(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122201
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ダイポールアンテナ及び周波数共用アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20240902BHJP
H01Q 11/20 20060101ALI20240902BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q11/20
H01Q21/28
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029625
(22)【出願日】2023-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】丸山 央
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】陸田 裕子
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA09
5J021AB03
5J021AB06
5J021HA10
5J021JA03
(57)【要約】
【課題】低姿勢化したダイポールアンテナなどを提供する。
【解決手段】ダイポールアンテナは、ダイポール素子と、ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、接続部材が接続された側の反対側に、ダイポール素子に対向して設けられた無給電素子と、を備え、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地部材に接続される部分における接続導体の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の接続導体の間隔より広く、無給電素子は、ダイポール素子に沿って延伸する延伸部と、ダイポール素子と延伸部との間に静電容量を付加する容量付加部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイポール素子と、
前記ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、
前記接続部材が接続された側の反対側に、前記ダイポール素子に対向して設けられた無給電素子と、
を備え、
前記接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地部材に接続される部分における当該接続導体の間隔が、前記ダイポール素子に接続される部分の当該接続導体の間隔より広く、
前記無給電素子は、前記ダイポール素子に沿って延伸する延伸部と、当該ダイポール素子と当該延伸部との間に静電容量を付加する容量付加部とを有する
ダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記無給電素子における容量付加部は、
前記ダイポール素子の給電点に対向する部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記接続部材の前記一対の接続部材が構成するバランは、前記ダイポール素子側の前記接地部材に垂直な四角形と、当該接地部材側の当該接地部材の表面に沿った四角形とが合わさった平面形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイポールアンテナ。
【請求項4】
第1の周波数帯の電波を送受信する第1のアンテナと、当該第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第2のアンテナと、を備える周波数共用アンテナであって、
前記第1のアンテナは、
ダイポール素子と、当該ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、当該接続部材が接続された側の反対側において当該ダイポール素子に対向して設けられた無給電素子と、を備え、
前記接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地部材に接続される部分における当該接続導体の間隔が、前記ダイポール素子に接続される部分の当該接続導体の間隔より広く、
前記無給電素子は、前記ダイポール素子に沿って延伸する延伸部と、当該ダイポール素子と当該延伸部との間に静電容量を付加する容量付加部とを有する
周波数共用アンテナ。
【請求項5】
前記第1の周波数帯の電波を送受信する第3のアンテナをさらに備え、
前記第1のアンテナは、前記第1の周波数帯の偏波を送受信し、前記第3のアンテナは、当該第1の周波数帯の当該偏波と交差する偏波を送受信し、
前記第3のアンテナは、
他のダイポール素子と、当該他のダイポール素子に接続され、バランとして機能する他の接続部材と、当該接続部材が接続された側の反対側において当該他のダイポール素子に対向して設けられた他の無給電素子と、を備え、
前記他のダイポール素子は、前記ダイポール素子とクロスダイポールを構成し、
前記他の無給電素子は、他のダイポール素子に沿って延伸する他の延伸部と、前記他のダイポール素子と当該延伸部との間に静電容量を付加する他の容量付加部とを有し、当該他の容量付加部は、前記無給電素子の前記容量付加部と共通に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の周波数共用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイポールアンテナ及び周波数共用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信の発展に伴い、複数の周波数帯の電波が送受信できる周波数共用アンテナが用いられるようになっている。
【0003】
