(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122294
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240902BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240902BHJP
【FI】
B25J5/00 A
G05D1/02 D
G05D1/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029757
(22)【出願日】2023-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】丸山 央
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
【テーマコード(参考)】
3C707
5H301
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707CS08
3C707HT11
3C707KS12
3C707KV09
3C707LT08
3C707LV15
3C707WA16
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE07
5H301EE12
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG23
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】第1の方向に作用部を作用させる第1の状態と、第2の方向に作用部を作用させる第2の状態とを切り替え可能な移動装置において、第1の状態における作用部の遊びの確保と第2の状態における作用部のふらつきの低減とを両立する。
【解決手段】移動装置は、対象物の方向を向くことで対象物に作用可能な作用部と、地面を走行して自装置を移動させる車両部と、多節リンク構造を有し、作用部と車両部とをつなぐリンク構造部と、を備え、リンク構造部は、多節リンク構造が死点の状態であり、作用部が第1の方向を向いて、作用部の配置の変化を許容する第1の状態と、多節リンク構造が死点の状態ではなく、作用部が第2の方向を向いて、作用部の配置の変化を許容しない第2の状態と、を切り替え可能に構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の方向を向くことで当該対象物に作用可能な作用部と、
地面を走行して自装置を移動させる車両部と、
多節リンク構造を有し、前記作用部と前記車両部とをつなぐリンク構造部と、を備え、
前記リンク構造部は、
前記多節リンク構造が死点の状態であり、前記作用部が第1の方向を向いて、当該作用部の配置の変化を許容する第1の状態と、
前記多節リンク構造が死点の状態ではなく、前記作用部が第2の方向を向いて、当該作用部の配置の変化を許容しない第2の状態と、を切り替え可能に構成される
ことを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記作用部は、前記作用として、前記第1の方向または前記第2の方向に存在する対象物を検知することを特徴とする、請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
前記作用部は、
前記第1の状態において、前記車両部の走行する地面上の、当該車両部の進行方向を示すラインを検知し、
前記第2の状態において、前記車両部の進行方向に存在する障害物を検知する
ことを特徴とする、請求項2に記載の移動装置。
【請求項4】
前記多節リンク構造は、前記車両部に固定される第1のアームと、前記作用部が取り付けられる第2のアームと、第3のアームと、第4のアームとを、この順に連結して環状とした4節リンク構造であることを特徴とする、請求項1に記載の移動装置。
【請求項5】
前記リンク構造部は、前記第1のアームの軸間距離と前記第3のアームの軸間距離とが等しく、かつ、前記第2のアームの軸間距離と前記第4のアームの軸間距離とが等しくなるように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の移動装置。
【請求項6】
前記第1のアームと前記第2のアームとは、前記多節リンク構造の前記環状の外側へ屈曲する屈曲部を有することを特徴とする、請求項5に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行路に敷設されたガイドラインを車体に備えたガイドセンサーで検知し、ガイドセンサーの信号により操舵されて走行する無人搬送車において、それぞれの車輪の中央前後に延出したアームにガイドセンサーを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)等の移動装置において、装置から伸びるアームの先端に取り付けられた作用部の向きを変化させ、作用部を異なる方向に位置する対象物に対して作用させる場合がある。例えば、アームの先端にセンサを取り付け、センサを移動装置の進行方向に向けた状態と、センサを地面の方向に向けた状態と、を切り替え、進行方向に存在する障害物等と地面に引かれたラインとを検知可能とする場合がある。この場合、センサを進行方向に向けた状態では、測定精度の確保等の理由により、作用部のふらつきを低減することが求められる。一方、センサを地面の方向に向けた状態では、例えば地面に凹凸や傾き等があってもセンサを向けた状態を維持できるように、センサの遊びの確保が求められる。
