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特開2024-122291ひよこ豆粉末を含む食用加工品、及びそれを含む食品、並びに食用加工品の製造方法
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  • 特開-ひよこ豆粉末を含む食用加工品、及びそれを含む食品、並びに食用加工品の製造方法 図1
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  • 特開-ひよこ豆粉末を含む食用加工品、及びそれを含む食品、並びに食用加工品の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122291
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ひよこ豆粉末を含む食用加工品、及びそれを含む食品、並びに食用加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/007 20060101AFI20240902BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20240902BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240902BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240902BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20240902BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20240902BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240902BHJP
【FI】
A23D9/007
A23L11/00 F
A23L5/00 L
A23L5/00 N
A23L29/238
A23C11/10
A23L9/20
A23L5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029750
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 果南
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悟
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
4B025
4B026
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC15
4B001AC22
4B001AC44
4B001BC02
4B001BC04
4B001BC08
4B001BC12
4B001EC01
4B001EC05
4B001EC99
4B020LC02
4B020LC05
4B020LG09
4B020LK04
4B020LK05
4B020LP03
4B020LP08
4B020LP12
4B020LP16
4B025LB23
4B025LD02
4B025LG02
4B025LG14
4B025LG27
4B025LG28
4B025LG42
4B025LK02
4B025LP03
4B025LP07
4B025LP10
4B025LP15
4B025LP16
4B026DC01
4B026DC05
4B026DG04
4B026DL03
4B026DL05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX04
4B026DX08
4B035LC01
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG12
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG33
4B035LG34
4B035LG54
4B035LK04
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP43
4B041LC01
4B041LD01
4B041LE01
4B041LH02
4B041LH07
4B041LK18
4B041LK24
4B041LP01
4B041LP03
4B041LP04
4B041LP07
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】動物性原料(動物乳や卵など)を(実質的に)含まない植物性乳製品であって、風味がよく、かつ食品原料として用いたときに扱いやすい(例えば水中での分散性がよい)植物性乳製品を提供すること、及びそれを含む食品を提供することを課題とする。
【解決手段】加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、を含有する食用加工品(好ましくは粉末油脂又は水中油型乳化物の形態である)、及び当該食用加工品を含む食品を提供する。加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、食用加工品を乾燥状態としたときに、3.0~20.0質量%の範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、を含有する食用加工品。
【請求項2】
