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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122222
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/515 20060101AFI20240902BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240902BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61F13/515
A61F13/494 111
A61F13/15 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029653
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA05
3B200BA16
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB11
3B200BB17
3B200BB20
3B200CA11
3B200DA03
3B200DA04
3B200DC07
3B200DF08
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、尿漏れを防止する吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも股下部に配置された吸収体と、吸収体より肌面側に配置された透水性シートと、吸収体より非肌面側に配置された非透水性シートと、吸収体の幅方向の両外側において肌面側に配置された一対の防漏シートと、を備え、一対の防漏シートの各々の一部が透水性シートと接合された接合部が設けられ、接合部の幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して長手方向に延在し、幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部を形成し、透水性シートと吸収体と非透水性シートは、厚み方向に重畳する範囲において、透水性シートの非肌面側で接着しており、平面視において接合部と重畳する位置を含む範囲において、透水性シートと、吸収体と非透水性シートとの接着力が弱い弱接着領域が設けられている、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、
少なくとも股下部に配置された吸収体と、
前記吸収体より肌面側に配置された透水性シートと、
前記吸収体より非肌面側に配置された非透水性シートと、
前記吸収体の前記幅方向の両外側において肌面側に配置された一対の防漏シートと、
を備え、
前記一対の防漏シートの各々の一部が前記透水性シートと接合された接合部が設けられ、前記接合部の前記幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して前記長手方向に延在し、前記幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部を形成し、
前記透水性シートと前記吸収体と前記非透水性シートは、厚み方向に重畳する範囲において、前記透水性シートの非肌面側で接着しており、
平面視において前記接合部と重畳する位置を含む範囲において、前記透水性シートと、前記吸収体と前記非透水性シートとの接着力が弱い弱接着領域が設けられている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記弱接着領域では、前記透水性シートの非肌面側と、前記吸収体と前記非透水性シートは、接着されていない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記弱接着領域では、少なくとも前記長手方向の中央部を含む位置に設けられている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記弱接着領域において、前記透水性シートの非肌面側に、パルプ繊維が接着されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品は、折り畳まれた状態において屈曲して屈曲部を形成しており、
前記屈曲部は前記弱接着領域と重畳する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記屈曲部は、
前記幅方向の外側に形成されて前記長手方向に延在する第1の屈曲部と、
前記吸収性物品を前記長手方向に略三等分する位置に形成されて前記幅方向に延在する第2の屈曲部と、
を、有する、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、吸収性材料を含む吸収コアを備え、