本発明の目的は、第1の方向に作用部を作用させる第1の状態と、第2の方向に作用部を作用させる第2の状態とを切り替え可能な移動装置において、第1の状態における作用部の遊びの確保と第2の状態における作用部のふらつきの低減とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、対象物の方向を向くことで当該対象物に作用可能な作用部と、地面を走行して自装置を移動させる車両部と、多節リンク構造を有し、前記作用部と前記車両部とをつなぐリンク構造部と、を備え、前記リンク構造部は、前記多節リンク構造が死点の状態であり、前記作用部が第1の方向を向いて、当該作用部の配置の変化を許容する第1の状態と、前記多節リンク構造が死点の状態ではなく、前記作用部が第2の方向を向いて、当該作用部の配置の変化を許容しない第2の状態と、を切り替え可能に構成されることを特徴とする移動装置である。
請求項2に記載の発明は、前記作用部は、前記作用として、前記第1の方向または前記第2の方向に存在する対象物を検知することを特徴とする、請求項1に記載の移動装置である。
請求項3に記載の発明は、前記作用部は、前記第1の状態において、前記車両部の走行する地面上の、当該車両部の進行方向を示すラインを検知し、前記第2の状態において、前記車両部の進行方向に存在する障害物を検知することを特徴とする、請求項2に記載の移動装置である。
請求項4に記載の発明は、前記多節リンク構造は、前記車両部に固定される第1のアームと、前記作用部が取り付けられる第2のアームと、第3のアームと、第4のアームとを、この順に連結して環状とした4節リンク構造であることを特徴とする、請求項1に記載の移動装置である。
請求項5に記載の発明は、前記リンク構造部は、前記第1のアームの軸間距離と前記第3のアームの軸間距離とが等しく、かつ、前記第2のアームの軸間距離と前記第4のアームの軸間距離とが等しくなるように構成されることを特徴とする、請求項4に記載の移動装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第1のアームと前記第2のアームとは、前記多節リンク構造の前記環状の外側へ屈曲する屈曲部を有することを特徴とする、請求項5に記載の移動装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1の方向に作用部を作用させる第1の状態と、第2の方向に作用部を作用させる第2の状態とを切り替え可能な移動装置において、第1の状態における作用部の遊びの確保と第2の状態における作用部のふらつきの低減とを両立した移動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】従来の移動装置を説明するための図であり、(a)はアームに蝶番を設けた従来の移動装置の概略図、(b)は蝶番を有しないアームを備える従来の移動装置の概略図である。
【
図2】車両部とアームとの間を回転軸によって接続した従来の移動装置を説明する図であり、(a)はライントレースモードにおける移動装置の概略図、(b)は近接覚モードにおける移動装置の概略図である。
【
図3】車両部とアームとの間を回転軸によって接続した従来の移動装置を説明する図であり、(a)は近接覚モードにおける移動装置の概略図、(b)~(d)はライントレースモードにおける移動装置の概略図である。
【
図4】4節リンク構造を説明する図であり、(a)は4節リンク構造が死点ではない状態の概略図、(b)は4節リンク構造の死点状態の概略図である。
【
図5】第1の実施の形態が適用される移動装置の斜視図である。
【
図6】第1の実施の形態が適用される移動装置における近接覚モードとライントレースモードとの切り替えについて説明する図であり、(a)は近接覚モードの概略図、(b)はライントレースモードの概略図である。
【
図7】第2の実施の形態が適用される移動装置について説明する図であり、(a)は移動装置を空中のレーダー測定に利用する場合の概略図、(b)は移動装置を地中のレーダー測定に利用する場合の概略図である。
【
図8】第3の実施の形態が適用される移動装置について説明する図であり、(a)は移動装置を地面の方向以外に存在する対象物の切断に利用する場合の概略図、(b)は移動装置を地面の方向に存在する対象物の切断に利用する場合の概略図である。
【
図9】第4の実施の形態が適用される移動装置について説明する図であり、(a)は移動装置が他装置と接続される場合の概略図、(b)は接続後の移動装置と他装置との位置関係が変化した場合の概略図である。
【
図10】5節リンク構造を有する応用例のリンク構造部を説明する図であり、(a)は5節リンク構造が死点ではない状態の概略図、(b)は5節リンク構造が死点状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以降、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<従来の技術>
