(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122220
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】酸素吸収体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B65D81/26 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029650
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山科 裕太郎
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067BC02A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067EB27
3E067EE02
3E067FA01
3E067FC01
3E067GB13
3E067GD02
(57)【要約】
【課題】内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制する。
【解決手段】内容物の収容空間Xを画成する内層11と、微生物含有層12と、外層13と、が厚さ方向に積層され、微生物含有層は、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、胞子状態にある好気性の微生物と、栄養細胞状態に移行した微生物の増殖を促す栄養素と、が含有されて構成され、内層の酸素ガス透過度が、4500(cm
3/m
2・24h・atm)以上とされ、内層の透湿度が、400(g/(m
2・24h))以上とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収容空間を画成する内層と、微生物含有層と、外層と、が厚さ方向に積層され、
前記微生物含有層は、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、胞子状態にある好気性の微生物と、栄養細胞状態に移行した前記微生物の増殖を促す栄養素と、が含有されて構成され、
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記内層の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされ、
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記内層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされている、酸素吸収体。
【請求項2】
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記外層の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされ、
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記外層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされている、請求項1に記載の酸素吸収体。
【請求項3】
前記微生物は、酵母、糸状菌、枯草菌、および放線菌から選ばれる1種または2種以上となっている、請求項1または2に記載の酸素吸収体。
【請求項4】
前記内層および前記外層のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物、および前記栄養素を含有する前記バインダー剤の水溶液を塗布する塗布工程と、
前記バインダー剤の水溶液から水分を除去し、前記微生物含有層を形成する乾燥工程と、
前記微生物含有層の表面に、前記内層および前記外層のうちのいずれか他方の層を設ける層形成工程と、を有する、請求項1または2に記載の酸素吸収体を製造する酸素吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収容された内容物の酸化を抑えるために、例えば下記特許文献1に示されるように、酸素吸収体を、内容物の収容空間を画成するように設けた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、酸素吸収体は、鉄成分を含有する酸素吸収剤を備えており、この酸素吸収剤が酸素吸収体から収容空間に溶出すると、例えば内容物が食品の場合には香味が損なわれる等、内容物の品質が悪化する。
【0005】
本発明は、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することができる酸素吸収体およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る酸素吸収体は、内容物の収容空間を画成する内層と、微生物含有層と、外層と、が厚さ方向に積層され、前記微生物含有層は、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、胞子状態にある好気性の微生物と、栄養細胞状態に移行した前記微生物の増殖を促す栄養素と、が含有されて構成され、温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記内層の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされ、温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記内層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされている。
【0007】
微生物含有層を備えているので、水が、内容物の収容空間から内層を透過して微生物含有層に到達し、胞子状態の微生物に接すると、微生物が、発芽して栄養細胞状態に移行し、収容空間に含まれる酸素を吸収しつつ、収容空間に二酸化炭素を排出することにより、収容空間に含まれる酸素の含有濃度を効果的に低減させることができる。これにより、内容物の酸化が抑えられる。この際、栄養細胞状態の微生物が栄養素に促されて増殖することで、内容物の酸化を長期にわたって抑制することができる。したがって、例えば、開封後であっても常温で保管したり、消費期限を長く設定したりすること等ができる。