前記弱接着領域は、その一部又は全部において前記吸収コアと重畳していない、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや、吸収性パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている。特許文献1には、サイドパネルに吸収体とは別体の補助吸収性シートを配置することで、横漏れを抑制できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-86264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収体の幅方向外側に吸収体と別体の補助吸収性シートを用いると、排出液の横漏れを防止できる。一方、吸収性物品は交換頻度の高い消耗品であり、専用の部材を設けることなく同様の効果が得られるのであればより好ましい。
【0005】
本発明は、尿漏れを防止する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する吸収性物品であって、少なくとも股下部に配置された吸収体と、前記吸収体より肌面側に配置された透水性シートと、前記吸収体より非肌面側に配置された非透水性シートと、前記吸収体の前記幅方向の両外側において肌面側に配置された一対の防漏シートと、を備え、前記一対の防漏シートの各々の一部が前記透水性シートと接合された接合部が設けられ、前記接合部の前記幅方向の内側端部である接合端から肌面側に起立して前記長手方向に延在し、前記幅方向の内側端部を自由端とする一対の防漏部を形成し、前記透水性シートと前記吸収体と前記非透水性シートは、厚み方向に重畳する範囲において、前記透水性シートの非肌面側で接着しており、平面視において前記接合部と重畳する位置を含む範囲において、前記透水性シートと、前記吸収体と前記非透水性シートとの接着力が弱い弱接着領域が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、尿漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る吸収性パッドの外観斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性パッドの平面図である。
図3図3は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4図4は、弱接着領域が剥離した状態の吸収性パッドの断面図である。
図5図5は、実施形態に係る吸収性パッドの流通状態における折り畳み例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態
様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
<実施形態>
本実施形態では、使い捨ての吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッドが着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。吸収性パッドは、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有する。また、本願で用いる方向に関する用語は、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0011】
図1は、実施形態に係る吸収性パッド1の外観斜視図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、下衣肌着の肌面側に配置することで単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後側に位置し、着用者の後身頃に対応する後身頃領域1Rとを有する。
【0012】
図2は、実施形態に係る吸収性パッド1の平面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、平面視において、股下領域1B及び前身頃領域1Fよりも後身頃領域1R側の方が幅広な羽子板形状を有している。吸収性パッド1は、この平面形状により、着用状態で着用者の腹部と臀部に沿いやすくなる。なお、吸収性パッド1の平面形状は略羽子板型に限られず、例えば略長方形や略瓢箪形であってよい。
【0013】
吸収性パッド1は、着用状態における肌面側に配置されたトップシート8(本願でいう「透水性シート」の一例)を備える。トップシート8は、吸収性パッド1の着用状態において着用者の肌に接する部分であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている、透水性シートである。トップシート8には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0014】
図3は、実施形態に係る吸収性パッド1を図2のA―A線で切断した場合の断面図である。以下に示す断面図では、吸収性パッド1の内部構造を分かりやすくするため、各構造を実際より厚く図示しているが、実際には吸収性パッド1は非常に薄いものである。なお、図3では、後述する立体ギャザー3L,3Rが起立した状態の吸収性パッド1を図示している。
【0015】
吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収し、保持する吸収体6を備える。吸収体6は、着用者の排出した液体を吸収するために股下領域1Bを含んでトップシート8の非肌面側に配置されている。吸収体6は、股下領域1Bを中心に前身頃領域1F及び後身頃領域1Rに延在している。吸収体6の肌面側には、ホットメルト接着剤HMが幅方向に間隔を空けて複数列のストライプ状に塗布されており、このホットメルト接着剤HMによって吸収体6とトップシート8が接着されている。本実施形態において吸収体6は、吸収性材料を含
む吸収コア6Cと吸収コア6Cの少なくとも上側を覆うコアラップシート7とを有する。なお、吸収体6の長手方向は、吸収コア6C及びコアラップシート7の長手方向及び吸収性パッド1の長手方向と一致している。
【0016】
吸収コア6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有している。上記の短繊維やSAPが吸収性材料の一例である。
【0017】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等である添加剤、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。SAP粒子は、自重の10~100倍程度の液体を吸収することができる。SAP粒子には、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられてよい。
【0018】
SAP粒子はゲル化して液体を保持できる反面、液体の吸収には一定の時間がかかる。吸収性パッド1は、SAP粒子が液体を吸収するまでの間、短繊維が排出液を減速させながら吸収コア6C内部で拡散させ、広範囲のSAP粒子に排出液を吸収させることで液体の逆戻りを抑制する。
【0019】
吸収コア6Cは、トップシート8側に配置された上層吸収マット6Aと、非肌面側に配置された下層吸収マット6Bとを有する。吸収コア6Cは、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bの2層のマットが積層された構造を有している。上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bは、上述の短繊維によって形成されている。
【0020】
上層吸収マット6Aは、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる矩形(長方形)の平面形状を有する。下層吸収マット6Bは、トップシート8側から見て上層吸収マット6Aの下方(非肌面側)に配置されており、股下領域1Bよりも前身頃領域1F、後身頃領域1R側の方が幅広で股下領域1Bがくびれた瓢箪形の平面形状を有している。上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bは、各々の幅方向の中心が略一致するように厚み方向に積層されている。また、平面視において、下層吸収マット6Bは、上層吸収マット6Aよりも大きく形成されている。この構成により、吸収コア6Cは、全体として股下領域1Bがくびれた瓢箪型の平面形状を有している。なお、吸収体6の長手方向は、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bの長手方向及び吸収性パッド1の長手方向と一致している。
【0021】
上層吸収マット6Aまたは下層吸収マット6BのうちのいずれかにSAP粒子を偏らせて配置させてよい。本実施形態においては、SAP粒子は上層吸収マット6Aのみに配置されており、下層吸収マット6Bには配置しない。この場合、下層吸収マット6Bは、短繊維のみからなり、流入した排出液が上層吸収マット6Aに含まれるSAP粒子によって吸収されるまでの間、排出液を保持し、拡散させ、逆戻りを抑制する役割を果たす。
【0022】
また、吸収性パッド1は、吸収コア6Cに設けられたスリット6Hを備える。スリット6Hは、吸収コア6Cの長手方向に延在するように、吸収コア6Cの幅方向中央部に設けられている。スリット6Hは、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bから形成される吸収コア6Cを貫通して形成されており、肌面側の上面及び非肌面側の底面がコアラッ
プシート7で形成される。スリット6Hは、着用状態における着用者の正中線に対応する位置に吸収コア6Cを厚さ方向に貫通して形成されている。排出された尿等の排出液は、スリット6Hに流入し、スリット6Hを長手方向に移動して、吸収体6の長手方向広範囲で迅速に吸収される。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、スリット6Hを備えることにより排出液を迅速に拡散させることができる。また、図2に示されるように、スリット6Hは吸収体6の長手方向端部には達していない。このため、長手方向外側に移動した排出液は、吸収体6の長手方向端部までは達せずにスリット6Hの内側に留まり、順次吸収される。
【0023】
図2に示されるように、平面視において、スリット6Hは、前後の両端が円弧状に形成された長方形状を有する。スリット6Hの前側の端部は、前身頃領域1Fの中程に位置し、スリット6Hの後側の端部は、後身頃領域1Rの前部に位置している。なお、スリット6Hは、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0024】