特許文献1には、平面部を有する反射部材と、一対の放射部と、一方側が一対の当該放射部の対向する部分に接続され他方側が前記反射部材に接続されるバラン部とを有し、一対の当該放射部により第1の周波数帯の第1の偏波の電波を送受信する第1のダイポールアンテナ及び第3のダイポールアンテナと、一対の当該放射部により当該第1の周波数帯の当該第1の偏波と異なる第2の偏波の電波を送受信する第2のダイポールアンテナ及び第4のダイポールアンテナと、をそれぞれが備え、当該反射部材の前記平面部に列状に配列された複数の第1のアンテナと、複数の前記第1のアンテナの配列に沿って、前記反射部材の前記平面部に対して配列され、前記第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波をそれぞれが送受信する複数の第2のアンテナと、を備え、前記第1のダイポールアンテナ、前記第2のダイポールアンテナ、前記第3のダイポールアンテナ及び前記第4のダイポールアンテナは、それぞれの一対の前記放射部の対向する側の反対側が前記反射部材の前記平面部側又は当該平面部側の反対側に折り曲がった折曲部を有し、当該折曲部の有する面状の結合部が対向することにより、互いに容量結合するアレイアンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、低周波数帯の電波を送受信する低周波数帯アンテナは、高周波数帯の電波を送受信する高周波数帯アンテナに比べて姿勢が高く、高周波数帯アンテナを低周波数帯アンテナに近接させて配置すると、高周波数帯アンテナの特性が低周波数帯アンテナの影響を受けて著しく劣化することがある。
本発明は、低姿勢化したダイポールアンテナなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が適用されるダイポールアンテナは、ダイポール素子と、ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、接続部材が接続された側の反対側に、ダイポール素子に対向して設けられた無給電素子と、を備え、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地部材に接続される部分における接続導体の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の接続導体の間隔より広く、無給電素子は、ダイポール素子に沿って延伸する延伸部と、ダイポール素子と延伸部との間に静電容量を付加する容量付加部とを有する。
【0007】
このようなダイポールアンテナにおいて、無給電素子における容量付加部は、ダイポール素子の給電点に対向する部分に設けられていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、このようなダイポールアンテナにおいて、接続部材の一対の接続部材が構成するバランは、ダイポール素子側の接地部材に垂直な四角形と、接地部材側の接地部材の表面に沿った四角形とが合わさった平面形状であることを特徴とすることができる。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明が適用される周波数共用アンテナは、第1の周波数帯の電波を送受信する第1のアンテナと、第1の周波数帯より高い第2の周波数帯の電波を送受信する第2のアンテナと、を備える周波数共用アンテナであって、第1のアンテナは、ダイポール素子と、ダイポール素子に接続され、バランとして機能する接続部材と、接続部材が接続された側の反対側においてダイポール素子に対向して設けられた無給電素子と、を備え、接続部材は、一対の接続導体で構成され、接地部材に接続される部分における接続導体の間隔が、ダイポール素子に接続される部分の接続導体の間隔より広く、無給電素子は、ダイポール素子に沿って延伸する延伸部と、ダイポール素子と延伸部との間に静電容量を付加する容量付加部とを有する。
【0010】
このような周波数共用アンテナにおいて、第1の周波数帯の電波を送受信する第3のアンテナをさらに備え、第1のアンテナは、第1の周波数帯の偏波を送受信し、第3のアンテナは、第1の周波数帯の偏波と交差する偏波を送受信し、第3のアンテナは、他のダイポール素子と、他のダイポール素子に接続され、バランとして機能する他の接続部材と、接続部材が接続された側の反対側において他のダイポール素子に対向して設けられた他の無給電素子と、を備え、他のダイポール素子は、ダイポール素子とクロスダイポールを構成し、他の無給電素子は、他のダイポール素子に沿って延伸する他の延伸部と、他のダイポール素子と延伸部との間に静電容量を付加する他の容量付加部とを有し、他の容量付加部は、無給電素子の容量付加部と共通に設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低姿勢化したダイポールアンテナなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態が適用されるダイポールアンテナを説明する図である。(a)は、ダイポールアンテナの斜視図、(b)は、ダイポールアンテナの側面図である。
【
図2】ダイポールアンテナの構成を説明する図である。(a)は、ダイポール素子基板の平面図、(b)は、ダイポール素子基板において形成されるバランの形状、(c)は、無給電素子基板の平面図である。
【
図3】比較例1のダイポールアンテナを説明する図である。(a)は、ダイポールアンテナの斜視図、(b)は、ダイポールアンテナの側面図である。
【
図4】比較例1のダイポールアンテナの構成を説明する図である。(a)は、ダイポール素子基板の平面図、(b)は、ダイポール素子基板において形成されるバランの形状である。
【
図5】比較例2のダイポールアンテナを説明する図である。(a)は、ダイポールアンテナの斜視図、(b)は、ダイポールアンテナの側面図である。
【
図6】比較例2のダイポールアンテナの構成を説明する図である。(a)は、ダイポール素子基板の平面図、(b)は、ダイポール素子基板において形成されるバランの形状、(c)は、無給電素子基板の平面図である。
【
図7】本実施の形態が適用される周波数共用アンテナを説明する図である。(a)は、周波数共用アンテナの斜視図、(b)は、周波数共用アンテナの側面図である。
【
図8】パッチアンテナの構成を説明する図である。(a)は、4個のパッチアンテナの斜視図、(b)は、4個のパッチアンテナの側面図、(c)は、パッチ素子基板の平面図、(d)は、無給電素子基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
