(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122272
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F02D45/00 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029724
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼垣 雅紀
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384DA42
3G384ED07
3G384ED11
3G384EE11
3G384FA85B
3G384FA86B
(57)【要約】
【課題】呼吸フィルタの目詰まりを早期に特定できる電子制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置10は、筐体20と、筐体20に設けられ通気性及び防水性を有する呼吸フィルタ40と、筐体20内の大気圧を検出する大気圧センサ51と、負荷90の駆動を制御する制御部322と、を備え、制御部322は、起動時に大気圧センサ51が検出した第1圧力と起動してから所定時間経過後に大気圧センサ51が検出した第2圧力との圧力差が設定値を超えた場合に呼吸フィルタ40の異常を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(20)と、
前記筐体に設けられ通気性及び防水性を有する呼吸フィルタ(40)と、
前記筐体内の大気圧を検出する大気圧センサ(51)と、
負荷(90)の駆動を制御する制御部(322)と、を備え、
前記制御部は、起動時に前記大気圧センサが検出した第1圧力と前記起動してから所定時間経過後に前記大気圧センサが検出した第2圧力との圧力差が設定値を超えた場合に前記呼吸フィルタの異常を判定する、
電子制御装置。
【請求項2】
筐体(20)と、
前記筐体に設けられ通気性及び防水性を有する呼吸フィルタ(40)と、
前記筐体内の大気圧を検出する大気圧センサ(51)と、
前記筐体内の温度を検出する温度センサ(54)と、
負荷(90)を制御する制御部(322)と、を備え、
前記制御部は、起動時に前記大気圧センサが検出した第1圧力と前記起動してから所定時間経過後に前記大気圧センサが検出した第2圧力との圧力差と、前記起動時に前記温度センサが検出した第1温度と前記所定時間経過後に前記温度センサが検出した第2温度との温度差と、の割合が設定値を超えた場合に前記呼吸フィルタの異常を判定する、
電子制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記大気圧センサの計測値に基づいて前記負荷を制御し、
前記呼吸フィルタに異常があると判定した場合は、前記大気圧センサの前記計測値を前記第1圧力の大気圧値に補正する補正制御を実行する、
請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記呼吸フィルタが異常であると判定した場合には、報知装置(91)を用いて前記呼吸フィルタが異常である旨を報知する、
請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記異常の判定を複数回行い、前記異常であると判定した回数が予め設定した回数を超えた場合に、前記補正制御を実行する、
請求項3に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両等に搭載される電子制御装置が知られている。電子制御装置は、電子部品が実装されたプリント配線基板が防水ケースつまり筐体内に収容され、筐体に当該筐体の内外を呼吸させるための呼吸フィルタを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばエンジン起動時には、筐体内の電子部品が発熱することで筐体内部の温度が上昇する。ここで、呼吸フィルタが目詰まりすると、筐体の内外の呼吸が機能しなくなり、筐体内部の圧力が一時的に上昇して筐体内と筐体外とで圧力差が生じる。この場合、筐体内圧によって負荷の制御が実施されるため、不適切な制御が行われる等の不具合が生じるおそれがある。しかし、従来構成では、呼吸フィルタの目詰まりは、目視による確認等によって行われていたため、呼吸フィルタの目詰まりを早期に特定することが困難であった。