)【要約】
【課題】折版用吊具において、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される場合に使用しやすくし、かつ、吊り下げ棒の揺れを抑制し、かつ、ワッシャ及びワッシャに隣接する部材の回り止め効果を高くする。
【解決手段】折版用吊具10は、折版屋根2に取り付けられ、吊り下げ部材を吊り下げるために用いられる。折版用吊具10は、ネジ部を有する吊り下げ棒11と、吊り下げ棒11にネジ結合されるナット30,31,32,33と、吊り下げ棒11に支持されるワッシャと、を含む。ワッシャは、長尺板状であり、長手方向及び短手方向の中心には吊り下げ棒11が貫通する貫通穴が設けられ、かつ、貫通穴の周縁とワッシャの外周縁との間に、全周にわたって2mm以上の横方向の幅を有する板部42aが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折版屋根に取り付けられ、吊り下げ部材を吊り下げるために用いられる折版用吊具であって、
ネジ部を有する吊り下げ棒と、前記吊り下げ棒にネジ結合されるナットと、前記吊り下げ棒に支持されるワッシャと、を備え、
前記ワッシャは、長尺板状であり、長手方向及び短手方向の中心には前記吊り下げ棒が貫通する貫通穴が設けられ、かつ、前記貫通穴の周縁と前記ワッシャの外周縁との間に、全周にわたって2mm以上の横方向の幅を有する板部が設けられている、
折版用吊具。
【請求項2】
請求項1に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャの短手方向寸法をLa、長手方向寸法をLcとした場合に、
1.5≦Lc/La≦5.0である、
折版用吊具。
【請求項3】
請求項2に記載の折版用吊具において、
前記短手方向寸法Laは、10~20mmであり、
前記長手方向寸法Lcは、30~50mmであり、
前記ワッシャの厚みは、1~3mmである、
折版用吊具。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャは、長手方向中央部の高さ位置が長手方向両端部の高さ位置と異なるように凸部が設けられる、
折版用吊具。
【請求項5】
請求項4に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャの前記長手方向両端部の上面の高さ位置と前記長手方向中央部の下面の高さ位置との高さ方向の距離は、1~4mmであり、
前記凸部の頂部である前記長手方向中央部の下面の最大長手方向寸法は、前記ワッシャの長手方向寸法の50~90%である、
折版用吊具。
【請求項6】
請求項1に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャは、前記折版屋根の下面に対向し、
前記ワッシャの下側には、止水部材が前記吊り下げ棒に貫通されて支持される、
折版用吊具。
【請求項7】
折版屋根に取り付けられた折版用吊具と、前記折版屋根に前記折版用吊具を介して吊り下げ支持された吊り下げ部材である雨樋とを備える雨樋構造であって、
前記折版用吊具は、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の折版用吊具である、
雨樋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、折版屋根に取り付けられ、雨樋等の吊り下げ部材を吊り下げる折版用吊具と、折半用吊具及び雨樋を備える雨樋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から折版屋根に軒樋等の雨樋を吊り下げ支持するために、折版屋根に折版用吊具を介して吊り下げ部材として雨樋を吊り下げ支持する構造が知られている。折版用吊具は、ネジ部を有する吊り下げ棒と、吊り下げ棒にネジ結合される複数のナットとを有する。
【0003】
特許文献1には、折版屋根に取り付けられた折版用吊具と、折版用吊具により吊り下げられた吊り下げ部材としての雨樋とを備える雨樋構造が記載されている。折版用吊具は、ネジ部を有する吊り下げ棒と、吊り下げ棒において、折版屋根の山部において上下両側にネジ結合される2つのナットと、2つのナットの間で折版屋根を挟むように吊り下げ棒に支持される2つのワッシャとを含んでいる。これにより、吊り下げ棒が折版屋根に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-1725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
