(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122296
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】加工図形データ生成方法、加工図形データ生成装置、レーザ加工システム、加工図形データ生成プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4093 20060101AFI20240902BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240902BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240902BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
G05B19/4093 D
B23K26/082
B23K26/00 Z
B23K26/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029760
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100211513
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 哲
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄一
【テーマコード(参考)】
3C269
4E168
【Fターム(参考)】
3C269AB11
3C269BB05
3C269CC01
3C269EF39
3C269EF56
3C269EF59
3C269EF71
3C269QE07
3C269QE18
4E168CB04
4E168CB08
4E168EA15
4E168KA07
4E168KB02
(57)【要約】
【課題】レーザ加工におけるステージまたはガルバノスキャナの移動効率が改善され、タクトタイムの短縮を実現する。
【解決手段】図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、加工順序変換ステップは、レーザ加工機が第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合のレーザ加工機と被加工物との相対的な移動距離が、第1の加工図形データに含まれる描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合のレーザ加工機と被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、第2の加工図形データを生成することを特徴とする加工図形データ生成方法。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザ光を照射してレーザ加工を行うレーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成方法であって、
図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、
前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、
前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、
前記加工順序変換ステップは、
前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする加工図形データ生成方法。
【請求項2】
前記加工順序変換ステップは、
前記第1の加工図形データに含まれる前記複数の描画情報のうち、既定の基準点から最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第1選択ステップと、
前記第1選択ステップで選択された前記描画情報を選択対象から削除する削除ステップと、
前記第1選択ステップで選択された前記描画情報が表す位置から、最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第2選択ステップとを含み、
前記第1の加工図形データに含まれるすべての描画情報が選択されるまで前記削除ステップおよび前記第2選択ステップを繰り返し、
選択された順に前記描画情報を並び替えて前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項3】
前記描画情報は円を表す中心座標と半径または直径を表す情報とを含み、
前記第1選択ステップおよび前記第2選択ステップは、円の中心座標を用いて前記最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項4】
前記描画情報は線分または曲線を表す始点および終点の座標を少なくとも含み、
前記第1選択ステップおよび前記第2選択ステップは、線分または曲線の始点または終点の座標を用いて前記最も近い一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項5】
前記第1選択ステップにおいて始点が選択された場合には、前記第2選択ステップにおいて、前記始点に対応する終点から前記最も近い一つの描画情報を選択し、
前記第1選択ステップにおいて終点が選択された場合には、前記第2選択ステップにおいて、前記終点に対応する始点から前記最も近い一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項4に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項6】
前記加工図形データ生成方法は、
前記第1の加工図形データを生成する生成ステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項7】
前記加工図形データ生成方法は、
前記第2の加工図形データをNC(Numerical control)プログラムに変換する変換ステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項8】
前記第1の加工図形データは、コンピュータ支援設計を用いて生成されたdxfファイルである
ことを特徴とする請求項1に記載の加工図形データ生成方法。
