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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122170
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】多層容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B65D1/02 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029560
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】原澤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 秀治
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA13
3E033BA30
3E033BB08
3E033DA04
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】樹脂使用量を削減しつつ、容器の性能の向上と材料コストの抑制が可能な多層容器を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、外層と内層とを備える多層容器であって、前記外層は、樹脂及びタルクを含有する組成物により構成され、前記組成物は、前記タルクを45~80質量%含有し、前記タルクの含有量は、前記多層容器全体に対して40質量%以上である、多層容器が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と内層とを備える多層容器であって、
前記外層は、樹脂及びタルクを含有する組成物により構成され、
前記組成物は、前記タルクを45~80質量%含有し、
前記タルクの含有量は、前記多層容器全体に対して40質量%以上である、多層容器。
【請求項2】
請求項1に記載の多層容器であって、
前記組成物に含有される前記樹脂は、オレフィン系ベース樹脂と、オレフィン系エラストマーとを含み、
前記樹脂中の前記オレフィン系ベース樹脂と前記オレフィン系エラストマーとの質量比は、40/60~90/10である、多層容器。
【請求項3】
請求項2に記載の多層容器であって、
前記オレフィン系ベース樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンの混合樹脂である、多層容器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の多層容器であって、
前記オレフィン系エラストマーは、エチレン系エラストマーである、多層容器。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の多層容器であって、
内容物を収容可能な収容部を備え、
前記収容部において、前記外層と前記内層とが非接着である、多層容器。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の多層容器であって、
前記多層容器の内容積は、100mL以下である、多層容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容するための樹脂製容器として、外層と内層とを有する多層容器が知られている。特許文献1には、外層及び内層がそれぞれポリエチレンテレフタレートで形成された多層容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-145259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境配慮を目的として、容器における樹脂使用量の削減が求められている。樹脂と紙や木材等の他材料との複合材料を用いた容器が利用されているが、従来の樹脂製容器と比較して容器の性能や材料コストの観点から改善の余地が大きい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂使用量を削減しつつ、容器の性能の向上と材料コストの抑制が可能な多層容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]外層と内層とを備える多層容器であって、前記外層は、樹脂及びタルクを含有する組成物により構成され、前記組成物は、前記タルクを45~80質量%含有し、前記タルクの含有量は、前記多層容器全体に対して40質量%以上である、多層容器。
[2][1]に記載の多層容器であって、前記組成物に含有される前記樹脂は、オレフィン系ベース樹脂と、オレフィン系エラストマーとを含み、前記樹脂中の前記オレフィン系ベース樹脂と前記オレフィン系エラストマーとの質量比は、40/60~90/10である、多層容器。
[3][2]に記載の多層容器であって、前記オレフィン系ベース樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンの混合樹脂である、多層容器。
[4][2]又は[3]に記載の多層容器であって、前記オレフィン系エラストマーは、エチレン系エラストマーである、多層容器。
[5][1]~[4]の何れか1項に記載の多層容器であって、内容物を収容可能な収容部を備え、前記収容部において、前記外層と前記内層とが非接着である、多層容器。
[6][1]~[5]の何れか1項に記載の多層容器であって、前記多層容器の内容積は、100mL以下である、多層容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る多層容器は、外層を構成する組成物がタルクを45~80質量%含有し、タルクの含有量が多層容器全体に対して40質量%以上であることを特徴とする。外層にタルクが含有されることで、樹脂使用量を削減可能である他、容器を潰した際の復元性(元の形状への戻りやすさ)が低くなり、使用時における内容物の絞り出し性や廃棄時における減容性を向上させることができる。また、タルクは比較的安価であるため、樹脂の代替に伴う材料コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る多層容器1の正面図である。
図2図1のA-A線における多層容器1の断面図である。
