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特開2024-122248通信端末、セッション制御装置、及び、ゲートウェイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122248
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】通信端末、セッション制御装置、及び、ゲートウェイ装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/765 20220101AFI20240902BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20240902BHJP
【FI】
H04L47/765
H04W76/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029690
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽登
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030HD03
5K030LC09
5K030LE10
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】ゲートウェイ装置が転送処理に使用するプロセッサリソースを適切に制御できるようにする。
【解決手段】端末1は、当該端末1とデータネットワークNとの間のゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理にゲートウェイ装置4が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、セッションの確立処理において、ゲートウェイ装置4を制御するセッション制御装置3宛に送信する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末であって、
前記通信端末とデータネットワークとの間のゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理に前記ゲートウェイ装置が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を生成する生成部と、
前記セッションの確立処理において、前記ゲートウェイ装置を制御するセッション制御装置宛に前記指示情報を送信する送信部と、
を備える、通信端末。
【請求項2】
前記指示情報は、前記転送処理において前記データトラフィックの転送順序に入れ替えが生じる前記プロセッサリソースの使用を前記ゲートウェイ装置に許容するか否かを示す、
請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示す、
請求項2に記載の通信端末。
【請求項4】
通信端末であって、
前記通信端末とデータネットワークとの間にゲートウェイ装置を介して確立したセッションにおいて前記データネットワーク宛のデータ信号を生成する生成部と、
前記ゲートウェイ装置が前記セッション上のデータトラフィックを転送する転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を前記ゲートウェイ装置へ送信する送信部と、
を備える、通信端末。
【請求項5】
通信端末とデータネットワークとの間のゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理に前記ゲートウェイ装置が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記セッションの確立処理において前記通信端末から受信する受信部と、
前記指示情報を受信した場合に、前記指示情報を前記ゲートウェイ装置へ送信する送信部と、
を備える、セッション制御装置。
【請求項6】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、
前記送信部は、受信した前記指示情報に基づいて、前記ゲートウェイ装置が前記転送処理に使用する前記プロセッサリソースのコアの個数を前記ゲートウェイ装置に送信する、
請求項5に記載のセッション制御装置。
【請求項7】
前記指示情報は、前記通信端末が実行するアプリケーションの内容を示し、
前記セッション制御装置は、前記アプリケーションの内容と前記プロセッサリソースが使用可能なコアの個数とが関連付けられた決定用データを参照することにより、前記指示情報が示すアプリケーションの内容に基づいて決定した個数を決定する決定部をさらに備え、
前記送信部は、前記決定部が決定した個数を前記ゲートウェイ装置に送信する、
請求項5に記載のセッション制御装置。
【請求項8】
前記受信部は、前記通信端末を識別可能な端末識別子を前記セッションの確立処理において前記通信端末から受信し、
前記送信部は、前記決定部が決定した前記コアの個数と前記端末識別子とが関連付けられたマッピング情報を前記ゲートウェイ装置へ送信する、
請求項7に記載のセッション制御装置。
【請求項9】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、
前記送信部は、前記プロセッサリソースのコアの個数を前記ゲートウェイ装置が決定するために用いる情報として前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記ゲートウェイ装置へ送信する、
請求項5に記載のセッション制御装置。
【請求項10】
ゲートウェイ装置であって、
通信端末とデータネットワークとの間の前記ゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理を行う転送処理部と、
前記転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記セッションの確立を制御するセッション制御装置から前記セッションの確立処理において受信する受信部と、
受信した前記指示情報に基づいて、前記転送処理に対する前記プロセッサリソースの割り当てを制御する制御部と、
を備える、ゲートウェイ装置。
【請求項11】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、
前記受信部は、前記セッション制御装置が前記指示情報に基づいて決定した前記プロセッサリソースのコアの個数を示すコア数情報を、前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、
前記制御部は、前記コア数情報が示す個数のコアを前記転送処理に割り当てる、
請求項10に記載のゲートウェイ装置。
【請求項12】
前記受信部は、前記セッションの確立処理において前記通信端末を識別可能な端末識別子を受信した前記セッション制御装置から、前記コア数情報と前記端末識別子とが関連付けられたマッピング情報を受信し、
前記制御部は、前記マッピング情報に基づいて、前記端末識別子に対応する前記データトラフィックの前記転送処理に、前記コア数情報が示す個数のコアを割り当てる、
請求項11に記載のゲートウェイ装置。
