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特開2024-122299判定方法、プログラム、および演算装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122299
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】判定方法、プログラム、および演算装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20240902BHJP
【FI】
G01M13/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029763
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 英之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智也
(72)【発明者】
【氏名】谷 僚二
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA11
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】転がり軸受を含む回転機械の特性の判定方法において、誤差を低減しつつ、判定にかかる作業負担も抑制することである。
【解決手段】
回転機械の特性の判定方法は、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、第1ばね定数~第4ばね定数に基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて、回転機械の特性を判定するステップとを含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する判定方法であって、
前記軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、
前記第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記第3有限要素モデルは、
前記第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、
前記第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、
前記第1有限要素モデルにおける前記第1接触領域上には、前記第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されており、
前記第2有限要素モデルにおける前記第2接触領域上には、前記第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されており、
前記判定方法は、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、
前記第1剛体要素が配置されている前記第1接触領域における前記第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、
前記第2剛体要素が配置されている前記第2接触領域における前記第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、
前記第1ばね定数と、前記第2ばね定数と、前記第3ばね定数と、前記第4ばね定数とに基づいて、前記第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、
算出した前記第3有限要素モデルのばね定数を用いて、前記回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを含む、判定方法。
【請求項2】
前記第3ばね定数を算出するステップは、
前記第1有限要素モデルに対して前記第1接触領域の法線方向から荷重を加えた場合における、前記第1接触領域と、前記第1接触領域と異なる前記第1軌道面上の第1参照領域と、の間の距離の変位に基づいて前記第3ばね定数を算出するステップを含む、請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記転動体は、玉であり、
前記第1接触領域は、前記第1軌道面の法線方向から視たときに楕円形状を有し、
前記第1参照領域は、前記第1軌道面上の第1楕円の外側であって、前記第1軌道面上の第2楕円の内側の領域であり、
前記第1接触領域、前記第1楕円、および前記第2楕円の各々の中心点は、前記第1軌道面を法線方向から視たときに重なり合い、
前記第2楕円の短半径は、前記第1楕円の短半径よりも長く、
前記第2楕円の長半径は、前記第1楕円の長半径よりも長く、
前記第1楕円の短半径は、前記第1接触領域の短半径の4倍の長さより長く、
前記第2楕円の短半径は、前記第1接触領域の短半径の8倍の長さよりも短く、
前記第1楕円の長半径は、前記第1接触領域の長半径の1.5倍の長さより長く、
前記第2楕円の長半径は、前記第1接触領域の長半径の4倍の長さよりも短い、請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記転動体は、ころであり、
前記第1接触領域は、前記第1軌道面を法線方向から視たときに矩形形状を有し、
前記第1参照領域は、前記第1接触領域上の第1矩形の外側であって、前記第1接触領域上の第2矩形の内側の領域であり、
前記第1接触領域、前記第1矩形、および前記第2矩形の各々の中心点は、前記第1軌道面を法線方向から視たときに重なり合い、
前記第2矩形の短辺の長さは、前記第1矩形の短辺の長さよりも長く、
前記第2矩形の長辺の長さは、前記第1矩形の長辺の長さよりも長く、
前記第1矩形の短辺の長さは、前記第1接触領域の短辺の長さの4倍の長さより長く、
前記第2矩形の短辺の長さは、前記第1接触領域の短辺の長さの8倍の長さよりも短く、
前記第1矩形の長辺の長さは、前記第1接触領域の長辺の長さの1.1倍の長さより長く、
前記第2矩形の長辺の長さは、前記第1接触領域の長辺の長さの2倍の長さよりも短い、請求項2に記載の判定方法。
【請求項5】
前記第4ばね定数を算出するステップは、
前記第2有限要素モデルに対して前記第2接触領域の法線方向から荷重を加えた場合における、前記第2接触領域と、前記第2接触領域と異なる前記第2軌道面上の第2参照領域と、の間の距離の変位に基づいて前記第4ばね定数を算出するステップを含む、請求項1に記載の判定方法。
【請求項6】
前記転動体は、玉であり、
前記第2接触領域は、前記第2軌道面の法線方向から視たときに楕円形状を有し、
前記第2参照領域は、前記第2軌道面上の第3楕円の外側であって、前記第2軌道面上の第4楕円の内側の領域であり、
前記第2接触領域、前記第3楕円、および前記第4楕円の各々の中心点は、前記第2軌道面を法線方向から視たときに重なり合う位置に配置され、
前記第4楕円の短半径は、前記第3楕円の短半径よりも長く、
前記第4楕円の長半径は、前記第3楕円の長半径よりも長く、
前記第3楕円の短半径は、前記第2接触領域の短半径の4倍の長さより長く、
前記第4楕円の短半径は、前記第2接触領域の短半径の8倍の長さよりも短く、
前記第3楕円の長半径は、前記第2接触領域の長半径の1.5倍の長さより長く、
前記第4楕円の長半径は、前記第2接触領域の長半径の4倍の長さよりも短い、請求項5に記載の判定方法。
【請求項7】
前記転動体は、ころであり、
前記第2接触領域は、前記第2軌道面を法線方向から視たときに矩形形状を有し、
前記第2参照領域は、前記第2接触領域上の第3矩形の外側であって、前記第2接触領域上の第4矩形の内側の領域であり、
前記第2接触領域、前記第3矩形、および前記第4矩形の各々の中心点は、前記第2軌道面を法線方向から視たときに重なり合う位置に配置され、
前記第4矩形の短辺の長さは、前記第3矩形の短辺の長さよりも長く、
前記第4矩形の長辺の長さは、前記第3矩形の長辺の長さよりも長く、
前記第3矩形の短辺の長さは、前記第2接触領域の短辺の長さの4倍の長さより長く、
前記第4矩形の短辺の長さは、前記第2接触領域の短辺の長さの8倍の長さよりも短く、
前記第3矩形の長辺の長さは、前記第2接触領域の長辺の長さの1.1倍の長さより長く、
