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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122204
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】燃料の製造装置及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240902BHJP
   F23C 1/00 20060101ALI20240902BHJP
   F23D 14/66 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C01B3/04 B
F23C1/00 301
F23D14/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029629
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠宜
(72)【発明者】
【氏名】森 晃一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義之
【テーマコード(参考)】
3K017
3K091
【Fターム(参考)】
3K017DC03
3K091AA20
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC17
(57)【要約】
【課題】アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、燃料製造の省エネルギー化が可能な製造装置、並びに、該製造装置を含む燃焼装置を提供する。
【解決手段】アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、熱媒体との熱交換により、液化アンモニアからアンモニアガスを生成するための気化部;該気化部に接続され、該アンモニアガスの少なくとも一部を分解反応に供することによって水素含有ガスを生成するための分解反応部;並びに、燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と分解反応部との間で熱交換を行うための第1熱交換部、及び、燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と上記熱媒体との間で熱交換を行うための第2熱交換部からなる群より選択される少なくとも1つ;を含む製造装置、並びに、該製造装置を含む燃焼装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、
熱媒体との熱交換により、液化アンモニアからアンモニアガスを生成するための気化部と、
前記気化部に接続され、前記アンモニアガスの少なくとも一部を分解反応に供することによって水素含有ガスを生成するための分解反応部と、
下記する第1熱交換部及び第2熱交換部からなる群より選択される少なくとも1つと、
を含む、製造装置。
第1熱交換部:前記燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と、前記分解反応部との間で熱交換を行うための熱交換部
第2熱交換部:前記燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と、前記熱媒体との間で熱交換を行うための熱交換部
【請求項2】
前記分解反応部において、前記アンモニアガスの一部から前記水素含有ガスが生成され、
前記製造装置は、前記アンモニアガスの残部と前記水素含有ガスとを混合して、前記燃料を生成するための混合部をさらに含む、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記アンモニアガスの全部が前記分解反応部に導入されることにより前記水素含有ガスが生成され、
前記水素含有ガスが前記燃料である、請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部の両方を含む、請求項1に記載の製造装置。
【請求項5】
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とは、前記帯熱媒体を流通させるための流路で接続されており、
前記第2熱交換部で熱交換される帯熱媒体は、前記第1熱交換部で熱交換された後の帯熱媒体である、請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造装置と、
前記製造装置によって製造される前記燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
を含む、燃焼装置。
【請求項7】
前記燃焼炉がリジェネレーティブバーナを備える、請求項6に記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置、並びに、該製造装置を含む燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会へ向けて、化石燃料に替わる、水素やアンモニアのような燃焼時に炭酸ガスを発生しない燃料を使用する動きが加速している。工業炉においても、アンモニアを燃料として利用するための開発が始まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-015464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアの燃焼速度は、化石燃料に比べて遅く(8cm/sec、参考:メタン43cm/sec)、燃焼温度も低いことから、燃焼時に失火しやすいことが一般的に知られている。燃焼の安定化のために酸素富化の条件で燃焼させる方法があるが、この場合、燃焼温度が高くなりすぎて、温暖化係数の大きいNOxが排出されるという問題がある。この問題を解決し、燃焼を安定化させ得る方法として、特開2022-015464号公報(特許文献1)には、アンモニアの分解により、燃焼速度の大きい水素ガス(346cm/sec)と窒素ガスとを生成させ、該水素ガス及び該窒素ガスとアンモニアとを含む改質アンモニア燃料を燃焼用空気と混合して燃焼させることが記載されている。
