(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122216
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】杭打機
(51)【国際特許分類】
E02D 7/16 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E02D7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029644
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 啓志
(72)【発明者】
【氏名】白石 静香
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050CB02
2D050CB11
2D050EE12
2D050EE24
(57)【要約】
【課題】回動型のリーダと非回動型のリーダとを組み替える際に、1つの基本リーダを使い回すことが可能なリーダ位置決め部材を備えた杭打機を提供する。
【解決手段】杭打機は、下部リーダと基本リーダとを連結する際のリーダ周方向の連結角度を確定させるリーダ位置決め部材を有し、リーダ位置決め部材は、リーダ回動仕様でリーダ回動機構に係止されるロックピンと、リーダ非回動仕様で上下隣り合うガイドパイプ31,31同士を接続するジョイントピン47とからなり、ジョイントピンは、上下隣り合うガイドパイプ同士の一方のガイドパイプの開口部に固着した基部48と、他方のガイドパイプの開口部に挿抜可能なピン本体部49と、該ピン本体部を貫通して基部に設けられたねじ孔48aに螺合するピン本体部取付用のボルト51とを備え、リーダ回動仕様とリーダ非回動仕様との仕様変更に応じてピン本体部が着脱可能に構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの前部に設けられたリーダブラケットに支持される円筒状の下部リーダと、該下部リーダ上に同軸で連結される円筒状の基本リーダと、前記下部リーダ及び前記基本リーダの外周部に上下隣り合う配置で設けられたガイドパイプと、該ガイドパイプに案内される作業装置とを備え、前記下部リーダと前記基本リーダとがリーダ回動機構を介して相対回動可能に連結されるリーダ回動仕様と、前記リーダ回動機構を備えずに相対回動不能に直接連結されるリーダ非回動仕様とに仕様変更可能な杭打機において、
前記下部リーダと前記基本リーダとを連結する際のリーダ周方向の連結角度を確定させるリーダ位置決め部材を有し、
前記リーダ位置決め部材は、前記リーダ回動仕様で前記リーダ回動機構に係止されるロックピンと、前記リーダ非回動仕様で前記上下隣り合うガイドパイプ同士を接続するジョイントピンとからなり、
前記ジョイントピンは、前記上下隣り合うガイドパイプ同士の一方のガイドパイプの開口部に固着した基部と、他方のガイドパイプの開口部に挿抜可能なピン本体部と、該ピン本体部を貫通して前記基部に設けられたねじ孔に螺合するピン本体部取付用のボルトとを備え、前記仕様変更に応じて前記ピン本体部が着脱可能に構成されていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記ピン本体部は、前記基部とのインロー嵌合部と、前記ボルトを貫通させる第1貫通孔に対して平行に設けられた第2貫通孔とを有し、
前記第2貫通孔は、反ボルト差し込み側から設定長さにわたって前記ボルトの雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有するとともに、残りの長さを前記雄ねじ部のねじ山の径よりも大きい径となるように形成され、
前記雌ねじ部の長さは、前記ボルトの呼び径の0.5~2倍の長さであることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
前記リーダ回動仕様で前記ピン本体部に代わる蓋体と、該蓋体を貫通して前記基部に設けられた前記ねじ孔に螺合する蓋体取付用のボルトとを備え、
