(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122302
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】縫製データ生成プログラム及びミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 19/12 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
D05B19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029770
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】松島 美佳
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA26
3B150CE23
3B150CE25
3B150LA63
3B150LA71
3B150LB02
3B150NA59
3B150NB09
3B150QA07
3B150QA08
(57)【要約】
【課題】複数のラインの各々に沿って縫目を形成するエコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上させた縫製データ生成プログラム及びミシンを提供すること。
【解決手段】縫製データ生成装置の制御部は、プログラムに従い、縫製領域内に配置される基準ラインと、縫製領域内に複数のラインを配置する配置条件とを取得する(S7、S11、S13、S15、S17)。制御部は、基準ラインから所定方向に第一距離の位置に配置される第一ラインと、第一ラインよりも所定方向において、第二距離だけ互いに離隔して、隣接して配置される第二ライン及び第三ラインと、第二距離とは異なる第三距離、第三ラインから所定方向に離隔して配置される第四ラインとを含む複数のラインを縫製領域内に設定する(S20)。制御部は、複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成する(S22)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、制御部とを備える縫製データ生成装置の前記制御部に、
縫製領域内に配置される基準ラインを取得する基準取得ステップと、
前記縫製領域内に複数のラインを配置するための配置条件を取得する条件取得ステップと、
前記配置条件に従い、前記基準ラインを基準として、前記縫製領域内に複数のラインを配置するライン設定ステップであって、
取得された前記基準ラインから所定方向に第一距離の位置に配置される第一ラインと、
前記第一ラインよりも前記所定方向において、第二距離だけ互いに離隔して、隣接して配置される第二ライン及び第三ラインと、
前記第二距離とは異なる第三距離、前記第三ラインから前記所定方向に離隔して配置される第四ラインと
を含む前記複数のラインを前記縫製領域内に設定する前記ライン設定ステップと、
前記複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成するデータ生成ステップと
を実行する縫製データ生成プログラム。
【請求項2】
前記配置条件は、前記複数のラインのうちの、隣接する任意の二つのラインの前記所定方向の隣接距離を比較した場合に、前記所定方向において前記隣接距離が規則的に変化する変化条件を含み、
前記ライン設定ステップは、前記変化条件に従って、前記第一距離、前記第二距離、及び前記第三距離を互いに異なる値に設定して、前記縫製領域内に前記複数のラインを設定することを特徴とする請求項1に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項3】
前記条件取得ステップは、前記操作部の操作に基づき、前記隣接距離が、前記所定方向において規則的に増加する増加条件と、前記所定方向において規則的に減少する減少条件との中から選択された前記変化条件を含む前記配置条件を取得することを特徴とする請求項2に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項4】
前記条件取得ステップは、前記操作部の操作に基づき設定された、前記所定方向に並ぶ前記複数のラインの数を含む前記配置条件を取得し、
前記ライン設定ステップは、前記配置条件で指定される数の前記複数のラインを前記縫製領域内に設定することを特徴とする請求項1に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項5】
前記ライン設定ステップは、前記配置条件に従って、前記基準ラインを囲む環状の前記複数のラインを設定することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項6】
前記条件取得ステップは、前記操作部の操作に基づき決定される選択隣接距離を含む前記配置条件を取得し、
前記ライン設定ステップは、前記複数のラインから選択された隣接する二つのラインの前記所定方向の距離を、前記配置条件で指定される前記選択隣接距離に設定する請求項1から4の何れかに記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項7】
前記条件取得ステップは、選択隣接距離を含む前記配置条件を取得し、
前記ライン設定ステップは、
前記複数のラインから選択された隣接する二つのラインの前記所定方向の距離を、前記配置条件で指定される前記選択隣接距離に設定し、
前記選択隣接距離に設定されていない前記隣接距離を、前記選択隣接距離と、前記変化条件とに応じて設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項8】
前記縫製領域内に、前記複数のラインを配置するための、前記縫製領域と同じ又は前記縫製領域よりも小さい配置領域を設定する配置領域設定ステップを更に含み、