【請求項13】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し
前記受信部は、前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、
前記ゲートウェイ装置は、前記指示情報に基づいて前記転送処理に使用する前記コアの個数を決定する決定部をさらに備え、
前記制御部は、前記決定部が決定した個数のコアを前記転送処理に割り当てる、
請求項11に記載のゲートウェイ装置。
【請求項14】
前記指示情報は、前記通信端末が実行するアプリケーションの内容を示し、
前記受信部は、前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、
前記ゲートウェイ装置は、前記アプリケーションの内容と前記プロセッサリソースが使用可能なコアの個数とが関連付けられた決定用データを参照することにより、前記指示情報に基づいて前記転送処理に使用する前記コアの個数を決定する決定部をさらに備え、
前記制御部は、前記決定部が決定した個数のコアを前記転送処理に割り当てる、
請求項11に記載のゲートウェイ装置。
【請求項15】
ゲートウェイ装置であって、
通信端末とデータネットワークとの間の前記ゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理を行う転送処理部と、
前記転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記データトラフィックにおいて前記通信端末が前記データネットワーク宛に送信したデータ信号から検出する検出部と、
検出した前記指示情報に基づいて、前記転送処理に対する前記プロセッサリソースの割り当てを制御する制御部と、
を備える、ゲートウェイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、セッション制御装置、及び、ゲートウェイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1および非特許文献2は、従来のモバイルシステムの端末通信の制御手段を規定する。移動体通信において、オペレータのネットワークとインターネットとを接続する装置は、「ゲートウェイ(GW)装置」と称される。例えば、5G通信規格におけるUPFがGW装置に相当し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS 23.501 V18.0.0, “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; System architecture for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 18)”
【0004】
【非特許文献2】3GPP TS 23.502 V18.0.0, “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Procedures for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 18)”
【0005】
【非特許文献3】Intel, Samsung, “White Paper : Samsung Achieves 305 Gbps on 5G UPF Core Utilizing Intel(R) Architecture”, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゲートウェイ装置がパケット転送処理にマルチCPUコアのようなリソースを用いた場合、非特許文献1~3の制御手段を用いるとパケットの転送順序に入れ替わりが生じ得るため、正常な通信が継続できない可能性がある。
【0007】
本発明の目的の1つは、ゲートウェイ装置が転送処理に使用するプロセッサリソースを適切に制御できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の通信端末は、前記通信端末とデータネットワークとの間のゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理に前記ゲートウェイ装置が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を生成する生成部と、前記セッションの確立処理において、前記ゲートウェイ装置を制御するセッション制御装置宛に前記指示情報を送信する送信部と、を備える。
【0009】
前記指示情報は、前記転送処理において前記ユーザトラフィックの転送順序に入れ替えが生じる前記プロセッサリソースの使用を前記ゲートウェイ装置に許容するか否かを示してもよい。
【0010】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の通信端末は、前記通信端末とデータネットワークとの間にゲートウェイ装置を介して確立したセッションにおいて前記データネットワーク宛のデータ信号を生成する生成部と、前記ゲートウェイ装置が前記セッション上のデータトラフィックを転送する転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を前記ゲートウェイ装置へ送信する送信部と、を備える。
【0012】
本発明の第3の態様のセッション制御装置は、通信端末とデータネットワークとの間のゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理に前記ゲートウェイ装置が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記セッションの確立処理において前記通信端末から受信する受信部と、前記指示情報を受信した場合に、前記指示情報を前記ゲートウェイ装置へ送信する送信部と、を備える。
【0013】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、前記送信部は、受信した前記指示情報に基づいて、前記ゲートウェイ装置が前記転送処理に使用する前記プロセッサリソースのコアの個数を前記ゲートウェイ装置に送信してもよい。
【0014】
前記指示情報は、前記通信端末が実行するアプリケーションの内容を示し、前記セッション制御装置は、前記アプリケーションの内容と前記プロセッサリソースが使用可能なコアの個数とが関連付けられた決定用データを参照することにより、前記指示情報が示すアプリケーションの内容に基づいて決定した個数を決定する決定部をさらに備え、前記送信部は、前記決定部が決定した個数を前記ゲートウェイ装置に送信してもよい。
【0015】
前記受信部は、前記通信端末を識別可能な端末識別子を前記セッション確立処理において前記通信端末から受信し、前記送信部は、前記決定部が決定した前記コアの個数と前記端末識別子とが関連付けられたマッピング情報を前記ゲートウェイ装置へ送信してもよい。
【0016】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、前記送信部は、前記プロセッサリソースのコアの個数を前記ゲートウェイ装置が決定するために用いる情報として前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記ゲートウェイ装置へ送信する。
