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  • 特開-自動車用警報音発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122206
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】自動車用警報音発生装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 9/12 20060101AFI20240902BHJP
   H04R 9/18 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G10K9/12 G
H04R9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029632
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 周平
(57)【要約】
【課題】
共鳴板の直径サイズの制約をなくすことによって、音圧調整幅の向上、振動板の破損防止及び振動板の黒色化を廃止することができる自動車用警報音発生装置を提供する。
【解決手段】
本発明の自動車用警報音発生装置100は、ハウジング10と、ハウジング10の底面中央に固定されたコア20と、コア20が配置され、コイル31が巻回されたボビン30と、コア20に対向配置されているアーマチュア40と、アーマチュア40にかしめ固定されている振動板50及び共鳴板60と、電源が供給されるターミナル70と、を備え、共鳴板60の直径が、振動板50の直径と同じ又は振動板50の直径よりも大きい直径であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの底面中央に固定されたコアと、
前記コアが配置され、コイルが巻回されたボビンと、
前記コアに対向配置されているアーマチュアと、
前記アーマチュアにかしめ固定されている振動板及び共鳴板と、
電源が供給されるターミナルと、
を備え、
前記共鳴板の直径が、前記振動板の直径と同じ又は前記振動板の直径よりも大きいことを特徴とする自動車用警報音発生装置。
【請求項2】
前記前記共鳴板の厚さが、前記振動板の厚さの2倍~3倍であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用警報音発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車用警報音発生装置の作製方法において、以下の工程からなることを特徴とする作製方法。
(1)コアと、前記コアが配置されるコイルが巻回されたボビンと、前記コアに対向配置されているアーマチュアと、をハウジングにセットするセット工程。
(2)前記アーマチュアの上部の小径部に振動板の中心穴部をはめ込み、前記振動板の外周をかしめ用縁部にかしめる外周かしめ工程
(3)前記コアと前記ハウジングを下治具に取り付ける治具取付工程
(4)前記アーマチュアの小径部に前記振動板の上面側に配置されるように前記共鳴板の中心穴部をはめ込み、ワッシャーをガイドで押さえつけ、前記アーマチュアが前記コアに接触するまで押し込んだ状態でインサートを使用して前記アーマチュアの小径部を押しつぶすようにして、かしめ固定するアーマチュアかしめ工程


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用警報音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平型電気式ホーンからなる自動車用警報音発生装置として、有底筒状のハウジングと、前記ハウジングの中央付近に収容固定された電磁石と、前記ハウジングの外周縁部に固定され前記ハウジングの開口部を覆う振動板と、前記振動板の内側の中央付近に固定され前記電磁石に対向配置される可動鉄心と、前記振動板の外側に固定された共鳴板と、前記ハウジングの外に取り付けられた端子ボックスと、を有する平型電気式ホーンであって、前記ハウジングの底面に略平行な遮蔽板をもつ端子ボックス遮蔽部材を前記ハウジングの前記外周縁部に備えることを特徴とするものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
こうした従来の自動車用警報音発生装置は、共鳴板の直径が振動板の直径に対して小さく形成されている。これは、従来の製造方法が、共鳴板と振動板とをかしめ手段等によって固定し一体化した後に、これらをホーン本体に取り付けて振動板の外周をハウジングにかしめて固定するという工程を採用していた。そのため、共鳴板の直径は振動板の直径サイズよりも小さくしないと、かしめ機を振動板の外周に設置することができず、製造工程が成立しないという問題があったからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-61488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、共鳴板の直径サイズの制約をなくすことによって、音圧調整幅の向上、振動板の破損防止及び振動板の黒色化の廃止をすることができる自動車用警報音発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかる自動車用警報音発生装置は、
ハウジングと、
前記ハウジングの底面中央に固定されたコアと、
前記コアが配置され、コイルが巻回されたボビンと、
前記コアに対向配置されているアーマチュアと、
前記アーマチュアにかしめ固定されている振動板及び共鳴板と、