前記ライン設定ステップは、前記配置領域内に、前記複数のラインを配置することを特徴とする請求項4に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項9】
前記ライン設定ステップは、前記複数のラインが配置される前記配置領域が設定された状態で、新たな前記配置条件が取得された場合に、前記新たな前記配置条件に従って、前記配置領域内に前記複数のラインの一部を再設定し、前記配置領域外の前記複数のラインの一部は再設定しないことを特徴とする請求項8に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項10】
前記基準取得ステップは、前記操作部の操作に基づき複数のラインの中から選択されたラインを、前記基準ラインとして取得することを特徴とする請求項1に記載の縫製データ生成プログラム。
【請求項11】
針棒を有し、前記針棒を上下動させて被縫製物に縫目を形成する縫製部と、
刺繍枠を着脱可能なホルダを有し、前記ホルダを前記針棒に対し移動させる移動部と、
操作部と、
前記縫製部と、前記移動部とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記刺繍枠の内側に設定される縫製領域内に配置される基準ラインを取得する基準取得ステップと、
前記縫製領域内に複数のラインを配置するための配置条件を取得する条件取得ステップと、
前記配置条件に従い、前記基準ラインを基準として、前記縫製領域内に複数のラインを配置するライン設定ステップであって、
取得された前記基準ラインから所定方向に第一距離の位置に配置される第一ラインと、
前記第一ラインよりも前記所定方向において、第二距離だけ互いに離隔して、隣接して配置される第二ライン及び第三ラインと、
前記第二距離とは異なる第三距離、前記第三ラインから前記所定方向に離隔して配置される第四ラインと
を含む前記複数のラインを前記縫製領域内に設定する前記ライン設定ステップと、
前記複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成するデータ生成ステップと、
生成された前記縫製データに従って、前記縫製部と前記移動部とを駆動して、前記刺繍枠に保持された前記被縫製物に、前記複数のラインに沿った縫目を形成する縫製ステップと
を実行することを特徴とするミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製データ生成プログラム及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のキルティングデータ作成装置は、ユーザがパッチワークを選択し、キルティングパターンを選択すると、パッチワーク及びキルティングパターン並びにレイアウトを表示する。装置は、キルティングパターンを各ピースに対応する分割パターンに分割するパターン分割処理を実行し、分割パターンのパターンデータ及び縫糸の色をセットする。装置は、縫糸の色が同じ分割パターンのパターンデータをまとめ、色毎のパターンデータについて縫製データを作成する。装置は、縫製データをメモリカードに書き込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キルティングには、模様及びパッチワーク片等のモチーフの周囲の領域に、波紋のような複数の線状の縫目を配置するエコーキルトと呼ばれる手法がある。従来のキルティングデータ作成装置は、ユーザが望むデザインのエコーキルトの縫目を形成するための縫製データを生成するのに手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、複数のラインの各々に沿って縫目を形成するエコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上させた縫製データ生成プログラム及びミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る縫製データ生成プログラムは、操作部と、制御部とを備える縫製データ生成装置の前記制御部に、縫製領域内に配置される基準ラインを取得する基準取得ステップと、前記縫製領域内に複数のラインを配置するための配置条件を取得する条件取得ステップと、前記配置条件に従い、前記基準ラインを基準として、前記縫製領域内に複数のラインを配置するライン設定ステップであって、取得された前記基準ラインから所定方向に第一距離の位置に配置される第一ラインと、前記第一ラインよりも前記所定方向において、第二距離だけ互いに離隔して、隣接して配置される第二ライン及び第三ラインと、前記第二距離とは異なる第三距離、前記第三ラインから前記所定方向に離隔して配置される第四ラインとを含む前記複数のラインを前記縫製領域内に設定する前記ライン設定ステップと、前記複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成するデータ生成ステップとを実行させる指示を含む。縫製データ生成プログラムが実行された場合、縫製データ生成装置は、第二距離と第三距離とが互いに異なる複数のラインを設定できる。故に縫製データ生成プログラムのライン設定ステップは、複数のラインの各々に沿って縫目を形成するエコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0007】