【0017】
本発明の第4の態様のゲートウェイ装置は、通信端末とデータネットワークとの間の前記ゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理を行う転送処理部と、前記転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記セッションの確立を制御するセッション制御装置から前記セッションの確立処理において受信する受信部と、受信した前記指示情報に基づいて、前記転送処理に対する前記プロセッサリソースの割り当てを制御する制御部と、を備える。
【0018】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、前記受信部は、前記セッション制御装置が前記指示情報に基づいて決定した前記プロセッサリソースのコアの個数を示すコア数情報を、前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、前記制御部は、前記コア数情報が示す個数のコアを前記転送処理に割り当ててもよい。
【0019】
前記受信部は、前記セッションの確立処理において前記通信端末を識別可能な端末識別子を受信した前記セッション制御装置から、前記コア数情報と前記端末識別子とが関連付けられたマッピング情報を受信し、前記制御部は、前記マッピング情報に基づいて、前記端末識別子に対応する前記データトラフィックの前記転送処理に、前記コア数情報が示す個数のコアを割り当ててもよい。
【0020】
前記指示情報は、前記ゲートウェイ装置に使用を許容する前記プロセッサリソースのコアの個数を示し、前記受信部は、前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、前記ゲートウェイ装置は、前記指示情報に基づいて前記転送処理に使用する前記コアの個数を決定する決定部をさらに備え、前記制御部は、前記決定部が決定した個数のコアを前記転送処理に割り当ててもよい。
【0021】
前記指示情報は、前記通信端末が実行するアプリケーションの内容を示し、前記受信部は、前記指示情報を前記セッションの確立処理において前記セッション制御装置から受信し、前記ゲートウェイ装置は、前記アプリケーションの内容と前記プロセッサリソースが使用可能なコアの個数とが関連付けられた決定用データを参照することにより、前記指示情報に基づいて前記転送処理に使用する前記コアの個数を決定する決定部をさらに備え、前記制御部は、前記決定部が決定した個数のコアを前記転送処理に割り当ててもよい。
【0022】
本発明の第5の態様のゲートウェイ装置は、通信端末とデータネットワークとの間の前記ゲートウェイ装置を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理を行う転送処理部と、前記転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、前記データトラフィックにおいて前記通信端末が前記データネットワーク宛に送信したデータ信号から検出する検出部と、検出した前記指示情報に基づいて、前記転送処理に対する前記プロセッサリソースの割り当てを制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ゲートウェイ装置が転送処理に使用するプロセッサリソースを適切に制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る端末の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るセッション制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係るゲートウェイ(GW)装置の構成例を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図6】第1の実施形態の変形例に係る無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図7】第2の実施形態に係る無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を適宜参照して、実施の形態について説明する。本明細書の全体を通じて同一要素には、特に断らない限り、同一符号を付す。添付の図面と共に以下に記載される事項は、例示的な実施の形態を説明するためのものであり、唯一の実施の形態を示すためのものではない。例えば、実施の形態において動作の順序が示された場合、動作の順序は、全体的な動作として矛盾が生じない範囲で、適宜に変更されてもよい。
【0026】
<システム構成例>
図1は、無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1に例示したように、無線通信システムSは、例えば、ユーザ機器(user equipment, UE)のような端末1と、無線アクセス網(radio access network,RAN)を構成する基地局2と、モバイルコアを構成するセッション制御装置3及びGW装置4と、インターネットあるいはローカルエリアネットワークのようなネットワークNと、を備える。ネットワークNは、例えば、5G通信規格において「DN」と表記されるデータネットワークに相当する。
【0027】
なお、以下の説明において、「通信端末」を「ユーザ端末」あるいは単に「端末」と称することがあり、「基地局装置」を単に「基地局」と称することがある。「基地局」は、「アクセスポイント(AP)」に読み替えられてもよい。また、基地局2、セッション制御装置3、及びGW装置4は、それぞれ、例えば5G通信規格におけるgNB、SMF、及び、UPFに相当し得る。「SMF」は、「Session Management Function」の略記であり、「UPF」は、「User Plane Function」の略記である。無線通信システムSにおいて、端末1、基地局2、セッション制御装置3、及びGW装置4は、それぞれ、複数台備えられていてもよい。
【0028】
図1において、端末1-基地局2-セッション制御装置3-GW装置4を繋ぐ点線で示したパスは、制御情報が伝送される制御プレーンパス(C-plane path)を表し、端末1-基地局2-GW装置4-ネットワークNを繋ぐ実線で示したパスは、ユーザデータのトラフィックが伝送されるユーザプレーンパス(U-plane path)を表す。ユーザデータは、例えば、パケットの形式でユーザプレーンパスを伝送される。以下において、「ユーザデータパケット」を「ユーザパケット」あるいは「パケット」と略称することがあり、「ユーザトラフィック」を「トラフィック」と略称することがある。
【0029】
上述したように、無線通信システムSは、制御情報を伝送する制御プレーンとユーザ信号を伝送するユーザプレーンとに信号の伝送系を分離したアーキテクチャを有する。このようなアーキテクチャによって、例えば、トラフィックの特性に応じて制御プレーン機能とユーザプレーン機能とを個別に増強したり、ユーザプレーン機能を地理的に分散配置して遅延を低減させたりすることが可能になる。また、端末1は、制御プレーンとユーザプレーンとで異なる基地局2にアクセスして通信を行うことができる。