【請求項9】
レーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成装置であって、
図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得手段と、
前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換手段と、
前記第2の加工図形データを出力する出力手段とを備え、
前記加工順序変換手段は、
前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする加工図形データ生成装置。
【請求項10】
前記加工順序変換手段は、
前記第1の加工図形データに含まれる前記複数の描画情報のうち、既定の基準点から最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第1選択部と、
前記第1部にて選択された前記描画情報を選択対象から削除する削除部と、
前記第1選択部で選択された前記描画情報が表す位置から、最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第2選択部とを備え、
前記第1の加工図形データに含まれるすべての描画情報が選択されるまで削除部および前記第2選択部の処理を繰り返し、
選択された順に前記描画情報を並び替えて前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする請求項9に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項11】
前記描画情報は円を表す中心座標と半径または直径を表す情報とを含み、
前記第1選択部および前記第2選択部は、円の中心座標を用いて前記最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項10に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項12】
前記描画情報は線分または曲線を表す始点および終点の座標を少なくとも含み、
前記第1選択部および前記第2選択部は、線分または曲線の始点または終点の座標を用いて前記最も近い一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項10に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項13】
前記第1選択部が始点を選択した場合には、前記第2選択部は、前記始点に対応する終点から前記最も近い一つの描画情報を選択し、
前記第1選択部が終点を選択した場合には、前記第2選択部は、前記終点に対応する始点から前記最も近い一つの描画情報を選択する
ことを特徴とする請求項12に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項14】
前記加工図形データ生成装置は、
前記第1の加工図形データを生成する生成手段さらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項15】
前記加工図形データ生成装置は、
前記第2の加工図形データをNC(Numerical control)プログラムに変換する変換手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載の加工図形データ生成装置。
【請求項16】
前記第1の加工図形データは、コンピュータ支援設計を用いて生成されたdxfファイルである
ことを特徴とする請求項9に記載の加工図形データ生成装置
【請求項17】
被加工物にレーザ光を照射することにより前記被加工物を加工するレーザ加工機と、前記レーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成装置とから構成されるレーザ加工システムであって、
前記加工図形データ生成装置は、
図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得手段と、
前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換手段と、
前記第2の加工図形データを出力する出力手段とを備え、
前記加工順序変換手段は、
前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成し、
前記レーザ加工機は、
前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ光を所望の集光径に集光する集光光学系と、
前記被加工物と前記レーザ光の照射位置とを相対的に変位させる加工ステージまたはガルバノスキャナと、
前記第2の加工図形データを前記加工図形データ生成装置から取得する取得部と、
加工図形データに基づき前記加工ステージまたは前記ガルバノスキャナを制御する制御部とを備える
ことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項18】
加工図形データ生成装置で用いる加工図形データ生成プログラムであって、
前記加工図形データ生成装置は、記憶部とプロセッサとを備え、前記プロセッサが前記メモリに記憶されている前記加工順序変換プログラムを実行することにより、
図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、
前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、
前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを実行する、
前記加工順序変換ステップは、
前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする加工図形データ生成プログラム。
【請求項19】
加工図形データ生成プログラムを記憶していている非一時的な記録媒体であって、
前記加工図形データ生成プログラムは、
図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、
前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、
前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、