前記食用加工品は粉末油脂である、請求項1に記載の食用加工品。
【請求項3】
前記食用加工品は水中油型乳化物である、請求項1に記載の食用加工品。
【請求項4】
前記加圧加熱処理されたひよこ豆に含まれるデンプンの少なくとも一部はアルファ化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項5】
前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、前記食用加工品の乾燥状態において3.0~20.0質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項6】
前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、前記食用加工品の乾燥状態において4.5~16.0質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項7】
前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、1.0~6.5質量%である、請求項3に記載の食用加工品。
【請求項8】
前記食用加工品は、デキストリンと増粘剤とを組み合わせて含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項9】
前記増粘剤はアルファ化デンプン及び/又はタマリンドシードガムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項10】
前記植物油は、ショートニング、菜種油、及びパーム油から選ばれる一以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の食用加工品を含む食品。
【請求項12】
前記食品は、植物性乳製品を含有する食品である、請求項11に記載の食品。
【請求項13】
請求項1に記載の食用加工品を製造する方法であって:
加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、水と、を含む乳化物を調製する工程を含む、製造方法。
【請求項14】
前記乳化物を乾燥し、粉砕する工程を更に含む、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末を含有する食用加工品、及びそれを含む食品、並びに当該食用加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物性食品原料フリーの(つまり、動物性食品原料を含まない)食品のニーズが高まっている。その背景には、健康志向の高まり、ベジタリアン志向の高まり、あるいは動物性食品に対するアレルギー反応を生じる人の存在などがある。
【0003】
そのため、動物性食品原料フリーである植物性ミルクなども開発されている(特許文献1)。実際、植物性ミルクである豆乳を使用したアイスクリーム(非特許文献1)や、植物性ミルクパウダー(非特許文献2)などが市販されている。しかし、植物性乳製品は、ダイズなどの豆類、アーモンド、ココナッツ、オーツ麦などを原料とすることが多いが;特許文献1などにも記載されているように、豆類などに由来する青臭さがあったり、後味の悪さ(えぐ味など)があることがあった。また、最も一般的な植物性乳製品の原料はダイズであるが、ダイズに対するアレルギーを発症する人が増えており問題となっている。
【0004】
そのため、ダイズ以外の植物性原料を用いた様々な植物性食品も開発されている(特許文献2~5)。特許文献2には、ひよこ豆パウダー、糖類、油脂類及び水などの混合物を加熱混合してペースト状組成物を得たことが記載されている。特許文献3には、豆由来の植物性タンパク質、植物油、炭水化物などを含有する粉末クリーマー組成物が開示されている。特許文献4には、肉類、豆類、加工澱粉又は湿熱処理澱粉などを含有するペースト状食品が開示されている。特許文献5には、豆類粉砕物、油脂、膨潤抑制澱粉などの混合物を熟成処理して得られる油脂加工澱粉が開示されている。しかしながら、これらにおいて植物性原料である豆類を加圧加熱処理することは示唆されない。
【0005】
また、特許文献6には、デンプンを含むマメ類をエクストルーダーで加圧加熱処理して、特定の特性を有する澱粉含有固形状組成物を得る手法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-176284号公報
【特許文献2】特開2022-186589号公報
【特許文献3】特表2021-509008号公報
【特許文献4】特開2017-12029号公報
【特許文献5】特開2018-201464号公報
【特許文献6】国際公開第2022/030638号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】クーリッシュGreenバニラ(https://www.lotte.co.jp/products/catalogue/ice/07/detail31.html)
【非特許文献2】ニューラクトND-N200(https://www.asahi-gf.co.jp/products/materials/newlacto/lineup/newlacto-ndn200.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、動物性食品原料フリーの食品ニーズに応えるべく、植物性食品原料を主成分とする食品が開発され、その一つとして植物性ミルクなどの植物性乳製品も開発されている。しかしながら、従来の植物性乳製品では、豆類などの植物性食品原料由来の青臭さや後味の悪さが十分に改善されているとはいえず、依然として改善が求められている。