まず、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明の実施の形態が適用されない従来の技術について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、従来の移動装置1′,1″を説明するための図であり、(a)はアーム10′に蝶番13′を設けた従来の移動装置1′の概略図、(b)は蝶番を有しないアーム10″を備える従来の移動装置1″の概略図である。
【0009】
移動装置1′,1″は、地面を走行して自装置を移動させる車両部20と、車両部20から伸びるアーム10′,10″と、アーム10′,10″の先端に設けられた取付部30とを有している。
取付部30には、対象物の検知(センシング)を行うセンサ31が取り付けられている。このセンサ31によって地面に引かれたライン(不図示)を検知することで、移動装置1′,1″は、ラインに沿って移動することができる。なお、移動装置がセンサ31を地面の方向に向け、地面のラインを検知することを「ライントレース」と呼び、移動装置がライントレースを行う状態を「ライントレースモード」と呼ぶ場合がある。
【0010】
図1(a)に示すように、移動装置1′のアーム10′は、2本の棒状部材11′,12′が蝶番13′によって接続された構造を有し、棒状部材11′,12′のなす角度が調整可能になっている。
一方、
図1(b)に示すように、移動装置1″のアーム10″は、蝶番を有さず、1本の棒状部材によって構成されている。
移動装置1′,1″は、アーム10′,10″を地面に向けて伸ばし、センサ31を地面に沿わせながら走行することで、ライントレースを行うことができる。なお、取付部30におけるセンサ31の周囲には、ライントレースを行う場合に、センサ31と地面との間に予め定められた距離を確保しつつ、地面に対する摺動性を確保する摺動部材が取り付けられている。
【0011】
ところで、移動装置において、センサ31を、ライントレースだけでなく、移動装置の進行方向にある壁等の障害物を検知するセンサ、いわゆる近接覚センサとして利用(「近接覚モード」と呼ぶ場合がある。)したい場合がある。
従来の移動装置1′,1″において近接覚モードを搭載する場合は、車両部20とアーム10′,10″との間を回転軸によって接続し、この回転軸をモータ等によって回転させて、アーム10′,10″の地面に対する角度を変更可能に構成することが考えられる。
【0012】
図2は、車両部20とアーム10′との間を回転軸40′によって接続した従来の移動装置1′を説明する図であり、(a)はライントレースモードにおける移動装置1′の概略図、(b)は近接覚モードにおける移動装置1′の概略図である。
図3は、車両部20とアーム10″との間を回転軸40″によって接続した従来の移動装置1″を説明する図であり、(a)は近接覚モードにおける移動装置1″の概略図、(b)~(d)はライントレースモードにおける移動装置1″の概略図である。
図示するように、回転軸40の回転により、アーム10′,10″が地面に略平行な状態(
図2(a)、
図3(b)~(d))と、アーム10′,10″が地面に略垂直な状態(
図2(b)、
図3(a))とが切り替わり、センサ31の向く方向が地面方向と進行方向との間で切り替わるので、ライントレースモードと近接覚モードとが切り替え可能となる。
【0013】
ここで、従来の移動装置1′では、回転軸40′によりアーム10′の角度が決められた状態であっても、蝶番13′によりアーム10′の形状を変化させることができるので、センサ31の位置や向きが完全には固定されない。言い換えると、蝶番13′によって、センサ31の配置に遊びが確保されている。したがって、従来の移動装置1′では、
図2(a)に示すライントレースモードにおいて地面に凹凸や傾きがあっても、センサ31の遊びの範囲内でセンサ31の配置が調整され、センサ31を地面に向けた状態を維持することができる。
しかしながら、
図2(b)に示すように近接覚モードに切り替えた場合、棒状部材11′や取付部30等の重みとセンサ31の遊びとに起因して、アーム10′における蝶番13′よりも先の部分が振動し、センサ31にふらつきが生じてしまう。
【0014】
一方、従来の移動装置1″では、蝶番を有しないので、回転軸40″によりアーム10″の角度が決められた状態においてセンサ31の位置や向きが完全に固定される。したがって、
図3(a)に示すように、近接覚モードにおけるセンサ31のふらつきが抑制される。
しかしながら、ライントレースモードに切り替えた場合、センサ31の遊びが確保されていないために、地面に凹凸や傾きがあると、
図3(b)に示すようにセンサ31を地面に沿わせられない恐れがある。このとき、回転軸40″を回転させてセンサ31を地面に沿わせようとすると、
図3(c)に示すように車両部20が地面から浮いてしまったり、
図3(d)に示すように回転軸40″や回転軸40″を回転させるモータ等に負荷がかかったりしてしまう恐れがある。
【0015】
このように、従来の移動装置1′,1″においては、ライントレースモードにおけるセンサ31の遊びの確保と近接覚モードにおけるふらつきの抑制との両立が困難であった。
