(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122198
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20240902BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240902BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240902BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240902BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240902BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240902BHJP
H10K 50/82 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K59/10
G09F9/00 338
G09F9/30 365
H10K71/60
H10K50/12
H10K50/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029620
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 夕慎
(72)【発明者】
【氏名】竹中 貴史
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
(72)【発明者】
【氏名】高山 健
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD44Y
3K107DD53
3K107DD58
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF14
3K107GG32
3K107GG34
3K107GG43
5C094AA43
5C094BA27
5C094GB01
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】設置スペースを縮小する。
【解決手段】一実施形態によれば、製造装置は、表示装置用の処理基板を搬送するための第1搬送路と第2搬送路との間に位置する第1蒸着源及び第2蒸着源を備え、前記第1蒸着源は前記第1搬送路に向けて材料を放射するように構成され、前記第2蒸着源は前記第2搬送路に向けて材料を放射するように構成された第1蒸着チャンバーと、前記第1蒸着チャンバーの前記第1搬送路から搬出された前記処理基板を保持して回転する回転機構を備え、前記第1蒸着チャンバーの前記第2搬送路に前記処理基板を搬出するように構成された第1ローテーションチャンバーと、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置用の処理基板を搬送するための第1搬送路と第2搬送路との間に位置する第1蒸着源及び第2蒸着源を備え、前記第1蒸着源は前記第1搬送路に向けて材料を放射するように構成され、前記第2蒸着源は前記第2搬送路に向けて材料を放射するように構成された第1蒸着チャンバーと、
前記第1蒸着チャンバーの前記第1搬送路から搬出された前記処理基板を保持して回転する回転機構を備え、前記第1蒸着チャンバーの前記第2搬送路に前記処理基板を搬出するように構成された第1ローテーションチャンバーと、
を備える、表示装置の製造装置。
【請求項2】
前記第1蒸着源のノズルは、前記処理基板の法線に対して、前記処理基板の搬送方向に沿って前記処理基板の一端を向くように傾斜し、
前記第2蒸着源のノズルは、前記処理基板の法線に対して、前記処理基板の搬送方向に沿って前記処理基板の他端を向くように傾斜している、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項3】
前記第1蒸着源から放射される材料は、前記第2蒸着源から放射される材料と同一である、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項4】
前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源からそれぞれ放射される材料は、第1材料及び第2材料を含む混合物であり、
前記第1材料と前記第2材料との組成比は、前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源において互いに異なる、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項5】
前記第1材料はマグネシウムであり、前記第2材料は銀であり、
前記第1蒸着源から放射される前記混合物は、前記第2蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項4に記載の表示装置の製造装置。
【請求項6】
前記第1材料はキャリア輸送用のホスト材料であり、前記第2材料は発光用のドーパント材料であり、
前記第1蒸着源から放射される前記混合物は、前記第2蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項4に記載の表示装置の製造装置。
【請求項7】
前記第1材料はキャリア輸送用のホスト材料であり、前記第2材料は発光用のドーパント材料であり、
前記第2蒸着源から放射される前記混合物は、前記第1蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項4に記載の表示装置の製造装置。
【請求項8】
さらに、前記第1搬送路と前記第2搬送路との間に位置する第3蒸着源及び第4蒸着源を備え、前記第3蒸着源は前記第1搬送路に向けて材料を放射するように構成され、前記第4蒸着源は前記第2搬送路に向けて材料を放射するように構成された第2蒸着チャンバーを備え、
前記第1蒸着チャンバーは、前記第1ローテーションチャンバーと前記第2蒸着チャンバーとの間に設置されている、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項9】
さらに、第3蒸着チャンバーと、第4蒸着チャンバーと、前記第3蒸着チャンバーと前記第4蒸着チャンバーとの間に設置された第2ローテーションチャンバーと、を備え、
前記第2ローテーションチャンバーは、
前記第3蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を前記第1搬送路に搬入するように前記処理基板を回転させ、
前記第2搬送路から搬出された前記処理基板を前記第4蒸着チャンバーに搬入するように前記処理基板を回転させる、請求項1に記載の表示装置の製造装置。
【請求項10】
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、
前記処理基板を第1蒸着チャンバーの第1搬送路に搬入し、
前記第1蒸着チャンバーにおいて第1蒸着源から放射された材料を前記処理基板に蒸着し、
前記第1蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を回転させ、
前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーの第2搬送路に搬入し、
前記第1蒸着チャンバーにおいて第2蒸着源から放射された材料を前記処理基板に蒸着し、
前記第1蒸着チャンバーから前記処理基板を搬出し、
前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源からそれぞれ放射される材料は、第1材料及び第2材料を含む混合物であり、
前記第1材料と前記第2材料との組成比は、前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源において互いに異なる、表示装置の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーに搬入する前に、前記下電極の上に、発光層を含む有機層を形成する、請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1材料はマグネシウムであり、前記第2材料は銀であり、
前記第1蒸着源から放射される前記混合物は、前記第2蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項11に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
さらに、前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーに搬入する前に、前記下電極の上に、有機層の一部を形成する、請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1材料はキャリア輸送用のホスト材料であり、前記第2材料は発光用のドーパント材料であり、
前記第1蒸着源から放射される前記混合物は、前記第2蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1材料はキャリア輸送用のホスト材料であり、前記第2材料は発光用のドーパント材料であり、