折版屋根において、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される場合がある。例えば、折半屋根が嵌合折版屋根と呼ばれる構造である場合がある。嵌合折版屋根は、主板の幅方向両側部分に立ち上がり側部が形成される。両端の立ち上がり側部の一方の頂部に屈曲した上ハゼ部が設けられ、他方の頂部に屈曲した下ハゼ部が設けられる。複数の主板が幅方向に並べられ隣り合う2つの主板の上ハゼ部と下ハゼ部との間に吊子の屈曲部が介在されて結合される。吊子の下端部が構造材の上に固着された受け金具にネジ結合される等、固定または係止される。
【0006】
このような嵌合折版屋根では、2つの主板の各ハゼ部の立ち上がり部に吊り下げ棒を貫通できないので、吊り下げ棒を挿通させる部分が折版屋根の傾斜部に近づいた位置に制限される。これにより、吊り下げ棒に支持するワッシャの配置空間の横方向の幅が大きく制限される。
【0007】
一方、吊り下げ棒には折版屋根の付近で折版屋根に隣接するようにワッシャが支持される。この場合に、ワッシャとして、隣接する部材の外周付近を抑えられるように外径の大きい略円形のワッシャを使用する場合がある。しかしながら、外径の大きいワッシャは、嵌合折版屋根等との干渉防止の面から、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される折版屋根に使用できない可能性がある。また、略円形のワッシャでは、吊り下げ棒が折版屋根の山形部の長手方向に揺れ動くことを抑制することが難しい。
【0008】
一方、ワッシャとして、略円形のワッシャの直径方向両端を平行にカットし、横方向長さを短くしたものを、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される折版屋根に使用することが考えられる。しかしながら、単純に横方向長さが短いワッシャを使用した場合には、ワッシャ及びワッシャに隣接する部材の回り止めを図る効果が小さくなる可能性がある。
【0009】
本開示の目的は、折版用吊具及び雨樋構造において、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される場合に使用しやすくなり、かつ、吊り下げ棒の揺れを抑制でき、かつ、ワッシャ及びワッシャに隣接する部材の回り止め効果を高くできる構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の折版用吊具は、折版屋根に取り付けられ、吊り下げ部材を吊り下げるために用いられる折版用吊具であって、ネジ部を有する吊り下げ棒と、吊り下げ棒にネジ結合されるナットと、吊り下げ棒に支持されるワッシャと、を備え、ワッシャは、長尺板状であり、長手方向及び短手方向の中心には吊り下げ棒が貫通する貫通穴が設けられ、かつ、貫通穴の周縁とワッシャの外周縁との間に、全周にわたって2mm以上の横方向の幅を有する板部が設けられている、折版用吊具である。
【0011】
本開示の一態様の雨樋構造は、折版屋根に取り付けられた折版用吊具と、折版屋根に折版用吊具を介して吊り下げ支持された吊り下げ部材である雨樋とを備える雨樋構造であって、折版用吊具は、本開示の折版用吊具である、雨樋構造である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様の折版用吊具及び雨樋構造によれば、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される場合に使用しやすくなり、かつ、吊り下げ棒の揺れを抑制でき、かつ、ワッシャ及びワッシャに隣接する部材の回り止め効果を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の折版用吊具を含む雨樋構造の一部を上側から見た斜視図である。
図2】(a)は、図1に示す折版屋根を含む屋根構造において、折版屋根の山部の長手方向について、吊子及び受け金具を含む位置で切断した断面図であり、(b)は(a)のA部拡大図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4図3に示す屋根構造を下から見た斜視図である。
