(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122171
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20230101AFI20240902BHJP
【FI】
C02F1/48 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029561
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】505424262
【氏名又は名称】金杉 穣
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】金杉 穣
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB06
4D061EA18
4D061EC01
4D061EC07
4D061EC19
(57)【要約】
【課題】被処理水が循環する間に黒い水となってしまうという問題を解決することができる水の磁気処理装置を提供する。
【解決手段】円筒体の円環部分に軸心と平行にN極とS極とが配置され軸心と直交する面に沿ってN極とS極とを通る円を描く磁束が分布するように着磁された円筒形磁石1と、円筒形磁石1を収容する常磁性体から成る内筒管2と、内筒管2の両端を封止して円筒形磁石1を密封する水密栓3と、被処理水22の導入口16を有する蓋部材13及び被処理水22の排水口17を有する蓋部材14で両端開口が閉塞され、内筒管2を収容して内筒管2との間に管軸方向に被処理水22を通過させる流路23を形成する外筒管4と、内筒管2の端部に嵌合され外筒管4並びに蓋部材13、14との間に被処理水22が通過する空間11、12を保持させる管端部材5とを備え、内筒管2と外筒管4との間の空間(即ち流路)23に被処理水22を円筒形磁石1の軸心方向に沿って流通させるようにしている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の円環部分に軸心と平行にN極とS極とが配置され前記軸心と直交する面に沿って前記N極と前記S極とを通る円を描く磁束が分布するように着磁された円筒形磁石と、
前記円筒形磁石を収容する常磁性体から成る内筒管と、
前記内筒管の両端を封止して前記円筒形磁石を密封する水密栓と、
前記内筒管を収容し且つ被処理水の導入口を有する蓋部材及び前記被処理水の排水口を有する蓋部材で両端開口が閉塞されて前記内筒管との間に管軸方向に前記被処理水を通過させる流路を形成する外筒管と、
前記内筒管の端部に嵌合され前記外筒管並びに前記蓋部材との間に前記被処理水が通過する空間を保持させる管端部材とを備え、
前記内筒管と前記外筒管との間の前記流路に前記被処理水を前記円筒形磁石の軸心方向に沿って流通させる
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記管端部材は前記内筒管の端部に嵌合されて前記水密栓を包んだ状態で接合される管端キャップ部と、前記外筒管の内周面との間に径方向の間隔を保持させる径方向突起部と、前記蓋部材と前記管端キャップ部との間に前記導入口または前記排水口と連通する空間を確保させる軸方向突起部とを備えることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記内筒管はアルミニウム製パイプ、前記外筒管は塩化ビニル製パイプであることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項4】
前記水密栓はシリコンゴム製のテーパ型の栓体であり、テーパ形状部分が前記内筒管内に押し込まれることによって弾性変形することで前記内筒管に対して締まり嵌めされることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、水道水などの被処理水に磁気を晒して酸化還元電位を低下させる水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水を処理する従来の方法として、本発明者により、先に、円筒形の軸心方向と直交する方向に沿って磁束が分布するように着磁された円筒形磁石をコイルに納めてから、被処理水を通過させる内筒管内に収容し、円筒形磁石の周りに被処理水を通過させる間に磁束と鎖交させるようにした水処理装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の水処理装置によれば、簡単な構成でありながらも被処理水の酸化還元電位を低下させることを実現させたが、被処理水を循環させるうちに黒い水となってしまうという新たな問題が発生した。