前記加工順序変換ステップは、
前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成する
ことを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にレーザ光を照射して穴あけや切断などのレーザ加工を行うレーザ加工技術に関し、特に、レーザ照射の照射順序を効率化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を利用して被加工物に穴あけ加工等を行うレーザ加工機ではコンピュータ支援設計(CAD)を用いて加工図形を描画することがある。先ず、技術者がコンピュータで加工図形を描画し、それを加工図形データとしてレーザ加工機に入力する。レーザ加工機は、加工図形データに基づいてステージやガルバノスキャナを制御することにより、技術者がコンピュータ支援設計で描画した通りに被加工物にレーザ光を照射し、被加工物を加工することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンピュータ支援設計で生成された加工図形データは、ベクター形式の記述にしたがって描画した円、直線、多角形など1以上のオブジェクト(描画情報)を含んで構成される。レーザ加工機で加工図形データを処理する場合、当該加工図形データに含まれる描画情報を一番上から順に抽出して処理するため、技術者がコンピュータ支援設計を用いて描画した順序で被加工物にレーザ光が照射される。
そのため、必ずしもレーザ光の照射が効率的とは限らない。なぜなら加工図形を描画する段階において技術者は通常効率的な描画順序を意識していない。そのため、上記のようにコンピュータ支援設計を用いて描画した順序で被加工物にレーザ光が照射されると、ステージまたはガルバノスキャナの移動効率が悪く、タクトタイムが延びる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するために、加工画像を描画する技術者が加工順序などを意識することなく、ステージまたはガルバノスキャナの移動効率が改善され、タクトタイムの短縮を実現する加工図形データ生成方法、加工図形データ生成装置、レーザ加工システム、加工図形データ生成プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の加工図形データ生成方法は、被加工物にレーザ光を照射してレーザ加工を行うレーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成方法であって、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、前記加工順序変換ステップは、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によると、加工画像を描画する技術者が加工順序などを意識することなく、ステージまたはガルバノスキャナの移動効率が改善され、タクトタイムの短縮が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】レーザ加工処理の全体動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施例1(円加工)の加工図形の描画手順を説明するための図である。
【
図5】実施例1(円加工)の加工図形を表す図である。
【
図6】実施例1で生成される順序変換前の加工図形データ(dxfファイル)のデータ構成を示す図である。
【
図7】実施例1(円加工)の順序変換前のレーザ走査軌跡を説明するための模式図である。
【
図8】実施例1(円加工)の加工順序効率化処理のフローチャートである。
【
図9】実施例1(円加工)の変換後の加工図形データ(dxfファイル)のデータ構成を示す図である。
【
図10】実施例1(円加工)の順序変換後のレーザ走査軌跡を説明するための模式図である。
【
図11】表示部23に表示される画面の一例であるUI画面200を示す図である。
【
図12】実施例2(直線加工)の加工図形の描画手順を説明するための図である。
【
図13】実施例2で生成される順序変換前の加工図形データ(dxfファイル)のデータ構成を示す図である。
【
図14】実施例2(直線加工)の順序変換前のレーザ走査軌跡を説明するための模式図である。
【
図15】実施例2(直線加工)の加工順序効率化処理のフローチャートである。
【
図16】実施例2(直線加工)の変換後の加工図形データを説明するための図である。
【
図17】実施例2(直線加工)の順序変換後のレーザ走査軌跡を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本実施態様の一態様に係る加工図形データ生成方法は、被加工物にレーザ光を照射してレーザ加工を行うレーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成方法であって、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、前記加工順序変換ステップは、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【0009】
ここで、レーザ加工機と被加工物との相対的な移動距離について補足説明する。レーザ加工機が加工ステージにより加工位置を制御する場合、レーザ加工機の位置は変動せず、加工ステージがX方向およびY方向に移動することにより、加工ステージに載置された被加工物に所望の加工を行う。したがって、加工ステージを用いる場合における「レーザ加工機と被加工物との相対的な移動距離」とは、加工ステージの移動距離を示す。一方で、レーザ加工機がガルバノスキャナを用いて加工位置を制御する場合、2つのガルバノミラーを用いてレーザ光の光軸の向きを変化させる。この場合における「レーザ加工機と被加工物との相対的な移動距離」とは、光軸の向きの変化量であり、仮にレーザ光が照射されている場合においてレーザ光が被加工物上を移動する距離を示す。
