(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122282
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】シールドパッケージとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/00 20060101AFI20240902BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240902BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H05K9/00 X
H01L23/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029734
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中園 元
【テーマコード(参考)】
4M109
5E321
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109ED02
4M109ED05
4M109ED07
4M109EE07
5E321AA22
5E321BB25
5E321BB32
5E321GG01
5E321GG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた外観性とシールド性を有し、パッケージとシールド層の密着性が良好なシールドパッケージを提供する。
【解決手段】シールドパッケージは、基板1上に電子部品2が搭載され、この電子部品が封止材4によって封止されたパッケージと、パッケージ上に、順に積層された第1シールド層5と第2シールド層6とを有する。第1シールド層は、エポキシ樹脂A40~97質量部と、硬化剤B3~60質量部とを、合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Xと、金属粒子400~12500質量部と、を含有する。第2シールド層は、エポキシ樹脂40~97質量部と、硬化剤3~60質量部とを、合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Yと、カーボン粒子25~250質量部とを含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージと、
前記パッケージ上に、順に積層された第1シールド層と第2シールド層とを有し、
前記第1シールド層が
(A)エポキシ樹脂40~97質量部と、(B)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Xと、
(C)金属粒子400~12500質量部とを含有し、
前記第2シールド層が
(D)エポキシ樹脂40~97質量部と、(E)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Yと、
(F)カーボン粒子25~250質量部とを含有する、シールドパッケージ。
【請求項2】
前記金属粒子(C)が、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銀被覆銅合金粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のシールドパッケージ。
【請求項3】
前記カーボン粒子(F)が、カーボンブラック、黒鉛、及びグラフェンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のシールドパッケージ。
【請求項4】
基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージ上に、
(A)エポキシ樹脂40~97質量部と、(B)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(C)金属粒子400~12500質量部とを含有する導電性樹脂組成物xを塗布し、硬化させて第1シールド層を形成する工程と、
前記第1シールド層上に、(D)エポキシ樹脂40~97質量部と、(E)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(F)カーボン粒子25~250質量部とを含有する導電性樹脂組成物yを塗布し、硬化させて第2シールド層を形成する工程とを有する、シールドパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージと、パッケージを被覆するシールド層を有するシールドパッケージとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタブレット端末等の電子機器においては、近年、多数の電子部品と共に、RFID(Radio Frequency IDentification)や非接触充電機能等、10MHz~1000MHzの電磁波を利用した無線通信機能が搭載されている。このような電子部品は、電磁波に対する感受性が高く、外部からの電磁波に曝されると誤動作を起こしやすいという問題を有する。
【0003】
一方で、電子機器の小型軽量化と高機能化を両立させるため、電子部品の実装密度を高めることが求められている。しかしながら、実装密度を高めると電磁波の影響を受ける電子部品も増えてしまうという問題がある。
【0004】
従来から、この課題を解決する手段として、電子部品をパッケージごとシールド層で覆うことで、電子部品に対する電磁波の侵入を防止した、いわゆるシールドパッケージが知られている。例えば特許文献1には、パッケージの表面に、熱硬化性樹脂からなるバインダー成分に金属粒子を配合した導電性組成物からなるシールド層を有するシールドパッケージが記載されている。しかしながら、シールド層を形成したパッケージは、シールド層を構成する導電性組成物の硬化時や部品実装工程のリフロー時に加熱され、その際、シールド層が変色するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2019/073809A
