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特開2024-122289アンテナ装置及びこれを備えるICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122289
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20240902BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240902BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240902BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q7/06
H01Q1/24 C
H01Q1/38
G06K19/077 196
G06K19/077 216
G06K19/077 272
G06K19/077 296
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029744
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J047AB11
(57)【要約】
【課題】コイルパターンの少なくとも一部が磁性体に埋め込まれた構造を有するアンテナ装置において、磁性体の両側に対して通信を可能とする。
【解決手段】アンテナ装置1は、貫通孔31を有する磁性体30と、上面S1、底面S2及び側面S3を有し、上面S1及び側面S3が磁性体30で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体30に埋め込まれたコイルパターンCPとを備える。コイルパターンCPは、第1周回部110と、第1周回部110から分岐し、第1周回部110とは逆方向に周回する第2周回部120を含み、第2周回部120は磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って周回する。これにより、磁性体の両側に対して通信が可能となる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する磁性体と、
厚み方向における一方側及び他方側にそれぞれ位置する上面及び底面と、前記上面と前記底面を繋ぐ側面とを有し、前記上面及び前記側面の少なくとも一部が前記磁性体で覆われるよう、少なくとも一部が前記磁性体に埋め込まれたコイルパターンと、を備え、
前記コイルパターンは、第1周回部と、平面視で前記第1周回部から前記貫通孔に向かって突出し、前記第1周回部とは逆方向に周回する第2周回部を含み、
前記第2周回部は、前記磁性体の前記貫通孔の周囲に沿って周回する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記コイルパターンの前記上面及び前記側面を覆う絶縁膜をさらに備え、
前記絶縁膜の一部は、前記コイルパターンのターン間に位置するスペースに配置される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記絶縁膜は、前記第2周回部と前記磁性体の間における厚みよりも、前記第2周回部のターン間における厚みの方が厚い、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コイルパターンの前記底面に沿って設けられた樹脂層をさらに備え、
前記コイルパターンの径方向における前記樹脂層の幅は、前記径方向における前記コイルパターンの幅よりも狭い、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記コイルパターンの断面は、前記底面から前記上面に向かって幅が小さくなる形状を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2周回部の最内周ターンのパターン幅は、前記第2周回部の他のターンのパターン幅よりも広い、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2周回部の最内周ターンの内周面は、前記磁性体の貫通孔の内周面と同一面を構成する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記磁性体の貫通孔は、前記コイルパターンが埋め込まれた側の表面から遠ざかるにつれて開口幅が狭くなる形状を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1周回部は、第1方向に直線状に延在する第1及び第2区間と、前記第1方向と直交する第2方向に延在し、前記第1区間の一端と前記第2区間の一端を接続する第3区間と、前記第2方向に延在し、前記第1区間の他端と前記第2区間の他端を接続する第4区間とを含み、
前記第2周回部は、平面視で前記第1区間から前記貫通孔に向かって突出し、
前記第1区間における前記コイルパターンのパターン幅は、前記第2乃至第4区間における前記コイルパターンのパターン幅よりも細い、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
貫通孔を有するメタルプレートと、
前記メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールと、を備え、
