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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122280
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】締結ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240902BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E04B1/58 H
E04B1/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029732
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】辻 千佳
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA33
2E125AB01
2E125AB13
2E125AB16
2E125AC14
2E125AC15
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG16
2E125BB09
2E125BB22
2E125BB27
2E125BB31
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA13
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】柱又は梁を構成する第1長尺部材の変形を抑制しつつ、第1長尺部材と、第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結することが可能な締結ユニットを提供する。
【解決手段】締結ユニットは、建物の柱又は梁を構成し鋼材からなる第1長尺部材と、該第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結する締結ユニットであって、第1長尺部材において第2長尺部材と同じ側に位置する側部に取り付けられる第1締結具と、第2長尺部材の延出方向の端部に取り付けられる第2締結具と、を備え、第1締結具は、側部から延出した一対の第1延出部を有し、第2締結具は、端部から延出した一対の第2延出部を有し、一対の第1延出部及び一対の第2延出部の一方が他方の間に入り込み、一対の第1延出部の各々が、一対の第2延出部のうちの対応する第2延出部に係合することで、第1締結具と第2締結具とが互いに接続される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱又は梁を構成し鋼材からなる第1長尺部材と、該第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結する締結ユニットであって、
前記第1長尺部材において前記第2長尺部材と同じ側に位置する側部に取り付けられる第1締結具と、
前記第2長尺部材の延出方向の端部に取り付けられる第2締結具と、を備え、
前記第1締結具は、前記側部から延出した一対の第1延出部を有し、
前記第2締結具は、前記端部から延出した一対の第2延出部を有し、
前記一対の第1延出部及び前記一対の第2延出部の一方が他方の間に入り込み、前記一対の第1延出部の各々が、前記一対の第2延出部のうちの対応する前記第2延出部に係合することで、前記第1締結具と前記第2締結具とが互いに接続される、締結ユニット。
【請求項2】
前記第1締結具は、前記第1長尺部材の前記側部から延出し且つ前記一対の第1延出部同士を連絡する補強部をさらに有する、請求項1に記載の締結ユニット。
【請求項3】
前記一対の第1延出部は、前記第1長尺部材の延出方向と交差する方向に互いに対向するように前記側部に設けられており、
前記補強部は、前記第1長尺部材の延出方向における前記一対の第1延出部の端同士を連絡する、請求項2に記載の締結ユニット。
【請求項4】
前記第1長尺部材は、前記第2長尺部材と同じ側に側面を有する柱であり、
前記一対の第1延出部及び前記補強部の各々は、前記側面に対して溶接されている、請求項2に記載の締結ユニット。
【請求項5】
前記第1長尺部材は、中空型で且つ角筒形状の柱であり、
前記一対の第1延出部の各々は、前記第1長尺部材の角部から延出している、請求項2に記載の締結ユニット。
【請求項6】
前記第1長尺部材の前記側部から延出する前記補強部の第1延出量は、前記第1長尺部材の前記側部から延出する前記一対の第1延出部の各々の第2延出量の半分以上である、請求項2に記載の締結ユニット。
【請求項7】