微生物含有層が、鉄成分を含有する酸素吸収剤を備えていないので、酸素吸収剤の溶出によって内容物の品質が悪化することがない。
以上より、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することができる。
微生物含有層が、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、微生物と栄養素とが含有されて構成されているので、微生物を死滅させずに胞子状態に維持し、かつ微生物および栄養素を容易にバインダー剤中に偏り少なく均等に分散させることができる。
内容物の収容空間を画成する内層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされ、内層の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされているので、収容空間に含まれる水および酸素を、内層を円滑に透過させて微生物含有層に到達させることが可能になり、収容空間に含まれる酸素の含有濃度を確実に低減させることができる。
【0008】
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記外層の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされ、温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記外層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされてもよい。
【0009】
外層の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされ、外層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされているので、水および酸素が、収容空間の反対側から外層を透過して微生物含有層に到達するのを抑制することが可能になり、収容空間に含まれる酸素の含有濃度を確実に低減させることができる。
【0010】
前記微生物は、酵母、糸状菌、枯草菌、および放線菌から選ばれる1種または2種以上となってもよい。
【0011】
微生物が、酵母、糸状菌、枯草菌、および放線菌から選ばれる1種または2種以上となっているので、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することが可能な酸素吸収体を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る酸素吸収体の製造方法は、前記内層および前記外層のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物、および前記栄養素を含有する前記バインダー剤の水溶液を塗布する塗布工程と、前記バインダー剤の水溶液から水分を除去し、前記微生物含有層を形成する乾燥工程と、前記微生物含有層の表面に、前記内層および前記外層のうちのいずれか他方の層を設ける層形成工程と、を有する。
【0013】
塗布工程時に、内層および外層のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物および栄養素を含有するバインダー剤の水溶液を塗布するので、微生物が、前記一方の層を形成する際の熱を受けることがなく、微生物に加えられる加熱時間および加熱温度をそれぞれ抑制することが可能になり、微生物含有層に含まれる微生物が死滅するのを防ぐことができる。
乾燥工程を有するので、微生物含有層に含まれる自由水の量を、胞子状態の微生物が、発芽して栄養細胞状態に移行するのに要する水分量未満となるように容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した酸素吸収体を有するキャップ付き容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
酸素吸収体1は、
図1に示されるように、内容物の収容空間Xを画成する内層11と、微生物含有層12と、外層13と、が厚さ方向に積層されて構成されている。
本実施形態では、酸素吸収体1は、有頂筒状に形成されたキャップCの頂壁C1に設けられている。酸素吸収体1は、容器体W内をシールするパッキンとして用いてもよい。キャップCは、容器体Wの口部に着脱可能に装着される。キャップCおよび容器体Wにより囲まれた密閉空間が、内容物の収容空間Xとなっている。
以下、キャップCの中心軸線Oに沿う頂壁C1側を上側といい、これとは逆側を下側という。
【0017】
内層11、微生物含有層12、および外層13は、下方から上方に向けてこの順に設けられている。外層13の上面が、頂壁C1の下面に固着され、内層11の下面が、収容空間Xを画成している。微生物含有層12は、酸素吸収体1における厚さ方向の中央部に設けられている。酸素吸収体1は、頂壁C1の下面と、容器体Wの口部の上端開口縁と、により上下方向に密に挟まれている。
【0018】
内層11は、例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PMP(ポリメチルペンテン)等のオレフィン樹脂で形成されている。内層11は、多孔質PE等の微多孔質樹脂で形成されてもよい。
【0019】
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した内層11の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされている。
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した内層11の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされている。
【0020】
なお、内層11は複数層で構成されてもよい。この場合、内層11全体の酸素ガス透過度を4500(cm3/m2・24h・atm)以上とし、内層11全体の透湿度を400(g/(m2・24h))以上とする。
【0021】
外層13は、2層構造とされ、微生物含有層12の上面に設けられた第1外層21と、第1外層21の上面に設けられた第2外層22と、を備えている。なお、外層13は、単層構造であってもよいし、3層以上の多層構造であってもよい。