前記第2蒸着源から放射される前記混合物は、前記第1蒸着源から放射される前記混合物と比較して、前記第1材料の濃度が高い、請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1蒸着源のノズルは、前記処理基板の法線に対して、前記処理基板の搬送方向に沿って前記処理基板の一端を向くように傾斜し、
前記第2蒸着源のノズルは、前記処理基板の法線に対して、前記処理基板の搬送方向に沿って前記処理基板の他端を向くように傾斜している、請求項10に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示装置を製造するための製造装置において、設置スペースの縮小といった要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、設置スペースを縮小することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置の製造装置は、
表示装置用の処理基板を搬送するための第1搬送路と第2搬送路との間に位置する第1蒸着源及び第2蒸着源を備え、前記第1蒸着源は前記第1搬送路に向けて材料を放射するように構成され、前記第2蒸着源は前記第2搬送路に向けて材料を放射するように構成された第1蒸着チャンバーと、前記第1蒸着チャンバーの前記第1搬送路から搬出された前記処理基板を保持して回転する回転機構を備え、前記第1蒸着チャンバーの前記第2搬送路に前記処理基板を搬出するように構成された第1ローテーションチャンバーと、を備える。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、前記処理基板を第1蒸着チャンバーの第1搬送路に搬入し、前記第1蒸着チャンバーにおいて第1蒸着源から放射された材料を前記処理基板に蒸着し、前記第1蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を回転させ、前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーの第2搬送路に搬入し、前記第1蒸着チャンバーにおいて第2蒸着源から放射された材料を前記処理基板に蒸着し、前記第1蒸着チャンバーから前記処理基板を搬出し、前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源からそれぞれ放射される材料は、第1材料及び第2材料を含む混合物であり、前記第1材料と前記第2材料との組成比は、前記第1蒸着源及び前記第2蒸着源において互いに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、製造装置200の一構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、
図11の製造装置200で形成された蒸着膜DFを説明するための断面図である。
【
図13】
図13は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13の製造装置200で形成された上電極UEを説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図13の製造装置200で形成された発光層EMLを説明するための図である。
【
図16】
図16は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図16の製造装置200で形成された上電極UEまたは発光層EMLを説明するための図である。
【
図18】
図18は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
【
図19】
図19は、製造装置100の一構成例を示す図である。
【
図20】
図20は、製造装置100の他の構成例を示す図である。
【
図21】
図21は、第1蒸着チャンバーEV1の他の構成例を示す図である。
【
図22】
図22は、第1蒸着チャンバーEV1の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAよりも外側の周辺領域SAと、を有する表示パネルPNLを備えている。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2、SP3とともに、あるいは副画素SP1、SP2、SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0018】
周辺領域SAには、詳述しないが、ICチップやフレキシブルプリント回路基板を接続するための端子が設けられている。
【0019】
図2は、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。副画素SP1及び副画素SP2が第1方向Xに並び、副画素SP1及び副画素SP3が第1方向Xに並んでいる。
【0020】
副画素SP1、SP2、SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0021】
なお、副画素SP1、SP2、SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1、SP2、SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0022】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1、SP2、SP3においてそれぞれ開口AP1、AP2、AP3を有している。
【0023】
隔壁6は、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、開口AP1、AP2、AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1、SP2、SP3において開口を有するということもできる。
【0024】
副画素SP1、SP2、SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201、202、203を備えている。
【0025】
副画素SP1の表示素子201は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1を備えている。下電極LE1の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR1及び上電極UE1は、隔壁6で囲まれている。有機層OR1及び上電極UE1のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR1は、例えば青波長域の光を放つ発光層を含む。
副画素SP2の表示素子202は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2を備えている。下電極LE2の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR2及び上電極UE2は、隔壁6で囲まれている。有機層OR2及び上電極UE2のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR2は、例えば緑波長域の光を放つ発光層を含む。
副画素SP3の表示素子203は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3を備えている。下電極LE3の周縁部は、リブ5で覆われている。有機層OR3及び上電極UE3は、隔壁6で囲まれている。有機層OR3及び上電極UE3のそれぞれの周縁部は、平面視においてリブ5に重なっている。有機層OR3は、例えば赤波長域の光を放つ発光層を含む。
【0026】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0027】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0028】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0029】
図2の例においては、開口AP1の面積、開口AP2の面積、及び、開口AP3の面積は、互いに異なる。開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0030】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
回路層11は、基板10の上に配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1などの各種回路と、走査線GL、信号線SL、電源線PLなどの各種配線と、を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する有機絶縁層である。
【0031】
下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12の上に配置され、互いに離間している。リブ5は、絶縁層12及び下電極LE1、LE2、LE3の上に配置されている。リブ5の開口AP1は下電極LE1に重なり、開口AP2は下電極LE2に重なり、開口AP3は下電極LE3に重なっている。下電極LE1、LE2、LE3の周縁部は、リブ5で覆われている。下電極LE1、LE2、LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12がリブ5により覆われている。下電極LE1、LE2、LE3は、絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて副画素SP1、SP2、SP3のそれぞれの画素回路1に接続されている。なお、絶縁層12のコンタクトホールは、