前記一対の第1延出部の各々は、対応する前記第2延出部と係合するための係合孔を有し、
前記係合孔の位置は、前記補強部の延出方向において、前記補強部が延出する範囲内に含まれる、請求項2に記載の締結ユニット。
【請求項8】
前記一対の第1延出部の各々について、前記第2長尺部材が位置する側の角が面取りされている、請求項1に記載の締結ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物における柱及び梁で囲まれた構面には、耐震性を向上させるためにブレースが設けられている。柱又は梁に対してブレースを締結する技術は、既に開発されており、特許文献1に記載された技術が、その一例として挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の締結ユニットは、角形鋼管により形成された外柱の側面から立ち上がったガセットプレートと、ブレースの一端に設けられた接続プレートとを、各々に設けられたボルト孔を位置合わせしてボルトを挿通することにより接続する。これにより、外柱とブレースとが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-158983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の締結ユニットでは、ガセットプレートが、第1長尺部材(外柱)の角部の間の領域(以下「中央部」とする)から延出している。第1長尺部材において中央部は角部に比べて変形しやすく、第2長尺部材(ブレース)の一端に設けられた接続プレートによってガセットプレートが引っ張られると、第1長尺部材の中央部が変形し、結果的に第1長尺部材が変形する虞がある。
【0006】
このような第1長尺部材の変形を抑制する方法として、ガセットプレートと第1長尺部材との間にプレートを配置して、ガセットプレートから付与される力をプレートの全体に分散させる方法が考えられる。しかしながら、このような方法を採用すると、プレートが追加で必要となるため、その分、建物の建設コストが嵩むことになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、柱又は梁を構成する第1長尺部材の変形を抑制しつつ、第1長尺部材と、第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結することが可能な締結ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明の締結ユニットによれば、建物の柱又は梁を構成し鋼材からなる第1長尺部材と、該第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結する締結ユニットであって、第1長尺部材において第2長尺部材と同じ側に位置する側部に取り付けられる第1締結具と、第2長尺部材の延出方向の端部に取り付けられる第2締結具と、を備え、第1締結具は、側部から延出した一対の第1延出部を有し、第2締結具は、端部から延出した一対の第2延出部を有し、一対の第1延出部及び一対の第2延出部の一方が他方の間に入り込み、一対の第1延出部の各々が、一対の第2延出部のうちの対応する第2延出部に係合することで、第1締結具と第2締結具とが互いに接続されることにより解決される。
本発明の締結ユニットでは、第2長尺部材から付与される力を、一対の第1延出部の各々に分散して第1長尺部材の側部に伝達するので、第1長尺部材の変形を抑制することができる。
【0009】
また、第1締結具は、第1長尺部材の側部から延出し且つ一対の第1延出部同士を連絡する補強部をさらに有してもよい。
上記の構成であれば、第2長尺部材から付与される力を、一対の第1延出部の各々及び補強部に分散して第1長尺部材の側部に伝達するので、第1長尺部材の変形をより効果的に抑制することができる。
【0010】
また、一対の第1延出部は、第1長尺部材の延出方向と交差する方向に互いに対向するように側部に設けられており、補強部は、第1長尺部材の延出方向における一対の第1延出部の端同士を連絡してもよい。
上記の構成であれば、一対の第2延出部に干渉しないように補強部を設けることができるので、第1長尺部材の変形を抑制しつつ、第1長尺部材と第2長尺部材とを適切に締結することができる。
【0011】
また、第1長尺部材は、第2長尺部材と同じ側に側面を有する柱であり、一対の第1延出部及び補強部の各々は、側面に対して溶接されてもよい。
上記の構成であれば、第2長尺部材から付与される力を、一対の第1延出部及び補強部の各々から第1長尺部材の側面に確実に分散することができるので、第1長尺部材の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0012】
