(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122288
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/06 20060101AFI20240902BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240902BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240902BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q7/06
H01Q1/24 C
H01Q1/38
G06K19/077 196
G06K19/077 272
G06K19/077 296
G06K19/077 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029743
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J047AB11
(57)【要約】
【課題】基材に設けられたコイルパターン及び基材を覆う磁性体を備えるアンテナ装置を改良する。
【解決手段】アンテナ装置1は、基材20の主面22を覆い貫通孔31を有する磁性体30と、Z方向から見て磁性体30と重なるよう基材20に設けられたコイルパターンCPとを備える。コイルパターンCPは、第1周回部110と、Z方向から見て第1周回部110の開口110a内に配置される第2周回部120とを含む。第2周回部120は、主面21に設けられ、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って周回する第1部分121と、主面22に設けられ、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って周回する第2部分122とを含む。これにより、第2周回部120のターン数を十分に確保することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側に位置する第1及び第2主面を有する基材と、
前記基材の前記第2主面を覆い、貫通孔を有する磁性体と、
前記基材の厚み方向から見て前記磁性体と重なるよう、前記基材の前記第1及び第2主面に設けられたコイルパターンと、を備え、
前記コイルパターンは、前記第1又は第2主面に設けられた第1周回部と、前記厚み方向から見て前記第1周回部の開口内に配置される第2周回部とを含み、
前記第2周回部は、前記第1主面に設けられ、前記磁性体の前記貫通孔の周囲に沿って周回する第1部分と、前記第2主面に設けられ、前記磁性体の前記貫通孔の周囲に沿って周回する第2部分とを含む、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第2周回部の前記第2部分は、前記基材の前記第2主面と接する底面と、前記底面の反対側に位置する上面と、前記底面と前記上面を繋ぐ側面とを有し、前記上面及び前記側面の少なくとも一部が前記磁性体で覆われるよう、少なくとも一部が前記磁性体に埋め込まれている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記基材は、前記磁性体の貫通孔と重なる貫通孔を有し、
前記厚み方向から見て、前記磁性体の貫通孔の内周面と前記基材の貫通孔の内周面が同一面を構成する、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2周回部の前記第1又は第2部分の最内周ターンの内周面は、前記厚み方向から見て、前記磁性体の貫通孔及び前記基材の貫通孔の内周面と同一面を構成する、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2周回部の前記第2部分と前記磁性体の間に位置する絶縁層をさらに備える、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記第2周回部の前記第2部分と前記磁性体の間における厚みよりも、前記第2部分のターン間における厚みの方が厚い、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2周回部の前記第2部分のターン数は、前記第2周回部の前記第1部分のターン数よりも少ない、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2周回部の前記第2部分は、前記第2周回部の前記第1部分よりもパターン幅が広く、前記第2周回部の前記第2部分を構成する1ターンが前記第2周回部の前記第1部分を構成する複数ターンと重なる、請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記磁性体の貫通孔は、前記基材から遠ざかるにつれて開口幅が狭くなる形状を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
貫通孔を有するメタルプレートと、
前記メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールと、を備え、