また、吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bの間に配置され、多数のSAP粒子を含んで形成されたSAP層6Sを有する。SAP層6Sは、スリット6Hの両側に配置されており、スリット6Hよりも後側に延在している。吸収コア6Cは、下層吸収マット6Bで尿などの液体を拡散し、SAP層6Sや上層吸収マット6Aに含まれるSAPによって液体を保持する。
【0025】
本実施形態に係る吸収体6は、コアラップシート7を有している。コアラップシート7は、吸収コア6Cの全体を包む透水性のシートであって、より具体的には、吸収コア6Cの肌面側、非肌面側、側面側を覆っている。コアラップシート7は、排出液に触れていない状態で、複数の吸収マットから構成される吸収コア6Cの形状を保護して型崩れを防止し、吸収マットに含まれるSAP粒子やSAP層6Sに含まれるSAP粒子の逸脱を防止する。また、水分を吸収していない状態のSAP粒子は硬い砂粒状であり、逸脱した水分を吸収していない状態のSAP粒子が着用者の肌面に直接触れると、着用者に対して違和感を与える虞がある。このため、吸収コア6Cをコアラップシート7で包み込み、吸収コア6Cの型崩れを防止するとともにSAP粒子が吸収体6の外に逸脱するのを防止している。なお、コアラップシート7は必須な構成ではない。
【0026】
本実施形態において、コアラップシート7は、上層吸収マット6Aとトップシート8との間に配置される上層コアラップシート7Aと、下層吸収マット6Bの非肌面側に配置され、吸収コア6Cの側面を覆い、更に上層コアラップシート7Aの幅方向外側を覆う下層コアラップシート7Bの2枚のシートから形成されている。コアラップシート7には、パルプ繊維シートや薄手の不織布などが用いられる。本願実施形態では、コアラップシート7にティッシュペーパーが用いられる。なお、コアラップシート7を2枚のシートから形成する場合、上層コアラップシート7Aと下層コアラップシート7Bを別素材から形成することもできる。一例としては、上層コアラップシート7Aをパルプ繊維シートとし、下層コアラップシートは樹脂製の不織布とすることができる。なお、コアラップシート7を1枚のシートで形成してもよい。また、コアラップシート7は、下層吸収マット6Bと同程度の長さであり、コアラップシート7の長手方向の端部では、上層コアラップシート7Aと下層コアラップシート7Bとは接着されていない。なお、コアラップシート7は、下層吸収マット6Bよりも長く形成されており、コアラップシート7の長手方向の端部では、上層コアラップシート7Aと下層コアラップシート7Bとが接着されていてもよい。
【0027】
前述の通り、吸収コア6Cは、スリット6Hを備えている。トップシート8は、スリット6Hの内側に落ち込まないように構成されている。また、コアラップシート7も、スリット6Hの内部に落ち込まないように構成されている。このため、スリット6Hの肌面側
の上面は、上層コアラップシート7Aによって形成され、スリット6Hの非肌面側の底面は、下層コアラップシート7Bによって形成される。このように、スリット6Hの上面及び底面は、ティッシュペーパーであるコアラップシート7で形成される。
【0028】
吸収性パッド1は、吸収体6の非肌面側に配置された非透水性のバックシート5(本願でいう「非透水性シート」の一例)を備える。バックシート5は、吸収性パッド1と略同一の平面形状(羽子形状)を有している。バックシート5は、吸収体6に流入した排出液の漏れを抑制するためにポリエチレンフィルム等の熱可塑性の非透水性の樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、尿や水分が吸収性パッド1の外側へ滲み出るのを防ぐための撥水性と着用状態での蒸れを抑えるための通気性を有する。バックシート5は、微小な通気孔が多数形成されることによって通気性を有している。
【0029】
吸収性パッド1は、バックシート5の更に非肌面側に配置されたカバーシート4を備える。バックシート5とカバーシート4は、ホットメルト接着剤HMによって全面接着されている。カバーシート4とバックシート5とは同形状で且つ同じサイズであり、吸収性パッド1の外形を形成する。これにより、仮にバックシート5から水分がしみ出した場合であっても、カバーシート4の外側(非肌面側)に水分が滲み出すのを防止することができる。カバーシート4は、吸収性パッド1の外装面を形成し、併用されるおむつや肌着等との摩擦に耐え得る剛性を有し、バックシート5が傷つくことを防止する。カバーシート4には、一般的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維で構成された不織布が用いられる。カバーシート4は、液不透過性と、透湿性とを有している。
【0030】
カバーシート4の更に非肌面側の一部には、止着テープが設けられていてよい。止着テープは粘着性を有するテープであり、併用されるおむつや下衣肌着等に対して吸収性パッド1がずれるのを防ぐ。なお、止着テープを設けずに、カバーシート4として、非肌面側の摩擦係数が大きい部材を採用し、おむつ等とのずれを抑制してよい。また、カバーシート4の非肌面側にホットメルト接着剤HMを塗布することによる位置ずれ防止加工を施してもよい。
【0031】
