(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122183
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】コンクリート製テンプレート、及びコンクリート製テンプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E04B1/41 502B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029586
(22)【出願日】2023-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】594171492
【氏名又は名称】小川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】小川 潔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA02
2E125AA73
2E125AE02
2E125AF03
2E125BA02
2E125BB02
2E125BB22
2E125BD01
2E125CA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建築用テンプレートの製作時の歪や水平設置時の撓みを抑制する。
【解決手段】本発明のコンクリート製テンプレート100は、コンクリート建造物のアンカーボルトや鉄筋の位置決めに用いる。テンプレート100は、板状のテンプレート本体1を備え、テンプレート本体1は、厚み方向に貫通し、アンカーボルトや鉄筋を挿通してその位置決めを行う複数の位置決め孔を有し、プレキャストコンクリートからなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震建造物における免震部材取付けボルトや、一般的な建造物のアンカーボルトや鉄筋の位置決めに用いるテンプレートであって、板状のテンプレート本体を備え、前記テンプレート本体は、厚み方向に貫通し、アンカーボルトや鉄筋を挿通してその位置決めを行う複数の位置決め孔を有し、プレキャストコンクリートからなることを特徴とするコンクリート製テンプレート。
【請求項2】
前記位置決め孔が、アンカーボルトを挿通するものであり、
基端部が前記テンプレート本体を貫通するようにして前記テンプレート本体に埋設されるとともに前記テンプレート本体から上方、又は下方へ突設された長ナットを備え、
前記長ナットの雌ねじ孔が前記位置決め孔を構成する請求項1に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項3】
前記長ナットは、テンプレート本体に埋設される前記基端部外周面に鍔状に設けられる一、もしくは複数のシアリング、又は前記基端部外周の全周に亘る凹条を有する請求項2に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項4】
前記長ナットの先端に対し進退可能に螺合するレベル調整ボルトを備える請求項2に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項5】
前記テンプレート本体が、鉄筋を備えるか、又は繊維補強コンクリートである請求項1に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項6】
請求項2に記載のコンクリート製テンプレートの製造方法であって、
上方に開口し、水平面状をなす底面と、前記底面を囲繞する側壁とから扁平箱状に形成された型枠に、前記長ナットの基端を下側にして前記長ナットを立置する長ナット立置工程と、
前記型枠にコンクリートを打設する打設工程と
を備えるコンクリート製テンプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震建造物における免震部材取付けボルトや、一般的な建造物におけるアンカーボルトや柱主筋の位置決めを行うためのテンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震建造物における免震部材取付けボルトや一般的な建造物における鉄骨柱のアンカーボルトや、鉄筋コンクリート建造物の柱主筋(鉄筋)の位置決めには、鋼板にアンカーボルトや主筋を挿通する位置決め用の貫通孔を設けたテンプレートが広く用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1では、鋼板製柱の下端に連結される柱用アンカーボルトの上端を鋼板製のテンプレートに取り付けた柱用アンカーボルトの位置決め治具が開示されており、特許文献2では、プレキャストされた上部側の主柱の鉄筋と現場打ちコンクリートの鉄筋を連結する鋼板製のテンプレートが開示されている。
【0004】
また、