図3では省略するが、
図2のCH1、CH2、CH3に相当する。
【0032】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。上部62の両端部は、下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0033】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、開口AP1から露出した下電極LE1を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
【0034】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、開口AP2から露出した下電極LE2を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下部61に接触している。
【0035】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、開口AP3から露出した下電極LE3を覆うとともに、その周縁部がリブ5の上に位置している。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下部61に接触している。
【0036】
図3の例においては、副画素SP1はキャップ層CP1及び封止層SE1を有し、副画素SP2はキャップ層CP2及び封止層SE2を有し、副画素SP3はキャップ層CP3及び封止層SE3を有している。キャップ層CP1、CP2、CP3は、それぞれ有機層OR1、OR2、OR3から放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0037】
キャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。
キャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。
キャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。
【0038】
封止層SE1は、キャップ層CP1の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE2は、キャップ層CP2の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。
封止層SE3は、キャップ層CP3の上に配置され、隔壁6に接触し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0039】
図3の例においては、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部は、副画素SP1の周囲の隔壁6の上に位置している。これらの部分は、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のうち開口AP1に位置する部分(表示素子201を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のそれぞれの一部は、副画素SP2の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2のうち開口AP2に位置する部分(表示素子202を構成する部分)から離間している。
同様に、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のそれぞれの一部は、副画素SP3の周囲の隔壁6の上に位置し、これらの部分は、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3のうち開口AP3に位置する部分(表示素子203を構成する部分)から離間している。
【0040】
封止層SE1、SE2、SE3の端部は、隔壁6の上に位置している。
図3の例においては、副画素SP1、SP2間の隔壁6の上に位置する封止層SE1、SE2の端部同士が離間し、副画素SP2、SP3間の隔壁6の上に位置する封止層SE2、SE3の端部同士が離間している。
【0041】
封止層SE1、SE2、SE3は、樹脂層13によって覆われている。樹脂層13は、封止層14によって覆われている。封止層14は、樹脂層15によって覆われている。
【0042】
リブ5、封止層SE1、SE2、SE3、及び、封止層14は、例えば、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成されている。
【0043】
隔壁6の下部61は、導電材料で形成され、上電極UE1、UE2、UE3と電気的に接続されている。隔壁6の上部62は、例えば導電材料によって形成されているが、絶縁材料で形成されもよい。下部61は、上部62とは異なる材料で形成されている。
【0044】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などの酸化物導電材料で形成された透明電極と、銀などの金属材料で形成された金属電極とを含む多層体である。
【0045】
有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM1、発光層EM2、及び、発光層EM3は、互いに異なる材料で形成されている。一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
また、有機層OR1、OR2、OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。
上電極UE1、UE2、UE3は、例えば、マグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。
【0046】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、複数の薄膜の多層体である。複数の薄膜は、いずれも透明であり、しかも、互いに異なる屈折率を有している。
【0047】
次に、
図4乃至
図9を参照して、表示装置DSPの製造方法について説明する。なお、
図4乃至
図9においては、絶縁層12よりも下方の図示を省略している。
【0048】
まず、
図4に示すように、処理基板SUBを用意する。処理基板SUBを用意する工程は、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成する工程と、リブ5の上に配置された下部61及び下部61の上に配置され下部61の側面から突出した上部62を含む隔壁6を形成する工程と、を含む。なお、開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成した後に、隔壁6を形成してもよいし、隔壁6を形成した後に、開口AP1、AP2、AP3を形成してもよい。
【0049】
続いて、表示素子201を形成する。
まず、後述する製造装置(インライン型の蒸着装置)100に、処理基板SUBを搬入する。そして、
図5に示すように、隔壁6をマスクとして、下電極LE1の上に、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、発光層(EM1)、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの各層を形成するための材料を順次蒸着して、有機層OR1を形成する。
その後、隔壁6をマスクとして、有機層OR1の上に、マグネシウム及び銀の混合物を蒸着して、上電極UE1を形成する。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下部61に接触している。
その後、隔壁6をマスクとして、上電極UE1の上に、第1透明層TL1を形成するための高屈折率材料及び第2透明層TL2を形成するための低屈折率材料を順次蒸着して、キャップ層CP1を形成する。
これらの有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、真空環境を維持した状態で連続して形成される。
【0050】
その後、処理基板SUBをCVD(Chemical-Vapor Deposition)装置に搬入する。そして、キャップ層CP1及び隔壁6を連続的に覆うように、封止層SE1を形成する。
【0051】
有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1は、少なくとも表示領域DAの全体に形成され、副画素SP1だけでなく副画素SP2、SP3にも配置されている。有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。
【0052】