【0010】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法において、前記加工順序変換ステップは、前記第1の加工図形データに含まれる前記複数の描画情報のうち、既定の基準点から最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第1選択ステップと、前記第1選択ステップで選択された前記描画情報を選択対象から削除する削除ステップと、前記第1選択ステップで選択された前記描画情報が表す位置から、最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第2選択ステップとを含み、前記第1の加工図形データに含まれるすべての描画情報が選択されるまで前記削除ステップおよび前記第2選択ステップを繰り返し、選択された順に前記描画情報を並び替えて前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【0011】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法において、前記描画情報は円を表す中心座標と半径または直径を表す情報とを含み、前記第1選択ステップおよび前記第2選択ステップは、円の中心座標を用いて前記最も近い位置を表す一つの描画情報を選択することを特徴とする
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法において、前記描画情報は線分または曲線を表す始点および終点の座標を少なくとも含み、前記第1選択ステップおよび前記第2選択ステップは、線分または曲線の始点または終点の座標を用いて前記最も近い一つの描画情報を選択することを特徴とする。
【0012】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法において、前記第1選択ステップにおいて始点が選択された場合には、前記第2選択ステップにおいて、前記始点に対応する終点から前記最も近い一つの描画情報を選択し、前記第1選択ステップにおいて終点が選択された場合には、前記第2選択ステップにおいて、前記終点に対応する始点から前記最も近い一つの描画情報を選択することを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法は、前記第1の加工図形データを生成する生成ステップをさらに含むことを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法は、前記第2の加工図形データをNC(Numerical control)プログラムに変換する変換ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成方法において、前記第1の加工図形データは、コンピュータ支援設計を用いて生成されたdxfファイルであることを特徴とする。
本実施態様の一態様に係る加工図形データ生成装置は、レーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成装置であって、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得手段と、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換手段と、前記第2の加工図形データを出力する出力手段とを備え、前記加工順序変換手段は、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【0014】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置において、前記加工順序変換手段は、前記第1の加工図形データに含まれる前記複数の描画情報のうち、既定の基準点から最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第1選択部と、前記第1部にて選択された前記描画情報を選択対象から削除する削除部と、前記第1選択部で選択された前記描画情報が表す位置から、最も近い位置を表す一つの描画情報を選択する第2選択部とを備え、前記第1の加工図形データに含まれるすべての描画情報が選択されるまで削除部および前記第2選択部の処理を繰り返し、選択された順に前記描画情報を並び替えて前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置において、前記描画情報は円を表す中心座標と半径または直径を表す情報とを含み、前記第1選択部および前記第2選択部は、円の中心座標を用いて前記最も近い位置を表す一つの描画情報を選択することを特徴とする。
【0015】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置において、前記描画情報は線分または曲線を表す始点および終点の座標を少なくとも含み、前記第1選択部および前記第2選択部は、線分または曲線の始点または終点の座標を用いて前記最も近い一つの描画情報を選択することを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置において、前記第1選択部が始点を選択した場合には、前記第2選択部は、前記始点に対応する終点から前記最も近い一つの描画情報を選択し、前記第1選択部が終点を選択した場合には、前記第2選択部は、前記終点に対応する始点から前記最も近い一つの描画情報を選択することを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置は、前記第1の加工図形データを生成する生成手段さらに備えることを特徴とする。
【0016】
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置は、前記第2の加工図形データをNC(Numerical control)プログラムに変換する変換手段をさらに備えることを特徴とする。
本実施態様の別態様に係る加工図形データ生成装置において、前記第1の加工図形データは、コンピュータ支援設計を用いて生成されたdxfファイルであることを特徴とする。