【0005】
そこで、本発明は、被処理水が循環する間に黒い水となってしまうという問題を解決することができる水の磁気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる問題を解決するため、本発明者等が種々研究・実験した結果、被処理水を循環させるあいだに黒い水となってしまう原因は、循環ポンプによる高い吐出圧で流れる処理水の脈動で磁石に踊り(振動)が生じて磁石の表面のメッキが剥離していることに起因していることを突き止めた。即ち、磁力が強い希土類焼結磁石例えばネオジム磁石は、主成分の内70%近くが鉄であるため錆易いことから、防錆のためのアルカリメッキ例えばNi電解メッキなどの表面処理を施すことが必要とされているが、この防錆のためのNi電解メッキが被処理水のポンプからの吐出時の脈動などで円筒磁石そのものが内筒管内で踊ることで衝撃を受けて傷付き剥離することにより錆が発生したりすることに起因していることを知見した。
【0007】
本発明にかかる水処理装置は、かかる本発明者独自の知見に基づくものであり、円筒体の円環部分に軸心と平行にN極とS極とが配置され軸心と直交する面に沿ってN極とS極とを通る円を描く磁束が分布するように着磁された円筒形磁石と、円筒形磁石を収容する常磁性体から成る内筒管と、内筒管の両端を封止して円筒形磁石を密封する水密栓と、内筒管を収容し且つ被処理水の導入口を有する蓋部材及び被処理水の排水口を有する蓋部材で両端開口が閉塞されて内筒管との間に管軸方向に被処理水を通過させる流路を形成する外筒管と、内筒管の端部に嵌合され外筒管並びに蓋部材との間に被処理水が通過する空間を保持させる管端部材とを備え、内筒管と外筒管との間の流路に被処理水を円筒形磁石の軸心方向に沿って流通させるようにしている。
【0008】
ここで、発明の水処理装置において、管端部材は内筒管の端部に嵌合されて水密栓を包んだ状態で接合される管端キャップ部と、外筒管の内周面との間に径方向の間隔を保持させる径方向突起部と、蓋部材と管端キャップ部との間に導入口または排水口と連通する空間を確保させる軸方向突起部とを備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の水処理装置において、内筒管はアルミニウム製パイプ、外筒管は塩化ビニル製パイプであることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の水処理装置において、水密栓はシリコンゴム製のテーパ型の栓体であり、テーパ形状部分が内筒管内に押し込まれることによって弾性変形することで内筒管に対して締まり嵌めされることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水処理装置によれば、円筒形磁石が内筒管に収容され且つ封止された上に、内筒管を外筒管内に固定すると共に内筒管と外筒管との間に被処理水を流す流路を形成して、円筒形磁石の磁束分布が沿う面と直交する方向に被処理水を確実に流して被処理水の酸化還元電位を一層効率良く低下させることを可能にしているので、被処理水の磁気処理による酸化還元電位を短時間のうちに効率良く低下させることができる。しかも、循環ポンプによる高い吐出圧で流れる被処理水の脈動が生じても、円筒形磁石の周りに水が通過しない上に円筒形磁石が踊ることがないので、円筒形磁石が破損してしまったり防錆のための塗膜/メッキが傷付いて剥離したりすることがないので、錆が発生したりすることを防いで、循環する被処理水が黒く変色することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る水処理装置の実施形態の一例を示す縦断面図である。
【
図3】内筒管と管端部材との嵌合態様の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】実施例における水処理の仕組みの概略構成を示す模式図である。
【
図6】管端部材の他の実施形態を示す図であり、(A)は前方斜め上から見た斜視図、(B)は側面図である。
【