前記第4矩形の長辺の長さは、前記第2接触領域の長辺の長さの2倍の長さよりも短い、請求項5に記載の判定方法。
【請求項8】
前記第1ばね定数をKh1とし、
前記第2ばね定数をKh2とし、
前記第3ばね定数をKm1とし、
前記第4ばね定数をKm2とし、
前記第3有限要素モデルのばね定数をKbとすれば、
前記第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップにおいて、
【数3】

の関係式を用いて、前記第3有限要素モデルのばね定数を算出する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の判定方法。
【請求項9】
有限要素モデルを用いて、軸受を有する回転機械の特性の判定をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、
前記第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されており、
前記第3有限要素モデルは、
前記第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、
前記第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、
前記第1有限要素モデルにおける前記第1接触領域上には、前記第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されており、
前記第2有限要素モデルにおける前記第2接触領域上には、前記第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されており、
前記コンピュータに、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、
前記第1剛体要素が配置されている前記第1接触領域における前記第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、
前記第2剛体要素が配置されている前記第2接触領域における前記第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、
前記第1ばね定数と、前記第2ばね定数と、前記第3ばね定数と、前記第4ばね定数とに基づいて、前記第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、
算出した前記第3有限要素モデルのばね定数を用いて前記軸受のばね定数を算出するステップと、
算出した前記軸受のばね定数を用いて、前記回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを実行させる、プログラム。
【請求項10】
軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する演算装置であって、
演算回路と、
記憶装置とを備え、
前記軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、
前記記憶装置は、
前記第1軌道輪をモデル化した第1有限要素モデルと、
前記第2軌道輪をモデル化した第2有限要素モデルと、
前記転動体をモデル化した第3有限要素モデルとを格納し、
前記第3有限要素モデルは、
前記第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、
前記第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、前記転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、
前記記憶装置は、
前記第1有限要素モデルにおける前記第1接触領域上に配置され、前記第1点を通過する線形状の第1剛体要素と、
前記第2有限要素モデルにおける前記第2接触領域上に配置され、前記第2点を通過する線形状の第2剛体要素と、をさらに格納し、
前記演算回路は、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出し、
ヘルツ理論を用いて、前記転動体と前記第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出し、
前記第1剛体要素が配置されている前記第1接触領域における前記第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出し、
前記第2剛体要素が配置されている前記第2接触領域における前記第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出し、
前記第1ばね定数と、前記第2ばね定数と、前記第3ばね定数と、前記第4ばね定数とに基づいて、前記第3有限要素モデルのばね定数を算出し、
算出した前記第3有限要素モデルのばね定数を用いて、前記回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定する、演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定方法、プログラム、および演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-45472号公報)は、回転機械の状態を監視して異常を検出する装置について開示されている。回転機械に生じる異常には、音振動に起因する異常が含まれる。異常判定の対象となる物体の固有振動数を用いて、音振動に起因する異常の発生を抑制する場合がある。
【0003】
回転機械は設計段階において、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いてモデル化され得る。回転機械を模した有限要素モデルに対して固有値解析を行うことによって、設計段階において実際の回転機械の固有振動数が予測され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転がり軸受の有限要素モデルを作成手法として、転動体を一本のばね要素に近似して簡易的な有限要素モデルを作成する手法が存在する。しかしながら、近似によって得られた簡易的な有限要素モデルのばね定数は、実際の転動体のばね定数との間で誤差が生じてしまう場合がある。転動体のばね定数に誤差が生じると、回転機械全体のばね定数にも誤差が生じることとなり、固有値解析によって得られる回転機械全体の固有振動数にも誤差が生じ得る。回転機械全体のばね定数は、固有振動数以外の回転機械の特性を判定するために用いられ得る。たとえば、回転機械の剛性、応力および変位量も、回転機械のばね定数に基づいて算出される。
【0006】
転動体の有限要素モデルをきめ細かいメッシュで分割した精緻なモデルとして作成すれば、実際の転動体のばね定数を表現したモデルを作成することができるが、外内輪と非線形の接触を繰り返す転動体の精緻なモデルを作成する作業負担は大きくなり、また、演算負荷も大きくなる。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、有限要素法を用いて転がり軸受を含む回転機械の特性を判定する判定方法において、ばね定数に基づいて判定される回転機械の特性に発生する誤差を低減しつつ、回転機械の特性の判定にかかる作業負担も抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における判定方法は、軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する判定方法である。判定方法は、軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含む。第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されている。第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されている。転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されている。第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルである。第1有限要素モデルにおける第1接触領域上には、第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されている。第2有限要素モデルにおける第2接触領域上には、第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されている。判定方法は、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、ヘルツ理論を用いて転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを含む。