本発明の第二態様に係るミシンは、針棒を有し、前記針棒を上下動させて被縫製物に縫目を形成する縫製部と、刺繍枠を着脱可能なホルダを有し、前記ホルダを前記針棒に対し移動させる移動部と、操作部と、前記縫製部と、前記移動部とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記刺繍枠の内側に設定される縫製領域内に配置される基準ラインを取得する基準取得ステップと、前記縫製領域内に複数のラインを配置するための配置条件を取得する条件取得ステップと、前記配置条件に従い、前記基準ラインを基準として、前記縫製領域内に複数のラインを配置するライン設定ステップであって、取得された前記基準ラインから所定方向に第一距離の位置に配置される第一ラインと、前記第一ラインよりも前記所定方向において、第二距離だけ互いに離隔して、隣接して配置される第二ライン及び第三ラインと、前記第二距離とは異なる第三距離、前記第三ラインから前記所定方向に離隔して配置される第四ラインとを含む前記複数のラインを前記縫製領域内に設定する前記ライン設定ステップと、前記複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成するデータ生成ステップと、生成された前記縫製データに従って、前記縫製部と前記移動部とを駆動して、前記刺繍枠に保持された前記被縫製物に、前記複数のラインに沿った縫目を形成する縫製ステップとを実行する。ミシンは、第二距離と第三距離とが互いに異なる複数のラインを設定できる。故にミシンのライン設定ステップは、複数のラインの各々に沿って縫目を形成するエコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。ミシンは、生成された縫製データに従って、複数のラインに沿った縫目を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】刺繍ミシン1の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】刺繍ミシン1で実行されるメイン処理のフローチャートである。
【
図3】表示部28に表示される画面49の説明図である。
【
図4】
図3の画面49の内の欄50の遷移を表す画面G1からG4の説明図である。
【
図5】
図3の画面49の内の欄50の遷移を表す画面G5からG8の説明図である。
【
図6】
図3の画面49の内の欄50の遷移を表す画面G9、G10の説明図である。
【
図7】
図3の画面49の内の欄50の遷移を表す、変形例の画面G11からG13の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、刺繍ミシン1(以下、「ミシン」という。)は、刺繍縫製が可能なミシンである。ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、頭部14、縫製部9、及び移動機構10を備える。ベッド部11は、左右方向に延びるミシン1の土台部である。脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方へ立設される。脚柱部12の前面には、表示部28及び操作部29が設けられる。表示部28は、液晶ディスプレイであり、操作部29は、タッチパネルである。アーム部13は、ベッド部11に対向して脚柱部12の上端から左方へ延びる。頭部14は、アーム部13の左先端部に連結する部位である。縫製部9は、頭部14に対し、図示しない押え棒、針棒8、及び針棒駆動機構36等を備える。針棒8の下端には、縫針6が着脱可能に装着される。縫製部9は、ベッド部11に対し、図示しない釜機構を備える。縫製部9は、針棒8を上下方向に揺動することで、被縫製物Cに縫目を形成する。
【0010】
移動機構10は、刺繍枠17を着脱可能なホルダ37を有し、ホルダ37を針棒8に対して相対的に移動可能に構成される。移動機構10は、本体ケース18及びキャリッジ19を備える。本体ケース18は、図示しないX方向移動機構を収容する。キャリッジ19は、図示しないY方向移動機構を収容する。刺繍縫製時には、ユーザは、キャリッジ19に、大きさの異なる複数種類の刺繍枠から選択された1つの刺繍枠17を装着する。刺繍枠17は、X方向移動機構及びY方向移動機構によって、ミシン1に固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される針落ち点に移動される。本例のX方向及びY方向は各々、左右方向及び前後方向である。ミシン1は、刺繍枠17を移動するのと合わせて、縫製部9の針棒駆動機構36及び釜機構が駆動することにより、刺繍枠17に保持された被縫製物C上に刺繍模様を形成する。
【0011】
ミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1は、CPU7、ROM22、RAM23、記憶部24、及び入出力(I/O)インターフェイス26を備える。CPU7は、ミシン1の制御を司り、バス25を介して、ROM22、RAM23、記憶部24、及びI/Oインターフェイス26と接続されている。I/Oインターフェイス26には、駆動回路31から34、操作部29、スタート/ストップスイッチ30、及び検出器27が接続されている。検出器27は、刺繍枠17が移動機構10に装着されたことを検出し、刺繍枠17の種類に応じた検出結果を出力するよう構成される。記憶部24は、各種設定値を記憶する。記憶部24は、ミシン1で縫製予定の模様の候補となる複数の模様の各々に対応する縫製データを記憶する。
【0012】
駆動回路31には、主軸モータ35が接続される。駆動回路31は、CPU7からの制御信号に従って、主軸モータ35を駆動する。主軸モータ35の駆動に伴い、縫製部9の針棒駆動機構36が駆動され、針棒8が上下動する。駆動回路32には、Xモータ38が接続される。駆動回路33には、Yモータ39が接続される。駆動回路32及び33は、各々、CPU7からの制御信号に従って、Xモータ38及びYモータ39を駆動する。Xモータ38及びYモータ39の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動機構10に装着された刺繍枠17が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。駆動回路34は、CPU7からの制御信号に従って、表示部28に画像を表示する。
【0013】
図2から
図6を参照して、
図3の模様Eの周囲を囲う複数のラインを設定する場合を例に、ミシン1のメイン処理を説明する。