【0005】
下記式で表されるように、アンモニアの分解反応は吸熱反応である。そのため、特許文献1に記載の方法では、アンモニア分解のための熱源としてヒーターを設けている。この方法では、改質アンモニア燃料を製造するために、アンモニア分解のための余分のエネルギー(46kJ/mol)が必要となり、該エネルギーをヒーターによって供給している。
【0006】
【化1】
【0007】
本発明の目的は、アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、燃料製造の省エネルギー化が可能な製造装置、並びに、該製造装置を含む燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の製造装置及び燃焼装置を提供する。
[1] アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、
熱媒体との熱交換により、液化アンモニアからアンモニアガスを生成するための気化部と、
前記気化部に接続され、前記アンモニアガスの少なくとも一部を分解反応に供することによって水素含有ガスを生成するための分解反応部と、
下記する第1熱交換部及び第2熱交換部からなる群より選択される少なくとも1つと、
を含む、製造装置。
第1熱交換部:前記燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と、前記分解反応部との間で熱交換を行うための熱交換部
第2熱交換部:前記燃料の燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体と、前記熱媒体との間で熱交換を行うための熱交換部
[2] 前記分解反応部において、前記アンモニアガスの一部から前記水素含有ガスが生成され、
前記製造装置は、前記アンモニアガスの残部と前記水素含有ガスとを混合して、前記燃料を生成するための混合部をさらに含む、[1]に記載の製造装置。
[3] 前記アンモニアガスの全部が前記分解反応部に導入されることにより前記水素含有ガスが生成され、
前記水素含有ガスが前記燃料である、[1]に記載の製造装置。
[4] 前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部の両方を含む、[1]に記載の製造装置。
[5] 前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とは、前記帯熱媒体を流通させるための流路で接続されており、
前記第2熱交換部で熱交換される帯熱媒体は、前記第1熱交換部で熱交換された後の帯熱媒体である、[4]に記載の製造装置。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の製造装置と、
前記製造装置によって製造される前記燃料を燃焼させるための燃焼炉と、
を含む、燃焼装置。
[7] 前記燃焼炉がリジェネレーティブバーナを備える、[6]に記載の燃焼装置。
【発明の効果】
【0009】
アンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置であって、燃料製造の省エネルギー化が可能な製造装置、並びに、該製造装置を含む燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
図2】リジェネレーティブバーナの動作を説明する図である。
図3】リジェネレーティブバーナの動作を説明する図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
図7】本発明の第5実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
図8】本発明の第6実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<第1実施形態>
(1)燃料の製造装置
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。図1に示される燃料の製造装置10は、アンモニア及び水素を含有する燃料(以下、単に「燃料」ともいう。)Xを製造するための装置である。
【0013】
製造装置10は、熱媒体Qとの熱交換により、液化アンモニア101からアンモニア(NH)ガスYを生成するための気化部103;気化部103に接続され、生成したNHガスYの少なくとも一部を分解反応に供することによって水素(H)含有ガスZ1を生成するための分解反応部105;製造された燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vと、分解反応部105との間で熱交換を行うための第1熱交換部106;製造された燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vと、熱媒体Qとの間で熱交換を行うための第2熱交換部108を含む。
本明細書において、「製造された燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体V」とは、製造された燃料Xの燃焼によって生じる、熱を帯びた排ガス、又は、該排ガスとの熱交換によって熱を帯びた媒体を意味する。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスである。
【0014】
分解反応部105は、NHガスYの分解反応を触媒する触媒充填部を備える。本実施形態では、気化部103で生成したNHガスYの一部が分解反応部105の触媒充填部に導入され、分解反応に供される。分解反応によってH含有ガスZ1が生成される。H含有ガスZ1は、Hガス及び窒素(N)ガスを含有し、さらにNHガスを含有していてもよい。触媒充填部に導入されたNHガスYが完全に分解する場合、生成されるH含有ガスZ1は、NHガスを含有せず、理論上、HとNとのモル比が3:1のH/N混合ガスである。
【0015】
触媒充填部に充填されるアンモニア分解触媒としては、例えば、Ru系触媒、Ni系触媒、Fe系触媒、Co系触媒等が挙げられる。1種又は2種以上の触媒を用いてもよい。アンモニア分解触媒は、低温でも分解能力が高い触媒であることが好ましい。