【0009】
本開示におけるプログラムは、有限要素モデルを用いて、軸受を有する回転機械の特性の判定をコンピュータに実行させるプログラムである。軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含む。第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されている。第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されている。転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されている。第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルである。第1有限要素モデルにおける第1接触領域上には、第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されている。第2有限要素モデルにおける第2接触領域上には、第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されている。プログラムは、コンピュータに、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、ヘルツ理論を用いて、転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて軸受のばね定数を算出するステップと、算出した軸受のばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを実行させる。
【0010】
本開示における演算装置は、軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する演算装置である。演算装置は、演算回路と、記憶装置とを備える。軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含む。記憶装置は、第1軌道輪をモデル化した第1有限要素モデルと、第2軌道輪をモデル化した第2有限要素モデルと、転動体をモデル化した第3有限要素モデルとを格納する。第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルである。記憶装置は、第1有限要素モデルにおける第1接触領域上に配置され、第1点を通過する線形状の第1剛体要素と、第2有限要素モデルにおける第2接触領域上に配置され、第2点を通過する線形状の第2剛体要素と、をさらに格納する。演算回路は、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出し、ヘルツ理論を用いて、転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出し、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出し、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出し、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出し、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定する。
【発明の効果】
【0011】
本開示による判定方法によれば、有限要素法によって生じる誤差を考慮して転がり軸受の簡易的なモデル化を行うことによって、作業負担を抑制しつつ、ばね定数の誤差が低減されたモデルを作成できるため、ばね定数に基づいて判定される回転機械の特性に発生する誤差を低減しつつ、回転機械の特性の判定にかかる作業負担も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に従う回転機械の断面図である。
図2】本実施の形態における転がり軸受のモデル化を説明するための図である。
図3】有限要素モデルにおける内輪と転動体との間の接触領域を説明するための図である。
図4】有限要素モデルにおける外輪と転動体との間の接触領域を説明するための図である。
図5】モデルのばね定数の判定方法を説明するための図である。
図6】内輪を模したモデルの表面におけるばね定数の算出について説明するための図である。
図7】外輪を模したモデルの表面におけるばね定数の算出について説明するための図である。
図8】本実施の形態における転動体のモデルのばね定数を判定する処理手順を示すフローチャートである。
図9】変形例1における転がり軸受の断面図を示す図である。
図10】変形例1における内輪を模したモデルの表面におけるばね定数の算出について説明するための図である。
図11】変形例1における外輪を模したモデルの表面におけるばね定数の算出について説明するための図である。
図12】変形例2における転がり軸受の断面図を示す図である。
図13】変形例3における転がり軸受の断面図を示す図である。
図14】変形例4における転がり軸受の断面図を示す図である。
図15】変形例4の内輪のモデルと外輪のモデルとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0014】
[実施の形態]
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
<回転機械100の構成>
図1を参照して、本実施の形態に従う判定方法の対象となる回転機械100の構成について説明する。図1は、本実施の形態に従う回転機械100の断面図である。図1には、回転機械100としてポンプが図示されているが、回転機械100は、産業機器、ロボット、家電などの他の機械であってもよい。
【0016】
図1に示されるように、回転機械100は、転がり軸受10を有する。図1における転がり軸受10は、ラジアル玉軸受である。転がり軸受10には、シャフト5が回転可能に支持されている。以下では、シャフト5の回転軸方向Ax1を「Y軸方向」と称する。Y軸方向に垂直な方向を「Z軸方向」と称する。Z軸方向およびY軸方向に垂直な方向を「X軸方向」と称する。図1における回転機械100は、XY平面上に載置されている。
【0017】
本実施の形態では、演算装置200を用いて回転機械100の特性の判定を行う。回転機械100の特性とは、たとえば、回転機械100の剛性、応力、変位量および固有振動数を含む。回転機械100の変位量とは、所定の荷重が回転機械100に加えられたときの変位量を意味する。回転機械100の剛性および応力は、ヤング係数に基づいて算出される。演算装置200は、演算回路201と記憶装置202とを有する。演算回路201は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはMPU(Multi Processing Unit)などで構成される。
【0018】
記憶装置202は、演算回路201が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。記憶装置202は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、あるいは、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリ、ならびに、HDD(Hard Disc Drive)あるいはSSD(Solid State Disk)などの不揮発性メモリで構成される。
【0019】
図1では、回転機械100のXY方向への振動モードに対する固有振動値を判定する例を説明する。XY方向への振動モードは、他の方向の振動モードと比較して、シャフト5の弾性変形量が小さい方向の振動モードである。