移動体通信や無線LANなどにおいて、複数の周波数帯が用いられている。この場合、複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の種類のアンテナ素子を一つの筐体に配置した小型の周波数共用アンテナが求められる。二つの周波数帯を用いた周波数共用アンテナを例にとると、低周波数帯の電波を送受信するアンテナ(以下では、低周波数帯アンテナと表記する。)と、高周波数帯の電波を送受信するアンテナ(以下では、高周波数帯アンテナと表記する。)とを配列して構成される。周波数共用アンテナの小型化には、高周波数帯アンテナと低周波数帯アンテナとを近接させて配置することが求められる。
【0014】
一般に、低周波数帯アンテナは、高周波数帯アンテナに比べ高姿勢になる。高周波数帯アンテナと低周波数帯アンテナとを近接させて配置すると、高周波数帯アンテナの特性が低周波数帯アンテナの影響を受けて著しく劣化することがある。ここでは、ダイポールアンテナを低姿勢化し、アンテナを小型化した。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(ダイポールアンテナ10)
図1は、本実施の形態が適用されるダイポールアンテナ10を説明する図である。
図1(a)は、ダイポールアンテナ10の斜視図、
図1(b)は、ダイポールアンテナ10の側面図である。
図1(a)において、後述する接地板30の右方向をx方向、接地板30の上方向をy方向、及び接地板30に垂直な方向をz方向とする。
図1(b)は、x方向から見た側面図である。
図1(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、及び紙面の表面方向がx方向である。
図1(a)では、後述する無給電素子基板16を透明とし、無給電素子基板16の裏面側(-z方向側)に配置されるダイポール素子基板11、ダイポール素子12などを見えるようにしている。ダイポールアンテナ10を、実施例とする。接地板30は、接地部材の一例である。
【0016】
図1(a)に示すように、接地板30は、平面形状が四角形(ここでは、一例として正方形)の平面状である。ダイポールアンテナ10は、接地板30上に配置されている。
【0017】
ダイポールアンテナ10は、無給電素子付きダイポールアンテナである。ダイポールアンテナ10は、y方向に直線状に設けられている。
【0018】
図1(a)、(b)に示すように、ダイポールアンテナ10は、ダイポール素子12と、接続部材13と、無給電素子17とを備える。一例として、ダイポール素子12と接続部材13とは、ダイポール素子基板11に設けられている。無給電素子17は、無給電素子基板16に設けられている。ダイポール素子基板11は、接地板30に垂直に設けられている。無給電素子基板16は、接地板30に平行に設けられ、無給電素子17がダイポール素子12に対して予め定められた距離で対向する。
【0019】
上記のダイポール素子基板11、及び無給電素子基板16は、誘電体基板であり、例えば、FR-4などのガラスエポキシ基板、耐熱性に優れるポリイミド樹脂基板、高周波特性に優れるフッ素樹脂基板、又はセラミック基板である。ダイポール素子12、接続部材13及び無給電素子17は、誘電体基板に設けられた導電体層を加工することにより形成されている。導電体層は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au)などで構成されている。
【0020】
接地板30は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などの導電性の金属板や、誘電体基板上に導電体層が設けられた基板である。誘電体及び導電体層は、上記と同様である。金属板又は導電体層がGND(接地電位)に設定される。接地板30は、ダイポールアンテナ10の反射板として機能する。接地板30には、ダイポールアンテナ10との間で信号を送受信する配線やコネクタが設けられてもよい。以下では、接地板30は、導電性の金属板であるとして説明する。
【0021】
図2は、ダイポールアンテナ10の構成を説明する図である。
図2(a)は、ダイポール素子基板11の平面図、
図2(b)は、ダイポール素子基板11において形成されるバランの形状、
図2(c)は、無給電素子基板16の平面図である。
図2(b)は、後述する接続導体13a、13bの間の空隙を模式的に取り出して示した図である。空隙を間隙と表記してもよい。
図2(c)は、無給電素子17が設けられた無給電素子基板16の面(-z方向側の面)を示している。
図2(a)には、ダイポール素子基板11に加えて、無給電素子17が設けられた無給電素子基板16を示している。よって、
図2(a)は、ダイポールアンテナ10の側面図に当たる。
図2(a)、(b)において、紙面の右方向をy方向、紙面の上方向をz方向、紙面の表面方向をx方向とする。
図2(c)において、紙面の右方向をx方向、紙面の下方向をy方向、紙面の裏面方向をz方向とする。
【0022】
図2(a)に示すように、ダイポール素子基板11には、ダイポール素子12及び接続部材13が設けられている。
ダイポール素子12は、ダイポールを構成する一対のダイポール導体12a、12bを備える。一対のダイポール導体12a、12bは、ダイポール素子基板11に設けられた導電体層を加工して構成された板状の導電性部材である。ダイポール導体12aは、ダイポール素子12の中央部から外側(-y方向側)へ向かう部分と、外側(-y方向側)の端部から折り曲げられて内側(+y方向側)に向かう部分を有する。ダイポール導体12bは、ダイポール素子12の中央部から外側(+y方向側)へ向かう部分と、外側(+y方向側)の端部から折り曲げられて内側(-y方向側)に折り曲げられた部分を有する。つまり、ダイポール素子12は、折り曲げダイポールである。ダイポール素子12の中央部に給電点15が設けられている。ここでは、ダイポール素子12は、折り曲げダイポールとしたが、ダイポール導体12a、12bにおいて、外側へ向かう部分と内側へ向かう部分との間が導体で埋められていてもよく、内側へ向かう部分を有しなくもよい。
【0023】
接続部材13は、一対の接続導体13a、13bを備える。接続導体13a、13bは、ダイポール素子基板11に設けられた導電体層を加工して構成された板状の導電性部材である。ダイポール素子基板11上において、接続導体13aの一端部(+z方向側の端部)は、ダイポール導体12aの一端部(ダイポール素子12の中央部分における端部)に接続されている。そして、接続導体13aは、ダイポール導体12aの一端部からダイポール導体12aから離れる方向(-z方向)に延びる部分13a-1と、ダイポール導体12aに沿う方向(-y方向)に延びる部分13a-2とを有する。そして、接続導体13aは、ダイポール素子基板11の端部(-z方向の端部)まで延びる。なお、ダイポール素子基板11は接地板30(