前記蓋体は、前記他方のガイドパイプとの間に上下方向の隙間を有して取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、ベースマシンの前部に立設したリーダを支持する三点支持式の杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機に備わるリーダの外周部には、オーガ等の作業装置を昇降案内させるためにガイドパイプが設けられている。リーダは、強度の面で有利な円筒形状を有し、輸送上の制約と長さ調節の必要から複数のリーダ部材を連結して構成され、ガイドパイプも各リーダ部材に応じた長さのものが設けられている。このため、各ガイドパイプ部材間の接続部に補強を兼ねたジョイントピンが設けられ、リーダの組立時には、このジョイントピンの挿入位置を基準としてリーダ部材同士の連結角度(向き)を合わせることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、三点支持式の杭打機では、掘削位置の変更や作業装置の切替えのために、リーダを中心軸まわりに回動させる回転リーダを備えたものが知られている。このような回動型のリーダは、回動角度を設定するための複数のピン孔を備えた固定リーダと、該固定リーダ上に回動機構を介して回動可能に立設される回転リーダとからなり、回転リーダの上部がホルダを介して後方から2本のバックステーにて支持されている。そして、複数のピン孔に対して、回転リーダに備えた係止ピンを選択的に差し替えることで、例えば、回転リーダを正面から左右45度回動させた設定角度に保持することが可能である(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-339358号公報
【特許文献2】実開平5-96133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三点支持式の杭打機は、作業内容に応じて回動型のリーダから非回動型のリーダに組み替える場合があるが、回動機構の有無でセット交換がなされる固定リーダ(以下、下部リーダと称する)及びホルダを除いてはリーダ部材一式を使い回したいという要望がある。しかしながら、回動型のリーダは、その構造上、下部リーダに連結されるリーダ部材(以下、基本リーダと称する)においてガイドパイプ部材にジョイントピンを設けておらず、しかも、回動機構の装備がない非回動型の下部リーダに対して、こうした基本リーダを連結する際には、係止ピンの挿入位置(ピン孔位置)を基準とした連結角度の決定も行えないという不都合がある。したがって、各リーダ部材のうちの基本リーダの使い回しに関しては、組立性の面で有効な解決策がなく、未だ実現されていないというのが実情である。
【0006】
そこで本発明は、回動型のリーダと非回動型のリーダとを組み替える際に、1つの基本リーダを使い回すことが可能なリーダ位置決め部材を備えた杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、ベースマシンの前部に設けられたリーダブラケットに支持される円筒状の下部リーダと、該下部リーダ上に同軸で連結される円筒状の基本リーダと、前記下部リーダ及び前記基本リーダの外周部に上下隣り合う配置で設けられたガイドパイプと、該ガイドパイプに案内される作業装置とを備え、前記下部リーダと前記基本リーダとがリーダ回動機構を介して相対回動可能に連結されるリーダ回動仕様と、前記リーダ回動機構を備えずに相対回動不能に直接連結されるリーダ非回動仕様とに仕様変更可能な杭打機において、前記下部リーダと前記基本リーダとを連結する際のリーダ周方向の連結角度を確定させるリーダ位置決め部材を有し、前記リーダ位置決め部材は、前記リーダ回動仕様で前記リーダ回動機構に係止されるロックピンと、前記リーダ非回動仕様で前記上下隣り合うガイドパイプ同士を接続するジョイントピンとからなり、前記ジョイントピンは、前記上下隣り合うガイドパイプ同士の一方のガイドパイプの開口部に固着した基部と、他方のガイドパイプの開口部に挿抜可能なピン本体部と、該ピン本体部を貫通して前記基部に設けられたねじ孔に螺合するピン本体部取付用のボルトとを備え、前記仕様変更に応じて前記ピン本体部が着脱可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記ピン本体部は、前記基部とのインロー嵌合部と、前記ボルトを貫通させる第1貫通孔に対して平行に設けられた第2貫通孔とを有し、前記第2貫通孔は、反ボルト差し込み側から設定長さにわたって前記ボルトの雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