本実施態様の一態様に係るレーザ加工システムは、被加工物にレーザ光を照射することにより前記被加工物を加工するレーザ加工機と、前記レーザ加工機で用いる加工図形データを生成する加工図形データ生成装置とから構成されるレーザ加工システムであって、前記加工図形データ生成装置は、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得手段と、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換手段と、 前記第2の加工図形データを出力する出力手段とを備え、前記加工順序変換手段は、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成し、前記レーザ加工機は、前記レーザ光を出射するレーザ発振器と、前記レーザ光を所望の集光径に集光する集光光学系と、前記被加工物と前記レーザ光の照射位置とを相対的に変位させる加工ステージまたはガルバノスキャナと、前記第2の加工図形データを前記加工図形データ生成装置から取得する取得部と、加工図形データに基づき前記加工ステージまたは前記ガルバノスキャナを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0017】
本実施態様の一態様に係るコンピュータプログラムは、加工図形データ生成装置において、加工図形データ生成装置で用いる加工図形データ生成プログラムであって、前記加工図形データ生成装置は、記憶部とプロセッサとを備え、前記プロセッサが前記メモリに記憶されている前記加工順序変換プログラムを実行することにより、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを実行する、前記加工順序変換ステップは、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【0018】
本実施態様の一態様に係る記録媒体であって、加工図形データ生成プログラムを記憶していている非一時的な記録媒体であって、前記加工図形データ生成プログラムは、図形および位置を表す描画情報を複数含む第1の加工図形データを取得する取得ステップと、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を並び替え、第2の加工図形データを生成する加工順序変換ステップと、前記第2の加工図形データを出力する出力ステップとを含み、前記加工順序変換ステップは、前記レーザ加工機が前記第2の加工図形データに含まれる複数の描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離が、前記第1の加工図形データに含まれる前記描画情報を先頭から順に用いてレーザ加工した場合の前記レーザ加工機と前記被加工物との相対的な移動距離よりも短くなるように、前記第2の加工図形データを生成することを特徴とする。
【0019】
<実施形態>
ここでは、本発明の一実施態様に係る加工順序変換方法について図面を参照しながら説明する。
(1)レーザ加工機1の構成
図1にレーザ加工機1の一例を示す。同図に示すように、レーザ加工機1は、レーザ発振器11、ビーム整形光学系12、ミラー13(ミラー13は、ガルバノ機構でスキャン可能なガルバノスキャナであってもよい)、集光光学系である集光レンズ14、加工ステージ(XYステージ)15、制御部16および通信部17から構成される。
レーザ発振器11は、固体レーザやファイバーレーザ光源であり、好ましくはパルスレーザである。レーザ発振器11から出射されたレーザ光Lは、ビーム整形光学系12、反射ミラー13および集光レンズ14を経て、加工ステージ17上に搭載されている被加工物Wに照射される。
【0020】
制御部16は、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成され、ROMには、レーザ加工機1を制御するための制御プログラムが格納されている。マイクロプロセッサは、ROMに格納されている制御プログラムを作業用メモリであるRAMを用いて実行することにより、レーザ発振器11、ミラー(ガルバノスキャナ)13、加工ステージ15などレーザ加工機1の各部を制御する。また、制御部16は、後述する通信部17を介して端末装置2から加工図形データを受信し、受信した加工図形データに従って、ガルバノスキャナ13または加工ステージ15の少なくとも一方を制御して、被加工物Wに対するレーザ光Lの走査軌跡を制御する。
通信部17は、端末装置2と無線または有線により通信する通信インターフェースである。通信部17は制御端末2から加工図形データを受信して、受信した加工図データを制御部16に受け渡す。なお、レーザ加工機1は、USBメモリやSDカードなどの可搬型の記録媒体を用いて、端末装置2で生成された加工図形データを取得してもよい。
【0021】
レーザ加工機1は、これらの構成要素に加えて、更に他の光学系、光ファイバ等を備えていても良い。
(2)端末装置2の構成
端末装置2は本発明に係る加工図形データ生成装置であって、技術者(ユーザ)がコンピュータ支援設計を用いてレーザ加工機1で使用する加工図形データを生成する機能と、この加工図形データ(第1の加工図形データ)を変換して、効率的な加工図形データ(第2の加工図形データ)を生成する機能を有する。
図2は、端末装置2の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、端末装置2は、記憶部21、制御部22、表示部23、入力部24および通信部25から構成される。端末装置2は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ディスプレイユニット、通信インターフェース、キーボードやマウスなどの入力デバイス等のハードウェア資源を備えるコンピュータシステムである。
【0022】
記憶部21は、いわゆる補助記憶デバイスであって、HDD、SSD、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発メモリで構成される。記憶部21には、端末装置2を制御するためのコンピュータプログラムと各種のデータとが格納されている。CADプログラム201は、技術者(ユーザ)がレーザ加工機2で用いる加工図形(描画データ)を作成するための支援ツールである。加工順序変換プログラム202は、ユーザがCADプログラム201を用いて作成した加工図形データを変換して、加工順序を最適化するためのプログラムである。
制御部22は、CPUおよび作業用メモリであるRAM等から構成される。制御部22は、記憶部21に格納されているCADプログラム201および加工順序変換プログラム202を実行することにより、後述する加工図形データ生成処理を実現する。
【0023】
表示部23は、ディスプレイユニット、ビデオコーデック、GPU(Graphics Processing Unit)、画面データ用のメモリなどを含み、加工図形データを描画するためのUI画面など生成し、ディスプレイユニットに表示する。