図3に示す模様Eは、六個の窓を有する家を表す模様である。模様Eは、三色の糸で縫製される。メイン処理は、刺繍模様を選択する画面において、ユーザが模様Eと、使用予定の刺繍枠17の種類とを入力後、メイン処理を起動する開始指示を入力した場合に実行される。刺繍枠17の種類は、例えば、記憶部24に記憶された複数種類の刺繍枠の中から選択される。ミシン1のCPU7は開始指示を検知すると、ROM22のプログラム記憶エリアに記憶されたメイン処理を実行するための縫製データ生成プログラムを、RAM23に読み出す。CPU7は、RAM23に読み出した縫製データ生成プログラムに含まれる指示に従って、
図3の画面49を表示部28に表示し、以下のステップを実行する。メイン処理を実行するのに必要な各種パラメータは、記憶部24に記憶されている。メイン処理の過程で得られた各種データは、適宜RAM23に記憶される。以下では、模様Eの周囲を囲う複数のラインをエコーラインともいう。基準ラインは、縫製領域R内に配置される、エコーラインを設定する基準となるラインであり、本例の基準ラインは、模様Eを囲む環状のラインである。縫製領域Rは、刺繍枠17の内側に設定される、ミシン1により刺繍縫製可能な領域である。本例の基準ラインから模様Eに向かう方向、又は基準ラインに近づく方向を、内方向(内側)とも言う。対して、模様Eから基準ラインに向かう方向、又は基準ラインから離れる方向を、外方向(外側)とも言う。複数のラインの各々に、基準ラインから近い順に、LN(Nは自然数)のように符号を付与する。
【0014】
図2に示すように、CPU7は、縫製領域が設定されているかを判断する(S1)。縫製領域が設定されていない場合(S1:NO)、CPU7は、縫製領域が設定されるまでS1で待機する。縫製領域の初期値は、検出器27の出力結果に基づき、ホルダ37に装着された刺繍枠に応じた値が自動的に設定される。縫製領域Rが設定されている場合(S1:YES)、CPU7は、開始指示で指定される模様EがS1で設定が確認された縫製領域R内に配置されるかを判断する(S2)。模様Eが縫製領域R内に配置されない場合(S2:NO)、CPU7は、エラーを表示し、処理をS1に戻す。
【0015】
模様Eが縫製領域R内に配置される場合(S2:YES)、CPU7は、模様Eの周囲に配置される複数のラインの、初期の配置条件を取得する。初期の配置条件は、予め設定されていてもよいし、ユーザにより設定されてもよいし、前回迄の条件を考慮して自動的に設定されてもよい。本実施形態の配置条件は、基準ライン、模様と基準ラインとの間の距離、配置モード、隣接距離、ライン数、選択隣接距離、及び配置領域を含む。本実施形態のミシン1は、
図3の画面49において各配置条件を設定できる。
【0016】
図3に示すように、画面49は、欄50から57を備える。欄50は、縫製領域R内に縫製される縫目の縫製イメージが表示される。欄50の上下方向及び左右方向は各々刺繍座標系のY方向及びX方向に対応する。欄50には、選択中の模様Eが表示されている。欄51は、縫製領域Rを設定する欄であり、キー61を備える。ユーザはキー61を操作して、記憶部24に記憶された縫製領域の中から、使用予定の刺繍枠17に対応する縫製領域Rを指定できる。
【0017】
欄52は、基準ラインを設定するキー62を備える。初期の配置条件で指定される基準ラインは、模様Eの輪郭から所定距離外側に配置された、模様Eの輪郭に沿った環状のラインである。ユーザは、キー62を押下することで、選択肢82の中から所望の基準ラインを選択できる。選択肢82の基準ラインには、初期の環状のラインの他、正三角形、正方形、及び円等の模様Eを囲む図形が含まれる。基準ラインは、記憶部24に記憶された選択肢82の中から選択されてもよいし、ユーザが描画した任意の形状のラインでもよい。
【0018】
欄53は、所定距離を表示する欄63と、所定距離を設定するキー64とを備える。所定距離は、模様と基準ラインとの間の距離を規定すればよく、模様と基準ラインとの間の最短距離であってもよいし、模様と、基準ラインの基準点との間の距離であってもよい。基準点は、基準ラインの辺上の中点、頂点、端点等から選択されてもよい。所定距離の初期値は、ユーザによって設定されてもよいし、自動的に設定されてもよい。キー64が操作された量に応じて、欄63の所定距離の値が変更される。
【0019】
欄54は、配置モードを選択するキー65から67を備える。配置モードは、複数のラインを配置する規則を示す。本例の配置モードは、キー65により選択される等間隔に加え、複数のラインのうちの、隣接する任意の二つのラインの所定方向の距離である隣接距離を比較した場合に、所定方向において隣接距離が規則的に変化する変化条件を含む。本例の所定方向は、模様Eの中心から模様Eの外側に向かう放射線状の方向である。所定方向は、一方向であってもよいし、多方向であってもよい。変化条件は、キー66により選択される隣接距離が、所定方向において規則的に増加する増加条件と、キー67により選択される所定方向において規則的に減少する減少条件との中から選択される。変化条件の規則は、適宜定められればよく、隣接距離が、等差級数となるように設定されてもよいし、等比級数となるように設定されてもよいし、段階的に値が変化する任意の数列で定義されてもよい。変化条件の規則はユーザによって設定されてもよいし、他の配置条件に応じて、自動で設定されてもよい。
【0020】
欄55は、複数のラインの間隔を設定する条件を指定する欄である。欄54において、キー65が選択されている場合、欄55には、間隔を表示する欄68と、間隔を設定するキー69とが表示される。欄54において、キー66又はキー67が選択されている場合、欄55には、最も内側の間隔を表示する欄70と、最も外側の間隔を表示する欄71と、最も内側の間隔を設定するキー72と、最も外側の間隔を設定するキー73との各々が表示される。最も内側の間隔とは、基準ラインと、基準ラインに最も近いラインとの間隔である。最も外側の間隔とは、縫製領域R内に配置されるラインのうち、模様Eの中心から最も離れたラインと、最も離れたラインに最も近いラインとの間隔である。欄70、71の値は、他の配置条件に応じて、自動で設定されてもよい。