また、第1長尺部材は、中空型で且つ角筒形状の柱であり、一対の第1延出部の各々は、第1長尺部材の角部から延出してもよい。
上記の構成であれば、第2長尺部材から付与される力を、第1長尺部材の角部に対して伝達することができるので、第1長尺部材の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0013】
また、第1長尺部材の側部から延出する補強部の第1延出量は、第1長尺部材の側部から延出する一対の第1延出部の各々の第2延出量の半分以上であってもよい。
上記の構成であれば、一対の第1延出部及び補強部から構成される第1締結具の剛性を向上させることができる。その結果、締結ユニットがより適切に機能し、第1長尺部材と第2長尺部材とをより適切に締結することができる。
【0014】
また、一対の第1延出部の各々は、対応する第2延出部と係合するための係合孔を有し、係合孔の位置は、補強部の延出方向において、補強部が延出する範囲内に含まれてもよい。
上記の構成であれば、一対の第1延出部の各々について、応力が集中する係合孔の周辺の剛性が向上し、第1締結具の変形を抑制することができる。これにより、締結ユニットが適切に機能するので、第1長尺部材と第2長尺部材とを適切に締結することができる。
【0015】
また、一対の第1延出部の各々について、第2長尺部材が位置する側の角が面取りされてもよい。
上記の構成であれば、締結ユニットの周辺の部位との干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、柱又は梁を構成する第1長尺部材の変形を抑制しつつ、第1長尺部材と、第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結することが可能な締結ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一つの実施形態に係る締結ユニットを適用した建物について説明する図である。
図2図1の構面Aの詳細を示す図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る締結ユニットの周辺を示す正面図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る締結ユニットの周辺を示す平面図である。
図5】締結ユニットの変形例を示す図である。
図6】締結ユニットの変形例を示す図である。
図7】締結ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら、以下に詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明の構成は、その趣旨を逸脱しない限り、下記の実施形態から変更又は改良され得る。
また、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
また、本発明を実施するために用いられる各部材の材質及び形状等は、特に断る場合を除き、本発明の用途及び本発明の実施時点での技術水準等に応じて任意に設定できる。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0019】
<<本実施形態に係る締結ユニットを適用した建物について>>
先ず、図1及び2を参照しながら本実施形態に係る締結ユニット(以下、締結ユニット10)を適用した建物(以下、建物1)について説明する。
建物1は、例えば、住宅、事務所、店舗、病院又は学校等の施設、及び、工場内の建屋等、様々な用途の建物を含む。
建物1は、複数の構面から構成されている。構面は、梁及び柱で構成される平面的な骨組み構造である。各々に構面において、梁及び柱で囲まれた枠体内には対角線状にブレースが設けられている。本実施形態の締結ユニット10は、柱又は梁に対してブレースを締結する際に用いられる。
【0020】
図1及び2に示す例を用いて、より具体的に説明する。図1に示すように、建物1は、構面Aを含む屋根構造を有する。図2は、図1の構面Aの詳細を示す図である。構面Aは、鉛直方向に並べられた一対の梁2,2と、一対の梁2,2間を鉛直方向に延出し且つ水平方向に並べられた一対の柱3,3(第1長尺部材)とによって矩形状の枠体を構成する。
一対の梁2,2については、例えば、上方位置の梁2が棟母屋であり、下方位置の梁2が小屋梁である。梁2は、鋼材からなる長尺部材であり、例えば、上下にフランジ部を有するH形鋼である。
柱3は、鋼材からなる長尺部材であり、例えば、中空型で且つ角筒形状をなす角形鋼管である。
【0021】