有するとともに、残りの長さを前記雄ねじ部のねじ山の径よりも大きい径となるように形成され、前記雌ねじ部の長さは、前記ボルトの呼び径の0.5~2倍の長さであることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記リーダ回動仕様で前記ピン本体部に代わる蓋体と、該蓋体を貫通して前記基部に設けられた前記ねじ孔に螺合する蓋体取付用のボルトとを備え、前記蓋体は、前記他方のガイドパイプとの間に上下方向の隙間を有して取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭打機によれば、リーダ位置決め部材を構成するロックピン及びジョイントピンのうち、ジョイントピンが上下隣り合うガイドパイプ同士の一方のガイドパイプの開口部に固着した基部と、他方のガイドパイプの開口部に挿抜可能なピン本体部と、該ピン本体部を貫通して基部のねじ孔に螺合するピン本体部取付用のボルトとを備え、リーダ回動仕様とリーダ非回動仕様との仕様変更に応じてピン本体部を着脱可能に構成しているので、リーダ回動仕様のための組立作業では、ガイドパイプからピン本体部を取り外した構成であっても、リーダ回動機構に対するロックピンの挿入位置を基準として下部リーダと基本リーダとの連結角度を決定することができる。一方、リーダ非回動仕様のための組立作業では、リーダ回動機構の備えがない条件下で一方のガイドパイプにピン本体部を取り付けた構成とし、他方のガイドパイプに対するピン本体部の挿入位置を基準として下部リーダと基本リーダとの連結角度を決定することができる。すなわち、回動型のリーダと非回動型のリーダとを組み替える際に、1つの基本リーダを使い回すことが可能となり、セット交換がなされる下部リーダ及びホルダを除いてリーダ部材一式を使い回したいという現場のニーズに応えることができる。
【0011】
また、ピン本体部において第1貫通孔と平行に設けられた第2貫通孔が、インロー嵌合部が存在する反ボルト差し込み側から設定長さにわたって取付用ボルトの雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有するとともに、残りの長さを雄ねじ部のねじ山の径よりも大きい径となるように形成しているので、インロー嵌合部の締結が強固であっても、第1貫通孔から第2貫通孔に差し替えたボルトの軸方向の締付反力を得てピン本体部を容易に取り外すことができる。しかも、雌ねじ部の長さをボルトの呼び径の0.5~2倍の長さに設定するので、ピン本体部を貫通するのに必要な長尺ボルトが求められても、安価な市販品(半ねじ)を無理なく採用することができる。
【0012】
さらに、ピン本体部に代わる蓋体と、該蓋体を貫通して基部のねじ孔に螺合する蓋体取付用のボルトとを備え、蓋体を他方のガイドパイプとの間に上下方向の隙間を有して取り付けているので、リーダ回動仕様に仕様変更した後も、ねじ孔を含むパイプ端面部を露出させずに保護でき、しかも、上下方向の隙間によってガイドパイプ同士の相対的な移動も円滑に行えることから、実用性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図2】同じくリーダ回動機構を備えた下部リーダの断面側面図である。
【
図5】同じくリーダ回動仕様における基本リーダの要部拡大断面側面図である。
【
図7】同じくリーダ非回動仕様における基本リーダの要部拡大断面側面図である。
【
図9】同じくリーダ非回動仕様における下部リーダと基本リーダとの位置決め方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図9は、本発明の杭打機の一形態例を示すものである。杭打機11のベースマシン12は、
図1に示すように、クローラを備えた下部走行体13の上部に、旋回ベアリングを介して上部旋回体14を旋回可能に設けるとともに、該上部旋回体14の前部には、リーダ15及びフロントジャッキ16,16が取り付けられるリーダブラケット17が設けられ、上部旋回体14の後端部には、リアジャッキ18,18が取り付けられるアウトリガボックス19と、該アウトリガボックス19上に搭載されるカウンタウエイト20とが設けられている。さらに、上部旋回体14には、機体フレーム上に運転室21と、油圧ポンプなどを搭載する動力部22とが設けられ、上部旋回体14の後部上方には、起伏可能なガントリ23が設けられている。