【0030】
端末1は、ネットワークNと通信を開始したい場合、基地局2にユーザプレーンのセッション確立要求を送信する。ユーザプレーンのセッションの一例は、5G通信規格におけるプロトコルデータユニット(PDU)セッションである。基地局2は、端末1から受信したセッション確立要求をセッション制御装置3宛に送信する。
【0031】
セッション制御装置3は、セッション確立要求の受信に応じて、例えば、基地局2とネットワークNとの間においてトラフィックの転送処理を行うGW装置4と、制御プレーンにおいて通信することで、端末1とネットワークNとの間にPDUセッションを確立する。端末1は、基地局2及びGW装置4を介して確立したPDUセッションにおいてネットワークNと通信する。
【0032】
ところで、Beyond-5G時代においては、1ユーザあたりの通信の大容量化(例えば、100Gbpsクラス)が期待される。Beyond-5G時代の無線区間のアーキテクチャの一例として、「セルフリーアーキテクチャ」が想定される。セルフリーアーキテクチャでは、1つの端末1が複数のAP2に接続することによって、無線区間の通信の大容量化が期待されている。
【0033】
一方、モバイルコア区間においてユーザプレーンのデータ伝送を処理するGW装置4は、スケールイン又はスケールアウトの容易さ、あるいはカスタマイズの容易さといった理由から、将来的には、ソフトウェア化が進むと予想される。
【0034】
ここで、CPUコアのクロック性能の進化が近年停滞しているため、例えば、1つのユーザアプリケーションのユーザトラフィックを、マルチCPUコアのうちの1つのCPUコアによって処理する場合、GW装置での処理がボトルネックとなり、100Gbps以上のようなビットレートの要求条件を達成できない可能性が懸念される。
【0035】
一方で、通信の高速化のために、GW装置においてマルチCPUコアによって1つのトラフィック(例えば、インターネットプロトコル(IP)フロー)の転送処理を実施した場合、GW装置での転送処理においてパケットの順序入れ替えが生じ得る。パケットの順序が入れ替わってしまうことは、パケットの順序制御を行わないプロトコル(例えば、UDP)を用いた通信において正常な通信が継続できないことにつながる。そのため、パケット順序制御を行わないプロトコルの通信には、マルチCPUコアを使用した転送処理を適用しないことが得策である。
【0036】
また、TCP(Transmission Control Protocol)又はQUICといったパケット順序制御を行うプロトコルを用いた通信であっても、パケットの順序入れ替えが増加するほど、性能低下の原因となり得る。例えば、不要な再送処理が頻発したり、ジッタ特性の悪化によるアプリケーションレイヤの遅延、あるいはデータ欠落が発生したりし得る。
【0037】
そこで、本実施の形態では、例えば、端末1からセッション制御装置3を介して、あるいはセッション制御装置3を介さずにGW装置4へ、GW装置4がパケット転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を送信(「通知」と称されてもよい)する。これにより、例えば、GW装置4がパケット転送処理に使用するマルチコアプロセッサのリソース(例えば、CPUコア数)を制御できる。
【0038】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、セッション確立処理において、端末1からセッション制御装置3を介してGW装置4へ、GW装置4がパケット転送処理に使用するプロセッサリソースに関する指示情報を送信する態様について説明する。以下、端末1、セッション制御装置3、及び、GW装置4の別に、それぞれの構成例について説明する。
【0039】
<端末1の構成例>
図2は、第1の実施形態に係る端末1の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、端末1は、例えば、受信部11、送信部12、記憶部13、及び、CPU(Central Processing Unit)14を備える。
【0040】
受信部11は、例えば、CPU14による制御に基づいて、基地局2が送信した下りリンク信号を無線によって受信し、受信した信号をCPU14へ出力する。下りリンク信号は、例えば、制御プレーンにおいて端末1の動作を制御するための制御情報と、ユーザプレーンにおいて端末1宛に伝送されるユーザパケットとの一方又は双方を含む。
【0041】
送信部12は、例えば、CPU14による制御に基づいて、上りリンク信号を基地局2宛に無線によって送信する。上りリンク信号は、例えば、制御プレーンのセッション確立処理において用いられるセッション確立要求のようなセッション制御装置3宛の制御情報と、セッション確立処理によって確立したセッションにおいてネットワークN宛に伝送されるユーザパケットとの一方又は双方を含む。
【0042】
送信部12は、セッション確立処理において、CPU14が生成した既述の指示情報を制御情報の一例として送信する。指示情報は、セッション制御装置3宛のセッション確立要求に含められてもよいし、セッション確立要求とは異なる制御情報として送信部12から送信されてもよい。
【0043】
記憶部13は、例えば、端末1の動作を規定する設定又は制御に関するデータ、端末1が実行するアプリケーション、アプリケーションの実行に応じて使用されるデータ、端末1が送信する情報又はデータ、端末1が受信した情報又はデータを記憶する。
【0044】
CPU14は、例えば、端末1の動作を制御する。例えば、CPU14は、記憶部13に記憶された設定又は制御に関するデータに基づいて、送信部12による上りリンク信号の送信を制御し、受信部11による下りリンク信号の受信を制御する。
【0045】
また、CPU14は、例えば、受信したユーザパケットのシーケンス番号を基にパケットの順序に入れ替わりが生じていることを検出した場合に、受信パケットを一時的に記憶部13に記憶しながら、受信パケットの順序をシーケンス番号の順序に並び替えてアプリケーションに受信パケットを出力する。
【0046】
また、CPU14は、生成部の一例として機能し、例えば、CPU14が実行するアプリケーションの通信においてパケットの順序入れ替えを許容できるか否かを、セッション制御装置3を介して、あるいはセッション制御装置3を介さずに、GW装置4に示すための指示情報を生成する。
【0047】
例えば、指示情報がパケットの順序入れ替えを許容できることを示す場合、GW装置4は、パケット転送処理にマルチコアプロセッサ(マルチCPUコア)を使用する。一方、指示情報がパケットの順序入れ替えを許容できないことを示す場合、GW装置4は、パケット転送処理にマルチCPUコアを使用せず、シングルCPUコアを使用する。
【0048】
このように、指示情報は、端末1とネットワークNとの間のGW装置4を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理にGW装置4が使用するプロセッサリソースに関する指示の一例に相当する。
【0049】
ここで、端末1においてパケットの順序入れ替えを許容できる通信とは、例えば、TCPのようなパケットの順序制御をサポートする通信の場合である。逆に、パケットの順序入れ替えを許容できない通信とは、例えば、UDP(User Datagram Protocol)のようなパケットの順序制御をサポートしない通信である。