電源が供給されるターミナルと、
を備え、
前記共鳴板の直径が、前記振動板の直径と同じ又は前記振動板の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる自動車用警報音発生装置は、共鳴板の直径が振動板の直径と同じ直径又は振動板の直径よりも大きな直径を有する。これにより、共鳴板の直径のサイズの選定幅が広がり、より広く音圧調整を行うことができる。また、共鳴板の直径が振動板の直径よりも大きく作製することによって、共鳴板によって振動板の全体を覆うことができる。そのため、一般に振動板より厚く作製されている共鳴板によって走行時のチッピング(飛び石)を受けることができ、振動板が破損する可能性を低減することができる。さらに、共鳴板によって振動板を覆い隠すことになるので、振動板の美観性確保のために行っている黒色塗装等の黒色化を廃止することができる。
【0009】
また、本発明にかかる自動車用警報音発生装置において、前記共鳴板の厚さが、前記振動板の厚さの2倍~3倍であることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、より効果的に、共鳴板によって走行時のチッピング(飛び石)から振動板が破損する可能性を低減することができる。
【0010】
さらに、自動車用警報音発生装置の作製方法において、以下の工程からなることを特徴とする作製方法を提供する。
(1)コアと、前記コアが配置されるコイルが巻回されたボビンと、前記コアに対向配置されているアーマチュアと、をハウジングにセットするセット工程。
(2)前記アーマチュアの上部の小径部に振動板の中心穴部をはめ込み、前記振動板の外周をかしめ用縁部にかしめる外周かしめ工程
(3)前記コアと前記ハウジングを下治具に取り付ける治具取付工程
(4)前記アーマチュアの小径部に前記振動板の上面側に配置されるように前記共鳴板の中心穴部をはめ込み、ワッシャーをガイドで押さえつけ、前記アーマチュアが前記コアに接触するまで押し込んだ状態でインサートで前記アーマチュアの小径部を押しつぶすようにして、かしめ固定するアーマチュアかしめ工程
【0011】
従来は、振動板と共鳴板をアーマチュアにかしめた状態で、ハウジングに振動板の外周かしめにより固定を行っていた。そのため、共鳴板の直径は、振動板の直径より小さくなければ共鳴板が邪魔となり、振動板の外周かしめを行うことができなかった。しかし、本発明では、振動板の外周かしめを行った後に共鳴板をアーマチュアに固定するという製造方法を採用することで、共鳴板の直径が振動板の直径の制約がなくなり、振動板よりも大きい共鳴板を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態にかかる自動車用警報音発生装置100を示す分解斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかる自動車用警報音発生装置100を示す断面図である。
図3図3は、実施形態にかかる自動車用警報音発生装置100の作製方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0014】
実施形態にかかる自動車用警報音発生装置100は、図1及び図2に示すように、主として、ハウジング10と、ハウジング10の底面中央に固定されたコア20と、コア20が配置され、コイル31が巻回されたボビン30と、コア20に対向配置されているアーマチュア40と、アーマチュア40にかしめ固定されている振動板50及び共鳴板60と、電源が供給されるターミナル70と、ハウジング10の底部に固定され車両等に取付るための取付ステー80と、を有している。
【0015】
ハウジング10は、磁気回路の一部を構成するために磁性体材料で作製されており、コア20及びボビン30が収容される下部有底円筒部10aと、下部有底円筒部10aより大きな直径を有する上部円筒部10bとを備えており、上部開口部の開口縁には、振動板50をかしめるためのかしめ用縁部10cが形成されている。
【0016】
コア20は、磁性体で作製されており、ハウジング10の下部有底円筒部10a中心部にかしめ等によって固定されている。コア20の下方側は、ネジ溝が形成されており、導電性の取付ステー80がボルト81で固定されている。
【0017】
ボビン30は、樹脂で作製されており、周囲にはコイル31が巻回されている。ボビン30には、中心に中心孔が形成されており、中心孔の下方にはコア20が、その上方にはアーマチュア40の下部の円柱部41が配置されている。
【0018】
ボビン30の上面であって上部円筒部10b内に、金属バネ材からなる可動接点支持板35、固定接点支持板36及びこれらの間に介在されるインシュレーター37が積層され、これらの部材を金属製リベット38でかしめ固定されている。
【0019】
可動接点支持板35には可動接点35aが、固定接点支持板36には固定接点36aがそれぞれ固定されている。可動接点35aは、コイル31の非通電時は可動接点支持板35のバネ力により固定接点36aに圧着されている。
【0020】
アーマチュア40は、磁性体材料で作製されており、下部の円柱部41と、上部の小径部43と、これらの間に外周が大きく形成されたフランジ部42と、を有しており、このフランジ部42は可動接点支持板35を下方へ押圧する押圧部を構成する。
【0021】
振動板50は、磁気回路の一部を構成するために、鉄系の磁性体材料の板材を凹形状にプレス成形されている。振動板50は、中心に貫通穴で形成された中心穴部51を有し、この中心穴部51がアーマチュア40の小径部43に嵌められ、ハウジング10の上部開口部の開口縁に形成されたかしめ用縁部10cの外周かしめによって、ハウジング10に外周が固定されている。