入力部24は、キーボード、マウス、各種のスイッチなどユーザ操作を受け付ける入力デバイス、および、USBメモリやSDメモリカードなど取り外し可能な記録媒体を接続することによりデータを入力するものも含む。
通信部25は、無線または有線により接続された外部機器との間で情報通信を行う。具体的には、端末装置2で生成された加工図形データは、通信部25を介してレーザ加工機1に送信してもよいし、USBメモリ、SDカードなどの可搬型の記録媒体によって転送してもよい。
【0024】
(3)レーザ加工処理の動作
図3は、レーザ加工機1および端末装置2により実現されるレーザ加工処理の動作を示すフローチャートである。
まず、端末装置2のユーザがCADプログラムを利用して加工図形を描画する(ステップS1)。端末装置2の制御部11は、当該加工図形に対応する第1の加工図形データを生成する(ステップS2)。次に、端末装置2の制御部11は、第1の加工図形データを効率化する順序変換処理を行い、第2の加工図形データを生成する(ステップS3)。端末装置2は生成した第2の加工図形データを出力する(ステップS4)。
レーザ加工機1は、端末装置2から第2の加工図形データを取得し(ステップS5)、第2の加工図形データを用いてレーザ加工を行う(ステップS6)。ここで、端末装置2からレーザ加工機1に送信される第2の加工図形データは、ガルバノスキャナの制御に用いるdxf形式のデータファイルでもよいし、加工ステージ15の制御に用いるNC(Numerically Controlled)プログラム形式のデータファイルでもよい。
【0025】
(4)実施例1(円加工)
ここでは、加工順序を効率化する順序変換方法について実施例を用いて詳細に説明する。実施例1では、レーザ加工機1がレーザ光を円形に照射する円加工を例に説明する。
図4は、端末装置2が描画する加工図形の描画手順を示す図である。ユーザは、表示部23に表示されている画面を見ながら、マウスやキーボードなどの入力部24を操作することにより、所望の加工図形を描画する。なお、この処理は、端末装置2の記憶部21に格納されているCADプログラム201を制御部22が実行することにより実現される。
実施例1では、
図4(a)~
図4(e)に示す順序でユーザが5つの円(c1、c2、c3、c4、c5)を描画する。そして、
図4(e)に示す図形を1セットとして、これを更に3セット分コピーして、
図5に示す加工図形211を生成する。レーザ加工機1は、
図5の描画領域210に含まれる加工図形211が示す走査軌跡でレーザ加工を行う。
【0026】
図5に示す加工図形211が描画されると、端末装置2の制御部22は、加工図形211に対応する加工図形データを生成する。
図6は、
図4および
図5に示す手順で円を描画した場合に生成される第1の加工図形データ212のデータ構成を示す図である。第1の加工図形データ212は、No.1からNo.20までの20個の描画情報213を含む。各描画情報は、描画された図形(オブジェクト)ごとに生成され、No.欄214、Type欄215、Data欄216を含む。No.欄214には、当該図形が描画された順番が記載される。Type欄215は、当該図形の形状が記載される。Data欄215は、当該図形の位置を表す情報が記載される。一例として、Data欄215は、円の中心座標と半径とが記載される。本実施形態において第1の加工図形データ212は、dxfファイル形式で記載されており、描画情報はオブジェクト単位で生成される。
【0027】
レーザ加工機1は、加工図形データをNo.1から順に読み出してレーザ加工を行う。従って、レーザ加工機1が
図6に示した第1の加工図形データ212を用いてレーザ加工を行うと、
図7の模式図に示すような順序でレーザ光を走査する。
図7の描画領域210内において、実線はレーザ光Lが照射される走査軌跡を表し、破線はレーザ光Lの照射を停止した状態での加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動を表している。このように、第1の加工図形データ212を用いると、破線で表された距離が長く、加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動に時間を要することになる。本実施形態の端末装置2は、加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動に要する時間を短縮するために加工順序効率化処理を行う(
図3のステップS3)。
【0028】
図8~
図11を参照して加工順序効率化処理の詳細について説明する。
図8は加工順序効率化処理(
図3のステップS3)の詳細を示すフローチャートである。この処理は、端末装置2の制御部22が記憶部21に格納されている加工順序変換プログラム202を実行することにより実現する。このとき、端末装置2の表示部23には、例えば、
図11に示すようなUI画面が表示されており、ユーザは、UI画面を見ながら入力部24を操作する。
先ず、端末装置2は基準点を設定する(ステップS11)。これは、レーザ光Lによる加工開始位置を決めるためであり、ユーザの操作により任意の位置を基準点に設定することができる。ここでは一例として
図7に示す描画領域210の左上の原点Oを基準点に設定する。続いて、端末装置2は、順序変換処理を受け付ける(ステップS12)。一例として、表示部23に、
図11に示すUI画面200が表示されている場合において、ユーザが順序最適化ボタン230を選択することにより、端末装置2は順序変換処理を受け付ける。
【0029】
制御部22は、第1の加工図形データ212に含まれるすべての描画情報213を参照し、基準点からすべての円の中心点までの距離を計算する(ステップS13)。基準点から最も近い円をNo.1として選択する(ステップS14)。続いて、最後に選択した円とその他すべての選択対象の円との距離を計算する(ステップS15)。ステップS15では、最後に選択した円の中心点から他の円の中心点までの距離を計算する。最後に選択した円から最も近い円を、No.n(n=2、3,・・・,20)に選択する(ステップS16)。そして、ステップS14およびステップS16で選択した円を選択対象から除外し(ステップS17)、選択した順序で描画情報213を並び替える。
第1の加工図形データ212に未選択の円(未選択の描画情報213)があれば(ステップS18でYES)、ステップS15に戻り処理を続ける。第1の加工図形データ212に未選択の円(未選択の描画情報213)がなければ(ステップS18でNO)、端末装置2は加工順序効率化処理を終了する。