【0020】
回転機械100は、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いてモデル化される。有限要素法とは、物体を有限個のメッシュに分割して数値解析を行うシミュレーションである。演算装置200は、有限要素法によるシミュレーションを提供するプログラムを実行する。
【0021】
以下では、有限要素法によって作成されたモデルを「有限要素モデル」と称する場合がある。有限要素モデルを構成するメッシュの数を増大させれば、実際の物体に近い精緻なモデルが作成できるが、モデル作成のための作業量は増大し、演算時間も増大してしまう。本実施の形態においては、回転機械100に含まれる転がり軸受10の転動体15に対して、精緻なモデルを作成せずに簡易的なモデル化を行う例を説明する。
【0022】
本実施の形態では、回転機械100の有限要素モデルに対して固有値解析を行う。固有値解析とは、ばね定数および質量に基づいて実際の物体の固有振動数を判定する解析手法である。回転機械100のばね定数と質量とを設定されることによって、有限要素法によるシミュレーションを提供するプログラムにおいて、固有値解析が実行される。回転機械100は転がり軸受10を含むため、転がり軸受10の有限要素モデルのばね定数および質量を設定する必要がある。
【0023】
<有限要素法におけるモデル化>
図2は、本実施の形態における転がり軸受10のモデル化を説明するための図である。図2(A)には、モデル化されていない実際の転がり軸受10が示されている。転がり軸受10は、外輪12と、内輪11と、転動体15とを含む。転動体15は、転がり軸受10に含まれる複数の転動体のうちのいずれか1つである。図1には転がり軸受10が合計8個の転動体を有する例が示されているが、ある局面では転がり軸受10は、16個、24個、32個などの他の個数の転動体を有してもよい。なお、内輪11は、本開示における「第1軌道輪」の一例である。外輪12は、本開示における「第2軌道輪」の一例である。
【0024】
図2(B)には、転がり軸受10を模したモデル10Mが示されている。モデル10Mは、有限要素モデルを用いて作成されたモデルである。外輪12は、モデル12Mとしてモデル化されている。内輪11は、モデル11Mとしてモデル化されている。なお、モデル11Mは、本開示における「第1有限要素モデル」の一例である。モデル12Mは、本開示における「第2有限要素モデル」の一例である。
【0025】
実施の形態1において、転動体15はモデル15Mとしてモデル化されている。モデル15Mは、質量を有さない一本のばねを模したモデルである。モデル15Mは、ブッシュ要素、ビーム要素と称される体積を有さない線形状の弾性体からなる要素である。
【0026】
すなわち、本実施の形態において転動体15は、一次元の弾性体の有限要素モデルによって簡易的にモデル化されている。これにより、本実施の形態においては、転動体15を球体として精緻にモデル化する必要がなく、モデル化に要する作業負担を低減させることができる。なお、モデル15Mは、本開示における「第3有限要素モデル」の一例である。
【0027】
シミュレーション上において、モデル11M,12M,15Mは、いずれも弾性体として設定されている。これにより、モデル11M,12M,15M以外のシャフトなどの他のモデルとモデル11M,12M,15Mとが接触する場合に、モデル11M,12M,15Mは、シミュレーション上において当該他のモデルの動作を拘束しない。
【0028】
図2のように転動体15をモデル15Mとして簡易的にモデル化した場合、モデル15Mに対してばね定数を設定する必要がある。転動体15のばね定数は、実際の転がり軸受10の外径、質量に基づいて、ヘルツ理論から計算され得る。ヘルツ理論によって計算された転動体15のばね定数をモデル15Mのばね定数として設定して、回転機械の固有値解析を行うと、回転機械100の固有振動数に誤差が生じてしまう場合があった。
【0029】
本開示における発明者は、ヘルツ理論によって計算された転動体15のばね定数をモデル15Mのばね定数として設定した場合に発生する回転機械100の固有振動数の誤差が、有限要素モデルにおける外輪表面と内輪表面とに発生するばね定数に基づくことを見いだした。以下では、外輪表面と内輪表面とに発生するばね定数の影響を取り除いた上で、シミュレーションにおけるモデル15Mのばね定数を設定する手法について説明する。
【0030】
図3は、有限要素モデルにおける内輪11と転動体15との間の接触領域Ar1を説明するための図である。図3(A)には、モデル10Mの斜視図が図示されている。図3におけるモデル11Mには、内輪軌道面Sf1と接触領域Ar1とが示されている。内輪軌道面Sf1は、内輪11に転動体15が接触し得る領域である。接触領域Ar1は、転がり軸受10の回転を固定したときに、内輪軌道面Sf1上において転動体15が内輪11に接触する領域を示している。図3に示されるように、接触領域Ar1は、短半径方向がX軸方向に沿う楕円形状を有する。
【0031】
また、図3におけるモデル12Mにも、モデル11Mと同様に、外輪軌道面Sf2と接触領域Ar2とが示されている。外輪軌道面Sf2は、外輪12に転動体15が接触し得る領域である。接触領域Ar2は、転がり軸受10の回転を固定したときに、外輪軌道面Sf2上において転動体15が外輪12に接触する領域を示している。接触領域Ar2は、短半径方向がX軸方向に沿う楕円形状を有する。
【0032】
図3(B)には、接触領域Ar1と、モデル15MにおけるZ軸の負方側の端部とが拡大されて図示されている。モデル15Mの端部は、楕円形状の接触領域Ar1の中心である節点P1と接続されている。なお、節点P1は、本開示における「第1点」の一例である。本実施の形態において、接触領域Ar1には、3本の線形状のモデルRL1~RL3が配置されている。モデルRL1~RL3は、剛体リンクと称されるモデルであって、剛体として定義されている。すなわち、モデルRL1~RL3は、シミュレーション上において外力を受けても変形しない。モデルRL1~RL3の各々は、節点P1を通過する。
【0033】
図4は、有限要素モデルにおける外輪12と転動体15との間の接触領域Ar2を説明するための図である。図4(A)には、図3(A)と同様に、モデル10Mの斜視図が図示されている。図4には、外輪軌道面Sf2と接触領域Ar2とが示されている。
【0034】
図4(B)には、接触領域Ar2とモデル15MにおけるZ軸の正方側の端部とが拡大されて図示されている。モデル15Mの端部は、楕円形状の接触領域Ar2の節点P2と接続されている。すなわち、モデル15Mは、図3における節点P1と節点P2とを接続する。なお、節点P2は、本開示における「第2点」の一例である。本実施の形態において、接触領域Ar2には、3本の剛体リンクと称されるモデルRL4~RL6が配置されている。モデルRL4~RL6の各々は、節点P2を通過する線形状を有し、剛体として定義されている。モデルRL4~RL6は、モデルRL1~RL3と同様に、シミュレーション上において外力を受けても変形しない。図3,4に示されている有限要素モデルは、記憶装置202に格納されている。
【0035】
<モデル15Mのばね定数の判定方法>
図5は、モデル15Mのばね定数の判定方法を説明するための図である。図5の左側には、ヘルツ理論によって実際の転動体15のばね定数を算出する例を説明する図が示されている。一方で、図5の右側には、シミュレーション上におけるモデル15Mのばね定数の算出する例を示す図が示されている。
【0036】
上述したように、ヘルツ理論を用いることにより、実際の転動体15のばね定数は算出され得る。図5に示されているように、実際の転動体15のばね定数は、転動体15と内輪11との間のばね定数Kh1および転動体15との外輪12との間のばね定数Kh2の合成として求められる。したがって、ヘルツ理論によって算出される転動体15のばね定数は、以下の式(1)で表わされる。
【0037】
【数1】
【0038】
ヘルツ理論では、転動体15および内輪11,外輪12の接触領域Ar1,Ar2以外は剛体として扱われる。一方で、上述したように、内輪11のモデル11Mおよび外輪12のモデル12Mは、有限要素法を用いたシミュレーション上において弾性体として定義されているため、モデル11Mの内輪軌道面Sf1とモデル12Mの外輪軌道面Sf2との各々は、モデル15Mとの接触によって変形する。すなわち、シミュレーション上では、モデル11Mの内輪軌道面Sf1の変形によって生じるばね定数Km1が生じ、モデル12Mの外輪軌道面Sf2の変形によって生じるばね定数Km2が生じる。