【特許文献2】WO2017/170395A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、優れた外観性とシールド性を有し、シールド層とパッケージとの密着性が良好なシールドパッケージを提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献2には、塗布安定性を改善する目的で、シールド層を構成する導電性塗料に炭素粉末を配合しているが、シールド層のシールド性が不十分であり、外観性に関する記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージと、
前記パッケージ上に、順に積層された第1シールド層と第2シールド層とを有し、
前記第1シールド層が
(A)エポキシ樹脂40~97質量部と、(B)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Xと、
(C)金属粒子400~12500質量部とを含有し、
前記第2シールド層が
(D)エポキシ樹脂40~97質量部と、(E)硬化剤3~60質量部とを含有するバインダー成分100質量部が硬化してなる樹脂硬化物Yと、
(F)カーボン粒子25~250質量部とを含有する、シールドパッケージ。
[2] 前記金属粒子(C)が、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銀被覆銅合金粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載のシールドパッケージ。
[3] 前記カーボン粒子(F)が、カーボンブラック、黒鉛、及びグラフェンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のシールドパッケージ。
[4] 基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージ上に、
(A)エポキシ樹脂40~97質量部と、(B)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(C)金属粒子400~12500質量部とを含有する導電性樹脂組成物xを塗布し、硬化させて第1シールド層を形成する工程と、
前記第1シールド層上に、(D)エポキシ樹脂40~97質量部と、(E)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(F)カーボン粒子25~250質量部とを含有する導電性樹脂組成物yを塗布し、硬化させて第2シールド層を形成する工程とを有する、シールドパッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシールドパッケージによれば、優れた外観性とシールド性を有し、パッケージとシールド層との優れた密着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】シールドパッケージの製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】個別化前のシールドパッケージの例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るシールドパッケージは、基板上に電子部品が搭載され、この電子部品が封止材によって封止されたパッケージと、パッケージ上に、順に積層された第1シールド層と第2シールド層とを有するものである。
【0012】
〈第1シールド層〉
上記第1シールド層は、(A)エポキシ樹脂40~97質量部と、(B)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(C)金属粒子400~12500質量部とを含有する導電性樹脂組成物xが硬化してなるものである。導電性樹脂組成物xは溶剤を含有するものであってもよいが、硬化時に溶剤は揮発するため、第1シールド層は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有するバインダー成分が硬化してなる樹脂硬化物Xと、それに分散した金属粒子(C)とを含有するものである。
【0013】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xのバインダー成分は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を必須の成分とするものであり、必要に応じてアクリル系樹脂や(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをさらに含むこともできる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基を総称するものとし、「(メタ)アクリロイル基を有するモノマー」は、オリゴマーや分子量が1000未満であるプレポリマーも含むものとする。
【0014】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xのエポキシ樹脂(A)は、特に限定されず、例えばグリシジルアミン系エポキシ樹脂やグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、バインダー成分100質量部において、40~97質量部であり、45~95質量部であることが好ましく、50~92質量部であることがより好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量が40質量部以上である場合、優れたシールド性が得られやすく、97質量部以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0016】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xにおいては、エポキシ樹脂(A)を硬化させるための硬化剤(B)を使用する。硬化剤(B)としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ポリイソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