【0050】
例えば、端末1(CPU14)は、100Gbps以上のような大容量のTCP通信を行うアプリケーションを実行する場合、パケットの順序入れ替えを許容できることを示す指示情報(以下「大容量通信指示情報」とも称する)を生成する。指示情報は、例えば、端末1が実行するアプリケーションの内容又は種別を示す情報である。なお、100Gbps以上のような大容量の通信が期待されるアプリケーションの一例としては、3次元ホログラムデータの通信を行うアプリケーションが想定される。
【0051】
上述のような指示情報をGW装置4に示すことで、例えば、端末1が実行するアプリケーションの内容又は種別に応じてGW装置4がパケット転送処理に使用するプロセッサリソース(例えば、CPUコア数)を制御できる。
【0052】
指示情報は、セッション確立処理において端末1からセッション制御装置3を介してGW装置4へ通知されてもよいし、セッション確立後において端末1からセッション制御装置3を介さずにGW装置へ通知されてもよい。第1の実施形態では前者のケースに着目して説明を行い、後者のケースについては第2の実施形態において後述する。
【0053】
前者のケースにおいて、端末1のCPU1は、例えば、セッションの確立処理においてセッション制御装置3宛のセッション確立要求に「指示情報」を含める。指示情報は、GW装置4でのパケット転送処理に対して使用を許容するCPUコアの個数(以下、「CPUコア数」とも称する)を示してもよい。
【0054】
例えば、CPU14は、端末1が実行するアプリケーションに応じて端末1が要求するCPUコア数(以下、「要求CPUコア数」と称する)を示す指示情報を生成する。指示情報が「要求CPUコア数」を示す場合、当該指示情報を受信したセッション制御装置3は、GW装置4でのパケット転送処理にマルチCPUコアを使用することが許容されることが示されたと解釈して動作する。
【0055】
要求CPUコア数は、例えば、CPU14が実行するアプリケーションの内容に基づいてCPU14が決定する。例えば、CPU14は、100Gbps以上のような大容量通信のアプリケーションの実行に応じて、GW装置4にパケット転送処理に使用を許容するCPUコア数を決定する。
【0056】
要求CPUコア数を示す指示情報は、要求するCPUコア数を示す1つの値であってもよいが、要求CPUコア数の下限値及び上限値の一方又は双方を示す情報を含んでもよい。下限値は、例えば、端末1が実行するアプリケーションに応じてGW装置4でのパケット転送処理に最低限必要となるコア数である。
【0057】
一方、上限値は、例えば、GW装置4でのパケット転送処理によって生じたパケットの順序入れ替えを端末1において正しい順序(別言すると、シーケンス番号の順序)に並べ替えるパケット順序制御の処理能力に基づいて決定される。例えば、CPU14は、受信パケットの順序制御に関わるハードウェアリソースを用いたパケット順序制御の処理能力に基づいて、要求CPUコア数の上限値を決定する。
【0058】
要求CPUコア数を示す指示情報は、パケット転送処理にマルチCPUコアを使用することをGW装置4に許容することを示すが、多数のCPUコアを使用してパケット転送処理を実施した場合、使用するCPUコア数に比例してパケットの順序入れ替えが発生する確率も増大し得る。そのため、「要求CPUコア数」を示す指示情報にCPUコア数の上限値を指定することは、パケット順序制御の処理能力を超えるようなパケットの順序入れ替えが生じる確率を低減できるという効果を奏する。
【0059】
なお、CPU14は、「要求CPUコア数」に代えて、「所望の平均ビットレート」のような、端末1が実行するアプリケーションに応じて端末1が要求する伝送レートを示す指示情報を生成してセッション制御装置3に通知してもよい。この場合、セッション制御装置3は、通知された「要求伝送レート」を示す指示情報に応じた個数のCPU個数を、GW装置4がパケット転送処理に使用するCPUコア数として決定する。
【0060】
「指示情報」は、端末1とセッション制御装置3又はGW装置4との間で一意に解釈可能な情報であればよく、情報の形式は任意である。また、CPU14は、セッション確立要求に含めることが規定されている既存の情報を拡張した部分に指示情報を含めることにより、「指示情報」をセッション制御装置3へ通知してもよい。あるいは、CPU14は、「指示情報」を関連付けた既存の情報の送信によって、「指示情報」をセッション制御装置3へ暗黙的に通知してもよい。
【0061】
暗黙的な通知の実現例としては、ネットワークスライシング技術において使用されるスライス識別子に「指示情報」を関連付けることが挙げられる。例えば、端末1にネットワークスライシング技術によって特定のスライスが割り当てられた場合、端末1は、セッション確立要求に当該スライスを識別するスライス識別子を含めることとされている。
【0062】
そこで、CPU14は、例えば、スライス識別子に「指示情報」を示す新たな値を追加した形式によって、セッション制御装置3に対する「指示情報」の(暗黙的な)通知を実現する。なお、スライス識別子の一例は、5G通信規格におけるS-NSSAIである。「S-NSSAI」は、「single-network slice selection assistance information」の略記である。
【0063】
<セッション制御装置3の構成例>
図3は、第1の実施形態に係るセッション制御装置3の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、セッション制御装置3は、例えば、受信部31、送信部32、記憶部33、及び、CPU34を備える。
【0064】
受信部31は、例えば、CPU34による制御に基づいて、制御プレーンにおいて端末1が送信した制御情報を受信する。例えば、受信部31は、セッション確立処理において端末1が生成した指示情報を含むセッション確立要求を受信する。また、受信部31は、例えば、セッション確立処理においてGW装置4がセッション制御装置3宛に制御プレーンを通じて送信した制御情報を受信する。GW装置4がセッション制御装置3宛に送信する制御情報の一例は、GW装置4がセッション制御装置3から受信した制御情報に対する応答である。
【0065】
送信部32は、例えば、CPU34による制御に基づいて、GW装置4宛の制御情報又は端末1宛の制御情報を制御プレーンにおいて送信する。例えば、送信部32は、セッション確立処理において、受信部31において指示情報を含むセッション確立要求が受信された場合、指示情報をGW装置4宛に送信する。
【0066】
指示情報は、例えば、端末1とGW装置4との間及びGW装置4とネットワークNとの間のそれぞれのセッションを確立又は接続することをGW装置4に要求する接続要求に含めて、あるいは接続要求とは別に、GW装置4へ送信される。
【0067】
また、送信部32は、例えば、セッション確立処理において、基地局2を介して受信したセッション確立要求に対する応答を当該要求の送信元である端末1宛に送信する。
【0068】
記憶部33は、例えば、セッション制御装置3の動作を規定する設定又は制御に関するデータ、セッション制御装置3が実行するセッション制御に関するプログラム、プログラムの実行に応じて使用されるデータ、セッション制御装置3が送信する情報又はデータ、セッション制御装置3が受信した情報又はデータを記憶する。