【0015】
リーダ15は、リーダブラケット17に対して軸支される円筒状の下部リーダ24と、該下部リーダ24上に同軸で回動可能に立設される円筒状の回転リーダ25とからなり、中間部には回転リーダ25を回動可能に保持するホルダ26が設けられ、このホルダ26の後部にリアジャッキ18のアーム上面に立設される左右一対のバックステー27,27の先端が連結されている。
【0016】
回転リーダ25は、断面が円筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、リーダ回動装置の回動機構28を介して下部リーダ24に連結された基本リーダ29と、該基本リーダ29の上部に連結された上部リーダ30とに分割形成され、上部リーダ30は、更に複数のリーダ部材に分割形成されている。これらの各リーダ部材は、上下端のフランジによって隣り合うリーダ部材同士が連結され、ボルト・ナットを使用して互いに着脱可能に構成されている。
【0017】
このようなリーダ構造を備えた三点支持式の杭打機11は、下部リーダ24と基本リーダ29とがリーダ回動機構28を介して相対回動可能に連結されるリーダ回動仕様(
図1)の他に、下部リーダ24及びホルダ26をリーダ回動機構の備えがないものに部品交換することで、下部リーダ24と基本リーダ29とが相対回動不能に直接連結されるリーダ非回動仕様にも仕様変更が可能である。リーダ非回動仕様とした場合には、リーダ回動機構やその駆動部を削除した分、重量低減及び安定度向上の効果が見込めることから、リーダ部材の本数を増加してリーダ15の更なる長尺化を図ることができる。
【0018】
リーダ15の前面外周部には、作業装置(図示せず)の昇降を案内する左右一対のガイドパイプ31,31が設けられている。ガイドパイプ31は、各リーダ部材の長さに対応した複数のガイドパイプ部材を上下隣り合う配置で直線状に接続したもので、その外周面に対して作業装置のガイドギブが摺動可能に組み付けられている。本実施形態では、各図に示すように、ガイドパイプ(ガイドパイプ部材)31は、円筒状に形成されている。
【0019】
上下隣り合うガイドパイプ31,31同士は、ガイドパイプ31内に嵌合するジョイントピンを介して接続されている。例えば、一方のガイドパイプ31の端部から突出状態にして他方のガイドパイプ31の端部の開口部に隙間嵌めさせることで、段差やガタ付きを生じることもなく双方のガイドパイプ31,31を接続することが可能である。ここで、詳細は後述するが、下部リーダ24と基本リーダ29とのガイドパイプ31,31間に設けられたジョイントピンについては、一方のパイプ端位置で2分割される半割体構造を有し、リーダ15の回動/非回動の仕様変更に応じて、突出状態のピン半体(ピン本体部49)が着脱可能に構成されている(
図7参照)。
【0020】
バックステー27,27は、それぞれの下端側にステーシリンダ32,32を備えており、リーダ15を後方から支持した状態で、ステーシリンダ32,32の伸縮動作によってリーダ15を前後方向あるいは左右方向(車幅方向)に傾き調整することが可能である。傾きが調整されたリーダ15は、起立状態となって、その鉛直性が確保される。
【0021】
リーダブラケット17は、前端部に下部リーダ24を保持する左右一対のリーダ保持部(図示せず)を有し、
図2などに示すように、支持ピン33によってリーダ保持部と下部リーダ24のピン孔ブロック34,34とが係合状態になっている。また、ピン孔ブロック34のピン孔34aは、下部リーダ24の軸方向(上下方向)に延びた長孔状に形成されている。これにより、リーダ15は、支持ピン33を中心に前後方向に揺動自在に設けられ、さらには、支持ピン33とピン孔34aとの間に設けられた上下方向の隙間によって、そのガタ分だけ左右方向への傾きが許容されている。
【0022】
図2及び
図3は、回転リーダ25に対して回転力を付与するためのリーダ回動装置及びその取付構造を示している。リーダ回動装置は、リーダ回動機構28と、下部リーダ24の内部に縦方向に設けられた左右一対の油圧シリンダ35,35と、これらの油圧シリンダ35,35の往復直線運動をリーダ回動機構28の正逆回転運動に変換するベベルギア機構36とを備えている。
【0023】