図7】管端部材のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1から
図4に本発明に係る水処理装置の実施形態の一例を示す。
【0015】
本実施形態の水処理装置は、円筒形磁石1を常磁性体から成る内筒管2に収容し、さらに内筒管2を外筒管4内に納めて内筒管2と外筒管4との間の径方向の空間23を被処理水22を通過させる流路として構成するものである。つまり、円筒形磁石1を収容する内筒管2の周りに円筒形磁石1の軸心方向に沿って被処理水22を流通させるようにしている。
【0016】
ここで、本実施形態の水処理装置は、円筒形磁石1が被処理水22と直接に接触しない防水構造が採用されている。具体的には、円筒形磁石1は内筒管2に収容され、さらに内筒管2の両端の開口部に水密栓3が嵌められて水封されている。このことで、磁力線の強度が減少する現象が懸念されるが、円筒形磁石の径が太くなればなるほど相当量の磁力線が得られることから、防水構造を採ることに因る減磁の問題は解消できる。
【0017】
さらに、本実施形態の場合、内筒管2の端部には、外筒管4そのもの並びに外筒管4の両端の蓋部材13、14との間に、被処理水22が通過する空間23並びにこれと連通する軸方向の前後の空間11、12を空けるように当該内筒管2を外筒管4に対し保持させる管端部材5が嵌合されている。そして、両端の管端部材5によって、内筒管2の両端の開口と水密栓3が覆われてから、外筒管4の両端開口を閉塞する蓋部材13、14の間で挟持されるようにして内筒管2が外筒管4の内部に固定されるように収容されている。したがって、内筒管2は、管端部材5を介して外筒管4の両端の蓋部材の間に挟み込まれて軸方向に固定されるので、内筒体2並びに円筒形磁石1が被処理水の吐出圧の変動によって踊る(揺れる)ことがない。
【0018】
内筒管2は、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を含む)や銅、あるいはステンレスなどの常磁性体(非磁性体とも呼ぶ)からなる管材の使用が好ましく、本実施形態の場合にはアルミニウム管が採用されている。内筒管2は、例えば塩ビ管で構成しても良いが、この場合には強度上肉厚にせざるを得ないので、外に漏れる磁束が弱まる虞がある。そこで、可能な限り肉薄の内筒管とするためには、アルミニウム管の採用が好ましい。
【0019】
他方、外筒管4は、内筒管2を格納すると共に内筒管2との間に被処理水22を通過させる流路23を形成するためのものであることから、被処理水22の輸送を可能とする材料であれば実施可能であり、本実施形態の場合、塩化ビニルで構成されている。この場合、非金属であるため、例えばアルミニウム製の内筒管2を用いる場合に異種材料となるが電池を構成することがなく、電池腐食などが起こることがないし、さらにアルミニウム製内筒管2と塩化ビニル製外筒管4との間に電位差腐食(電触)や被処理水22の流れを阻害する要因となるカルキの蓄積などを防ぐことができる。本発明者は、実験により、外筒管4をステンレスパイプ、内筒管2をアルミニウム管で構成した場合、電位が高位にあるアルミニウム製内筒管2の外周面に電位差腐食(電触)が生じ、さらにその部分にカルキが蓄積されることを突き止めた。本実施形態の場合、このような電位差腐食(電触)やカルキの蓄積などを防ぐことができる。なお、外筒管4としては、塩化ビニル管に限られるものではなく、磁性材料によって形成されるようにしても良く、或いは、非磁性材料によって形成されるようにしても良い。
【0020】
外筒管4は、両端開口が例えば塩化ビニル製の導入口16を有する一方の蓋部材13及び排水口17を有する他方の蓋部材14で閉塞され、内筒管2を収容して内筒管2との間に管軸方向に被処理水22を通過させる流路23を形成する。ここで、塩化ビニル製の外筒管4と蓋部材13、14との接合は、例えば塩ビ溶接19やホットメルト接着法などで接合することが好ましい。なお、本実施形態では、各蓋部材13、14には、導入口16あるいは排水口17の一部を区画する雄ねじ部15が一体的に形成されると共に、ホースニップル18がそれぞれねじ込まれて
図5に示す水処理システムの循環路に接続し易い構造とされている。
【0021】
円筒形磁石1は、例えばネオジム磁石,サマリウムコバルト磁石,ネオジムボンド磁石の使用が好ましく、より好ましくはネオジム磁石の使用である。ここで、ネオジム磁石は主成分の内70%近くが鉄であるため錆易いことから、防錆のためのアルカリメッキ例えばNi電解メッキなどの表面処理を施すことが必要とされる。