図3】多層容器1の内層6の層構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.多層容器の構成
図1は、本発明の実施形態に係る多層容器1の正面図である。多層容器1に収容される内容物は、特に限定されないが、化粧品、医薬品、食品、工業薬品が例示される。本実施形態の多層容器1は、比較的粘度が高いクリーム状又はペースト状の内容物(例えば、5,000mPa・S以上)、例えば、歯磨き粉、食品調味料、接着剤を収容するための容器として特に好適に利用される。
【0011】
図1に示すように、多層容器1は、内容物を収容可能な収容部2と、収容部2から内容物を吐出する口部3とを備える。口部3は、キャップ(不図示)を装着可能な係合部4を備え、キャップを係合部4に装着することで口部3の開口が閉止される。本実施形態の多層容器1には打栓式のキャップが用いられ、係合部4は周方向に突出する環状突起状に構成される。別の例として、ねじ式のキャップを用いる場合には、係合部4は雄ねじ状に構成可能である。
【0012】
図2は、図1のA-A線における多層容器1の断面図である。図2に示すように、多層容器1は、外層5と内層6とを備える。外層5は、多層容器1において最も外側に配置される層であり、樹脂及びタルクを含有する組成物により構成される。タルクは、含水ケイ酸マグネシウムであり、比較的安価に入手可能な材料である。
【0013】
外層5を構成する組成物は、タルクを45~80質量%含有し、好ましくはタルクを50~70質量%含有する。外層5を構成する組成物中のタルクの含有量は、具体的には例えば、45、50、55、60、65、70、75、80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。タルクを含有する組成物で外層5を構成することで、外力に対する多層容器1の剛性を向上させることができる。また、タルクの含有量を上述の範囲にすることで、多層容器1の樹脂使用量を削減し、多層容器1を潰した際の復元性が低くなり絞り出し性及び減容性を向上させることができる他、タルクの含有量が大きくなりすぎて容器の成形性や強度が過度に損なわれることもない。
【0014】
また、外層5を構成する組成物中のタルクの含有量は、多層容器1全体に対して40質量%以上であることが好ましく、51質量%以上であることがより好ましい。多層容器1全体に対するタルクの含有量の範囲の上限は特に限定されないが、外層5を構成する組成物中のタルク含有量が45~80質量%であることから、多層容器1全体に対するタルクの含有量は80質量%未満となる。タルクの含有量をこのような範囲とすることで、多層容器1の樹脂使用量を削減することが可能となる。また、タルクは炭素を含まないため、廃棄された多層容器1を焼却処理する際の二酸化炭素発生量を削減することも可能となる。
【0015】
外層5を構成する組成物に含有される樹脂は、オレフィン系ベース樹脂と、オレフィン系エラストマーとを含むことが好ましい。オレフィン系ベース樹脂として、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンが例示される。また、オレフィン系ベース樹脂は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよく、さらには、いわゆる環状オレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo-Olefin Polymer))や環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo-Olefin Copolymer))等であってもよい。これらのオレフィン系ベース樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
オレフィン系ベース樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン及びポリエチレンの混合樹脂を用いることが好ましく、これらの何れかを外層5を構成する組成物に含有される樹脂中の主成分とすること、つまり樹脂全体の50質量%以上とすることが好ましい。また、ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン又は直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0017】
オレフィン系エラストマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、エチレンプロピレンゴム等のゴム成分をソフトセグメントとする熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーは、加熱によって軟化し流動性を示す性質を有するエラストマーであり、このような性質を有さないゴムと区別可能である。オレフィン系エラストマーを含む樹脂を用いることで、外層5の強度を向上させることができ、特に、内容物を吐出させるために多層容器1の収容部2を絞る際に外層5に割れが生じにくくなる。
【0018】
オレフィン系エラストマーとして、エチレン-α-オレフィン共重合体等のエチレン系エラストマー、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のプロピレン系エラストマーが例示される。これらのオレフィン系ベース樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、オレフィン系エラストマーとして、エチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0019】
外層5を構成する組成物に含有される樹脂中のオレフィン系ベース樹脂とオレフィン系エラストマーとの質量比は、40/60~90/10であることが好ましく、45/65~80/20であることがより好ましい。質量比をこのような範囲とすることで、外層5の強度をさらに向上させることができる。
【0020】
図2に示すように、内層6は、外層5の内側に配置される。本実施形態の内層6は、内袋状に形成され、内袋内に内容物が収容されている。図3は、多層容器1の内層6の層構成の一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態の内層6は、最内層61と、接着層62と、バリア層63とを多層容器1の内側からこの順に備える。最内層61は、多層容器1において最も内側に配置される層であり、その内面が内容物と接する。