【0021】
欄56は、複数のラインの数(以下、「ライン数」という)を設定する欄である。ライン数は、基準ラインを含んでもよいし、含まなくてもよい。欄56には、ライン数を表示する欄74と、ライン数を設定するキー75とが表示される。キー75が操作された量に応じて、欄74のライン数が変更される。CPU7は、他の配置条件を考慮して、設定可能な範囲でライン数の変更を受け付けてもよいし、他の配置条件よりもライン数の条件を優先し、ライン数の変更により、他の配置条件の設定を変更する必要がある場合には、その旨を報知してもよいし、他の配置条件を自動で変更してもよい。ライン数は、設定されなくてもよく、本例の初期のライン数は、設定されない。
【0022】
欄57は、キー76から79を表示する。キー76は、エコーラインの設定を中止する場合に選択される。キー77は、配置領域を設定する。配置領域は、縫製領域R内に設定される、エコーラインが設定される領域であり、縫製領域Rと同じ領域又は縫製領域Rよりも狭い領域である。初期の配置条件は、縫製領域Rと同じ領域である。キー77が選択された場合、キーB1からB5を含む選択肢80がポップアップ表示され、ユーザは表示された選択肢80の中から所望の設定方法を選んだ上で、欄50上に配置領域を設定する。キーB1は、矩形により配置領域を設定する場合に選択される。キーB2は、多角形により配置領域を設定する場合に選択される。キーB3は、曲線により配置領域を設定する場合に選択される。キーB4は、自動選択により配置領域を設定する場合に選択される。キーB5は、複数の模様を囲う矩形により配置領域を設定する場合に選択される。キー78は、選択隣接距離を指定する場合に選択される。本例の選択隣接距離は、選択中のラインと、選択中のラインよりも内側に位置し、選択中のラインと隣接するラインとの間の距離である。キー78が選択されると、欄81がポップアップ表示される。欄81は、選択中のラインを変更するキーB6と、選択隣接距離を表示する欄B7と、選択隣接距離を設定するキーB8とを含む。キーB8が操作された量に応じて、欄B7の選択隣接距離が変更される。キー79は、現在の設定でエコーラインの設定を終了する場合に選択される。
【0023】
CPU7は、S3で取得された初期の配置条件に従って、模様Eを囲うエコーラインを生成する(S4)。
図4の画面G1に示すように、CPU7は、刺繍座標系のX方向及びY方向の各々における模様Eと基準ラインPLとの距離を、欄63に示された所定距離DBとして、基準ラインPLを生成する。CPU7は、基準ラインPLを基準とし、欄68に示された間隔DSで、複数のラインL1からL7を模様Eの中心から外側に等間隔で配置する。ラインL1、L2は、模様Eを囲む環状である。ラインL3からL7は、模様Eを囲む環状のラインの内、縫製領域R内となる部分のラインであり、環状ではない。複数のラインL1からL7のうち、隣接する任意の二つラインの間隔は間隔DSである。CPU7は、生成されたエコーラインを表示部28に表示する。
【0024】
CPU7は、キー62の押下を検出したかにより、基準ラインを設定する指示が入力されたかを判断する(S6)。キー62の押下により、基準ラインとして模様Eを囲む正方形状のラインを設定する指示が検出された場合(S6:YES)、CPU7は、S6で検出された操作部29の操作に基づき縫製領域R内に配置される基準ラインBLを取得する(S7)。CPU7は、設定中の基準ラインPLを、新たに設定された基準ラインBLに変更して、エコーラインを生成する(S20)。画面G2に示すように、CPU7は、刺繍座標系のX方向及びY方向の各々における模様Eと基準ラインBLとの距離を、欄63に示された所定距離DBとして、基準ラインBLを生成する。このとき、所定距離DBは模様Eと基準ラインBLとの間の最短距離で規定される。CPU7は、欄68で示された間隔で、複数のラインを基準ラインBLから所定方向に等間隔DSで配置する。CPU7は、S20で生成された複数のラインL1からL7を表示部28に表示する。CPU7は、キー79の押下を検出したかに応じて、エコーラインの設定を終了する指示が入力されたかを判断する(S21)。キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0025】
キー62の押下が検出されない場合(S6:NO)、CPU7は、キー64の押下を検出したかにより、基準ラインBLと模様Eとの間の所定距離DBを設定する指示が入力されたかを判断する(S8)。キー64の押下により、所定距離DBを設定する指示が検出された場合(S8:YES)、CPU7は、模様Eと基準ラインBLとの間の所定距離DBを、新たに設定された距離に変更して、エコーラインを生成する(S20)。画面G3に示すように、CPU7は、刺繍座標系のX方向及びY方向の各々における模様Eと基準ラインBLとの距離を、欄63に示された所定距離DBとして複数のラインL1からL7を生成し、生成された複数のラインL1からL7を表示部28に表示する。キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0026】
キー64の押下が検出されない場合(S8:NO)、CPU7は、キー65から67の何れかの押下を検出したかにより、モードを設定する指示が入力されたかを判断する(S10)。キー66の押下により、増加条件を設定する指示が検出された場合(S10:YES)、CPU7は、S10で検出された操作部29の操作に基づき、隣接距離が、所定方向において規則的に増加する増加条件と、所定方向において規則的に減少する減少条件との中から、選択された変化条件である増加条件を含む配置条件を取得する(S11)。CPU7は、変化条件である増加条件に従って、第一距離D1、第二距離D2、及び第三距離D3を互いに異なる値に設定して、縫製領域R内に、基準ラインBLを囲む環状の複数のラインを設定する(S20)。
【0027】
具体的には、