【0022】
円筒形磁石1は、円筒体の円環部分に軸心と平行にN極とS極とが配置され軸心と直交する面に沿ってN極とS極とを通る円を描く磁束が分布するように着磁される(
図4)。つまり、円筒形磁石1の磁束分布(また、磁場の方向,磁場ベクトルの向き)は、当該円筒形磁石1の軸心方向と直交する面に沿って形成される。
【0023】
ここで、水密栓3は、内筒管2の内部に被処理水22が浸入しないように封止することができるものであれば良く、特定の材料及び形状・構造に限定されるものではないが、本実施形態の場合、例えばテーパー型のシリコンゴム製の栓体(プラグ)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)などの樹脂製栓体若しくはクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム製栓体等の使用が好ましく、なかでもシリコンゴム製のテーパー型の栓体の使用が好ましい。この場合、テーパー型のプラグ3を内筒管2の開口部から内部に圧入する(押し込む)ことで、締まり嵌めとなるようにして確実に密封することが可能である。なお、ロータリーカッターなどで切り落とされたアルミニウム製の内筒管の管端開口部には幾分内側へ向く返りが存在するので、この返りによってテーパー型のシリコンゴム製水密栓3が引っかかり、さらに離脱することなく強固に固定されることとなる。また、水密栓3は、プラグ形状に特に限定されず、場合によっては内筒管2の端部外周面までも覆うキャップ構造でも良い。
【0024】
本発明において、管端部材5は、被処理水22にかかるポンプの吐出圧によって内筒管2が蓋部材14に押しつけられて排水口17が塞がれるのを防ぐため、少なくとも排水口17側には配置されることが必要である。一方、使用者が間違って排水口側のホースニップル18を循環路の上流側に接続しないとも限らないし、またポンプの吐出圧の脈動で相対的に負圧となることで導入口16側が塞がれるやもしれないので、内筒管2の両端に備えることが好ましい。そこで、本実施形態の場合、内筒管2の両端から軸方向外側へ突出する軸方向突起部10が外筒管4の蓋部材13、14との間で軸方向に挟持されるようにして固定されることで、内筒管2が軸方向に移動できないように固定されると共に、径方向にも振動しないように保持される。勿論、円筒磁石1は内筒管2に収容され水密栓3で密封されていることから、内筒管2ごと全体的に振動したとしても、円筒磁石1が被処理水22に触れることがないので、円筒磁石1の表面のメッキや磁石素材が被処理水22に溶け込むことはない。したがって、内筒管2は必ずしも管端部材5を介在させて外筒管4の蓋部材13、14との間で軸方向に挟持させなくとも良い。
【0025】
また、外筒管4の内周面と内筒管の外周面との間に形成される空間23は、流入する被処理水22の流れを均一化するために、管軸と直交する面内の間隙を周方向に均一なものとすることが好ましい。このため、管端部材5は、外筒管4の内周面と内筒管2の外周面との間の空間23の間隙をほぼ一定に保持するものとして機能することが好ましい。そこで、径方向突起部9は、内筒管2の外周面よりも径方向外側へ突出すると共に外筒管4の内側に嵌合できる程度の隙間嵌めとなるようなものとして機能するように設けられている。
【0026】
ここで、管端部材5は、内筒管2の防水構造を補助するものとしても機能することが好ましい。そこで、本実施形態の管端部材5は、内筒管2の端部に嵌合されて水密栓3を包んだ状態で接合される管端キャップ部6と、外筒管4の内周面との間に径方向の間隔を保持させる径方向突起部9と、蓋部材13、14と管端キャップ部6との間に導入口16と連通する空間11または排水口17と連通する空間12を確保させる軸方向突起部10とを備えるようにしている。例えば、本実施形態の場合、
図2に示すように、管端キャップ部6の前端面(蓋部分)8に軸心を通過する径方向外側へ延びる棒状のスペーサ7を備え、スペーサ7の管端キャップ部6の外周面よりも径方向外側へ突出する部分を径方向突起部9として機能させ、管端キャップ部6の前端面8よりも軸方向外側即ち蓋部材13あるいは14側へ突出する部分が軸方向突起部10として機能させるようにしている。
【0027】