リーダ回動機構28は、入れ子状に組み合わせた内外輪を相対回転可能に保持するベアリング構造を備え、下部リーダ24のフランジ24a上面に取り付けられる固定ベース37と、基本リーダ29のフランジ29a下面に取り付けられ、固定ベース37にベアリング38を介して回転自在に支持される回転ベース39とを有している。
【0024】
固定ベース37は、
図3からも見てとれるように、下部リーダ24に備わる左右一対のガイドパイプ31,31を避けて扇状のフランジ37aが設けられており、該フランジ37aには、作業装置が正面(
図3の左方向)を向いた中立位置に対応する1つの係止孔h1と、その両側に45度間隔で位置した2つの係止孔h2,h3との合計3つの係止孔が設けられている。一方、回転ベース39は、円板形状の縁部にて、各係止孔h1,h2,h3に対して選択的に合致される係止孔突片39aが設けられている。
【0025】
係止孔突片39aは、各係止孔h1,h2,h3に対応するピン孔Hを有している。
図4に示すように、基本リーダ29の下部外周部に設けられた油圧シリンダ40にてロックピン41が押動されると、該ロックピン41が下方移動してピン孔Hを貫通し、例えば、中立位置を規定する係止孔h1に挿入係止される(
図3)。これにより、回転リーダ25の回動がロックされた状態となり、上下隣り合うガイドパイプ31,31同士の間で作業装置を昇降案内させることができる。
【0026】
ベベルギア機構36は、回転ベース39の下面側に同軸で設けられる傘歯車42と、該傘歯車42の左右両側でそれぞれ噛合し、下部リーダ24に設けられた支軸43に枢支される一対の扇歯車44,44と、両扇歯車44,44のそれぞれに一体をなして設けられ、一対の油圧シリンダ35,35の伸縮動作に従って両扇歯車44,44を互いに反対方向に往復回動させる一対のシリンダ連結腕45,45とを有している。
【0027】
ここで、リーダ15の組立作業において、下部リーダ24と基本リーダ29とを連結する際に、ロックピン41は、基本リーダ29のリーダ周方向(リーダ中心軸を中心とした円周方向)の連結角度を確定させるリーダ位置決め部材として機能する。その場合、下部リーダ24側は、あらかじめピン孔Hと係止孔h1とが合致した状態とされ、この連結準備状態で、フランジ位置合わせを行う下部リーダ24と基本リーダ29との連結角度がロックピン41の挿入位置(ピン孔Hの位置)に基づいて確定される。これにより、基本リーダ29のガイドパイプ31が下部リーダ24のガイドパイプ31と上下隣り合う位置に整合した状態で組立作業が進められる。なお、フランジ位置合わせを含む一連の組立作業は、ベースマシン12の前方領域を広く確保した状態でリーダ部材を水平に保持して行われ、このとき、ガイドパイプ31は地面と対面状態に置かれている(例えば、
図2を反時計回りに90度回転させて見た状態)。
【0028】
一連の組立作業を経て、作業装置を正面に装備した杭打機11の完成状態(
図1)から、例えば、掘削位置の変更を行うには、ロックピン41を係止孔h1から抜いて、フランジ37aと係止孔突片39aとの係止状態を解除する。そして、一対の油圧シリンダ35,35に対して圧油の給排制御を行い、一方の油圧シリンダ35を伸長した際に、他方の油圧シリンダ35を縮小し、ベベルギア機構36を介してリーダ回動機構28を、例えば、右に45度回動をさせ、この状態で、係止孔h3を使用してロックピン41による固定がなされる。こうして、ボルト止めされたトルク受け片(固定部材)46の脱着を含む一連の作業を経て、下部リーダ24と回転リーダ25との間の位相が所定角度になるように変更される。
【0029】
ところで、杭打機11は、リーダ回動仕様の構成からリーダ非回動仕様の構成に組み替える場合があるが、従来式の場合、リーダ回動機構28を備えた下部リーダ24から、これを備えていない下部リーダへと部品交換を行うと、リーダ同士の連結角度を決める対象がロックピン41の挿入位置からジョイントピンの挿入位置へと移り、これに伴い基本リーダ29についてはジョイントピンの備えがあるものに本体ごと部品交換を余儀なくされるという問題(作業の手間や部品管理コストの負担)が残されていた。そこで、仕様変更の際に1つの基本リーダ29を使い回したいという現場のニーズを受けて、杭打機11には、ロックピン41と使い分けがなされるリーダ位置決め部材として、左右一対のガイドパイプ31,31にそれぞれ対応した左右一対のジョイントピン47,47が備えられている。
【0030】
ジョイントピン47は、
図5乃至