本発明の実施の形態が適用される移動装置は、従来の移動装置1′,1″のアーム10′,10″に代えて、多節リンク構造を有するリンク構造部を備えることにより、遊びの確保とふらつきの抑制との両立を可能としている。
以下、本発明の第1~第4の実施の形態および変形例等について説明する。
【0016】
<多節リンク構造>
まず始めに、
図4を用いて、本発明の実施の形態に係る多節リンク構造について説明する。ここでは、4節リンク構造を例に説明する。
図4は、4節リンク構造を説明する図であり、(a)は4節リンク構造が死点ではない状態の概略図、(b)は4節リンク構造の死点状態の概略図である。
図示するように、4節リンク構造は、4本のアーム9a,9b,9c,9d(区別せずに符号9を用いて表記する場合がある。)がこの順(
図4(a)における時計回り)に環状に連結された構造である。各アーム9の間は4つの回転軸91a,91b,91c,91d(区別せずに符号91を用いて表記する場合がある。)により接続され、回転軸91の回転によりアーム9同士のなす角度を調整可能となっている。なお、4つの回転軸91のうち、回転軸91bはモータ等により駆動され回転を制御されるため、回転軸91bを駆動軸91bと表記して区別する場合がある。
【0017】
図4(a),(b)に示すように、4節リンク構造を始めとする多節リンク構造では、死点ではない状態と死点状態とを取り得る。
図4(a)に示す死点ではない状態では、例えばアーム9cの位置および駆動軸91bの角度を固定した場合、他のアーム9a,9b,9dおよび回転軸91a,91c,91dの空間上の配置(座標)が固定される。
一方、
図4(b)に示す死点状態では、例えばアーム9cの位置および駆動軸91bの角度を固定した場合であっても、アーム9a,9b,9dおよび回転軸91a,91c,91dの空間上の配置が完全には固定されない。なお、4節リンク構造では、死点状態において4つの回転軸91が略一直線上に並んだ状態となる。
【0018】
このように、4節リンク構造を始めとする多節リンク構造は、死点ではない状態においては、あるアームおよび回転軸が固定されると他のアームおよび回転軸の空間上の配置が固定され、死点状態においては、あるアームおよび回転軸が固定されても他のアームおよび回転軸の空間上の配置が固定されない、という性質を有する。
【0019】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態について、
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態が適用される移動装置1の斜視図である。
図6は、第1の実施の形態が適用される移動装置1における近接覚モードとライントレースモードとの切り替えについて説明する図であり、(a)は近接覚モードの概略図、(b)はライントレースモードの概略図である。
なお、移動装置1において、従来の移動装置1′,1″と同様の構成については、同じ名称および符号を用いて説明を省略する場合がある。
【0020】
図5、
図6に示すように、移動装置1は、センサ31と、センサ31が取り付けられる取付部30と、従来の移動装置1′,1″と同様の車両部20(
図5では省略)と、センサ31および取付部30と車両部20とをつなぐリンク構造部10と、を備える。
センサ31は、例えば従来の移動装置1′,1″と同様の光学式センサであり、地面に引かれたラインや障害物等の対象物を検知する。センサ31は、作用部の一例であり、センサ31による検知は、作用の一例である。
【0021】
取付部30は、センサ31が取り付けられる部分であり、
図5の例では多数のセンサ31が一方向に並んでいることに対応して、一方向を長手方向とする形状を有している。なお、センサ31の個数や取付部30の形状等は限定されるものではなく、必要な検知の精度や検知の対象物に応じて適宜変更して良い。
【0022】
リンク構造部10は、4つの回転軸12a,12b,12c,12d(区別せず回転軸12と呼ぶ場合がある。)により、4本のアーム11a,11b,11c,11d(区別せずアーム11と呼ぶ場合がある。)がこの順で環状に連結された、4節リンク構造を有している。より詳しくは、アーム11aとアーム11bとが回転軸12aによって角度を調整可能に接続され、アーム11bとアーム11cとが回転軸12bによって角度を調整可能に接続され、アーム11cとアーム11dとが回転軸12cによって角度を調整可能に接続され、アーム11dとアーム11aとが回転軸12dによって角度を調整可能に接続されることで、環状の4節リンク構造が形成されている。
【0023】
図6(a)に示すように、4本のアーム11のうち、アーム11cは、車両部20に取り付けられ、固定されている。このため、アーム11cを「固定アーム」と呼ぶ場合がある。また、アーム11dは、回転軸12dによりアーム11aと接続される端部において、4節リンク構造の環の外側に向けて突出する突出部13を有し、この突出部13の先端には作用部の一例であるセンサ31が取り付けられている。このため、アーム11dを「作用アーム」と呼ぶ場合がある。また、4つの回転軸12のうち、回転軸12bは、移動装置1の有するモータ等(不図示)により駆動され、回転制御される。このため、回転軸12bを「駆動軸」と呼ぶ場合がある。さらに、アーム11bは、駆動軸12bを介して固定アーム11cに接続され、駆動軸12bの回転制御に応じて、角度が変更される。このため、アーム11bを「駆動アーム」と呼ぶ場合がある。そして、アーム11aは、回転軸12aを介して駆動アーム11bに接続され、駆動アーム11bの動きに従って空間上の配置が定まる。このため、アーム11aを「従動アーム」と呼ぶ場合がある。