また、吸収性パッド1は、吸収体6の幅方向の両外側の肌面側に配置され、長手方向に沿って延在する非透水性の、一対のサイドシート9L,9Rを備える。サイドシート9L,9Rは、長手方向の端部がトップシート8の長手方向の端部と合うように配置されている。サイドシート9L,9Rは、幅方向外側に配置された接合部9LA,9RAを有する。接合部9LA,9RAでは、サイドシート9L,9Rの各々の一部がその非肌面側に配置された部材であるトップシート8、吸収体6、バックシート5と、ホットメルト接着剤によって接着されている。
【0032】
サイドシート9L,9Rは、ホットメルト接着剤HMによってトップシート8に接着されており、このホットメルト接着剤HMの幅方向内側端部を接合端3LL,3LRとし、接合端の内側が起立可能な立体ギャザー3L,3Rを形成する。サイドシート9L,9Rの幅方向内側の端部は、立体ギャザー3L,3Rの先端となる自由端部9LB,9RBであり、自由端部9BL,9BR付近には、糸状弾性部材である糸ゴム3BL,3BRが、吸収性パッド1の長手方向に伸長状態でホットメルト接着剤によって固定されている。サイドシート9L,9Rは、長手方向端部近傍では幅方向内側もトップシート8側と接着されているが、長手方向内側において、ホットメルト接着剤HMよりも幅方向内側が接着されておらず、肌面側に起立可能となる。糸ゴム3BL,3BRが収縮することによって、接合端3LL,3LRよりも内側が立体ギャザー3L,3Rが肌面側に起立した場合に、自由端部9LB,9RBが肌面側の先端となる。起立した立体ギャザー3L,3Rは、当該立体ギャザー3L,3Rの幅方向外側への液体や軟便の移動を阻害し、これらの横漏れ
を抑制する。サイドシート9L,9Rは、本開示における一対の防漏シートの一例であり、立体ギャザー3L,3Rは、本開示における一対の防漏部の一例である。
【0033】
また平面視において立体ギャザー3L,3Rの接合端3LL,3LRよりも幅方向の外側に延在する領域が耳部10L,10Rである。本実施形態では、耳部10L,10Rは、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに亘って形成されている。また、下層吸収マット6Bは、接合端3LL,3LRの幅方向の外側を含んで配置されている。吸収性パッド1は、耳部10L、10Rにおけるクッション性を高めつつ、上層吸収マット6Aを大きく形成することで液体の吸収量を大きくすることができる。なお、耳部10L,10Rは、前身頃領域1Fまたは後身頃領域1Rのいずれか一方に形成されていてもよい。
【0034】
本実施形態における吸収性パッド1では、吸収体6とトップシート8は接着されているものの、両者の接着力が弱く剥離しやすい弱接着領域である、弱接着部12L,12Rが存在する。当該弱接着部12L,12Rは、少なくとも吸収性パッド1の長手方向内側にある股下領域1Bに設けられている。また、当該弱接着部12L,12Rは、接合端3LL,3LRの近傍に設けられている。
【0035】
なお、弱接着部12L,12Rは、吸収性パッド1の長手方向の端部までは延在しておらず、吸収性パッド1の端部側には、トップシート8と、当該トップシート8の非肌面側の他の部材、一例を挙げればバックシート5が強固に接着された封止領域が存在している。仮に弱接着部12L,12Rが剥離した状態でトップシート8と当該トップシート8の非肌面側の他の部材との間を排出液が流動した場合でも、当該排出液の流動は封止領域において封止され、長手方向端部には達しない。これにより、吸収性パッド1は、弱接着部12L,12Rを有しながらも前漏れ、後漏れを防止している。
【0036】
図4は、弱接着領域が剥離した状態の吸収性パッドの断面図である。吸収性パッド1の着用時、立体ギャザー3L,3Rは自由端部9LB,9RBに設けられた糸ゴム3BL,3BRの付勢力により着用者の肌面側に起立する。そして、トップシート8は、例えば、弱接着部12L,12Rにおいて立体ギャザー3L,3Rの起立により生じる肌面側への付勢力により、吸収体6から剥離する。
【0037】
本実施形態に係る吸収性パッド1では、立体ギャザー3L,3Rの起立に応じて剥離したトップシート8は、肌面側に立ち上がる。トップシート8が肌面側に立ち上がるため、トップシート8とサイドシート9L,9Rとの間に設けられた接合端3LL,3LRも、肌面側に立ち上がる。この結果、本実施形態に係る吸収性パッド1の幅方向外側には、剥離したトップシート8と立体ギャザー3L,3Rによる高い防漏壁が形成され、排出液の横漏れを効果的に抑制する。
【0038】
図3図4は吸収性パッド1の前身頃領域1Fの断面図であるため、接合端3LL,3LRは、吸収体6の幅方向端部と厚み方向に重畳している。吸収体6は瓢箪形状であり、股下領域1Bでは幅狭となる一方、接合端3LL,3LRの幅方向における位置は、吸収性パッド1の長手方向全領域に渡って変化をしない。このため、股下領域1Bでは、接合端3LL,3LR付近には吸収体6が存在しておらず、トップシート8は、バックシート5と接着している。そして、接合端3LL,3LRに対応する部位においてトップシート8とバックシート5とを弱接着とすることで、股下領域1Bにおいても弱接着部12L,12Rを形成可能である。トップシート8とバックシート5との間にも弱接着部12L,12Rを設けることで、立体ギャザー3L,3Rの起立範囲ほぼ全域において、トップシート8の起立端付近が剥離し、より高い防漏壁を形成する吸収性パッド1を形成できる。