図5図1の折版用吊具を構成するワッシャ(第2ワッシャ)を上から見た斜視図である。
図6図5のワッシャを上から見た図である。
図7図6のC-C断面図である。
図8】(a)は、図3の下から見て一部を省略して示す模式図であり、(b)は、比較例の折版用吊具を用いた場合における(a)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る折版用吊具及び雨樋構造の実施形態を説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。以下で説明する形状、個数、材料等は、説明のための例示であって、雨樋構造の仕様により適宜変更することができる。以下では全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0015】
図1図7を用いて実施形態を説明する。図1は、実施形態の折版用吊具10を含む雨樋構造1の一部を上側から見た斜視図である。図2(a)は、図1に示す折版屋根2を含む屋根構造100において、折版屋根2の山部3の長手方向について、吊子70及び受け金具75を含む位置で切断した断面図である。図2(b)は図2(a)のA部拡大図である。図3は、図1のB-B断面図である。図4は、図3に示す屋根構造100を下から見た斜視図である。
【0016】
雨樋構造1は、建物等の建築物の上部に設けられた折版屋根2と、折版屋根2の軒先部分に折版用吊具10を介して吊り下げ支持された軒樋80とを備える。軒樋80は、吊り下げ部材としての雨樋に相当する。
【0017】
折版屋根2は、台形状の山部3と山部3の下端に連結された長尺板状の谷部4とが交互に設けられた波形状であり、谷部4を流れた雨水が折版屋根2の軒先端から軒樋80に流入される。
【0018】
軒樋80は、前壁82及び後壁83の下端が底壁84で連結され上端が開口した軒樋本体81と、前壁82及び後壁83の上端に形成され軒樋80外側で下方に開口する前耳部85及び後耳部86とを備える。
【0019】
折版屋根2から軒樋80に入り込んだ雨水は、軒樋80を長手方向に流れて軒樋80の長手方向一部に設けられたドレン(図示せず)から竪樋(図示せず)を通じて地面側に排出される。
【0020】
折版用吊具10は、折版屋根2に取り付けられ、軒樋80を、雨樋吊り部13を介して吊り下げるために用いられる。図3図4に示すように、折版用吊具10は、少なくとも上端部及び下端部にネジ部を有する吊り下げ棒11と、吊り下げ棒11にネジ結合される複数のナット30,31,32,33と、複数の第1ワッシャ40,41と、第2ワッシャ42と、止水部材60と、雨樋吊り部13とを有する。図示の例では、吊り下げ棒11の外周面の全体にネジ部が設けられている場合を示している。複数のナット30,31,32,33は、吊り下げ棒11の下端部に結合された2つのナット30,31と、吊り下げ棒11の上端部に結合された2つのナット32,33とを含む。複数の第1ワッシャ40,41は、後述のように、平板円環状の金属製の平ワッシャである。一方、第2ワッシャ42は、図4に示すように、長尺板状の金属製である。
【0021】
雨樋吊り部13は、帯状の金属板を屈曲して形成され、軒樋80の上部に幅方向にかけ渡され、両端部が前耳部85と後耳部86のそれぞれの下側に回り込んで係止する2つの係止部14を有する。雨樋吊り部13の中間部には、貫通穴15が形成される。吊り下げ棒11の下端部はこの貫通穴15を貫通する。複数のナット30,31,32,33のうち、吊り下げ棒11の下端部に結合される2つのナット30,31は、雨樋吊り部13を挟んでいる。これにより、吊り下げ棒11の下端部に雨樋吊り部13が固定される。
【0022】
吊り下げ棒11の上端部は、折版屋根2に支持される。図2に示すように、折版屋根2は、嵌合折版屋根である。具体的には、折版屋根2は、曲げ形成された複数の金属板である主板5が幅方向に並んだ状態で、隣り合う主板5の端部同士を結合することにより、断面形状が山部と谷部とを有する波形に形成される。主板5の幅方向両側部分には、立ち上がり側部6が形成される。両端の立ち上がり側部6の一方の頂部7には、屈曲した上ハゼ部7aが設けられ、他方の頂部8には屈曲した下ハゼ部8aが設けられる。各頂部7,8は、幅方向(図2の左右方向)に直交する横方向である長手方向(図2の紙面に直交する方向)に延びている。複数の主板5が幅方向に並べられ隣り合う2つの主板5の上ハゼ部7aと下ハゼ部8aとの間に、図2に示す吊子70の屈曲部が介在されて結合される。