前記メタルプレートと前記アンテナ装置は、前記メタルプレートの貫通孔と前記磁性体の貫通孔が重なり、且つ、前記基材と前記メタルプレートの間に前記磁性体が挟まれるよう積層される、ICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材の両面に設けられたコイルパターンと、基材の他方の表面を覆う磁性体とを備えるアンテナ装置が開示されている。特許文献1に記載されたアンテナ装置は、ICモジュールとの磁気結合を可能とすべく、ICモジュールと重なる部分において磁性体に開口部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基材に設けられたコイルパターン及び基材を覆う磁性体を備える改良されたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、互いに反対側に位置する第1及び第2主面を有する基材と、基材の第2主面を覆い貫通孔を有する磁性体と、基材の厚み方向から見て磁性体と重なるよう基材の第1及び第2主面に設けられたコイルパターンとを備え、コイルパターンは、第1又は第2主面に設けられた第1周回部と、基材の厚み方向から見て第1周回部の開口内に配置される第2周回部とを含み、第2周回部は、第1主面に設けられ、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する第1部分と、第2主面に設けられ、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する第2部分とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基材に設けられたコイルパターンと基材を覆う磁性体を備える改良されたアンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略断面図である。
【
図4】
図4は、基材20の第1主面21に形成された導体パターンの略平面図である。
【
図5】
図5は、基材20の第2主面22に形成された導体パターンの略平面図である。
【
図6】
図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【
図7】
図7は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
【
図8】
図8は、変形例による第2周回部120の第1部分121のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図9】
図9は、変形例による第2周回部120の第2部分122のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図10】
図10は、変形例による第2周回部120の形成方法を説明するための略平面図である。
【
図11】
図11は、第1の変形例によるアンテナ装置1Aを備えるICカード3Aの構造を説明するための略断面図である。
【
図12】
図12は、アンテナ装置1Aの部分的な拡大図である。
【
図13】
図13は、第2の変形例によるアンテナ装置1Bを備えるICカード3Bの構造を説明するための略断面図である。
【
図14】
図14は、第3の変形例によるアンテナ装置1Cを備えるICカード3Cの構造を説明するための略断面図である。
【
図15】
図15は、第3の変形例によるアンテナ装置1Cにおける第2周回部120の第1部分121のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図16】
図16は、第3の変形例によるアンテナ装置1Cにおける第2周回部120の第2部分122のパターン形状を説明するための略平面図である。
【
図17】
図17は、第4の変形例によるアンテナ装置1Dを備えるICカード3Dの構造を説明するための略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態によるICカード3は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向、Z方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0011】
図2及び
図3は、それぞれ本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0012】
図2及び
図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、プラスチックプレート10、基材20、磁性体30及びメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。プラスチックプレート10は、磁束を妨げない樹脂材料からなる。プラスチックプレート10の表面は、ICカード3の裏面3bを構成する。メタルプレート40は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。メタルプレート40の表面はICカード3の上面3aを構成する。メタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にはICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体にメタルプレートが用いられたカードである。
【0013】
基材20は、絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、互いに反対側に位置する第1及び第2主面21,22に形成された導体パターンによってコイルパターンCPが構成される。導体パターンを構成する導電材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。フィルム状の基材20を構成する絶縁性樹脂材料の例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)などが挙げられる。基材20の第1主面21はプラスチックプレート10と向かい合い、基材20の第2主面22は磁性体30を介してメタルプレート40と向かい合う。プラスチックプレート10と基材20は、接着層61を介して接着される。なお、コイルパターンCPは、導体パターンと基材20との間に導電性樹脂によるパターンを含んでいてもよい。この場合、コイルパターンCPは、基材20の第1及び第2主面21,22に導電性樹脂によるパターンと導体パターンがこの順に積層された構造となる。
【0014】