図1(b)参照)に差し込まれて、接続導体13aと接地板30とが電気的に接続される。接続導体13aと接地板30との電気的な接続が容易になるように、接続導体13aは、接地板30側(-z方向側)の端部の幅が±y方向に広げられている。
【0024】
接続導体13aと同様に、ダイポール素子基板11上において、接続導体13bの一端部(+z方向側の端部)は、ダイポール導体12bの一端部(ダイポール素子12の中央部分における端部)に接続されている。そして、接続導体13bは、ダイポール導体12bの一端部からダイポール導体12bから離れる方向(-z方向)に延びる部分13b-1と、ダイポール導体12bに沿う方向(+y方向)に延びる部分13b-2とを有する。そして、接続導体13bは、ダイポール素子基板11の端部(-z方向の端部)まで延びる。なお、接続導体13bと接地板30とは、接続導体13aと同様に電気的に接続される。接続導体13bと接地板30との電気的な接続が容易になるように、接続導体13bは、接地板30側(-z方向側)の端部の幅が±y方向に広げられている。接続部材13は、ダイポール素子12と接地板30とを接続することから、接続部材と表記する。
なお、接続導体13aと接続導体13bとは、ダイポール素子基板11上において、接地板30側(-z方向側)の端部間が導電性部材で接続されていてもよい。
【0025】
ダイポール素子12(ダイポール導体12a、12b)及び接続部材13(接続導体13a、13b)は、ダイポール素子12のy方向の中心を通り接地板30に垂直な中心線(一点鎖線で示す。)に対して対称に設けられている。ダイポール素子12(ダイポール導体12a、12b)及び接続部材13(接続導体13a、13b)は、中心線に対して完全な対称性を有さなくてもよく、一部が異なっていてもよい。
【0026】
接続導体13a、13b間の空隙は、バラン14として機能する。
図2(a)に示すように、接続導体13a、13bの間(間隔)は、ダイポール素子12側ではダイポール導体12a、12bが対向する間隔であるが、接地板30側(-z方向側)の端部の間隔は、接地板30の表面に沿う方向(±y方向)に広げられている。つまり、ダイポール素子12側(+z方向側)が、長手方向が接地板30に垂直(±z方向)な四角形(
図2(b)では、長方形)であり、接地板30側(-z方向側)が、長手方向が接地板30に平行(±y方向)な四角形(
図2(b)では、長方形)である。つまり、
図2(b)に示すように、バラン14は、二つの長方形(点線で境を示す。)を合成した形状であって、接地板30側(-z方向側)を下側とした場合、“T”字の上下を逆にした“逆T”字状である。バラン(balun)は、平衡-非平衡変換回路として機能する。
【0027】
バラン14は、接続導体13aと接続導体13bとの間隔が、接地板30側(-z方向側)がダイポール素子12側(+z方向側)より広く設けられていればよい。接続導体13aと接続導体13bとの間(空隙)で構成されるバラン14の形状は、二つの長方形を合成した形状でなくてもよく、台形等の四角形が組み合わされた形状であってもよい。さらに、接続導体13aと接続導体13bとが直線状であってもよい。ダイポール導体12側(+z方向)を上底とし、接地板30側を下底としたとき、バラン14の形状は、下底が上底より広い台形であってもよい。
【0028】
図2(a)において、ダイポール素子12の長さ(±y方向における端部間の距離)をダイポール素子長L
D1、ダイポール素子12のダイポール導体12a、12bの無給電素子17側(+z方向側)の端部から接続部材13の接地板30側(-z方向側)の端部までの距離をダイポール素子高さH
D1とする。無給電素子17から接続部材13の接地板30側(-z方向側)の端部までの距離をダイポールアンテナ10のアンテナ高さH
L1とする。
【0029】
図2(c)に示すように、無給電素子17は、延伸部17aと、容量付加部17bとを備える。延伸部17aは、ダイポール素子12に対向して設けられ、ダイポール素子12に沿う方向(±y方向)に長手方向を有する板状の導電性部材である。容量付加部17bは、ダイポール素子12の給電点15に対向する延伸部17aから短手方向(±x方向)に張り出した部分である。張り出した部分を区別する場合、容量付加部17b-1、17b-2と表記する。容量付加部17bは、延伸部17aとダイポール素子12との間に静電容量を付加する。言い換えれば、容量付加部17bは、ダイポール素子12と延伸部17aとの間における静電容量に、さらに静電容量を追加して増加させる。ここでは、静電容量を付加することから容量付加部17bと表記する。なお、延伸部17aと容量付加部17bとは、無給電素子基板16上に設けられた導電体層を加工して設けられ、連続している。
図2(c)では、容量付加部17b-1、17b-2の平面形状は、三角形である。容量付加部17b-1、17b-2を囲む形状(破線で示す形状)は、正方形を無給電素子基板16の面状において45度回転させた菱形である。なお、容量付加部17b-1、17b-2を囲む形状は、円形、四角形など、正方形以外の形状であってもよい。
【0030】
図2(c)において、無給電素子17の長手方向(±y方向)の長さを無給電素子長L
N1とする。ここでは、無給電素子長L
N1は、ダイポール素子長L
D1に比べて小さく設定されている。よって、ダイポール素子長L
D1は、ダイポールアンテナ10のアンテナ長L
L1である(L
D1=L
L1)。周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合において、電圧定在波比VSWR及び指向性を、後述する比較例1と同等に調整して求めたアンテナ長L
L1(47mm)、ダイポール素子高さH
D1(8.5mm)、及びアンテナ高さH
L1(10.5mm)を( )内に示す。なお、実施例、後述する比較例1、2との間で別しない場合は、アンテナ長L
L、ダイポール素子高さH
D、アンテナ高さH
Lと表記する。
【0031】
次に、比較例1、2を説明する。
図3は、比較例1のダイポールアンテナ40を説明する図である。
図3(a)は、ダイポールアンテナ40の斜視図、
図3(b)は、ダイポールアンテナ40の側面図である。接地板30は、前述した実施例の接地板30と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
図3(a)は、接地板30の右方向をx方向、接地板30の上方向をy方向、及び接地板30に垂直な方向をz方向とする。