【0039】
また、各図に示す通り、本実施形態に係る吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと、下
層吸収マット6Bを有する2層構造になっており、その大部分の領域において、下層吸収マット6Bは上層吸収マット6Aよりも幅広である。そして、トップシート8は上層吸収マット6Aの更に肌面側に配置されている。このため、弱接着部12L,12Rの少なくとも一部では、弱接着部12L,12Rと厚み方向に直接重畳する位置に吸収コア6Cは存在しない。また、股下領域1B近傍では下層吸収マット6Bにも括れが形成されており、弱接着部12L,12Rと厚み方向に重畳する位置に吸収コア6C自体が存在していない。すなわち、股下領域1B近傍では、弱接着部12L,12Rの全部が、吸収コア6Cと重畳していない。
【0040】
吸収コア6Cはその厚みにより剛性を有しており、立体ギャザー3L,3Rが起立する際の支障となり得る。本実施形態では、立体ギャザー3L,3Rの接合端3LL,3LRを含む弱接着部12L,12Rの少なくとも一部と対応する領域では、吸収コア6Cのうち上層吸収マット6Aが存在しない状態であるか、または吸収コア6C自体が存在しない。そのような領域は、接合端3LL,3LRを含む弱接着部12L,12Rにおいて、トップシート8が非肌面側の他の構造から剥離して防漏壁の一部を形成する際の遊び領域となり、防漏壁の形成を阻害しない。よって、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収コア6Cの剛性による阻害を軽減しながら、高い防漏壁を形成可能である。
【0041】
なお、弱接着部12L,12Rは、必ずしも立体ギャザー3L,3Rが起立する領域全てに設けられる必要はなく、少なくとも股下領域1Bを含む位置に設けられてよい。吸収性パッド1の着用時、股下領域1Bは着用者の排出孔近傍に位置しており、排出液と接することが予定されている。着用者が側臥位を取っているなどの理由により排出液が幅方向外側に流れた場合、排出液は立体ギャザー3L,3Rと接しやすい。また、股下領域1Bは着用者の太腿部による圧力を受けて肌面から遠ざかりやすい。股下領域1Bを含む位置に弱接着部12L,12Rが設けられていれば、少なくとも股下領域1Bにおいて立体ギャザー3L,3Rをより大きく立ち上げることができる。本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体6が着用者の肌面から離れてしまった場合でも、排出液の横漏れを抑制可能である。
【0042】
なお、弱接着部12L,12Rの非肌面側には、パルプ繊維が配置されている。当該パルプ繊維は、弱接着部12L,12Rの非肌面側に配置されたものであってよい。また、元々は吸収体6の一部であったパルプ繊維が弱接着部12L,12Rが吸収体6から剥離する際にトップシート8の非肌面側に付着したものであってよい。
【0043】
弱接着部12L,12Rを設けない場合、立体ギャザー3L,3Rの接合端3LL,3LR近傍に達した排出液は、トップシート8を通過して当該位置の非肌面側に存在する吸収体6に速やかに吸収される。排出液の吸収が終わるとトップシート8は乾燥状態に戻るため、着用者の快適性を維持できる。しかし、本実施形態に係る吸収性パッド1では、弱接着部12L,12Rが吸収体6から剥離しており、弱接着部12L,12R近傍には排出液を吸収できる構造が存在しない。弱接着部12L,12R付近において排出液を吸収できる構造が存在していないことにより、排出液はトップシート8の肌面側に留まり続けて着用者に違和感を与える虞がある。また、吸収されていない排出液がトップシート8の肌面側で流動を続けることにより、着用者に違和感を与える虞もある。
【0044】
そこで、本実施形態では、弱接着部12L,12Rの非肌面側にパルプ繊維を配置する。吸収体6から剥離した弱接着部12L,12Rの近傍に達した排出液は、トップシート8を通過して当該パルプ繊維に吸収される。本実施形態に係る吸収性パッド1では、弱接着部12L,12Rの非肌面側にパルプ繊維を配置することにより、弱接着部12L,12R近傍に達した排出液を吸収可能であり、トップシート8の肌面側を乾燥状態に維持できる。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、高い横漏れ防止効果を有しつつも
、着用者に違和感を与えない。
【0045】
図5は、実施形態に係る吸収性パッドの流通状態における折り畳み例について示す図である。吸収性パッド1の使用状態は、図1に示す形態となるが、製品出荷状態および流通状態では折り畳まれている。吸収性パッド1を未使用状態において折り畳んでおくことで、着用者の肌面に当接するため繊細な肌触りを維持するべき肌面側を保護しつつも、圧縮して嵩を減らした状態で取り扱うことを可能とする。
【0046】
より具体的には、流通状態における吸収性パッド1は、図5(A)のように、その幅方向外側において、吸収性パッド1を長手方向に通過する折り曲げ線13L,13Rに沿って、非肌面側から肌面側に向けてCの字状に折り返された上で、図5(B)のように、吸収性パッド1を長手方向に略三等分するように配置され、幅方向に通過する2本の折り曲げ線である折り曲げ線14F,14Rに沿って、肌面側に向けて長手方向に3つ折りされている。折り曲げ線13L,13Rと、14F,14Rは、本開示における屈曲部の一例である。また、折り曲げ線13L,13Rは、本開示における第1の屈曲部の一例であり、折り曲げ線14F,14Rは、本開示における第2の屈曲部の一例である。