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、呼吸フィルタの目詰まりを早期に特定できる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、一態様としての電子制御装置は、筐体(20)と、前記筐体に設けられ通気性及び防水性を有する呼吸フィルタ(40)と、前記筐体内の大気圧を検出する大気圧センサ(51)と、負荷(90)の駆動を制御する制御部(322)と、を備え、前記制御部は、起動時に前記大気圧センサが検出した第1圧力と前記起動してから所定時間経過後に前記大気圧センサが検出した第2圧力との圧力差が設定値を超えた場合に前記呼吸フィルタの異常を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による電子制御装置の構成の一例を概略的に示す断面図
【
図2】第1実施形態による電子制御装置の電気的構成の一例を示すブロック図
【
図3】第1実施形態による電子制御装置について、呼吸フィルタに目詰まりが生じた場合の筐体内部の気圧の経時的な変化の一例を示す図
【
図4】第1実施形態による電子制御装置について、制御部によって実行される呼吸フィルタの目詰まりを判定する際の制御内容の一例を示すフローチャート
【
図5】第2実施形態による電子制御装置について、制御部によって実行される呼吸フィルタの目詰まりを判定する際の制御内容の一例を示すフローチャート
【
図6】第3実施形態による電子制御装置について、制御部によって実行される呼吸フィルタの目詰まりを判定する際の制御内容の一例を示すフローチャート
【
図7】第4実施形態による電子制御装置の構成の一例を概略的に示す断面図
【
図8】第4実施形態による電子制御装置について、制御部によって実行される呼吸フィルタの目詰まりを判定する際の制御内容の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、以下の説明において「第1」、「第2」との用語は、単に同種の構成等を区別するためのものであり、各構成の優劣を意味するものではない。
【0009】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1に示す電子制御装置10は、例えば車両に搭載されたエンジンを制御するエンジンECUとして構成されている。ECUとは、Electronic Control Unitの略称を意味する。電子制御装置10は、防水構造を有しており、例えば車両のエンジンルームに設けられる。電子制御装置10は、筐体20、回路基板30、及び呼吸フィルタ40を備えている。
【0010】
筐体20は、例えば合成樹脂又は金属の組合せによって、略矩形容器状に形成されている。筐体20は、内部に収容空間21が形成されている。また、筐体20は、貫通孔22を有している。貫通孔22は、筐体20の壁面を厚み方向に貫通して形成されている。貫通孔22は、筐体20の内部と外部とを連通している。
【0011】
回路基板30は、筐体20の収容空間21に収容されている。回路基板30は、例えばねじ締結や接着剤等によって、筐体20に固定されている。回路基板30は、基板31及び電子部品32を有している。基板31は、いわゆるプリント基板で構成されている。電子部品32は、基板31に実装されている。電子部品32は、基板31の片面に実装されても良いし、両面に実装されても良い。
【0012】
電子部品32は、発熱素子321及び制御部322を構成するマイコン等を含んでいる。発熱素子321は、発熱が大きい部品であって、例えばIGBTやMOSFET等のスイッチング素子を含んでいる。制御部322は、図示しないROM等に記憶されたプログラムを実行することで、所定の機能が実現される。制御部322は、負荷90としての周知の燃料噴射弁、スロットルバルブ、及び点火装置等の駆動を制御する機能を有する。制御部322が実施する制御には、エンジンの燃料噴射量の制御、空燃比の制御、点火時期の制御等が含まれる。
【0013】
電子制御装置10は、コネクタ33を備えている。コネクタ33は、回路基板30に実装されており、一方の端部側は筐体20の内部に収容され、他方の端部側は筐体20に形成された図示しない開口部を介して筐体20の外部に露出している。コネクタ33は、複数の端子331を有している。端子331は、例えば導電性を有する金属製であって、回路基板30と図示しない外部機器とを電気的に接続している。端子331は、コネクタ33の一方の端部側に設けられ、基板31に実装されている。