駆動軸12bを回転させるモータ等の制御は、移動装置1の備える制御部(不図示)によって行われる。
【0024】
なお、固定アーム11cは第1のアームの一例、作用アーム11dは第2のアームの一例、従動アーム11aは第3のアームの一例、駆動アーム11bは第4のアームの一例である。
また、作用アーム11dの備える突出部13の寸法や突出の角度、形状等は、ライントレースモードや近接覚モードにおいて、センサ31が対象物を検知可能であれば、限定されない。後述する他の実施の態様においても、作用部が対象物へ作用可能であれば限定されない。
【0025】
図6(a)に示すように、リンク構造部10が死点ではない状態においては、従動アーム11aと固定アーム11cとが対向し、駆動アーム11bと作用アーム11dとが対向する。
本実施の形態に係るリンク構造部10において、対向する2本のアーム11は、軸間距離が等しく構成される。ここで、軸間距離とは、あるアーム11に対して設けられる2つの回転軸12間の距離のことを指す。例えば、従動アーム11aの軸間距離La、すなわち回転軸12dと回転軸12aとの間の距離と、対向する固定アーム11cの軸間距離Lc、すなわち回転軸12cと駆動軸12bとの間の距離とは、等しく構成される。
【0026】
また、本実施の形態に係るリンク構造部10において、従動アーム11aは、4節リンク構造の環の外側に向けて屈曲する2つの屈曲部111,112を有している。また、固定アーム11cは、4節リンク構造の環の外側に向けて屈曲する2つの屈曲部113,114を有している。このため、従動アーム11aは、軸間距離Laに対応する仮想線Laに沿っておらず、仮想線Laよりも外側を通ることになる。このことは、固定アーム11cにおいても同様である。
したがって、本実施の形態に係るリンク構造部10の4節リンク構造は、全体として、4つの回転軸12を頂点とする四角形の環状ではなく、4つの回転軸12と屈曲部111,112,113,114とを頂点とする八角形の環状となっている。
【0027】
移動装置1における近接覚モードおよびライントレースモードについて説明する。
図6(a)に示すように、近接覚モードの移動装置1は、センサ31を自装置の進行方向(
図6(a)における紙面左側)に向け、進行方向に配置された障害物を対象物として検知する。
ここで、移動装置1の近接覚モードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は、4つの回転軸12が一直線上になく、死点ではない状態である。
図4(a)を用いて先述したように、死点ではない状態の4節リンク構造では、1つのアームおよび回転軸が固定されると、他のアームおよび他の回転軸の空間上の配置が固定される。したがって、移動装置1の近接覚モードにおいては、車両部20に対するセンサ31の空間上の配置の変化が許容されず、略固定された状態となる。この結果、本実施の形態が適用される移動装置1の近接覚モードでは、従来の移動装置1′(
図2(b)参照)に比べて、センサ31のふらつきが抑制されることになる。
【0028】
一方、
図6(b)に示すように、ライントレースモードの移動装置1は、センサ31を地面の方向(
図6(b)における紙面下側)に向け、地面に引かれたラインを対象物として検知する。
ここで、移動装置1のライントレースモードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は、4つの回転軸12が略一直線上に並ぶ、死点状態である。
図4(b)を用いて説明したように、死点状態の4節リンク構造では、1つのアームおよび回転軸が固定されても、他のアームおよび他の回転軸の空間上の配置が完全には固定されない。したがって、移動装置1のライントレースモードにおいては、車両部20に対するセンサ31の空間上の配置の変化が許容され、完全には固定されない状態となる。この結果、本実施の形態が適用される移動装置1のライントレースモードでは、センサ31の遊びが確保され、従来の移動装置1″(
図3(b)~(d)参照)に比べ、センサ31を地面に沿わせ易くなる。
【0029】
以上説明したように、第1の実施の形態が適用される移動装置1において、センサ31を地面の方向に向けて検知を行うライントレースモードでは、リンク構造部10の4節リンク構造が死点状態となることで、センサ31の遊びが確保される。また、センサ31を進行方向に向けて検知を行う近接覚モードでは、リンク構造部10が死点ではない状態となることで、センサ31のふらつきが抑制される。
なお、「地面の方向」は第1の方向の一例であり、ライントレースモードは第1の状態の一例である。また、「進行方向」は第2の方向の一例であり、近接覚モードは第2の状態の一例である。
【0030】
<第2の実施の形態>
次に、