【0023】
折版屋根2の下に設けられた構造材の上には、複数の山形部を有する受け金具75が固着されている。吊子70は、屈曲形状を有し、上端が上ハゼ部7aと下ハゼ部8aとで挟まれ、下端部の幅方向に延びる部分と受け金具75の山形部の頂部とにボルト76が貫通されボルト76の先端部にナット77が結合される。これにより、吊子70の下端部が受け金具75にネジ結合される。これにより、構造材101の上に折版屋根2が固定される。吊子70の下端部は受け金具75にネジ結合されず、吊子70の下端部と受け金具75の頂部とに上側から貫通したボルトにより位置決めを図るように係止された構成としてもよい。
【0024】
このような折版屋根2では、図3に示すように、山部3の頂部7,8を構成する2つの主板5のうち、一方の主板5で形成される頂部7のみに、吊り下げ棒11が貫通している。これにより、吊り下げ棒11の折版屋根2における配置位置は狭く限定される。
【0025】
複数のナット30,31,32,33のうち、吊り下げ棒11の上端部に結合される2つのナット32,33は、折版屋根2より上側に結合されたナット32と、折版屋根2より下側に結合されたナット33とを有する。吊り下げ棒11の上端部において、折版屋根2より上側に結合されるナット32と、折版屋根2の頂部7との間には、複数の第1ワッシャ40,41のうち、上側の第1ワッシャ40が配置される。上側の第1ワッシャ40は、ナット32の外径と同程度の外径を有する平板円環状の鋼またはステンレス鋼等の金属製の平ワッシャである。なお、ナット32と頂部7との間の第1ワッシャ40は省略されてもよい。
【0026】
吊り下げ棒11の上端部において、折版屋根2より下側に結合されるナット33と、折版屋根2の頂部7との間には、上側から、第2ワッシャ42と、止水部材60と、下側の第1ワッシャ41とが配置される。第2ワッシャ42は、長尺板状の鋼またはステンレス鋼等の金属製である。
【0027】
図5は、第2ワッシャ42を上から見た斜視図である。図6は、第2ワッシャ42を上から見た図である。図7は、図6のC-C断面図である。第2ワッシャ42は、長手方向中央部に位置する天板部43の高さ位置が、長手方向両端部に位置するフランジ板部44の高さ位置と異なるように、長手方向及び短手方向の中央部に凸部45が設けられる。フランジ板部44は、第2ワッシャ42の外周縁を含む部分に凸部45を囲うように全周に設けられる略長方形である。フランジ板部は、略楕円形としてもよい。第2ワッシャ42の長手方向及び短手方向の中心である天板部43の中心には、吊り下げ棒11が貫通する円形の貫通穴43aが設けられる。貫通穴43aの周縁と第2ワッシャ42の外周縁との間には、全周にわたって2mm以上の横方向(図6の紙面に沿った方向)の幅を有し、フランジ板部44と天板部43とを含む板部42aが設けられている。
【0028】
フランジ板部44と天板部43とは横方向に広がる。天板部43は、第2ワッシャ42の長手方向に沿って長い楕円形状である。天板部43は、第2ワッシャ42の長手方向に長い略長方形としてもよい。天板部43とフランジ板部44とは、上側に向かって外周縁の大きさが小さくなるテーパ面を有する楕円錐状の筒部46で連結される。
【0029】
図6に示すように、第2ワッシャ42の短手方向寸法をLa、長手方向寸法をLcとした場合に、例えば、1.5≦Lc/La≦5.0である。好ましくは、3.0≦Lc/La≦5.0である。例えば、第2ワッシャ42の短手方向寸法Laは、10~20mmであり、長手方向寸法Lcは、30~50mmである。また、例えば、第2ワッシャ42の厚みtは、1~3mmであり、第2ワッシャ42の貫通穴の直径Lbは、7.5~11.5mmである。貫通孔の内周面は、ネジ孔を持たない単なる円筒面である。
【0030】
さらに、図7に示すように、凸部45の頂部である天板部43の下面の最大長手方向寸法Ldは、第2ワッシャ42の長手方向寸法Lcの50~90%である。また、第2ワッシャ42のフランジ板部44の上面の高さ位置と天板部43の下面の高さ位置との高さ方向の距離Leは、1~4mmである。
【0031】