ここで、ネオジウム磁石はキューリー点が約330℃であることから一般的には80℃以下での使用が条件となる。このことから、管端部材5と内筒管2との接合には、加熱を必要とする接合手段は好ましくなく、非加熱下に接合可能なものの採用が好ましい。そこで、本実施形態では、管端部材5は内筒管2の端部にがたつきなく嵌合させるために、水密栓3を圧入した内筒管2の端部の外周面に綿テープ20(あるいは被処理水22に有害な成分例えば可塑剤などが溶解しない素材によって作られたその他の材質のテープ類)を適宜厚みに巻いてから圧入することで密着させている。しかし、これに特に限られるものでは無く、例えば
図3に示すように、水密栓3を圧入した上で、さらにラテックス製やゴム製のサック21を内筒管2の端部に被せ、その上で管端部材5の管端キャップ部8を嵌合させても良いし、場合によっては管端キャップ部8と内筒管2とを被処理水22に有害な成分が溶出しない非加熱性の接着剤(図示省略)などによって接合するようにしても良い。
【0028】
円筒形磁石1の磁束分布の態様も踏まえ(
図4参照)、円筒形磁石1の軸心方向に沿う方向、言い換えると、円筒形磁石1の磁束分布(また、磁場の方向,磁場ベクトルの向き)が沿う面と直交する方向に被処理水22を流す。
【0029】
内筒管2内に収容される円筒形磁石1は、1本ものとして構成されても良いが、場合によっては複数本で構成するようにしても良い。例えば、実施例のように、3本の円筒形磁石を適宜組み合わせて所望の磁力を得るようにしても良い。勿論、この例に特に限られるものではなく、必要とされる磁場の強さが考慮されるなどした上で、適当な長さあるいは個数に適宜設定される。
【0030】
また、外筒管4と内筒管2との間の空間23の大きさ(具体的には、空間・流路23の軸心方向と直交する断面積)は、円筒形磁石1によって形成される磁場(言い換えると、磁気力が作用する範囲)を被処理水22が流通するようにするため、円筒形磁石1によって形成される磁場の強さが考慮され、円筒形磁石1から生じる磁気力が作用する範囲(尚、磁気力の相応の強さが確保され得る範囲であることが好ましい)を大きく上回らないように設定される。
【0031】
円筒形磁石1が配設されることによって磁場が形成され、磁気力が作用する内筒管2の外を被処理水22が通過すると、磁力(及び、磁束密度と被処理水22の流速とに比例する強度を備えるものとして誘起される電流)の作用によって被処理水22の酸化還元電位が下げられる。
【0032】
すなわち、上述の水処理装置により、円筒形磁石1によって磁場が形成されて磁力線及び電磁波が放出され、この磁力線及び電磁波に被処理水22が曝されることによって当該被処理水22がマイナスイオン化し、酸化還元電位が低い水素イオン水が生成される。
【0033】
ここで、水分子は一般に二個の水素イオン(H-)と一個の酸素イオン(O+)とからなる電気的双極子(即ち、両端に+電荷と-電荷とを持つ分子状イオン塊)である。普通の水(言い換えると、特別の処理が施されることなく自然の状態として存在する水)には種々の物質イオンが存在しているため、水分子同士,陽イオンと水分子,または陰イオンと水分子との結合体とみなすことができる(尚、「水和」と呼ばれる)。
【0034】
フレミング左手の法則により、水の流速が大きくなると、電流に相当するイオン塊の運動速度が大きくなって磁場との相互作用が強くなる。そのため、或る速度以上になると水和物中の水和陰イオン塊が真っ先に分離して陰イオンと水分子とになって流水中に陰イオンが放出される。水和陽イオンは水和力が強いので流速が増しても大部分はそのまま保存されて陽イオンを放出するには至らない。
【0035】
すなわち、磁場の中を或る速度以上で通過した水は多くの陰イオンを含有することになる。したがって、上述の水の処理方法や水処理装置による処理が施された被処理水22は、負の電荷を帯びた「陰イオン(マイナスイオン)」を多く含む、還元性が極めて高く、酸化還元電位が低い水(「酸化還元イオン水」と呼ぶ)になっている。
【0036】
流路23における磁束密度(残留磁束密度)は、300ミリテスラ(3000ガウス)以上であることが好ましく、450ミリテスラ(4500ガウス)以上であることが一層好ましく、600ミリテスラ(6000ガウス)以上であることが更に好ましく、800ミリテスラ(8000ガウス)以上であることが更に一層好ましい。したがって、円筒形磁石1として、ネオジム磁石の使用が可能となることは極めて効果である。
【0037】