図10は、本出願人が積層ゴムや滑り支承を備えた免震装置を現場打ち込みの下側基礎部に取り付ける際に、取付ボルトの位置決めに用いる鋼板製テンプレート900を示している。このテンプレート900は、鋼鈑から切り出したコ字材901a,901aを、継手板902等を介して溶接した矩形リング状のテンプレート本体901を有し、その下面に溶接した長ナット(長ナット)903の下端にアンカーボルト903aを螺結し、これをテンプレート本体901の上面が免震装置下部基礎A2の上面と面一になるようにして基礎部のコンクリートに埋設し、該長ナット903に上端側から免震装置A1を取り付けるための取付ボルトA5を螺結して、免震装置のフランジA11を取り付けるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-61803号公開公報
【特許文献2】特開2017-66591号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、
図10の鋼板製テンプレート900は、テンプレート本体901を鋼鈑からガスやレーザーにより切り出す際や、一対のコ字材901a,901aをリング状に溶接したり長ナット903を鋼鈑に溶接したりする際等に鋼板にひずみが生じるという問題が有る。
また、鋼板製テンプレート900は水平に支持した際に重みで撓むという問題がある。そのため、本出願人は、
図10(b)に示すように、先端に上下に進退するボルト904aを設けた仮設アングル架台904を基礎部のコンクリートに多数立設し(
図10の例では24個、符号904が、その支持位置を示す)、当該ボルト904aによりテンプレート900をレベル調節している。仮設アングル架台904の立設とテンプレート900のレベル調節に過大な工数を要するだけでなく、仮設アングル架台904の設置と免震装置A1の取り付けとで2度の現地作業を要するため、作業者の負担が大きいという問題が有る。
さらに、鋼板製のテンプレート900は、防錆処理が必要であるという問題や、材料ロスが多いという問題も有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製作時の熱歪や水平設置時の撓み、加工工数や現地作業回数を抑制可能なテンプレートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、免震建造物における免震部材取付けボルトや一般的な建造物のアンカーボルトや鉄筋の位置決めに用いるテンプレートであって、板状のテンプレート本体を備え、前記テンプレート本体は、厚み方向に貫通し、アンカーボルトや鉄筋を挿通してその位置決めを行う複数の位置決め孔を有し、プレキャストコンクリートからなることを特徴とする。
【0008】
本発明のコンクリート製テンプレートは、このようにテンプレート本体をプレキャストコンクリート製にしたので、ガス切断や溶接加工がなく、加工によるテンプレート本体の変形を抑制できる。またテンプレート本体は、プレキャストコンクリート製にすることで重みによる撓みを抑制できるので、仮設アングル架台の埋設工程を省略できる。
【0009】
本発明のコンクリート製テンプレートは、前記位置決め孔が、アンカーボルトを挿通するものであり、基端部が前記テンプレート本体を貫通するようにして前記テンプレート本体に埋設されるとともに前記テンプレート本体から上方、又は下方へ突設された長ナットを備え、前記長ナットの雌ねじ孔が前記位置決め孔を構成するものを含む。このように、長ナットの基端部をテンプレート本体に埋設する構成とすることで、テンプレート本体のプレキャスト時に同時に長ナットを取り付けられる。
【0010】
前記長ナットは、テンプレート本体に埋設される前記基端部外周面に鍔状に設けられる一、もしくは複数のシアリング、又は前記基端部外周の全周に亘る凹条を有することが好ましい。こうすることで、長ナットがテンプレート本体から抜け落ちることを抑制できる。
【0011】
本発明のコンクリート製テンプレートは、前記長ナットの先端に対し進退可能に螺合するレベル調整ボルトを備えることが好ましい。こうすることで、テンプレート本体のレベル調節を容易に行うことができる。
【0012】
前記テンプレート本体が、鉄筋を備えるか、又は繊維補強コンクリートであることが好ましい。こうすることで、テンプレート本体の靭性を高めることができる。
【0013】
本発明は、上述したナットをテンプレート本体に埋設したコンクリート製テンプレートの製造方法であって、上方に開口し、水平面状をなす底面と、前記底面を囲繞する側壁とから扁平箱状に形成された型枠に、前記長ナットの基端を下側にして前記長ナットを立置する長ナット立置工程と、前記型枠にコンクリートを打設する打設工程とを備えるコンクリート製テンプレートの製造方法を含む。
このように、型枠の底面に長ナットを立置した状態で型枠にコンクリートを流し込んでテンプレート本体をプレキャストすることで、テンプレート本体のプレキャストと同時に長ナットをテンプレート本体に連結することができる。また、型枠の底面がテンプレート本体の上面や下面を形成するので、当該面を平滑に仕上げることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のコンクリート製テンプレートによれば、加工による変形や重みによるテンプレート本体の撓みを抑制して、アンカーボルトや主筋の施工精度を高めることができる。また、加工工数や現場作業工数を低減でき、材料ロスを抑制できるので、施工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)平面図の一例、(b)(a)におけるX-X線断面図である。