このように第2ワッシャ42に凸部45が設けられるので、後述のように第2ワッシャ42の下側に隣接する止水部材60(図3)に対する押圧部を、第2ワッシャ42の外周近くの少なくとも一部に集中させることができる。これにより、止水部材60の回り止め効果を高くできる。
【0032】
図3に示すように、上記の第2ワッシャ42は、天板部43の上面を折版屋根2の頂部7の下面に突き当てるように、吊り下げ棒11に支持される。第2ワッシャ42のフランジ板部44の下面には、止水部材60が配置される。
【0033】
止水部材60は、略楕円柱状のアスファルトフェルト材であり、中心に吊り下げ棒11を貫通させる貫通穴61が形成される。止水部材60の外周は、第2ワッシャ42の外周縁とほぼ一致させる大きさとしてもよい。止水部材60は、折版屋根2の頂部7に形成された貫通穴と吊り下げ棒11との隙間から下側に染み出した雨水が、吊り下げ棒11に沿ってさらに下側に流れることを抑制する機能を有する。
【0034】
止水部材60の下面には下側の第1ワッシャ41を介してナット33が配置される。これにより、吊り下げ棒11の上端部に結合された2つのナット32,33で、折版屋根2の頂部7が挟まれることにより、折版屋根2に吊り下げ棒11が固定される。止水部材60及び第2ワッシャ42の外周縁の短手方向長さは、止水部材60の下側のナット33の外径よりわずかに大きい。下側の第1ワッシャ41は、上側の第1ワッシャ40と同様に、ナット33の外径と同程度の外径を有する平板円環状の鋼またはステンレス鋼等の金属製の平ワッシャである。なお、下側の第1ワッシャ41は省略されてもよい。
【0035】
上記のように、吊り下げ棒11の上端部に結合される2つのナット32,33と、2つのナット32.33の間に配置される各ワッシャ40,41,42及び止水部材60の配置位置は、吊り下げ棒11の配置位置に応じて狭く限定される。このため、実施形態と異なり、折版屋根2の頂部7に隣接して配置される第2ワッシャに、円形のワッシャを用いてその外径を大きくした場合には、ワッシャが折版屋根2の山部3の幅方向一方に位置する傾斜板部3aに干渉しやすくなる。
【0036】
例えば、円形の第2ワッシャでは、止水部材の外周付近のみと接触させるように、円錐面状の筒部により、上部と下部の円環フランジ板部とを連結した形状とすることが考えられる。この場合には、止水部材を円柱状とすると共に、止水部材の必要な容積を確保するために止水部材の外径を大きくすることに応じて、第2ワッシャの外径がかなり大きくなる可能性がある。一方、実施形態によれば、第2ワッシャ42が長尺板状であり、かつ、貫通穴43aの周縁と第2ワッシャ42の外周縁との間に、全周にわたって2mm以上の幅を有する板部42aが設けられる。これにより、第2ワッシャ42と折版屋根2の傾斜板部3aとの干渉を防止しながら、第2ワッシャ42と止水部材60の外周付近とを接触させることができ、止水部材60の必要な容積も確保できる。
【0037】
これにより、折版用吊具10及び雨樋構造1によれば、ワッシャ配置空間の横方向の幅が大きく制限される場合に使用しやすくなり、かつ、第2ワッシャ42及び第2ワッシャ42に隣接する部材としての止水部材60の回り止め効果を高くできる。また、図4に示したように、第2ワッシャ42は、長手方向を山部3の頂部7の長手方向(図4の上下方向)に一致させて配置することができる。これにより、第2ワッシャ42の長手方向の両端部で頂部7との接触面積を大きくできる。このため、第2ワッシャ42が、長手方向両端部で上下方向に揺れることを防止できるので、吊り下げ棒11が頂部7の長手方向に揺れることを抑制できる。この場合、第2ワッシャ42は、吊り下げ棒11の揺れを抑制するための補強板としての機能を有する。したがって、吊り下げ棒11で吊り下げ支持された軒樋80のがたつきを抑制できる。
【0038】
図8(a)は、図3の下から見て一部を省略して示す模式図である。図8(b)は、比較例の折版用吊具90を用いた場合における図8(a)に対応する図である。図8(a)に示すように、第2ワッシャ42は、折版屋根2の山部3の頂部7の長手方向に長い形状を有する。これにより、図8(a)の矢印αで示す方向である、第2ワッシャ42の長手方向の端部が上下に揺れる方向の揺れを抑制できる。さらに、折版用吊具10の使用時には、第2ワッシャ42が万が一回転する傾向となった場合でも、第2ワッシャ42の長手方向の端部が折版屋根2の山部3の傾斜板部3aに突き当たるので、矢印β方向についての回転防止を図れる。これにより、第2ワッシャ42及び止水部材60(図3参照、図8では図示を省略)の経年変化や過度な荷重付加が生じる場合でも、第2ワッシャ42及び止水部材60間の摺動摩耗によるフェルト材の「やせ」を低減できる。