【0039】
シミュレーション上ではモデル15Mのばね定数Kbを設定する必要がある。しかしながら、モデル15Mのばね定数Kbには、内輪軌道面Sf1,外輪軌道面Sf2におけるばね定数Km1,Km2が合成されてしまう。すなわち、図5に示されているように、有限要素モデルのシミュレーション上におけるモデル15のばね定数の合成は、以下の式(1)で表わされる。
【0040】
【数2】
【0041】
となる。したがって、モデル15Mのばね定数Kbに対してヘルツ理論によって算出された実際の転動体15のばね定数を適用する場合、ばね定数Km1,Km2とをヘルツ理論によって算出された実際の転動体15のばね定数から取り除く必要がある。
【0042】
すなわち、図5に示されているように、シミュレーション上において設定されるばね定数Kbは、以下の式(3)で表わされる。
【0043】
【数3】
【0044】
このように、シミュレーション上において発生する内輪軌道面Sf1,外輪軌道面Sf2を考慮したばね定数の値をモデル15Mのばね定数Kbとして設定することができる。これにより、本実施の形態では、転がり軸受10に含まれる転動体15を一本のばね要素に近似してモデル化することで、モデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、ばね定数Km1,Km2によって生じる誤差を抑制できる。そのため、固有値解析によって求められる回転機械100の固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。なお、ばね定数Kh1は、本開示における「第1ばね定数」の一例である。また、ばね定数Kh2は、本開示における「第2ばね定数」の一例である。ばね定数Km1は、本開示における「第3ばね定数」の一例である。また、ばね定数Km2は、本開示における「第4ばね定数」の一例である。
【0045】
<ばね定数Km1,Km2の算出方法>
図6は、内輪11を模したモデル11Mの内輪軌道面Sf1におけるばね定数Km1の算出について説明するための図である。図6には、接触領域Ar1と節点P1とをZ軸の正方向側から視た図が示されている。
【0046】
本実施の形態においては、モデル10Mに対して、接触領域Ar1の法線方向から荷重を加えた場合における内輪軌道面Sf1の変形量を算出する。接触領域Ar1の法線方向とは、Z軸方向である。演算装置200は、接触領域Ar1と参照領域Rg1とを比較して内輪軌道面Sf1の変形量を算出する。
【0047】
シミュレーション上において、内輪軌道面Sf1の接触領域Ar1は、荷重が加えられることによって、Z軸の負方向側に沈み込む。すなわち、接触領域Ar1のZ軸方向の位置は、内輪軌道面Sf1における接触領域Ar1の周囲の領域のZ軸方向の位置と差異が生じる。当該差異が大きければ荷重の沈み込みが大きいため、モデル11Mの剛性が低く、すなわち、ばね定数Km1は大きい。一方で、当該差異が小さければ荷重の沈み込みが小さいため、モデル11Mの剛性が高く、すなわち、ばね定数Km1は小さい。
【0048】
接触領域Ar1の沈み込みによって、接触領域Ar1の周囲も同様に沈み込む。内輪軌道面Sf1において接触領域Ar1に近い領域であるほど、接触領域Ar1と引っ張られて深く沈み込むため、Z軸の負方向への変形量が大きい。一方で、接触領域Ar1に遠い領域であるほど、接触領域Ar1の沈み込みの影響を受けないため、Z軸の負方向への変形量が小さくなる。
【0049】
そのため、ばね定数Km1を算出するにあたって、接触領域Ar1と比較する対象となる参照領域Rg1の位置を適切に定めなければ、算出されるばね定数Km1は不適当に小さくなったり、大きくなったりする。図6では、実験により定められた適切な参照領域Rg1の位置について説明する。
【0050】
図6に示されるように、参照領域Rg1は、接触領域Ar1の周囲を取り囲む斜線部である。より具体的には、参照領域Rg1は、内輪軌道面Sf1上の内楕円Ic1の外側であって、外楕円Oc1の内側の領域である。上述したように、接触領域Ar1は節点P1を中心とする楕円形状を有する。接触領域Ar1の長半径は、距離L0である。接触領域Ar1の短半径は、距離M0である。
【0051】
内楕円Ic1と、外楕円Oc1と、接触領域Ar1の楕円形状は、同一の節点P1を共有する。換言すれば、内楕円Ic1と、外楕円Oc1と、接触領域Ar1の楕円形状の各々の中心点は、Z軸の正方向側から視たときに重なり合う。内楕円Ic1の長半径は、距離L1である。内楕円Ic1の内半径は、距離M1である。外楕円Oc1の長半径は、距離L2である。外楕円Oc1の内半径は、距離M2である。
【0052】
距離M1は、距離M0の4倍の長さである。距離M2は、距離M0の8倍の長さである。距離L1は、距離L0の1.5倍の長さである。距離L2は、距離L0の4倍の長さである。
【0053】
このように、本実施の形態においては、接触領域Ar1内の点と、参照領域Rg1の点とのZ軸の正方向側の差異に基づいて、ばね定数Km1を算出する。これにより、ばね定数Km1は、不適当に大きくなったり、小さくなったりすることがない。
【0054】
また、図3にて説明したように、接触領域Ar1内には剛体リンクであるモデルRL1~RL3が配置されている。そのため、荷重は、内輪軌道面Sf1の接触領域Ar1内に対して均一に加えられる。すなわち、内輪軌道面Sf1の接触領域Ar1のいずれの点の位置も、Z軸方向において同じ位置となる。
【0055】
参照領域Rg1は、図6において斜線で示された領域内であればよい。すなわち、外楕円Oc1は図6に示される楕円よりも小さくてもよいし、内楕円Ic1は図6に示される楕円よりも大きくてもよい。すなわち、距離M2が距離M1よりも長く、距離L2が距離L1よりも長ければ、距離M1は距離M0の4倍の長さよりも長くてもよく、距離M2は距離M0の8倍の長さよりも短くてもよく、距離L1は距離L0の1.5倍の長さよりも長くてもよく、距離L2は距離L0の4倍の長さよりも短くてもよい。なお、内楕円Ic1は、本開示における「第1楕円」の一例である。外楕円Oc1は、本開示における「第2楕円」の一例である。
【0056】
図7は、外輪12を模したモデル12Mの外輪軌道面Sf2におけるばね定数Km2の算出について説明するための図である。外輪軌道面Sf2においても内輪軌道面Sf1と同様に、ばね定数Km2が求められる。すなわち、モデル12Mにおいても、図7に示されるように参照領域Rg2が設定される。参照領域Rg2は、外楕円Oc2と内楕円Ic2との間の斜線によって示される領域である。接触領域Ar2と参照領域Rg2との大きさの関係性は、接触領域Ar1と参照領域Rg1との関係性と同じである。
【0057】
図6と同様に、図7では、接触領域Ar2の長半径を距離L0とし、接触領域Ar2の短半径を距離M0としたとき、内楕円Ic2の長半径を距離L1とし、内楕円Ic2の内半径を距離M1とし、外楕円Oc2の長半径を距離L2とし、外楕円Oc2の内半径を距離M2とする。このとき、図7においても、図6と同様に、距離M1は、距離M0の4倍の長さである。距離M2は、距離M0の8倍の長さである。距離L1は、距離L0の1.5倍の長さである。距離L2は、距離L0の4倍の長さである。これにより、ばね定数Km2も、不必要に大きくなったり、小さくなったりすることがない。なお、内楕円Ic2は、本開示における「第3楕円」の一例である。外楕円Oc2は、本開示における「第4楕円」の一例である。
【0058】
参照領域Rg2は、参照領域Rg1と同様に、図7において斜線で示された領域内であればよい。すなわち、外楕円Oc2は図7に示される楕円よりも小さくてもよいし、内楕円Ic2は図7に示される楕円よりも大きくてもよい。すなわち、距離M2が距離M1よりも長く、距離L2が距離L1よりも長ければ、距離M1は距離M0の4倍の長さよりも長くてもよく、距離M2は距離M0の8倍の長さよりも短くてもよく、距離L1は距離L0の1.5倍の長さよりも長くてもよく、距離L2は距離L0の4倍の長さよりも短くてもよい。
【0059】
<処理手順>