【
図2】
図1(b)の長ナットを仮ボルトで塞いだ状態の拡大図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの使用例を示す部分透過側面図である。
【
図4】本発明に係るテンプレート本体の変形例を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態のコンクリート製テンプレートに用いる長ナット2種の縦断面図である。
【
図6】本発明に係るコンクリート製テンプレートを下部基礎に埋設した状態を示す側面視断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの製造方法を示す説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)使用状態を示す側面図(b)(a)におけるY-Y線断面図、(c)平面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)使用状態を示す側面図(b)(a)におけるZ-Z線断面図、(c)平面図である。
【
図10】従来のコンクリート製テンプレートを示した(a)平面図、(b)側面図の一例である。
【
図11】(a)下部基礎に従来の鋼板製のテンプレートを埋設した場合のかぶり厚さを示す説明図、(b)下部基礎にコンクリート製のテンプレートを埋設した場合のかぶり厚さを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレート(以下単に「テンプレート」ともいう)100を示している。テンプレート100は、
図3に示すように、免震建造物に取り付けられる滑り支承式や積層ゴム式の免震装置A1を支持する免震装置下部基礎(以下、単に「下部基礎」ともいう)A2に埋設され、免震装置A1を下部基礎A2に固定する取付ボルトA5の位置精度を高めるために用いられる。
テンプレート100は、
図1に示すように、板状のテンプレート本体1と、テンプレート本体1の下方へ突設された複数の長ナット2とを主に備える他、長ナット2に対し下方(先端側)から螺入されるレベル調整ボルト31、及びアンカーボルト32とを備えている。
【0018】
テンプレート本体1は、
図1に示すように、プレキャストされたコンクリートから面取り正方形の中央にこれに相似な正方形の開口11を設けたリング状に形成されており、積層ゴム式の免震装置A1の免震装置下部基礎A2に埋設されるものである。本実施形態では、長ナット2の雌ねじ孔2aが、特許請求の範囲における厚み方向に貫通する位置決め孔を構成している。
【0019】
また、テンプレート本体1は、下面側近傍に下端筋12が埋設されている。下端筋12は、テンプレート本体1の正方形の4辺に平行な主筋12a,12bと、テンプレート本体1の各辺の幅方向に延びる配力筋12eと、開口11、及び周縁の角部に跨がるL字筋12c、12dとを備えている。
ただし、テンプレート本体1は、下端筋12を設ける代わりに、繊維補強コンクリートを用いてもよい。補強繊維としては、鋼繊維や炭素繊維の他、アラミド繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維等の樹脂繊維を用いることができる。
尚、
図1において二点鎖線で示した符号A4は、アングル材からなる吊持ち用の治具である。
【0020】
長ナット2は、
図5(a)に示すように、外周面に溶接等により固着される上下2枚の板リング状のシアリング23,24を備えている。上側のシアリング23は、長ナット2の上端部(基端部)に、下側のシアリング24は、上側のシアリング23から下方にやや離間して設けられている。長ナット2は、上側のシアリング23の上面がテンプレート本体1の上面と面一に、下側のシアリング24の下面がテンプレート本体1の下面と面一に位置するようテンプレート本体1に埋設されており、これにより、長ナット2はテンプレート本体1からの脱出が防止されている。
長ナット2は、軸方向に雌ねじ孔2aが貫通しており、上方から取付ボルトA5が下方から雄ねじボルト3aが螺結するよう構成されている。
【0021】
図5(b)は、第1実施形態の変形例に係る長ナット2Aを示している。長ナット2Aは、機械加工や、鍛造、鋳造等により、全体が一体に形成され、外周面の全周に亘って設けられた凹条25Aと、凹条25Aの上側に隣接し長ナット2の上端縁に位置するシアリング23Aと、凹条25Aと長ナット2の下端の間の全長に亘る大径部24Aとを備えている。長ナット2Aは、上側のシアリング23Aの上面がテンプレート本体1の上面と面一に、大径部24Aの上面24Aaがテンプレート本体1の下面と面一に位置するようテンプレート本体1に埋設されており、これにより、長ナット2Aはテンプレート本体1からの脱出が防止される。
【0022】
レベル調整ボルト31は、
図2に示すように、頭のない棒状の雄ねじボルト3aと、雄ねじボルト3aの下端に、ナット3b,3bにより挟持された孔の開いた板状の定着板3cと、雄ねじボルト3aの中間位置に溶接されたレベル調整ナット3dとを備えている。
