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特開2024-122207リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池
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  • 特開-リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 図1
  • 特開-リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122207
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240902BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240902BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240902BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240902BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029634
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】門田 敦志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 友美
(72)【発明者】
【氏名】増田 優花
(72)【発明者】
【氏名】木戸 亮介
(72)【発明者】
【氏名】笹川 浩
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ04
5H029DJ08
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA22
5H050CA25
5H050CA26
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】高容量でサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】このリチウムイオン二次電池用負極は、シリコンを含み、表面に稜線がある負極活物質と、バインダーと、を備え、前記バインダーは、COOX基を有し、Xは、Li、Na、Kからなる群から選択されるいずれかであり、前記負極活物質の比表面積S(m/g)と、前記負極活物質の重量wと、前記バインダーの重量wとが、0.5≦{w/(w+w)}/S×100≦5.0の関係を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含み、表面に稜線がある負極活物質と、
バインダーと、を備え、
前記バインダーは、COOX基を有し、
Xは、Li、Na、Kからなる群から選択されるいずれかであり、
前記負極活物質の比表面積S(m/g)と、前記負極活物質の重量wと、前記バインダーの重量wとが、0.5≦{w/(w+w)}/S×100≦5.0の関係を満たす、リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項2】
前記COOX基におけるXがLiである、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項3】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間にあるセパレータと、電解液と、を有し、
前記負極は、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極である、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器やハイブリットカー等の動力源としても広く用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の容量は主に電極の活物質に依存する。負極活物質には、一般に黒鉛が利用されているが、より高容量な負極活物質が求められている。そのため、黒鉛の理論容量(372mAh/g)に比べてはるかに大きな理論容量をもつシリコン(Si)が注目されている。
【0004】
Siを含む負極活物質は充電時に大きな体積膨張を伴う。負極活物質の体積膨張は、電池のサイクル特性の低下の原因となる。負極活物質が体積膨張すると、例えば、負極活物質の間の導電パスが切断したり、負極活物質層と集電体の界面で剥離が生じたり、SEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜にクラックが生じ電解液の分解等が生じる。これらは、電池のサイクル特性を低下させる。
【0005】
電池のサイクル特性を向上させるために、負極活物質層にバインダーが用いられる。例えば、特許文献1には、カルボキシル基を有するバインダーを用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-067555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高容量でサイクル特性の更なる向上が求められている。
【0008】
本開示は上記問題に鑑みてなされたものであり、高容量でサイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質と、バインダーと、を備える。負極活物質は、シリコンを含み、表面に稜線がある。前記バインダーは、COOX基を有する。Xは、Li、Na、Kからなる群から選択されるいずれかである。前記負極活物質の比表面積S(m/g)と、前記負極活物質の重量wと、前記バインダーの重量wとが、0.5≦{w/(w+w)}/S×100≦5.0の関係を満たす。
【0011】
(2)上記態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極において、前記COOX基におけるXがLiであってもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間にあるセパレータと、電解液と、を有する。前記負極は、上記態様にかかるリチウムイオン二次電池用負極である。