【0030】
第1加工図形データ212に含まれるNo.1からNo.20まで、すべての描画情報213の並び替えが終了すると、
図9の右側に示す第2の加工図形データ217が生成される。
図9に示すように、第1の加工図形データ212のNo.1およびNo.2の描画情報は順序が変わらず、第2加工図形データ217においても、No.1およびNo.2に位置する。第1の加工図形データ212のNo.3の描画情報は、第2の加工図形データ217では、No,20に順序が変更される。同様に、第1の加工図形データ212のNo.3、No.4、No.5、No.6、No.7、No.8、No.9、No.10、No.11、No.12、No.13、No.14、No.15、No.16、No.17、No.18、No.19、No.20の描画情報は、それぞれ、第2の加工図形データ217において、No.20、No.19、No.18、No.3、No.4、No.17、No.16、No.15、No.5、No.6、No.14、No.13、No.12、No.7、No.8、No.11、No.10、No.9に順序が変更される。
【0031】
レーザ加工機1が
図9に示した第2の加工図形データ217を用いてレーザ加工を行うと、
図10の模式図に示すような順序でレーザ光を走査する。
図10の描画領域210内において、実線はレーザ光Lが照射される走査軌跡を表し、破線はレーザ光Lの照射を停止した状態での加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動を表している。同図に示すように、基準点である原点Oに最も近い円からレーザ加工が開始され、順に近い円へと移動しながらレーザ加工を行う。
図6と
図9とを比較すると、順序変換された第2の加工図形データ217を用いた場合、破線で表された距離が短く、加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動に要する時間を短縮することが可能となる。
【0032】
続いて、
図11を用いて端末装置2の表示部23に表示されるUI画面の一例について説明する。同図に示すように、UI画面200は、描画領域210と、データ領域220と含む。描画領域210にはCADプログラム201を用いて描画された加工図形と加工順序とが表示される。データ領域220には、描画領域210に表示されている加工図形に対応する加工図形データが表示される。この例では、順序変換後の加工順序が表示された加工図形と第2の加工図形データとが表示されている。
UI画面200は、さらに、ボタン230、ボタン231、ボタン232、ボタン234を含む。
ボタン230が選択されると、制御部22は、順序変換処理を行い第1の加工図形データ212から第2の加工図形データ217を生成する。
ボタン231が選択されると、制御部22は、CADプログラム201を用いて描画されたCADデータ(加工図形)を読み出し、表示部23は、UI画面200に順序変換前の加工順序が表示された加工図形および第1の加工図形データ212を表示する。
【0033】
ボタン232が選択されると、表示部23は、UI画面200に順序変換後の加工順序が表示された加工図形および第2の加工図形データ217を表示する。
ボタン234が選択されると、制御部22は、UI画面200に表示されている第1の加工図形データ212または第2の加工図形データ217に基づき、NCプログラムを生成する。NCプログラムは、レーザ加工機1が加工ステージ15により被加工物Wに対するレーザ光Lの走査軌跡を制御する場合に用いられる。本実施形態では、加工順序変換プログラム202がNCプログラムへの変換機能を備えているものとする。
先に述べたように、データ領域220には、加工図形データが表示されるが、dxfファイル形式の加工図形データを表示してもよいし、NCプログラムで記載された加工図形データを表示してもよい。
図11に示すように、データ領域220にはタブ235、タブ236を含み、ユーザがタブ235を選択すればdxfファイル形式の加工図形データが表示され、ユーザがタブ236を選択すればNCプログラムに変換された加工図形データが表示される。
【0034】
(5)実施例2(直線加工)
次に、レーザ加工機1が直線加工を行う実施例2について説明する。
図12は、端末装置2が描画する加工図形の描画手順を示す図である。ユーザは、表示部23に表示されている画面を見ながら、入力部24を操作することにより、
図12(a)~
図12(i)に示す順序で9本の直線l1~l9を描画する。なお、この処理は、端末装置2の記憶部21に格納されているCADプログラム201を制御部22が実行することにより実現される。
図12(i)に示す加工図形が描画されると、端末装置2の制御部22は、加工図形に対応する加工図形データを生成する。
図13は、
図12に示す手順で直線を描画した場合に生成される第1の加工図形データ241のデータ構成を示す図である。第1の加工図形データ241は、No.1からNo.9までの9個の描画情報242を含む。各描画情報は、描画された図形ごとに生成され、No.欄243、Type欄2445、Data欄245を含む。No.欄243には、当該図形が描画された順番が記載される。Type欄244は、当該図形の形状が記載される。Data欄255は、当該図形の位置を表す情報が記載される。一例として、Data欄245には、直線の始点の座標と直線の終点の座標とが記載される。
【0035】
図14は、レーザ加工機1が第1の加工図形データ241を用いてレーザ加工を行う場合のレーザ光Lの走査軌跡を表している。
図14の描画領域210内において、実線はレーザ光Lが照射される走査軌跡を表し、破線はレーザ光Lの照射を停止した状態での加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動を表している。このように、第1の加工図形データ241を用いてレーザ加工を行うと、加工ステージ15やガルバノスキャナの無駄な動作があり、必ずしも効率的とは言えない。そこで、実施例1と同様に、端末装置2は加工順序変換処理を行う。
図15は、実施例2における加工順序効率化処理(
図3のステップS3)の詳細を示すフローチャートである。この処理は、端末装置2の制御部22が記憶部21に格納されている加工順序変換プログラム202を実行することにより実現する。このとき、端末装置2の表示部23には、例えば、
図11に示すようなUI画面が表示されており、ユーザは、UI画面を見ながら入力部24を操作する。