【0023】
アンカーボルト32は、レベル調整ボルト31と同様に、雄ねじボルト3aと、ナット3b,3bにより挟持された孔の開いた板状の定着板3cとを備える。アンカーボルト32は、レベル調整ナット3dは備えない。
【0024】
図2の例では、2本のレベル調整ボルト31と5本のアンカーボルト32の合計7本のボルトが、レベル調整ボルト31を両端にして、テンプレート本体1の4つの側辺に沿って並べられている。テンプレート100は、テンプレート本体1の4隅に位置する計8本のレベル調整ボルト31の下端を接地させ、適宜のレベル調整ボルト31のレベル調整ナット3dを回動することで、テンプレート本体1のレベルを調節可能に構成されている。
【0025】
(製造方法)
テンプレート100を製造する際には、
図7(a)に示すように、テンプレート本体1の形状に合わせて、鋼鈑や木板により形成された型枠A3の底面A31に、長ナット2の上端、及び上側のシアリング23が当接するようにして、底面A31に長ナット2を立て置き、下端筋12(
図7においては、不図示)を型枠A3内に配設する。この状態で
図7(b)に示すように、コンクリートCを打設する。こうすることで、テンプレート本体1の打設と同時に、テンプレート本体1に長ナット2を連結できる。また、型枠A3の底面A31によりテンプレート本体1の天端面1aが形成されるので天端面1aを平滑にできる。
【0026】
(施工方法)
こうして形成したテンプレート100は、免震装置A1を取り付ける下部基礎A2の打設時に、下部基礎A2内に埋設する。テンプレート100は、免震建造物の免震層A7の床(スラブ)A71上に設置された下部基礎A2の型枠(不図示)内に、適宜の配筋を施したあと、治具A4をワイヤにより吊り下げて型枠内に設置する。テンプレート100の長ナット2は、
図2に示すように、内部にコンクリート等が侵入しないよう、仮ボルトA6で塞いでおく。テンプレート100は、予めレベル調整ボルト31の下端が床スラブA71に当接する長さにして、これを支持点として床スラブA71上に載置し、レベル調整ナット3dを回動させてテンプレート本体1のレベルを微調整する。
【0027】
テンプレート本体1のレベル調節が完了したら、テンプレート100の開口11から下部基礎A2の型枠内にコンクリートを打ち込む。打ち込んだコンクリートは、テンプレート本体1の上面と面一になるよう平滑に仕上げる。
【0028】
下部基礎A2の硬化が完了したら、
図6(a)に示すように仮ボルトA6を外してテンプレート100の上に免震装置A1を載置し、免震装置A1のフランジA11のボルト穴A12と長ナット2の雌ねじ孔2aを合わせ、取付ボルトA5を長ナット2に螺結して、免震装置A1をテンプレート100に連結する。尚、
図6(b)は、長ナット2Aを用いてテンプレート100を取り付けた例である。
【0029】
(変形例)
図4(a)に示したテンプレート100Aは、テンプレート本体1Aがリング状でなく、正方形の板状に形成されている。テンプレート本体1Aの中央にはコンクリートを打ち込む打設孔13が設けられている。打設孔13からコンクリートを打ち込むには、ホッパーやコンプレッサーに繋いだベント管を用いて、テンプレート本体1Aの中央から周辺に向かって放射状にコンクリートを流し込む。テンプレート本体1Aは、下側に空気が溜まりやすいため、複数の空気抜き孔14が設けられている。テンプレート100Aでは、テンプレート本体1Aの端辺に沿って5本ずつ並べたボルト31,32のうち両端から2番目にレベル調整ボルト31を配置している。
【0030】
図4(b)に示したテンプレート100Bは、テンプレート本体1Bが円板状に形成されている。その他の構成は、テンプレート100Aと同様である。
図4(c)は、テンプレート100と長ナット2(ボルト31,32)の取り付け位置が異なる他は、テンプレート100と同様である。
図4(d)に係るテンプレート100Dは、テンプレート本体1Dが円形リング状である他は、テンプレート100と同様である。
【0031】
(効果)
本実施形態のテンプレート100は、テンプレート本体1がプレキャストコンクリート製であるため、従来の鋼板製テンプレートに比べ、以下の利点を有する。
(1)テンプレート本体1の表面の平滑性に優れる。
型枠A3でテンプレート本体1を打設することによる。
(2)テンプレート本体1と長ナット2の溶接が不要である。
(3)型枠を別のテンプレートに転用できるためコスト削減が図れる。
(4)鋼板の溶接に伴う溶接歪みの矯正が不要である。
(5)鋼板のような防錆処理が不要である。
(6)仮設アングル架台904の設置工事を省略できる。
(7)下部基礎A2のコンクリートと一体化する。
(8)下部基礎A2の強度を高めることができる。
これは、下部基礎A2内の配筋にかぶるコンクリートのかぶり厚さを規定値以上にする必要があるところ、鋼板製のテンプレート本体901の場合、
図11(a)に示すように、下部基礎A2内の配筋A21のかぶり厚さtは、配筋A21から鋼板製のテンプレート本体901の下面までであるのに対し、