【0014】
呼吸フィルタ40は、筐体20の貫通孔22に対応した部分に設けられている。呼吸フィルタ40は、例えばスナップフィット等によって筐体20に水密に取り付けられる。呼吸フィルタ40は、貫通孔22を介して収容空間21と外部とを通気させるとともに、液体が外部から貫通孔22を通過して収容空間21に侵入するのを抑制する。呼吸フィルタ40は、収容空間21の気圧と外部の気圧とを平衡に保つように構成されている。
【0015】
呼吸フィルタ40は、本体部41、呼吸膜42、及びカバー43を有している。本体部41は、筒状に形成されて、貫通孔22を挿通した状態で筐体20に取り付けられる。本体部41の外形は、貫通孔の形状に対応して形成されている。本体部41の内周面は、収容空間21と外部との間を通気するための経路を形成している。
【0016】
呼吸膜42は、筐体20の外部に位置しており、本体部41の一方この場合筐体20の外部側の開口を閉塞するように設けられている。呼吸膜42は、通気性及び防水性を有している。つまり、呼吸膜42は、気体を通過させるとともに、液体が通過するのを抑制するものである。呼吸膜42は、例えばフッ素樹脂又はポリオレフィンを用いて形成された多孔質膜を採用できる。呼吸膜42は、例えば接着剤等によって本体部41に固定されている。
【0017】
カバー43は、例えば一方の面が開口する箱状に形成されており、呼吸膜42を覆っている。カバー43と呼吸膜42との間には、隙間が確保されている。カバー43は、呼吸膜42を保護するためのものである。
【0018】
例えばエンジンが起動して回路基板30が動作すると、筐体20の内部温度は発熱素子321の発熱によって上昇して筐体20の内部の気圧が上昇する。このとき、呼吸膜42に対して収容空間21の外側へ向かうような圧力が作用し、筐体20内部の膨張した空気が外部に放出される。一方、例えばエンジンが停止して回路基板30の動作が停止すると、筐体20の内部温度は低下して筐体20の内部の気圧が低下する。このとき、呼吸膜42に対して収容空間21の内側へ向かうような圧力が作用し、外部の空気が筐体20内部に吸入される。このようにして、呼吸フィルタ40によって、筐体20内部と外部との気圧が平衡に保たれる。
【0019】
電子制御装置10は、
図2に示すように、大気圧センサ51、計時部52、及び記憶部53を備えている。大気圧センサ51、計時部52、記憶部53は、制御部322に電気的に接続されている。大気圧センサ51は、筐体20内の大気圧を検出する機能を有する。大気圧センサ51は、
図1に示すように、基板31に実装されている。制御部322は、大気圧センサ51の検出結果つまり計測値Pに基づいて負荷90を制御する。
【0020】
計時部52は、例えば任意の時点の時刻を取得する機能を有している。時刻とは、例えば何時何分何秒というような絶対的な時刻、又はある時点を基準とした相対的な時刻を意味する。また、計時部52は、基準となるある時点からの経過時間を測定する機能を有していても良い。時間とは、ある一点の時刻からある一点の時刻までの時の長さを意味する。記憶部53は、例えば不揮発性の記憶媒体で構成されており、制御部322によって参照又は更新され電子制御装置10で用いられる各種の情報を記憶可能に構成されている。
【0021】
制御部322は、報知装置91と電気的に接続されている。報知装置91は、使用者例えば車両の運転者に対して所定の情報を報知する機能を有する。報知装置91は、運転者に情報を視覚的に提示するための表示部を含む。表示部は、例えば液晶パネルや警告ランプで構成できる。報知装置91は、運転者に音により情報を聴覚的に提示しても良く、例えばスピーカを含んで構成できる。
【0022】
図3では、横軸に時間を示し縦軸に筐体20内部の気圧を示したグラフ上に、呼吸フィルタ40の呼吸膜42の状態による筐体20内部の気圧の経時的変化を示している。呼吸膜42に目詰まりが生じていない正常時では、
図3の破線で示すように、筐体20内部の気圧は、例えばエンジン起動時点T1から回路基板30の動作による筐体20内部の温度上昇に伴って、起動時の初期気圧P0から徐々に増加する。その後、筐体20内部の気圧が所定の圧力に達すると、呼吸フィルタ40から筐体20内部の空気が放出され、内部気圧は減少に転じて、次第に初期気圧P0に近似する。
【0023】
一方、呼吸膜42に目詰まりが生じると、