前記メタルプレートと前記アンテナ装置は、前記メタルプレートの貫通孔と前記磁性体の貫通孔が重なり、且つ、前記コイルパターンと前記メタルプレートの間に前記磁性体が挟まれるよう積層される、ICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルパターンが磁性体の表面に埋め込まれた構造を有するアンテナ装置が開示されている。特許文献1に記載されたアンテナ装置は、コイルパターンが埋め込まれた側に位置する機器との通信が可能であるものの、コイルパターンが埋め込まれた側とは反対側に位置する機器との通信は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-220719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、コイルパターンの少なくとも一部が磁性体に埋め込まれた構造を有するアンテナ装置において、磁性体の両側に対して通信を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、貫通孔を有する磁性体と、厚み方向における一方側及び他方側にそれぞれ位置する上面及び底面、並びに、上面と底面を繋ぐ側面を有し、上面及び側面の少なくとも一部が磁性体で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体に埋め込まれたコイルパターンとを備え、コイルパターンは、第1周回部と、平面視で第1周回部から貫通孔に向かって突出し、第1周回部とは逆方向に周回する第2周回部を含み、第2周回部は、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、コイルパターンの少なくとも一部が磁性体に埋め込まれた構造を有するアンテナ装置において、磁性体の両側に対して通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
図3図3は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略断面図である。
図4図4は、コイルパターンCPを含む導体パターンの略平面図である。
図5図5(a)は、磁性体30に埋め込まれたコイルパターンCPの断面形状を説明するための模式図である。また、図5(b)は、変形例による絶縁膜141の断面形状を説明するための模式図である。
図6図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
図7図7は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
図8図8は、変形例による第2周回部120のパターン形状を説明するための略平面図である。
図9図9は、変形例による第2周回部120の形成方法を説明するための略平面図である。
図10図10は、変形例によるコイルパターンCPのパターン形状を示す略平面図である。
図11図11は、本実施形態の変形例によるアンテナ装置1Aを備えるICカード3Aの構造を説明するための略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態によるICカード3は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向、Z方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0011】
図2及び図3は、それぞれ本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0012】
図2及び図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、プラスチックプレート10、磁性体30及びメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。プラスチックプレート10は、磁束を妨げない樹脂材料からなる。プラスチックプレート10の表面は、ICカード3の裏面3bを構成する。メタルプレート40は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。メタルプレート40の表面はICカード3の上面3aを構成する。メタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にはICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体にメタルプレートが用いられたカードである。
【0013】
プラスチックプレート10と磁性体30の間には、コイルパターンCPを含む導体パターンが配置される。言い換えれば、コイルパターンCPとメタルプレート40の間に磁性体30が挟まれるよう積層される。導体パターンを構成する導電材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。
【0014】
本実施形態によるアンテナ装置1は、導体パターンを支持する基材を有しておらず、導体パターンの少なくとも一部が磁性体30の表面32側に埋め込まれた構造を有している。このため、厚み方向であるZ方向から見た平面視で、導体パターンの全てが磁性体30と重なりを有している。したがって、コイルパターンCPは、Z方向から見た平面視でメタルプレート40の貫通孔41と重なりを有していない。
【0015】
磁性体30はシート状部材ではなく、導体パターンが形成された基材に磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を塗布し、これを硬化させた後、基材を剥離することによって作製される。このため、導体パターンは、磁性体30から露出する底面(XY面)の反対側に位置する上面(XY面)のみならず、底面と上面を繋ぐ側面についても磁性体30で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体30に埋め込まれる。このように、本実施形態においては、磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材によって磁性体30を形成するとともに、導体パターンが形成された基材を剥離していることから、基材や接着層が不要であり、その分、全体の厚みを薄くすることができる。
【0016】
磁性体30の表面32は、接着層61を介してプラスチックプレート10に接着される。磁性体30の裏面33は、接着層62を介してメタルプレート40に接着される。磁性体30には、メタルプレート40の貫通孔41と重なる位置に貫通孔31が設けられている。本実施形態によるアンテナ装置1は、少なくともコイルパターンCPと、これを埋め込む磁性体30によって構成される。メタルプレート40に設けられた貫通孔41と、磁性体30に設けられた貫通孔31のサイズはほぼ同じである。