【0069】
CPU34は、例えば、セッション制御装置3の動作を制御する。例えば、CPU34は、記憶部13に記憶された設定又は制御に関するデータに基づいて、送信部12によるGW装置4宛の制御情報の送信を制御し、受信部11による制御情報の受信を制御する。
【0070】
また、CPU34は、受信部31において「大容量通信指示情報」が受信された場合、「大容量通信指示情報」を含む接続要求を生成し、当該接続要求を送信部32からマルチCPUコアをサポートするGW装置4宛に送信させる。
【0071】
<CPUコア数の決定>
CPU34は、決定部の一例として機能し、例えば、端末1から「要求CPUコア数」を示す指示情報が受信部31において受信された場合、当該指示情報が示す「要求CPUコア数」に基づいて、GW装置4にパケット転送処理に使用を許容するCPUコア数を決定する。
【0072】
なお、指示情報が、端末1の実行するアプリケーションの内容を示す場合、CPU34は、例えば、記憶部33に記憶された、アプリケーションの内容とGW装置4が使用可能なCPUコア数とが関連付けられた決定用データを参照することにより、指示情報が示すアプリケーションの内容に基づいて決定した個数を決定する。
【0073】
また、無線通信システムSにおいて、GW装置4が複数存在しており、マルチCPUコアによるパケット転送処理をサポートするGW装置4と、マルチCPUコアによるパケット転送処理をサポートしないGW装置4とが混在するケースが想定される。
【0074】
このような場合、CPU34は、例えば、マルチCPUコアによるパケット転送処理をサポートするGW装置4を、CPUコア数を示す「指示情報」の送信先に決定する。マルチCPUコアによるパケット転送処理をサポートするGW装置4の情報は、例えば、記憶部33に予め記憶されている。また、CPUコア数の異なるGW装置4が複数存在する場合、CPU34は、例えば、決定したCPUコア数を使用可能なGW装置4を「指示情報」の送信先として選択する。
【0075】
なお、「要求CPUコア数」を示す指示情報が受信部31において受信されない場合、CPU34は、例えば、所定のCPUコア数を、GW装置4にパケット転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。所定のCPUコア数は、例えば、無線通信システムSのオペレータによって設定された個数でもよいし、GW装置4が使用可能な全てのCPUコアの個数でもよい。
【0076】
CPU34は、上述したように決定したCPUコア数を示す指示情報と、セッション確立要求の送信元の端末1を識別可能なユーザ識別子と、を関連付けたマッピング情報を生成し、生成したマッピング情報を送信部42からGW装置4宛に送信させる。マッピング情報は、GW装置4宛の接続要求に含められてもよいし、接続要求とは別にGW装置4宛に送信されてもよい。なお、ユーザ識別子の一例は、IPアドレス、TEID(Tunnel End Point Identifier)、あるいは既述のスライス識別子である。
【0077】
<GW装置4の構成例>
図4は、第1の実施形態に係るGW装置4の構成例を示すブロック図である。図4に示すように、GW装置4は、例えば、受信部41、送信部42、記憶部43、制御部44、及び、転送処理部45を備える。転送処理部45は、例えば、基地局通信部451、ネットワーク通信部452、及び、マルチコアプロセッサ453を備える。
【0078】
受信部41は、例えば、セッション制御装置3がGW装置4宛に送信した制御情報を受信する。例えば、受信部41は、既述のマッピング情報を含む接続要求を制御情報の一例として受信する。送信部42は、例えば、セッション制御装置3宛の制御情報(例えば、接続要求に対する応答)を送信する。
【0079】
記憶部43は、例えば、GW装置4の動作を規定する設定又は制御に関するデータ、GW装置4が実行するパケット転送処理に関するプログラム、プログラムの実行に応じて使用されるデータ、GW装置4が送信する情報又はデータ、GW装置4が受信した情報又はデータを記憶する。
【0080】
制御部44は、例えば、受信部41において受信されたマッピング情報に基づいて、転送処理部45でのパケット転送処理に割り当てるマルチコアプロセッサ453のリソース(例えば、CPUコア数)を制御する。例えば、制御部44は、マッピング情報が示すユーザ識別子に基づいて、転送処理部45において転送処理対象のユーザトラフィックを識別し、識別したユーザトラフィックの転送処理に、マッピング情報が示す個数のCPUコアを割り当てる。なお、ユーザ識別子は、例えば以下に説明するとおり、転送処理部45の基地局通信部451又はネットワーク通信部452において検出されて制御部44に通知される。
【0081】
なお、制御部44は、複数のCPUコアをラウンドロビンにてパケット転送処理に割り当ててもよいし、個々のCPUコアの処理負荷を監視し、負荷の小さいCPUコアを優先的にパケット転送処理に割り当ててもよい。
【0082】
転送処理部45は、基地局2に接続する端末1とネットワークNとの間において確立したセッション上を伝送されるユーザトラフィックのパケットの転送処理を行う。転送処理部45において、基地局通信部451は、例えば、マルチコアプロセッサ453からの端末1を宛先とする下りパケットを基地局2へ送信する。
【0083】
また、基地局通信部451は、例えば、端末1を送信元とする上りパケットを受信し、受信した上りパケットをマルチコアプロセッサ453へ出力する。更に、基地局通信部451は、例えば、受信した上りパケットのヘッダフィールドにおいてユーザ識別子を検出し、検出したユーザ識別子を制御部44に通知する。
【0084】
ネットワーク通信部452は、マルチコアプロセッサ453から入力された上りパケットをネットワークNへ送信する。また、ネットワーク通信部452は、例えば、ネットワークNから受信した下りパケットをマルチコアプロセッサ453へ出力する。更に、ネットワーク通信部452は、例えば、ネットワークNから受信した下りパケットのヘッダフィールドにおいてユーザ識別子を検出し、検出したユーザ識別子を制御部44に通知する。
【0085】
マルチコアプロセッサ453は、例えば、複数のCPUコアを有し、制御部44によって割り当てられた個数のCPUコアを用いて、基地局通信部451又はネットワーク通信部452から入力されたパケットの転送処理を実行する。
【0086】
<動作例>
次に、上述した構成を有する無線通信システムSの動作例について説明する。図5は、第1の実施形態に係る無線通信システムSの動作例を示すシーケンス図である。
【0087】
図5に示すように、100Gbps以上の大容量通信(別言すると、高速転送が求められる通信)の開始を希望する端末1は、ユーザプレーンのセッション(例えば、PDUセッション)の確立を要求するセッション確立要求を、基地局2を介してセッション制御装置3宛に送信する(S11、S12)。その際、端末1は、セッション確立要求に既述の指示情報を含める。
【0088】
セッション制御装置3は、基地局2を介して端末1からの、指示情報を含むセッション確立要求の受信に応じて、ユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数を指示情報に基づいて決定する(S13)。