以上のように構成された水処理装置によれば、内筒管2の中に円筒形磁石1を納めて水封することで、被処理水22に円筒形磁石1を晒すことがなくなるので、ポンプに起因する被処理水の脈動が起きても、円筒形磁石1の塗膜/メッキが傷付いて塗膜/メッキが剥離したり錆が発生したりすることを防いで、被処理水22の汚染を防止することが可能になると共に装置の劣化を防止することが可能になる。したがって、円筒形磁石1として強力なネオジム磁石を使用することができる。また、外筒管4を塩ビ製、内筒管2をアルミニウム製で構成すれば、異種金属間の電池作用による腐食が起こらないし、カルキ成分の蓄積も防ぐことができる。さらに、外筒管4の導入口13から流入した被処理水22は、内筒管2の端部の管端部材5の管端キャップ部6に衝突してあるいは管端キャップ部6の形状に沿って被処理水の流れの向きを軸方向と直交する外向きの径方向に変えてから内筒管2の周囲を内筒管2に沿って軸方向に流れる。つまり、被処理水22は円筒形磁石1を収容する内筒管2の周りに円筒形磁石1の軸心方向に沿って流れることにより、円筒形磁石1の磁束と直交するように鎖交しながら流通するので、最大効率で磁気処理が行われる。このため、簡単な構成でありながらも被処理水22の酸化還元電位を短時間のうちに効率良く低下させることができる。
【0038】
上述の水処理装置による処理が施された被処理水22である酸化還元イオン水は、多様な分野での利活用が考えられ、具体的には例えば下記のような利活用が考えられる。
1)鉄管や亜鉛管等の水道管などの錆の除去や防錆
2)種々の材料の腐食の防止
3)タンクなどに発生する塩素などの消去
4)生活用水に対する細菌類の発生の防止や除去
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
【0040】
例えば、上述の実施形態では、円筒形磁石1は、内筒管2の中にそのまま直に収容されて水密栓3によって密封されているが、さらに必要あれば、例えば防水性フィルムや防水袋などのパッキング(図示省略)で覆った上で内筒管2に収容されるようにしても良い。
【0041】
また、水密栓3は、上述の実施形態のシリコンゴム製のテーパー型の栓体(プラグ)に限られず、場合によっては樹脂製あるいはゴム製の栓体やキャップを用いるようにしても良い。樹脂製あるいはゴム製の栓体とする場合、上述のシリコンゴム製の水密栓3と同様にテーパー型としても良いし、場合によっては軸方向に幾重もの襞を備えるラビリンス構造を採用しても良いし、場合によっては内筒管の内径よりも僅かに大きな直径部分を有する栓体としても良い。この場合、圧入することで襞部分あるいは締め代部分が弾性変形することで締まり嵌めとなるので密封することが可能である。
【0042】
また、管端部材5は上述の実施形態にものに特に限定されるものではなく、例えば
図6(A)及び(B)に示すように、内筒管2の端部に嵌合される管端キャップ部6と、該管端キャップ部6の外周面に軸心と平行に配置された複数本の棒状のスペーサ7とを備えると共に、各棒状のスペーサ7の先端を管端キャップ部6の先端面8からさらに前方へ(換言すれば、外筒管4の蓋部材13あるいは蓋部材14へ向けて)突出させることにより、外筒管の蓋部材13あるいは蓋部材14との間並びに外筒管4の内周面と内筒管2の外周面との間に空間11,23,12を空けて保つようにして、被処理水22にかかるポンプの吐出圧によって内筒管2が蓋部材13、14の内側の面に押しつけられても導入口16あるいは排水口17を塞がないように内筒管2を支持するようにしても良い。つまり、本実施形態のスペーサ7は、全体が内筒管2の外周面から外筒管4の内周面側へ向けて突出する径方向突起部(
図1の径方向突起部9に相当する)9’として機能すると共に、管端キャップ部6の先端面8よりも蓋部材13あるいは蓋部材14へ向けて突出する部分が軸方向突起部(
図1の軸方向突起部10に相当する)10’として機能するものである。この場合、管端キャップ部6の先端面8は平坦な面とする必要がないことから、図示していないが、半球面や砲弾型などの曲面とすることができる。この場合には、被処理水22の流れに渦や淀みが生ずることなく整流のまま通過させることができる。
【0043】
さらには、管端部材5は、スペーサ7を円筒管によって構成し、管端キャップ(管端キャップ部に相当)6とで二重管構造にして一体化するようにしても良い。具体的には、
