(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122275
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ファイバ保持構造及びファイバセンサ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20240902BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240902BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240902BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G02B6/24
G02B6/42
G01J1/02 M
G01J1/02 P
G02B6/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029727
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 眞也
【テーマコード(参考)】
2G065
2H036
2H038
2H137
【Fターム(参考)】
2G065AB22
2G065BB02
2G065BB48
2G065DA15
2H036QA13
2H036QA33
2H036QA59
2H038AA12
2H137AA14
2H137AB05
2H137AB06
2H137BB02
2H137BB12
2H137BB25
2H137BC02
2H137CA15A
2H137CA45
2H137CA63
2H137CC05
2H137HA05
(57)【要約】
【課題】ファイバの先端が投光モジュールのワイヤに接触することを防止し、ワイヤの断線ひいては投光性能の劣化を抑制できるファイバ保持構造を提供する。
【解決手段】ファイバを保持するファイバ保持構造であって、ファイバが挿入される孔と、孔の径方向外側であって、かつ、ファイバの挿入状態において少なくともファイバの先端に隣接した位置に存在する壁部と、ファイバの挿入方向において、挿入されたファイバの先端よりも奥側の位置で、壁部から孔の径方向内側へ延びて孔の一部を塞ぎ、ファイバの挿入方向の動きを抑止する抑止部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバを保持するファイバ保持構造であって、
前記ファイバが挿入される孔と、
前記孔の径方向外側であって、かつ、前記ファイバの挿入状態において少なくとも前記ファイバの先端に隣接した位置に存在する壁部と、
前記ファイバの挿入方向において、挿入された前記ファイバの先端よりも奥側の位置で、前記壁部から前記孔の径方向内側へ延びて前記孔の一部を塞ぎ、前記ファイバの挿入方向の動きを抑止する抑止部と、
を備えるファイバ保持構造。
【請求項2】
前記抑止部は、前記壁部から前記孔の径方向内側へ突出する少なくとも1つの突起を含む、
請求項1に記載のファイバ保持構造。
【請求項3】
前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記突起の長さは、前記孔に第1の径を持つ第1のファイバが挿入された状態において、前記突起の先端が前記第1のファイバのシースに接触する長さである、
請求項2に記載のファイバ保持構造。
【請求項4】
前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記突起の長さは、前記孔に第2の径を持つ第2のファイバが挿入された状態において、前記突起の先端が前記第2のファイバのコアに接触する長さである、
請求項3に記載のファイバ保持構造。
【請求項5】
前記突起は、前記壁部において、前記孔の周縁を等分する複数の位置のそれぞれから前記孔の径方向内側へ突出する複数の突起を含む、
請求項2に記載のファイバ保持構造。
【請求項6】
前記抑止部は、3つ以上の前記突起を含む
請求項5に記載のファイバ保持構造。
【請求項7】
前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記複数の突起のそれぞれの長さは、前記孔に第1の径を持つ第1のファイバが挿入された状態において、前記複数の突起のそれぞれの先端が前記第1のファイバのシースに接触する長さである、
請求項5に記載のファイバ保持構造。
【請求項8】
前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記複数の突起のそれぞれの長さは、前記孔に第2の径を持つ第2のファイバが挿入された状態において、前記複数の突起のそれぞれの先端が前記第2のファイバのコアに接触する長さである、
請求項7に記載のファイバ保持構造。