図3の実線で示すように、起動してから所定時間t経過後の筐体20内部の気圧P0‘は、呼吸膜42からの空気通過量の減少が影響して、正常時における所定時間t経過後の筐体20内部の気圧よりも高い値を示す。そして、呼吸膜42の目詰まりに起因した筐体20内部の気圧P0‘に基づいて制御部322による負荷90の制御が行われると、不適切な制御が行われるおそれがあり、結果としてドライバビリティの悪化を招くことがある。
【0024】
そこで、制御部322は、電子制御装置10の起動時に大気圧センサ51が検出した第1圧力P1と起動してから所定時間t経過後に大気圧センサ51が検出した第2圧力P2との圧力差が設定値δPを超えた場合に、呼吸フィルタ40の異常を判定する。また、制御部322は、呼吸フィルタ40に異常があると判定した場合は、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力P1の大気圧値に補正する補正制御を実行する。つまり、制御部322は、呼吸フィルタ40の目詰まりによって、筐体20内部の大気圧値が正確に取得できない場合に、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力Pに補正して負荷90を制御する。
【0025】
第1圧力Pは、例えばエンジン起動時の筐体20内の大気圧値であり、筐体20内外の圧力差が均衡している状態の大気圧値であるため、正常な制御を行う上でより安全側の値である。そのため、第1圧力Pに補正した大気圧値を用いて負荷90を制御することで、呼吸膜42の目詰まりによって誤検出された大気圧値に基づく不適切な制御の実行を回避できる。
【0026】
計測値Pの補正値として、第1圧力P以外の大気圧値を用いる構成としても良い。補正値の範囲としては、第1圧力P1と第1圧力P1に設定値δPとを加算した大気圧値との間であり、より好ましくは第1圧力P1と第1圧力P1に設定値δPの半分以下の値とを加算した大気圧値との間である。
【0027】
次に、
図4を参照して、制御部322において実行される制御内容の一例について説明する。制御部322は、例えばエンジンが起動すると(
図4のスタート)、ステップS11において、大気圧センサ51を用いて第1圧力P1を取得する。次に、制御部322は、ステップS12において、取得した第1圧力P1を記憶部53に記憶させる。制御部322は、ステップS13に処理を移行し、計時部52を制御して経過時間の計測を開始する。
【0028】
その後、制御部322は、ステップS14において、経過時間を計測してから所定時間tを経過したか否かを判断する。所定時間tを経過した場合(ステップS14でYES)、制御部322は、ステップS15に処理を移行し、大気圧センサ51を用いて第2圧力P2を取得する。次に、制御部322は、ステップS16に処理を移行し、第2圧力P2と第1圧力P1との圧力差が設定値δPを超えたか否かを判断する。設定値δPを超えていなかった場合(ステップS16でNO)、制御部322は、ステップ18に処理を移行し、計時部52を制御して経過時間の計測を停止して、一連の制御を終了する(エンド)。
【0029】
一方、第2圧力P2と第1圧力P1との圧力差が設定値δPを超えていた場合(ステップS16でYES)、制御部322は、呼吸フィルタ40に異常があると判定し、ステップS17において、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力P1に補正する。したがって、制御部322は、補正した計測値つまり第1圧力P1に基づいて負荷90を制御できる。その後、制御部322は、ステップS18に処理を移行し、以降の処理を進める。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、電子制御装置10は、筐体20と、呼吸フィルタ40と、大気圧センサ51と、制御部322と、を備える。呼吸フィルタ40は、筐体20に設けられ通気性及び防水性を有する。大気圧センサ51は、筐体20内の大気圧を検出する。制御部322は、負荷90の駆動を制御する。そして、制御部322は、起動時に大気圧センサ51が検出した第1圧力P1と起動してから所定時間t経過後に大気圧センサ51が検出した第2圧力P2との圧力差が設定値δPを超えた場合に呼吸フィルタ40の異常を判定する。
【0031】
これによれば、大気圧センサ51が検出した大気圧に基づいて、呼吸フィルタ40の異常例えば目詰まりを特定できる。これにより、呼吸フィルタ40の目詰まりを、呼吸フィルタ40を直接確認することなく、早期に特定できる。