構面Aは、一対のブレース4(第2長尺部材)をさらに有する。一対のブレース4は、構面Aの補強部材であり、梁2,2及び柱3,3で構成された矩形の枠体に対して、対角線状に、且つ、互いに交差するようにそれぞれ延びている。より詳しくは、一方のブレース4は、一方の柱3の上端部(柱頭)から他方の柱3の下端部(柱脚)に向かって、柱3に対して斜めに延びている。他方のブレース4は、他方の柱3の上端部(柱頭)から一方の柱3の下端部(柱脚)に向かって、柱3に対して斜めに延出している。なお、ブレース4の端部4a(図3参照)は、後述する第2締結具30(より詳しくは固定具32)と螺合するための、ねじ領域を有する。
本実施形態では、締結ユニット10は、図2に示すように、一対の柱3,3の上端部及び下端部の各々、すなわち計4箇所にそれぞれ設けられており、柱3とブレース4とをそれぞれ締結する。換言すると、締結ユニット10は、柱3を構成し鋼材からなる第1長尺部材と、その第1長尺部材に対して斜めに延びている第2長尺部材とを締結する。
なお、締結ユニット10は、上記4箇所のうちの少なくとも1箇所に設けられてもよい。
【0022】
<<本実施形態に係る締結ユニットについて>>
以下、図3及び4を参照しつつ、本実施形態に係る締結ユニット10について詳細に説明する。図3及び4は、図2中の領域Cの詳細を示している。図3は締結ユニット10の周辺を示す正面図である。図4は、締結ユニット10の周辺を示す平面図であるが、説明の便宜上、上方位置の梁2を図示していない。
【0023】
また、以下の説明では、特に断る場合を除き、締結ユニット10の通常の使用状態を想定し、締結ユニット10の位置、並びに締結ユニット10各部の向き及び延出方向等を説明する際には、締結ユニット10が通常の使用状態にあるときの位置、向き及び延出方向を説明することとする。
【0024】
また、説明の便宜上、互いに直交する3つの方向については、「梁2の延出方向」、「柱3の延出方向」、並びに、梁2の延出方向及び柱3の延出方向の双方に直交する方向(すなわち、図3において紙面に直交する方向)を「柱3の幅方向」と呼ぶこととする。
また、本明細書の「直交」は、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、本明細書の「直交」は、厳密な直交に対して±10°未満の範囲内であること等を意味する。なお、厳密な直交からの誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0025】
締結ユニット10は、第1締結具20と第2締結具30とを備える。第1締結具20は、図3に示すように、柱3においてブレース4と同じ側に位置する側部3aに取り付けられている。一方で、第2締結具30は、ブレース4の延出方向の端部4aに取り付けられている。第1締結具20と第2締結具30とが互いに接続されることにより、柱3とブレース4とが締結される。
【0026】
(第1締結具)
第1締結具20は、柱3の側部3aのうちの、第2長尺部材と同じ側の側面3bに取り付けられている。柱3は、前述したように、角筒形状をなしており、周囲を取り囲む複数(この例では4つ)の側面を有している。側面3bは、柱3の複数の側面のうちの1つの面である。
【0027】
第1締結具20は、一対の第1延出部21,22、補強部23、及び先端部24を有する。
一対の第1延出部21,22の各々は、柱3の側部3a、より詳しくは側面3bから延出している。一対の第1延出部21,22の各々は、図4に示すように、平板状をなしており、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びている。一対の第1延出部21,22の各々は、柱3の延出方向及び梁2の延出方向の双方と直交する方向、より詳しくは、柱3の幅方向に互いに対向するように側部3aに設けられている。一対の第1延出部21,22の各々の厚さは、好ましくは2~5mm、より好ましくは2~3mmである。
【0028】
一対の第1延出部21,22の各々は、図4に示すように、柱3の4つの角部のうち、ブレース4と同じ側に位置する2つの角部3cの各々から延出している。なお、「角部3c」は、柱3の幅方向において、柱3の中心線よりも柱3の外端に近い領域を「角部3c」と定義する。
【0029】
一対の第1延出部21,22の各々は、係合孔21a,22aを有する。係合孔21a,22aは、同軸上に位置し、より詳しくは、図4に示すように、柱3の幅方向から見たときに互いに重なり合う位置に設けられている。係合孔21a,22aには、後述する一対の第2延出部33,34の各々に設けられた係合孔33a,34aと位置合わせした状態でボルトBが挿通される。