【請求項9】
前記抑止部は、前記孔を横切るように、前記壁部の一つの位置から他の位置へ張り渡されたワイヤを含む、
請求項1に記載のファイバ保持構造。
【請求項10】
前記ファイバ保持構造は、前記壁部を形成する樹脂部品を含む一体型のモジュール部品であり、
前記ファイバに光を投光する投光モジュールが、前記樹脂部品の前記孔に対向する位置に設けられる、
請求項1に記載のファイバ保持構造。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のファイバ保持構造を備えるファイバセンサ。
【請求項12】
前記ファイバセンサは、本体と、前記ファイバ保持構造を含むファイバ保持部品と、を備え、
前記ファイバ保持部品は、前記壁部を形成する樹脂部品を含む一体型のモジュール部品であり、
前記ファイバに光を投光する投光モジュールが、前記樹脂部品の前記孔に対向する位置に設けられる、
請求項11に記載のファイバセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファイバを保持するファイバ保持構造及びファイバセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバセンサは、多種多様なファイバをファイバアンプ等の装置に接続して使用するためのセンサである。ファイバアンプは、ファイバを挿入する孔と、挿入されたファイバの端面に光を投光する投光モジュールを備えている。特許文献1は、光源からの光を光ファイバに結合することが可能な投光装置、およびそれを備えるセンサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファイバセンサには、一般的な径(例えば2.2mm)を持つファイバのみならず、より細い他の径(例えば1.0mm)を持つファイバも接続される。細いファイバが孔に挿入されると、ファイバの先端(ファイバヘッド)が、投光モジュールのレンズ頂点に接触する事態が発生し得る。結合効率の観点からは端面結合が望ましいが、ファイバ挿入時の応力により、投光モジュールで使用される光源(LED)のワイヤボンディングが断線してしまう事態が発生し得ることが想定される。特にLEDの発熱により光源のモールド材が軟化するため、ワイヤボンディングの断線は発生し易いことが想定される。
【0005】
本開示は、ファイバの先端が投光モジュールのレンズ頂点に対して極力近づけつつ(ファイバの先端が投光モジュールのレンズ頂点に対して極力離れないようにしつつ)、ファイバの先端が投光モジュールに直接接触しないようにして、光源が発熱しても、光源の近傍に配置されたワイヤが断線することを防止し、投光性能の劣化を抑制できるファイバ保持構造及びファイバセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態は、ファイバを保持するファイバ保持構造であって、前記ファイバが挿入される孔と、前記孔の径方向外側であって、かつ、前記ファイバの挿入状態において少なくとも前記ファイバの先端に隣接した位置に存在する壁部と、前記壁部から前記孔の径方向内側へ延びて前記孔の一部を塞ぎ、前記ファイバの挿入方向の動きを抑止する抑止部と、を備えるファイバ保持構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光源が発熱しても、光源の近傍に配置されたワイヤが断線することを防止し、投光性能の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るファイバセンサの斜視図
【
図2】ファイバセンサの斜視図であり、(A)は完成品の斜視図、(B)は分解斜視図
【
図3】ファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図
【
図4】投光モジュールの側から見たファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図であり、
図2(B)のB部分の拡大図
【
図5】ファイバを挿入する孔の側から見たファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図
【
図7】ファイバを挿入する孔の側から見た壁部、抑止部としての3つの突起、奥側に存在するレンズを示す平面図
【
図8A】細径の第1のファイバを挿入した状態において、壁部、抑止部としての3つの突起、及び第1のファイバの位置関係を示す平面図
【
図8B】太径の第2のファイバを挿入した状態において、壁部、抑止部としての3つの突起、及び第2のファイバの位置関係を示す平面図
【
図9】細径の第1のファイバの先端に装着されるアタッチメントの斜視図
【
図10】アタッチメントを装着した第1のファイバを接続したファイバセンサの斜視図
【