【0089】
例えば、指示情報が要求CPUコア数を示す場合、セッション制御装置3は、要求CPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。指示情報が要求CPUコア数を示していない場合、セッション制御装置3は、所定のCPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。
【0090】
セッション制御装置3は、CPUコア数を示す指示情報とユーザ識別子とを関連付けたマッピング情報を生成し(S14)、決定したCPUコア数をサポートするGW装置4宛に、マッピング情報を含む接続要求を送信する(S15)。GW装置4は、指示情報を含む接続要求の受信に応じて、マッピング情報において示されるCPUコア数のCPUコアが使用可能か否かを判定する(S16)。
【0091】
判定の結果、マッピング情報において示されるCPUコア数のCPUコアが使用可能であり、セッションの確立が可能であれば、GW装置4は、その旨を接続応答によってセッション制御装置3へ通知する(S16のYESからS18)。セッション制御装置3は、GW装置4からの接続応答の受信に応じて、端末1とネットワークNとの間に基地局2及びGW装置4を介したセッションを確立する(S19)。
【0092】
一方、GW装置4では、マッピング情報において示される個数のCPUコアをユーザ識別子に関連付ける(S20)。その後、当該ユーザ識別子を含む下りパケットがネットワークNからGW装置4に到着した場合(S21)、GW装置4は、転送処理部45による当該パケットの転送処理に、ユーザ識別子に関連付けられた個数のCPUコアを割り当てる(S23)。
【0093】
上りパケットについても同様である。例えば、ユーザ識別子を含む上りパケットが基地局2からGW装置4に到着した場合(S22)、GW装置4は、転送処理部45による当該パケットの転送処理に、ユーザ識別子に関連付けられた個数のCPUコアを割り当てる(S23)。
【0094】
なお、パケットに含まれるユーザ識別子の一例は、IPアドレス(上りパケットの場合は送信元IPアドレス、下りパケットの場合は宛先IPアドレス)、あるいはTEID(Tunnel Endpoint Identifier)である。
【0095】
そして、GW装置4は、転送処理部45において割り当てられた個数のCPUコアを使用してパケット転送処理を実行することにより(S24)、下りパケットを端末1へ転送し(S25)、上りパケットをネットワークNへ転送する(S26)。
【0096】
なお、S16において、マッピング情報において示されるCPUコア数がGW装置4の転送処理部45において使用可能なCPUコア数を超えている場合、GW装置は、例えば、セッション制御装置3へリジェクトメッセージを送信する(S16のNO)。
【0097】
セッション制御装置3は、GW装置4からリジェクトメッセージを受信した場合、例えば、NG処理を実行する(S17)。例えば、セッション制御装置3は、マルチCPUコアをサポートする他のGW装置4へマッピング情報を含む接続要求を送信する。あるいは、セッション制御装置3は、例えば、決定したCPUコア数よりも少ないCPUコア数を決定し直して、そのCPUコア数を指示情報に関連付けたマッピング情報を、リジェクトメッセージの送信元GW装置4へ接続要求によって、再度、通知してもよい。
【0098】
以上のように、第1の実施形態によれば、端末1とネットワークNとの間のGW装置4を介したセッション上のデータトラフィックの転送処理にGW装置4が使用するプロセッサリソースに関する指示情報を、セッションの確立処理において、端末1からセッション制御装置3を介してGW装置4に示すので、GW装置4が転送処理に使用するプロセッサリソースを適切に制御できる。
【0099】
<変形例>
上述した第1の実施形態では、GW装置4でのパケット転送処理に使用するCPUコア数の決定をセッション制御装置3において実施する態様について説明した。本変形例では、CPUコア数の決定をGW装置4において実施する態様について説明する。
【0100】
CPUコア数の決定をGW装置4において実施する場合、図3に例示したセッション制御装置3の構成において、CPU34の機能又は動作が第1の実施形態とは相違し、図4に例示したGW装置4の構成において、制御部44の機能又は動作が第1の実施の形態とは相違する。なお、変形例における端末1の構成については図2に例示した構成と共通でよい。
【0101】
以下、図6を参照して、本変形例と第1の実施形態との相違に着目した動作例について説明する。図6は、変形例に係る無線通信システムSの動作例を示すシーケンス図である。図6において、S13a~S16aを付して示す動作が、図5に例示した動作と異なることを表す。その他のS11、S12、S17~S26を付して示す動作は、図5に例示した動作とそれぞれ同一又は同様と理解されてよい。
【0102】
図6に示すように、セッション制御装置3(CPU34)は、端末1がセッション確立要求において送信した指示情報を受信部31で受信した場合、指示情報に基づくCPUコア数の決定は行わない。代替的に、セッション制御装置3は、CPUコア数の決定をGW装置4に委ねるため、例えば、受信した指示情報をGW装置4宛の接続要求に含めて送信部32から当該GW装置4へ送信する(S13a)。
【0103】
GW装置4(制御部44)は、セッション制御装置3から指示情報を含む接続要求を受信部41において受信した場合、受信した指示情報に基づき、ユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数を決定する(S14a)。
【0104】
例えば、指示情報が要求CPUコア数を示す場合、GW装置4は、要求CPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。指示情報が要求CPUコア数を示していない場合、セッション制御装置3は、所定のCPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。
【0105】
GW装置4は、決定したCPUコア数のCPUコアが使用可能か否かを判定する(S15a)。判定の結果、決定したCPUコア数のCPUコアが使用可能であり、セッションの確立が可能であれば、GW装置4は、決定したCPUコア数とユーザ識別子とを関連付けたマッピング情報を生成する(S15aのYESからS16a)。
【0106】
以降の処理は、図5に示した動作と同様であり、GW装置4は、転送処理部45によるパケット転送処理に、ユーザ識別子に関連付けられた個数のCPUコアを割り当てて、端末1とネットワークNとの間のユーザトラフィックに対してパケット転送処理を実行する。
【0107】
以上のように、第1の実施形態によれば、GW装置4がパケット転送処理に使用するマルチCPUコアの個数をセッション制御装置3に代わってGW装置4において決定するので、例えば、セッション制御装置3の処理負荷を軽減できる。
【0108】
<第2の実施形態>
上述した第1の実施形態及び変形例では、セッション確立処理において指示情報を端末1からセッション制御装置3を介してGW装置4に示す態様について説明した。第2の実施形態では、端末1とネットワークNとの間のGW装置を介したセッションが確立した後に、指示情報を端末1からセッション制御装置3を介さずにGW装置4に示す態様について説明する。