図4の画面G4に示すように、CPU7は、取得された基準ラインBLから所定方向に第一距離D1の位置に第一ラインL1を配置する。CPU7は、第一ラインL1よりも所定方向において、第二ライン及び第三ラインを第二距離D2だけ互いに離隔して隣接するように配置する。第二ラインと第三ラインとは、互いに隣接する。第二ラインは、第一ラインL1よりも外側、且つ、第三ラインよりも内側に位置する。第二ラインと第三ラインとの隣接距離は第二距離D2である。第二ラインは、第一ラインに隣接していてもよいし、していなくてもよい。CPU7は、第二距離D2とは異なる第三距離D3、第三ラインから所定方向に離隔して第四ラインを配置する。複数のラインのうちのどのラインを第二ラインとして定義するかは適宜変更されてよく、一例として、第二ラインは、第一ラインL1と隣接するラインL2であり、第三ラインは、ラインL3であり、第四ラインは、ラインL4である。CPU7は、刺繍座標系のX方向及びY方向の各々における最も内側の間隔を、欄70に示された第一距離D1とし、最も外側の間隔である、ラインL5とラインL6との間隔を、欄71に示された第四距離D4として複数のラインL1からL6を生成し、生成された複数のラインL1からL6を表示部28に表示する。第一距離D1及び第四距離D4以外の隣接距離は、第一距離D1と、第四距離D4とを含む配置条件に従って自動的に設定される。配置条件が増加条件の場合、隣接距離は、小さい順に第一距離D1、第二距離D2、第三距離D3、及び第四距離D4であり、基準ラインBLから所定方向に向かうほど隣接距離が大きくなる。配置条件が、減少条件の場合にも、同様な処理が実行される。配置条件が減少条件の場合、隣接距離は、大きい順に第一距離D1、第二距離D2、第三距離D3、及び第四距離D4であり、基準ラインBLから所定方向に向かうほど隣接距離が小さくなる。キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0028】
キー65から67の何れも押下が検出されない場合(S10:NO)、CPU7は、キー69、72、73の何れかの押下を検出したかにより、隣接距離を設定する指示が入力されたかを判断する(S12)。キー69、72、73の何れの押下も検出されない場合(S12:NO)、CPU7は、キー75の押下を検出したかにより、ライン数を設定する指示が入力されたかを判断する(S14)。キー75の押下により、ライン数を9に設定する指示が検出された場合(S14:YES)、CPU7は、S14で検出された操作部29の操作に基づき設定された、所定方向に並ぶ複数のラインの数を含む配置条件を取得する(S15)。
図5の画面G5に示すように、CPU7は、ライン数を設定された9に変更して、配置条件で指定される数の複数のラインとして、第一ラインL1、第二ラインL2、第三ラインL3、及び第四ラインL4を含む複数のラインL1からL9を縫製領域R内に設定する(S20)。CPU7は、生成された複数のラインを表示部28に表示し、キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0029】
キー69、72、73の何れかの押下により、隣接距離を設定する指示が検出された場合(S12:YES)、CPU7は、設定される隣接距離を取得する(S13)。キー69が押下された場合には、複数のラインの間隔は等間隔であるため、各ラインの隣接距離が一律で設定される。キー72が押下された場合には、基準ラインBLと、第一ラインL1との隣接距離が設定される。キー73が押下された場合には、最も外側のラインと、最も外側のラインに隣接するラインとの隣接距離が設定される。CPU7は、複数のラインの内の隣接するラインの距離を、設定された隣接距離に基づき変更して、エコーラインを生成する(S20)。
【0030】
図5の画面G6に示すように、CPU7は、複数のラインの内の隣接するラインの所定方向の距離である隣接距離を決定する。具体的にはCPU7は、刺繍座標系のX方向及びY方向の各々における最も内側の間隔を、欄70に示された設定後の間隔とし、最も外側の間隔を、欄71に示された設定後の間隔とする。CPU7は、設定されていない隣接距離を、設定される隣接距離と、変化条件とに応じて設定する。すなわち、欄70、71で設定される隣接距離は、選択隣接距離と言い換えられる。例えば、欄70で設定される基準ラインBLと、第一ラインL1との隣接距離は、基準ラインBLと、第一ラインL1とが選択された二つのラインとした場合の選択隣接距離である。したがって、キー72の押下が検出されたことに応じて、CPU7は、複数のラインから選択された隣接する二つのラインである、基準ラインBLと、第一ラインL1との所定方向の距離を、配置条件で指定される選択隣接距離、即ち、欄70の値に設定している。CPU7は、複数のラインを生成し、生成された複数のラインを表示部28に表示する。CPU7は、隣接距離に従って、複数のラインを設定する場合に、ライン数で指定される数のラインを縫製領域R内に設定できない場合には、エラーを表示してもよいし、ライン数を自動で変更してもよいし、隣接距離の変更をキャンセルしてもよい。画面G6に示すように、本例のCPU7は、設定された隣接距離に従って、複数のラインを設定した時に、例えばライン数で指定される数が12であり、ライン数で指定される数のラインを縫製領域R内に設定できない場合、ライン数を縫製領域R内に設定できるライン数である10に自動で変更する。キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0031】