【0039】
また、第2ワッシャ42の取付時には、作業者が、折版屋根2の下面に第2ワッシャ42を押し付けた状態で、第2ワッシャ42の長手方向の端部、例えば破線Pの円形で示す部分を、指で押さえやすくなる。このため、第2ワッシャ42の脱落と回転とを防止しながら、折版用吊具10を折版屋根2に取り付ける作業を行いやすくなる。
【0040】
一方、図8(b)に示す比較例の折版用吊具90では、実施形態と異なり、円形で中間に凸部を有する第2ワッシャ91が使用されている。この場合、折版屋根2の山部3の傾斜板部3aの傾斜によって、第2ワッシャ42の外周縁がこの傾斜板部3aに干渉しやすくなる。このため、折版屋根2に折版用吊具90を取り付けできない可能性がある。実施形態によれば、このような不都合を防止できる。
【0041】
なお、上記の実施形態では、第2ワッシャ42を折版屋根2の頂部7の下面に隣接するワッシャとして用いる場合を説明した。一方、第2ワッシャ42の上下方向を逆にして、第2ワッシャ42を、折版屋根2の頂部7の上面と上側のナットの下面とに隣接するように、吊り下げ棒11に支持されてもよい。
【0042】
上記で説明した本開示の構成は、以下の通りである。すなわち、(構成2)~(構成7)の1つ~6つのいずれかは、(構成1)に任意に組み合わせられる。
(構成1)
折版屋根に取り付けられ、吊り下げ部材を吊り下げる折版用吊具であって、
ネジ部を有する吊り下げ棒と、前記吊り下げ棒にネジ結合されるナットと、前記吊り下げ棒に支持されるワッシャと、を備え、
前記ワッシャは、長尺板状であり、長手方向及び短手方向の中心には前記吊り下げ棒が貫通する貫通穴が設けられ、かつ、前記貫通穴の周縁と前記ワッシャの外周縁との間に、全周にわたって2mm以上の横方向の幅を有する板部が設けられている、
折版用吊具。
(構成2)
(構成1)に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャの短手方向寸法をLa、長手方向寸法をLcとした場合に、
1.5≦Lc/La≦5.0である、
折版用吊具。
(構成3)
(構成2)に記載の折版用吊具において、
前記短手方向寸法Laは、10~20mmであり、
前記長手方向寸法Lcは、30~50mmであり、
前記ワッシャの厚みは、1~3mmである、
折版用吊具。
(構成4)
(構成1)~(構成3)のいずれか1つに記載の折版用吊具において、
前記ワッシャは、長手方向中央部の高さ位置が長手方向両端部の高さ位置と異なるように凸部が設けられる、
折版用吊具。
(構成5)
(構成4)に記載の折版用吊具において、
前記ワッシャの前記長手方向両端部の上面の高さ位置と前記長手方向中央部の下面の高さ位置との高さ方向の距離は、1~4mmであり、
前記凸部の頂部である前記長手方向中央部の下面の最大長手方向寸法は、前記ワッシャの長手方向寸法の50~90%である、
折版用吊具。
(構成6)
(構成1)~(構成5)のいずれか1つに記載の折版用吊具において、
前記ワッシャは、前記折版屋根の下面に対向し、
前記ワッシャの下側には、止水部材が前記吊り下げ棒に貫通されて支持される、
折版用吊具。
(構成7)
折版屋根に取り付けられた折版用吊具と、前記折版屋根に前記折版用吊具を介して吊り下げ支持された吊り下げ部材である雨樋とを備える雨樋構造であって、
前記折版用吊具は、(構成1)~(構成6)のいずれか1つに記載の折版用吊具である、
雨樋構造。
【符号の説明】
【0043】
1 雨樋構造、2 折版屋根、3 山部、3a 傾斜板部、4 谷部、5 主板、6 立ち上がり側部、7,8 頂部、10 折版用吊具、11 吊り下げ棒、13 雨樋吊り部、14 係止部、15 貫通穴、30,31,32,33 ナット、40,41 第1ワッシャ、42 第2ワッシャ、42a 板部、43 天板部、43a 貫通穴、44 フランジ板部、45 凸部、46 筒部、60 止水部材、61 貫通穴、70 吊子、75 受け金具、76 ボルト、77 ナット、80 軒樋、90 折版用吊具、91 第2ワッシャ、100 屋根構造、101 構造材。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8