【0009】
また、植物性原料が粉末などの固体又は乳化物として提供されれば、植物性原料を主成分とする食品を調理する際に利便性が高い。そのため、粉末又は乳化物としての植物性乳製品(植物性ミルクパウダー、又は乳化状態の植物性ミルク)も求められているが、水に配合したときの分散性又は乳化状態がよくない植物性乳製品は、食品の調理用原料として使用しにくい。
【0010】
そこで本発明は、動物性原料(動物乳や卵など)を(実質的に)含まない植物性乳製品であって、風味がよく、かつ食品原料として用いたときに扱いやすく(例えば水中での分散性がよい)、好ましくは大豆アレルゲンフリーの植物性乳製品を提供すること、及びそれを含む食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、以下に示す食用加工品に関する。
[1]加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、を含有する食用加工品。
【0012】
さらに本発明は、好ましい形態として以下に示す食用加工品に関する。
[2]前記食用加工品は粉末油脂である、前記[1]に記載の食用加工品。
[3]前記食用加工品は水中油型乳化物である、前記[1]に記載の食用加工品。
[4]前記加圧加熱処理されたひよこ豆に含まれるデンプンの少なくとも一部はアルファ化されている、前記[1]~[3]のいずれかに記載の食用加工品。
[5]前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、前記食用加工品の乾燥状態において3.0~20.0質量%である前記[1]~[4]のいずれかに記載の食用加工品。
[6]前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、前記食用加工品の乾燥状態において4.5~16.0質量%である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の食用加工品。
[7]前記食用加工品における、前記加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末の含有量は、1.0~6.5質量%である、前記[3]に記載の食用加工品。
[8]前記食用加工品は、デキストリンと増粘剤とを組み合わせて含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の食用加工品。
[9]前記増粘剤はアルファ化デンプン及び/又はタマリンドシードガムである、前記[1]~[8]のいずれかに記載の食用加工品。
[10]前記植物油は、ショートニング、菜種油、及びパーム油から選ばれる一以上を含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の食用加工品。
【0013】
さらに本発明は以下に示す、食用加工品を含む食品に関する。
[11]前記[1]~[10]のいずれかに記載の食用加工品を含む食品。
[12]前記食品は、植物性乳製品を含有する食品である、前記[11]に記載の食品。
【0014】
[13]前記[1]~[10]のいずれかに記載の食用加工品を製造する方法であって:
加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、水と、を含む乳化物を調製する工程を含む製造方法。
[14]前記乳化物を乾燥し、粉砕する工程を更に含む、前記[13]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の食用加工品は、動物性原料(動物乳や卵など)の含有量が低減されているか、又はそれを(実質的に)含まない、粉末又は乳化状態の植物性乳製品として提供できる。そして本発明の食用加工品は、風味がよく、かつ食品原料として用いたときに扱いやすい特性を有し、好ましくは大豆アレルゲンフリーのため、植物性食品原料として好ましく用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】食用加工品の製法の一例を示すフローチャートである。
図2】実施例1及び比較例1~3で得られた食用加工品である粉末を水に分散させて分散性を評価した試験の結果を示す写真である。
図3】実施例1及び比較例1~3において調製した乳化物の分散状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.食用加工品について]
本発明の食用加工品は、1)加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、2)デキストリン及び/又は増粘剤と、3)植物油とを含有する限り、特に限定されないが;通常は、粉末油脂の形態、又は水中油型乳化物の形態であることが好ましい。粉末油脂とは、タンパク質や炭水化物の皮膜でカプセル化した粉末状の油脂である。つまり、本発明における食用加工品は、1)ひよこ豆の粉末や2)デキストリンや増粘剤などの皮膜で、3)植物油をカプセル化した粉末油脂であり得る。また、水中油型乳化物とは、水の中に油が分散しているタイプの水中油滴型エマルジョンである。例えば、食用加工品は、前記粉末油脂が水の中で分散している形態であり得る。
【0018】