キー75の押下が検出されない場合(S14:NO)、CPU7は、キー78が選択された状態で、キーB8の押下を検出したかにより、選択隣接距離を設定する指示が入力されたかを判断する(S16)。キーB8の押下が検出されない場合(S16:NO)、CPU7は、キー78が選択された状態で、キーB1からB5が押下され、欄50の一部が選択する指示を検出したかにより、配置領域を設定する指示が入力されたかを判断する(S18)。画面G7に示すように、ラインL4を囲む四角形で表す領域を配置領域F1に設定する指示が検出された場合(S18:YES)、CPU7は、配置領域F1を取得し、縫製領域R内に、複数のラインを配置するための、縫製領域Rよりも小さい配置領域F1を設定する(S19)。CPU7は、配置領域F1を選択中にする。CPU7は処理をS6に戻す。配置領域F1が選択された状態で、配置条件を設定する指示が入力された場合、入力された設定は、配置領域F1内のみで有効となり、配置領域F1外には適用されない。つまり、CPU7は、複数のラインが配置される配置領域F1が設定された状態で、新たな配置条件が取得された場合に、新たな配置条件に従って、配置領域F1内に複数のラインの一部を再設定し、配置領域F1外の複数のラインの一部は再設定しない。本例では、CPU7は、ユーザの指示に従って、図示しない削除処理を実行させ、配置領域F1の外側に位置するラインL7からL10、及び一部が配置領域の内側に入るラインL6を削除する。
【0032】
キーB6により、ラインL5が選択された状態で、キーB8の押下により、選択隣接距離を設定する指示が検出された場合(S16:YES)、CPU7は、選択隣接距離を含む配置条件を取得する(S17)。画面G8に示すように、CPU7は、選択隣接距離のみを変更した条件で、エコーラインを生成する(S20)。画面G8では、ラインL1からL4の間隔は変更されず、ラインL5の隣接距離のみが設定された値である欄B7に示された値に変更されている。CPU7は、生成された複数のラインを表示部28に表示し、キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。
【0033】
キーB1からB5の何れも押下が検出されず(S18:NO)、キー79の押下が検出されない場合(S21:NO)、CPU7は処理をS6に戻す。画面G9に示すように、基準ラインBL、ラインL1からL5の右上部を囲む四角形で表す領域を配置領域F2に設定する指示が検出された場合(S18:YES)、CPU7は、配置領域F2を取得し、縫製領域R内に、複数のラインを配置するための、縫製領域Rよりも小さい配置領域F2を設定する(S19)。CPU7は、配置領域F2を選択中にする。配置領域F2が選択された状態で、ライン数を3に設定する指示が検出された場合(S14:YES)、CPU7は、設定されたライン数として3を取得する(S15)。キー72、73の操作が検出された場合(S12:YES)、CPU7は、設定される隣接距離を取得する(S13)。画面G10に示すように、CPU7は、入力された設定を、配置領域F2内に適用し、複数のラインL1からL5に替えて複数のラインLN1からLN3を配置領域F2内に設定する(S20)。CPU7は、入力された設定を、配置領域F2外には適用せず、配置領域F2外では複数のラインL1からL5を残す。本例のCPU7は、基準ラインBLは変更せず、基準ラインBLをライン数には含まない。
【0034】
ユーザは、表示部28に表示された、エコーラインの縫製イメージを確認後、キー79を押下する。キー79の押下が検出された場合(S21:YES)、CPU7は、S20で設定された複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成する(S22)。CPU7は、S4又はS20で生成されたエコーラインと、模様Eとを縫製するための縫製データを生成する(S22)。CPU7は、エコーラインの縫製データとして、S20で設定された複数のラインに沿って所定の縫目を形成するための縫製データを生成する。所定の縫目は、所定の長さの走り縫いの縫目である。ラインLN1からLN3は、複数のラインL1からL5の内の何れかと接続されてもいいし、接続されなくてもよい。複数のラインL1からL5、LN1からLN3を縫製する糸の色は、自動で設定されてもよいし、ユーザにより設定されてもよい。エコーラインと、模様Eとの縫製順序は適宜設定されればよく、模様Eの後にエコーラインを縫製するように縫製順序が設定されてもよいし、エコーラインの後に、模様Eを縫製するように縫製順序が設定されてもよいし、模様Eを縫製中にエコーラインの縫製順序が設定されてもよい。
【0035】
CPU7は、スタート/ストップスイッチ30の押下を検出したかに基づき、縫製開始の指示を検出したかを判断する(S23)。縫製開始の指示が検出されない場合(S23:NO)、CPU7は、縫製開始の指示が検出されるまで待機する。縫製開始の指示が検出された場合(S23:YES)、CPU7は、S22で生成された縫製データに従って、縫製部9及び移動機構10を制御し、刺繍枠17に保持された被縫製物Cに、模様Eとエコーラインとの縫目を形成する(S24)。CPU7は、以上でメイン処理を終了する。
【0036】
上記実施形態において、ミシン1は、本発明のミシン及び縫製データ生成装置の一例である。縫製部9、移動機構10、及び操作部29は各々、本発明の縫製部、移動部、及び操作部の一例である。S7の処理は、本発明の基準取得ステップの一例である。本発明のS9、S11、S13、S15、S17は、条件取得ステップの一例である。S20の処理は、ライン設定ステップの一例である。S19の処理は、配置領域設定ステップの一例である。S20の処理は、データ生成ステップの一例である。S24の処理は、縫製ステップの一例である。
【0037】