図11】アタッチメントを装着した第1のファイバを接続したファイバセンサの断面図
【
図12】第2のファイバを接続したファイバセンサの斜視図
【
図13】第2のファイバを接続したファイバセンサの断面図
【
図14A】細径の第1のファイバを挿入した状態において、抑止部としてのワイヤ、第1のファイバの位置関係を示す平面図
【
図14B】太径の第2のファイバを挿入した状態において、壁部、抑止部としてのワイヤ、第2のファイバの位置関係を示す平面図
【
図15】比較例のファイバセンサにおけるファイバと投光モジュールとの関係を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1は、本開示の実施形態に係るファイバセンサ1の斜視図である。
【0011】
ファイバセンサ1は、薄型の箱型形状を有し、後述するファイバが挿入される孔62、70を一側面に備えている。ファイバセンサ1は、投光部及び受光部にそれぞれ対応したファイバを接続し,投光部及び受光部の先端を被検出物体を検出可能な位置に配置するようにした構成とされている。本例では、投光部からの出射光は、孔62に接続されるファイバ内を伝搬してファイバの他端から出射される。出射された光が被検出物体により反射された反射光は、孔70に接続されるファイバ内を伝搬して受光部に入射される。受光部の光電変換素子に入射された光は、電気信号に変換されて受光アンプで増幅される。そして、例えば、ファイバセンサ1は、比較回路にてこの電気信号と所定の閾値とを比較して被検出物体の有無を判断したり、受光量を測定したり、受光量に基づく処理を行ったりする。
【0012】
なお、ファイバセンサ1の長手方向の辺に沿ったX軸、ファイバセンサ1の幅方向に沿ったY軸、ファイバセンサ1の高さ方向に沿ったZ軸を含む座標を定義し、以後の説明に活用する。
【0013】
図2は、ファイバセンサの斜視図であり、(A)は完成品の斜視図、(B)は分解斜視図である。
図3は、ファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図である。
図4は、投光モジュールの側から見たファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図であり、
図2(B)のB部分の拡大図である。
図5は、ファイバを挿入する孔の側から見たファイバ保持構造を含むファイバ保持部材の斜視図である。
【0014】
図2(B)に示すように、ファイバセンサ1は、本体10と、ファイバ保持部品50と、を備えている。本体10は、主として電気信号の生成又は処理等を行う部分である。本体10は、第1ケース21と、第2ケース22と、インジケータ23と、ディスプレイカバー24と、カバー25と、NET(Network)レンズ26と、レールストッパ27と、ディスプレイ28と、シールド基板29と、ねじ30と、PCB(Printed Circuit Board)基板31と、ピンヘッダ32と、樹脂ケーブル33と、を含む。
【0015】
図3等に示すように、ファイバ保持部品50は、一体型のモジュール部品である。
図4は、
図2(B)のB部分の拡大図でもある。
図4及び
図5に示すように、ファイバ保持部品50は、メインブロック51と、クランプ部材52と、クランプレバー53と、投光モジュール54と、受光モジュール55と、を備えている。ただし、
図3の斜視図は、クランプレバー53、投光モジュール54、受光モジュール55を取り外した状態を示している。
【0016】
メインブロック51は、ファイバ保持部品50の主たる部品であり、孔62の一部を構成する挿通孔62Aが内部に形成されている。また、第1ケース21にファイバ保持部品50を組み込むための孔を含む。ファイバ保持部品50は、この孔を第1ケース21の凸部に圧入し、位置決めする。クランプ部材52は、本体10に取り付けられたとき、ファイバセンサ1の一側面の蓋の役割を果たす。クランプ部材52には、孔62の一部を構成する挿通孔62Bが内部に形成されており、メインブロック51とクランプ部材52が組み合わされると、挿通孔62Aと挿通孔62Bとが繋がり、孔62を形成する。
図1に示すように、孔62は、クランプ部材52により構成されるファイバセンサ1の一側面から露出する。メインブロック51は、例えば導電性樹脂により構成される。
【0017】
クランプレバー53は、メインブロック51の一端に設けられる。クランプレバー53は、ファイバを孔62、70に挿入した後にロックするための操作レバーである。クランプレバー53が開けられた状態(非ロック状態)で、ファイバが孔62、70に差し込まれる。クランプレバー53が閉じられた状態(ロック状態)で、押し付け摩擦によりファイバに固定され、孔62、70から抜けなくなる。
【0018】
投光モジュール54は、孔62に接続されたファイバに光を投光する投光部として機能する。