食用加工品は、1)~3)以外の他の成分を含んでいてもよく、水、乳化剤、食物繊維、植物性蛋白質(えんどう豆やひよこ豆から単離されたタンパク質)、ビタミン、ミネラル(食塩含む)、健康増進効果が知られている一般的な機能性食品成分、香料や調味料などを含んでいてもよいが;但し、動物性食品原料は含まない方がよい場合がある。
【0019】
[1-1.加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末]
食用加工品に含まれる加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末は、生のひよこ豆を、エクストルーダー(押し出し機)で加圧加熱処理されており;具体的には、加水したひよこ豆を加熱加圧した後に乾燥し、粉砕することにより得ることができる。
【0020】
ひよこ豆は、一般的に、大粒種(約10~13mm径, Kaburiともいう)と小粒種(約7~10mm系, Desiともいう)とに分類されることがあるが;加圧加熱処理されるひよこ豆は、いずれのひよこ豆であってもよい。加圧加熱処理されるひよこ豆は、薄膜を取り除いたひよこ豆であってもよく、薄膜が残っているひよこ豆であってもよいが;薄膜が残っているひよこ豆の方が、栄養素が豊富であるため好ましい場合がある。
【0021】
加圧加熱処理のために使用されるエクストルーダーは、市販の押出し成形装置であり得る。押出し成形装置は、食品原料をスクリューで押出しながらシリンダー内で圧縮、混合、加熱、剪断の処理を行う装置である。エクストルーダーは、1本のスクリューで原料を押し出す1軸型、2本以上のスクリューで原料を押し出す多軸型のタイプのいずれであってもよい。2本のスクリューで原料を押し出す2軸型は、2本のスクリュー同士が互いに干渉して原料を噛み込んで搬送するため、加工原料の特性にあまり影響されずに装置の運転が可能である。2軸型押出し成形装置としては、特に限定されず、市販の装置を使用できる。例えば、エクストルーダーのメーカーとしてビューラー社、ブッス社、GEA社、STEER社、Wenger社、Baker-Perkins社、NP食品社等のメーカーの装置が挙げられる。
【0022】
ひよこ豆原料は、予め押出し成形装置に投入しやすい大きさになるまで粗粉砕してもよい。粗粉砕は、公知の粉砕装置を採用できる。具体的には、ハンマーミル、ピンミル等の粉砕装置、又はビーズミル、サンドミル、アトライター等の媒体を用いる粉砕機等が挙げられる。これらの粉砕方法は、1種のみを適用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
粗粉砕されたひよこ豆原料は、加水されて攪拌される。加水撹拌されることにより得られた混合物をエクストルーダーに投入する。さらに、エクストルーダー処理中に水を追加してもよい。エクストルーダー処理される混合物の含水率は20質量%以上35質量%以下が好ましく、26質量%以上30質量%以下がより好ましい。なお、上記のように工程中に加水することは必須ではなく、エクストルーダー処理の前に加水するのみでもよい。また、エクストルーダー処理の途中で加水をするのみでもよい。
【0024】
エクストルーダーでの処理温度は、126~149℃に設定され、好ましくは126~145℃、さらに好ましくは126~134℃に設定されうる。かかる温度範囲により、所望のひよこ豆粉末が効率的に得られる。なお、エクストルーダーの処理温度は、バレル内の温度の最高温度を意味し、以下の説明においては「加熱温度」ともいう。
【0025】
エクストルーダーへのひよこ豆原料の投入速度は、装置の種類により適宜設定されるが、媒体(水)とひよこ豆との合計質量として、好ましくは10~50kg/hである。かかる範囲に設定されることにより、効率的にエクストルーダー処理ができる。
【0026】
エクストルーダーのL/D比(L(barrel length)/D(diameter ratio))は、装置の種類により適宜設定されるが、好ましくは10~70に設定される。スクリュー回転数は、装置の種類により適宜設定されるが、好ましくは50~1000rpm、より好ましくは100~600rpm、さらに好ましくは300~400rpmである。かかる範囲に設定されることにより、効率的にエクストルーダー処理ができる。
【0027】
次に、エクストルーダーによって押し出された処理物は、乾燥処理した後、粉砕される。乾燥処理は、公知の方法を適宜採用することができる。公知の乾燥方法としては、例えばドラムドライヤー、スプレイドライヤー、気流乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。各種の乾燥・粉砕機により乾燥と粉砕を同時に又は連続して行ってもよい。粉砕工程に用いる粉砕機としては、例えば、北川鉄工所社製の衝撃式粉砕乾燥機、ホソカワミクロン社製のビクトリミル、西村機械製作所社製のスーパーパウダーミル、セイシン企業社製のSKジェットオーミル等が挙げられる。乾燥と粉砕を同時に行うことができる装置の場合、粉砕工程の前の乾燥工程を省略してもよい。
【0028】
ひよこ豆粉末の水分含有量は、特に限定されないが、保存安定性又は取り扱い性等の観点から、1~10質量%が好ましく、3~5質量%がより好ましい。
【0029】
ひよこ豆粉末のメジアン径(D50)は、例えば1~200μm、好ましくは3~100μm、より好ましくは5~50μmであるが、特に限定されない。ひよこ豆粉末のメジアン径(D50)が小さい方が(200μm以下であると)、滑らかさなどの食感が得られ;ひよこ豆粉末のメジアン径(D50)が大きい方が(1μm以上であると)、コクなどの風味が得られやすい。なお、ここでひよこ豆粉末のメジアン径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(品番: MT 3300II、メーカー名: マイクロトラック・ベル株式会社)で測定した粒度分布から求めることができる。また、ひよこ豆粉末の形状は特に制限されず、ひよこ豆を粉砕する手段に応じて異なるが;例えば、略等方形状の粒子状(略球状、略立方体状など)、略異方形状の粒子状(楕円体状、略長方体状、不定形状など)などであり得る。