【発明の効果】
【0013】
上記態様に係るリチウムイオン二次電池は、高容量でサイクル特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の模式図である。
図2】第1実施形態に係る負極活物質の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
「リチウムイオン二次電池」
図1は、第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池の模式図である。図1に示すリチウムイオン二次電池100は、発電素子40と外装体50と非水電解液(図示略)とを備える。外装体50は、発電素子40の周囲を被覆する。発電素子40は、発電素子40に接続された一対の端子60、62を介して、外部と接続される。非水電解液は、外装体50内に収容されている。図1では、外装体50内に発電素子40が一つの場合を例示したが、発電素子40が複数積層されていてもよい。
【0017】
(発電素子)
発電素子40は、セパレータ10と正極20と負極30とを備える。
【0018】
<正極>
正極20は、例えば、正極集電体22と正極活物質層24とを有する。正極活物質層24は、正極集電体22の少なくとも一面に接する。
【0019】
[正極集電体]
正極集電体22は、例えば、導電性の板材である。正極集電体22は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属薄板である。重量が軽いアルミニウムは、正極集電体22に好適に用いられる。正極集電体22の平均厚みは、例えば、10μm以上30μm以下である。
【0020】
[正極活物質層]
正極活物質層24は、例えば、正極活物質を含む。正極活物質層24は、必要に応じて、導電助剤、バインダーを含んでもよい。
【0021】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を含む。
【0022】
正極活物質は、例えば、複合金属酸化物である。複合金属酸化物は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnの化合物(一般式中においてx+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)である。正極活物質は、有機物でもよい。例えば、正極活物質は、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンでもよい。
【0023】
正極活物質は、リチウム非含有の材料でもよい。リチウム非含有の材料は、例えば、FeF、有機導電性物質を含む共役系ポリマー、シェブレル相化合物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物、ニオブ酸化物等である。リチウム非含有の材料は、いずれか一つの材料のみを用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。正極活物質がリチウム非含有の材料の場合は、例えば、最初に放電を行う。放電により正極活物質にリチウムが挿入される。このほか、正極活物質がリチウム非含有の材料に対して、化学的又は電気化学的にリチウムをプレドープしてもよい。
【0024】
導電助剤は、正極活物質の間の電子伝導性を高める。導電助剤は、例えば、カーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、導電性酸化物である。カーボン粉末は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等である。金属微粉は、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の粉である。
【0025】
正極活物質層24における導電助剤の含有率は特に限定されない。例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーの総質量に対して導電助剤の含有率は、0.5質量%以上20質量%以下であり、好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0026】
正極活物質層24におけるバインダーは、正極活物質同士を結合する。バインダーは、公知のものを用いることができる。またバインダーは、後述する負極活物質層34に用いられるものと同様のものでもよい。バインダーは、電解液に溶解せず、耐酸化性を有し、接着性を有するものが好ましい。バインダーは、例えば、フッ素樹脂である。バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体の金属イオン架橋体、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)、これらの混合物である。正極活物質層に用いるバインダーは、PVDFが特に好ましい。
【0027】
正極活物質層24におけるバインダーの含有率は特に限定されない。例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーの総質量に対してバインダーの含有率は、1質量%以上15質量%以下であり、好ましくは1.5質量%以上5質量%以下である。バインダーの含有率が少ないと、正極20の接着強度が弱まる。バインダーの含有率が高いと、バインダーは電気化学的に不活性で放電容量に寄与しないため、リチウムイオン二次電池100のエネルギー密度が低くなる。
【0028】
<負極>
負極30は、例えば、負極集電体32と負極活物質層34とを有する。負極活物質層34は、負極集電体32の少なくとも一面に形成されている。
【0029】
[負極集電体]
負極集電体32は、例えば、導電性の板材である。負極集電体32は、正極集電体22と同様のものを用いることができる。
【0030】
[負極活物質層]
負極活物質層34は、負極活物質とバインダーとを含む。負極活物質層34は、必要に応じて導電助剤を含んでもよい。