有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1がそれぞれ蒸着によって形成される際に、蒸着源から放たれた材料は、上部62によって遮られる。このため、上部62の上には、有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1のそれぞれの一部が積層される。上部62の上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1の各々は、下電極LE1の直上に位置する有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1から離間している。
封止層SE1は、隔壁6のキャップ層CP1を覆うとともに、下電極LE1の直上のキャップ層CP1を覆い、かつ、隔壁6に接している。
【0053】
続いて、
図6に示すように、封止層SE1の上に、所定の形状にパターニングされたレジストRSを形成する。レジストRSは、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部に重なっている。
【0054】
続いて、
図7に示すように、レジストRSをマスクとしてエッチングを行うことにより、レジストRSから露出した封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1、及び、有機層OR1を順次除去する。これにより、副画素SP2の下電極LE2及び副画素SP3の下電極LE3が露出する。
その後、レジストRSを除去する。これにより、副画素SP1に表示素子201が形成される。
【0055】
続いて、
図8に示すように、表示素子202を形成する。表示素子202を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE2の上に、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2、及び、封止層SE2を順に形成する。その後、封止層SE2の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしたエッチングにより、封止層SE2、キャップ層CP2、上電極UE2、及び、有機層OR2が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP2に表示素子202が形成され、副画素SP3の下電極LE3が露出する。
【0056】
続いて、
図9に示すように、表示素子203を形成する。表示素子203を形成する手順は、表示素子201を形成する手順と同様である。すなわち、下電極LE3の上に、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3、及び、封止層SE3を順に形成する。その後、封止層SE3の上にレジストを形成し、このレジストをマスクとしたエッチングにより、封止層SE3、キャップ層CP3、上電極UE3、及び、有機層OR3が順次パターニングされる。このパターニングの後、レジストを除去する。これにより、副画素SP3に表示素子203が形成される。
【0057】
その後、
図3に示した樹脂層13、封止層14、及び、樹脂層15を順に形成する。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0058】
なお、以上の製造工程においては、最初に表示素子201が形成され、次に表示素子202が形成され、最後に表示素子203が形成される場合を想定したが、表示素子201、202、203の形成順はこの例に限られない。
【0059】
次に、表示素子20の構成例について説明する。
【0060】
図10は、表示素子20の一構成例を示す図である。
図10に示す表示素子20は、上記の表示素子201、202、203のいずれにも相当し得るものである。
なお、ここでは、下電極LEがアノードに相当し、上電極UEがカソードに相当する場合を例に説明する。
【0061】
表示素子20は、下電極LE(LE1、LE2、LE3)と上電極UE(UE1、UE2、UE3)との間に有機層OR(OR1、OR2、OR3)を備えている。
【0062】
有機層ORにおいて、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロック層EBL、発光層EML、正孔ブロック層HBL、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、この順に積層されている。
なお、有機層ORは、上記した機能層の他に、必要に応じてキャリア発生層などの他の機能層を含んでいてもよいし、上記した機能層の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0063】
発光層EMLは、
図3に示した発光層EM1、EM2、EM3のいずれかに相当する。
【0064】
キャップ層CP(CP1、CP2、CP3)は、第1透明層TL1と、第2透明層TL2と、を含む。第1透明層TL1は、上電極UEの上に配置されている。第1透明層TL1は、上電極UEよりも高い屈折率を有する高屈折率層である。第2透明層TL2は、第1透明層TL1の上に配置されている。第2透明層TL2は、第1透明層TL1よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。封止層SE(SE1、SE2、SE3)は、第2透明層TL2の上に配置されている。
【0065】
なお、有機層ORの構成については、図示したように有機層ORが1層の発光層EMLを備える構成に限らず、有機層ORが複数の発光層を備える構成であってもよい。
【0066】
次に、表示装置DSPの製造装置200について説明する。
【0067】
図11は、製造装置200の一構成例を示す図である。
製造装置200は、第1蒸着チャンバーEV1と、第1ローテーションチャンバーR1と、を備えている。
【0068】
第1蒸着チャンバーEV1は、第1蒸着源S1と、第2蒸着源S2と、を備えている。第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2は、処理基板SUBが搬送される第1搬送路T1と第2搬送路T2との間に位置している。第1蒸着源S1は、第1搬送路T1に向けて材料Mを放射するように構成されている。第2蒸着源S2は、第2搬送路T2に向けて材料Mを放射するように構成されている。
【0069】
第1搬送路T1においては、処理基板SUBは、図中の矢印で示す搬送方向TAに搬送される。第2搬送路T2においては、処理基板SUBは、図中の矢印で示す搬送方向TBに搬送される。搬送方向TA及び搬送方向TBは、互いに逆向きである。
【0070】
第1蒸着源S1から放射される材料Mは、第2蒸着源S2から放射される材料Mと同一である。なお、材料Mが複数種類の材料からなる混合物である場合、混合物を構成する各材料の組成比は、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2において、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0071】
一例では、第1蒸着チャンバーEV1は、
図10の上電極UEを形成するように構成されている。この場合、材料Mは、第1材料としてのマグネシウムと、第2材料としての銀と、の混合物である。
【0072】
他の例では、第1蒸着チャンバーEV1は、
図10の発光層EMLを形成するように構成されている。この場合、材料Mは、第1材料としてのキャリア輸送用のホスト材料と、第2材料としての発光用のドーパント材料と、の混合物である。
【0073】
第1蒸着源S1のノズルN1、及び、第2蒸着源S2のノズルN2は、処理基板SUBの法線SUBNに対して、互いに異なる方向に傾斜している。
図示した例では、ノズルN1は、法線SUBNに対して、処理基板SUBの搬送方向TAに沿って処理基板SUBの一端SUBAを向くように傾斜している。一方、ノズルN2は、法線SUBNに対して、処理基板SUBの搬送方向TBに沿って処理基板SUBの他端SUBBを向くように傾斜している。ここでの一端SUBAとは、搬送方向TAの下流側に位置する処理基板SUBの先端に相当する。また、他端SUBBとは、搬送方向TBの上流側に位置する処理基板SUBの後端に相当する。
なお、ノズルN1が処理基板SUBの他端SUBBを向くように傾斜し、ノズルN2が処理基板SUBの一端SUBAを向くように傾斜していてもよい。
【0074】
第1ローテーションチャンバーR1は、第1蒸着チャンバーEV1に連結され、第1蒸着チャンバーEV1の第1搬送路T1から搬出された処理基板SUBを第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2に搬出するように構成されている。第1ローテーションチャンバーR1は、回転機構RM1を備えている。回転機構RM1は、第1搬送路T1から搬出された処理基板SUBを保持し、回転軸A1を中心に回転可能に構成されている。回転軸A1は、処理基板SUBの法線SUBN、及び、搬送方向TA及びTBと直交する。
【0075】
このような製造装置200において、まず、処理基板SUBは、搬送方向TAに搬送され、第1蒸着チャンバーEV1の第1搬送路T1に搬入される。第1蒸着チャンバーEV1で上電極UEが形成される場合、第1蒸着チャンバーEV1に搬入される前の処理基板SUBに対しては、下電極LEの上に有機層ORが形成される。第1蒸着チャンバーEV1で発光層EMLが形成される場合、第1蒸着チャンバーEV1に搬入される前の処理基板SUBに対しては、下電極LEの上に有機層ORの一部(例えば、