図7を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、第2の実施の形態が適用される移動装置2について説明する図であり、(a)は移動装置2を空中のレーダー測定に利用する場合の概略図、(b)は移動装置2を地中のレーダー測定に利用する場合の概略図である。
図示するように、第2の実施の形態が適用される移動装置2は、第1の実施の形態が適用される移動装置1のセンサ31(
図5、
図6参照)に代えてレーダー32を備える。他の構成は移動装置1と同様であるので、同様の符号を付して説明を省略する。なお、移動装置2は、移動装置1と同様の車両部20を備えるが、図示を省略している。
【0031】
レーダー32は、電波を出射し、対象物から反射してきた電波を受信することによって、対象物の検知を行う。レーダー32は、作用部の一例である。
図7(a)に示すように、移動装置2では、レーダー32を進行方向へ向け、進行方向の空間上に存在する対象物を検知することができる(「空中レーダーモード」と呼ぶ場合がある。)。空中レーダーモードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点ではない状態であり、車両部20に対するレーダー32の空間上の配置の変化が許容されず、略固定された状態となる。この結果、移動装置2の空中レーダーモードでは、レーダー32のふらつきが抑制されることになる。
【0032】
また、
図7(b)に示すように、移動装置2では、レーダー32を地面の方向に向け、地面上または地中に存在する対象物を検知することができる(「地中レーダーモード」と呼ぶ場合がある。)。地中レーダーモードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点状態であり、車両部20に対するレーダー32の空間上の配置の変化が許容され、完全には固定されない状態となる。この結果、移動装置2の地中レーダーモードでは、レーダー32の遊びが確保されることになる。
【0033】
以上説明したように、第2の実施の形態が適用される移動装置2において、レーダー32を地面の方向に向けて検知を行う地中レーダーモードでは、リンク構造部10の4節リンク構造が死点状態となることで、レーダー32の遊びが確保される。また、レーダー32を進行方向に向けて検知を行う空中レーダーモードでは、リンク構造部10が死点ではない状態となることで、レーダー32のふらつきが抑制される。
なお、地中レーダーモードは第1の状態の一例であり、空中レーダーモードは第2の状態の一例である。
【0034】
<第3の実施の形態>
次に、
図8を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図8は、第3の実施の形態が適用される移動装置3について説明する図であり、(a)は移動装置3を地面の方向以外に存在する対象物の切断に利用する場合の概略図、(b)は移動装置3を地面の方向に存在する対象物の切断に利用する場合の概略図である。
図示するように、第3の実施の形態が適用される移動装置3は、第1の実施の形態が適用される移動装置1のセンサ31(
図5、
図6参照)に代えて切断刃33を備える。他の構成は移動装置1と同様であるので、同様の符号を付して説明を省略する。なお、移動装置3は、移動装置1と同様の車両部20を備えるが、図示を省略している。
【0035】
切断刃33は、不図示のモータ等によって回転し、回転軸と直交する方向の対象物を切断可能である。切断刃33は、作用部の一例である。
図8(a)に示すように、移動装置3では、切断刃33を進行方向へ向け、進行方向に存在する対象物を切断することができる(「切断モード」と呼ぶ場合がある。)。切断モードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点ではない状態であり、車両部20に対する切断刃33の空間上の配置の変化が許容されず、略固定された状態となる。この結果、移動装置3の切断モードでは、切断刃33のふらつきが抑制されることになる。
【0036】
また、
図8(b)に示すように、移動装置3では、切断刃33を地面の方向に向け、地面上に存在する草等の対象物を切断することができる(「草刈りモード」と呼ぶ場合がある。)。草刈りモードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点状態であり、車両部20に対する切断刃33の空間上の配置の変化が許容され、完全には固定されない状態となる。この結果、移動装置3の草刈りモードでは、切断刃33の遊びが確保されることになる。
【0037】
以上説明したように、第3の実施の形態が適用される移動装置3において、切断刃33を地面の方向に向けて切断を行う草刈りモードでは、リンク構造部10の4節リンク構造が死点状態となることで、切断刃33の遊びが確保される。また、切断刃33を進行方向に向けて検知を行う切断モードでは、リンク構造部10が死点ではない状態となることで、切断刃33のふらつきが抑制される。
なお、草刈りモードは第1の状態の一例であり、切断モードは第2の状態の一例である。
【0038】
<第4の実施の形態>
次に、
図9を用いて、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図9は、第4の実施の形態が適用される移動装置4について説明する図であり、(a)は移動装置4が他装置5と接続される場合の概略図、(b)は接続後の移動装置4と他装置5との位置関係が変化した場合の概略図である。