【0017】
このような構成を有するアンテナ装置1を作製する場合、まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)などからなるフィルム状の基材の表面に導体パターンを形成した後、導体パターンを覆うよう、基材の全面に磁性粒子と樹脂を混合したペースト状部材を塗布する。次に、ペースト状部材を硬化させた後、基材を剥離する。そして、金型などを用いて打抜き加工を行うことにより、磁性体30に貫通孔31を形成する。これにより、本実施形態によるアンテナ装置1が完成する。基材の剥離は、打抜き加工の後に行っても構わない。
【0018】
図4は、コイルパターンCPを含む導体パターンの略平面図である。
【0019】
図4に示すように、磁性体30の表面32側に埋め込まれた導体パターンは、コイルパターンCP及びキャパシタパターン130を含む。コイルパターンCPは、第1周回部110と第2周回部120を含む。第1周回部110は、磁性体30の外縁に沿って約6ターン周回するパターンであり、その開口110a内に、第1周回部110から分岐した第2周回部120や、キャパシタパターン130が配置されている。第2周回部120は、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って約6ターン周回するパターンである。第1周回部110の外周端は開放されている。
【0020】
第1周回部110は、第1方向であるX方向に延在する第1区間111及び第2区間112と、第2方向であるY方向に延在し、第1区間111の一端と第2区間112の一端を接続する第3区間113と、第2方向であるY方向に延在し、第1区間111の他端と第2区間112の他端を接続する第4区間114とを含んでいる。なお、第3区間113が接続される第1区間111の一端を構成するターンと、第4区間114が接続される第1区間111の他端を構成するターンは異なる。そして、第2周回部120は、平面視で第1周回部110の第1区間111から磁性体30の貫通孔31に向かって突出し、磁性体30の貫通孔31の周囲に沿って、第1周回部110とは逆方向に周回する。つまり、第2周回部120は、第1周回部110の第1区間111を構成する各ターンを開口110a内に向けて変形させた周回パターンである。
【0021】
図4に示すように、第2周回部120の各ターンは、第1周回部110の第1区間111の各ターンの途中に挿入される。第1周回部110の第1区間111の各ターンは第1方向における一端と他端の間の一部において分断されており、分断された一方及び他方の端部が第2周回部120の各ターンによって接続されている。
【0022】
ここで、第1周回部110の第1区間111のパターン幅は、第1周回部110の第2区間112~第4区間114のパターン幅よりも細い。これにより、第1区間111から突出する第2周回部120のパターン幅を細くすることができることから、ターン数を十分に確保しつつ、第2周回部120を構成する各ターンを、磁性体30の貫通孔31のエッジ近傍により近づけることができる。しかも、第2区間112~第4区間114については十分なパターン幅を有していることから、第1周回部110の抵抗値も低減される。また、第2区間112~第4区間114は、最外周ターンと最内周ターンのパターン幅がこれらの間に位置するターンのパターン幅よりも狭い。最外周ターン及び最内周ターンの近傍は磁束密度が高いため、最外周ターン及び最内周ターンのパターン幅を選択的に細くすることにより、抵抗値の上昇を抑えつつ、渦電流を低減することができる。
【0023】
キャパシタパターン130は、第1周回部110の開口110a内に配置され、第1周回部110の内周端に接続されている。キャパシタパターン130は、Y方向に延在する線状パターン131と、線状パターン131から分岐してX方向に平行に延在する複数の線状パターン132とを有している。キャパシタパターン130と対向する導体パターンは存在せず、隣接する線状パターン132間に生じる寄生容量によって必要なキャパシタンスを得ている。キャパシタパターン130は終端された導体パターンであり、したがって、コイルパターンCPは両端が開放された構造を有している。
【0024】
図5(a)は、磁性体30に埋め込まれたコイルパターンCPの断面形状を説明するための模式図である。図5(a)には、コイルパターンCPの第2周回部120を構成する部分の一部が示されているが、他の導体パターンについても同様の断面形状を有している。
【0025】
図5(a)に示すように、コイルパターンCPの第2周回部120は、厚み方向(Z方向)における一方側及び他方側にそれぞれ位置する上面S1及び底面S2と、上面S1と底面S2を繋ぐ側面S3とを有している。上面S1及び底面S2は、XY面を構成する。ここで、上面S1及び側面S3についてはほぼ全面が磁性体30で覆われている一方、底面S2は磁性体30で覆われることなく、磁性体30の表面32から露出している。
【0026】
コイルパターンCPの上面S1及び側面S3は、磁性体30と接していても構わないが、磁性体30の絶縁性が低い場合には、上面S1及び側面S3を覆う絶縁膜141を設けても構わない。この場合、磁性体30はコイルパターンCPの上面S1と側面S3の少なくとも一部を覆う。絶縁膜141の材料としては、粘着剤を含む樹脂やセラミックを用いることができる。絶縁膜141は、導体パターンの表面だけでなく、コイルパターンCPのターン間に位置するスペース140にも配置される。これにより、磁性体30の絶縁性が低い場合であっても、ターン間におけるショートを防止することが可能となる。図5(a)に示す例では、絶縁膜141が磁性体30の表面32の全体を覆っており、これにより磁性体30に含まれる磁性粒子の脱落も防止される。
【0027】