【0032】
制御部322は、大気圧センサ51の計測値Pに基づいて負荷90を制御し、呼吸フィルタ40に異常があると判定した場合は、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力P1の大気圧値に補正する補正制御を実行する。ここで、呼吸フィルタ40に異常があると判定された場合、呼吸フィルタ40の目詰まりが想定されるため、大気圧センサ51が検出する大気圧値Pは不正確になることがある。この場合、大気圧センサ51が検出した大気圧値Pに基づいて負荷90を制御すると、不適切な制御が実行されてドライバビリティの悪化を招くおそれがある。
【0033】
そこで、呼吸フィルタ40に異常があると判定した場合は、起動時の大気圧値である第1圧力P1に計測値Pを補正し、補正した計測値P1を用いて負荷90を制御することで、一時的に正常な制御を行うことができる。これにより、不適切制御が実行されるのを回避することで、ドライバビリティの悪化を抑制できる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図5を参照して説明する。この第2実施形態は、制御部322の制御内容が上記第1実施形態と異なる。上記第1実施形態では、制御部322は、呼吸フィルタ40に異常があると判定した場合に、補正制御を実行する。これに対し、第2実施形態では、制御部322は、呼吸フィルタ40が異常であると判定した場合には、報知装置91を用いて呼吸フィルタ40が異常である旨を報知する。
【0035】
この第2実施形態では、制御部322は、
図4に示す制御内容に代えて、
図5に示す制御内容を実行する。
図5に示す制御内容は、
図4に示すステップS17に代えて、ステップS21が実行されるものである。具体的には、第2圧力P2と第1圧力P1との圧力差が設定値δPを超えていた場合(ステップS16でYES)、制御部322は、ステップS21に処理を移行し、報知装置91を用いて呼吸フィルタ40が異常である旨を報知する。
【0036】
報知装置91が例えば警告ランプを含んで構成されている場合、制御部322は、警告ランプを点灯させることで、運転者に対して呼吸フィルタ40が異常である旨を報知できる。また、報知装置91が例えばスピーカを含んで構成されている場合、制御部322は、スピーカから警告音を発生させることで、運転者に対して呼吸フィルタ40が異常である旨を報知できる。
【0037】
このような第2実施形態によれば、運転者に対して呼吸フィルタ40が異常である旨を報知することで、運転者に対して呼吸フィルタ40の点検や交換を促すことができる。これにより、電子制御装置10のメンテナンス性を向上できる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図6を参照して説明する。この第3実施形態は、制御部322の制御内容が上記各実施形態と異なる。本実施形態では、制御部322は、呼吸フィルタ40が異常であるか否かの判定を複数回行い、異常であると判定した回数Nが予め設定した回数Nsを超えた場合に、補正制御を実行する。設定回数Nsは、特に限定しないが、2、3回程度が好ましい。呼吸フィルタ40の異常が2、3回繰り返して判定される場合は、呼吸フィルタ40の目詰まりが生じている見込みが高いためである。
【0039】
この第3実施形態では、制御部322は、
図4に示す制御内容に代えて、
図6に示す制御内容を実行する。
図6に示す制御内容は、
図4に示す制御内容に加えて、ステップA11からA13が追加されたものである。具体的には、第2圧力P2と第1圧力P1との圧力差が設定値δPを超えていない場合(ステップS16でNO)、制御部322は、ステップA11に処理を移行し、呼吸フィルタ40の異常を判定した回数であるエラー回数Nのカウントをリセット(ステップA11)して、ステップS18以降の処理を実行する。
【0040】
一方、第2圧力P2と第1圧力P1との圧力差が設定値δPを超えていた場合(ステップS16でYES)、制御部322は、ステップA12に処理を移行して、エラー回数Nを1加算し、ステップA13に処理を移行させる。そして、制御部322は、ステップA13において、エラー回数Nが設定回数Nsを超えたか否かを判定する。
【0041】