係合孔21a,22aは、例えば、丸形状の貫通孔であって、挿通するボルトBの径よりも大きくなっている。例えば、係合孔21a,22aは、並目のねじピッチでM10~M14、好ましくはM12程度のボルトと対応する孔径となっている。係合孔21a,22aは、例えば、12mm~15mm、好ましくは13mm程度の孔径となっている。
【0030】
補強部23は、柱3の側部3a、より詳しくは側面3bから延出している。補強部23は、平板状をなしており、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びている。補強部23は、一対の第1延出部21,22同士を連絡する。より詳しくは、補強部23は、柱3の延出方向における一対の第1延出部21,22の端同士を連絡する。本実施形態においては、補強部23は、一対の第1延出部21,22の上端、すなわち、梁2側の端同士を連絡している。換言すると、一対の第1延出部21,22及び補強部23は、梁2の延出方向から見た場合にU字形状をなすように連続している。
【0031】
柱3の側部3aから延出する補強部23の第1延出量は、柱3の側部3aから延出する一対の第1延出部21,22の各々の第2延出量の半分以上である。第1延出量は、第2延出量の3/4以上であるとより好ましく、第2延出量と同等以上であるとさらに好ましい。
なお、補強部23の第1延出量は、柱3の側面3bから補強部23の先端面までの距離を意味する。一対の第1延出部21,22の各々の第2延出量は、柱3の側面3bから一対の第1延出部21,22の各々の先端面までの距離を意味する。
【0032】
前述した係合孔21a,22aの位置は、補強部23の延出方向、すなわち梁2の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれている。換言すると、係合孔21a,22aの各々において、係合孔が形成されている領域の少なくとも一部が、補強部23の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれている。
なお、係合孔が形成されている領域の少なくとも半分が、補強部23の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれているとより好ましく、係合孔が形成されている領域の全てが、補強部23の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれているとさらに好ましい。
【0033】
一対の第1延出部21,22の各々には、図3に示すように、ブレース4が位置する側の角が面取りされており、換言すると、面取り部24が設けられている。
より詳しくは、一対の第1延出部21,22の各々のブレース4側の端部(先端部)は、柱3の延出方向に沿う先端面と、該先端面の上端から柱3側に傾斜した部分、すなわち面取り部24とで構成されている。面取り部24は、一対の第1延出部21,22の各々の先端部のうちの梁2側(上端側)に設けられている。
【0034】
第1締結具20は、例えば、一枚の平坦な金属プレートを所定形状にカットしてから折り曲げることで形成されている。形成工程としては、先ず、第1延出部21をなす部分、補強部23をなす部分、及び第1延出部22をなす部分を、これらの順で一列に並べた状態の外形形状に金属プレートを切断する。このとき、第1延出部21をなす部分及び第1延出部22をなす部分の各々については、所定の角を面取りし、面取り部24をなす部分を形成する。また、第1延出部21をなす部分及び第1延出部22をなす部分の各々については、係合孔21a,22aを形成する。その後、補強部23をなす部分に対して第1延出部21なす部分を略直角に折り曲げる。同様に、補強部23をなす部分に対して第1延出部22をなす部分を略直角に折り曲げる。このような形成工程により、U字状の第1締結具20が形成される。
【0035】
上記のように構成された第1締結具20は、柱3の側面3bに対して接合される。具体的には、一対の第1延出部21,22及び補強部23の各々が、例えば、側面3bに対して溶接により接合される。溶接方法としては、公知の溶接技術を適用する。本実施形態では、締結ユニット10の外側、すなわち、一対の第1延出部21,22及び補強部23の各々の外表面側に不図示の接合部(溶接部)が形成される。
【0036】
不図示の接合部は、溶接痕(ビード)であり、一対の第1延出部21,22の各々について、柱3の延出方向における一端から他端まで形成される。
なお、不図示の接合部は、一対の第1延出部21,22の各々について、柱3の延出方向における一端から他端まで形成されなくてもよい。ただし、柱3の延出方向において、不図示の接合部が形成される範囲内に、係合孔21a,22aが設けられていることが好ましい。すなわち、係合孔21a,22aの各々において、係合孔が形成されている領域の少なくとも一部(好ましくは半分以上、さらに好ましくは全域)が、柱3の延出方向において、不図示の接合部が形成される範囲内に含まれていることが好ましい。