基材20の他方の主面22は、磁性体30で覆われる。本実施形態においては、厚み方向であるZ方向から見た平面視で、基材20に設けられた導体パターンの全てが磁性体30と重なりを有している。磁性体30は、接着層などを用いて基材20に貼り付けられたシート状部材ではなく、磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を基材20の第2主面22に塗布し、これを硬化させたものである。このため、基材20の第2主面22に設けられるコイルパターンは、基材20の第2主面22と接する底面(XY面)の反対側に位置する上面(XY面)のみならず、底面と上面を繋ぐ側面(主にZ方向に沿った面)についても磁性体30で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体30に埋め込まれている。このように、本実施形態においては、磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を基材20の第2主面22に塗布することによって磁性体30を形成していることから、基材20と磁性体30と接着する接着層が不要であり、その分、全体の厚みを薄くすることができる。
【0015】
磁性体30は、接着層62を介してメタルプレート40に接着される。基材20及び磁性体30には、メタルプレート40の貫通孔41と重なる位置にそれぞれ貫通孔23,31が設けられている。本実施形態によるアンテナ装置1は、少なくとも基材20及びその主面21,22に形成されたコイルパターンCPと、基材20の第2主面22を覆う磁性体30によって構成される。メタルプレート40に設けられた貫通孔41と、基材20及び磁性体30に設けられた貫通孔23,31のサイズはほぼ同じである。したがって、基材20の主面21,22に形成されたコイルパターンCPは、Z方向から見た平面視でメタルプレート40の貫通孔41と重なりを有していない。
【0016】
このような構成を有するアンテナ装置1を作製する場合、まず、基材20の第1及び第2主面21,22に導体パターンを形成した後、基材20の他方の主面22の全面に磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を塗布し、これを硬化させることによって磁性体30を形成する。次に、金型などを用いて打抜き加工を行うことにより、基材20及び磁性体30に貫通孔23,31を一括形成する。これにより、Z方向から見て、基材20の貫通孔23の内周面と磁性体30の貫通孔31の内周面が同一面を構成する。
【0017】
図4は、基材20の第1主面21に形成された導体パターンの略平面図である。
【0018】
図4に示すように、基材20の第1主面21には、コイルパターンCPの第1周回部110、コイルパターンCPの第2周回部120の一部を構成する第1部分121、及びキャパシタパターン131,133が設けられている。第1周回部110は、基材20の外縁に沿って約3ターン周回するパターンであり、その開口110a内に第2周回部120の第1部分121及びキャパシタパターン131,133が配置されている。開口110aは、コイルパターンCPの第1周回部110の最内周ターンによって囲まれる領域である。第2周回部120の第1部分121は、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って約3ターン周回するパターンであり、そのパターン幅は第1周回部110のパターン幅よりも狭い。これにより、第2周回部120の第1部分121を構成する各ターンを、磁性体30の貫通孔31のエッジ近傍により近づけることができ、後述のICモジュール50におけるカップリングコイル53との結合が高められる。
【0019】
キャパシタパターン131は、第1周回部110の最内周ターンからX方向に分岐したパターンである。
図4に示す例では、第1周回部110の最内周ターンから16本のキャパシタパターン131が分岐しているが、キャパシタパターン131の数については特に限定されない。また、1本のキャパシタパターン131からは、複数のキャパシタパターン133が分岐している。キャパシタパターン133はいずれもY方向に延在する。
図4に示す例では、1本のキャパシタパターン131から12本のキャパシタパターン133が分岐しているが、キャパシタパターン133の数については特に限定されない。なお、キャパシタパターン131,133は、導体パターンと基材20との間に導電性樹脂によるパターンを含んでいてもよい。この場合、キャパシタパターン131,133は、基材20の第1主面21に導電性樹脂によるパターンと導体パターンがこの順に積層された構造となる。
【0020】
図5は、基材20の第2主面22に形成された導体パターンの略平面図である。
【0021】
図5に示すように、基材20の第2主面22には、Z方向から見た平面視で第1周回部110の開口110aと重なる位置に、第2周回部120の残りの部分を構成する第2部分122、キャパシタパターン132,134、及び接続パターン140が配置されている。第2周回部120の第2部分122は、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って約3ターン周回するパターンであり、そのパターン幅は第2周回部120の第1部分121のパターン幅と同じである。
【0022】
キャパシタパターン132,134の平面位置は、それぞれキャパシタパターン131,133と一致している。つまり、キャパシタパターン131,132は基材20を介して互いに対向し、キャパシタパターン133,134は基材20を介して互いに対向する。これにより、基材20の第1主面21に設けられたキャパシタパターン131,133と、基材20の第2主面22に設けられたキャパシタパターン132,134と、これらの間に位置する基材20によって、キャパシタCが構成される。このようなパターン形状を有するキャパシタCのキャパシタンスは、トリミングによっていくつかのキャパシタパターン133を除去することによって微調整することができる。なお、キャパシタパターン132,134は、導体パターンと基材20との間に導電性樹脂によるパターンを含んでいてもよい。この場合、キャパシタパターン132,134は、基材20の第2主面22に導電性樹脂によるパターンと導体パターンがこの順に積層された構造となる。