図10に示した正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロック層EBL)が形成される。
そして、第1蒸着チャンバーEV1においては、処理基板SUBが第1搬送路T1を搬送方向TAに搬送されながら、第1蒸着源S1から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。これにより、処理基板SUBの表面に蒸着膜DFが形成される。
【0076】
そして、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1の第1搬送路T1から搬出され、第1ローテーションチャンバーR1に搬入される。
【0077】
第1ローテーションチャンバーR1においては、搬入された処理基板SUBが回転機構RM1に保持される。このとき、処理基板SUBは、蒸着膜DFが回転軸A1と向かい合う状態で保持される。回転機構RM1は、処理基板SUBを保持した状態で回転する。第1搬送路T1及び第2搬送路T2が互いに平行である場合、回転機構RM1は、処理基板SUBを保持した状態で180°回転する。回転した処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2の延長線上に位置している。
【0078】
そして、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバーR1から搬出され、第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2に搬入される。
【0079】
第1蒸着チャンバーEV1においては、処理基板SUBが第2搬送路T2を搬送方向TBに搬送されながら、第2蒸着源S2から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。これにより、処理基板SUBの表面に蒸着膜DFが形成される。
そして、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1から搬出される。
【0080】
このような構成の製造装置200によれば、単一の第1蒸着チャンバーEV1において、一方向に処理基板SUBを搬送しながら、蒸着条件が異なる2つの蒸着膜DFを形成することができる。なお、上記の構成例では、蒸着条件が異なる例として、ノズルの傾斜方向が異なっている。
【0081】
このため、蒸着膜DFを形成するために、ノズルの傾斜方向が異なる複数の蒸着チャンバーを連結した構成と比較して、製造装置200の設置スペースを縮小することができ、また、製造装置200の小型化が可能となる。
【0082】
また、蒸着条件が異なる蒸着膜DFを形成するために、処理基板SUBを逆搬送するなどの特別な工程を必要としないため、他の処理基板SUBの搬送経路上での滞留を抑制することができる。
【0083】
また、同一の蒸着チャンバーに収容される第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2は、同一材料を放射するように構成されている。このため、蒸着チャンバーの内部の不純物による汚染が抑制され、また、処理基板SUBへの不純物の蒸着も抑制することができる。
【0084】
図12は、
図11の製造装置200で形成された蒸着膜DFを説明するための断面図である。ここでは、蒸着膜DFとして、上電極UEが形成された場合について説明する。
【0085】
図11を参照して説明したように、破線で示す第1蒸着源S1は処理基板SUBの一端SUBAを向くように傾斜し、破線で示す第2蒸着源S2は処理基板SUBの他端SUBBを向くように傾斜している。
【0086】
ここでは、隔壁6について、下電極LEに対して一端SUBAに近接する側(図の左側)に位置する隔壁6Aと、下電極LEに対して他端SUBBに近接する側(図の右側)に位置する隔壁6Bと、を区別する。
【0087】
上電極UEは、先行して形成される上電極UEAと、後に形成される上電極UEBと、を有している。上電極UEAは、第1蒸着源S1から放射された材料Mによって形成され、有機層ORの上に位置し、隔壁6Aの下部61に接触している。上電極UEBは、第2蒸着源S2から放射された材料Mによって形成され、上電極UEAの上に位置し、隔壁6Bの下部61に接触している。
【0088】
なお、上電極UEAは、隔壁6Bの下部61から離間しているが、隔壁6Bの下部61に接触する場合もあり得る。また、上電極UEBは、隔壁6Aの下部61から離間しているが、隔壁6Aの下部61に接触する場合もあり得る。
【0089】
このように、隔壁6A、6Bに接触する上電極UEが形成される。このため、各副画素の上電極UEに対して、隔壁6を介してコモン電圧を確実に供給することができる。また、隔壁6と有機層ORとの間において、上電極UEは、リブ5を覆い、後に形成される封止層とリブ5との接触が回避される。これにより、封止層がエッチングにより除去される際に、上電極UEがエッチングストッパとして機能し、リブ5へのダメージを回避することができる。
【0090】
図13は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
第1蒸着チャンバーEV1は、第1搬送路T1と第2搬送路T2との間に、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2を備えている。第1蒸着源S1は、第1搬送路T1に向けて材料Mを放射するように構成されている。第2蒸着源S2は、第2搬送路T2に向けて材料Mを放射するように構成されている。第1蒸着源S1のノズルN1、及び、第2蒸着源S2のノズルN2は、いずれも処理基板SUBの法線SUBNに対してほぼ平行である。
このような製造装置200においても、
図11を参照して説明した製造装置200と同様に動作する。
【0091】
図13に示す構成例は、
図11に示した構成例と比較して、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2からそれぞれ放射される材料Mが複数種類の材料からなる混合物であって、混合物を構成する各材料の組成比は、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2において、互いに異なる点で相違している。
【0092】
一例では、第1蒸着チャンバーEV1は、
図10の上電極UEを形成するように構成されている。材料Mは、第1材料としてのマグネシウムと、第2材料としての銀との混合物である。この場合、第1蒸着源S1から放射される混合物のマグネシウムの濃度C1は、第2蒸着源S2から放射される混合物のマグネシウムの濃度C2よりも高い。換言すると、第2蒸着源S2から放射される混合物の銀の濃度は、第1蒸着源S1から放射される混合物の銀の濃度よりも高い。
【0093】
他の例では、第1蒸着チャンバーEV1は、
図10の発光層EMLを形成するように構成されている。材料Mは、第1材料としてのキャリア輸送用のホスト材料と、第2材料としての発光用のドーパント材料との混合物である。この場合、第1蒸着源S1から放射される混合物のホスト材料の濃度C1は、第2蒸着源S2から放射される混合物のホスト材料の濃度C2よりも高い。
また、第1蒸着チャンバーEV1が発光層EMLを形成するように構成されている場合、第2蒸着源S2から放射される混合物のホスト材料の濃度C2が第1蒸着源S1から放射される混合物のホスト材料の濃度C1よりも高い場合もあり得る。
【0094】
図13に示した構成例においても、
図11に示した構成例と同様の効果が得られる。
【0095】
図14は、
図13の製造装置200で形成された上電極UEを説明するための図である。
マグネシウム及び銀の混合物で形成される上電極UEにおいて、有機層ORに近接する層はマグネシウムの含有量が多く(Mg rich)、有機層ORから離れた層は銀の含有量が多い(Ag rich)。マグネシウムは、銀と比較して仕事関数が小さい。また、マグネシウムは、銀と比較して水分によるダメージを受けやすい。
このような構成の上電極UEによれば、上電極UEが表示素子20のカソードとして機能する場合、有機層ORに近接する層がマグネシウムを多く含むことで、電子注入効率を向上することができる。また、水分によるダメージを受けにくい上電極UEを形成することができる。
【0096】
図15は、
図13の製造装置200で形成された発光層EMLを説明するための図である。
ホスト材料H及びドーパント材料Dの混合物で形成される発光層EMLにおいて、電子ブロック層EBLに近接する層の組成比は、例えば、H:D=98:2である。つまり、電子ブロック層EBLに近接する層におけるドーパント濃度は2%である。
電子ブロック層EBLから離れた層の組成比は、例えば、H:D=95:5である。つまり、電子ブロック層EBLから離れた層におけるドーパント濃度は5%である。
このような発光層EMLによれば、厚さ方向でドーパント濃度を変化させることができる。
【0097】
図16は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
製造装置200は、
図13に示した第1蒸着チャンバーEV1及び第1ローテーションチャンバーR1の他に、第2蒸着チャンバーEV2を備えている。第2蒸着チャンバーEV2は、第1蒸着チャンバーEV1に連結されている。第1蒸着チャンバーEV1は、第1ローテーションチャンバーR1と第2蒸着チャンバーEV2との間に設置されている。