図9に示すように、横断面円形状の中心に水抜き孔47aが設けられた鋼製部材であって、上下隣り合うガイドパイプ31,31同士のうちの、一方(基本リーダ29側)のガイドパイプ31の下端開口部に締まり嵌めされて固着した円柱形状の基部48と、リーダ非回動仕様(
図7~
図9)で、他方(下部リーダ24側)のガイドパイプ31の上端開口部に隙間嵌めされて挿抜可能な円錐台形状のピン本体部49と、リーダ回動仕様(
図5,
図6)で、ピン本体部49に代えて基部48に取り付けられる円板形状の蓋体50と、ピン本体部49及び蓋体50の2つの取付対象のどちらかで選択的に用いられ、該取付対象をパイプ延出方向(
図5及び
図7の上下方向)に貫通して基部48に設けられたねじ孔48aにそれぞれ螺合する、ピン本体部取付用及び蓋体取付用の各ボルト51,52とを備えている。
【0031】
各ボルト51,52は、取付対象に合わせてそれぞれ長さが異なるものであって、長さ寸法以外の形状寸法が同一の2本一組のボルトからなり、この2本がピン中心軸より左右均等振り分けされた2つのねじ孔48a,48aとそれぞれ螺合可能に形成されている。例えば、長尺のピン本体部取付用のボルト51は、先端部から設定長さだけねじが切られた半ねじタイプのものである。本実施形態では、呼び径(ねじ部の外径)をM10とする一般的な六角穴付きボルト(キャップスクリュー)が用いられており、各部の寸法は、ボルト首下長さが75mm、ねじ部の外径が10mm、ねじ部の長さが32mm、ねじ山のピッチが1.5mmとされている。
【0032】
ピン本体部49は、
図7及び
図8に示すように、円形状のボルト頭収納凹部(ザグリ部)49aと、その反対側において、基部48の下端部(パイプ下端開口部)に設けられた嵌合凹部とインロー嵌合させるためのインロー嵌合凸部49bと、基部48への取付け時にボルト51,51を貫通させる2つの第1貫通孔49c,49cと、該第1貫通孔49c,49cに対して平行で、かつ、円周方向に90度の間隔で設けられた2つの第2貫通孔49d,49dとを有している。ここで、インロー嵌合凸部49bの寸法は、ジョイントピン47のサイズによるが、例えば、直径65mmであって、嵌合凹部との嵌合量(重なり量)が10mm程度に設定されている。
【0033】
第1貫通孔49cは、全長L1にわたって同径であって、ボルト51のねじ部の外径よりも僅かに大きく形成されている。一方、第2貫通孔49dは、インロー嵌合凸部49bが存在する反ボルト差し込み側から設定長さL2にわたってボルト51の雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有するとともに、残りの長さL3を雄ねじ部のねじ山の径よりも大きい径となるように形成されている。
【0034】
雌ねじ部の長さL2は、ボルト51の呼び径の0.5~2倍の長さに設定されている。例えば、ボルトの呼び径がM10では、長さL2は、5~20mmの長さとなる。この場合、ねじ山のかかり数とねじ込み量を考慮して、長さL2を5~10mm程度に設定することで、一段と作業性が良好になる。また、長さL3に対応する部分の径は、第1貫通孔49cの径と等しく、例えば、直径11mmに設定されている。
【0035】
蓋体50は、
図5及び
図6に示すように、円板の径がガイドパイプ31の外径に対応して形成され、他方(下部リーダ24側)のガイドパイプ31との間に上下方向の隙間S(例えば3mm程度)を有して取り付けられている。本実施形態では、他方のガイドパイプ31の上端開口部において、鋼製の封止ピン53が嵌入され、当該隙間Sは封止ピン53上面との間で設けられている(
図5)。そして、封止ピン53と上下対面する側の外周縁部に施された面取り形状によって、上下ガイドパイプ31,31同士の境に僅かなくびれ部54が設けられている。
【0036】
蓋体50の基本的な形状は、ピン本体部49と代替可能な取り付け互換性を有する形状、すなわち、ピン本体部49の各部に相当するボルト頭収納凹部50a、インロー嵌合凸部50b、第1貫通孔50c,50c及び第2貫通孔50d,50dを備えている。また、ピン本体部49と比較して、貫通孔50c,50dが非常に短いことから、第2貫通孔50dに関しては、全長L4にわたって雌ねじ部を有している。
【0037】
このように形成されたジョイントピン47を含むリーダ位置決め部材を使用してリーダ15の仕様変更を、例えば、リーダ回動仕様から非回動仕様に変更させる場合は、部品単体の基本リーダ29に対して、