【0031】
負極活物質は、例えば、シリコンを含む。シリコンは、単体であってもよいし、シリコン化合物であってもよい。シリコン化合物は、例えば、シリコン合金、酸化シリコン等である。例えば、シリコン又はシリコン化合物は、結晶質でも非晶質でもよい。非晶質のシリコン又はシリコン化合物は、メルトスパン法、ガスアトマイズ法等で作製できる。負極活物質は、シリコン系以外の活物質を含んでもよい。
【0032】
シリコン合金は、XnSiで表される。Xは、カチオンである。Xは、例えば、Ba、Mg、Al、Zn、Sn、Ca、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、W、Au、Ti、Na、K等である。nは、0≦n≦0.5を満たす。酸化シリコンは、SiOで表記される。xは、例えば、0.8≦x≦2を満たす。酸化シリコンは、SiOのみからなってもよいし、SiOのみからなってもよいし、SiOとSiOとの混合物でもよい。また酸化シリコンは、酸素の一部が欠損していてもよい。
【0033】
負極活物質は、シリコン又はシリコン化合物の複合体でもよい。複合体は、シリコン又はシリコン化合物の粒子の表面の少なくとも一部に、導電性材料が被覆したものである。導電性材料は、例えば、炭素材料、Al、Ti、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、Sn等である。例えば、シリコン炭素複合化材料(Si-C)は複合体の一例である。シリコン又はシリコン化合物の粒子に対する導電性材料の被覆量は、例えば、複合体の総質量に対して0.01質量%以上30質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。複合体は、例えば、メカニカルアロイング法、化学蒸着法、湿式法、高分子を被覆後に高分子を熱分解して炭素化する方法等で作製できる。
【0034】
図2は、本実施形態に係る負極活物質1の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。負極活物質1は、不定形であり、表面に稜線を有する。負極活物質1の表面は、複数の面からなり、これらの面の境界が稜線である。
【0035】
稜線2の平均長さは、例えば、0.5μm以上であり、好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。稜線2の平均長さは、例えば、10000倍の倍率で撮影した10枚の走査型電子顕微鏡像内に存在する稜線2の長さの合計を、稜線2を含む負極活物質1の数で割って求められる。
【0036】
稜線2を挟む2つの面のなす角は、例えば、150°以下であり、好ましくは60°以上120°以下である。
【0037】
また一つの負極活物質1に含まれる稜線2の平均数は、例えば、20個以下であり、好ましくは8個以上15個以下である。
【0038】
負極活物質のBET法で求めた比表面積S(m/g)は、例えば、0.5≦{w/(w+w)}/S×100≦5.0の関係を満たす。この関係式において、wは、負極活物質の重量であり、wは、バインダーの重量である。負極から負極活物質及びバインダーの重量を求める場合は、以下の手順で行う。まず負極の重量を測定する。次いで、負極を窒素雰囲気中で、500℃程度の温度で焼成し、バインダーを除去する。次いで、焼成後の負極の重量を測定する。焼成前後の負極の重量を算出することで、バインダー重量が求められる。また完成した負極を水などの溶媒中で超音波により粉砕し、ろ過することで、負極活物質と溶媒に溶解したバインダーとを分離することができる。分離したそれぞれの重量を求めることで、負極活物質及びバインダーの重量を求めることができる。
【0039】
バインダーの量が少ない、又は、負極活物質の比表面積が大きい程、上記値は小さくなる。値が小さすぎると、負極活物質の比表面積に対してバインダー量が十分ではなく、バインダーと負極活物質との結着力が十分ではなくなる。またバインダーの量が多い、又は、負極活物質の比表面積が小さい程、上記値は大きくなる。値が大きすぎると、負極における充放電に寄与しないバインダーの存在比が高くなり、リチウムイオン二次電池の単位体積当たりの容量が小さくなる。
【0040】
負極活物質層34におけるバインダーは、負極活物質同士を結合する。バインダーは、COOX基を有する。Xは、Li、Na、Kからなる群から選択されるいずれかである。Xは、Liが好ましい。カルボキシル基の一部がXに置換されていると、カルボキシル基が置換されていない場合と比較して、電解液耐性が高くなり、活物質とバインダーとの間への電解液の浸透が抑制され、負極活物質とバインダーとの結着量が向上する。またLiはイオン半径が小さく、負極活物質とバインダーとが高密度に結着し、これらの間の結着力がより高まる。
【0041】
バインダーは、例えば、COOX基を有するポリアクリル酸、ポリ(エチレン-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロースなどである。また、COOX基を有さないバインダーとして、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド、ポリイミドなどを含んでもよい。
【0042】
負極活物質層34における導電助剤は、負極活物質の間の電子伝導性を高める。導電助剤は、正極活物質層24と同様のものを用いることができる。
【0043】
負極活物質層34における導電助剤の含有率は特に限定されない。例えば、負極活物質、導電助剤、バインダーの総質量に対して導電助剤の含有率は、5質量%以上20質量%以下であり、好ましくは1質量%以上12質量%以下である。
【0044】
<セパレータ>
セパレータ10は、正極20と負極30とに挟まれる。セパレータ10は、正極20と負極30とを隔離し、正極20と負極30との短絡を防ぐ。セパレータ10は、正極20及び負極30に沿って面内に広がる。リチウムイオンは、セパレータ10を通過できる。
【0045】