【0016】
アンモニア分解触媒としては、具体的には、金属Ru、金属Ni、NiO等のNi化合物、金属Fe、Fe、Fe等のFe化合物、金属Co、CoO等のCo化合物等が挙げられる。アンモニア分解触媒は、上記触媒を担体に担持させたものであってもよい。担体としては、例えば、MgO、活性炭、MgZrO、BN等が挙げられる。
【0017】
第1熱交換部106は、NHガスYの流路を形成している触媒充填部の周囲を包囲する、帯熱媒体Vを流通させるための流路であってよい。該流路に帯熱媒体Vを流通させて熱交換を行うことにより、触媒充填部に熱エネルギーを与えることができ、これによって触媒充填部が昇温されるため、NHガスYの分解反応を開始又は促進させることができる。
【0018】
分解反応部105は、第1熱交換部106に加えて、触媒充填部を加熱するための加熱手段120をさらに備えていてもよい。
加熱手段120としては、例えば、ヒータ、スチーム、バーナ等が挙げられる。また、加熱手段120は、燃料Xの燃焼又は熱分解によって生じる熱を、分解反応部との間で熱交換するための熱交換器であってもよい。
【0019】
第2熱交換部108は、帯熱媒体Vと熱媒体Qとの間で熱交換を行うための熱交換部である。熱媒体Qは、気化部103において液化アンモニア101に熱エネルギーを与えてNHガスYを生成させる。第2熱交換部108では、上記熱交換により熱媒体Qが昇温される。熱媒体Qとしては、例えば、水(例えば蒸気)等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の製造装置は、混合部110をさらに含む。混合部110において、気化部103で生成したNHガスYの残部(分解反応部105に導入されないNHガスY)と、分解反応部105から導出されたH含有ガスZ1とが混合されることにより、燃料Xが得られる。燃料Xは、NHガス、Hガス及びNガスを含有する。
【0021】
混合部110としては、例えば、マスフローコントローラ(MFC)や、特開平11-076789号公報に記載のガス混合器等を用いることができる。これらの混合器を用いることにより、NHガスYとH含有ガスZ1との混合比率及び得られる燃料Xの流量を調整することができる。
【0022】
本実施形態の製造装置10は、第1熱交換部106及び第2熱交換部108の両方を含む。図1に示されるように、製造装置10は、燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vを第1熱交換部106へ導入するための第1流路140、及び、第1熱交換部106と第2熱交換部108とを接続する、帯熱媒体Vを流通させるための第2流路150を有する。帯熱媒体Vを第1流路140により第1熱交換部106へ導入し、次いで、第2流路150により第2熱交換部108へ導入することにより、帯熱媒体Vを、触媒充填部を加熱するための熱源及び熱媒体Qを加熱するための熱源として利用することができる。この場合、第2熱交換部108で熱交換される帯熱媒体Vは、第1熱交換部106で熱交換された後の帯熱媒体である。
【0023】
図1に示されるように、製造装置10は、第1熱交換部106よりも上流において第1流路140から分岐する第3流路160と、第3流路160に接続されるとともに、第1熱交換部106及び第4熱交換部109を介することなく第2熱交換部108よりも上流において第2流路150に接続される第4流路170とで構成される第1バイパス流路を有していてもよい。第1バイパス流路を流通する帯熱媒体Vは、第1熱交換部106及び第4熱交換部109を通ることなく、熱媒体Qを加熱するための熱源としてのみ利用することができる。第4熱交換部109については後述する。
【0024】
また、図1に示されるように、製造装置10は、第1熱交換部106よりも上流において第1流路140から分岐する第3流路160と、第3流路160に接続されるとともに、第1熱交換部106を介することなく第4熱交換部109よりも上流において第2流路150に接続される第5流路180とで構成される第2バイパス流路を有していてもよい。第2バイパス流路を流通する帯熱媒体Vは、第1熱交換部106を通ることなく、混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置10が第4熱交換部109を有する場合)、及び、熱媒体Qを加熱するための熱源としてのみ利用することができる。
【0025】
製造装置10は、第1バイパス流路及び第2バイパス流路のいずれか一方を有していてもよく、両方を有していてもよい。製造装置10は、切替バルブ等を備えることにより、帯熱媒体Vの流通経路を、第1流路140及び第2流路150からなる第1熱交換部106を通る流路と、第1バイパス流路との間、さらには、第1熱交換部106を通る流路と、第1バイパス流路と、第2バイパス流路との間で切り替えることができるように構成されていてもよい。
【0026】
上記のように、本実施形態では、燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vを、分解反応部105におけるアンモニア分解反応のための熱源、及び、熱媒体Qを加熱するための熱源の少なくとも1つとして有効利用する。これにより、燃料Xの燃焼によって生じる熱エネルギーを有効利用することができるため、燃料製造の省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
本実施形態の製造装置10は、帯熱媒体Vを、少なくとも分解反応部105におけるアンモニア分解反応のための熱源として利用するものであることが好ましく、分解反応部105におけるアンモニア分解反応のための熱源、及び、熱媒体Qを加熱するための熱源として利用するものであることがより好ましい。
【0028】
このために、製造装置10は、帯熱媒体Vを第1熱交換部106へ導入するための第1流路140を少なくとも有することが好ましく、第1熱交換部106と第2熱交換部108とを接続する第2流路150をさらに有することがより好ましい。上述のように、製造装置10は、第1バイパス流路及び第2バイパス流路をさらに有することができる。
【0029】
製造装置10による燃料の製造についてより具体的に説明する。