図3(b)は、x方向から見た側面図である。
図3(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、及び紙面の表面方向がx方向である。
【0032】
ダイポールアンテナ40は、ダイポール素子42と接続部材43とを備える。ここでは、一例として、ダイポール素子42及び接続部材43は、ダイポール素子基板41に設けられている。ダイポール素子42及び接続部材43は、ダイポール素子基板41の一方の面に設けられている。ダイポール素子基板41は、接地板30に垂直に設けられている。ダイポールアンテナ40は、無給電素子を備えない。ダイポールアンテナ40では、無給電素子を設けなくとも周波数帯域が広くとれる。ダイポール素子基板41は、実施例のダイポール素子基板11と同様の誘電体基板である。
【0033】
図4は、比較例1のダイポールアンテナ40の構成を説明する図である。
図4(a)は、ダイポール素子基板41の平面図、
図4(b)は、ダイポール素子基板41において形成されるバランの形状である。
図4(a)、(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、紙面の表面方向がx方向である。
図4(b)は、後述する接続導体43a、43bの間の空隙を模式的に取り出して示した図である。
【0034】
図4(a)に示すように、ダイポール素子基板41には、ダイポール素子42及び接続部材43が設けられている。ダイポール素子42は、ダイポールを構成する一対のダイポール導体42a、42bを備える。ダイポール導体42a、42bは、接地板30に平行な方向(±y方向)に並ぶ。ダイポール導体42a、42bは、ダイポール素子基板41に設けられた導電体層を加工して構成された板状の導電性部材である。ダイポール素子42の中央部に給電点45が設けられている。
【0035】
接続部材43は、一対の接続導体43a、43bを備える。接続導体43a、43bは、ダイポール導体42a、42bから、接地板30側に向かって延びる。接続導体43a、43bは、ダイポール素子基板41に設けられた導電体層を加工して構成された板状の導電性部材である。
図4(a)に示すように、ダイポール素子基板41の接地板30側(-z方向側)の端部において、接続導体43a、43bが互いに接続されているが、接続されていなくともよい。
【0036】
ダイポール素子42(ダイポール導体42a、42b)及び接続部材43(接続導体43a、43b)は、ダイポール素子42のy方向の中心を通り接地板30に垂直な中心線(一点鎖線で示す。)に対して対称に設けられている。
【0037】
接続導体43a、43bの間の空隙は、バラン44として機能する。
図4(a)に示すように、接続導体43a、43bの間(間隔)は、ダイポール素子42側から接地板30に接続されるダイポール素子基板41の接地板30側(-z方向側)の端部まで、同じ幅で構成されている。つまり、バラン44は、
図4(b)に示すように、長手方向が接地板30に垂直な四角形である。
【0038】
図4(a)において、ダイポール素子42の長さ(±y方向における端部間の距離)をダイポール素子長L
D4、ダイポール素子12のダイポール導体42a、42bの接地板30側と反対側(+z方向側)の端部から接続部材43の接地板30側(-z方向側)の端部までの距離をダイポール素子高さH
L4とする。ダイポール素子長L
D4は、ダイポールアンテナ40のアンテナ長L
L4である(L
D4=L
L4)。周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合におけるアンテナ長L
L4(49mm)、及びアンテナ高さH
L4(34mm)を( )内に示す。
【0039】
図5は、比較例2のダイポールアンテナ50を説明する図である。
図5(a)は、ダイポールアンテナ50の斜視図、
図5(b)は、ダイポールアンテナ50の側面図である。接地板30は、実施例と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
図5(a)では、接地板30の右方向をx方向、接地板30の上方向をy方向、及び接地板30に垂直な方向をz方向とする。
図5(b)は、x方向から見た側面図である。
図5(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、及び紙面の表面方向がx方向である。
図5(a)では、
図1(a)と同様に、後述する無給電素子基板56を透明とし、無給電素子基板56の裏面側(-z方向側)に配置されるダイポール素子基板11、ダイポール素子12などを見えるようにしている。
【0040】
ダイポールアンテナ50は、ダイポール素子12と、接続部材13と、無給電素子57とを備える。ダイポール素子12及び接続部材13は、ダイポール素子基板11に設けられている。ダイポール素子12、接続部材13、及びダイポール素子基板11は、実施例と同様であるので、説明を省略する。無給電素子57は、無給電素子基板56に設けられている。無給電素子基板56は、実施例の無給電素子基板16と同様の誘電体基板である。
【0041】
図6は、比較例2のダイポールアンテナ50の構成を説明する図である。
図6(a)は、ダイポール素子基板11の平面図、
図6(b)は、ダイポール素子基板11において形成されるバランの形状、
図6(c)は、無給電素子基板56の平面図である。
図6(a)には、ダイポール素子基板11に加えて、無給電素子基板56及び無給電素子57を示している。
図6(a)は、ダイポールアンテナ50の側面図に当たる。
図6(a)、(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、紙面の表面方向がx方向である。
図6(b)は、接続導体13a、13bの間の空隙を模式的に取り出して示した図である。
【0042】
図6(a)に示す、ダイポール素子基板11に設けられたダイポール素子12及び接続部材13は、
図2(a)に示した実施例と同様であるので説明を省略する。
図6(b)に示す、バランの形状は、
図2(b)に示した実施例と同様であるので説明を省略する。
【0043】
図6(c)に示すように、無給電素子57は、
図2(c)に示した実施例の無給電素子17の延伸部17aと同じである。無給電素子57は、容量付加部17bを備えない。なお、無給電素子57の長手方向は、無給電素子長L
N5である。ここでは、実施例の無給電素子17の無給電素子長L