セパレータ10は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有する。セパレータ10は、例えば、ポリオレフィンフィルムの単層体、積層体である。セパレータ10は、ポリエチレンやポリプロピレン等の混合物の延伸膜でもよい。セパレータ10は、セルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布でもよい。セパレータ10は、例えば、固体電解質であってもよい。固体電解質は、例えば、高分子固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質である。セパレータ10は、無機コートセパレータでもよい。無機コートセパレータは、上記のフィルムの表面に、PVDFやCMCなど樹脂とアルミナやシリカなどの無機物の混合物を塗布したものである。無機コートセパレータは、耐熱性に優れ、正極から溶出した遷移金属の負極表面への析出を抑制する。
【0046】
<電解液>
電解液は、外装体50内に封入され、発電素子40に含浸している。非水電解液は、例えば、非水溶媒と電解塩とを有する。電解塩は、非水溶媒に溶解している。
【0047】
電解液は、公知の電解液を用いることができる。電解液は、例えば、非水溶媒と電解質塩とを含む。
【0048】
電解塩は、例えば、リチウム塩である。電解質は、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB、LiN(FSO等である。リチウム塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。電離度の観点から、電解質はLiPFを含むことが好ましい。
【0049】
非水溶媒は、例えば、非プロトン性有機溶媒である。有機溶媒は、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エーテル、これらの混合物等である。
【0050】
環状カーボネートは、電解質を溶媒和する。環状カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートである。環状カーボネートは、フルオロエチレンカーボネートを少なくとも含むことが好ましい。フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、酸化還元電位が高く、還元されて分解されやすい。フルオロエチレンカーボネート(FEC)の一部が還元分解されることにより、電解液中の電解質や残りの溶媒が分解されにくくなる。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)は、リチウムイオン二次電池の使用初期に、負極活物質表面全体に薄く安定な被膜(SEI被膜)を形成する。SEI被膜は、負極活物質と電解液との直接接触を防ぎ、電解液の分解を防止する。
【0051】
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させる。鎖状カーボネートは、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。非水溶媒は、その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等を有してもよい。
【0052】
<外装体>
外装体50は、その内部に発電素子40及び非水電解液を密封する。外装体50は、非水電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止する。
【0053】
外装体50は、例えば図1に示すように、金属箔52と、金属箔52の各面に積層された樹脂層54と、を有する。外装体50は、金属箔52を高分子膜(樹脂層54)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。
【0054】
金属箔52としては例えばアルミ箔を用いることができる。樹脂層54には、ポリプロピレン等の高分子膜を利用できる。樹脂層54を構成する材料は、内側と外側とで異なっていてもよい。例えば、外側の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等を用い、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。
【0055】
<端子>
端子60、62のそれぞれは、負極30と正極20のそれぞれに接続されている。負極30に接続された端子60は負極端子であり、正極20に接続された端子62は正極端子である。端子60及び端子62は、外部との電気的接続を担う。端子60及び端子62は、アルミニウム、ニッケル、銅等の導電材料から形成されている。接続方法は、溶接でもネジ止めでもよい。端子60及び端子62は短絡を防ぐために、絶縁テープで保護することが好ましい。
【0056】
「リチウムイオン二次電池の製造方法」
リチウムイオン二次電池100は、負極30、正極20、セパレータ10、電解液、外装体50をそれぞれ準備し、これらを組み上げて作製される。以下、リチウムイオン二次電池100の製造方法の一例を説明する。
【0057】
負極30は、例えば、スラリー作製工程、電極塗布工程、乾燥工程、圧延工程を順に行って作製される。
【0058】
スラリー作製工程は、負極活物質(シリコン又はシリコン化合物)、バインダー、導電助剤及び溶媒を混合してスラリーを作製する工程である。まず例えば、市販の負極活物質の中から所定の稜線を含むものを選択し、所定の負極活物質を準備する。バインダーは、COOX基を有するものを準備する。カルボキシル基を有するバインダーをイオン交換してもよい。
【0059】
溶媒は、例えば、水である。導電助剤は、例えば、カーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、導電性酸化物などである。カーボン粉末は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックである。金属微粉は、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等からなる微粉である。
【0060】