【0030】
食用加工品における、ひよこ豆粉末の含有量に特段の制限はないが、ひよこ豆粉末を含む食用加工品を乾燥状態(水分を除いた状態)としたときに、3.0質量%以上であることが好ましく、4.5質量%以上であることがより好ましく、6.5質量%以上であることが更に好ましく、9.0質量%以上であるとより更に好ましい。一方、20.0質量%以下であることが好ましく、16.0質量%以下であることがより好ましく、13.0質量%以下であることが更に好ましく、10.0質量%以下であることが最も好ましい。ひよこ豆粉末の含有量が多い方が(3.0質量%以上であると)、食用加工品の水分散性が高まり、食品原料としての利便性が高まる。また、ひよこ豆粉末の含有量を20.0質量%以下とすることで、食用加工品のマメの風味が過剰になることを抑え、風味がよくなる。また、ひよこ豆粉末の含有量を20.0質量%以下とすることで、食用加工品の増粘性を適度な範囲に調整しやすく、口溶けもよくなる。
【0031】
また、食用加工品が水中油型乳化物の形態である場合には、当該食用加工品におけるひよこ豆粉末の含有量は、水中油型乳化物を100質量部とするときに、ひよこ豆粉末の乾燥状態(水分を除いた状態)の質量で、1.0質量部以上もしくは1.5質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上もしくは2.5質量部以上であることがより更に好ましく、3.0質量部以上もしくは3.5質量部以上であるとより更に好ましく、4.0質量部以上もしくは4.5質量部以上であることが最も好ましい。一方、10.0質量部以下であることが好ましく、7.5質量部以下であることがより好ましく、5.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0032】
[1-2.デキストリン又は増粘剤]
食用加工品は、糖質(好ましくはデキストリン)を含有することが好ましい場合がある。糖質の例には、デキストリンの他、スクロース、フルクトース、ラクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、異性化糖、オリゴ糖、穀物由来の糖化液、砂糖などが含まれる。糖質(好ましくはデキストリン)は食用加工品の賦形剤として機能する場合があり;食用加工品における糖質(好ましくはデキストリン)の含有量は、食用加工品やデキストリンを乾燥状態(水分を除いた状態)としたときに、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく;一方、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、食用加工品が水中油型乳化物の形態である場合には、当該食用加工品におけるデキストリンの含有量は、水中油型乳化物を100質量部とするときに、デキストリンの乾燥状態(水分を除いた状態)の質量で、5.0質量部以上であることがより好ましく、10.0質量部以上であることがより更に好ましく、13.0質量部以上であるとより更に好ましい。一方、30.0質量部以下であることが好ましく、20.0質量部以下であることがより好ましい。
【0034】
食用加工品は、増粘剤を含有することが好ましい場合がある。増粘剤は、典型的には多糖類であり;その具体例には、アルファ化澱粉、イソマルトデキストリン、タマリンド(シード)ガム、加工澱粉、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、グルコマンナンなどが含まれる。増粘剤は、食用加工品の水への分散性を高めることができる。食用加工品における増粘剤の含有量は、食用加工品に適切な分散性を付与できるように設定すればよく、増粘剤の種類によっても異なるが;例えば、増粘剤を含む食用加工品を乾燥状態(水分を除いた状態)としたときに、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく;一方、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
また、食用加工品が水中油型乳化物の形態である場合には、当該食用加工品における増粘剤の含有量は、水中油型乳化物を100質量部とするときに、増粘剤の乾燥状態(水分を除いた状態)の質量で、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがより更に好ましい。一方、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることがより更に好ましい。
【0036】
食用加工品は、糖質(好ましくはデキストリン)と増粘剤との両方を含有することが好ましい。
【0037】
[1-3.植物油]
食用加工品に含まれる植物油の例には、大豆油、綿実油、あまに油、ひまし油、紅花油、米油、胚芽米油、コーン油、ゴマ油、向日葵油、米糖油、キャノーラ油などの菜種油、落花生油、パーム核油、オリーブ油、グレープシード油などの植物油(サラダ油、白絞油);ヤシ油、カロチーノ油などのパーム油、カカオ脂などの植物脂(植物脂肪);マーガリンやショートニングなどの植物性加工油脂などが挙げられる。