第1外層21は、例えばEVOH(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)等で形成されている。第1外層21の酸素ガス透過度は、第2外層22の酸素ガス透過度より低くなっている。
第2外層22は、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PMP(ポリメチルペンテン)等のオレフィン樹脂で形成されている。第2外層22の透湿度は、第1外層21の透湿度より低くなっている。
【0022】
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した外層13の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされている。
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した外層13の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされている。
【0023】
なお、外層13全体の酸素ガス透過度が600(cm3/m2・24h・atm)以下であれば、第1外層21および第2外層22それぞれの酸素ガス透過度は600(cm3/m2・24h・atm)より高くてもよく、外層13全体の透湿度が400(g/(m2・24h))以下であれば、第1外層21および第2外層22それぞれの透湿度は400(g/(m2・24h))より高くてもよい。
外層13の酸素ガス透過度を、600(cm3/m2・24h・atm)より高くしてもよく、外層13の透湿度を、400(g/(m2・24h))より高くしてもよい。
【0024】
ここで、酸素ガス透過度は、例えば、MOCON社製OX-TRAN2/20を用いて測定することができる。
透湿度は、例えば、塩化カルシウムを収容したカップ内をシート状の試験片で密閉して作製した試験体を、風速0.2m/s以下の雰囲気下に置いて、24時間ごとに試験体の重量を測定し、試験体の重量がこれ以上は増加しなくなったときに測定を止め、このときの重量の増加分を、試験片1m2・24h当たりの重量に換算することで得ることができる。カップは、水を透過しない材質で形成されている。
【0025】
微生物含有層12は、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、胞子状態にある好気性の微生物と、栄養細胞状態に移行した前記微生物の増殖を促す栄養素と、が含有されて構成されている。
なお、微生物の含有率を高めるために、例えば、ゼオライト、活性炭、およびPVAゲル等の微生物固定化担体を用いてもよい。
【0026】
微生物含有層12に含まれる水分量は、例えば2wt%以下となっている。微生物含有層12に含まれる水分は、微生物が反応に利用可能な自由水と、栄養素に結合している結合水と、を有している。微生物含有層12に含まれる自由水の量は、栄養素の含有量を調整することで調整することができる。
微生物含有層12に含まれる自由水の量は、胞子状態の微生物が、栄養細胞状態に移行するのに要する水分量未満とされている。これにより、微生物含有層12に含まれる微生物は、胞子状態に保たれる。
【0027】
バインダー剤としては、例えば、寒天、ペクチン、カラギナン、およびグァ-ガム等の天然多糖類、並びに、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、PEO(ポリエチレンオキシド)、PAM(ポリアクリルアミド)、およびCMC(カルボキシメチルセルロース)等が挙げられ、胞子状態の微生物が死滅せず、かつ栄養細胞状態に移行した微生物の増殖を阻害しない限り、これらのうちの2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
微生物としては、人体に害を及ぼさない限り限定されないが、例えば、酵母(Saccharomyces属、Candida属)、糸状菌(Aspergillus属、Rhizopus属)、枯草菌(Bacillus属)、放線菌(Corynebacterium属) 等が挙げられ、これらのうちの2種以上を組み合わせてもよい。
栄養素としては、例えば、単糖類であるグルコース、二糖類であるスクロース、マルトース等が挙げられ、その他、酵母エキス、麦芽エキス等の抽出物も採用することができる。
微生物および栄養素の含有量は、例えば収容空間Xの容積、および内容物の種類等に応じて設定される。
【0029】
次に、酸素吸収体1の製造方法について説明する。
この製造方法は、塗布工程と、乾燥工程と、層形成工程と、を有している。
【0030】
塗布工程では、例えば射出成形、若しくは熱成形等により予め形成した内層11および外層13のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物、および栄養素を含有するバインダー剤の水溶液を塗布する。
この水溶液は、粉状のバインダー剤を水に溶かした後に、栄養素を添加しておき、その後、前記一方の層の表面に塗布する直前に、胞子状態の微生物を添加することで得られる。この際、水溶液を攪拌し、微生物および栄養素を偏り少なく均等に分散させる。
前記一方の層の表面に水溶液を塗布する方法は、例えばオフセット印刷、スクリーン印刷、ロールコータを用いた印刷、吹付け、ディップコーティング等が挙げられる。
【0031】
乾燥工程では、バインダー剤の水溶液から水分を除去し、微生物含有層12を形成する。乾燥工程では、水溶液を、微生物が死滅しない程度の温度(例えば約40℃)および時間(例えば2時間以内)で加熱する。乾燥工程によって、含有する水分量が2wt%以下で、かつ前記一方の層の表面に接着された微生物含有層12が得られる。
【0032】
層形成工程では、内層11および外層13のうちのいずれか他方の層を、例えば射出成形、若しくは熱成形等により形成するとともに、微生物含有層12の表面に設ける。
層形成工程時に、前記他方の層を有しない酸素吸収体1をインサート品として、前記他方の層を射出成形する場合、微生物含有層12の微生物を死滅させないために、例えば前記他方の層の溶融温度を200℃以下で、かつ成形時間を10秒以内にする。
【0033】