図5及び
図6の取付け状態に置かれている蓋体50をガイドパイプ31から取り外した後、同じ位置にピン本体部49を取り付ける(
図7及び
図8)。このとき、2本のボルト52,52を外してもインロー嵌合の締結力で蓋体50を除去できない場合には、取り外したボルト52,52を第2貫通孔50d,50dに挿して蓋体50を抜き取る方法を行う。具体的には、第2貫通孔(ねじ孔)50dにボルト52をねじ込むことで、ボルト52の先端部を基部48の下端面に当接させる。この状態から、レンチ等の締付け工具でボルト52を締めていくと、ボルト52が基部48に押し付けられ、ボルト52の軸方向の締付反力が得られる。これにより、蓋体50と基部48とが互いに離反して、蓋体50をガイドパイプ31から取り外すことができる。
【0038】
そして、用意したボルト51でピン本体部49を左右のガイドパイプ31に取り付けた後は、
図9に示すように、部品交換がなされた下部リーダ24に対して、基本リーダ29を連結させる。このとき、リーダ回動機構28の備えがない下部リーダ24に対しては、ロックピン41の位置情報が役に立たないが、ピン本体部49の位置に注目することにより下部リーダ24との間で基本リーダ29の位置決めが行えるようになる。
【0039】
ここで、ピン本体部49の挿入位置を基準としてリーダ24,29同士の連結角度が確定すると、その後、ピン本体部49が他方のガイドパイプ31の上端開口部に隙間嵌めされて、双方のガイドパイプ31,31が接続されるとともに、上下端のフランジ24a,29aも整合した状態となる。そして、ボルト・ナットを使用したフランジ固定が行われ、下部リーダ24と基本リーダ29とが連結される。こうして、所定の手順で残りの上部リーダ30の部材についても、部品交換された非回動型のホルダ26を介して複数連結され、リーダ15の回動仕様から非回動仕様への仕様変更が完了する。
【0040】
一方、リーダ非回動仕様から回動仕様に変更させる場合は、部品単体の基本リーダ29に対して、
図7及び
図8の取付け状態に置かれているピン本体部49をガイドパイプ31から取り外した後、同じ位置に蓋体50を取り付ける(
図5及び
図6)。このとき、2本のボルト51,51を外してもインロー嵌合の締結力で蓋体50を除去できない場合には、取り外したボルト51,51を第2貫通孔49d,49dに挿してピン本体部49を抜き取る方法を行う。具体的には、第2貫通孔(ねじ孔)49dにボルト51をねじ込むことで、ボルト51の先端部を基部48の下端面に当接させる。この状態から、レンチ等の締付け工具でボルト51を締めていくと、ボルト51が基部48に押し付けられ、ボルト51の軸方向の締付反力が得られる。これにより、ピン本体部49と基部48とが互いに離反して、ピン本体部49をガイドパイプ31から取り外すことができる。
【0041】
そして、用意したボルト52で蓋体50を左右のガイドパイプ31に取り付けた後は、
図2乃至
図4に示すように、部品交換がなされた下部リーダ24に対して、基本リーダ29を連結させる。このとき、リーダ回動機構28が備えられている下部リーダ24に対しては、ロックピン41の位置に注目することにより下部リーダ24との間で基本リーダ29の位置決めが行えるようになる。
【0042】
ここで、ロックピン41の挿入位置を基準としてリーダ24,29同士の連結角度が確定すると、その後、ロックピン41がピン孔Hに挿入されて、双方のガイドパイプ31,31が円周方向において上下方向に揃うとともに、リーダ回動機構28を介して基本リーダ29の下端フランジ29aと下部リーダ24の回転ベース39も整合した状態となる。そして、ボルト・ナットを使用したフランジ固定が行われ、下部リーダ24と基本リーダ29とが連結される。こうして、所定の手順で残りの上部リーダ30の部材についても、部品交換された回動型のホルダ26を介して複数連結され、リーダ15の非回動仕様から回動仕様への仕様変更が完了する。
【0043】