まず、液化アンモニア101を圧縮機102によって圧縮した後、気化部103に導入して、NHガスYを生成させる。次に、気化部103で生成したNHガスYをガスホルダ104に導入した後、その一部を分解反応部105に導入して、分解反応に供する。これにより、H含有ガスZ1が生成する。分解反応部105に導入されることとなるNHガスYは、第3熱交換部107での熱交換により加熱されることが好ましい。第3熱交換部107は、分解反応部105に導入されることとなるNHガスYと、分解反応部105から導出されたH含有ガスZ1との間で熱交換を行うための熱交換部である。分解反応部105に導入されることとなるNHガスYを第3熱交換部107での熱交換によって加熱することにより、触媒充填部内の温度を高く維持することが可能になって分解反応の効率化を図ることができるとともに、アンモニア分解反応のために供給されるべき帯熱媒体V及び/又は加熱手段120からの熱エネルギー量を削減することができ、燃料製造のさらなる省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
気化部103で生成したNHガスYの全量に対する分解反応部105に導入されるNHガスY量の比率は、製造する燃料X中の所望するNH含有率及びH含有率等に応じて調整されることが好ましい。
【0031】
燃料X中のNH含有率とH含有率との比(NH/H)は、モル比で、例えば1~10/1(例えば4/1)である。
【0032】
分解反応部105に導入されたNHガスYは、上記化学式に従って、HとN(モル比3:1)とに完全に分解されることが好ましいが、不完全に、すなわち部分的に分解されてもよい。本明細書において、完全に分解されるとは、分解反応部105に導入されたNHガスYの90モル%~100モル%が分解されることをいい、好ましくは、95~100モル%が分解される。また、本明細書において、不完全に分解されるとは、分解反応部105に導入されたNHガスYの0モル%超90モル%未満が分解されることをいう。分解反応の反応率(NHガスYの分解率)は、第1熱交換部106に導入される帯熱媒体Vの温度及び/又は流量によって調整することができる。
【0033】
分解反応部105でのアンモニア分解反応に必要な熱エネルギーは、上述のように、燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vとの第1熱交換部106における熱交換によって供給することができる。帯熱媒体Vが供給できる熱エネルギーがアンモニア分解反応には不十分であるか若しくはアンモニア分解反応のための熱エネルギーとして帯熱媒体Vを利用できない場合(例えば、燃焼炉の稼働初期など、帯熱媒体Vの温度が低い場合)又は、アンモニア分解反応のための熱エネルギーとして帯熱媒体Vを利用しない場合(例えば、製造装置が第1熱交換部106を有しない場合)等においては、加熱手段120を利用するか又は併用してもよい。
【0034】
生成したH含有ガスZ1は、分解反応部105に導入されなかったNHガスYの残部と混合部110において混合される。これにより、NHガス及びHガス(さらにNガス)を含有する燃料Xを得る。NHガスYとH含有ガスZ1との混合比率は、製造する燃料X中の所望するNH含有率及びH含有率等に応じて調整されることが好ましい。なお、燃焼炉の稼働初期など、混合部110にNHガスYが導入されず、H含有ガスZ1のみが導入される時期が存在していてもよい。
【0035】
混合部110において混合されることとなるNHガスYは、第4熱交換部109での熱交換により加熱されることが好ましい。第4熱交換部109は、混合部110において混合されることとなるNHガスYと、第2流路150を流通する帯熱媒体Vとの間で熱交換を行うための熱交換部である。混合部110において混合されることとなるNHガスYを第4熱交換部109での熱交換により加熱することにより、燃焼炉201内の温度を高く維持することができる。
【0036】
帯熱媒体Vの熱源としての利用についてさらに説明する。燃料Xの燃焼によって生じる排ガスである帯熱媒体Vは、例えば第1ガスブロワ204aを用いて第1流路140を流通させることによって第1熱交換部106へ導入することができる。これにより、帯熱媒体Vが有する熱エネルギーの少なくとも一部が分解反応部105でのアンモニア分解反応のための熱源として有効利用される。第1熱交換部106で熱交換された後の帯熱媒体Vは、第2流路150を通して、第4熱交換部109に導入されて、混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置10が第4熱交換部109を有する場合)として有効利用されてもよく、さらには、第2熱交換部108へ導入されて、熱媒体Qを加熱するための熱源として有効利用されてもよい。これにより、燃料製造のさらなる省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
なお、図1に示される例において、第2熱交換部108から排出される排ガス112は、従来公知の排ガス処理装置113を用いて処理(無害化、中和等)されてよい。排ガス112は、例えば、NO、NO、NO、N、NH、O、水等を含有し得る。
【0038】
上述のように、製造装置10は、第1流路140及び第2流路150からなる第1熱交換部106を通る流路に加えて、第1バイパス流路及び第2バイパス流路のいずれか一方又は両方をさらに有していてもよい。これにより、アンモニア分解反応のための熱源、熱媒体Qを加熱するための熱源、及び混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置10が第4熱交換部109を有する場合)として帯熱媒体Vを利用すること(帯熱媒体Vの第1利用)と、熱媒体Qを加熱するための熱源としてのみ帯熱媒体Vを利用すること(帯熱媒体Vの第2利用)ととの切り替えが可能となり、さらには、帯熱媒体Vの第1利用と、帯熱媒体Vの第2利用と、熱媒体Qを加熱するための熱源、及び混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置10が第4熱交換部109を有する場合)として帯熱媒体Vを利用すること(帯熱媒体Vの第3利用)との切り替えが可能となる。