アミン系硬化剤の例としては、脂肪族アミン系硬化剤(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどの(ポリ)アルキレンポリアミンなど)、
脂環族アミン系硬化剤(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどの単環式脂肪族ポリアミン;ノルボルナンジアミンなどの架橋環式ポリアミンなど)、
芳香族アミン系硬化剤(例えば、ポリアミノアレーン(例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミンなどのジアミノアレーン、好ましくはジアミノC6-10アレーン)、ポリアミノ-アルキルアレーン(例えば、ジエチルトルエンジアミンなどのジアミノ-アルキルアレーン、好ましくはジアミノ-モノ乃至トリC1-4アルキルC6-10アレーン)、ポリ(アミノアルキル)アレーン(例えば、キシリレンジアミンなどのジ(アミノアルキル)アレーン、好ましくはジ(アミノC1-4アルキル)C6-10アレーン)、ポリ(アミノアリール)アルカン(例えば、ジアミノジフェニルメタンなどのジ(アミノアリール)アルカン、好ましくはジ(アミノC6-10アリール)C1-6アルカン)、ポリ(アミノ-アルキルアリール)アルカン(例えば、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)などのジ(アミノ-アルキルアリール)アルカン、好ましくはジ(アミノ-C1-4アルキルC6-10アリール)C1-6アルカン)、ビス(アミノアリールアルキル)アレーン(例えば、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)]ベンゼンなどのビス(アミノC6-10アリールC1-10アルキル)C6-10アレーンなど)、ジ(アミノアリール)エーテル(例えば、ジアミノジフェニルエーテルなどのジ(アミノC6-12アリール)エーテル、好ましくはジ(アミノC6-10アリール)エーテルなど)、ジ(アミノアリールオキシ)アレーン(例えば、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどのジ(アミノC6-12アリールオキシ)C6-12アレーン、好ましくはジ(アミノC6-10アリールオキシ)C6-10アレーン)、ジ(アミノアリール)スルホン(例えば、ジアミノジフェニルスルホンなどのジ(アミノC6-12アリール)スルホン、好ましくはジ(アミノC6-10アリール)スルホンなど)など)が挙げられる。
【0018】
イミダゾール系硬化剤の例としては、イミダゾール類(例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールなどのアリールイミダゾール)、イミダゾール類の塩(例えば、ギ酸塩、フェノール塩、フェノールノボラック塩などの有機塩;炭酸塩などの塩)、エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどのポリエポキシ化合物)とイミダゾール類との反応物(又は付加物)など)が挙げられる。
【0019】
ポリイソシアネート硬化剤の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物など)が挙げられる。
【0020】
ブロックイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネートを、封止剤でブロック化することによって調製することができる。封止剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
【0021】
硬化剤(B)の含有量は、バインダー成分100質量部において、3~60質量部であり、5~55質量部であることが好ましく、8~50質量部であることがより好ましい。硬化剤(B)の含有量が3質量部以上である場合、優れた密着性が得られやすい。硬化剤(B)の含有量が60質量部以下である場合、優れたシールド性が得られやすい。
【0022】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xに使用することができるアクリル系樹脂とは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを構成モノマーとして少なくとも含む重合体であり、特に限定されないが、例えば、構成モノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、及びメタクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1種を含有する重合体を用いることができる。構成モノマーとしては、本発明の目的に反しない範囲でアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル以外を含んでいてもよい。2種以上のモノマーを含有する場合、交互共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0023】
アクリル系樹脂を使用する場合、バインダー成分におけるアクリル系樹脂の含有割合は、5~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。
【0024】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xに使用することができる(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されない。このような化合物の例としては、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