【0036】
先ず、端末装置2は基準点を設定する(ステップS21)。これは、レーザ光Lによる加工開始位置を決めるためであり、ユーザの操作により任意の位置を基準点に設定することができる。実施例1では、描画領域210に設定されているxy座標の原点Oを基準点に設定したが、実施例2では、一例として
図17に示すO´を基準点に設定する。続いて、端末装置2は、順序変換処理を受け付ける(ステップS22)。
制御部22は、第1の加工図形データ241に含まれるすべての描画情報242を参照し、基準点O´からすべての直線の始点および終点までの距離を計算する(ステップS23)。基準点O´から最も近い始点または終点を有する直線をNo.1として選択する(ステップS24)。続いて、最後に選択した直線とその他すべての選択対象の直線の始点および終点までの距離を計算する(ステップS25)。
【0037】
このとき、最後に選択された直線について着目し、最後に選択された直線が始点の座標に基づき選択された場合には、ステップS25では最後に選択された直線の終点から、その他すべての選択対象の直線の始点および終点までの距離を計算する。一方、最後に選択された直線が終点の座標に基づき選択された場合には、ステップS25では最後に選択された直線の始点から、その他すべての選択対象の直線の始点および終点までの距離を計算する。
ステップS25で最も近い始点または終点を含む直線を、No.n(n=2,3,・・・,9)に選択する(ステップS26)。そして、ステップS24およびステップS26で選択した直線を選択対象から除外し(ステップS27)、選択した順序で描画情報242を並び替える。
【0038】
第1の加工図形データ241に未選択の直線(未選択の描画情報242)があれば(ステップS28でYES)、ステップS25に戻り処理を続ける。第1の加工図形データ241に未選択の直線(未選択の描画情報242)がなければ(ステップS28でNO)、端末装置2は加工順序効率化処理を終了する。
第1加工図形データ242に含まれるNo.1からNo.9まですべての描画情報242の並び替えが終了すると、
図16の右側に示す第2の加工図形データ251が生成される。
図16に示すように、第1の加工図形データ241のNo.1からNo.4の描画情報は、連続した直線で矩形を表しており、これら4つの描画情報は、第2の加工図形データ251では、一つのオブジェクトにまとめられ、No.6の描画情報252に変換される。このとき、描画情報252の詳細情報253がUI画面に表示される構成であってもよい。なお、上記のように連続した直線を一つのオブジェクトにまとめるのは必須の構成ではない。
【0039】
第1の加工図形データ241のNo.4の描画情報は、順序が変わらず第2の加工図形データ251においても、No,4に位置する。第1の加工図形データ241のNo.6、No.7、No.8、No.9の描画情報は、それぞれ、第2の加工図形データ251において、No.4、No.3、No.2、No.1に順序が変更される。
レーザ加工機1が
図16に示した第2の加工図形データ251を用いてレーザ加工を行うと、
図17の模式図に示すような順序でレーザ光を走査する。
図17の描画領域210内において、実線はレーザ光Lが照射される走査軌跡を表し、破線はレーザ光Lの照射を停止した状態での加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動を表している。同図に示すように、基準点O´に最も近い直線からレーザ加工が開始され、順に近い直線へと移動しながらレーザ加工を行う
【0040】
図14と
図17とを比較すると、順序変換された第2の加工図形データ251を用いた場合、破線で表された距離が短く、加工ステージ15の移動またはガルバノスキャナによる光軸の移動に要する時間を短縮することが可能となる。
なお、ユーザは、任意の位置を基準点に設定することが可能であるため、加工図形250をUI画面で確認しながら、加工ステージ15またはガルバノスキャナの動作が短縮されるという予測をもって基準点O´を設定することの可能である。
(4)その他の変形例
本発明を上記の実施形態に基づき説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されないのはもちろんであり、以下のように実施形態を変形した場合も本発明に含まれる。
【0041】
実施例1では、レーザ加工機1が円加工を行う場合の加工順序変換方法について説明し、実施例2では、レーザ加工機1が直線加工を行う場合の加工順序変換方法について説明したが、レーザ加工機1が行うレーザ加工は、この2つの具体例に限定されないのはもちろんである。レーザ加工機1が、一点(POINT)に穴あけ加工を行う場合、円弧状(ARC)にレーザ加工を行う場合、アークと直線(LINE)とを組み合わせてレーザ加工を行う場合なども本発明に含まれる。
【0042】
上記の実施形態では、加工図形データのファイル形式の一例としてdxfファイルを用いて説明したが、本発明における加工図形データのファイル形式は限定されない。本発明の加工図形データ(第1の加工図形データおよび第2の加工図形データ)は、レーザ加工機1が加工図形を描画するために必要な情報(図形の種類、円の半径または直径、線分の長さ、描画位置、座標値など)を含んでいれば足りる。
【0043】
上記の実施形態では、加工順序変換プログラムがdxfファイルをNCプログラムに変換する機能を備えるとして説明した。これは一例であり、dxfファイルをNCプログラムに変換する機能がCADプログラム201により実現されてもよいし、他のプログラムにより実現されてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
例えば、本発明は、制御端末またはサーバ装置として実現されてもよい。本発明は、制御システムなどのコンピュータが実行する制御方法として実現されてもよい。本発明は、このような制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0045】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザ加工機
11 レーザ発振器
12 ビーム整形光学系1
13 ミラーまたはガルバノスキャナ
14 集光レンズ
15 加工ステージ(XYステージ)
16 制御部
17 通信部
2 端末装置(加工図形データ生成装置)
21 記憶部
22 制御部
23 表示部
24 入力部
25 通信部