【0039】
例えば、燃焼炉201の稼働初期など、帯熱媒体Vの温度が比較的低い場合(例えば350℃未満又は300℃未満)には、帯熱媒体Vをアンモニア分解反応のための熱源としては使用せずに第1バイパス流路又は第2バイパス流路に通し、一方、帯熱媒体Vの温度が十分に高い場合や高くなった場合(例えば300℃以上又は350℃以上)には、帯熱媒体Vを少なくともアンモニア分解反応のための熱源として利用するために、帯熱媒体Vを第1流路140及び第2流路150からなる第1熱交換部106を通る流路に通す、という切り替えを行ってもよい。
【0040】
帯熱媒体Vの温度は、温度センサにより検出することができる。温度センサは、例えば第1熱交換部106の上流側に設置される。製造装置10は、触媒充填部の温度を検出する温度センサをさらに有していてもよい。上記切り替えは、例えば、第1熱交換部106の上流側に設置された温度センサの検出結果に基づき、第1流路140及び第3流路160に設置された電磁弁等を制御することにより行うことができる。
【0041】
燃料Xの燃焼によって生じた排ガスであって、製造装置10に供給される帯熱媒体Vの温度は、例えば200℃~1500℃であり得、250℃以上、300℃以上、又は350℃以上であってもよい。該温度は、1200℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下、又は850℃以下であってもよい。
【0042】
帯熱媒体Vが第1熱交換部106においてアンモニア分解反応のための熱源として利用される場合、第1熱交換部106に導入される帯熱媒体Vの温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。NHガスYの分解率を高くするため(例えば分解反応部105に導入されたNHガスYを完全に分解させるため)には、第1熱交換部106に導入される帯熱媒体Vの温度を高くすることが好ましく、例えば600℃以上であることが好ましく、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上又は850℃以上であってもよい。
【0043】
触媒充填部の温度は、触媒充填部に温度センサを設置することよって検出することができる。例えば、第1熱交換部106の上流側と触媒充填部とに温度センサを設置し、第1流路140及び第3流路160に設置された電磁弁等により第1熱交換部106へ導入される帯熱媒体Vの流量を調整することによって触媒充填部の温度を制御することができる。
【0044】
帯熱媒体Vが第2熱交換部108において熱媒体Qを加熱するための熱源として利用される場合、第2熱交換部108に導入される帯熱媒体Vの温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上であり、500℃以下、400℃以下、300℃以下、又は200℃以下であってもよい。第2熱交換部108へ導入される帯熱媒体Vの流量を調整することにより、熱媒体Qに供給される熱エネルギー量が調整されてもよい。
【0045】
(変形例)
本実施形態の製造装置10に対して、例えば以下のような変形を行ってもよい。
[a]製造装置10は、第1熱交換部105を有し、第2熱交換部108を有していなくてもよい。
[b]製造装置10は、第3熱交換部107及び/又は第4熱交換部109を有していなくてもよい。
[c]製造装置10は、第1バイパス流路及び第2バイパス流路の少なくとも一方を有し、第1流路140及び第1熱交換部106を有していなくてもよい。
【0046】
(省エネルギー効果)
製造装置10による燃料製造の省エネルギー効果は、下記を前提条件として、系全体の熱エネルギーの約8%と計算される。
【0047】
前提条件:
・気化部103によって生成されるNHガスYの流量は500kg/h
・液体アンモニアは常温で貯蔵され、気化部103でガス化(40℃)される。
・このうち、50kg/hのNHガスYが分解反応部105に導入され、100モル%分解されて、HとNとのモル比が3:1のH/N混合ガスであるH含有ガスZ1が生成する。
・450kg/hの残部のNHガスYとH含有ガスZ1とは、混合部110において混合され、燃料Xが生成する。燃料X中のNH含有率とH含有率との比(NH/H)は、モル比で4/1である。
・製造装置10を含む燃焼装置の総運転時間は18時間(うち3時間は昇温、15時間は燃焼が安定した定常状態)
・帯熱媒体Vを、アンモニア分解反応のための熱源及び熱媒体Qを加熱するための熱源として利用する。
【0048】
アンモニアの物性値:
低位発熱量 18.6MJ/kg
蒸発潜熱 1732kJ/kg
比熱 4.82kJ/kg
【0049】
水素の物性値:
低位発熱量 120MJ/kg
蒸発潜熱 449kJ/kg
比熱 13.8kJ/kg
【0050】
省エネルギー効果の算出:
気化部103で消費される1時間当たりの熱量は、上記前提条件及び物性値から、以下の式(1)より902MJ/hと算出される。
500kg/h×1732kJ/kg+500kg/h×4.82kJ/kg
=902×10kJ/h
≒902 MJ/h・・・式(1)
【0051】
同様に、製造装置10で消費される1時間当たりの熱量は、上記前提条件、物性値及び下記分子量から、以下の式(2)より9412MJ/hと算出される。
・アンモニアの分子量:17.301g/mol
・水素の分子量 :2g/mol
450kg/h×18.6MJ/kg+3/2×50kg/h÷17.301g/mol×2g/mol×120 MJ/kg
=8370MJ/h+1042MJ/h
=9412MJ/h・・・式(2)
【0052】
さらに、分解反応部105で消費される1時間当たりの熱量は、上記前提条件、物性値、及び、アンモニア分解に必要な最低エネルギーが46kJ/molであることから、以下の式(3)より135.2MJ/hと算出される。
50kg/h÷17.301g/mol×46kJ/mol
=135.2MJ/h・・・式(3)
【0053】
以上から、系全体での1時間当たりの熱エネルギー量は、式(1)、(2)及び(3)から、以下の式(4)で算出される。
902MJ/h+9412MJ/h+135MJ/h
=10447MJ/h・・・式(4)
【0054】