N1と同じである(L
N5=L
N1)。
【0044】
図6(a)に示すように、ダイポールアンテナ50におけるダイポール素子長L
D1、及びダイポール素子高さH
D1は、実施例のダイポールアンテナ10と同じである。また、
図6(c)に示した無給電素子57の無給電素子長L
N5はダイポール素子長L
D1より短く設定している(L
N5<L
D1)ので、アンテナ長L
L5は、ダイポール素子長L
D1と同じである(L
L5=L
D1)。
【0045】
無給電素子57から接続部材13の接地板30側(-z方向側)の端部までの距離をダイポールアンテナ50のアンテナ高さHL5とする。周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合において、電圧定在波比VSWR及び指向性を、比較例1と同様に調整して求めたアンテナ長LL1(47mm)、ダイポール素子高さHD1(8.5mm)、及びアンテナ高さHL5(17mm)を( )内に示す。
【0046】
実施例、比較例1、及び比較例2において、周波数帯の中心周波数を2.45GHzとした場合のアンテナ長L
L、ダイポール素子高さH
D、及びアンテナ高さH
Lを比較する。実施例のダイポールアンテナ10は、アンテナ長L
L1が47mm、ダイポール素子高さH
D1が8.5mm、アンテナ高さH
L1が10.5mmである(
図2(a)参照)。一方、比較例1のダイポールアンテナ40は、アンテナ長L
L4が49mm、アンテナ高さH
L4(=ダイポール素子高さH
L4)が34mmである(
図4(a)参照)。つまり、実施例のダイポールアンテナ10は、比較例1のダイポールアンテナ40に比べ、アンテナ長L
Lが短くなるとともに、アンテナ高さH
Lが1/3になる。
【0047】
また、比較例2のダイポールアンテナ50は、ダイポール素子12及び接続部材13が実施例と同じであるので、ダイポール素子高さH
D1が8.5mmと実施例と同じである。また、アンテナ長L
L1が47mmと実施例と同じである。しかし、比較例2のダイポールアンテナ50は、アンテナ高さH
L5が17mmである(
図6(a)参照)。つまり、比較例2のダイポールアンテナ50は、比較例1のダイポールアンテナ40に比べ、アンテナ長L
Lが短くなるとともに、アンテナ高さH
Lが1/2になっている。しかし、実施例のダイポールアンテナ10は、比較例2のダイポールアンテナ50に比べ、アンテナ高さH
Lがさらに低くなっている。
【0048】
以上説明したように、実施例のダイポールアンテナ10及び比較例2のダイポールアンテナ50において示したように、接続部材13の接地板30に接続される部分の間隔をダイポール素子12に接続される部分の間隔に比べて広くすることによりダイポール素子高さHDが低くなり、比較例1のダイポールアンテナ40に比べてアンテナ高さHLを低くできる。さらに、実施例のダイポールアンテナ10において示したように、無給電素子17に容量付加部17bを設けることにより、アンテナ高さHLをさらに低くすることができる。
【0049】
容量付加部17bは、ダイポール素子12との間の静電容量を増加させる。容量付加部17bの形状、面積などは、比較例2を基準に、アンテナ特性を考慮して、ダイポール素子12と無給電素子17との間の距離(アンテナ高さHL)が短くなるように設定される。容量付加部17bの設ける位置は、ダイポール素子12の端部側(±y方向の端部側)にダイポール素子12に対向する部分に設ける場合に比べ、給電点15と対向する無給電素子17の部分に設けられるのがよい。これは、ダイポール素子12の給電点15における電界が最も高く、静電容量を増加させる効果が高いことによる。
【0050】
以上説明したように、ダイポールアンテナ10は、アンテナ高さHLが低い低姿勢なアンテナになる。また、ダイポールアンテナ10は、無給電素子17がダイポール素子12の方向に長手方向が沿って設けられている。言い換えれば、ダイポールアンテナ10の短手方向の幅が狭くできる。すなわち、ダイポールアンテナ10は、低姿勢で小型なアンテナとなる。
【0051】
以上において、ダイポールアンテナ10において、ダイポール素子12は、ダイポール素子基板11に設けられた板状の導電性部材とし、無給電素子17は、無給電素子基板16に設けられた板状の導電性部材であるとした。ダイポール素子12、無給電素子17は、線状の導電性部材であってもよい。この場合、無給電素子17の容量付加部17bは、板状の導電性部材で構成し、線状に構成した延伸部17aに接続して構成してもよい。容量付加部17bは、接地板30に平行でなくてもよい。例えば、容量付加部17bは、延伸部17aが延伸する方向から見て、“V”字状、又は“V”字の上下を逆にした“逆V”字状になっていてもよい。
【0052】
(周波数共用アンテナ1)
図7は、本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1を説明する図である。
図7(a)は、周波数共用アンテナ1の斜視図、
図7(b)は、周波数共用アンテナ1の側面図である。
図7(a)に示すように、接地板30の右方向をx方向、接地板30の上方向をy方向、及び接地板30に垂直な方向をz方向とする。
図7(b)は、x方向から見た側面図である。
図7(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、及び紙面の表面方向がx方向である。
【0053】
図7(a)に示すように、周波数共用アンテナ1は、低周波数帯アンテナの一例であるダイポールアンテナ10-1、10-2と、4個の高周波数帯アンテナの一例であるパッチアンテナ20(区別する場合には、パッチアンテナ20-1~20-4と表記する。)と、接地板30とを備える。低周波数帯は、高周波数帯より周波数が低い周波数帯である。ここで、低周波数帯が第1の周波数帯の一例であり、高周波数帯が第2の周波数帯の一例である。
【0054】
接地板30は、
図1(a)、(b)で実施例として示したダイポールアンテナ10の場合と同じである。ダイポールアンテナ10-1、10-2と4個のパッチアンテナ20とは、接地板30上に配列されている。周波数共用アンテナ1は、平面アンテナである。周波数共用アンテナ1は、y方向が地表に垂直に設置されるとする。x方向を水平方向、y方向を垂直方向と表記する。なお、周波数共用アンテナ1は、必ずしもy方向を地表に対して垂直に設置されなくてもよい。
【0055】
2個のダイポールアンテナ10-1、10-2は、