図5に示すように、投光モジュール54は、レンズ57と、光源としてのLED(Light Emitting Diode)58と、を備えている。レンズ57は、投光性樹脂56を成形することにより、投光モジュール54の略中央部に設けられている。LED58は、基板上に半田付け等により実装され、ワイヤにより投光モジュール54に電気的に接続されている。受光モジュール55は、ファイバ保持部品50に設けられたもう一つの孔70に接続されたファイバから光を受光する受光部として機能する。
【0019】
図6は、
図1のA部分の拡大断面図である。
図6を用いて、ファイバ保持部品50とファイバとの接続態様を詳細に説明する。
【0020】
ファイバとして第1のファイバ101又は第2のファイバ102が、孔62の最奥部(X軸方向の最奥部、正側端部)まで挿入される。第1のファイバ101及び第2のファイバ102は、可撓性を有する。第1のファイバ101と第2のファイバ102とは、径の大きさが異なる(後述)。第1のファイバ101又は第2のファイバ102の先端は、孔62の最奥部で、投光モジュール54のレンズ57に対向する。レンズ57の背後にはLED58が設けられており、LED58から出射した光はレンズ57を通過して、第1のファイバ101又は第2のファイバ102の先端に到達する。
【0021】
他のファイバ120は、孔70の最奥部(X軸方向の最奥部)まで挿入される。孔70の最奥部で、他のファイバ120の先端が、受光モジュール55に対向し、他のファイバ120の先端から出射した光は、受光モジュール55に到達する。
【0022】
孔62の最奥部には、第1のファイバ101又は第2のファイバ102を保持するファイバ保持構造60が設けられる。ファイバ保持構造60は、第1のファイバ101又は第2のファイバ102が挿入される孔62と、壁部61とを含む。壁部61は、孔62の径方向外側であって、かつ、第1のファイバ101または第2のファイバ102の挿入状態において、少なくとも第1のファイバ101又は第2のファイバ102の先端に隣接した位置に存在する。壁部61は、例えばメインブロック51を形成する樹脂により形成される。
【0023】
図7は、ファイバを挿入する孔の側から見た壁部61と、抑止部としての3つの突起63と、奥側に存在するレンズ57と、の一例を示す平面図である。
【0024】
図7は、ファイバが挿入されていない状態の
図6において、X軸方向に孔62を覗き込んだ時の状態を示している。ファイバ保持構造60は、孔62及び壁部61に加えて、突起63を備えている。突起63は、第1のファイバ101又は第2のファイバ102の挿入方向において、挿入された第1のファイバ101又は第2のファイバ102の先端よりも奥側の位置で、壁部61から孔62の径方向内側へ延びて孔62の一部を塞ぐように設けられる。突起63は、例えば壁部61と一体的に設けられ、樹脂により形成される。
【0025】
突起63は、孔62の一部を塞いでおり、第1のファイバ101及び第2のファイバ102の長手方向(挿入方向)の動きを抑止する抑止部として機能する。第1のファイバ101及び第2のファイバ102の長手方向は、第1のファイバ101及び第2のファイバ102が孔62に挿入された状態では挿抜方向と一致する。ファイバの挿入方向(X軸方向の正方向)は、ファイバの挿抜方向(X軸方向の両方向)における一方向である。特に、突起63は、第1のファイバ101又は第2のファイバ102が、
図6において、孔62の最奥部から更にX軸方向の正側に進んでしまうことを抑止する。このように、突起63は、ファイバと当接して、ファイバのX軸方向の正側への進行を防ぐ座として機能する。
【0026】
また、3つの突起63が存在する平面(つまり座の平面、ファイバの挿入方向に垂直な面(YZ面))において、孔62の中央から突起63の先端(径方向内側の端)までの距離d1は、例えば0.9mmである。したがって、細径の第1のファイバ(例えば1.0mm)であっても、ファイバは必ず突起63に当接するので、突起63よりも奥側(X軸方向正側)に位置するレンズ57にファイバが接触することを防止できる。
【0027】
これにより、突起63が、第1のファイバ101又は第2のファイバ102の挿入方向の動きを抑止できる。したがって、突起63は、第1のファイバ101又は第2のファイバ102の先端が、投光モジュール54のLED58のワイヤが断線することを防止でき、投光性能の劣化を抑制できる。
【0028】
突起63は、壁部61から孔62の径方向内側へ突出する少なくとも1つの突起63を含む。これにより、ファイバ保持構造60は、突起63という簡易な構造で、第1のファイバ101または第2のファイバ102の動きを抑止できる。
【0029】