【0098】
第2蒸着チャンバーEV2は、第1搬送路T1と第2搬送路T2との間に、第3蒸着源S3及び第4蒸着源S4を備えている。第3蒸着源S3は、第1搬送路T1に向けて材料Mを放射するように構成されている。第4蒸着源S4は、第2搬送路T2に向けて材料Mを放射するように構成されている。
【0099】
このような製造装置200においては、まず、処理基板SUBは、搬送方向TAに搬送され、第2蒸着チャンバーEV2の第1搬送路T1に搬入される。第2蒸着チャンバーEV2においては、処理基板SUBが第1搬送路T1を搬送方向TAに搬送されながら、第3蒸着源S3から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。
【0100】
そして、処理基板SUBは、第2蒸着チャンバーEV2の第1搬送路T1から搬出され、第1蒸着チャンバーEV1の第1搬送路T1に搬入される。第1蒸着チャンバーEV1においては、処理基板SUBが第1搬送路T1を搬送方向TAに搬送されながら、第1蒸着源S1から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。
【0101】
そして、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1の第1搬送路T1から搬出され、第1ローテーションチャンバーR1に搬入される。第1ローテーションチャンバーR1においては、搬入された処理基板SUBが回転機構RM1に保持される。回転機構RM1は、処理基板SUBを保持した状態で回転する。回転した処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2の延長線上に位置している。
【0102】
そして、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバーR1から搬出され、第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2に搬入される。第1蒸着チャンバーEV1においては、処理基板SUBが第2搬送路T2を搬送方向TBに搬送されながら、第2蒸着源S2から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。
【0103】
そして、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1の第2搬送路T2から搬出され、第2蒸着チャンバーEV2の第2搬送路T2に搬入される。第2蒸着チャンバーEV2においては、処理基板SUBが第2搬送路T2を搬送方向TBに搬送されながら、第4蒸着源S4から放射された材料Mが処理基板SUBに蒸着される。
【0104】
第1蒸着源S1、第2蒸着源S2、第3蒸着源S3、及び、第4蒸着源S4からそれぞれ放射される材料Mは、同一材料であり、かつ、複数種類の材料からなる混合物である。混合物を構成する各材料の組成比は、第1蒸着源S1、第2蒸着源S2、第3蒸着源S3、及び、第4蒸着源S4において、互いに異なる。
【0105】
一例では、第1蒸着チャンバーEV1及び第2蒸着チャンバーEV2は、
図10の上電極UEを形成するように構成されている。この場合、材料Mは、第1材料としてのマグネシウムと、第2材料としての銀との混合物である。
他の例では、第1蒸着チャンバーEV1及び第2蒸着チャンバーEV2は、
図10の発光層EMLを形成するように構成されている。この場合、材料Mは、第1材料としてのキャリア輸送用のホスト材料と、第2材料としての発光用のドーパント材料との混合物である。
【0106】
これらの場合、第3蒸着源S3から放射される混合物の第1材料の濃度C1は、第1蒸着源S1から放射される混合物の第1材料の濃度C2よりも高い。濃度C2は、第2蒸着源S2から放射される混合物の第1材料の濃度C3よりも高い。濃度C3は、第4蒸着源S4から放射される混合物の第1材料の濃度C4よりも高い(C4<C3<C2<C1)。
なお、
図16に示した製造装置200において、発光層EMLが形成される場合には、
濃度C4が濃度C3よりも高く、濃度C3が濃度C2よりも高く、濃度C2が濃度C1よりも高い場合もあり得る(C1<C2<C3<C4)。
【0107】
図16に示した構成例においても、
図11に示した構成例と同様の効果が得られる。
【0108】
図17は、
図16の製造装置200で形成された上電極UEまたは発光層EMLを説明するための図である。
【0109】
まず、マグネシウム及び銀の混合物で形成される上電極UEについて説明する。上電極UEのうち、下電極LEに最も近接する層はマグネシウムの含有量が最も多く、下電極LEから最も離れた層はマグネシウムの含有量が最も少ない。つまり、上電極UEにおいて、下電極LEから離れるほどマグネシウムの含有量が少なくなるような濃度勾配を形成することができる。
【0110】
次に、ホスト材料及びドーパント材料の混合物で形成される発光層EMLについて説明する。発光層EMLのうち、下電極LEに最も近接する層はドーパント濃度が最も低く、下電極LEから最も離れた層はドーパント濃度が最も高い。つまり、発光層EMLにおいて、下電極LEから離れるほどドーパント濃度が高くなるような濃度勾配を形成することができる。
なお、発光層EMLにおいて、下電極LEから離れるほどドーパント濃度が低くなるような濃度勾配を形成することもできる。
【0111】
図18は、製造装置200の他の構成例を示す図である。
図18に示す構成例は、
図16に示した構成例と比較して、各蒸着源のノズルが傾斜している点で相違している。
【0112】
一例では、第1蒸着チャンバーEV1において、第1蒸着源S1のノズルN1は処理基板SUBの他端SUBBを向くように傾斜し、第2蒸着源S2のノズルN2は処理基板SUBの一端SUBAを向くように傾斜している。
第2蒸着チャンバーEV2において、第3蒸着源S3のノズルN3は処理基板SUBの一端SUBAを向くように傾斜し、第4蒸着源S4のノズルN4は処理基板SUBの他端SUBBを向くように傾斜している。
【0113】
第1蒸着源S1、第2蒸着源S2、第3蒸着源S3、及び、第4蒸着源S4からそれぞれ放射される材料Mは、同一材料であり、かつ、複数種類の材料からなる混合物である。図示した例では、混合物を構成する各材料の組成比は、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2において互いに異なり、また、第3蒸着源S3及び第4蒸着源S4において互いに異なる。
【0114】
一例では、第1蒸着チャンバーEV1及び第2蒸着チャンバーEV2が上電極UEを形成するように構成されている場合、材料Mは、第1材料としてのマグネシウムと、第2材料としての銀との混合物である。
他の例では、第1蒸着チャンバーEV1及び第2蒸着チャンバーEV2が発光層EMLを形成するように構成されている場合、材料Mは、第1材料としてのキャリア輸送用のホスト材料と、第2材料としての発光用のドーパント材料との混合物である。
【0115】
これらの場合、第1蒸着源S1から放射される混合物の第1材料の濃度C1は、第2蒸着源S2から放射される混合物の第1材料の濃度C2よりも高い。第3蒸着源S3から放射される混合物の第1材料の濃度C1は、第4蒸着源S4から放射される混合物の第1材料の濃度C2よりも高い。そして、第1蒸着源S1から放射される混合物の第1材料の濃度C1は、第3蒸着源S3から放射される混合物の第1材料の濃度C1とほぼ同等である。また、第2蒸着源S2から放射される混合物の第1材料の濃度C2は、第4蒸着源S4から放射される混合物の第1材料の濃度C2とほぼ同等である。
【0116】
図18に示した構成例においても、
図11に示した構成例と同様の効果が得られる。
【0117】
なお、上記の製造装置200の各構成例では、各蒸着源から放射される材料Mが2種類の材料からなる混合物である場合について説明したが、これに限らない。例えば、各蒸着源から放射される材料Mが3種類の材料からなる混合物であってもよい。例えば、発光層EMLを形成するに際して、電子輸送性に富んだ第1ホスト材料と、正孔輸送性に富んだ第2ホスト材料と、ドーパント材料との混合物が各蒸着源から放射されてもよい。
【0118】
次に、
図10に示した有機層OR、上電極UE、及び、キャップ層CPを形成するための製造装置100について説明する。
【0119】
図19は、製造装置100の一構成例を示す図である。
製造装置100は、例えば、
図5を参照して説明した有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を連続的に形成する工程で適用される。勿論、ここで説明する製造装置100は、有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2を連続的に形成する工程、あるいは、有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3を連続的に形成する工程においても適用可能である。
【0120】
製造装置100に搬入される処理基板SUBは、
図4を参照して説明したように、下電極LE1、LE2、LE3と、リブ5と、隔壁6と、を有している。
【0121】
製造装置100は、処理部101と、蒸着部102と、を備えている。