【0023】
図4及び
図5に示すように、第1周回部110の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体151を介してキャパシタパターン132,134に接続される。また、第1周回部110を構成するターンのうち、最外周ターンから数えて2番目のターン(最内周ターンから数えて2番目のターン)の一部が分断されている。分断された一方及び他方の端部は、基材20を貫通して設けられたビア導体152,153にそれぞれ接続される。ビア導体152は、接続パターン140の一端に接続される。接続パターン140の他端は、基材20を貫通して設けられたビア導体154に接続される。ビア導体154は、第2周回部120の第1部分121の外周端に接続される。第2周回部120の第1部分121の内周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体155に接続される。ビア導体155は、第2周回部120の第2部分122の内周端に接続される。第2周回部120の第2部分122の外周端は、ビア導体153に接続される。このように、第2周回部120は第1周回部110の外周端から内周端に至るターンの途中に接続されている。これにより、電流が流れやすい第2周回部120をコイルパターンの線路長における中央寄りに位置できるため、後述のICモジュール50におけるカップリングコイル53から受ける電力を効率的に使用できるため、通信距離を拡大できる。なお、接続パターン140は、導体パターンと基材20との間に導電性樹脂によるパターンを含んでいてもよい。この場合、接続パターン140は、基材20の第2主面22に導電性樹脂によるパターンと導体パターンがこの順に積層された構造となる。
【0024】
かかる構成により、コイルパターンCPの第1周回部110及び第2周回部120が直列に接続されるとともに、第1周回部110の両端にキャパシタCが接続されることになる。これらのコイルパターンCP及びキャパシタCは、外部回路に接続されない閉回路を構成する。キャパシタCは、共振周波数を調整することにより通信特性を高める役割を果たす。そして、この閉回路の共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定することで、近距離無線通信(NFC)が可能となる。
【0025】
図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0026】
図6に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなり、
図3に示すように、その一部が貫通孔23,31内に配置されても構わない。モジュール基板51の裏面側には、
図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、メタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と基材20の両面に設けられたコイルパターンCPの第2周回部120が電磁界結合する。そして、第2周回部120は、第1周回部110に直列接続されていることから、第1周回部110及び第2周回部120を介して、ICモジュール50が外部と通信可能となる。
【0027】
これにより、
図7に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、コイルパターンCPの第1周回部110及び第2周回部120を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。
【0028】
そして、本実施形態によるアンテナ装置1は、上述の通り、基材20の第2主面22の全面に磁性体30を塗布した後、打抜き加工によって貫通孔23,31を形成していることから、Z方向から見て基材20に形成される導体パターンが全て磁性体30と重なる。ここで、磁性体30は、コイルパターンCPの第1周回部110に対してはインダクタンスを高める磁路として機能する一方、コイルパターンCPの第2周回部120に対しては、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合を阻害する要因となり得る。しかしながら、本実施形態においては、基材20の両面にコイルパターンCPの第2周回部120が形成されており、これにより第2周回部120を磁性体30の貫通孔31に近接させつつ、そのターン数を十分に確保できることから、インダクタンスが高めることができるとともに、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合を確保することが可能となる。
【0029】
また、打抜き加工により、磁性体30に貫通孔31が形成されるだけでなく、基材20にも貫通孔23が形成されることから、ICチップ52を覆うドーム状の保護樹脂54が基材20と干渉することもない。尚、本実施形態においては、第1周回部110が基材20の第1主面21に形成されているが、第1周回部110を基材20の第2主面22に形成しても構わない。
【0030】
図8及び
図9は、それぞれ変形例による第2周回部120の第1及び第2部分121,122のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0031】
図8及び
図9に示す例では、第2周回部120の第1及び第2部分121,122の最内周ターン121a,122aのパターン幅が他のターンのパターン幅よりも広く、且つ、最内周ターン121a,122aの内周面が、基材20及び磁性体30の貫通孔23,31の内周面と同一面を構成している。つまり、第1及び第2部分121,122の最内周ターン121a,122aの内周エッジの位置は、基材20及び磁性体30の貫通孔23,31の内周エッジの平面位置と一致しており、第1及び第2部分121,122の最内周ターン121a,122aの内周エッジよりも内側には基材20が存在しない。