また、突起63の奥行方向(X軸方向)の長さ(厚み)は、例えば0.35mmであり、非常に薄く形成される。これによって、突起63は、投光モジュール54のレンズ57の頂部とファイバ先端部との間で、極小のスペーサとして働く。そのため、突起63は、光の結合効率の低下を極力抑制しつつ、投光モジュール54のレンズ57へのファイバ先端部の直接接触することを防止している。また、突起63の厚みは薄い方が好ましいが、投光モジュール54の発光量と光ファイバへの光の導入量との関係で、設計的に許容できる光の結合効率を勘案して突起63の厚み(肉厚)を決定できるものであり、0.35mmに限定されるものではない。
【0030】
突起63による抑止態様は、径の異なる第1のファイバ101と第2のファイバ102とで異なっている。
図8Aは、細径の第1のファイバ101を挿入した状態において、壁部61、3つの突起63、及び第1のファイバ101の位置関係を示す平面図である。
図8Bは、太径の第2のファイバ102を挿入した状態において、壁部61、3つの突起63、及び第2のファイバ102の位置関係を示す平面図である。
【0031】
図8Aは、第1のファイバ101が孔62に挿入された状態における
図7に対応した図である。第1のファイバ101は、第1の径(例えば1.0mm)を有し、比較的細径のファイバである。第1のファイバ101は、径方向中心から光が伝達するコア111と、伝達する光をコア111内に閉じ込めるクラッド112と、外被覆であるシース113と、を有している。
【0032】
また、第1のファイバ101では、コア111の径は例えば0.5mmである。よって、コア111を通過する光を突起63が遮断しないので、光結合ロスが生じない。孔62に、第1の径を持つ第1のファイバ101が挿入された状態では、突起63の先端が、第1のファイバ101の最外周のシース113に接触する。つまり、ファイバの挿入方向に垂直なYZ面における突起63のそれぞれの長さは、孔62に第1のファイバ101が挿入された状態において、突起63のそれぞれの先端が第1のファイバ101のシース113に接触する長さを有する。これにより、細径の第1のファイバ101は、最外周のみが突起63に接触するため、光の伝達ロスを抑制しながら、挿入方向の動きが抑止可能である。
【0033】
一方、
図8Bは、第2のファイバ102が孔62に挿入された状態における
図7に対応した図である。第2のファイバ102は、第1のファイバ101の第1の径より大きい第2の径(例えば2.2mm)を有し、比較的太径のファイバである。第2のファイバ102も、第1のファイバ101と同様に、コア111、クラッド112、及びシース113を有している。
【0034】
孔62に、第2の径を持つ第2のファイバ102が挿入された状態では、壁部61が第2のファイバ102の最外周のシース113に少なくとも接触するとともに、突起63の少なくとも一部が、第2のファイバ102のコア111に接触する。つまり、YZ面における突起63のそれぞれの長さは、孔62に第2のファイバ102が挿入された状態において、突起62のそれぞれの先端が第2のファイバ102のコア111に接触する長さである。これにより、太径の第2のファイバ102は、コア111も突起63に接触するが、太径であるため、大きな光の伝達ロスなしで動きが抑止される。
【0035】
より具体的には、突起63の大部分が、第2のファイバ102のコア111に接触するとともに、壁部61がクラッド112の大部分、シース113全体に接触する。
【0036】
突起63の数は一つでもよいが、
図8A及び
図8B等のように3つ設けることが好ましい。3つの突起63は、壁部61において、孔62の周縁を3等分する3つの位置から孔62の径方向内側へ突出している。これにより、ファイバ保持構造60は、3つの突起63という簡易な構造で、言い換えると3点止めのような最小面積の平面によって、第1のファイバ101又は第2のファイバ102の挿入方向の動きを効果的に安定して抑止できる。最小面積の平面とすることによって、光路を塞ぐことを抑制でき、光結合ロスが発生することを抑制できる。また、均等に3等分された位置に対応して突起63が形成されることで、安定してファイバを固定できる。なお、突起63の数は2つでも、4つ以上であってもよいが、孔62の周方向に等間隔で設けるのが望ましい。
【0037】
図9は、細径の第1のファイバ101の先端に装着されるアタッチメント130の斜視図である。
【0038】
細径の第1のファイバ101は、アタッチメント130を用いてファイバセンサ1に取り付けられる。アタッチメント130は、台座131と、台座131に設けられた2つの筒部132、133を備えている。第1のファイバ101は、台座131から筒部132を貫通し、先端が筒部132から突出する。他のファイバ120も、台座131から筒部133を貫通し、先端が筒部133から突出する。筒部132から突出した第1のファイバ101の先端は、任意に切り取られたフリーカット部101Aである。筒部133から突出した他のファイバ120の先端は、任意に切り取られたフリーカット部120Aである。フリーカットにより、ユーザがファイバを任意の長さに調整可能である。なお、アタッチメント130の形状はこれに限られない。また、ファイバの先端にアタッチメント130が装着されることが省略されることもある。