図示するように、第4の実施の形態が適用される移動装置4は、第1の実施の形態が適用される移動装置1のセンサ31(
図5、
図6参照)に代えてコネクタ34を備える。他の構成は移動装置1と同様であるので、同様の符号を付して説明を省略する。なお、移動装置4は、移動装置1と同様の車両部20を備えるが、図示を省略している。
【0039】
コネクタ34は、移動装置4と他装置5との接続を確保する部分、言い換えると、2装置間の接点となる部分である。コネクタ34は、作用部の一例である。
移動装置4と他装置5とは、例えば、群ロボットとして機能する装置群である。より詳しくは、2装置が接続されていない状態では各々が独立した装置として動作し、接続が確保された状態では協調して移動等を行うように制御され、群ロボットとして動作する。
【0040】
移動装置4と他装置5との接続が形成される場合には、移動装置4のコネクタ34と他装置5のコネクタ51とが正確に突き当たるように、コネクタ34とコネクタ51との位置合わせを行う必要がある。
図9(a)に示すように、移動装置4は、コネクタ34を他装置5の方向へ向け、他装置5の備えるコネクタ51との位置合わせを行う(「位置合わせモード」と呼ぶ場合がある。)。位置合わせモードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点ではない状態であり、車両部20に対するコネクタ34の空間上の配置の変化が許容されず、略固定された状態となる。この結果、コネクタ34のふらつきが抑制され、他装置5のコネクタ51との位置合わせが容易となる。つまり、移動装置4と他装置5との接続の確保が容易となり、群ロボットを形成し易くなる。
【0041】
ここで、移動装置4と他装置5とが接続された状態で、群ロボットが動作すると、移動装置4と他装置5との位置関係が変化する場合がある。このとき、移動装置4が位置合わせモードのままであり、コネクタ34の空間上の配置の変化が許容されない状態であると、コネクタ34やコネクタ51等に負荷がかかる恐れがある。そこで、移動装置4は、他装置5との接続を確保すると、
図9(b)に示す接続維持モードへと移行する。
図9(b)に示すように、移動装置4の接続維持モードにおいて、リンク構造部10の4節リンク構造は死点状態であり、車両部20に対するコネクタ34の空間上の配置の変化が許容され、完全には固定されない状態となる。この結果、移動装置4の接続維持モードでは、コネクタ51の遊びが確保されることになり、移動装置4と他装置5との位置関係が変化した場合であっても、コネクタ34やコネクタ51等にかかる負荷が軽減される。
【0042】
以上説明したように、第4の実施の形態が適用される移動装置4において、接続維持モードでは、リンク構造部10の4節リンク構造が死点状態となることで、コネクタ34の遊びが確保される。また、位置合わせモードでは、リンク構造部10が死点ではない状態となることで、コネクタ34のふらつきが抑制される。
なお、接続維持モードは第1の状態の一例であり、位置合わせモードは第2の状態の一例である。
【0043】
<応用例>
次に、
図10を用いて、リンク構造部10の4節リンク構造とは異なる多節リンク構造を用いる場合の応用例について説明する。ここでは、5節リンク構造を用いる場合の応用例について説明する。
図10は、5節リンク構造を有する応用例のリンク構造部10-2を説明する図であり、(a)は5節リンク構造が死点ではない状態の概略図、(b)は5節リンク構造が死点状態の概略図である。
【0044】
図10(a)に示すように、リンク構造部10-2は、5つの回転軸12e,12f,12g,12h,12i(区別せず回転軸12と呼ぶ場合がある。)により、5本のアーム11e,11f,11g,11h,11i(区別せずアーム11と呼ぶ場合がある。)がこの順で環状に連結された、5節リンク構造を有している。より詳しくは、アーム11eとアーム11fとが回転軸12eによって角度を調整可能に接続され、アーム11fとアーム11gとが回転軸12fによって角度を調整可能に接続され、アーム11gとアーム11hとが回転軸12gによって角度を調整可能に接続され、アーム11hとアーム11iとが回転軸12hによって角度を調整可能に接続され、アーム11iとアーム11eとが回転軸12iによって角度を調整可能に接続されることで、環状の5節リンク構造が形成されている。
【0045】
リンク構造部10-2の備える5本のアーム11のうち、アーム11gは、リンク構造部10におけるアーム11c(
図6参照)と同様に車両部20に固定される。このため、固定アーム11gと表記する場合がある。
また、アーム11iは、回転軸12iによりアーム11eと接続される端部において、5節リンク構造の環の外側に向けて突出する突出部13を有し、この突出部13の先端にセンサ31やレーダー32、切断刃33、コネクタ34等の作用部が取り付けられる。このため、作用アーム11iと表記する場合がある。
【0046】
さらに、リンク構造部10-2の備える5つの回転軸12のうち、回転軸12f,12hは、移動装置の有するモータ等により駆動され、回転制御される。このため、第1の駆動軸12f、第2の駆動軸12hと表記する場合がある。なお、第1の駆動軸12f、第2の駆動軸12hは、互いに異なるモータ等に接続され、各々回転制御される。