このように、本発明の杭打機11によれば、リーダ位置決め部材を構成するロックピン41及びジョイントピン47のうち、ジョイントピン47が上下隣り合うガイドパイプ31,31同士の一方のガイドパイプ31の開口部に固着した基部48と、他方のガイドパイプ31の開口部に挿抜可能なピン本体部49と、該ピン本体部49を貫通して基部48のねじ孔48aに螺合するピン本体部取付用のボルト51とを備え、リーダ回動仕様とリーダ非回動仕様との仕様変更に応じてピン本体部49を着脱可能に構成しているので、リーダ回動仕様のための組立作業では、ガイドパイプ31からピン本体部49を取り外した構成であっても、リーダ回動機構28に対するロックピン41の挿入位置を基準として下部リーダ24と基本リーダ29との連結角度を決定することができる。一方、リーダ非回動仕様のための組立作業では、リーダ回動機構28の備えがない条件下で一方のガイドパイプ31にピン本体部49を取り付けた構成とし、他方のガイドパイプ31に対するピン本体部49の挿入位置を基準として下部リーダ24と基本リーダ29との連結角度を決定することができる。すなわち、回動型のリーダ15と非回動型のリーダ15とを組み替える際に、1つの基本リーダ29を使い回すことが可能となり、セット交換がなされる下部リーダ24及びホルダ26を除いてリーダ部材一式を使い回したいという現場のニーズに応えることができる。
【0044】
また、ピン本体部49において第1貫通孔49cと平行に設けられた第2貫通孔49dが、インロー嵌合部49bが存在する反ボルト差し込み側から設定長さL2にわたって取付用ボルト51の雄ねじ部に対応する雌ねじ部を有するとともに、残りの長さL3を雄ねじ部のねじ山の径よりも大きい径となるように形成しているので、インロー嵌合部49bの締結が強固であっても、第1貫通孔49cから第2貫通孔49dに差し替えたボルト51の軸方向の締付反力を得てピン本体部49を容易に取り外すことができる。しかも、雌ねじ部の長さをボルト51の呼び径の0.5~2倍の長さに設定するので、ピン本体部49を貫通するのに必要な長尺ボルト51が求められても、安価な市販品(半ねじ)を無理なく採用することができる。
【0045】
さらに、ピン本体部49に代わる蓋体50と、該蓋体50を貫通して基部48のねじ孔48aに螺合する蓋体取付用のボルト52とを備え、蓋体50を他方のガイドパイプ31との間に上下方向の隙間Sを有して取り付けているので、リーダ回動仕様に仕様変更した後も、ねじ孔48aを含むパイプ端面部を露出させずに保護でき、しかも、上下方向の隙間Sによってガイドパイプ31,31同士の相対的な移動も円滑に行えることから、実用性に優れたものである。
【0046】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、各種リーダ部材の構成は、杭打機の仕様に応じて適宜変更することができる。また、リーダ位置決め部材は、リーダ周方向の連結角度を確定させるピン構造を備えていればよく、例えば、ジョイントピンについては、ピン本体部を上下隣り合うガイドパイプのいずれか一方に備え、他方に挿抜可能な構成であれば種々の構成が考えられる。さらに、ボルト頭収納凹部、インロー嵌合凸部、第1貫通孔、取付け用ボルトなどの各部の形状、サイズなどは適宜変更することができ、第2貫通孔を設ける場合は、雌ねじ部の長さは使用するボルトの種類に応じて適宜定めることができる。加えて、蓋体を備えていない単純な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
11…杭打機、12…ベースマシン、13…下部走行体、14…上部旋回体、15…リーダ、16…フロントジャッキ、17…リーダブラケット、18…リアジャッキ、19…アウトリガボックス、20…カウンタウエイト、21…運転室、22…動力部、23…ガントリ、24…下部リーダ、24a…フランジ、25…回転リーダ、26…ホルダ、27…バックステー、28…リーダ回動機構、29…基本リーダ、29a…フランジ、30…上部リーダ、31…ガイドパイプ、32…ステーシリンダ、33…支持ピン、34…ピン孔ブロック、34a…ピン孔、35…油圧シリンダ、36…ベベルギア機構、37…固定ベース、37a…フランジ、38…ベアリング、39…回転ベース、39a…係止孔突片、40…油圧シリンダ、41…ロックピン、42…傘歯車、43…支軸、44…扇歯車、45…シリンダ連結腕、46…トルク受け片、47…ジョイントピン、47a…水抜き孔、48…基部、48a…ねじ孔、49…ピン本体部、49a…ボルト頭収納凹部、49b…インロー嵌合凸部、49c…第1貫通孔、49d…第2貫通孔、50…蓋体、50a…ボルト頭収納凹部、50b…インロー嵌合凸部、50c…第1貫通孔、50d…第2貫通孔、51,52…ボルト、53…封止ピン、54…くびれ部