【0025】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを使用する場合、バインダー成分における(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの含有割合は、5~50質量%であることが好ましく、より好ましくは10~45質量%である。(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが5質量%以上である場合、導電性樹脂組成物を速やかに硬化させやすく、さらに硬化時の導電性樹脂組成物のタレを防止しやすい。また、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが50質量%以下である場合、パッケージとシールド層との密着性が良好となりやすい。
【0026】
バインダー成分には、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外に、導電性樹脂組成物の物性を向上させることを目的として、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等を改質剤として添加することができる。
【0027】
バインダー成分に改質剤をブレンドする場合の配合比は、シールド層とパッケージとの密着性の観点から、バインダー成分に対して40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下とする。
【0028】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xにおける金属粒子(C)は、特に限定されないが、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子等が挙げられ、これらの中でも、銅粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子であることが好ましい。
【0029】
銀被覆銅粒子は、銅粒子と、この銅粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものであり、銀被覆銅合金粒子は、銅合金粒子と、この銅合金粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものである。銅合金粒子は亜鉛0.5~25質量%及び/又はニッケル0.5~30質量%を含有し、残部が銅からなり、残部の銅は不可避不純物を含んでいてもよい。銀被覆銅粒子、及び銀被覆銅合金粒子における銀含有層の含有割合は特に限定されないが、4~24質量%であることが好ましい。銀含有層における銀の含有量は特に限定されないが90~100質量%であることが好ましい。
【0030】
また金属粒子(C)の形状は、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状等であってもよく、この中でも、形状が球状やフレーク状(鱗片状)の金属粒子であることが好ましい。なお、球状には、略真球のもの(アトマイズ粉)だけでなく、略多面体状の球体(還元粉)や、不定形状(電解粉)等の略球状のものを含む。
【0031】
導電性樹脂組成物xにおける金属粒子(C)の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、400~12500質量部であり、500~12300質量部であることが好ましく、600~12000質量部であることがより好ましい。金属粒子(C)の含有量が、400質量部以上である場合、優れたシールド性が得られやすく、12500質量部以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0032】
また、金属粒子(C)の平均粒子径は、1~20μmであることが好ましい。金属粒子(C)の平均粒子径が1μm以上である場合、金属粒子の分散性が良好で凝集が防止でき、また酸化されにくい。金属粒子(C)の平均粒子径が20μm以下である場合、導電性樹脂組成物xが硬化し、シールド層となった際に、パッケージのグランド回路との接続性が良好で優れたシールド性が得られやすい。
【0033】
ここで、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で測定した、個数基準の平均粒子径D50(メジアン径)の粒子径をいう。
【0034】
第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物をスプレー噴霧によりパッケージ表面に均一に塗布できるようにするため、いわゆる導電性ペーストよりも低粘度であることが好ましい。導電性樹脂組成物の粘度は塗布に使用する機器に応じて適宜調整するのが好ましく、特に限定されないが、一般的な目安としては、以下に述べる通りである。粘度の測定方法も限定されるものではないが、導電性樹脂組成物が低粘度であれば円錐平板型回転粘度計(いわゆるコーン・プレート型粘度計)で測定することができ、高粘度であれば単一円筒形回転粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)で測定することができる。
【0035】
円錐平板型回転粘度計で測定する場合は、ブルックフィールド(BROOK FIELD)社のコーンスピンドルCP40(コーン角度:0.8°、コーン半径:24mm)を用いて、10rpmで測定した粘度が50~5000mPa・sであることが好ましく、100~3000mPa・sであることがより好ましい。粘度が50mPa・s以上である場合、塗布面が水平でない場合における液ダレを防止してシールド層をムラなく形成しやすい。なお、50mPa・s付近やそれよりも低粘度の場合、所望の厚さの均一な塗膜を得るには、1回の塗布量を少なくして薄膜を形成し、その上にまた薄膜を形成する操作をくり返す、いわゆる重ね塗りを行う方法が有効である。なお、円錐平板型回転粘度計で測定可能な粘度であれば、高くとも問題はない。
【0036】