以上説明したように、本実施形態による酸素吸収体1によれば、微生物含有層12を備えているので、水が、内容物の収容空間Xから内層11を透過して微生物含有層12に到達し、胞子状態の微生物に接すると、微生物が、発芽して栄養細胞状態に移行し、収容空間Xに含まれる酸素を吸収しつつ、収容空間Xに二酸化炭素を排出することにより、収容空間Xに含まれる酸素の含有濃度を効果的に低減させることができる。これにより、内容物の酸化が抑えられる。この際、栄養細胞状態の微生物が栄養素に促されて増殖することで、内容物の酸化を長期にわたって抑制することができる。したがって、例えば、開封後であっても常温で保管したり、消費期限を長く設定したりすること等ができる。
微生物含有層12が、鉄成分を含有する酸素吸収剤を備えていないので、酸素吸収剤の溶出によって内容物の品質が悪化することがない。
以上より、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することができる。
【0034】
微生物含有層12が、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、微生物と栄養素とが含有されて構成されているので、微生物を死滅させずに胞子状態に維持し、かつ微生物および栄養素を容易にバインダー剤中に偏り少なく均等に分散させることができる。
【0035】
内容物の収容空間Xを画成する内層11の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされ、内層11の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされているので、収容空間Xに含まれる水および酸素を、内層11を円滑に透過させて微生物含有層12に到達させることが可能になり、収容空間Xに含まれる酸素の含有濃度を確実に低減させることができる。
【0036】
外層13の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされ、外層13の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされているので、水および酸素が、収容空間Xの反対側から外層13を透過して微生物含有層12に到達するのを抑制することが可能になり、収容空間Xに含まれる酸素の含有濃度を確実に低減させることができる。
【0037】
微生物が、酵母、糸状菌、枯草菌、および放線菌から選ばれる1種または2種以上となっているので、内容物の品質を保持しつつ、内容物の酸化を抑制することが可能な酸素吸収体1を確実に得ることができる。
【0038】
本実施形態による酸素吸収体1の製造方法によれば、塗布工程時に、内層11および外層13のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物および栄養素を含有するバインダー剤の水溶液を塗布するので、微生物が、前記一方の層を形成する際の熱を受けることがなく、微生物に加えられる加熱時間および加熱温度をそれぞれ抑制することが可能になり、微生物含有層12に含まれる微生物が死滅するのを防ぐことができる。
乾燥工程を有するので、微生物含有層12に含まれる自由水の量を、胞子状態の微生物が、発芽して栄養細胞状態に移行するのに要する水分量未満となるように容易に調整することができる。
【0039】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0040】
酸素吸収体1として、例えば、内層11、微生物含有層12、および外層13を備えた積層シートが、熱成形されてカップ状に形成された容器体を採用してもよい。この熱成形は、微生物が死滅しない程度の加熱温度(例えば200℃以下)および成形時間(例えば10秒以内)で行う。
微生物含有層12に隣接する吸水層(例えば、吸水性高分子、でんぷん性素材等)を設けてもよい。この場合、大量の水が貯留された吸水層から微生物含有層12に水を安定して供給することが可能になり、微生物含有層12に含まれる胞子状態の微生物が、栄養細胞状態に確実に移行することとなり、収容空間X内の酸素を吸収しやすくすることができる。
微生物含有層12が、内層11および外層13により厚さ方向に挟まれていれば、微生物含有層12を2層以上有し、かつ内層11および外層13を含めた合計で5層以上有する酸素吸収体であってもよい。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記実施形態および前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0042】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
内容物の収容空間を画成する内層と、微生物含有層と、外層と、が厚さ方向に積層され、
前記微生物含有層は、天然多糖類および水溶性樹脂から選ばれる1種または2種以上の水溶性のバインダー剤に、胞子状態にある好気性の微生物と、栄養細胞状態に移行した前記微生物の増殖を促す栄養素と、が含有されて構成され、
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記内層の酸素ガス透過度が、4500(cm3/m2・24h・atm)以上とされ、
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記内層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以上とされている、酸素吸収体。
<2>
温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下で測定した前記外層の酸素ガス透過度が、600(cm3/m2・24h・atm)以下とされ、
温度25℃および相対湿度90%の雰囲気下で測定した前記外層の透湿度が、400(g/(m2・24h))以下とされている、前記<1>に記載の酸素吸収体。
<3>
前記微生物は、酵母、糸状菌、枯草菌、および放線菌から選ばれる1種または2種以上となっている、前記<1>または<2>に記載の酸素吸収体。
<4>
前記内層および前記外層のうちのいずれか一方の層の表面に、胞子状態の微生物、および前記栄養素を含有する前記バインダー剤の水溶液を塗布する塗布工程と、
前記バインダー剤の水溶液から水分を除去し、前記微生物含有層を形成する乾燥工程と、
前記微生物含有層の表面に、前記内層および前記外層のうちのいずれか他方の層を設ける層形成工程と、を有する、前記<1>から<3>のいずれか1つに記載の酸素吸収体を製造する酸素吸収体の製造方法。
【符号の説明】
【0043】
1 酸素吸収体
11 内層
12 微生物含有層
13 外層