【0047】
折り畳まれた状態では、吸収性パッド1の外側面は、その全面がカバーシート4となる。カバーシート4は、着用時に下衣肌着やおむつと擦れ合うことが想定されている部材であり、強靭である。このため、折り畳まれた吸収性パッド1は、例え流通状態において圧力を受けてもその機能を維持できる。
【0048】
折り曲げ線13L,13Rは、本実施形態では、弱接着部12L,12Rを通過するように設けられている。吸収性パッド1を着用する際、着用者または介助者は、折り畳まれた状態の吸収性パッド1の屈曲を解消し、平板状の状態にしてから着用する。折り曲げ線13L,13Rを解消する動作を行う際、弱接着部12L,12Rは厚み方向外側に向けて圧力を受ける。弱接着部12L,12Rは当該圧力によって剥離し、吸収性パッド1は、弱接着部12L,12Rが剥離済みの状態で着用されることになる。
【0049】
また、折り曲げ線14F,14Rも、同様に弱接着部12L,12Rを通過するように設けられている。折り曲げ線14F,14Rの間の領域は、排出液と接する機会が多い股下領域1Bである。着用者または介助者が折り曲げ線14F,14Rによって折り畳まれている吸収性パッド1の屈曲を解消する際、吸収性パッド1は長手方向に伸びるように圧力を加えられる。当該圧力によっても、弱接着部12L,12Rは剥離する。当該圧力は折り曲げ線14F,14R近傍において強く働き、股下領域1Bにおいて弱接着部12は確実に剥離する。
【0050】
このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は折り曲げ線13L,13Rおよび折り曲げ線14F,14Rに沿って折り畳まれた状態で流通しており、これらの折り曲げ線は、弱接着部12L,12Rを通過するように設けられている。そして、弱接着部12L,12Rは、折り畳まれた吸収性パッド1を展開して平板状にする際に剥離し、剥離済みの状態で着用されることになる。吸収性パッド1の着用状態において、剥離済みの弱接着部12L,12Rは、立体ギャザー3L,3Rと一体となって高い防漏壁を形成し、横漏れを効果的に防止する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、弱接着部12L,12Rによる防漏壁形成効果を確実に発揮する。
【0051】
なお、弱接着部12L,12Rに対応する部分について、トップシート8と吸収体6またはバックシート5との間に接着剤を配置しない非接着部としてもよい。消耗品である吸収性パッド1には経済性が要求されるが、元々剥離が予定されている弱接着部12L,12R部分を非接着部とすることにより、接着剤使用量を削減可能となる。このため、非接
着部を有する吸収性パッド1は、製造コストを低減可能である。なお、弱接着部12L,12Rを非接着部とする場合にも、荷重を加えたり、各シートを構成する繊維同士を係合させたりすることにより、トップシート8と吸収体6またはバックシート5とが容易に剥離する程度に仮接合させておくことも可能である。
【0052】
<その他の実施形態>
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、吸収性パッドを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明は、テープ型使い捨ておむつやパンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品にも適用可能である。
【0053】
また、上記実施形態では、弱接着部12L,12Rは吸収性パッドの長手方向に沿って設けられているが、弱接着部の配置領域はこれに限られない。例えば、弱接着部12L,12Rに加えて、股下領域1B全体を弱接着部としてもよい。股下領域1B全体を弱接着部とすることにより、トップシートは着用者の肌面に当接しやすくなる。排出液は、吸収性物品が着用者の肌と正しく当接していない状態では着用者の肌面を伝って広がり、着用者に違和感を与えることがあるが、トップシートの広範囲を弱接着部とすることで、こうした違和感の発生を抑制可能である。
【0054】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・吸収性パッド
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
3BL,3BR・・糸ゴム
3LL,3RL・・接合端
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6A・・上層吸収マット
6B・・下層吸収マット
6H・・スリット
6S・・・SAP層
7・・コアラップシート
7A・・上層コアラップシート
7B・・下層コアラップシート
8・・トップシート
9L,9R・・サイドシート
9LA,9RA・・接合部
9LB,9RB・・自由端部
10L,10R・・耳部
12L,12R・・弱接着部
13L,13R,14F,14R・・折り曲げ線
図1
図2
図3
図4
図5