エラー回数Nが設定回数Nsを超えていない場合(ステップA13でNO)、制御部322は、ステップS18に処理を移行させる。一方、エラー回数Nが設定回数Nsを超えていた場合(ステップA13でYES)、制御部322は、ステップS17に処理を移行し、呼吸フィルタ40に異常があると判定し、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力P1に補正する。その後、制御部322は、ステップS18に処理を移行し、計時部52を制御して経過時間の計測を停止して、一連の制御を終了する(エンド)。
【0042】
このような第3実施形態によれば、呼吸フィルタ40の異常の判定を複数回行うことにより、例えば外部気圧の急激な変化に対する筐体20内の大気圧値の誤検出を防止できる。これにより、呼吸フィルタ40の目詰まりをより正確に検出できる。結果として、呼吸フィルタ40の目詰まりに起因した不適切な制御が実行されることを抑制できる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図7及び
図8も参照して説明する。この第4実施形態では、電子制御装置10が温度センサ54を備えている点が上記各実施形態と異なる。温度センサ54は、筐体20内の温度を検出する機能を有する。温度センサ54は、
図7に示すように、基板31に実装されており、制御部322に電気的に接続される。
【0044】
本実施形態では、制御部322は、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力差と、起動時に温度センサ54が検出した第1温度T1と所定時間経過t後に温度センサ54が検出した第2温度T2との温度差と、の割合が設定値δを超えた場合に呼吸フィルタ40の異常を判定する。つまり、制御部322は、呼吸フィルタ40の異常の判定を、大気圧センサ51の検出結果と温度センサ54の検出結果とに基づいて行う。
【0045】
この第4実施形態では、制御部322は、
図8に示す制御内容を実行する。具体的には、制御部322は、例えばエンジンが起動すると(
図8のスタート)、ステップS31において、大気圧センサ51を用いて第1圧力P1を取得するとともに、温度センサ54を用いて第1温度T1を取得する。次に、制御部322は、ステップS32において、取得した第1圧力P1及び第1温度T1を記憶部53に記憶させる。制御部322は、ステップS33に処理を移行し、計時部52を制御して経過時間の計測を開始する。
【0046】
その後、制御部322は、ステップS34において、経過時間を計測してから所定時間tを経過したか否かを判断する。所定時間tを経過した場合(ステップS34でYES)、制御部322は、ステップS35に処理を移行し、大気圧センサ51を用いて第2圧力P2を取得するとともに、温度センサ54を用いて第2温度T2を取得する。
【0047】
次に、制御部322は、ステップS36に処理を移行し、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力差と、第1温度T1と第2温度T2との温度差と、の割合が設定値δを超えたか否かを判断する。当該割合が設定値δを超えていなかった場合(ステップS36でNO)、制御部322は、ステップS38に処置を移行し、計時部52を制御して経過時間の計測を停止して、一連の制御を終了する(エンド)。
【0048】
一方、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力差と、第1温度T1と第2温度T2との温度差と、の割合が設定値δを超えていた場合(ステップS36でYES)、制御部322は、呼吸フィルタ40に異常があると判定し、ステップS37において、大気圧センサ51の計測値Pを第1圧力P1に補正する。その後、制御部322は、ステップS38に処理を移行し、以降の処理を進める。
【0049】
このような第4実施形態によれば、大気圧センサ51が検出した大気圧値と温度センサ54が検出した温度とに基づいて、呼吸フィルタ40の異常例えば目詰まりを特定できる。これにより、呼吸フィルタ40の目詰まりを、呼吸フィルタ40を直接確認することなく、早期に特定できる。
【0050】
なお、上記各実施形態は、相互に組み合わせることができる。また、2以上の実施形態の特徴部分のみを抽出して組み合わせることもできる。
【0051】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0052】
10…電子制御装置、20…筐体、322…制御部、40…呼吸フィルタ、51…大気圧センサ、54…温度センサ、90…負荷、91…報知装置