【0122】
処理部101は、搬入された処理基板SUBに対して、洗浄処理、乾燥処理、プラズマ処理などの各種の前処理を行う機構を備えている。また、処理部101は、処理基板SUBを所定の搬送姿勢に設定する機構や、静電チャックにより処理基板SUBを専用のキャリアに固定する機構などを備えている。蒸着部102の各搬送路は、キャリアを搬送するように構成されている。また、処理部101は、静電チャックによる固定を解除してキャリアから処理基板SUBを取り外す機構や、処理基板SUBを所定の姿勢に設定する機構などを備えている。一例では、外部から処理部101に搬入される処理基板SUBの姿勢は、水平姿勢であり、蒸着部102を搬送される処理基板SUBの搬送姿勢は、垂直姿勢である。
【0123】
蒸着部102は、第1ローテーションチャンバーR1と、第1蒸着チャンバーEV1と、第2ローテーションチャンバーR2と、複数の蒸着チャンバーEV11乃至EV19と、ローテーションチャンバーR11と、を備えている。第1ローテーションチャンバーR1及び第1蒸着チャンバーEV1のセットは、
図11に示した製造装置200、あるいは、
図13に示した製造装置200に相当する。
【0124】
蒸着チャンバーEV11乃至EV15は、一列に並んでいる。蒸着チャンバーEV16及びEV17、第2ローテーションチャンバーR2、及び、蒸着チャンバーEV18及びEV19は、一列に並んでいる。第2ローテーションチャンバーR2は、蒸着チャンバーEV17と蒸着チャンバーEV18との間に設置されている。例えば、蒸着チャンバーEV17は第3蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバーEV18は第4蒸着チャンバーに相当する。
蒸着チャンバーEV11及びEV19は、処理部101に接続されている。蒸着チャンバーEV15及びEV16は、ローテーションチャンバーR11に接続されている。
【0125】
第1蒸着チャンバーEV1は、第1ローテーションチャンバーR1と第2ローテーションチャンバーR2との間に設置されている。図示した例では、第1ローテーションチャンバーR1、第1蒸着チャンバーEV1、及び、第2ローテーションチャンバーR2は、蒸着チャンバーEV16及びEV17が並ぶ方向に対して直交する方向に並んでいる。
【0126】
蒸着チャンバーEV11は、蒸着源S11を備えている。蒸着源S11は、搬送路T11に向けて、正孔注入層HILを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV12は、蒸着源S12を備えている。蒸着源S12は、搬送路T11に向けて、正孔輸送層HTLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV13は、蒸着源S13を備えている。蒸着源S13は、搬送路T11に向けて、電子ブロック層EBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV14は、蒸着源S14を備えている。蒸着源S14は、搬送路T11に向けて、発光層EMLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV15は、蒸着源S15を備えている。蒸着源S15は、搬送路T11に向けて、正孔ブロック層HBLを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0127】
蒸着チャンバーEV16は、蒸着源S16を備えている。蒸着源S16は、搬送路T12に向けて、電子輸送層ETLを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV17は、蒸着源S17を備えている。蒸着源S17は、搬送路T12に向けて、電子注入層EILを形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV18は、蒸着源S18を備えている。蒸着源S18は、搬送路T13に向けて、第1透明層TL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
蒸着チャンバーEV19は、蒸着源S19を備えている。蒸着源S19は、搬送路T13に向けて、第2透明層TL2を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0128】
搬送路T11乃至T13は、蒸着部102の内側に設けられている。蒸着源S11乃至S19は、蒸着部102において、搬送路T11乃至T13の外側に設けられている。例えば、蒸着チャンバーEV11及びEV19に着目すると、搬送路T11及びT13は、蒸着源S11と蒸着源S19との間に位置している。また、蒸着チャンバーEV15及びEV16に着目すると、搬送路T11及びT12は、蒸着源S15と蒸着源S16との間に位置している。
【0129】
第1蒸着チャンバーEV1は、第1蒸着源S1と、第2蒸着源S2と、を備えている。第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2は、第1蒸着チャンバーEV1において、第1搬送路T1と第2搬送路T2との間に位置している。第1蒸着源S1は、第1搬送路T1に向けて上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。第2蒸着源S2は、第2搬送路T2に向けて上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0130】
第1ローテーションチャンバーR1は、保持した処理基板SUBとともに180°回転する回転機構RM1を備えている。第2ローテーションチャンバーR2は、保持した処理基板SUBとともに90°回転する回転機構RM2を備えている。ローテーションチャンバーR11は、保持した処理基板SUBとともに180°回転する回転機構RM11を備えている。
【0131】
以下に、製造装置100における製造工程について説明する。
下電極LEを形成済みの処理基板SUBは、まず、処理部101に搬入される。処理部101においては、処理基板SUBに対して所定の前処理が行われる。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV11に搬入される。蒸着チャンバーEV11においては、搬送路T11を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S11から放射された材料が蒸着される。これにより、下電極LEの上に正孔注入層HILが形成される。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV12に搬入される。蒸着チャンバーEV12においては、搬送路T11を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S12から放射された材料が蒸着される。これにより、正孔注入層HILの上に正孔輸送層HTLが形成される。
【0132】
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV13に搬入される。蒸着チャンバーEV13においては、搬送路T11を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S13から放射された材料が蒸着される。これにより、正孔輸送層HTLの上に電子ブロック層EBLが形成される。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV14に搬入される。蒸着チャンバーEV14においては、搬送路T11を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S14から放射された材料が蒸着される。これにより、電子ブロック層EBLの上に発光層EMLが形成される。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV15に搬入される。蒸着チャンバーEV15においては、搬送路T11を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S15から放射された材料が蒸着される。これにより、発光層EMLの上に正孔ブロック層HBLが形成される。
【0133】
その後、処理基板SUBは、ローテーションチャンバーR11に搬入される。ローテーションチャンバーR11においては、回転機構RM11は、搬入された処理基板SUBを保持する。このとき、回転機構RM11は、蒸着膜DFが回転軸A11とは反対側を向いた状態で処理基板SUBを保持する。そして、回転機構RM11は、処理基板SUBを保持した状態で180°回転する。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV16に搬入される。蒸着チャンバーEV16においては、搬送路T12を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S16から放射された材料が蒸着される。これにより、正孔ブロック層HBLの上に電子輸送層ETLが形成される。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV17に搬入される。蒸着チャンバーEV17においては、搬送路T12を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S17から放射された材料が蒸着される。これにより、電子輸送層ETLの上に電子注入層EILが形成される。