【0021】
最内層61は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンが例示される。また、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよく、さらには、いわゆる環状オレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo-Olefin Polymer))や環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo-Olefin Copolymer))等であってもよい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
例示されたポリオレフィン系樹脂の中では、ポリエチレン又はポリプロピレンを使用することが好ましく、ポリエチレンやポリプロピレンを樹脂成分中の主成分とすること、つまり、樹脂組成物全体の50質量%以上とすることが好ましい。ポリエチレンとしては、絞り出し性等を考慮し、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。また、最内層61を構成する樹脂組成物には、多層容器1の内面における内容物の滑落性を向上させるために、滑剤を添加してもよい。
【0023】
バリア層63は、ガスバリア性が高い樹脂で構成される。このような樹脂として、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す)や芳香族ポリアミドが例示される。バリア層63を設けることによって、酸素透過による内容物の酸化劣化を有効に抑制することができる。
【0024】
接着層62は、接着性樹脂で構成され、最内層61とバリア層63との間に配置される。接着性樹脂として、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)が例示される。接着層62を設けることにより、最内層61とバリア層63との接着性が向上する。なお、接着層62を設ける代わりに、バリア層63に接着性樹脂を配合してもよい。
【0025】
内層6の構成は、本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、最内層61とバリア層63との間に中間層をさらに配置してもよい。中間層は、熱可塑性樹脂含む樹脂組成物で構成可能であり、多層容器1の成形時に発生するスクラップを再生して得られるリプロ材料を含む樹脂組成物で構成してもよい。また、中間層を設ける場合、最内層61と中間層との間、中間層とバリア層63との間にそれぞれ接着層を配置してもよい。
【0026】
なお、多層容器1の耐衝撃性を確保する観点から、内層6を構成する組成物中のタルクの含有量は、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。内層6を構成する組成物は、タルクを含有しない構成としてもよい。
【0027】
また、上述の各層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、増核剤、離型剤、着色剤及び中和剤等、樹脂材料の分野で一般に使用される各種添加剤を添加してもよい。
【0028】
図2に示すように、多層容器1は、収容部2において、外層5と内層6とが非接着であることが好ましい。つまり、外層5の内面とバリア層63の外面とが接着層等により接着されておらず、外層5を内層6に対して容易に分離することができることが好ましい。このような構成では、収容部2内の内容物の大半を吐出した状態において、収容部2の外層5のみを切り裂いて内層6を露出し、内層6により構成される内袋のみを絞って内容物を吐出し使い切ることができる。外層5はハサミ等の切断具を用いて切り裂いても良いが、本実施形態ではタルクを含有する組成物で外層5が構成されているため、外層5を手で容易に引きちぎって切り裂くことができる。
【0029】
また、多層容器1は、全体において外層5と内層6とが分離可能に構成されていることが好ましい。具体的には、口部3においても外層5と内層6とが接着されていないことが好ましい。本実施形態では、口部3において、外層5及び内層6は環状突起状の係合部4において相互に嵌合しているが、手で分離可能である。従って、外層5のみを切り裂いた後、さらに口部3において内層6を外層5から分離することで、外層5と内層6とを完全に分離することができる。このような構成では、多層容器1の廃棄時に、タルク含有量が比較的大きい外層5と、樹脂含有量が比較的大きい内層6とを容易に分別することができる。
【0030】
また、多層容器1を、収容部2において内容物の減少に伴って外層5から内層6が剥離するように構成された、いわゆる積層剥離容器としてもよい。この場合、多層容器1の収容部2には、外気導入部が設けられる。外気導入部は、例えば、外層5を貫通する貫通孔(外気導入孔)であり、外気導入部を通じて、外層5と内層6の間の中間空間に外気を導入することができる。また、キャップに逆止弁を設け、内容物の吐出は可能であるが、外気が多層容器1内に流入しない構成としてもよい。このような積層剥離容器では、内容物の減少に伴って内層6により構成される内袋が収縮することで、外層5から内層6が剥離する。収容部2内の内容物の大半を吐出した状態において、収容部2の内層6は外層5から剥離しているため、外層5のみを切り裂いて内層6を露出し、内袋のみを潰して内容物を吐出し使い切ることができる。
【0031】
外層5の厚さt1と内層6の厚さt2との比率は特に限定されないが、収容部2におけるt1/t2の値は、例えば0.5~5であり、好ましくは1.5~3.5であり、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。外層5及び内層6の厚さをこのように設定することで、多層容器1の絞り出し性及び減容性を向上させるとともに、多層容器1の強度や成形性を確保できる。
【0032】