また、変形例である図5(b)に示すように、絶縁膜141の厚みは、第2周回部120と磁性体30の間における厚みT1よりも、第2周回部120のターン間における厚みT2の方が厚くても構わない。これによれば、磁性体30の表面32の平坦性を高めることが可能となる。
【0028】
また、コイルパターンCPの底面S2の一部は、樹脂層142で覆われている。これにより、コイルパターンCPの底面S2が保護される。樹脂層142は、コイルパターンCPに沿って周方向に延在しており、その径方向における幅は、径方向におけるコイルパターンCPの幅よりも狭い。したがって、樹脂層142の径方向における両側には、底面S2の残りの部分が露出している。つまり、コイルパターンCPの底面S2は、径方向における中央部が樹脂層142で覆われる一方、径方向における両側部分は樹脂層142で覆われていない。これにより、コイルパターンCPの断面積が拡大することから、抵抗値を低減することが可能となる。また、コイルパターンCPの底面S2のうち樹脂層142で覆われない両側部分と、樹脂層142の表面は、同一平面を構成する。なお、コイルパターンCPの径方向における樹脂層142の幅は、径方向におけるコイルパターンCPの幅と同じであっても構わない。
【0029】
さらに、コイルパターンCPの断面は、底面S2から上面S1に向かって径方向における幅が小さくなる形状を有している。つまり、側面S3はZ方向に延在するのではなく、Z方向対して所定の傾きを有している。これにより、隣接するターン間により多くの磁性粒子が入り込むことから、ターン間に生じる寄生容量をより高めることが可能となる。ターン間に生じる寄生容量は、キャパシタパターン130によって生じるキャパシタンスを補う役割を果たす。そして、キャパシタンスを調整することによって、コイルパターンCP及びキャパシタパターン130からなる共振回路の共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定すれば、近距離無線通信(NFC)が可能となる。なお、側面S3は湾曲面で構成されていても構わない。
【0030】
図6は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0031】
図6に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなり、図3に示すように、その一部が貫通孔31内に配置されても構わない。モジュール基板51の裏面側には、図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、メタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と磁性体30に埋め込まれたコイルパターンCPの第2周回部120が電磁界結合する。そして、第2周回部120は、第1周回部110に直列接続されていることから、第1周回部110及び第2周回部120を介して、ICモジュール50が外部と通信可能となる。
【0032】
これにより、図7に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、コイルパターンCPの第1周回部110及び第2周回部120を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。
【0033】
そして、本実施形態によるアンテナ装置1は、上述の通り、コイルパターンCPが形成された基材の全面に磁性体30を塗布した後、打抜き加工によって貫通孔31を形成していることから、Z方向から見て全ての導体パターンが磁性体30と重なる。ここで、磁性体30は、コイルパターンCPの第1周回部110に対してはインダクタンスを高める磁路として機能する一方、コイルパターンCPの第2周回部120に対しては、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合を阻害する要因となり得る。しかしながら、本実施形態においては、第2周回部120が第1周回部110を構成する各ターンを開口110a内に向けて変形させた周回パターンであることから、第2周回部120のターン数が第1周回部110のターン数と同じとなり、十分なターン数が確保される。しかも、第2周回部120は、磁性体30の貫通孔31に近接して配置されていることから、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合を確保することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態においては、コイルパターンCPが磁性体30の表面32側に埋め込まれており、コイルパターンCPの作製に用いた基材が剥離されていることから、アンテナ装置1の全体の厚みを薄くすることも可能となる。
【0035】
図8は、変形例による第2周回部120のパターン形状を説明するための略平面図である。
【0036】
図8に示す例では、第2周回部120の最内周ターン121のパターン幅が他のターンのパターン幅よりも広く、且つ、最内周ターン121の内周面が、磁性体30の貫通孔31の内周面と同一面を構成している。つまり、第2周回部120の最内周ターン121の内周エッジの位置は、磁性体30の貫通孔31の内周エッジの平面位置と一致しており、最内周ターン121の内周エッジよりも内側には磁性体30が存在しない。
【0037】
このような構成は、図9に示すように、例えば、第2周回部120の開口サイズが貫通孔31の開口サイズよりも小さくなるよう、第2周回部120の最内周ターン121のパターン幅を選択的に拡大し、最内周ターン121と重なる符号Aで示す位置で貫通孔31を打抜き加工することによって得られる。これにより、第2周回部120の抵抗値を低減することができるだけでなく、第2周回部120の最内周ターン121の内周面が磁性体30で覆われることなく貫通孔31に露出することから、ICモジュール50のカップリングコイル53との結合が高められる。
【0038】
図10は、変形例によるコイルパターンCPのパターン形状を示す略平面図である。
【0039】