【0038】
食用加工品に含まれる植物油を、比較的風味のあっさりした植物油(紅花油、オリーブ油、グレープシード油、コーン油、向日葵油、大豆油、米油、胚芽米油、菜種油などの植物油; パーム油などの植物脂など)としたり、植物性加工油脂(ショートニングなど)とすることにより、風味を改善しつつ、口溶けの良い動物性食品原料フリーの食品(又は植物性食品)を得ることができる。食用加工品に含まれるより好ましい植物油は、ショートニング、菜種油、及びパーム油から選ばれる一以上である。
【0039】
食用加工品における、植物油の含有量に特段の制限はないが、食用加工品を乾燥状態(水分を除いた状態)としたときに、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることがより更に好ましく;一方、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましい。また、食用加工品における、植物油の含有量は、ひよこ豆粉末の量100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、150質量部以上であることがより好ましく;一方、400質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。
【0040】
また、食用加工品が水中油型乳化物の形態である場合には、当該食用加工品における植物油の含有量は、水中油型乳化物を100質量部とするときに、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがより更に好ましい。一方、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の食用加工品は、好ましくは、加圧加熱処理されたひよこ豆粉末と、デキストリンと、増粘剤(アルファ化デンプンなど)と、植物油と、を含有するが;これら4成分の含有比率(加圧加熱処理されたひよこ豆粉末:デキストリン:増粘剤:植物油)は、特に限定するものではないが、目安として、4成分の合計質量に対して、3~18質量%:40~60質量%:1.0質量%~7.0質量%:30~35質量%である。
【0042】
[1-4.食用加工品に含まれるその他成分]
本発明の食用加工品は、上記の1)~3)以外の他の成分を含んでいてもよい。例えば、食用加工品が、水中油型乳化物である場合には水を含む。また、後述の通り、食用加工品は種々の食品の原料として用いることができるため、食品の種類に応じて、乳化剤、食物繊維、植物性蛋白質(えんどう豆やひよこ豆から単離されたタンパク質)、ビタミン、ミネラル(食塩含む)、健康増進効果が知られている一般的な機能性食品成分、香料や調味料などを含みうる。
【0043】
また、食用加工品は、ひよこ豆以外の豆類の粉末を含んでいてもよい。ひよこ豆以外の豆類の例には、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ダイズ属、が含まれるが;ダイズアレルゲンフリーとするためには、ダイズ類の豆粉末は含ませない。
【0044】
食用加工品が植物油以外の油脂成分を含むことを除外するものではないが;植物性食品を提供するという点からは、動物性油脂成分を含有しないことが好ましい。動物性油脂成分の例には、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油などが含まれる。
【0045】
[1-5.水中油型乳化物又は粉末油脂]
本発明の食用加工品は、好ましくは水中油型乳化物又は粉末油脂として提供される。粉末油脂は、油脂成分をタンパク質や炭水化物の皮膜でカプセル化した粉末状の成分であるため、水への分散性がよく、食品原料として利便性が高い。水中油型乳化物は、乳化粒子が水中に分散している液状物であり、食品原料として利便性が高い。
【0046】
本発明の食用加工品は任意の方法で製造されうるが:通常は、加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、デキストリン及び/又は増粘剤と、植物油と、水と、を含む乳化物を調製する工程を含み;更に、前記乳化物を乾燥し、粉砕して粉末とする工程と、を含むことができる。より具体的には、加圧加熱処理されたひよこ豆の粉末と、増粘剤と、植物油と、を混合して混合物とし(混合工程A-1);別途、デキストリンと水(ぬるま湯)とを混合して溶液とし(混合工程A-2);工程A-1で得られる混合物を、工程A-2で得られた溶液とあわせて攪拌して撹拌物を得て(撹拌工程B);工程Bで得られた撹拌物をホモジナイザーで撹拌して、乳化物(つまり、水中油型乳化物)とし(乳化工程C);工程Cで得られた乳化物から水分を除去して乾燥物を得て(乾燥工程F);工程Fで得られた乾燥物を粉砕して粉末とする(粉砕工程G)、ことで、粉末油脂の形態の食用加工品が製造されうる(図1参照)。また、工程Cで得られた乳化物は、加熱されることで殺菌されてもよく(殺菌工程D);また、工程Cで得られた乳化物又は工程Dで得られた殺菌物を、篩過してもよい(篩過工程E)(図1参照)。
【0047】
混合工程A-1において、植物油が固化している場合には、湯煎などにより液状としてから混合させることが好ましい。攪拌工程Bは、50~70℃程度の溶解温度で行うことが好ましい。また、乾燥工程Fにおける乾燥は、乳化物に含まれる乳化粒子を破壊しないようにすることが好ましく;凍結乾燥(Freeze drying)、噴霧乾燥(Spray drying)、ローラー乾燥(Roller drying)等により行われうる。
【0048】