【0039】
上記のアタッチメント130の先端とフリーカット部101Aの先端との位置が揃っていれば、壁部61により確実にアタッチメント130が付されたフリーカット部101Aの先端が壁部61を通り越して奥側に進むことを防止できるが、フリーカット部101Aの先端は、アタッチメント130の先端よりも奥側(X軸方向正側)に位置する場合がある。そのため、フリーカット部101Bを有するファイバは、レンズ57に一層当たり易く、LED58の近傍のワイヤが断線し易い。これに対し、本実施形態のファイバ保持構造60によれば、ファイバの先端がレンズ57に接触してLED58の近傍のワイヤが断線することを抑制できる。
【0040】
図10は、アタッチメント130を装着した第1のファイバ101を接続したファイバセンサ1の斜視図である。
図11は、アタッチメント130を装着した第1のファイバ101を接続したファイバセンサ1の断面図である。
【0041】
図10及び
図11に示すように、筒部132は、第1のファイバ101とともに、孔62に挿入される。筒部133は、他のファイバ120とともに、孔70に挿入される。筒部132及び筒部133の径は、孔62及び孔70の径とほぼ合致しているため、アタッチメント130が、ファイバセンサ1に対し確実に固定される。
【0042】
図12は、第2のファイバ102を接続したファイバセンサ1の斜視図である。
図13は、第2のファイバ102を接続したファイバセンサ1の断面図である。
【0043】
図12及び
図13に示すように、太径の第2のファイバ102は、アタッチメント130無しで孔62に直接取り付けられる。なお、ここでは他のファイバ120も太径である。
【0044】
図14Aは、細径の第1のファイバ101を挿入した状態において、抑止部としてのワイヤ、及び第1のファイバ101の位置関係を示す平面図である。
図14Bは、太径の第2のファイバ102を挿入した状態において、壁部61、抑止部としてのワイヤ65、第2のファイバ102の位置関係を示す平面図である。
【0045】
図14A及び
図14Bに示すように、ファイバ(第1のファイバ101又は第2のファイバ102)の動きを抑止する抑止部は、突起63の代わりに、ワイヤ65であってもよい。ワイヤ65は、孔62を横切るように、壁部61の一つの位置から他の位置へ張り渡される。ワイヤ65の素材は特に限定されない。ワイヤ65の数は1つでもよいが、図示のように複数であることが望ましい。これにより、ファイバ保持構造60は、孔62を横切るワイヤ65という簡易な構造で、ファイバの動きを抑止できる。つまり、ファイバ保持構造60は、孔62の最奥部から更にX軸方向の正側に進んでしまうことを抑止できる。また、ファイバ保持構造60は、ワイヤ65を採用することで、ファイバのコア111を通過する光を遮断することを一層抑制できる。
【0046】
また、ファイバ保持構造60が突起63の代わりにワイヤ65を備える場合、突起63を樹脂成型する必要がないため、ワイヤ65の太さそのものが、投光モジュール54のレンズ57の頂部とファイバ先端部との間で極小のスペーサとして働く。したがって、突起63の材質や材料によって、樹脂成型された突起63よりも、投光モジュール54のレンズ57の頂部とファイバ先端部との間の間隔を小さくすることも容易にできる場合がある。よって、ファイバ保持構造60は、ワイヤ65を備えることで、突起63を備えるよりも、光の結合効率の低下を一層抑制しつつ、投光モジュール54のレンズ57へのファイバ先端部の直接接触することを防止できる場合がある。
【0047】
ファイバ保持構造60は、壁部61を形成する樹脂部品、即ちメインブロック51を含む一体型のモジュール部品であるファイバ保持部品50により提供される。第1のファイバ101又は第2のファイバ102に光を投光する投光モジュール54も、樹脂部品の孔62に対向する位置に設けられる。これにより、ファイバ保持構造60が、投光モジュール54とともに一体型のモジュール部品により提供される。したがって、ファイバ保持構造60の取り扱いが容易となるとともに、投光モジュール54の位置決め精度も向上する。
【0048】
ファイバセンサ1は、ファイバ保持構造60を備えており、ファイバの挿入方向の動きが抑止されているため、LED58のワイヤの断線ひいては投光性能の劣化を抑制することができる。
【0049】
ファイバセンサ1は、本体10と、ファイバ保持構造60を含むファイバ保持部品50と、を備える。これにより、ファイバ保持構造60が、一体型のモジュール部品であるファイバ保持部品50により提供されるため、取り扱いが容易となる。