次いで、負極活物質の比表面積S(m/g)と負極活物質の重量wとバインダーの重量wとが、0.5≦{w/(w+w)}/S×100≦5.0の関係を満たすような比率で、負極活物質とバインダーとを混合する。負極活物質、導電助剤、バインダーの構成比率は、例えば、質量比で70wt%~99wt%:0wt%~10wt%:1wt%~20wt%である。これらの質量比は、全体で100wt%となるように調整される。
【0061】
負極活物質は、活物質粒子と導電性材料とをせん断力を加えながら混合し、複合化したものでもよい。活物質粒子が変質しない程度にせん断力を加えて混合すると、活物質粒子の表面が導電性材料で被覆される。また当該混合の程度により負極活物質の粒径を調整できる。また作製後の負極活物質を篩にかけて、粒径をそろえてもよい。
【0062】
電極塗布工程は、負極集電体32の表面に、スラリーを塗布する工程である。スラリーの塗布方法は、特に制限はない。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法をスラリーの塗布方法として用いることができる。
【0063】
乾燥工程は、スラリーから溶媒を除去する工程である。例えば、スラリーが塗布された負極集電体32を、60℃以上200℃以下の雰囲気下で乾燥させる。このような手順で、負極集電体32上に負極活物質層34が形成される。
【0064】
圧延工程は、必要に応じて行われる。圧延工程は、負極活物質層34に圧力を加え、負極活物質層34の密度を調整する工程である。圧延工程は、例えば、ロールプレス装置等で行われる。
【0065】
正極20は、負極30と同様の手順で作製できる。セパレータ10及び外装体50は、市販のものを用いることができる。
【0066】
次いで、作製した正極20及び負極30の間にセパレータ10が位置するようにこれらを積層して、発電素子40を作製する。発電素子40が捲回体の場合は、正極20、負極30及びセパレータ10の一端側を軸として、これらを捲回する。
【0067】
最後に、発電素子40を外装体50に封入する。非水電解液は外装体50内に注入する。非水電解液を注入後に減圧、加熱等を行うことで、発電素子40内に非水電解液が含浸する。熱等を加えて外装体50を封止することで、リチウムイオン二次電池100が得られる。なお、外装体50に電解液を注入するのではなく、発電素子40を電解液に含浸してもよい。
【0068】
第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100は、高容量で、サイクル特性に優れる。第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100の負極活物質は、稜線を有する不定形であり、負極活物質同士が最密充填しにくい。そのため、充放電時の体積膨張のための隙間が確保されており、電極崩壊が生じにくい。
【0069】
また第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100は、バインダーがCOOX基を有し、負極活物質の比表面積に対して所定の量のバインダーが添加されているため、稜線部分においても十分な結着力を確保できる。負極活物質が不定形の場合、例えば、負極活物質の稜線に付着したバインダーと負極活物質との間に電解液が浸透しやすくなり、負極活物質とバインダーとの結着力を十分確保できない場合がある。バインダーがCOOX基を有し、負極活物質の比表面積に対して所定の量のバインダーが添加されていれば、負極活物質とバインダーとの結着力を十分確保できる。
【0070】
また第1実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100は、負極活物質の比表面積に対して添加されるバインダー量が想定より少なく、高容量である。負極活物質とバインダーとの結着力は、バインダーの量を増やせば高めることができる。しかしながら、バインダーは充放電に寄与しないため、負極におけるバインダー量が増えると、リチウムイオン二次電池の容量が小さくなる。不定形の負極活物質を用いる場合、バインダー量の添加量が増えることが想定されたが、想定より少ないバインダー量でもリチウムイオン二次電池100のサイクル特性を確保できた。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例0072】
「実施例1」
厚さ15μmのアルミニウム箔の一面に、正極スラリーを塗布した。正極スラリーは、正極活物質と導電助剤とバインダーと溶媒とを混合して作製した。
【0073】
正極活物質は、LiCoOを用いた。導電助剤は、アセチレンブラックを用いた。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。溶媒は、N-メチル-2-ピロリドンを用いた。97質量部の正極活物質と、1質量部の導電助剤と、2質量部のバインダーと、70質量部の溶媒を混合して、正極スラリーを作製した。乾燥後の正極活物質層における正極活物質の担持量は、25mg/cmとした。正極スラリーから乾燥炉内で溶媒を除去し、正極活物質層を作成した。正極活物質層をロールプレスで加圧し、正極を作製した。
【0074】
次いで、厚さ10μmの銅箔の一面に、負極スラリーを塗布した。負極スラリーは、負極活物質と導電助剤とバインダーと溶媒とを混合して作製した。
【0075】
負極活物質は、表面に稜線を有する平均粒径が3μmのシリコンとした。導電助剤は、カーボンブラックを用いた。バインダーは、ポリエチレンオキサイドと、カルボキシル基のHがLiに置換されたポリアクリル酸と2:8の比率した混合したものを用いた。
【0076】
溶媒は、水を用いた。90質量部の負極活物質と、5質量部の導電助剤と、5質量部のバインダーとを、水に混合して、負極スラリーを作製した。乾燥後の負極活物質層における負極活物質の担持量は、2.5mg/cmとした。負極スラリーから乾燥炉内で溶媒を除去し、負極活物質層を作製した。負極活物質層は、ロールプレスで加圧した後、窒素雰囲気下、150℃以上で5時間処理し、乾燥させた。負極活物質の比表面積S(m/g)と負極活物質の重量wとバインダーの重量wとは、{w/(w+w)}/S×100=0.50であった。
【0077】
次いで、電解液を作製した。溶媒は、質量比でフルオロエチレンカーボネート(FEC):ジエチルカーボネート(DEC)=11:89となるように混合したものを用いた。電解塩は、LiPFを用いた。LiPFの濃度は1mol/Lとした。