【0022】
共鳴板60は、中心に貫通穴で形成された中心穴部61を有する金属製の円盤状に形成されており、この中心穴部61がアーマチュア40の小径部43に嵌められ、かしめにより固定される。本発明にかかる共鳴板60は、外周かしめがされた振動板50の直径と同じ直径又は振動板50の直径よりも大きな直径を有する。また、共鳴板60の板厚は、振動板50の板厚の2倍~3倍に設定することが好ましい。
【0023】
ターミナル70は、外部電源から電力の供給を受ける部材であり、インシュレーター71を介して、ハウジング10に金属製のリベット73で取り付けられており、コイル31に接続されている。
【0024】
以上のように構成される自動車用警報音発生装置100は、図3に示すように、以下のように作製される。まず、ハウジング10に、コア20と、コア20が配置されるコイル31が巻回されたボビン30と、コア20に対向配置されているアーマチュア40と、をセットする。次に、アーマチュア40の上部の小径部43に振動板50の中心穴部51をはめ込み、振動板50の外周をかしめ用縁部10cにかしめる。そして、コア20とハウジング10を下治具95に取り付ける。アーマチュア40の上部の小径部43に振動板50の上面側に配置されるように共鳴板60の中心穴部61をはめ込み、ワッシャー91をガイド92で押さえつけ、アーマチュア40がコア20に接触するまで押し込んだ状態でインサート96を使用してアーマチュア40の小径部43を押しつぶすようにして、かしめ固定する。
【0025】
こうして作製された自動車用警報音発生装置100は、車内に配置されるホーンスイッチ(図示しない。)がオンにされると、車載電源からの電流がターミナル70→金属製リベット73→コイル31→可動接点支持板35→可動接点35a→固定接点36a→固定接点支持板36→金属製リベット38→ハウジング10→コア20→取付ステー80→車体の経路で流れる。
【0026】
コイル31に電流が流れるとコア20が電磁石となり、コア20がアーマチュア40を引き寄せ、コア20とアーマチュア40が衝突する。衝突した振動がアーマチュア40から共鳴板60に伝達し、空気を振動させて音が発生する。同時にアーマチュア40が引き寄せられることによって、アーマチュア40のフランジ部42が可動接点支持板35を押圧して、可動接点35aを固定接点36aから解離させる。その結果、コイル31への通電が遮断され、コア20の電磁力がなくなるので、アーマチュア40は振動板50の弾性力により元の位置に復帰し、可動接点35aと固定接点36aは再度接触状態に復帰する。これにより、上述したように電流が再度流れる。このようにして、通電が繰り返されることにより、コア20とアーマチュア40との衝突が繰り返され、振動板50及び共鳴板60が高周波で振動して一定の周波数と音圧を得ることができる。
【0027】
以上の本実施形態にかかる自動車用警報音発生装置100は、共鳴板60の直径を外周かしめがされた振動板50の直径と同じ直径又は振動板50の直径よりも大きな直径を有する。これは、従来は、振動板50と共鳴板60をアーマチュア40にかしめた状態で、ハウジング10に振動板50の外周かしめにより固定を行っていた。そのため、共鳴板60の直径は、振動板50の直径より小さくなければ共鳴板60が邪魔となり、振動板50の外周かしめを行うことができなかった。しかし、本発明では、振動板50の外周かしめを行った後に共鳴板60をアーマチュア40に固定するという製造方法を採用することで、共鳴板60の直径が振動板50の直径に制約を受けることがなくなったため、振動板50の直径よりも大きな直径を有する共鳴板60とすることができた。これにより、共鳴板60の直径のサイズの選定幅が広がり、より広く音圧調整を行うことができる。また、共鳴板60の直径が振動板50の直径よりも大きく作製することによって、共鳴板60によって振動板50の全体を覆うことができる。そのため、一般に振動板50より厚く作製されている共鳴板60によって走行時のチッピング(飛び石)を受けることができ、振動板50が破損する可能性を低減することができる。さらに、共鳴板60によって振動板50を覆い隠すことになるので、振動板50の美観性確保のために行っている黒色塗装等の黒色化を廃止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述した実施形態で示すように、自動車用の警報音発生装置として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10…ハウジング、100…自動車用警報音発生装置、10a…下部有底円筒部、10b…上部円筒部、10c…かしめ用縁部、20…コア、30…ボビン、31…コイル、35…可動接点支持板、35a…可動接点、36…固定接点支持板、36a…固定接点、37…インシュレーター、38…金属製リベット、40…アーマチュア、41…円柱部、42…フランジ部、43…小径部、50…振動板、51…中心穴部、60…共鳴板、61…中心穴部、70…ターミナル、71…インシュレーター、73…金属製リベット、80…取付ステー、81…ボルト、91…ワッシャー、92…ガイド、95…治具、96…インサート
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記共鳴板の厚さが、前記振動板の厚さの2倍~3倍であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用警報音発生装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【特許文献1】特開2013-61448号公報