【0050】
図15は、比較例のファイバセンサにおけるファイバと投光モジュールとの関係を示す側面図である。
【0051】
比較例のファイバセンサにおいては、細径のファイバ200は、アタッチメント210を用いて取り付けられる。応力Fがファイバ200にかかると、ファイバ200の先端がレンズ220、ひいては基板230に配置されたLED231に接触し、ワイヤ232が断線し得る。特に、LED231の発熱によりモールド材が軟化するため、ワイヤ232の断線は発生し易いことが想定される。
【0052】
これに対し、本実施形態のファイバ保持構造60は、突起63又はワイヤ65等の抑止部が設けられるので、ファイバを好適に保持固定でき、このような事態の発生を防止できる。また、本実施形態のファイバ保持構造60及びファイバセンサ1によれば、通電時のファイバの抜差しに関する制限や、アタッチメント130の先端からファイバが飛び出すことを防ぐ調整等の手間を低減できる。
【0053】
また、ファイバの先端とレンズとの間にアクリル板を設けることにより、ファイバがレンズに接触するのを防止する対策も考えられる。しかしながら、このような対策は、アクリル板の板厚により、レンズとファイバ間の距離が長くなり、屈折により結合ロスが生じるおそれがある。また、アクリル板により角度を持った光線は、表面反射ロスを発生させるおそれがあり、部品点数も増加する。これに対し、本実施形態のファイバ保持構造60及びファイバセンサ1によれば、上記のアクリル板を設けないので、レンズとファイバ間の距離が長くなることを抑制でき、屈折により結合ロスが生じることを抑制でき、アクリル板により角度を持った光線が表面反射ロスを発生させることを抑制でき、部品点数の増加も抑制でき、且つ、ファイバの動きを抑止できる。
【0054】
また、レンズの周囲にすり鉢形状の部材を配置し、ファイバの挿入方向の動きを抑止する対策も考えられる。しかしながら、ファイバセンサに接続されるファイバが様々な径を有する場合、径の違いにより、ファイバの固定位置が変動することになり、特に太径のファイバの場合は結合ロスが発生し易い。ファイバの固定位置が安定しないため、個体ばらつきが発生することも懸念される。また、部品点数も増加する。これに対し、本実施形態のファイバ保持構造60及びファイバセンサ1によれば、ファイバセンサに様々な径のファイバが接続される場合でも、ファイバの固定位置の変動を抑制でき、特に太径のファイバの場合でも結合ロスが発生し難く、個体ばらつきも発生し難く、部品点数の増加も抑制でき、且つ、ファイバの動きを抑止できる。
【0055】
また、ファイバ保持構造60は、レンズ57のサイズを小さくすることなくファイバが接触することを抑制できるので、投光される光のパワーつまり投光性能を維持できる。また、ファイバ保持構造60は、アタッチメント130からファイバの先端を突出させたままファイバを保持できるので、ファイバからレンズ57までの距離が離間されて光結合ロスが生じることを抑制できる。
【0056】
以上により、本開示には、少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0057】
(1)ファイバ(例えば第1のファイバ101又は第2のファイバ102)を保持するファイバ保持構造(例えばファイバ保持構造60)であって、
前記ファイバが挿入される孔(例えば孔62)と、
前記孔の径方向外側であって、かつ、前記ファイバの挿入状態において少なくとも前記ファイバの先端に隣接した位置に存在する壁部(例えば壁部61)と、
前記ファイバの挿入方向において、挿入された前記ファイバの先端よりも奥側の位置で、前記壁部から前記孔の径方向内側へ延びて前記孔の一部を塞ぎ、前記ファイバの挿入方向の動きを抑止する抑止部(例えば突起63又はワイヤ65)と、を備えるファイバ保持構造。
【0058】
これにより、抑止部がファイバの挿入方向の動きを抑止するため、ファイバ保持構造は、光源が発熱しても、光源の近傍にある投光モジュールのワイヤが断線することを防止し、投光性能の劣化を抑制できる。
【0059】
(2)前記抑止部は、前記壁部から前記孔の径方向内側へ突出する少なくとも1つの突起(突起63)を含む、
(1)に記載のファイバ保持構造。
【0060】
これにより、ファイバ保持構造は、突起という簡易な構造で、ファイバの動きを抑止できる。
【0061】
(3)前記ファイバの挿入方向に垂直な面(例えばYZ面)における前記突起の長さは、前記孔に第1の径を持つ第1のファイバ(例えば第1のファイバ101)が挿入された状態において、前記突起の先端が前記第1のファイバのシース(例えばシース113)に接触する長さである、
(2)に記載のファイバ保持構造。
【0062】
これにより、細径の第1のファイバは、最外周のみが突起に接触するため、光の伝達ロスを抑制しながら、動きが抑止される。