図10に示すコイルパターンCPは、第1周回部110を構成する第1区間111~第4区間114のパターン幅がほぼ一定である点において、図4に示したコイルパターンCPと相違している。これにより、第1周回部110の開口110aの面積をより拡大することができる。また、図10に示す例では、コイルパターンCPの内周端にキャパシタパターン130が接続されていない。このように、コイルパターンCPに接続されたキャパシタパターン130を設けることは必須でない。
【0040】
図11は、本実施形態の変形例によるアンテナ装置1Aを備えるICカード3Aの構造を説明するための略断面図である。
【0041】
図11に示すように、第1の変形例によるアンテナ装置1Aは、磁性体30に設けられた貫通孔31がテーパー状である点において、図3に示したアンテナ装置1と相違している。その他の基本的な構成は、図3に示したアンテナ装置1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
このようなテーパー形状は、貫通孔31を打抜き加工する際、磁性体30の裏面33をダイ側、磁性体30の表面32をパンチ側とすることによって得られる。そして、このような形状とすることにより、磁性体30の貫通孔31の開口幅が表面32から遠ざかるにつれて狭くなることから、アンテナ特性の劣化を防止することができる。
【0043】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、貫通孔を有する磁性体と、厚み方向における一方側及び他方側にそれぞれ位置する上面及び底面、並びに、上面と底面を繋ぐ側面を有し、上面及び側面の少なくとも一部が磁性体で覆われるよう、少なくとも一部が磁性体に埋め込まれたコイルパターンとを備え、コイルパターンは、第1周回部と、平面視で第1周回部から貫通孔に向かって突出し、第1周回部とは逆方向に周回する第2周回部を含み、第2周回部は、磁性体の貫通孔の周囲に沿って周回する。これによれば、磁性体のコイルパターンが埋め込まれた側の表面に位置する機器と通信できるとともに、貫通孔を介して、磁性体の裏面側に位置する機器とも通信が可能となる。
【0046】
上記のアンテナ装置は、コイルパターンの上面及び側面を覆う絶縁膜をさらに備え、絶縁膜の一部は、コイルパターンのターン間に位置するスペースに配置されていても構わない。これによれば、コイルパターンのターン間におけるショートを防止することが可能となる。この場合、絶縁膜は、第2周回部と磁性体の間における厚みよりも、第2周回部のターン間における厚みの方が厚くても構わない。これによれば、磁性体の平坦性を高めることが可能となる。
【0047】
上記のアンテナ装置は、コイルパターンの底面に沿って設けられた樹脂層をさらに備え、コイルパターンの径方向における樹脂層の幅は、径方向におけるコイルパターンの幅よりも狭くても構わない。これによれば、コイルパターンの底面が保護される。
【0048】
上記のアンテナ装置において、コイルパターンの断面は、底面から上面に向かって幅が小さくなる形状を有していても構わない。これによれば、ターン間に生じるキャパシタンスが増大する。
【0049】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の最内周ターンのパターン幅は、第2周回部の他のターンのパターン幅よりも広くても構わない。これによれば、貫通孔と重なる位置にカップリングコイルを有するICモジュールを配置した場合に、カップリングコイルから受ける電力を効率的に使用できる。
【0050】
上記のアンテナ装置において、第2周回部の最内周ターンの内周面は、磁性体の貫通孔の内周面と同一面を構成しても構わない。これによれば、貫通孔と重なる位置にカップリングコイルを有するICモジュールを配置した場合に、カップリングコイルとの結合が高められる。
【0051】
上記のアンテナ装置において、磁性体の貫通孔は、コイルパターンが埋め込まれた側の表面から遠ざかるにつれて開口幅が狭くなる形状を有していても構わない。これによれば、アンテナ特性の劣化を防止することができる。
【0052】
上記のアンテナ装置において、第1周回部は、第1方向に直線状に延在する第1及び第2区間と、第1方向と直交する第2方向に延在し、第1区間の一端と第2区間の一端を接続する第3区間と、第2方向に延在し、第1区間の他端と第2区間の他端を接続する第4区間とを含み、第2周回部は平面視で第1区間から貫通孔に向かって突出し、第1区間におけるコイルパターンのパターン幅は、第2乃至第4区間におけるコイルパターンのパターン幅よりも細くても構わない。これによれば、第2周回部のパターン幅を細くすることができる。
【0053】
本開示の一実施態様によるICカードは、上記いずれかのアンテナ装置と、貫通孔を有するメタルプレートと、メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールとを備え、メタルプレートとアンテナ装置は、メタルプレートの貫通孔と磁性体の貫通孔が重なり、且つ、コイルパターンとメタルプレートの間に前記磁性体が挟まれるよう積層される。これによれば、コイルパターンの第2周回部とICモジュールを結合させることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A アンテナ装置
3,3A ICカード
3a ICカードの上面
3b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 プラスチックプレート
30 磁性体
31 貫通孔
32 磁性体の表面
33 磁性体の裏面
40 メタルプレート
41 貫通孔
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61,62 接着層
110 第1周回部
110a 開口
111~114 区間
120 第2周回部
121 最内周ターン
130 キャパシタパターン
131,132 線状パターン
140 スペース
141 絶縁膜
142 樹脂層
CP コイルパターン
E 端子電極
S1 上面
S2 底面
S3 側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11