製造装置10を含む燃焼装置の総運転時間18時間のうち、燃焼が安定する15時間の気化部103及び分解反応部105に要する熱量を燃焼によって生じる帯熱媒体Vで賄うことができるため、以下の式(5)より15555MJの熱量を削減できる。
(902MJ/h+135MJ/h)×15h
=15555MJ・・・式(5)
【0055】
以上から、以下の式(6)より、帯熱媒体Vの利用により系全体の熱エネルギーに対して8%の熱エネルギーを削減できる。
15555MJ/(10447MJ/h×18h)×100%
=8%・・・式(6)
【0056】
(2)燃焼装置
図1を参照して、本実施形態の燃焼装置20は、上記の製造装置10と、製造装置10によって製造される燃料Xを燃焼させるための燃焼炉201とを含む。燃焼炉201は、燃料Xを燃焼させるバーナ202を備える。燃料Xの燃焼にあたっては、通常、燃料Xとともに空気もバーナ202に導入される。本実施形態では、混合部110で生成された燃料Xがバーナ202に供給される。燃焼炉201で生じた帯熱媒体Vは、バーナ202を通して、例えば第1ガスブロワ204aを用いて製造装置10内に供給され、有効利用される。
【0057】
本実施形態において、バーナ202は、燃焼装置としての省エネルギー効果を高める観点から、リジェネレーティブバーナであることが好ましい。図2及び図3は、リジェネレーティブバーナの動作を説明する図である。
【0058】
リジェネレーティブバーナは、第1バーナ202a及び第2バーナ202bを含み、これらのバーナはそれぞれ、第1蓄熱体(レキュペレータ)301、第2蓄熱体302を備える。また、リジェネレーティブバーナは、第1バーナ202a用の燃料供給口305a、305bと、第2バーナ202b用の燃料供給口305c、305dとを備える。
【0059】
切替バルブ303が図2の状態にあるときに、空気A1を第1バーナ202aに導入すると、空気A1は、蓄熱状態にある第1蓄熱体301を通過することによって予熱される。燃料供給口305a、305bから燃焼炉201に供給される燃料を、予熱された空気A2とともに燃焼させる(304aは火炎を表す)。上記燃料として、製造装置10で製造された燃料Xを用いることができる。この燃焼によって生じる排ガス306aを、第2バーナ202bを通して排出させる際、第2蓄熱体302は、排ガス306aの熱を吸収して蓄熱状態となる。切替バルブ303を通して排出された排ガスは、上述の帯熱媒体Vとして用いることができる。すなわち、バーナ202がリジェネレーティブバーナであるとき、製造装置10において利用される帯熱媒体Vは、燃焼炉201において燃料Xの燃焼で生じた排ガスであり、より具体的には、該排ガスが有する熱の一部が第1蓄熱体301又は第2蓄熱体302によって吸収された後の帯熱排ガスである。
【0060】
次に、切替バルブ303を図3の状態に切り替え、空気A1を第2バーナ202bに導入すると、空気A1は、排ガス306aにより蓄熱状態となった第2蓄熱体302を通過することによって予熱される。燃料供給口305c、305dから燃焼炉201に供給される燃料を、予熱された空気A2とともに燃焼させる(304bは火炎を表す)。上記燃料として、製造装置10で製造された燃料Xを用いることができる。この燃焼によって生じる排ガス306bを、第1バーナ202aを通して排出させる際、第1蓄熱体301は、排ガス306bの熱を吸収して蓄熱状態となる。
【0061】
蓄熱体を備えるリジェネレーティブバーナを用い、切替バルブ303による上記切替を行うことにより、燃料を燃焼したときに生じる排ガスの熱を、燃焼用空気を加熱するための熱源として有効利用できるため、燃焼装置20としてのさらなる省エネルギー化を図ることができるともに、燃焼炉201内の温度を高く維持することができるため、燃焼効率を高めることができる。
【0062】
第1蓄熱体301及び第2蓄熱体302としては、従来公知のものを用いることができる。第1蓄熱体301及び第2蓄熱体302の形状としては、例えば、ボール形状、ハニカム形状等が挙げられる。第1蓄熱体301及び第2蓄熱体302の材質としては、例えば、アルミナ、コージェライト、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0063】
リジェネレーティブバーナを用いる場合、第1蓄熱体301及び第2蓄熱体302の形状、サイズ又は材質等の調整により、第1バーナ202a及び第2バーナ202bから排出される帯熱媒体Vの温度を制御し得る。
【0064】
<第2実施形態>
(1)燃料の製造装置
図4は、本発明の第2実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。図4に示される燃料の製造装置11は、熱媒体Qとの熱交換により、液化アンモニア101からNHガスYを生成するための気化部103;気化部103に接続され、生成したNHガスYを分解反応に供することによってH含有ガスZ2を生成するための分解反応部105;製造された燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vと、分解反応部105との間で熱交換を行うための第1熱交換部106;製造された燃料Xの燃焼によって生じる熱を含む帯熱媒体Vと、熱媒体Qとの間で熱交換を行うための第2熱交換部108を含む。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスである。
【0065】
以下、主に第1実施形態との相違点を中心に、第2実施形態についてより詳細に説明する。下記説明以外の点については、第1実施形態に係る記述が引用される。変形例についても第1実施形態に係る記述が引用される。
【0066】
本実施形態では、気化部103で生成したNHガスYの全部が分解反応部105の触媒充填部に導入され、分解反応に供される。分解反応によってNHガスYは不完全に(部分的に)分解され、H含有ガスZ2が生成される。H含有ガスZ2は、NHガス、Hガス及びNガスを含有する。本実施形態では、このH含有ガスZ2が燃料Xである(Z2=X)。分解反応の反応率(NHガスYの分解率)は、第1熱交換部106に導入される帯熱媒体Vの温度及び/又は流量によって調整することができる。バーナ202に供給される燃料Xの流量は、マスフローコントローラ(MFC)等を用いて調整することができる。