乳化工程Cで得られる乳化液を、水中油型乳化物としての食用加工品としてもよいし;粉砕工程Gで得られる粉末を水に分散させて、水中油型乳化物としての食用加工品としてもよい。
【0049】
[1-6.食用加工品の用途]
本発明の食用加工品は、それ自体を食品としてもよいが;加工食品の原料として用いることができる。好ましくは、本発明の食用加工品は植物性ミルクとして利用することができる。
【0050】
[2.食用加工品を含む食品]
本発明の食品は、食用加工品を含む食品であれば特に限定されず、食用加工品自体であってもよい。例えば本発明の食品は、食用加工品自体としての粉末ミルクであってもよいし、食用加工品としての粉末を水に分散させるなどして得られる液体ミルクであってもよい。また、本発明の食品は、飲料全般又は生地製品などであり得るが;植物性乳製品(植物性ミルクを含む)を含有する(原料として含有することを含む)食品であることが好ましく;動物性乳製品を植物性原料に一部もしくは全量代替した食品であってもよい。つまり、従来、動物性乳製品を原料としていた食品において、その動物性乳製品の一部又は全部を本発明の食用加工品またはそれから得られる植物性乳製品で代替することができる。本発明の食品の典型的な例には、ホイップクリーム、アイスクリーム、プリン、生地製品(パン、クッキー、ケーキ)、ヨーグルト、チョコレート、シチュー、ホワイトソースなどが含まれるが、特に限定されない。
【0051】
本発明の食用加工品を含む食品は植物性食品でありながら、豆由来のにおいが少なく、また動物乳を原料とした場合と遜色ないコク味を有しうる。
【実施例0052】
以下に、実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載によって限定して解釈されない。なお、表1~6における各成分の配合量の数値は質量部を意味するが;ただし、()内の%割合は、水以外の成分の合計に対する質量%値である。
【0053】
[A.ひよこ豆粉末の調製]
ひよこ豆粉末として、加圧加熱処理(エクストルーダー処理)したひよこ豆の粉末(A-1)、生ひよこ豆粉末(A-2)、茹でひよこ豆粉末(A-3)を、それぞれ以下の手順で用意した。
【0054】
[A-1.加圧加熱処理したひよこ豆粉末の調製]
原料であるひよこ豆(カナダ産の皮付き乾燥豆)をバッチ式の高速混合機に投入し、原料を粗粉砕した後、水を加え均質に混合した。得られた混合物を、二軸押出し成形装置(エクストルーダー)に30 kg/h の速度で投入した。押し出し条件としては、加水率26質量%、加熱温度130℃、スクリュー回転数350 rpmとした。原料供給と並行して連続式に加水を行い、エクストルーダーのシリンダー内で圧縮、混合、加熱、剪断の処理を行った。次に、押し出された処理物は、気流式乾燥粉砕機で80 ℃の条件で、乾燥と粉砕を連続的に行った。16メッシュの篩によりひよこ豆粉末(水分含有量4質量%)を得た。得られたひよこ豆粉末のメジアン径(D50)を、レーザー回折式粒度分布測定装置(品番: MT 3300II、メーカー名: マイクロトラック・ベル株式会社)で測定したところ、約37 μmであった。
【0055】
[A-2.生ひよこ豆粉末の調製]
生のひよこ豆を粉砕処理して、16メッシュフィルターで篩過して粉末を得た。
【0056】
[A-3.茹でひよこ豆粉末の調製]
ひよこ豆を、一晩、水に浸漬させた。その後、ひよこ豆を水中で加熱して(100℃)30分間茹でた。茹でたひよこ豆を乾燥し(45℃, 18時間)、粉砕処理をして16メッシュフィルターで篩過して粉末を得た。
【0057】
[B.食用加工品]
食用加工品の調製のために、[A]で調製した各ひよこ豆粉末とともに、以下の材料を用意した。
【0058】
<油脂分>
・ショートニング:プレミアムショートCF(S) (ADEKA社)
・菜種油:モーゼルHB-L (ADEKA社)
・パーム油:DC-17 (太陽油脂社)
【0059】
<増粘剤>
・アルファ化米デンプン:SSアルファ(上越スターチ社)
・イソマルトデキストリン:ファインスノウ(上越スターチ社)
・タマリンドシードガム:グリロイド3S(住友ファーマフード&ケミカル社)
【0060】
・デキストリン:サンデック#100(三和澱粉工業社)
・香料:ミルクフレーバーAPI-711 (武蔵野香料化学研究所社)
【0061】
[B-1.食用加工品の調製]
表1に示す材料をそれぞれ秤量する。ひよこ豆粉末と、増粘剤と、油脂成分(油脂成分が固体の場合には、予め湯煎で溶解しておく)とを混合した。別途、デキストリンと水(50~60℃のぬるま湯)とを混合して溶液とし、前記混合物とあわせて攪拌して撹拌物を得た。得られた撹拌物をホモジナイザーにて乳化させた(回転数11,000rpm, 処理時間3分間)。得られた乳化物を加熱殺菌した(加熱温度80~85℃, 同温度に達してからの処理時間は10分間)。
【0062】
加熱殺菌した混合物を、42メッシュフィルターで篩過して;約40℃にまで冷却後、凍結乾燥(フリーズドライ)し;凍結乾燥物を粉砕して、14メッシュフィルターで篩過して粉末(乾燥パウダー)として食用加工品を得た。
【0063】
【表1】
(数値は質量部を示すが;ただし、()内の割合%は、水以外の成分の合計に対する質量比を示す)
【0064】
実施例1における油脂分を変更した各種食用加工品(粉末)(実施例2及び3)を調製した。表2に示すように油脂分をショートニング(実施例1)、パーム油(実施例2)及び菜種油(実施例3)として、前述の実施例1で説明した調製手段と同様にして食用加工品を調製した。
【0065】
【表2】
【0066】