なお、前述したように、係合孔21a,22aの位置は、補強部23の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれることが好ましい。すなわち、係合孔21a,22aの位置は、補強部23の延出方向において補強部23が延出する範囲と、柱3の延出方向において不図示の接合部が形成される範囲とで囲まれた領域内に位置していることが好ましい。
【0037】
(第2締結具)
第2締結具30は、ベース部31と、ベース部31の第1締結具20側に取り付けられた固定具32と、一対の第2延出部33,34とを有する。
ベース部31は、平板状をなしており、中央に不図示の貫通孔を有している。固定具32は、ベース部31において第1締結具20側の面に配置されている。
固定具32は、例えばナット等の締結具であり、ベース部31の不図示の貫通孔と同軸上に位置しており、溶接又はカシメ等の技術によりベース部31に取り付けられている。
第2締結具30は、ベース部31の不図示の貫通孔にブレース4の端部4aを挿通させて、端部4aと固定具32とを螺合させることにより、ブレース4の端部4aに取り付けられる。
【0038】
一対の第2延出部33,34の各々は、ブレース4の端部4a、より厳密にはベース部31から第1締結具20側に向かって延出している。
一対の第2延出部33,34の各々は、平板状をなしており、柱3の延出方向及び梁2の延出方向の双方と直交する方向、より詳しくは、柱3の延出方向におけるベース部31の各端部からブレース4の延出方向に直線状に延びている。一対の第2延出部33,34の各々は、図4に示すように、柱3の幅方向に互いに対向するように設けられている。換言すると、一対の第2延出部33,34が互いに対向する方向は、一対の第1延出部21,22が互いに対向する方向と同じである。一対の第2延出部33,34の各々の厚さは、好ましくは2.3~6mm、より好ましくは2.3~3.2mmである。
【0039】
一対の第2延出部33,34の各々は、係合孔33a,34aを有する。係合孔33a,34aは、同軸上に位置し、柱3の幅方向から見たときに互いに重なり合う位置に設けられている。係合孔33a,34aには、第1延出部21,22の各々に設けられた係合孔21a,22aと位置合わせした状態でボルトBが挿通される。
係合孔33a,34aは、例えば、丸形状の貫通孔であって、挿通するボルトBの径よりも大きくなっている。例えば、係合孔33a,34aは、並目のねじピッチでM10~M14、好ましくはM12程度のボルトと対応する孔径となっている。係合孔33a,34aは、例えば、12mm~15mm、好ましくは13mm程度の孔径となっている。
【0040】
第2締結具30のうち、固定具32を除いた、ベース部31及び一対の第2延出部33,34は、例えば、一枚の平坦な金属プレートを所定形状にカットしてから折り曲げることで形成されている。
形成工程としては、先ず、第2延出部33をなす部分、ベース部31をなす部分、及び第2延出部34をなす部分を、これらの順で一列に並べた状態の外形形状に金属プレートを切断する。第2延出部33をなす部分及び第2延出部34をなす部分の各々については、係合孔33a,34aを形成する。その後、ベース部31をなす部分に対して第2延出部33をなす部分を略直角に折り曲げる。同様に、ベース部31をなす部分に対して第2延出部34をなす部分を略直角に折り曲げる。このような形成工程により、U字状の第2締結具30が形成される。
【0041】
(第1締結具及び第2締結具の接続について)
以上のように構成された第1締結具20及び第2締結具30が、図3及び図4に示すように、互いに接続される。
より詳しくは、第1締結具20及び第2締結具30は、一対の第1延出部21,22及び一対の第2延出部33,34の一方が他方の間に入り込むように接続される。本実施形態では、一対の第1延出部21,22の各々は、一対の第2延出部33,34のうちの対応する第2延出部、すなわち、より近い側の第2延出部の外側に位置している。本実施形態では、図4に示すように、柱3の延出方向において、第1延出部21は、第2延出部33の外側に位置しており、第1延出部22は、第2延出部34の外側に位置している。
【0042】
一対の第1延出部21,22の各々は、一対の第2延出部33,34のうちの対応する第2延出部に係合している。本実施形態では、第1延出部21は第2延出部33に係合し、第1延出部22は第2延出部34に係合している。