図11(b)に示すように、コンクリート製テンプレート本体1を用いた場合、かぶり厚さtが配筋A21からテンプレート本体1の上面(下部基礎A2の上面)までとなるため、配筋A21をより高く設置でき、下部基礎A2の強度を高めることができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下の実施形態において、第1実施形態と共通する部材は、第1実施形態と同一符号を用いて説明を省略する。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係るテンプレート200を示している。テンプレート200は、鉄骨柱B1のベースプレートB2を固定するアンカーボルトB3の位置決めに用いる。テンプレート200は、第1実施形態同様、プレキャストコンクリート製の正方形リング状のテンプレート本体1からなる。テンプレート本体1は、中央に正方形の開口11が設けられ、周縁に沿って厚み方向に貫通する位置決め孔202が設けられている。テンプレート200は、鉄骨柱B1を固定する基礎ポスト(不図示)等の打設時に当該基礎ポスト等に埋設される。
【0033】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るテンプレート300を示している。テンプレート300は、柱主筋(鉄筋)C1を下側の柱主筋(鉄筋)C2に連結する際に、柱主筋(鉄筋)C2の位置決めに用いる。テンプレート300は、第1実施形態同様、プレキャストコンクリート製の正方形リング状のテンプレート本体1からなる。テンプレート本体1は、中央に正方形の開口11が設けられ、周縁に沿って厚み方向に貫通する位置決め孔302が設けられている。テンプレート300は、下側の柱主筋(鉄筋)C2を通した状態で床スラブA71に埋設される。
【0034】
以上、本発明は、上述した実施形態に限らず、例えばテンプレート本体に下端筋や補強繊維、レベル調整ボルトを設けなくてもよい。長ナットは、丸ナットに限らず六角ナットでもよいし、シアリングを備えなくともよい。免震装置を上側基礎に取り付けるために、第1実施形態のテンプレートを上下逆にして用いてもよい。この場合、テンプレート本体には、下端筋の代わりに、上面側に上端筋を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
アンカーボルトB3
鉄筋C1
テンプレート100,100A,100B,100C,100D,200,300
テンプレート本体1、1A,1B,1C,1D
位置決め孔(雌ねじ孔)2a
位置決め孔202,302
長ナット2
シアリング23,23A
レベル調整ボルト31
下端筋12
底面A31
側壁A32
型枠A3
【手続補正書】
【提出日】2023-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震建造物における免震部材取付けボルトや、一般的な建造物のアンカーボルトや鉄筋の位置決めに用いるテンプレートであって、板状のテンプレート本体を備え、前記テンプレート本体は、厚み方向に貫通し、アンカーボルトや鉄筋を挿通してその位置決めを行う複数の位置決め孔を有し、プレキャストコンクリートからなり、
前記位置決め孔が、アンカーボルトを挿通するものであり、
基端部が前記テンプレート本体を貫通するようにして前記テンプレート本体に埋設されるとともに前記テンプレート本体から上方、又は下方へ突設された長ナットを備え、
前記長ナットの雌ねじ孔が前記位置決め孔を構成することを特徴とするコンクリート製テンプレート。
【請求項2】
前記長ナットは、テンプレート本体に埋設される前記基端部外周面に鍔状に設けられる一、もしくは複数のシアリング、又は前記基端部外周の全周に亘る凹条を有する請求項1に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項3】
前記長ナットの先端に対し進退可能に螺合するレベル調整ボルトを備える請求項1に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項4】
前記テンプレート本体が、鉄筋を備えるか、又は繊維補強コンクリートである請求項1に記載のコンクリート製テンプレート。
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート製テンプレートの製造方法であって、
上方に開口し、水平面状をなす底面と、前記底面を囲繞する側壁とから扁平箱状に形成された型枠に、前記長ナットの基端を下側にして前記長ナットを立置する長ナット立置工程と、
前記型枠にコンクリートを打設する打設工程と
を備えるコンクリート製テンプレートの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
しかし、
図10の鋼板製テンプレート900は、テンプレート本体901を鋼鈑からガスやレーザーにより切り出す際や、一対のコ字材901a,901aをリング状に溶接したり長ナット903を鋼鈑に溶接したりする際等に鋼板にひずみが生じるという問題が有る。
また、鋼板製テンプレート900は水平に支持した際に重みで撓むという問題がある。そのため、本出願人は、
図10(b)に示すように、先端に上下に進退するボルト904aを設けた仮設アングル架台904を基礎部のコンクリートに多数立設し(