図8は、本実施の形態における転動体15のモデル15Mのばね定数Kbを判定する処理手順を示すフローチャートである。図8のフローチャートは、プログラムとして記憶装置202に記憶されている。演算装置200の演算回路201は、当該プログラムを実行する。
【0060】
演算回路201は、ヘルツ理論を用いて接触領域Ar1における転動体15のばね定数Kh1を算出する(ステップS11)。具体的には、演算回路201は、設計者から入力された転動体15の外径、質量を示すデータに基づいて、転動体15のばね定数Kh1を算出する。演算回路201は、ヘルツ理論を用いて接触領域Ar2における転動体15のばね定数Kh2を算出する(ステップS12)。
【0061】
演算回路201は、接触領域Ar1におけるモデル11Mのばね定数Km1を算出する(ステップS13)。具体的には、演算回路201は、シミュレーション上でモデル10Mに荷重を加えて、図6で説明した変位量を取得する。図6で説明した変位量とは、Z軸方向における参照領域Rg1内の点と、接触領域Ar1内の点との間の距離である。演算回路201は、当該変位量に基づいて、ばね定数Km1を算出する。記憶装置202には、荷重の大きさ、変位量、ばね定数Km1の関係性を示すデータベースが格納されている。演算回路201は、接触領域Ar2におけるモデル12Mのばね定数Km2を算出する(ステップS14)。
【0062】
演算回路201は、ステップS11にて算出したばね定数Kh1と、ステップS12にて算出したばね定数Kh2と、ステップS13にて算出したばね定数Km1と、ステップS14にて算出したばね定数Km2とに基づいて、モデル15Mのばね定数Kbを算出する(ステップS15)。具体的には、演算回路201は、図5にて説明した式を用いて、Kbを導き出す。
【0063】
演算回路201は、ステップS15にて算出したばね定数Kbを用いて、回転機械100の固有振動数を算出する(ステップS16)。具体的には、演算装置200は、ばね定数Kbを含む転がり軸受10全体のばね定数と、回転機械100に含まれる転がり軸受10以外の構成のばね定数とから、回転機械100全体のばね定数を算出する。回転機械100に含まれる転がり軸受10以外の構成のばね定数は、設計者によって演算装置200に入力される。同様に、回転機械100全体の質量は、設計者によって演算装置200に入力される。演算装置200は、回転機械100全体のばね定数および質量から、固有値解析に基づいて、回転機械100の固有振動数を算出する。
【0064】
このように、本実施の形態においては、有限要素法を用いたことによって生じるばね定数Km1,Km2を考慮して、転動体15を近似化したモデル15Mのばね定数Kbを定めている。これにより、本実施の形態においては、転がり軸受10に含まれる転動体15を一本のばね要素に近似してモデル化することにより、転がり軸受10のモデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、誤差を低減することができる。すなわち、本実施の形態では、判定された固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。また、演算装置200は、回転機械100全体のばね定数からヤング係数を求めて、回転機械100全体の剛性および応力を求めてもよい。さらに、演算装置200は、求められた回転機械100全体の剛性および応力に基づいて、所定の荷重が回転機械100に加えられたときの回転機械100の変位量を求めてもよい。これにより、本実施の形態では、ばね定数に基づいて判定される回転機械100の特性に発生する誤差を低減しつつ、回転機械100の特性の判定にかかる作業負担を抑制できる。
【0065】
<変形例1>
本実施の形態では、転がり軸受10がラジアル玉軸受である例について説明した。変形例1においては、ラジアルころ軸受を適用する説明する。
【0066】
図9は、変形例1における転がり軸受10Aの断面図を示す図である。なお、変形例1における構成は、転がり軸受10Aの種類がラジアル玉軸受ではなく、ラジアルころ軸受である点以外は、本実施の形態における構成と同一である。変形例1において、本実施の形態と重複する構成の説明は繰り返さない。
【0067】
図9には、回転軸Ax2を有するラジアルころ軸受である転がり軸受10Aが示されている。転がり軸受10Aは、外輪12Aと、内輪11Aと、転動体15Aとを含む。なお、内輪11Aは、本開示における「第1軌道輪」の一例である。外輪12Aは、本開示における「第2軌道輪」の一例である。変形例1においても、演算装置200では、ばね定数Km1,Km2を考慮して転動体15Aを近似したモデルのばね定数を判定する。
【0068】
図10は、変形例1における内輪11を模したモデル11Mの内輪軌道面Sf1におけるばね定数Km1の算出について説明するための図である。図10には、接触領域Ar1と節点P1をZ軸の正方向側から視図が示されている。変形例1においては、転がり軸受10Aがラジアルころ軸受であるため、接触領域Ar1は、矩形形状を有する。そのため、変形例1における参照領域Rg3も同様に、矩形形状を有する。参照領域Rg3は、外矩形Os3と内矩形Is3との間の領域である。
【0069】
変形例1において、接触領域Ar1の長辺の長さは、距離I0である。接触領域Ar1の短辺の長さは、距離W0である。内矩形Is3の長辺の長さは、距離I1である。内矩形Is3の短辺の長さは、距離W1である。外矩形Os3の長辺の長さは、距離I2である。外矩形Os3の短辺の長さは、距離W2である。
【0070】
距離I1は、距離I0の1.1倍の長さである。距離I2は、距離I0の2倍の長さである。距離W1は、距離W0の4倍の長さである。距離W2は、距離W0の8倍の長さである。
【0071】
このように、変形例1においても、矩形形状の接触領域Ar1内の点と、矩形形状の参照領域Rg3の点とのZ軸の正方向側の差異に基づいて、ばね定数Km1を算出する。これにより、変形例1でもばね定数Km1は、不必要に大きくなったり、小さくなったりすることがない。なお、内矩形Is3は、本開示における「第1矩形」の一例である。外矩形Os3は、本開示における「第2矩形」の一例である。
【0072】
参照領域Rg3は、参照領域Rg1と同様に、図10において斜線で示された領域内であればよい。すなわち、外矩形Os3は図10に示される矩形よりも小さくてもよいし、内矩形Is3は図10に示される矩形よりも大きくてもよい。すなわち、図10において、距離W2が距離W1よりも長く、距離I2が距離I1よりも長ければ、距離W1は距離W0の4倍の長さよりも長くてもよく、距離W2は距離W0の8倍の長さよりも短くてもよく、距離I1は距離I0の1.1倍の長さよりも長くてもよく、距離I2は距離I0の2倍の長さよりも短くてもよい。
【0073】
図11は、変形例1における外輪12を模したモデル12Mの外輪軌道面Sf2におけるばね定数Km2の算出について説明するための図である。図11においても、参照領域Rg4が設定される。参照領域Rg4は、外矩形Os4と内矩形Is4との間の斜線によって示される領域である。変形例1においては接触領域Ar2の大きさは、変形例1の接触領域Ar1と同様の大きさである。すなわち、接触領域Ar2の長辺の長さは、距離I0である。接触領域Ar2の短辺の長さは、距離W0である。
【0074】
図10と同様に、内矩形Is4の短辺の長さは、距離I1である。内矩形Is4の長辺の長さは、距離W1である。外矩形Os4の短辺の長さは、距離I2である。外矩形Os4の長辺の長さは、距離W2である。
【0075】
また、図7においても、図6と同様に、距離I1は、距離I0の1.1倍の長さである。距離I2は、距離I0の2倍の長さである。距離W1は、距離W0の4倍の長さである。距離W2は、距離W0の8倍の長さである。これにより、ばね定数Km2も、不必要に大きくなったり、小さくなったりすることがない。なお、内矩形Is4は、本開示における「第3矩形」の一例である。外矩形Os4は、本開示における「第4矩形」の一例である。
【0076】
参照領域Rg4は、参照領域Rg1と同様に、図11において斜線で示された領域内であればよい。すなわち、外矩形Os4は図11に示される矩形よりも小さくてもよいし、内矩形Is4は図11に示される矩形よりも大きくてもよい。すなわち、図11において、距離W2が距離W1よりも長く、距離I2が距離I1よりも長ければ、距離W1は距離W0の4倍の長さよりも長くてもよく、距離W2は距離W0の8倍の長さよりも短くてもよく、距離I1は距離I0の1.1倍の長さよりも長くてもよく、距離I2は距離I0の2倍の長さよりも短くてもよい。