【0032】
このような構成は、
図10に示すように、例えば、第2周回部120の第1部分121の開口サイズが貫通孔23,31の開口サイズよりも小さくなるよう、第2周回部120の第1部分121の最内周ターン121aのパターン幅を選択的に拡大し、最内周ターン121aと重なる符号Aで示す位置で貫通孔23,31を打抜き加工することによって得られる。これにより、第2周回部120の抵抗値を低減することができるだけでなく、第1及び第2部分121,122の最内周ターン121a,122aの内周面が磁性体30で覆われることなく貫通孔23,31に露出することから、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合が高められる。
【0033】
図11は、本実施形態の第1の変形例によるアンテナ装置1Aを備えるICカード3Aの構造を説明するための略断面図である。
【0034】
図11に示すように、第1の変形例によるアンテナ装置1Aは、基材20の第2主面22に設けられた導体パターンを覆うよう、基材20の第2主面22上に絶縁層70が設けられている点において、
図3に示したアンテナ装置1と相違している。その他の基本的な構成は、
図3に示したアンテナ装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
絶縁層70は、少なくとも第2周回部120の第2部分122の表面を覆うことにより、第2部分122のターン間における磁性体30を介したショートを防止する役割を果たす。このような絶縁層70を設けることにより、第2部分122のターン間におけるスペースが狭く、且つ、磁性体30の絶縁性が低い場合であっても、ターン間におけるショートを防止することが可能となる。尚、本実施形態においては、磁性体30が塗布により形成されることから、絶縁層70が基材20と磁性体30を接着する機能を有している必要はない。また、絶縁層70を基材20の第2主面22の全面に形成する必要はなく、第2周回部120の第2部分122の表面に絶縁層70を選択的に形成しても構わない。また、本実施形態では、第2周回部120の第2部分122の表面を絶縁層70が覆っていることから、磁性体30は、第2周回部120の第2部分122の上面と側面の一部を覆うことになる。
【0036】
また、拡大図である
図12に示すように、絶縁層70の厚みは、第2周回部120の第2部分122と磁性体30の間における厚みT1よりも、第2部分122のターン間における厚みT2、つまり、基材20と磁性体30の間における厚みT2の方が厚くても構わない。これによれば、磁性体30の平坦性を高めることが可能となる。
【0037】
図13は、本実施形態の第2の変形例によるアンテナ装置1Bを備えるICカード3Bの構造を説明するための略断面図である。
【0038】
図13に示すように、第2の変形例によるアンテナ装置1Bは、基材20及び磁性体30に設けられた貫通孔23,31がテーパー状である点において、
図3に示したアンテナ装置1と相違している。その他の基本的な構成は、
図3に示したアンテナ装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
このようなテーパー形状は、貫通孔23,31を打抜き加工する際、磁性体30をダイ側、基材20の第1主面21をパンチ側とすることによって得られる。そして、このような形状とすることにより、磁性体30の貫通孔31の開口幅が基材20から遠ざかるにつれて狭くなることから、アンテナ特性の劣化を防止することができる。また、基材20の貫通孔23の開口幅も磁性体30に近づくにつれて狭くなる。
【0040】
図14は、本実施形態の第3の変形例によるアンテナ装置1Cを備えるICカード3Cの構造を説明するための略断面図である。また、
図15及び
図16は、それぞれ第3の変形例によるアンテナ装置1Cにおける第2周回部120の第1及び第2部分121,122のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0041】
図14~
図16に示すように、第3の変形例によるアンテナ装置1Cは、第2周回部120の第1及び第2部分121,122がいずれも約1ターンである点において、
図13に示した第2の変形例によるアンテナ装置1Bと相違している。その他の基本的な構成は、第2の変形例によるアンテナ装置1Bと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
第3の変形例が例示するように、第2周回部120の第1及び第2部分121,122が複数ターンである必要はなく、約1ターンであっても構わない。この場合、複数ターンである場合に問題となり得る、第2部分122のターン間における絶縁抵抗の低下が生じないことから、
図11に示した絶縁層70を追加する必要がない。また、第3の変形例では、第2周回部120の周回方向が第1周回部110の周回方向と逆である。このように、第2周回部120の周回方向は、第1周回部110の周回方向と同じである必要はない。
【0043】
図17は、本実施形態の第4の変形例によるアンテナ装置1Dを備えるICカード3Dの構造を説明するための略断面図である。
【0044】
図17に示すように、第4の変形例によるアンテナ装置1Dは、第2周回部120の第2部分122が約1ターンである点において、
図13に示した第2の変形例によるアンテナ装置1Bと相違している。その他の基本的な構成は、第2の変形例によるアンテナ装置1Bと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
第4の変形例が例示するように、第2周回部120の第1及び第2部分121,122のターン数が互いに異なっていても構わない。
図17に示す例では、第2周回部120の第2部分122のターン数が第2周回部120の第1部分121のターン数よりも少ない。これにより、複数ターンである場合に問題となり得る、第2部分122のターン間における絶縁抵抗の低下が生じないことから、