【0063】
(4)前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記突起の長さは、前記孔に第2の径を持つ第2のファイバ(例えば第2のファイバ102)が挿入された状態において、前記突起の先端が前記第2のファイバのコア(例えばコア111)に接触する長さである、
(3)に記載のファイバ保持構造。
【0064】
これにより、太径の第2のファイバは、コアも突起に接触するが、太径であるため、大きな光の伝達ロスなしで動きが抑止される。
【0065】
(5)前記突起は、前記壁部において、前記孔の周縁を等分する複数の位置のそれぞれから前記孔の径方向内側へ突出する複数の突起(例えば突起63)を含む、
(2)に記載のファイバ保持構造。
【0066】
これにより、ファイバ保持構造は、孔の周縁を等分した突起という簡易な構造で、ファイバの動きを効果的に安定して抑止できる。
【0067】
(6)前記抑止部は、3つ以上の前記突起を含む
(5)に記載のファイバ保持構造。
【0068】
これにより、ファイバ保持構造は、3つ以上の突起という簡易な構造で、ファイバの動きを効果的に安定して抑止できる。
【0069】
(7)前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記複数の突起のそれぞれの長さは、前記孔に第1の径を持つ第1のファイバが挿入された状態において、前記複数の突起のそれぞれの先端が前記第1のファイバのシースに接触する長さである、
(5)に記載のファイバ保持構造。
【0070】
これにより、細径の第1のファイバは、最外周が複数の突起に接触するため、光の伝達ロスを抑制しながら、動きが抑止される。一方、太径の第2のファイバは、コアも突起に接触するが、太径であるため、大きな光の伝達ロスなしで動きが抑止される。
【0071】
(8)前記ファイバの挿入方向に垂直な面における前記複数の突起のそれぞれの長さは、前記孔に第2の径を持つ第2のファイバが挿入された状態において、前記複数の突起のそれぞれの先端が前記第2のファイバのコアに接触する長さである。
(5)に記載のファイバ保持構造。
【0072】
これにより、太径の第2のファイバは、コアも複数の突起に接触するが、太径であるため、大きな光の伝達ロスなしで動きが抑止される。
【0073】
(9)前記抑止部は、前記孔を横切るように、前記壁部の一つの位置から他の位置へ張り渡されたワイヤ(例えばワイヤ65)を含む、
(1)に記載のファイバ保持構造。
【0074】
これにより、ファイバ保持構造は、孔を横切るワイヤという簡易な構造で、ファイバの動きを抑止できる。
【0075】
(10)前記ファイバ保持構造は、前記壁部を形成する樹脂部品を含む一体型のモジュール部品であり、
前記ファイバに光を投光する投光モジュール(例えば投光モジュール54)が、前記樹脂部品の前記孔に対向する位置に設けられる、
(1)に記載のファイバ保持構造。
【0076】
これにより、ファイバ保持構造が、投光モジュールとともに一体型のモジュール部品により提供されるため、取り扱いが容易となるとともに、投光モジュールの位置決め精度も向上する。
【0077】
(11)(1)から(10)のいずれかに記載のファイバ保持構造を備えるファイバセンサ(例えばファイバセンサ1)。
【0078】
これにより、ファイバセンサは、ファイバの挿入方向の動きを抑止するため、ワイヤの断線ひいては投光性能の劣化を抑制できる。
【0079】
(12)前記ファイバセンサは、本体(例えば本体10)と、前記ファイバ保持構造を含むファイバ保持部品(例えばファイバ保持部品50)と、を備え、
前記ファイバ保持部品は、前記壁部を形成する樹脂部品を含む一体型のモジュール部品であり、
前記ファイバに光を投光する投光モジュールが、前記樹脂部品の前記孔に対向する位置に設けられる、
(11)に記載のファイバセンサ。
【0080】
これにより、ファイバセンサにおいて、ファイバ保持部品が、投光モジュールとともに一体型のモジュール部品により提供されるため、取り扱いが容易となるとともに、投光モジュールの位置決め精度も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、光源の近傍に配置されたワイヤの断線ひいては投光性能の劣化を抑制できるファイバ保持構造及びファイバセンサ等に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 ファイバセンサ
10 本体
50 ファイバ保持部品
51 メインブロック
52 クランプ部材
53 クランプレバー
54 投光モジュール
55 受光モジュール
60 ファイバ保持構造
61 壁部
62 孔
63 突起
65 ワイヤ
101 第1のファイバ
102 第2のファイバ
111 コア
112 クラッド
113 シース