【0077】
このように、ラジアルころ軸受10Aを適用した変形例1においても、本実施の形態と同様に、転がり軸受10Aに含まれる転動体15を一本のばね要素に近似してモデル化することによって、モデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、ばね定数Km1,Km2による誤差を低減できる。すなわち、変形例1においても、判定される回転機械100の固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。
【0078】
<変形例2>
本実施の形態では、転がり軸受10がラジアル玉軸受である例について説明した。変形例2においては、スラスト軸受を適用する例を説明する。図12は、変形例2における転がり軸受10Bの断面図を示す図である。なお、変形例2における構成は、転がり軸受10Bの種類がラジアル玉軸受ではなくスラスト軸受である点以外は、本実施の形態における構成と同一である。変形例2において、本実施の形態と重複する構成の説明は繰り返さない。
【0079】
図12には、回転軸Ax3を有するスラスト軸受である転がり軸受10Bが示されている。転がり軸受10Bは、外輪12Bと、内輪11Bと、転動体15Bとを含む。なお、内輪11Bは、本開示における「第1軌道輪」の一例である。外輪12Bは、本開示における「第2軌道輪」の一例である。変形例2においても、演算装置200では、ばね定数Km1,Km2を考慮して転動体15Bを近似したモデルのばね定数を判定する。
【0080】
このように、スラスト軸受を適用した変形例2においても、本実施の形態と同様に、転がり軸受10Bに含まれる転動体15Bを一本のばね要素に近似してモデル化することによって、モデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、ばね定数Km1,Km2による誤差を低減できる。すなわち、変形例2においても、判定される回転機械100の固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。
【0081】
<変形例3>
本実施の形態では、転がり軸受10がラジアル玉軸受である例について説明した。変形例3においては、アンギュラ玉軸受を適用する例を説明する。図13は、変形例3における転がり軸受10Cの断面図を示す図である。なお、変形例3における構成は、転がり軸受10Bの種類がラジアル玉軸受ではなくアンギュラ玉軸受である点以外は、本実施の形態における構成と同一である。変形例3において、本実施の形態と重複する構成の説明は繰り返さない。
【0082】
図13には、アンギュラ玉軸受である転がり軸受10Cが示されている。転がり軸受10Cは、外輪12Cと、内輪11Cと、転動体15Cとを含む。なお、内輪11Cは、本開示における「第1軌道輪」の一例である。外輪12Cは、本開示における「第2軌道輪」の一例である。変形例3においても、演算装置200では、ばね定数Km1,Km2を考慮して転動体15Cを近似したモデルのばね定数を判定する。
【0083】
図13には、転動体15Cをモデル化したモデル15Mが、転動体15Cに重畳して図示されている。さらに、図13には、内輪11Cをモデル化したモデル11Mとモデル15Mとを接続する節点P1と、外輪12Cをモデル化したモデル12Mとモデル15Mとを接続する節点P2とが示されている。
【0084】
このように、アンギュラ玉軸受を適用した変形例3においても、本実施の形態と同様に、転がり軸受10Cに含まれる転動体15Cを一本のばね要素に近似してモデル化することによって、モデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、ばね定数Km1,Km2による誤差を低減できる。すなわち、変形例3においても、判定される回転機械100の固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。
【0085】
<変形例4>
変形例3では、アンギュラ玉軸受を適用した例について説明した。変形例4においては、アンギュラ玉軸受を適用して、変形例3とは異なる位置に節点P1,P2を配置する例を説明する。
【0086】
図14は、変形例4における転がり軸受10Dの断面図を示す図である。変形例4において、変形例3と重複する構成の説明は繰り返さない。変形例4において、内輪11Dは、本開示における「第1軌道輪」の一例である。外輪12Dは、本開示における「第2軌道輪」の一例である。
【0087】
図14には、変形例4における転動体15Dをモデル化したモデル15Mが、転動体15Dに重畳して図示されている。図14に示されているように、変形例4では節点P1は、内輪軌道面上に配置されていない。同様に、節点P2も外輪軌道面上に配置されていない。節点P1および節点P2は、各々の軌道輪の溝曲率半径の中心に位置する。これにより、節点P1と節点P2とを結ぶ線が内外輪それぞれの接触位置を結ぶ線と一致するため、接触位置の計算は不要となる。
【0088】
図15は、変形例4のモデル10Dにおける内輪11Dのモデルと、外輪12Dのモデルとを示す図である。図15に示されるように、節点P1は、三角形状を有する剛体リンクであるモデルRL7によって支えられている。モデルRL7は、外輪12Dと節点P1との間に配置されている。節点P2は、三角形状を有する剛体リンクであるモデルRL8によって支えられている。モデルRL8は、内輪11Dと節点P2との間に配置されている。
【0089】
図14に戻り、節点P1と節点P2との間に、転動体15Dをモデル化した一次元の弾性体であるモデル15Mが配置されている。これにより、玉と軌道輪との接触位置を計算することなく固有振動数を判定することができる。
【0090】
このように、節点P1,P2が軌道面上に配置されていない変形例4においても、本実施の形態と同様に、転がり軸受10Dに含まれる転動体15Dを一本のばね要素に近似してモデル化することによって、モデル化に要する作業負担を低減させることができ、かつ、ばね定数Km1,Km2による誤差を低減できる。すなわち、変形例4においても、判定される回転機械100の固有振動数における誤差を低減しつつ、回転機械100の固有振動数の判定にかかる作業負担も抑制できる。
【0091】
<総括>
以上に説明した回転機械の特性の判定方法は、以下のような特徴を有する。
【0092】
(第1項) 軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する判定方法である。軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されており、第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されており、転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されており、第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、第1有限要素モデルにおける第1接触領域上には、第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されており、第2有限要素モデルにおける第2接触領域上には、第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されている。判定方法は、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、ヘルツ理論を用いて、転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを含む。
【0093】
(第2項) 第1項における判定方法は、第3ばね定数を算出するステップは、第1有限要素モデルに対して第1接触領域の法線方向から荷重を加えた場合における、第1接触領域と、第1接触領域と異なる第1軌道面上の第1参照領域と、の間の距離の変位に基づいて第3ばね定数を算出するステップを含む。
【0094】