図11に示した絶縁層70を追加する必要がない。また、第2部分122の抵抗値を低減することができるとともに、第2部分122よりも磁性体30から離れた第1部分121のターン数が十分に確保されることから、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合が高められる。
【0046】
しかも、
図17に示す例では、第2周回部120の第2部分122のパターン幅は、第2周回部120の第1部分121のパターン幅よりも広く、第2周回部120の第2部分122を構成する1ターンが第2周回部120の第1部分121を構成する全てのターンと重なっている。これにより、第1部分121と第2部分122の相対的なパターンずれに起因する寄生容量の変動を抑制することができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0048】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、互いに反対側に位置する第1及び第2主面を有する基材と、基材の第2主面を覆い貫通孔を有する磁性体と、基材の厚み方向から見て磁性体と重なるよう基材の第1及び第2主面に設けられたコイルパターンとを備え、コイルパターンは、第1又は第2主面に設けられた第1周回部と、基材の厚み方向から見て第1周回部の開口内に配置される第2周回部とを含み、第2周回部は、第1主面に設けられ、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する第1部分と、第2主面に設けられ、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する第2部分とを含む。これによれば、第2周回部のターン数を十分に確保することができることから、第2周回部が磁性体と重なっている場合であっても、ICモジュールとの結合が可能となる。
【0050】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の第2部分は、基材の第2主面と接する底面と、底面の反対側に位置する上面と、底面と上面を繋ぐ側面とを有し、上面及び側面の少なくとも一部が磁性体で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体に埋め込まれていても構わない。これによれば、全体の厚みを薄くすることが可能となる。
【0051】
上記のアンテナ装置において、基材は、磁性体の貫通孔と重なる貫通孔を有し、厚み方向から見て、磁性体の貫通孔の内周面と基材の貫通孔の内周面が同一面を構成しても構わない。このような構造は、打抜き加工によって得ることができ、貫通孔内に配置されるICモジュールなどの機器と基材の干渉を防止することができる。
【0052】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の第1又は第2部分の最内周ターンの内周面は、厚み方向から見て、磁性体の貫通孔及び基材の貫通孔の内周面と同一面を構成しても構わない。これによれば、ICモジュールとの結合が高められる。
【0053】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の第2部分と磁性体の間に位置する絶縁層をさらに備えていても構わない。これによれば、第2部分を構成する各ターン間におけるショートを防止することが可能となる。この場合、絶縁層は、第2周回部の第2部分と磁性体の間における厚みよりも、第2部分のターン間における厚みの方が厚くても構わない。これによれば、磁性体の平坦性を高めることが可能となる。
【0054】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の第2部分のターン数は、第2周回部の第1部分のターン数よりも少なくても構わない。これによれば、第2部分の抵抗値を低減しつつ、第1部分のターン数を十分に確保することが可能となる。
【0055】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の第2部分は、第2周回部の第1部分よりもパターン幅が広く、第2周回部の第2部分を構成する1ターンが第2周回部の第1部分を構成する複数ターンと重なっても構わない。これによれば、第1部分と第2部分の相対的なパターンずれに起因する寄生容量の変動を抑制することができる。
【0056】
上記のアンテナ装置において、磁性体の貫通孔は、基材から遠ざかるにつれて開口幅が狭くなる形状を有していても構わない。これによれば、アンテナ特性の劣化を防止することができる。
【0057】
本開示の一実施態様によるICカードは、上記いずれかのアンテナ装置と、貫通孔を有するメタルプレートと、メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールとを備え、メタルプレートとアンテナ装置は、メタルプレートの貫通孔と磁性体の貫通孔が重なり、且つ、基材とメタルプレートの間に磁性体が挟まれるよう積層される。これによれば、コイルパターンの第2周回部とICモジュールを結合させることが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A~1D アンテナ装置
3,3A~3D ICカード
3a ICカードの上面
3b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 プラスチックプレート
20 基材
21 第1主面
22 第2主面
23 貫通孔
30 磁性体
31 貫通孔
40 メタルプレート
41 貫通孔
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61,62 接着層
70 絶縁層
110 第1周回部
110a 開口
120 第2周回部
121 第1部分
122 第2部分
121a,122a 最内周ターン
131~134 キャパシタパターン
140 接続パターン
151~155 ビア導体
C キャパシタ
CP コイルパターン
E 端子電極