次に、実施例3における増粘剤(アルファ化米デンプン)の量を変更または無配合とした各種食用加工品(実施例4~6)を調製した。表3に示すように、増粘剤の含有量を2.0質量部とした例(実施例4)、0.5質量部とした例(実施例5)、増粘剤を配合しなかった例(実施例6)として、実施例1で説明した調製手段と同様にして食用加工品を調製した。
【0067】
【表3】
【0068】
次に、増粘剤を変更して各種食用加工品を調製した。表4に示すように増粘剤として、アルファ化米でんぷんとタマリンドシードガムとを組み合わせた例(実施例7)、イソマルトデキストリンとタマリンドシードガムとを組み合わせた例(実施例8)、タマリンドシードガムを単独で用いた例(実施例9)として、実施例1で説明した調製手段と同様にして食用加工品を調製した。
【0069】
【表4】
【0070】
次に、実施例6におけるひよこ豆粉末の配合量を調整して各種食用加工品を調製した。表5に示されるように、ひよこ豆粉末の含有量を、4.5質量部とした実施例6;3.0質量部とした実施例10;3.8質量部とした実施例11;1.5質量部とした実施例12として、実施例1で説明した調製手段と同様にして食用加工品を調製した。
【0071】
【表5】
【0072】
[B-2.食用加工品の評価]
表1~表5に示した各実施例及び比較例の食用加工品について、以下の手順で分散性、及び風味・口溶けを評価した。
【0073】
(分散性の評価)
各実施例及び比較例で得られた粉末(乾燥パウダー)としての食用加工品30質量部を、70質量部の水に加えて攪拌して分散させ、24℃で24時間静置し、以下の基準で分散性を評価した。
〇:分散後24℃で24時間静置したときに、均一分散が維持されている。
△:分散後24℃で24時間静置したときに、一部クリーミング若しくは凝集若しくは合一が起こるが分層はしていない。
×:分散後24℃で24時間静置したときに、分層がみられた。
【0074】
(風味・口溶けの評価)
実施例1及び比較例1~3で得られた粉末30質量部を、70質量部の水(ぬるま湯)に加えて攪拌して分散させ、それを十分に訓練された被験者3名に食させて、クリーム感の有無、及びひよこ豆由来のえぐ味の有無、について評価した。
〇:クリーム感が感じられ、口溶けがよい。
△:クリーム感が感じられるが、口溶けがあまり良くない。
×:クリーム感が弱いかほぼ感じられず、口溶けが悪く、且つ、えぐ味が強い。
【0075】
実施例1及び比較例1~3の粉末としての食用加工品(表1参照)の分散性を評価したときの、分散直後(A)、分散後24℃で1時間静置した時点(B)、分散後24℃で24時間静置した時点(C)における分散状態を示す写真を図2に示す。比較例1~3ではいずれも、時間が経過すると水溶部と油脂部とが分離していくことがわかる。これに対して、実施例1では24時間経過しても、均一な分散状態が維持されていることがわかる。
【0076】
また図3には、実施例1及び比較例1~3の粉末としての食用加工品(表1参照)の調製において、加熱殺菌直後(篩過する前)の乳化物の一部をサンプル瓶に入れて静置したときの写真を示す。サンプル瓶に入れた直後(A)、1時間経過時(B)、6時間経過時(C)及び24時間経過時(D)である。粉末としての食用加工品を再分散させたときと同様に、比較例1~3ではいずれも、時間が経過すると水溶部と油脂部とが分離したが、実施例1では24時間経過しても、均一な分散状態が維持されていた。
【0077】
また、表1に示されるように、比較例1及び2では、若干のクリーム感が感じられたものの、口溶けが悪く、えぐ味が強かった。また、比較例3では、クリーム感が全く感じられず、口溶けが悪く、デキストリン由来の甘み以外の味がしなかった。これに対して、実施例1では、クリーム感が十分に感じられ、口溶けもよく、えぐ味はほとんどなかった。
【0078】
表2に示される評価結果から、植物油を変更しても、分散性がよく、風味や口溶けなどの官能評価もよい食用加工品が得られることがわかる。表3に示される評価結果から、増粘剤を添加した方が、分散性のよい食用加工品が得られることがわかる。表4に示される評価結果から、2以上の増粘剤を組み合わせると、食用加工品の分散性がより向上することが示唆された。表5に示される評価結果では、増粘剤を配合しなかったため分散性の評価はやや劣っているものの;ひよこ豆粉末の含有量を調整しても、風味や口溶けなどの官能評価は十分であった。
【0079】
[C.市販品との対比など]
市場から入手可能なミルク粉末として、以下の製品を用意した。これらは動物性のミルク粉末である。
・脱脂粉乳(北海道スキムミルク(雪印メグミルク社))
・ニューラクトND-106M(アサヒグループ食品社)
【0080】
実施例1と同様の手順で、比較例4及び5を表6に示される処方にそって、粉末としての食用加工品を調製し、その分散性及び風味・口溶けを評価した。また比較例6は、ニューラクトND-106Mを水に分散させて、分散性及び風味・口溶けを評価した。
【0081】
【表6】
【0082】
脱脂粉乳を用いた比較例4及び5では、ミルク感は感じられるものの、水っぽい風味でクリーム感が弱かった。また、比較例5のように脱脂粉乳の配合量が減少すると、分散性も悪化し、クリーミングが生じた。また、比較例6では、分散性がわるく、クリーミングが生じており、クリーム感が弱く、口溶けがあまりよくなかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の食用加工品は、植物性食品原料として、特に、植物性ミルクパウダーとして利用することができ;様々な植物性食品の調理において、ミルク原料として配合することができる。
図1
図2
図3