【0067】
含有ガスZ2(=燃料X)中のNH含有率とH含有率との比(NH/H)は、モル比で、例えば1~10/1(例えば4/1)である。
【0068】
製造装置11による燃料の製造についてより具体的に説明する。
まず、液化アンモニア101を圧縮機102によって圧縮した後、気化部103に導入して、NHガスYを生成させる。次に、気化部103で生成したNHガスYをガスホルダ104に導入した後、その全部を分解反応部105に導入して、分解反応に供する。これにより、H含有ガスZ2が生成する。分解反応部105に導入されることとなるNHガスYは、第3熱交換部107’での熱交換により加熱されることが好ましい。第3熱交換部107’は、分解反応部105に導入されることとなるNHガスYと、分解反応部105から導出されたH含有ガスZ2(燃料X)との間で熱交換を行うための熱交換部である。分解反応部105に導入されることとなるNHガスYを第3熱交換部107’での熱交換により加熱することにより、触媒充填部内の温度を高く維持することが可能になって分解反応の効率化を図ることができるとともに、アンモニア分解反応のために供給されるべき帯熱媒体V及び/又は加熱手段120からの熱エネルギー量を削減することができ、燃料製造のさらなる省エネルギー化を図ることができる。
【0069】
分解反応部105に導入されたNHガスYは、上記化学式に従って、HとN(モル比3:1)とに分解される。NHガスYの分解率は、燃料X中のNH含有率とH含有率との比が所望する範囲内となるように調整されることが好ましい。
【0070】
製造装置11は、第1流路140及び第2流路150からなる第1熱交換部106を通る流路に加えて、第1熱交換部106よりも上流において第1流路140から分岐する第3流路160と、第3流路160に接続されるとともに、第1熱交換部106を介することなく第2熱交換部108よりも上流において第2流路150に接続される第4流路170’とで構成されるバイパス流路をさらに有していてもよい。これにより、アンモニア分解反応のための熱源及び熱媒体Qを加熱するための熱源として帯熱媒体Vを利用すること(帯熱媒体Vの第1利用)と、熱媒体Qを加熱するための熱源としてのみ帯熱媒体Vを利用すること(帯熱媒体Vの第2利用)との切り替えが可能となる。
【0071】
帯熱媒体Vが第1熱交換部106においてアンモニア分解反応のための熱源として利用される場合、第1熱交換部106に導入される帯熱媒体Vの温度は、例えば250℃~1000℃であり、250℃~800℃、又は300℃~700℃であってよい。該温度は、好ましくは300℃~650℃である。
【0072】
触媒充填部の温度は、触媒充填部に温度センサを設置することよって検出することができる。例えば、第1熱交換部106の上流側と触媒充填部とに温度センサを設置し、第1流路140及び第3流路160に設置された電磁弁等により第1熱交換部106へ導入される帯熱媒体Vの流量を調整することによって触媒充填部の温度を制御することができる。
【0073】
帯熱媒体Vが第2熱交換部108において熱媒体Qを加熱するための熱源として利用される場合、第2熱交換部108に導入される帯熱媒体Vの温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上であり、500℃以下、400℃以下、300℃以下、又は200℃以下であってもよい。第2熱交換部108へ導入される帯熱媒体Vの流量を調整することにより、熱媒体Qに供給される熱エネルギー量が調整されてもよい。
【0074】
(2)燃焼装置
図4を参照して、本実施形態の燃焼装置21は、上記の製造装置11と、製造装置11によって製造される燃料Xを燃焼させるための燃焼炉201とを含む。燃焼炉201は、燃料Xを燃焼させるバーナ202を備える。燃焼炉201及びバーナ202については、第1実施形態に係る記述が引用される。本実施形態では、分解反応部105から導入されたH含有ガスZ2が燃料Xとしてバーナ202に供給される。本実施形態において、バーナ202は、燃焼装置としての省エネルギー効果を高める観点から、リジェネレーティブバーナであることが好ましい。燃焼炉201で生じた帯熱媒体Vは、例えば第1ガスブロワ204aを用いて製造装置11内に供給され、有効利用される。
【0075】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。以下、主に第1実施形態との相違点を中心に、第3実施形態についてより詳細に説明する。下記説明以外の点については、第1実施形態に係る記述が引用される。変形例についても第1実施形態に係る記述が引用される。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスである。
【0076】
本実施形態の製造装置12において、燃焼炉201で生じた帯熱媒体Vは、第1実施形態と同様に、燃焼装置22のバーナ202(例えばリジェネレーティブバーナ)を通して供給されることができるとともに、燃焼装置22の均圧制御弁205に接続された第6流路206aを通して、例えば第2ガスブロワ204bを用いて製造装置12内に供給されることができる。
【0077】
均圧制御弁205は、燃料燃焼中の燃焼炉201内の圧力変動を抑制するための弁である。燃焼炉201内外の圧力差を一定に維持するために、均圧制御弁205からは、燃料の燃焼により生じた排ガスが排出される。本実施形態によれば、均圧制御弁205から排出される排ガスを製造装置12内に供給し、有効利用することができる。均圧制御弁205から排出される排ガスは、一般に高温であるため(例えば800℃以上)、熱源としての価値が高い。
【0078】
例えば、第6流路206a、及び、バーナ202と製造装置12とを接続する第7流路206bに温度センサを設置し、第6流路206a及び第7流路206bに設置された電磁弁等により、それぞれの流路を通る帯熱媒体Vの流量を制御することができる。この制御によって、製造装置12内に供給される帯熱媒体Vの温度を制御することができる。
【0079】
本実施形態の特徴は、第2実施形態にも適用することができる。
【0080】
<第4実施形態>