【0134】
その後、処理基板SUBは、第2ローテーションチャンバーR2に搬入される。第2ローテーションチャンバーR2においては、回転機構RM2は、搬入された処理基板SUBを保持する。このとき、回転機構RM2は、蒸着膜DFが回転軸A2と向かい合う状態で処理基板SUBを保持する。そして、回転機構RM2は、処理基板SUBを保持した状態で90°回転する。
その後、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1に搬入される。第1蒸着チャンバーEV1においては、第1搬送路T1を搬送される処理基板SUBに対して第1蒸着源S1から放射された材料が蒸着される。これにより、電子注入層EILの上に上電極UEの1層目が形成される。
【0135】
その後、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバーR1に搬入される。第1ローテーションチャンバーR1においては、回転機構RM1は、搬入された処理基板SUBを保持する。このとき、回転機構RM1は、蒸着膜DFが回転軸A1と向かい合う状態で処理基板SUBを保持する。そして、回転機構RM1は、処理基板SUBを保持した状態で180°回転する。
その後、処理基板SUBは、第1蒸着チャンバーEV1に搬入される。第1蒸着チャンバーEV1においては、第2搬送路T2を搬送される処理基板SUBに対して第2蒸着源S2から放射された材料が蒸着される。これにより、上電極UEの2層目が形成される。
【0136】
その後、処理基板SUBは、第2ローテーションチャンバーR2に搬入される。第2ローテーションチャンバーR2においては、回転機構RM2は、搬入された処理基板SUBを保持する。このとき、回転機構RM2は、蒸着膜DFが回転軸A2と向かい合う状態で処理基板SUBを保持する。そして、回転機構RM2は、処理基板SUBを保持した状態で90°回転する。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV18に搬入される。蒸着チャンバーEV18においては、搬送路T13を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S13から放射された材料が蒸着される。これにより、上電極UEの上に第1透明層TL1が形成される。
その後、処理基板SUBは、蒸着チャンバーEV19に搬入される。蒸着チャンバーEV19においては、搬送路T13を搬送される処理基板SUBに対して蒸着源S19から放射された材料が蒸着される。これにより、第1透明層TL1の上に第2透明層TL2が形成される。
その後、処理基板SUBは、処理部101に搬入される。処理部101においては、処理基板SUBに対して、所定の処理が行われる。
【0137】
図20は、製造装置100の他の構成例を示す図である。
図20に示す構成例は、
図19に示した構成例と比較して、第1蒸着チャンバーEV1と第2ローテーションチャンバーR2との間に、第2蒸着チャンバーEV2が追加された点で相違している。第1ローテーションチャンバーR1、第1蒸着チャンバーEV1、及び、第2蒸着チャンバーEV2のセットは、
図16に示した製造装置200、あるいは、
図18に示した製造装置200に相当する。
【0138】
第2蒸着チャンバーEV2は、第3蒸着源S3と、第4蒸着源S4と、を備えている。第3蒸着源S3及び第4蒸着源S4は、第2蒸着チャンバーEV2において、第1搬送路T1と第2搬送路T2との間に位置している。第3蒸着源S3は、第1搬送路T1に向けて上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。第4蒸着源S4は、第2搬送路T2に向けて上電極UEを形成するための材料を放射するように構成されている。
【0139】
その他の構成については、
図19に示した製造装置100と同様に構成されており、説明を省略する。
【0140】
なお、
図19に示した製造装置100においては、発光層EML用の蒸着チャンバーEV14は、第1ローテーションチャンバーR1、第1蒸着チャンバーEV1、及び、第2ローテーションチャンバーR2のセットに置換することができる。また、
図20に示した製造装置100においては、発光層EML用の蒸着チャンバーEV14は、第1ローテーションチャンバーR1、第1蒸着チャンバーEV1、第2蒸着チャンバーEV2、及び、第2ローテーションチャンバーR2のセットに置換することができる。
【0141】
図21は、第1蒸着チャンバーEV1の他の構成例を示す図である。
第1蒸着チャンバーEV1は、第1シャッターST1と、第2シャッターST2と、を備えている。第1シャッターST1及び第2シャッターST2は、それぞれ個別に駆動可能である。
【0142】
図の左側は、第1シャッターST1及び第2シャッターST2が開いた状態を示している。この状態では、第1蒸着源S1から放射される材料M、及び、第2蒸着源S2から放射される材料Mは、それぞれ処理基板SUBに到達する。
図の右側は、第1シャッターST1及び第2シャッターST2が閉じた状態を示している。第1シャッターST1は第1蒸着源S1のノズルN1に対向し、第2シャッターST2は第2蒸着源S2のノズルN2に対向している。この状態では、第1蒸着源S1から放射される材料Mは、第1シャッターST1によって遮られ、処理基板SUBに到達しない。同様に、第2蒸着源S2から放射される材料Mは、第2シャッターST2によって遮られ、処理基板SUBに到達しない。
【0143】
例えば、第1蒸着源S1からの材料Mによって形成された蒸着膜DFの厚さを確認する場合、第1シャッターST1が開いた状態に設定され、第2シャッターST2が閉じた状態に設定される。また、材料Mの蒸着が不要である処理基板SUBが第1蒸着チャンバーEV1に搬送される場合には、第1シャッターST1及び第2シャッターST2がいずれも閉じた状態に設定される。
【0144】
図22は、第1蒸着チャンバーEV1の他の構成例を示す図である。
第1蒸着源S1は、第1シールドSD1によって囲まれ、回転可能に構成されている。第2蒸着源S2は、第2シールドSD2によって囲まれ、回転可能に構成されている。
【0145】
図の左側は、第1蒸着源S1のノズルN1及び第2蒸着源S2のノズルN2がそれぞれ処理基板SUBに対向した状態を示している。この状態では、第1蒸着源S1から放射される材料M、及び、第2蒸着源S2から放射される材料Mは、それぞれ処理基板SUBに到達する。
図の右側は、第1蒸着源S1及び第2蒸着源S2が図の左側の状態から90°回転した状態を示している。第1蒸着源S1のノズルN1は第1シールドSD1に対向し、第2蒸着源S2のノズルN2は第2シールドSD2に対向している。この状態では、第1蒸着源S1から放射される材料Mは、第1シールドSD1によって遮られ、処理基板SUBに到達しない。同様に、第2蒸着源S2から放射される材料Mは、第2シールドSD2によって遮られ、処理基板SUBに到達しない。
【0146】
例えば、第1蒸着源S1からの材料Mによって形成された蒸着膜DFの厚さを確認する場合、第1蒸着源S1のノズルN1が処理基板SUBに対向した状態に設定され、第2蒸着源S2のノズルN2が第2シールドSD2に対向した状態に設定される。また、材料Mの蒸着が不要である処理基板SUBが第1蒸着チャンバーEV1に搬送される場合には、第1蒸着源S1のノズルN1は第1シールドSD1に対向し、第2蒸着源S2のノズルN2は第2シールドSD2に対向した状態に設定される。
【0147】
なお、
図21及び
図22に示した第1蒸着チャンバーEV1の構成例は、第2蒸着チャンバーEV2にも適用することができる。
【0148】
以上説明したように、本実施形態によれば、コストを削減し、設置スペースを縮小することが可能な表示装置の製造装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0149】
以上、本発明の実施形態として説明した製造装置及び製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての製造装置及び製造方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0150】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0151】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0152】
DSP…表示装置 10…基板
5…リブ AP1、AP2、AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1、SP2、SP3…副画素
20、201、202、203…表示素子(有機EL素子)
LE、LE1、LE2、LE3…下電極
UE、UE1、UE2、UE3…上電極
OR、OR1、OR2、OR3…有機層
200…製造装置 T1…第1搬送路 T2…第2搬送路
EV1…第1蒸着チャンバー S1…第1蒸着源 S2…第2蒸着源
EV2…第2蒸着チャンバー S3…第3蒸着源 S4…第4蒸着源
R1…第1ローテーションチャンバー RM1…回転機構
R2…第2ローテーションチャンバー RM2…回転機構