図1(a)、(b)及び
図2(a)、(b)、(c)で説明したダイポールアンテナ10である。周波数共用アンテナ1では、垂直方向(y方向)に設けられたダイポールアンテナ10-1と、水平方向(x方向)に設けられたダイポールアンテナ10-2とは、それぞれの中央部で互いに交差する。ダイポールアンテナ10-1とダイポールアンテナ10-2とは、クロスダイポールを構成する。ダイポールアンテナ10-1は、垂直方向の偏波(以下では、垂直偏波と表記する。)を送受信し、ダイポールアンテナ10-2は、垂直方向の偏波と交差する水平方向の偏波(以下では、水平偏波と表記する。)を送受信する。
図7(b)には、
図1(b)と同様に、ダイポールアンテナ10-1の側面が示されている。ダイポールアンテナ10-1が第1のアンテナの一例であり、パッチアンテナ20が第2のアンテナの一例であり、ダイポールアンテナ10-2が第3のアンテナの一例である。
【0056】
ダイポールアンテナ10-1の無給電素子17-1は、
図2(c)に示した実施例の無給電素子17である。ダイポールアンテナ10-2の無給電素子17-2は、
図2(c)に示した無給電素子基板16上において実施例の無給電素子17を90度回転させた無給電素子17である。無給電素子17-1と無給電素子17-2とが重ね合わせられて、無給電素子基板16に一体化して設けられている。言い換えれば、無給電素子17-1の延伸部17-1aと無給電素子17-2の延伸部17-2aとがそれぞれの中央部で交差する。そして、容量付加部17-1b、17-2bが中央部で重なって共通になっている。なお、
図7(a)において、容量付加部17-1b、17-2bの一部(-x側及び-y側の一部)に符号を付している。
【0057】
4個のパッチアンテナ20は、無給電素子付き(後述する
図8(a)参照)である。
図7(a)に示すように、4個のパッチアンテナ20は、接地板30上に水平方向(x方向)に2個、垂直方向(y方向)に2個並ぶように配列されている。つまり、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2とが水平方向(x方向)に配列され、パッチアンテナ20-3とパッチアンテナ20-4とが水平方向(x方向)に配列されている。パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-3とが垂直方向(y方向)に配列され、パッチアンテナ20-2とパッチアンテナ20-4とが垂直方向(y方向)に配列されている。そして、水平方向(x方向)に配列された、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-2との間、及びパッチアンテナ20-3とパッチアンテナ20-4との間に、ダイポールアンテナ10-1が設けられている。垂直方向(y方向)に配列された、パッチアンテナ20-1とパッチアンテナ20-3との間、及びパッチアンテナ20-2とパッチアンテナ20-4との間に、ダイポールアンテナ10-2が設けられている。
【0058】
パッチアンテナ20は、パッチ素子22と無給電素子27とを備える。ここでは、パッチ素子22はパッチ素子基板21に設けられ、無給電素子27は無給電素子基板26に設けられている。
【0059】
図7(b)に示すように、パッチ素子基板21は、接地板30上(+z方向側)に設置されている。なお、パッチ素子基板21の一方の面(+z方向側の面)にパッチ素子22が設けられ、パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)に接地導体23が設けられている。パッチ素子基板21は、接地導体23が接地板30に接触するように配置され、接地導体23が接地板30と電気的に接続されている。無給電素子基板26の一方の面(-z方向の面)に無給電素子27が設けられている。無給電素子基板26は、無給電素子27がパッチ素子22に対向するように、パッチ素子基板21から予め定められた距離に、パッチ素子基板21に平行に設けられている。さらに、無給電素子基板26の上方(+z方向)に、ダイポールアンテナ10-1、10-2の無給電素子17-1、17-2が設けられた無給電素子基板16が配置されている。
【0060】
ダイポールアンテナ10が設けられたダイポール素子基板11が、パッチアンテナ20の無給電素子基板26、及びパッチ素子基板21を貫いて接地板30に接続されている(
図7(a)参照)。
【0061】
上記のパッチ素子基板21、及び無給電素子基板26は、ダイポール素子基板11、及び無給電素子基板16と同様に、誘電体基板である。パッチ素子22、及び無給電素子27は、誘電体基板に設けられた導電体層を加工することにより形成されている。接地導体23は、誘電体基板の全面、又は大部分の面積を覆うように設けられた導電体層で構成されている。接地板30には、パッチアンテナ20との間で信号を送受信する配線やコネクタが設けられてもよい。
【0062】
図8は、パッチアンテナ20の構成を説明する図である。
図8(a)は、4個のパッチアンテナ20の斜視図、
図8(b)は、4個のパッチアンテナ20の側面図、
図8(c)は、パッチ素子基板21の平面図、
図8(d)は、無給電素子基板26の平面図である。
図8(a)におけるx方向、y方向、及びz方向は、
図7(a)と同様である。
図8(b)は、x方向から見たパッチアンテナ20の側面図である。
図8(b)において、紙面の右方向がy方向、紙面の上方向がz方向、紙面の表面方向がx方向である。
図8(c)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表面方向がz方向である。
図8(d)において、紙面の右方向がx方向、紙面の下方向がy方向、紙面の裏面方向がz方向である。
【0063】
図8(a)に示す、4個のパッチアンテナ20の斜視図は、
図7(a)に示した周波数共用アンテナ1の斜視図から、2個のダイポールアンテナ10-1、10-2を除いたものである。ここでは、4個のパッチアンテナ20を一括して構成しているので、4個のパッチアンテナ20で説明する。なお、
図8(a)、(b)には、接地板30を合わせて示している。
【0064】
図8(a)、(b)に示すように、パッチ素子22は、パッチ素子基板21の一方の表面(+z方向側の面)に設けられている。パッチ素子22は、