図6は、本発明の第4実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。本実施形態は、バーナ202として、リジェネレーティブバーナ以外のバーナを用いている点が第1実施形態と相違する。この相違点以外の点については、第1実施形態に係る記述が引用される。変形例についても第1実施形態に係る記述が引用される。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスである。
【0081】
本実施形態において、燃焼炉201で生じた帯熱媒体Vは、燃焼炉201の任意の位置に設けられた排出口に接続される第8流路207を通して、例えば第1ガスブロワ204aを用いて製造装置13内に供給されることができる。
【0082】
本実施形態の特徴は、第2実施形態にも適用することができる。
【0083】
<第5実施形態>
図7は、本発明の第5実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。以下、主に第1実施形態との相違点を中心に、第5実施形態についてより詳細に説明する。下記説明以外の点については、第1実施形態に係る記述が引用される。変形例についても第1実施形態に係る記述が引用される。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスとの熱交換によって熱を帯びた媒体である。
【0084】
本実施形態において、燃焼装置24は、燃焼炉201の内部に熱交換器208を備える。熱交換器208は、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスと熱媒体との間で熱交換を行うための熱交換器である。この熱交換により熱を帯びた熱媒体が、帯熱媒体Vとして、第9流路209を通して製造装置14内に供給され、有効利用される。熱媒体としては、水(例えば蒸気)が挙げられる。熱交換された後の排ガス212は、従来公知の排ガス処理装置213を用いて処理(無害化、中和等)されてよい。
【0085】
帯熱媒体Vとして製造装置14内に供給された熱媒体は、第1実施形態と同様に、分解反応部105でのアンモニア分解反応のための熱源、混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置14が第4熱交換部109を有する場合)、及び熱媒体Qを加熱するための熱源から選択される1以上の熱源として利用された後、戻し流路190を通して熱交換器208に戻されて再加熱され、上記熱源として再利用されてもよい。あるいは、上記熱源として利用された後、大気に放出されてもよい。
【0086】
本実施形態の特徴は、第2実施形態にも適用することができる。
【0087】
<第6実施形態>
図8は、本発明の第6実施形態に係る燃料の製造装置及びこれを含む燃焼装置を示す概略図である。以下、主に第1実施形態との相違点を中心に、第6実施形態についてより詳細に説明する。下記説明以外の点については、第1実施形態に係る記述が引用される。変形例についても第1実施形態に係る記述が引用される。本実施形態において、帯熱媒体Vは、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスとの熱交換によって熱を帯びた媒体である。
【0088】
本実施形態において、燃焼装置2は、燃焼炉201の外部に熱交換器210を備える。熱交換器210は、燃料Xの燃焼によって生じる排ガスと熱媒体との間で熱交換を行うための熱交換器である。この熱交換により熱を帯びた熱媒体が、帯熱媒体Vとして、第10流路211を通して製造装置15内に供給され、有効利用される。熱媒体としては、水(例えば蒸気)が挙げられる。熱交換された後の排ガス212は、従来公知の排ガス処理装置213を用いて処理(無害化、中和等)されてよい。
【0089】
帯熱媒体Vとして製造装置15内に供給された熱媒体は、第1実施形態と同様に、分解反応部105でのアンモニア分解反応のための熱源、混合部110において混合されることとなるNHガスYを加熱するための熱源(製造装置15が第4熱交換部109を有する場合)、及び熱媒体Qを加熱するための熱源から選択される1以上の熱源として利用された後、戻し流路190を通して熱交換器210に戻されて再加熱され、上記熱源として再利用されてもよい。あるいは、上記熱源として利用された後、大気に放出されてもよい。
【0090】
本実施形態の特徴は、第2実施形態にも適用することができる。
【0091】
本発明に係るアンモニア及び水素を含有する燃料の製造装置、並びに燃焼装置によれば、燃料製造の省エネルギー化を図ることが可能である。そのため、地球温暖化ガスを削減することができ、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。なお、燃料製造に要する電力は再生可能エネルギーを使用してもよい。
【0092】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
10,11,12,13,14,15 燃料の製造装置、101 液化アンモニア、102 圧縮機、103 気化部、104 ガスホルダ、105 分解反応部、106 第1熱交換部、107,107’ 第3熱交換部、108 第2熱交換部、109 第4熱交換部、110 混合部、112,212 排ガス、113,213 排ガス処理装置、120 加熱手段、140 第1流路、150 第2流路、160 第3流路、170,170’ 第4流路、180 第5流路、190 戻し流路、20,21,22,23,24,25 燃焼装置、201 燃焼炉、202 バーナ、202a 第1バーナ、202b 第2バーナ、204a 第1ガスブロワ、204b 第2ガスブロワ、205 均圧制御弁、206a 第6流路、206b 第7流路、207 第8流路、208,210 熱交換器、209 第9流路、211 第10流路、301 第1蓄熱体、302 第2蓄熱体、303 切替バルブ、304a,304b 火炎、305a,305b,305c,305d 燃料供給口、306a,306b 排ガス、A1 空気、A2 予熱された空気、Q 熱媒体、V 帯熱媒体、X 燃料、Y アンモニアガス、Z1,Z2 水素含有ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8