より詳しくは、第1延出部21は、第1延出部21の係合孔21aと第2延出部33の係合孔33aとの位置を合わせた状態でボルトBが挿通されることにより、第2延出部33に係合している。係合状態において、第1延出部21及び第2延出部33の互いに対向する面同士、具体的には、第1延出部21の内表面と第2延出部33の外表面とは互いに接触しているか、あるいは、若干の隙間を設けた状態で対向している。
同様に、第1延出部22は、第1延出部22の係合孔22aと第2延出部34の係合孔34aとの位置を合わせた状態でボルトBが挿通されることにより、第2延出部34に係合している。係合状態において、第1延出部21及び第2延出部33の互いに対向する面同士、具体的には、第1延出部22の内表面と第2延出部33の外表面とは互いに接触しているか、あるいは、若干の隙間を設けた状態で対向している。
上記のような係合状態を維持することにより、第1締結具20と第2締結具30とが互いに接続される。
【0043】
<<本実施形態の作用及び効果>>
本実施形態に係る締結ユニット10では、ブレース4から付与される力を、一対の第1延出部21,22の各々に分散して柱3の側部3aに伝達するので、柱3の変形を抑制することができる。
このため、一対の第1延出部21,22の各々について、係合孔21a,22aから柱3側の縁までの距離L(はしあき寸法)を小さくすることができる。換言すると、ブレース4から付与される力が、係合孔21a,22aの各々に分散されるので、係合孔21a,22aの各々から第1延出部21,22の各々の柱3側の縁までの距離Lを小さくすることができる。
また、柱3と第1締結具20との間に、ブレース4から付与される力を分散させるためのプレート等を配置する必要がなくなるので、柱3から係合孔21a,22aまでの距離Lの増大を抑制することができる。
このように、柱3から係合孔21a,22aまでの距離Lの増大を抑制することができるので、柱3に対して作用する偏心モーメントの増大を抑制することができる。この結果、柱3の強度を向上させる必要がなくなり、柱3の断面サイズの増大を抑制することができる。
【0044】
また、第1締結具20は、柱3の側部3aから延出し且つ一対の第1延出部21,22同士を連絡する補強部23を有している。
これにより、ブレース4から付与される力を、一対の第1延出部21,22及び補強部23の各々に分散して柱3の側部3aに伝達するので、柱3の変形をより効果的に抑制することができる。
また、補強部23が一対の第1延出部21,22同士を連絡するので、締結ユニット10の全体としての剛性を向上させることができる。これにより、ブレース4から付与される力と、第1延出部21,22の係合孔21a,22aに挿通したボルトBから付与される締付力とによって、締結ユニット10が変形することを抑制することができる。この結果、締結ユニット10が適切に機能し、柱3とブレース4とを適切に締結することができる。
【0045】
また、一対の第1延出部21,22は、柱3の延出方向と直交する方向(柱3の幅方向)に互いに対向するように柱3の側部3aに設けられている。補強部23は、柱3の延出方向における一対の第1延出部21,22の端同士(具体的には上端同士)を連絡している。
これにより、一対の第2延出部33,34と干渉しないように補強部23を設けることができるので、柱3の変形を抑制しつつ、柱3とブレース4とを適切に締結することができる。
【0046】
また、柱3は、ブレース4と同じ側に側面3bを有する柱である。一対の第1延出部21,22及び補強部23の各々は、側面3bに対して溶接されている。
これにより、ブレース4から付与される力を、溶接によって形成された柱3と第1延出部21,22又は補強部23との接合部を通じて、一対の第1延出部21,22及び補強部23の各々から柱3の側面3bに確実に分散することができる。この結果、柱3の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0047】
また、柱3は、中空型で且つ角筒形状の柱であり、一対の第1延出部21,22の各々は、柱3の角部3cから延出している。
これにより、ブレース4から付与される力を、柱3の中でも変形しづらい角部3cに対して伝達することができるので、柱3の変形をさらに効果的に抑制することができる。
【0048】
また、柱3の側部3aから延出する補強部23の第1延出量は、柱3の側部3aから延出する一対の第1延出部21,22の各々の第2延出量の半分以上である。
これにより、一対の第1延出部21,22及び補強部23から構成される第1締結具20の剛性を向上させることができる。その結果、締結ユニット10が適切に機能するので、柱3とブレース4とを適切に締結することができる。
【0049】
また、一対の第1延出部21,22の各々は、対応する第2延出部33,34と係合するための係合孔21a,22aを有する。係合孔21a,22aの位置は、補強部23の延出方向において、補強部23が延出する範囲内に含まれている。