図8(c)に示すように、平面形状が八角形の導電性部材で構成されている。そして、パッチ素子22は、八角形の互いに対向する辺が平行である。また、八角形において、対向する一組の辺が水平方向(x方向)と平行に設けられ、他の対向する一組の辺が垂直方向(y方向)と平行に設けられている。そして、水平方向(x方向)と平行な一組の辺と、垂直方向(y方向)と平行な他の対向する一組の辺との間の辺は、+45度又は-45度に設定されている。ここで、+45度とは、x方向からy方向へ+45度傾いた角度であり、-45度とは、x方向から-y方向へ-45度傾いた角度である。
【0065】
各パッチ素子22には、2個の給電点24(給電点24a、24b)が水平方向(x方向)に並んで設けられている。給電点24aは、水平方向の右側(+x方向側)、給電点24bが水平方向の左側(-x方向側)に設けられている。給電点24aは、+45度偏波を送受信し、給電点24bは、-45度偏波を送受信する。
【0066】
パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)に設けられた接地導体23は、所謂パッチアンテナの地板である。なお、接地導体23は、パッチ素子基板21の裏面の全面に設けられなくともよく、パッチ素子基板21の裏面側においてパッチ素子22に対向して設けられていればよい。
【0067】
パッチ素子22は、一辺長WPの正方形に内接する八角形である。そして、隣接する2個のパッチ素子22の中心間隔は、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)共に距離DPである。
【0068】
図8(a)、(b)に示すように、無給電素子基板26の一方の面(-z方向側の面)に設けられた無給電素子27は、導電性部材で構成され、パッチ素子22に対向して設けられている。
図8(d)に示すように、無給電素子27は、平面形状が半径Rの円形である。隣接する2個の無給電素子27の中心間隔は、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)共に、パッチ素子22間と同じ距離D
Pである。+z方向側から見た場合、無給電素子27は、パッチ素子22の全面を覆って対向する。無給電素子27の直径2×Rは、パッチ素子22の八角形が内接する正方形の一辺長W
Pより大きく設定されている(W
P>2×R)。なお、無給電素子27は、+z方向側から見た場合において、パッチ素子22の全面を覆っていなくともよい。
【0069】
図8(b)に示すように、パッチアンテナ20の無給電素子27から接地板30までの距離がパッチアンテナ20のアンテナ高さH
H2である。
【0070】
図7(a)、(b)に示したように、パッチアンテナ20のアンテナ高さH
H2は、ダイポールアンテナ10のアンテナ高さH
L1に比べて低い(H
L1>H
H2)。低周波帯アンテナにダイポールアンテナ10を用いることで、周波数共用アンテナ1のアンテナ高さHは、ダイポールアンテナ10のアンテナ高さH
L1で決まる。周波数共用アンテナ1は、低姿勢のアンテナとなる。
【0071】
ダイポールアンテナ10の無給電素子17は、ダイポール素子12に沿った方向を長手方向とする幅の狭い長方形である。よって、パッチアンテナ20側に張り出して、パッチアンテナ20の一部又は全部を覆うことが抑制される。2個のダイポールアンテナ10を組み合わせたクロスダイポールとしても、ダイポールアンテナ10の容量付加部17b(
図2(b)参照)は、2個のダイポールアンテナ10がクロスする部分(給電点15に対向する部分)に位置する(
図7(a)参照)。よって、容量付加部17bがパッチアンテナ20側に張り出してパッチアンテナ20の一部又は全部を覆うことが抑制される。
【0072】
さらに、ダイポールアンテナ10のアンテナ高さHL1は、比較例1のダイポールアンテナ40のアンテナ高さHL4に比べ低い。パッチアンテナ20のアンテナ高さHH2は、ダイポールアンテナ10のアンテナ高さHL1より低い。しかし、ダイポールアンテナ10を用いれば、アンテナ高さHL1より高いアンテナ高さHL4のダイポールアンテナ40を用いる場合に比べ、パッチアンテナ20の特性に及ぼす影響が低減される。よって、低周波数帯アンテナの一例であるダイポールアンテナ10に高周波数帯アンテナの一例であるパッチアンテナ20をより近づけて配置でき、周波数共用アンテナ1が小型化できる。
【0073】
周波数共用アンテナ1では、直交する偏波を送受信する2個の低周波数帯アンテナの一例であるダイポールアンテナ10に対して、4個の高周波数帯アンテナの一例であるパッチアンテナ20を設けたが、パッチアンテナ20は、1個でも2個でもよい。
【0074】
本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1における高周波数帯アンテナの一例としてパッチアンテナ20を用いたが、ダイポールアンテナ10のダイポール素子12と同様のダイポール素子を用いてもよい。周波数共用アンテナ1では、低周波数帯アンテナの一例であるダイポールアンテナ10は、水平偏波と垂直偏波とを送受信し、高周波数帯アンテナの一例であるパッチアンテナ20は、±45度偏波を送受信するとした。しかし、高周波数帯アンテナが、水平偏波と垂直偏波とを送受信する構成であってもよい。また、低周波数帯アンテナが、±45度偏波を送受信する構成であってもよい。
【0075】
本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1は、偏波共用としたが、片偏波としてもよい。
【0076】
本実施の形態が適用される周波数共用アンテナ1では、接地電位に設定される接地板30を設けたが、接地板30の代わりに、パッチ素子基板21の他方の面(-z方向側の面)に設けられた接地導体23を用いてもよい。
【0077】
さらに、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0078】
1…周波数共用アンテナ、10、10-1、10-2、40、50…ダイポールアンテナ、11、41…ダイポール素子基板、12、42…ダイポール素子、12a、12b、42a、42b…ダイポール導体、13、43…接続部材、13a、13b、43a、43b…接続導体、14、44…バラン、15、24、24a、24b、45…給電点、16、26、56…無給電素子基板、17、17-1、17-2、27、57…無給電素子、17a…延伸部、17b、17b-1、17b-2…容量付加部、20、20-1、20-2、20-3、20-4…パッチアンテナ、21…パッチ素子基板、22…パッチ素子、23…接地導体、30…接地板