【0109】
例えば、図1に示したシステム構成例において、マルチCPUコアをサポートしないGW装置4が存在しない場合、セッション確立処理において指示情報を通知する対象のGW装置4がマルチCPUコアをサポートしているか否かを確認しなくてもよい。
【0110】
そのため、端末1は、セッション確立処理において端末1からセッション制御装置3に対して指示情報の通知を行わなくても、例えば、確立したセッションにおいてネットワークNへ送信するパケットに指示情報を含めることで、GW装置4がパケット転送処理に使用するCPUコアに関する指示を行うことができる。
【0111】
セッション確立後において端末1から指示情報を送信する、図2に例示した端末1の構成において、CPU14の機能又は動作が第1の実施形態とは相違し、図4に例示したGW装置4の構成において、制御部44の機能又は動作が第1の実施の形態とは相違する。なお、第2の実施形態においてセッション制御装置3の構成は、図3に例示した構成と共通でよい。
【0112】
第2の実施形態において、端末1のCPU14は、例えば、セッションの確立後に基地局2を介してネットワークNへ送信部12から送信する上りパケットのIPヘッダにおけるオプショナルフィールドに指示情報を含める。
【0113】
一方、GW装置4の制御部44は、例えば、検出部の一例として機能する基地局通信部451が、受信した上りパケットのIPヘッダにおけるオプショナルフィールドにおいて指示情報を検出した場合、指示情報に基づいて、転送処理部45でのパケット転送処理に割り当てるマルチコアプロセッサ453のリソース(例えば、CPUコア数)を制御する。
【0114】
<動作例>
以下、第2の実施形態の動作例について図7を参照して説明する。図7は、第2の実施形態に係る無線通信システムSの動作例を示すシーケンス図である。
【0115】
図7に示すように、セッション制御装置3は、端末1とネットワークNとの間に基地局2及びGW装置4を介したセッション(例えば、PDUセッション)を確立する(S31)。なお、第2の実施形態において、S31のセッションを確立する処理は、第1の実施形態で説明した動作による指示情報の通知を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0116】
セッションの確立後、例えば、大容量通信の開始を希望する端末1は、確立したセッションにおいて、ネットワークN宛の上りパケットのIPヘッダにおけるオプショナルフィールドに指示情報を含め、当該上りパケットを基地局2へ送信する(S32)。基地局2は、端末1から受信した上りパケットをGW装置4へ送信する(S33)。
【0117】
GW装置4は、転送処理部45の基地局通信部451において上りパケットを受信し、受信した上りパケットのIPヘッダにおけるオプショナルフィールドにおいて指示情報を検出する(S34)。基地局通信部451は、検出した指示情報を制御部44へ通知する。
なお、指示情報が検出された上りパケットは、マルチコアプロセッサ453からネットワーク通信部452へ転送され、ネットワーク通信部452からネットワークNへ送信される(S35)。
【0118】
GW装置4の制御部44は、基地局通信部451から通知された指示情報に基づいて、ユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数を決定する(S36)。例えば、指示情報が要求CPUコア数を示す場合、GW装置4は、要求CPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。指示情報が要求CPUコア数を示していない場合、セッション制御装置3は、所定のCPUコア数をユーザトラフィックの転送処理に使用を許容するCPUコア数に決定する。
【0119】
GW装置4は、決定したCPUコア数のCPUコアが使用可能か否かを判定する(S37)。判定の結果、決定したCPUコア数のCPUコアがGW装置4において使用可能な場合(S37のYES)、GW装置4は、決定したCPUコア数とユーザ識別子とを関連付けたマッピング情報を生成する(S37のYESからS40)。
【0120】
また、GW装置4は、マッピング情報において示される個数のCPUコアをユーザ識別子に関連付ける(S41)。その後、当該ユーザ識別子を含む下りパケットがネットワークNからGW装置4に到着した場合(S42)、GW装置4は、転送処理部45による当該パケットの転送処理に、ユーザ識別子に関連付けられた個数のCPUコアを割り当てる(S44)。
【0121】
上りパケットについても同様である。例えば、ユーザ識別子を含む上りパケットが基地局2からGW装置4に到着した場合(S43)、GW装置4は、転送処理部45による当該パケットの転送処理に、ユーザ識別子に関連付けられた個数のCPUコアを割り当てる(S44)。
【0122】
そして、GW装置4は、転送処理部45において割り当てられた個数のCPUコアを使用してパケット転送処理を実行することにより(S45)、下りパケットを端末1へ転送し(S46)、上りパケットをネットワークNへ転送する(S47)。
なお、S37の判定の結果、決定したCPUコア数が使用可能なCPUコア数を超えている場合(S37のNO)、GW装置4は、例えば、端末1へリジェクトメッセージを端末1宛の下りパケットにおいて送信する(S38)。
【0123】
端末1は、受信した下りパケットにおいてリジェクトメッセージを受信した場合、例えば、NG処理を実行する(S39)。例えば、端末1は、S32において要求CPUコア数を示す指示情報を送信した場合、当該要求CPUコア数よりも少ないCPUコア数を決定し直して、そのCPUコア数を示す指示情報を含む上りパケットを、再度、送信してもよい。
【0124】
以上のように、第2の実施形態によれば、セッション確立後のセッションにおいて端末1からセッション制御装置3を介さずに指示情報をGW装置4に示すので、第1の実施形態と同様に、GW装置4が転送処理に使用するプロセッサリソースを適切に制御できるほか、端末1とネットワークNとの間の大容量通信の開始遅延を抑制できる。
【0125】
なお、上述した実施の形態に例示した構成について使用した「~部」という用語は、例えば、「~手段」、「~回路」、あるいは「~デバイス」といった他の用語に互いに読み替えられてもよい。また、「割り当てる」という用語は、「スケジュールする」に読み替えられてもよい。
【0126】
また、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0127】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0128】
1 端末
2 基地局
3 セッション制御装置
4 ゲートウェイ(GW)装置
11,31,41 受信部
12,32,42 送信部
13,33,43 記憶部
14,34 CPU
44 制御部
45 転送処理部
451 基地局通信部
452 ネットワーク通信部
453 マルチコアプロセッサ
S 無線通信システム
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7