単一円筒形回転粘度計で測定する場合はローターNo.4を用いて10rpmで測定した粘度が3~50dPa・sであることが好ましく、5~45dPa・sであることがより好ましい。粘度が上記範囲内である場合、スプレーノズルの目詰まりを防ぎ、ムラなくシールド層を形成しやすい。なお、単一円筒形回転粘度計で測定可能な粘度であれば、低くとも問題はない。
【0037】
導電性樹脂組成物の粘度は樹脂成分の粘度や導電性フィラーの含有量等により異なるものであり、上記範囲内にするために、溶剤を使用するものであってもよい。本発明において使用可能な溶剤は、特に限定されないが、例えばメチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、アセトン、アセトフェノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキテル、酢酸メチル、酢酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0038】
導電性樹脂組成物xにおける溶剤の含有量は、特に限定されないが、目安としてはバインダー成分100質量部に対して100~4000質量部であることが好ましく、200~3500質量部であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内である場合、スプレー塗布による優れた塗布安定性と、安定したシールド効果が得やすくなる。
【0039】
また、第1シールド層に適用する導電性樹脂組成物xには、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を加えることができる。
【0040】
〈第2シールド層〉
上記第2シールド層は、(D)エポキシ樹脂40~97質量部と、(E)硬化剤3~60質量部とを合計量で100質量部を超えない範囲で含有するバインダー成分100質量部と、(F)カーボン粒子25~250質量部とを含有する導電性樹脂組成物yが硬化してなるものである。導電性樹脂組成物yは溶剤を含有するものであってもよいが、硬化時に溶剤は揮発するため、第2シールド層は、エポキシ樹脂(D)と硬化剤(E)とを含有するバインダー成分が硬化してなる樹脂硬化物Yと、それに分散したカーボン粒子(F)とを含有するものである。
【0041】
第2シールド層に適用する導電性樹脂組成物yのバインダー成分は、導電性樹脂組成物xと同様のものを使用することができる。
【0042】
第2シールド層に適用する導電性樹脂組成物yにおけるカーボン粒子(F)は、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の結晶性炭素のほか、カーボンブラック等の無定形炭素(アモルファス炭素)も使用することができる。これらの中でも、導電性樹脂組成物をパッケージシールド用に使用した場合にシールドパッケージの接続安定性が良好であり、生体への安全性の問題もない点から、カーボンブラック、グラフェン又はグラファイト(黒鉛)が好ましい。これらカーボン粒子(F)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、カーボン粒子(F)は本発明の目的に反しない範囲内で炭素以外の元素を含んでいてもよく、不可避不純物のみならず、例えば製造過程において必要に応じて添加される添加剤等を含んでいてもよい。
【0043】
グラファイト(黒鉛)は、炭素の六角板状結晶が積層してなる鉱物であり、グラフェンは層状のグラファイトが剥がれて原子1個分の単一層となったものである。グラファイト及びグラフェンは、市販されているものを特に制限なく使用できる。また、カーボンブラックも、顔料や導電性フィラーとして従来から使用されているものを特に制限なく使用可能である。
【0044】
カーボン粒子(F)の形状は、特に限定されないが、球状やフレーク状(鱗片状)であることが好ましい。
【0045】
カーボン粒子(F)がカーボンブラックである場合、その平均粒子径は、特に限定されないが、10nm~100nmであることが好ましい。カーボンブラックの平均粒子径が10nm以上である場合、カーボンブラックの分散性が良好となり、凝集を防止しやすい。カーボンブラックの平均粒子径が100nm以下である場合、本発明の第2シールド層のカーボン粒子同士が密接に硬化し、優れた外観性とシールド性が得られやすい。
【0046】
カーボン粒子(F)が黒鉛、グラフェンである場合、その平均粒子径は1~20μmであることが好ましい。平均粒子径が1μm以上である場合、黒鉛、又はグラフェンの分散性が良好となり、凝集を防止しやすい。黒鉛、又はグラフェンの平均粒子径が20μm以下である場合、本発明の第2シールド層のカーボン粒子同士が密接に硬化し、優れた外観性とシールド性が得られやすい。
【0047】
導電性樹脂組成物yにおけるカーボン粒子(F)の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、25~250質量部であり、30~200質量部であることが好ましく、35~150質量部であることがより好ましい。カーボン粒子(F)の含有量が25質量部以上である場合、優れた外観性とシールド性が得られやすく、250質量部以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0048】
第2シールド層に適用する導電性樹脂組成物yは、導電性樹脂組成物yをスプレー噴霧によりパッケージ表面に均一に塗布できるようにするため、いわゆる導電性ペーストよりも低粘度であることが好ましい。導電性樹脂組成物yの粘度は塗布に使用する機器に応じて適宜調整するのが好ましく、特に限定されないが、一般的な目安としては、上記第1シールド層において記載した通りである。
【0049】
第2シールド層に適用する導電性樹脂組成物yの溶剤は、導電性樹脂組成物xの溶剤と同様のものを使用することができる。
【0050】