さらにまた、アーム11fは、第1の駆動軸12fを介して固定アーム11gに接続され、第1の駆動軸12fの回転制御に応じて動く。このため、第1の駆動アーム11fと表記する場合がある。一方、アーム11hは、第2の駆動軸12hを介して作用アーム11iに接続され、第2の駆動軸12hの回転制御に応じて動く。このため、第2の駆動アーム11hと表記する場合がある。そして、アーム11eは、回転軸12eを介して第1の駆動アーム11fに接続され、第1の駆動アーム11fの動きに従って空間上の配置が定まる。このため、従動アーム11eと表記する場合がある。
【0047】
リンク構造部10-2の有する5節リンク構造は、4節リンク構造(
図4参照)と同様に、死点ではない状態と、死点状態とを取り得る。
図10(a)に示すように、リンク構造部10-2を死点ではない状態とした場合、固定アーム11gが車両部20(不図示)に固定され、かつ、第1の駆動軸12fおよび第2の駆動軸12hの角度が固定されると、他のアーム11および回転軸12の車両部20に対する空間上の配置が固定される。すなわち、突出部13の空間上の配置が固定され、作用部の空間上の配置が固定される。
したがって、
図10(a)に示すように、例えば作用部を車両部20の進行方向に向けた状態において、作用部のふらつきを軽減することができる。
【0048】
そして、
図10(b)に示すように、第1の駆動軸12fを回転制御してリンク構造部10-2を死点状態とした場合、固定アーム11gが車両部20に固定され、かつ、第1の駆動軸12fおよび第2の駆動軸12hの角度が固定されても、他のアーム11および回転軸12の車両部20に対する空間上の配置は完全には固定されない。すなわち、作用部の空間上の配置が完全には固定されないこととなる。
したがって、
図10(b)に示すように、例えば作用部を地面の方向に向けた状態において、作用部の遊びを確保することができる。
【0049】
このような5節リンク構造を有するリンク構造部10-2によっても、第1の方向に作用部を作用させる第1の状態と、第2の方向に作用部を作用させる第2の状態とを切り替え可能として、第1の状態における作用部の遊びの確保と第2の状態における作用部のふらつきの低減とを両立することができる。
【0050】
なお、
図10(a),(b)では、第2の駆動軸12hを回転制御せず、すなわち駆動アーム11hと作用アーム11iとがなす角度を固定した状態で、死点ではない状態と死点状態とを切り替えている。5節リンク構造を有するリンク構造部10-2においては、第2の駆動軸12hを回転制御し、駆動アーム11hと作用アーム11iとがなす角度を異ならせることによって、異なる複数の死点状態を取り得る。そして、複数の死点状態の各々において、作用部の空間上の配置が異なり、作用部が作用する向きが異なることになる。したがって、5節リンク構造を有するリンク構造部10-2によれば、複数の向きに対して、作用部の遊びを確保しながら作用部を作用させることができる。
【0051】
<その他>
リンク構造部の有する多節リンク構造は、リンク構造全体の自由度が1以上となるものであれば良い。したがって、上記した4節リンク構造(自由度1)や5節リンク構造(自由度2)の他、6節リンク構造(自由度3)またはそれ以上(自由度4以上)の多節リンク構造とすることもできる。
ただし、死点ではない状態における作用部の空間上の配置(座標)を制御する上では、多節リンク構造の自由度は3で十分であり、自由度4以上では冗長となる。一方で、多節リンク構造の自由度を高くするほど、制御に必要な駆動軸の数が増加し、駆動軸の回転制御を行うモータ等の数は増加することになる。このため、リンク構造部の多節リンク構造としては、自由度が1以上3以下となる多節リンク構造、すなわち、4節リンク構造、5節リンク構造、6節リンク構造のうち何れかを適用すると良い。
【0052】
また、リンク構造部の「死点ではない状態」における多節リンク構造の形状、つまり、各アームおよび各回転軸の空間上の配置と、この空間上の配置によって規定される作用部の空間上の配置は単なる例示であって、図示したものに限られる訳ではない。多節リンク構造の設計および駆動軸の回転制御の範囲内で、多様な作用部の配置が可能である。
つまり、リンク構造部が死点ではない状態である場合の作用部の作用する向きは、移動装置の進行方向に限定されず、駆動軸を回転制御して他の向きに作用させることも可能である。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施の形態を2つ以上組み合わせたものや、上記の実施の形態に種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4…移動装置、10,10-2…リンク構造部、11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11i…アーム、12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i…回転軸、20…車両部、31…センサ、32…レーダー、33…切断刃、34…コネクタ