図7に示すように、内筒管2の端部に嵌合される管端キャップ6と、さらにその外側に嵌合される管状スペーサ7との二重管構造とされ、管端キャップ6に内筒管2の端部を嵌合させ、管端キャップ6の先端面8の内側の面に当接するまで押し込まれた状態で、接着剤で固着される。管状スペーサ7には、管端キャップ6の先端面8よりも蓋部材13側あるいは蓋部材14側へ突出する部位(即ち、軸方向突起部10”に相当する部位)に切り欠き24あるいは連通孔を1つ以上好ましく複数設けて被処理水22が導入口16から流路23へあるいは流路23から排水口17へ通過する開口を設けると共に、外周面に外筒管4の内周面との間の間隔を一定に保持させる径方向突起部9”を複数本例えば好ましくは3本以上管軸と平行に配置するように構成している。管状スペーサ7の蓋部材13あるいは蓋部材14に当接する軸方向突起部10”の内側には、管端キャップ6の先端面8並びに蓋部材13あるいは蓋部材14の内側の面との間で、蓋部材13の導入口16と連通する空間11または蓋部材14の排水口17と連通する空間12が構成され、外筒管4内に収容された状態で蓋部材13と蓋部材14とに軸方向突起部10”が当接して内筒管2を保持するとともに内筒管2と外筒管4との間の流路23と導通させる構造とされている。なお、この実施形態では、蓋部分を有する管端キャップ6と管状スペーサ7との2重管構造とされているが、場合によっては内側の管端キャップを単なる円筒管とし、その開口部を端板で塞いで簡易な遮蔽構造としても良い。
【0044】
さらに、上述の実施形態の場合、管端部材5は、管端キャップ6とスペーサ7とが一体成形あるいは接合などで一体化された例を挙げて主に説明したが、前述の構造には特に限られず、導入口16あるいは排水口17と連通し且つ内筒管2と外筒管4との間の流路23に連通する空間11,12を形成するスペーサ7と、内筒管2の端部を塞ぐ管端キャップ6とを別部材で構成し、互いに分離された状態のまま使用するようにしても良い。また、管端部材5は、上述の実施形態では内筒管2の端部に予め嵌合された状態で外筒管4内に収容され、両端の蓋部材13、14の間で挟持されるようにして内筒管2を支持させるようにされているが、かかる構造に特に限られず、場合によっては、管端部材5が蓋部材13、14に対して予め接合されあるいは予め蓋部材13、14と一体成形されることによって一体化され、外筒管4に蓋部材13、14を接合する際に各管端部材5の管端キャップ6に内筒管2の端部を嵌合させて支持させるようにしても良い。
【実施例0045】
本発明に係る水処理装置の作用効果を検証するための水処理の実施例を
図5を用いて説明する。
【0046】
本実施例では、下記の仕様を備える水処理装置を含む、
図5に示す仕組みが用いられて水処理が行われた。水処理装置を構成する各部の仕様・諸元は下記の通りであった。
【0047】
〈円筒形磁石1に関する仕様・諸元〉
種類:ネオジム磁石
磁束密度:4500 ガウス
寸法:外径15 mm,内径7 mm,軸心方向長さ100 mm
寸法:外径15 mm,内径7 mm,軸心方向長さ60 mm
個数:100 mm長さ2本、60 mm長さ1本
(内筒管2の軸心方向に沿って直列に配置)
【0048】
〈内筒管2に関する仕様・諸元〉
材質:アルミニウム管
形状:円筒形
寸法:外径18 mm,内径16 mm,軸心方向長さ300 mm
【0049】
〈外筒管4に関する仕様・諸元〉
材質:塩化ビニール管
形状:円筒形
寸法:外径48 mm,内径40 mm,軸心方向長さ320 mm
【0050】
図5に示す仕組みは上記の水処理装置に加えて水槽25とポンプ26とを有し、水槽25に溜められた被処理水22がポンプ26によって毎分70 L の割合(流速1.5m/sec)で水処理装置へと送られる。水槽25には、被処理水22として、48 L の水道水が貯留された。
【0051】
なお、水槽25とポンプ26,ポンプ26と水処理装置,並びに水処理装置と水槽25とはそれぞれ通水管27として塩化ビニル管が用いられて連通する(即ち、被処理水22としての水道水が流通して循環する)ように接続された。なお、通水管27として、内径が19 mm の塩化ビニル管が用いられた。
【0052】
上記設備によって水処理を行うと、処理前と処理後とのそれぞれにおける被処理水22としての水道水の酸化還元電位の計測値として下記の結果が得られた。この結果から、本発明に係る水処理装置によって、水の酸化還元電位が処理前の少なくとも35%程度まで低下することが確認された。
<酸化還元電位の計測値>
処理前 :702 mV
24時間経過時:245 mV
【0053】
しかも、上記水処理を連続的に1年の長期間において行っても、被処理水が黒く変化することもなかった。