導電性樹脂組成物yにおける溶剤の含有量は、特に限定されないが、目安としてはバインダー成分100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、20~450質量部であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内である場合、スプレー塗布による優れた塗布安定性と、安定したシールド効果が得やすくなる。
【0051】
また、第2シールド層に適用する導電性樹脂組成物yには、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を加えることができる。
【0052】
〈シールドパッケージの製造方法〉
本発明のシールドパッケージの製造方法の一実施形態を、図を用いて説明する。
【0053】
まず、
図1(a)に示すように、基板1に複数の電子部品(IC等)2を搭載し、これら複数の電子部品2間にグランド回路パターン(銅箔)3が設けられたものを用意する。
【0054】
同図(b)に示すように、これら電子部品2及びグランド回路パターン3上に封止材4を充填して硬化させ、電子部品2を封止する。
【0055】
同図(c)において矢印で示すように、複数の電子部品2間で封止材4を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって基板1の各電子部品のパッケージを個別化させる。符号Aは、それぞれ個別化したパッケージを示す。溝を構成する壁面からはグランド回路の少なくとも一部が露出しており、溝の底部は基板を完全には貫通していない。
【0056】
一方で、上述したエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び金属粒子(C)を所定量混合し、第1シールド層用の導電性樹脂組成物xを用意する。
【0057】
また、上述したエポキシ樹脂(D)、硬化剤(E)、及びカーボン粒子(F)を所定量混合し、第2シールド層用の導電性樹脂組成物yを用意する。
【0058】
第1シールド層用の導電性樹脂組成物xを公知のスプレーガン等によって霧状に噴射し、パッケージ表面にまんべんなく塗布する。このときの噴射圧力や噴射流量、スプレーガンの噴射口とパッケージ表面との距離は、必要に応じて適宜設定される。
【0059】
上記導電性樹脂組成物xが塗布されたパッケージを加熱して導電性樹脂組成物xを硬化させ、同図(d)に示すように、パッケージ表面に第1シールド層(導電性塗膜)5を形成させる。このときの加熱条件は適宜設定することができる。
【0060】
第2シールド層用の導電性樹脂組成物yも、第1シールド層用の導電性樹脂組成物xと同様に塗布し、導電性樹脂組成物yが塗布されたパッケージを加熱して溶剤を十分に乾燥させた後、導電性樹脂組成物yを加熱硬化させ、同図(e)に示すように、パッケージ表面に第2シールド層(導電性塗膜)6を形成させる。
図2はこの状態における基板を示す平面図である。符号B
1,B
2,…B
9は、個片化される前のシールドパッケージをそれぞれ示し、符号11~19はこれらシールドパッケージ間の溝をそれぞれ表す。
【0061】
図1(f)において矢印で示すように、個片化前のパッケージの溝の底部に沿って基板をダイシングソー等で切断することにより個片化されたシールドパッケージBが得られる。
【0062】
このようにして得られる個片化されたシールドパッケージBは、パッケージ表面(上面部、側面面部及び上面部と側面部との境界の角部のいずれも)に均一なシールド層が形成されているため、良好なシールド効果が得られる。また第1シールド層は、パッケージ表面との密着性や、パッケージの一部から露出したグランド回路の銅箔との密着性に優れ、第2シールド層は、第1シールド層との密着性に優れる。そのため、パッケージ表面に導電性樹脂組成物を塗布してシールド層を形成した後にパッケージを切断して個片化する際、切断時の衝撃によりシールド層がグランド回路から剥離することを防ぐことができる。
【0063】
シールド層の第1シールド層の厚さは、特に限定されないが、10~40μmであることが好ましく、12~35μmであることがより好ましい。第1シールド層の厚さが10μm以上である場合、優れたシールド性が得られやすく、40μm以下である場合、優れた密着性が得られやすい。
【0064】
シールド層の第2シールド層の厚さは、特に限定されないが、5~40μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好ましい。第2シールド層の厚さが5μm以上である場合、優れた外観性とシールド性が得られやすく、40μm以上である場合、優れた密着性を両立しやすい。
【実施例0065】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。また、以下において「部」又は「%」とあるのは、特にことわらない限り質量基準とする。
【0066】
表1,2に示す割合で各成分を配合して混合し、第1シールド層用の導電性樹脂組成物xと、第2シールド層用の導電性樹脂組成物yを得た。使用した各成分は以下の通りである。
【0067】
〈第1シールド層〉
・エポキシ樹脂(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「JER157S70」)40質量部、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-3905S」)30質量部、及び、ビスフェノールA型エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-4400」)30質量部の混合物
・硬化剤(B):ブロックイソシアネート硬化剤、東ソー(株)製、商品名「コロネート2554」
・金属粒子(C1):銀粒子、平均粒子径=5μm、球状
・金属粒子(C2):銀被覆銅粒子、平均粒子径=5μm、球状
・金属粒子(C3):銀被覆銅合金粒子、平均粒子径=5μm、球状
・溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0068】
〈第2シールド層〉