【0078】
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
作製した負極と正極とを、正極活物質層と負極活物質層とが互いに対向するように、セパレータ(多孔質ポリエチレンシート)を介して積層して積層体を得た。積層体の負極に、ニッケル製の負極リードを取り付けた。積層体の正極に、アルミニウム製の正極リードを取り付けた。正極リード及び負極リードは、超音波溶接機によって溶接した。この積層体を、アルミラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成した。そして、最後に、外装体内に上記電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封して、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
(500サイクル後容量維持率の測定)
リチウムイオン二次電池のサイクル特性を測定した。サイクル特性は、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用いて行った。
【0080】
充電レート0.5C(25℃で定電流充電を行ったときに1時間で充電終了となる電流値)の定電流充電で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流定電圧充電(CC-CV充電)を行い、放電レート1.0Cの定電流放電で電池電圧が2.5Vとなるまで放電を行った(CC放電)。充放電終了後の放電容量を検出し、サイクル試験前の電池容量Qを求めた。
【0081】
上記で電池容量Qを求めた電池を、再び二次電池充放電試験装置を用い、充電レート0.5Cの定電流定電圧充電で電池電圧が4.2Vとなるまで充電を行い、放電レート1.0Cの定電流放電で電池電圧が2.5Vとなるまで放電を行った。上記充放電を1サイクルとカウントし、500サイクルの充放電を行った。その後、500サイクル充放電終了後の放電容量を検出し、500サイクル後の電池容量Qを求めた。
【0082】
上記で求めた容量Q、Qから、500サイクル後の容量維持率Eを求めた。容量維持率Eは、E=Q/Q×100 で求められる。実施例1の容量維持率は、71%であった。
【0083】
またサイクル試験前の電池容量Qを負極活物質層の重量で割って、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)を求めた。
【0084】
「実施例2~4」
実施例2~4は、負極活物質の比表面積S(m/g)と負極活物質の重量wとバインダーの重量wとの関係を変更した点が実施例1と異なる。これらの関係は、負極活物質の比表面積、負極活物質及びバインダーの添加量を変更することで、変更した。実施例2~4において、その他の条件は実施例1と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0085】
「実施例5,6」
実施例5,6は、負極のバインダーをポリエチレンオキサイドと、カルボキシル基のHがNa又はKに置換されたポリアクリル酸とを2:8の比率した混合したものを用いた点が、実施例1と異なる。実施例5は置換元素をNaとし、実施例6は置換元素をKとした。実施例5,6において、その他の条件は実施例1と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0086】
「実施例7」
実施例7は、負極のバインダーをポリエチレンオキサイドと、カルボキシル基のHがLiに置換されたポリ(エチレン-マレイン酸)とを2:8の比率した混合したものを用いた点が、実施例1と異なる。実施例7において、その他の条件は実施例1と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0087】
「実施例8~13」
実施例8~13は、負極のバインダーをポリエチレンオキサイドと、カルボキシル基のHが置換されたカルボキシメチルセルロースとを2:8の比率した混合したものを用いた点が、実施例1~7のそれぞれと異なる。実施例8~13において、その他の条件は実施例1と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0088】
「比較例1、2」
比較例1、2は、負極活物質の比表面積S(m/g)と負極活物質の重量wとバインダーの重量wとの関係を変更した点が実施例1と異なる。これらの関係は、負極活物質の比表面積、負極活物質及びバインダーの添加量を変更することで、変更した。比較例1、2において、その他の条件は実施例1と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0089】
「比較例3」
比較例3は、負極のバインダーをポリエチレンオキサイドと、カルボキシル基が置換されていないポリアクリル酸とを2:8の比率した混合したものを用いた点が、実施例2と異なる。比較例3において、その他の条件は実施例2と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0090】
「比較例4」
比較例4は、表面に稜線を有さないシリコンを負極活物質とした点が実施例2と異なる。比較例3において、その他の条件は実施例2と同じとして、負極活物質層1g当たりの容量(mAh)及び容量維持率を求めた。
【0091】
実施例1~13及び比較例1~4の結果を表1にまとめた。表1におけるXは、COOH基のHを置換する置換イオンを示す。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例1~13は、いずれも比較例1~4と比較して容量維持率が高かった。また想定より少ないバインダー量でもサイクル特性が良好であり、単位質量当たりの容量が高かった。
【符号の説明】
【0094】
1 負極活物質
2 稜線
10 セパレータ
20 正極
22 正極集電体
24 正極活物質層
30 負極
32 負極集電体
34 負極活物質層
40 発電素子
50 外装体
52 金属箔
54 樹脂層
60、62 端子
100 リチウムイオン二次電池
図1
図2