図10の例では24個、符号904
bが、その支持位置を示す)、当該ボルト904aによりテンプレート900をレベル調節している。仮設アングル架台904の立設とテンプレート900のレベル調節に過大な工数を要するだけでなく、仮設アングル架台904の設置と免震装置A1の取り付けとで2度の現地作業を要するため、作業者の負担が大きいという問題が有る。
さらに、鋼板製のテンプレート900は、防錆処理が必要であるという問題や、材料ロスが多いという問題も有る。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製作時の熱歪や水平設置時の撓み、加工工数や現地作業回数を抑制可能なテンプレートの提供を目的とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、免震建造物における免震部材取付けボルトや、一般的な建造物のアンカーボルトや鉄筋の位置決めに用いるテンプレートであって、板状のテンプレート本体を備え、前記テンプレート本体は、厚み方向に貫通し、アンカーボルトや鉄筋を挿通してその位置決めを行う複数の位置決め孔を有し、プレキャストコンクリートからなり、前記位置決め孔が、アンカーボルトを挿通するものであり、基端部が前記テンプレート本体を貫通するようにして前記テンプレート本体に埋設されるとともに前記テンプレート本体から上方、又は下方へ突設された長ナットを備え、前記長ナットの雌ねじ孔が前記位置決め孔を構成することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本発明のコンクリート製テンプレートは、長ナットの基端部をテンプレート本体に埋設する構成とすることで、テンプレート本体のプレキャスト時に同時に長ナットを取り付けられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)平面図の一例、(b)(a)におけるX-X線断面図である。
【
図2】
図1(b)の長ナットを仮ボルトで塞いだ状態の拡大図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの使用例を示す部分透過側面図である。
【
図4】本発明に係るテンプレート本体の変形例を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態のコンクリート製テンプレートに用いる長ナット2種の縦断面図である。
【
図6】本発明に係るコンクリート製テンプレートを下部基礎に埋設した状態を示す側面視断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るコンクリート製テンプレートの製造方法を示す説明図である。
【
図8】本発明の
第1参考形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)使用状態を示す側面図(b)(a)におけるY-Y線断面図、(c)平面図である。
【
図9】本発明の
第2参考形態に係るコンクリート製テンプレートの(a)使用状態を示す側面図、(b)(a)におけるZ-Z線断面図、(c)平面図である。
【
図10】従来のコンクリート製テンプレートを示した(a)平面図、(b)側面図の一例である。
【
図11】(a)下部基礎に従来の鋼板製のテンプレートを埋設した場合のかぶり厚さを示す説明図、(b)下部基礎にコンクリート製のテンプレートを埋設した場合のかぶり厚さを示す説明図である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
次に、本発明の他の
参考形態について説明する。以下の
参考形態において、第1実施形態と共通する部材は、第1実施形態と同一符号を用いて説明を省略する。
(
第1参考形態)
図8は、本発明の
第1参考形態に係るテンプレート200を示している。テンプレート200は、鉄骨柱B1のベースプレートB2を固定するアンカーボルトB3の位置決めに用いる。テンプレート200は、第1実施形態同様、プレキャストコンクリート製の正方形リング状のテンプレート本体1からなる。テンプレート本体1は、中央に正方形の開口11が設けられ、周縁に沿って厚み方向に貫通する位置決め孔202が設けられている。テンプレート200は、鉄骨柱B1を固定する基礎ポスト(不図示)等の打設時に当該基礎ポスト等に埋設される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
(
第2参考形態)
図9は、本発明の
第2参考形態に係るテンプレート300を示している。テンプレート300は、柱主筋(鉄筋)C1を下側の柱主筋(鉄筋)C2に連結する際に、柱主筋(鉄筋)C2の位置決めに用いる。テンプレート300は、第1実施形態同様、プレキャストコンクリート製の正方形リング状のテンプレート本体1からなる。テンプレート本体1は、中央に正方形の開口11が設けられ、周縁に沿って厚み方向に貫通する位置決め孔302が設けられている。テンプレート300は、下側の柱主筋(鉄筋)C2を通した状態で床スラブA71に埋設される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】