外層5の質量w1と内層6の質量w2との比率は特に限定されないが、w1/w2の値は、例えば1~10であり、好ましくは3~6であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。外層5及び内層6の質量をこのように設定することで、多層容器1の絞り出し性及び減容性を向上させるとともに、多層容器1の強度や成形性を確保できる。
【0033】
多層容器1の内容積は、特に限定されないが、100mL以下であることが好ましく、70mL以下であることがより好ましく、50mL以下であることがより好ましい。内容積がこのような範囲であれば、多層容器1の絞り出し性及び減容性と、耐衝撃性とを両立しやすい。
【0034】
2.多層容器1の製造方法
多層容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによって多層容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
【0035】
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、多層容器1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。
【実施例0036】
<サンプルの製造>
図1に示す形状を有し、外層5と内層6とを備える多層容器1(内容量20ml)をダイレクトブロー成形により製造した。内層6は、図3に示すように最内層61と、接着層62と、バリア層63とを多層容器1の内側からこの順に備える構成とし、以下の樹脂組成物を用いて各層を形成した。
最内層61:低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、サンテックLD M2206)
接着層62:酸変性ポリオレフィン樹脂(三菱ケミカル株式会社製、モディックL522)
バリア層63:エチレンビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、ソアノールSF7503B)
【0037】
収容部2における高さ方向の中央部の外層5の厚さt1は、0.32mm、内層6の厚さt2は、0.13mmとした。多層容器1の質量は3.8gであり、外層5の質量w1は3.1g、内層6の質量w2は0.68gであった。外層5と内層6とは、収容部2において非接着とした。
【0038】
外層5は、表1に示す組成を有する組成物により構成した。具体的には、以下の製品を用いて各実施例・比較例の組成物を調製した。
実施例1:PP/タルクマスターバッチ(PP含有量30質量%、タルク70質量%、浅田製粉株式会社製、HG-170)、及びLDPE(旭化成株式会社製、サンテックLD M2206)
実施例2~4:PP/タルクマスターバッチ(PP含有量30質量%、タルク70質量%、浅田製粉株式会社製、HG-170)、及びエチレン系エラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体、三井化学株式会社製、タフマーDF605)
実施例5:PP/タルクマスターバッチ(PP含有量30質量%、タルク70質量%、浅田製粉株式会社製、HG-170)、LDPE(旭化成株式会社製、サンテックLD M2206)、及びエチレン系エラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体、三井化学株式会社製、タフマーDF605)
実施例6:LLDPE/タルクマスターバッチ(LLDPE含有量40質量%、タルク含有量60質量%、LyondellBasell社製、FTA360T)、及びエチレン系エラストマー(エチレン-α-オレフィン共重合体、三井化学株式会社製、タフマーDF605)
比較例1:ポリプロピレン(住友化学株式会社製、ノーブレンFH3315)
比較例2:PP/タルクマスターバッチ(PP含有量30質量%、タルク70質量%、浅田製粉株式会社製、HG-170)、ポリプロピレン(住友化学株式会社製、ノーブレンFH3315)
【0039】
【表1】
【0040】
<復元性の評価>
多層容器1を潰した際の復元性を評価した。具体的には、内容物を充填していない状態の多層容器1を収容部2がほぼ平坦となるまで手で潰し、1分静置した後の形状の復元の程度を目視で確認し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
A:潰した状態からほとんど形状が復元しなかった
B:潰した状態からやや形状が復元した
C:潰した状態からかなり形状が復元した
【0041】
<切り裂き性の評価>
外層5の切り裂き性を評価した。具体的には、内容物を充填していない状態の多層容器1を用いて、外層5を手で引きちぎって切り裂くことができるかを以下の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
A:比較的弱い力で、手で切り裂くことができた
B:比較的強い力で、手で切り裂くことができた
C:手で切り裂くことができなかった
【0042】
<強度の評価>
さらに、多層容器1の強度を評価した。具体的には、内容物を充填していない状態の多層容器1の収容部2に対して、内容物を吐出するための動作と同様に手で強く絞るように力を加え、外層5の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
A:外層5に割れが生じなかった
B:外層5の一部に割れが生じた
C:外層5の全体にわたって割れが生じた
【0043】
タルクを含有する組成物により外層5を構成した実施例1~6では、タルクを含有しない組成物で外層5を構成した比較例1、及びタルク含有量が低い比較例2と比較して、多層容器1を潰した際に形状が復元しにくくなり、使用時における内容物の絞り出し性や廃棄時における減容性を向上可能であることが分かった。また、実施例1~6では、比較例1、2と比較して、外層5の切り裂き性の向上が認められた。なお、オレフィン系エラストマーを含む組成物により外層5を構成した実施例2~6では、多層容器1を絞った際の強度の向上が認められた。実施例1では多層容器1を絞る動作に伴い外層5に形成される折り目に沿って割れが生じたのに対し、実施例2では割れが生じる範囲がより少なく、実施例3~6では割れが生じなかった。
【0044】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 :多層容器
2 :収容部
3 :口部
4 :係合部
5 :外層
6 :内層
61 :最内層
62 :接着層
63 :バリア層
図1
図2
図3