(第3項) 第2項における判定方法において、転動体は、玉であり、第1接触領域は、第1軌道面の法線方向から視たときに楕円形状を有し、第1参照領域は、第1軌道面上の第1楕円の外側であって、第1軌道面上の第2楕円の内側の領域であり、第1接触領域、第1楕円、および第2楕円の各々の中心点は、第1軌道面を法線方向から視たときに重なり合い、第2楕円の短半径は、第1楕円の短半径よりも長く、第2楕円の長半径は、第1楕円の長半径よりも長く、第1楕円の短半径は、第1接触領域の短半径の4倍の長さより長く、第2楕円の短半径は、第1接触領域の短半径の8倍の長さよりも短く、第1楕円の長半径は、第1接触領域の長半径の1.5倍の長さより長く、第2楕円の長半径は、第1接触領域の長半径の4倍の長さよりも短い。
【0095】
(第4項) 第2項の判定方法において、転動体は、ころであり、第1接触領域は、第1軌道面を法線方向から視たときに矩形形状を有し、第1参照領域は、第1接触領域上の第1矩形の外側であって、第1接触領域上の第2矩形の内側の領域であり、第1接触領域、第1矩形、および第2矩形の各々の中心点は、第1軌道面を法線方向から視たときに重なり合い、第2矩形の短辺の長さは、第1矩形の短辺の長さよりも長く、第2矩形の長辺の長さは、第1矩形の長辺の長さよりも長く、第1矩形の短辺の長さは、第1接触領域の短辺の長さの4倍の長さより長く、第2矩形の短辺の長さは、第1接触領域の短辺の長さの8倍の長さよりも短く、第1矩形の長辺の長さは、第1接触領域の長辺の長さの1.1倍の長さより長く、第2矩形の長辺の長さは、第1接触領域の長辺の長さの2倍の長さよりも短い。
【0096】
(第5項) 第1項~第4項の判定方法において、第4ばね定数を算出するステップは、第2有限要素モデルに対して第2接触領域の法線方向から荷重を加えた場合における、第2接触領域と、第2接触領域と異なる第2軌道面上の第2参照領域と、の間の距離の変位に基づいて第4ばね定数を算出するステップを含む。
【0097】
(第6項) 第5項の判定方法において、転動体は、玉であり、第2接触領域は、第2軌道面の法線方向から視たときに楕円形状を有し、第2参照領域は、第2軌道面上の第3楕円の外側であって、第2軌道面上の第4楕円の内側の領域であり、第2接触領域、第3楕円、および第4楕円の各々の中心点は、第2軌道面を法線方向から視たときに重なり合う位置に配置され、第4楕円の短半径は、第3楕円の短半径よりも長く、第4楕円の長半径は、第3楕円の長半径よりも長く、第3楕円の短半径は、第2接触領域の短半径の4倍の長さより長く、第4楕円の短半径は、第2接触領域の短半径の8倍の長さよりも短く、第3楕円の長半径は、第2接触領域の長半径の1.5倍の長さより長く、第4楕円の長半径は、第2接触領域の長半径の4倍の長さよりも短い。
【0098】
(第7項) 第5項における判定方法において、転動体は、ころであり、第2接触領域は、第2軌道面を法線方向から視たときに矩形形状を有し、第2参照領域は、第2接触領域上の第3矩形の外側であって、第2接触領域上の第4矩形の内側の領域であり、第2接触領域、第3矩形、および第4矩形の各々の中心点は、第2軌道面を法線方向から視たときに重なり合う位置に配置され、第4矩形の短辺の長さは、第3矩形の短辺の長さよりも長く、第4矩形の長辺の長さは、第3矩形の長辺の長さよりも長く、第3矩形の短辺の長さは、第2接触領域の短辺の長さの4倍の長さより長く、第4矩形の短辺の長さは、第2接触領域の短辺の長さの8倍の長さよりも短く、第3矩形の長辺の長さは、第2接触領域の長辺の長さの1.1倍の長さより長く、第4矩形の長辺の長さは、第2接触領域の長辺の長さの2倍の長さよりも短い。
【0099】
(第8項) 第1項~第7項までのいずれかの判定方法において、第1ばね定数をKh1とし、第2ばね定数をKh2とし、第3ばね定数をKm1とし、第4ばね定数をKm2とし、第3有限要素モデルのばね定数をKbとすれば、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップにおいて、
【0100】
【数3】
【0101】
の関係式を用いて、第3有限要素モデルのばね定数を算出する。
【0102】
(第9項) 有限要素モデルを用いて、軸受を有する回転機械の特性の判定をコンピュータに実行させるプログラムである。軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、第1軌道輪は、第1有限要素モデルとしてモデル化されており、第2軌道輪は、第2有限要素モデルとしてモデル化されており、転動体は、第3有限要素モデルとしてモデル化されており、第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、第1有限要素モデルにおける第1接触領域上には、第1点を通過する線形状の第1剛体要素が配置されており、第2有限要素モデルにおける第2接触領域上には、第2点を通過する線形状の第2剛体要素が配置されている。プログラムは、コンピュータに、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出するステップと、ヘルツ理論を用いて、転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出するステップと、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出するステップと、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出するステップと、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出するステップと、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて軸受のばね定数を算出するステップと、算出した軸受のばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定するステップとを実行させる。
【0103】
(第10項) 軸受を有する回転機械の特性を有限要素モデルを用いて判定する演算装置である。演算装置は、演算回路と、記憶装置とを備える。軸受は、転動体と第1軌道輪と第2軌道輪とを含み、記憶装置は、第1軌道輪をモデル化した第1有限要素モデルと、第2軌道輪をモデル化した第2有限要素モデルと、転動体をモデル化した第3有限要素モデルとを格納し、第3有限要素モデルは、第1軌道輪の第1軌道面上の領域であって、転動体と接触する第1接触領域に含まれる第1点と、第2軌道輪の第2軌道面上の領域であって、転動体と接触する第2接触領域に含まれる第2点と、を接続する一次元の弾性体の有限要素モデルであり、記憶装置は、第1有限要素モデルにおける第1接触領域上に配置され、第1点を通過する線形状の第1剛体要素と、第2有限要素モデルにおける第2接触領域上に配置され、第2点を通過する線形状の第2剛体要素と、をさらに格納する。演算回路は、ヘルツ理論を用いて、転動体と第1軌道輪との間の第1ばね定数を算出し、ヘルツ理論を用いて、転動体と第2軌道輪との間の第2ばね定数を算出し、第1剛体要素が配置されている第1接触領域における第1有限要素モデルの第3ばね定数を算出し、第2剛体要素が配置されている第2接触領域における第2有限要素モデルの第4ばね定数を算出し、第1ばね定数と、第2ばね定数と、第3ばね定数と、第4ばね定数とに基づいて、第3有限要素モデルのばね定数を算出し、算出した第3有限要素モデルのばね定数を用いて、回転機械の剛性、応力、変位量および固有振動数のうちの少なくとも1つを判定する。
【0104】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
5 シャフト、10,10A~10D 転がり軸受、10M,11M,12M,15M,RL1~RL8 モデル、11,11A~11D 内輪、12,12A~12D 外輪、100,1000 回転機械、200 演算装置、201 演算回路、202 記憶装置、15,15A~15D 転動体、Ar1,Ar2 接触領域、Ax1 回転軸方向、I0~I2,L0~L2,M0~M2,W0~W2 距離、Ic1,Ic2 内楕円、Is3,Is4 内矩形、Oc1,Oc2 外楕円、Os3,Os4 外矩形、Kb,Kh1,Kh2,Km1,Km2 ばね定数、P1,P2 節点、Rg1~Rg4 参照領域、Sf1 内輪軌道面、Sf2 外輪軌道面。
図1
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