・エポキシ樹脂(D):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「JER157S70」)40質量部、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-3905S」)30質量部、及び、ビスフェノールA型エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-4400」)30質量部の混合物
・硬化剤(E):ブロックイソシアネート硬化剤、東ソー(株)製、商品名「コロネート2554」
・カーボン粒子(F1):カーボンブラック、平均一次粒子径=120nm
・カーボン粒子(F2):黒鉛、平均粒子径=5μm、球状
・カーボン粒子(F3):グラフェン、平均粒子径=5μm
・溶剤:1-メトキシ-2-プロパノール
【0069】
実施例及び比較例の評価を以下の通り行った。結果を表1,2に示す。
【0070】
(1)シート抵抗
各実施例及び各比較例に係る導電性樹脂組成物を、Nordson Asymtek社製スプレー装置を用いて、厚さ20μmになるようにPI(ポリイミド)シート150mm×150mm角に以下のスプレー条件で塗布し、100℃で10分間加熱した後、170℃で50分間加熱し、導電性樹脂組成物の硬化物aを得た。得られた硬化物について表面抵抗測定治具(ミリオームハイテスタ)を用いてシート抵抗値を測定した。シート抵抗値3Ω以下であれば導電性(シールド性)に優れていると評価した。
<スプレー条件>
Nordson Asymtek社製「SL-940E」
ペースト押し出し圧力:2.8Psi
アシストエアー(噴霧化エアー):5Psi
パッケージ表面の温度:22℃
パッケージ表面からノズルまでの距離:約150mm
スプレーヘッド移動ピッチ:3mm
スプレーヘッド移動スピード:250mm/秒
スプレー回数:4回
【0071】
(2)電界波シールド効果
上記シート抵抗の評価で作製した硬化物をKEC法により1GHz当たりの電界シールド効果を測定した。1GHz当たりでは、電界シールド効果が50dB以上のものを良好な電界シールド効果を有するものと評価した。
【0072】
(3)密着性
シールド層とパッケージ表面又はグランド回路との密着性を、JIS K 5600-5-6:1999(クロスカット法)に基づき評価した。具体的には、グランド回路との密着性評価用に銅張積層板を用意し、パッケージ表面との密着性評価用のモールド樹脂を用意した。それぞれに、幅5cm、長さ10cmの開口部が形成されるようにポリイミドテープでマスキングし、各実施例及び各比較例に係る導電性樹脂組成物を、Nordson Asymtek社製スプレー装置を用いて、導電性樹脂組成物をスプレー塗布した。その後、100℃で10分間加熱した後、170℃で50分間加熱することにより導電性樹脂組成物を硬化させ、ポリイミドテープを剥離し、厚み約20μmの塗膜を形成した。塗膜が形成された銅箔、及び、モールド樹脂上でクロスカット試験を行った。密着性の評価は、次の基準で行った。
○:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがなかった。
×:カットの交差点において塗膜の小さなはがれが生じていた。もしくは、カットの縁部分、交差点、全面的にはがれが生じていた。
【0073】
(4)変色評価
上記シート抵抗の評価で作製した硬化物aのL1*値、a1*値、b1*値を色差計を用いて測定した。さらに、加熱条件を200℃で24時間としたこと以外は上記シート抵抗評価で作製した硬化物bと同様にして作製し、当該硬化物のL2*値、a2*値、b2*値を色差計を用いて測定した。
次に硬化物a(100℃で10分間加熱後、170℃で50分間加熱)と硬化物b(200℃で24時間加熱)の色の差ΔL=(L2*値-L1*値)、Δa=(a2*値-a1*値)、Δb=(b2*値-b1*値)を計算し、色の違いを表す色差ΔE=[(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2]0.5を算出した。変色評価については、ΔEが3以下であれば変色が抑制されているため外観性に優れていると評価し「○」と示し、3を超える場合は外観性が劣っていると評価し「×」と示した。
【0074】
【0075】
【0076】
表1,2に示す結果から、各実施例のシールド層は優れた外観性とシールド性を有し、シールド層とパッケージ表面又はグランド回路との密着性も良好であることが確認された。
【0077】
比較例1は、第2シールド層を有しない例であり、外観性が劣っていた。
【0078】
比較例2は、第1シールド層を構成する導電性樹脂組成物xにおいて、エポキシ樹脂(A)の含有量が下限値未満であり、硬化剤(B)の含有量が上限値を超える例であり、シールド性が劣っていた。
【0079】
比較例3は、第1シールド層を構成する導電性樹脂組成物xにおいて、エポキシ樹脂(A)の含有量が上限値を超え、硬化剤(B)の含有量が下限値未満である例であり、密着性が劣っていた。
【0080】
比較例4は、第1シールド層を構成する導電性樹脂組成物xにおいて、金属粒子(C)の含有量が下限値未満の例であり、シールド性が劣っていた。
【0081】
比較例5は、第1シールド層を構成する導電性樹脂組成物xにおいて、金属粒子(C)の含有量が上限値を超える例であり、密着性が劣っていた。
【0082】
比較例6は、第1シールド層を有しない例であり、シールド性が劣っていた。
【0083】
比較例7は、第2シールド層を構成する導電性樹脂組成物yにおいて、エポキシ樹脂(D)の含有量が下限値未満であり、硬化剤(E)の含有量が上限値を超える例であり、シールド性が劣っていた。
【0084】
比較例8は、第2シールド層を構成する導電性樹脂組成物yにおいて、エポキシ樹脂(D)の含有量が上限値を超え、硬化剤(E)の含有量が下限値未満の例であり、密着性が劣っていた。
【0085】
比較例9は、第2シールド層を構成する導電性樹脂組成物yにおいて、カーボン粒子(F)の含有量が下限値未満の例であり、シールド性、及び外観性が劣っていた。
【0086】
比較例10は、第2シールド層を構成する導電性樹脂組成物yにおいて、カーボン粒子(F)の含有量が上限値を超える例であり、密着性が劣っていた。