これにより、一対の第1延出部21,22の各々について、応力が集中する係合孔21a,22aの周辺の剛性が向上し、第1締結具20の変形を抑制することができる。このため、締結ユニット10が適切に機能するので、柱3とブレース4とを適切に締結することができる。
【0050】
また、一対の第1延出部21,22の各々について、ブレース4が位置する側の角が面取りされて、面取り部24が設けられている。
これにより、締結ユニット10の周辺の部位との干渉を避けることができる。本実施形態においては、梁2と柱3とを接続するための部材、具体的には、図3に示すように、締結ユニット10の上方に位置するボルトB等との干渉を避けることができる。
【0051】
<<その他の実施形態について>>
上記の実施形態では、補強部23は、図3に示すように、平板状をなしており、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びているとした。ただし、これに限られず、図5に示す締結ユニット10Aのように、補強部23Aが、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びている平坦部分に加え、平坦部分の先端から下方に向かって傾斜した傾斜部分を有してもよい。
これにより、一対の第1延出部の各々の係合孔の周囲を、より広範囲にわたって補強部23Aで囲むことができる。この結果、応力が集中する係合孔の周辺の剛性がさらに向上し、第1締結具の変形をさらに抑制することができる。このため、締結ユニット10Aがさらに適切に機能するので、柱3とブレース4とをさらに適切に締結することができる。
【0052】
また、上記の実施形態では、一対の第1延出部21,22の各々は、図4に示すように、一対の第2延出部33,34のうちの対応する第2延出部の外側に位置しているとした。ただし、これに限られず、一対の第1延出部の各々は、一対の第2延出部のうちの対応する第2延出部の内側に位置してもよい。あるいは、第1延出部と第2延出部とが交互に並んで位置してもよく、具体的には、一方の第1延出部、一方の第2延出部、他方の第1延出部、及び他方の第2延出部の順に柱3の幅方向に並んで位置してもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、一対の第1延出部21,22の各々は、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びているとした。また、一対の第2延出部33,34の各々は、ベース部31から第1締結具20側に向かってブレース4の延出方向に沿って直線状に延びているとした。
ただし、これに限られず、図6に示す締結ユニット10Bのように、一対の第1延出部21B,22Bの各々が、側面3bから梁2の延出方向に直線状に延びている平坦部分と、平坦部分の先端から柱3の幅方向の内側に向かって傾斜した傾斜部分とを有してもよい。また、一対の第2延出部33B,34Bの各々が、ベース部31Bから柱3の幅方向における外側に広がるようにブレース4の延出方向に傾斜して延びている傾斜部分と、傾斜部分の先端からブレース4の延出方向に直線状に延びている平坦部分とを有してもよい。
これにより、ブレース4から付与される引張側の力に起因して発生する第2締結具30の内側に向かう変形を抑制することができる。
【0054】
また、上記の実施形態では、締結ユニット10は、柱3とブレース4とを締結するとしたが、これに限られず、図7に示す締結ユニット10Cのように、梁2とブレース4とを締結してもよい。この場合、第1締結具20Cは、梁2において柱3と同じ側に位置する側部、すなわち、梁2の下端部に取り付けられる。一対の第1延出部21C,22Cの各々は、梁2の下端部から下方に延出する。また、補強部23Cは、梁2の下端部から下方に延出し且つ一対の第1延出部21C,22C同士を連絡する。より詳しくは、補強部23Cは、梁2の延出方向における一対の第1延出部21C,22Cの端同士、図7に示す例では、一対の第1延出部21C,22Cの柱3側の端同士を連絡する。
【符号の説明】
【0055】
1 建物
2 梁
3 柱
3a 側部
3b 側面
3c 角部
4 ブレース
4a 端部
10,10A,10B,10C 締結ユニット
20,20C 第1締結具
21,22,21B,22B,21C,22C 第1延出部
21a,22a,33a,34a 係合孔
23,23A 補強部
24 先端部
30 第2締結具
31,31B ベース部
32 固定具
33,34,33B,34B 第2延出部
A 構面
B ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7