上記実施形態のミシン1は、操作部29と、CPU7とを備える。CPU7は、縫製領域R内に配置される基準ラインBLを取得する(S7)。CPU7は、縫製領域R内に複数のラインを配置するための配置条件を取得する(S11、S13、S15、S17)。CPU7は、配置条件に従い、基準ラインBLを基準として、縫製領域R内に、第一ライン、第二ライン、第三ライン、及び第四ラインを含む複数のラインを配置する(S20)。CPU7は、取得された基準ラインBLから所定方向に第一距離D1の位置に第一ラインL1を配置する。CPU7は、第二ラインL2及び第三ラインL3を、第一ラインL1よりも所定方向において、第二距離D2だけ互いに離隔して、隣接して配置する。CPU7は、第二距離D2とは異なる第三距離D3、第三ラインL3から所定方向に離隔して第四ラインL4を配置する。CPU7は、複数のラインに沿って縫目を形成するための縫製データを生成する(S22)。CPU7は、生成された縫製データに従って、縫製部9と移動機構10とを駆動して、刺繍枠17に保持された被縫製物Cに、複数のラインに沿った縫目を形成する(S24)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、第二距離D2と第三距離D3とが互いに異なる複数のラインを設定できる。故にS20は、複数のラインの各々に沿って縫目を形成するエコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0038】
配置条件は、複数のラインのうちの、隣接する任意の二つのラインの所定方向の隣接距離を比較した場合に、所定方向において隣接距離が規則的に変化する変化条件を含む。CPU7は、変化条件に従って、第一距離D1、第二距離D2、及び第三距離D3を互いに異なる値に設定して、縫製領域R内に複数のラインを設定する(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、所定方向において隣接距離が規則的に変化する複数のラインを自動的に設定できる。ミシン1は、ユーザが、隣接距離が規則的に変化するように、各隣接距離を個別に算出したり、設定したりする手間を省くことができる。ミシン1は、隣接距離の算出ミス又は入力ミスに起因して、ユーザが意図するエコーラインが生成されない事態を低減できる。故に縫製データ生成プログラムのライン設定ステップは、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0039】
CPU7は、S20の処理で、操作部29の操作に基づき、隣接距離が、所定方向において規則的に増加する増加条件と、所定方向において規則的に減少する減少条件との中から選択された変化条件を含む配置条件を取得する(S11)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、変化条件を増加条件及び減少条件の中から選択できない場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0040】
CPU7は、操作部29の操作に基づき設定された、所定方向に並ぶ複数のラインの数を含む配置条件を取得する(S15)。CPU7は、配置条件で指定される数の複数のラインを縫製領域R内に設定する(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、指定された数のラインを配置条件に従って配置できる。ミシン1は、複数のラインの数を設定できない場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0041】
CPU7は、S20で、配置条件に従って、基準ラインを囲む環状の複数のラインを設定する(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、基準ラインを囲む環状の複数のラインを配置条件に従って配置できる。CPU7は、基準ラインを囲む環状のラインを配置条件に従って配置した場合に、縫製領域R外となる部分については、ラインを生成しない。したがって、ミシン1は、縫製領域R外にラインが生成されることに起因する不具合を確実に回避できる。
【0042】
CPU7は、操作部29の操作に基づき決定される選択隣接距離を含む配置条件を取得し(S17)、複数のラインから選択された隣接する二つのラインの所定方向の距離を、配置条件で指定される選択隣接距離に設定する(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、選択隣接距離を指定できない場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0043】
CPU7は、選択隣接距離を含む配置条件を取得し(S13)。CPU7は、複数のラインから選択された隣接する二つのラインの所定方向の距離を、配置条件で指定される選択隣接距離に設定し、選択隣接距離に設定されていない隣接距離を、選択隣接距離と、変化条件とに応じて設定する(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、選択隣接距離を指定できない場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。ミシン1は、選択隣接距離が指定されていない任意の隣接する二つのラインについては、選択隣接距離と、変化条件とに応じて自動で設定できる。ミシン1は、全ての隣接距離を個別に設定する場合のユーザの手間を省きつつ、選択隣接距離については、ユーザが個別に設定することを許容できる。
【0044】
CPU7は、縫製領域R内に、複数のラインを配置するための、縫製領域Rよりも小さい配置領域を設定する(S19)。CPU7は、配置領域内に、複数のラインを配置する。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、配置領域のみに複数のラインを設定できる。ミシン1は、配置領域を設定不能な場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0045】
CPU7は、複数のラインが配置される配置領域が設定された状態で、新たな配置条件が取得された場合に、新たな配置条件に従って、配置領域内に複数のラインの一部を再設定し、配置領域外の複数のラインの一部は再設定しない(S20)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、配置領域内に配置された一部のみ、新たな配置条件に従って複数のラインを再設定できる。ミシン1は、配置領域内の複数のラインのみ新たな配置条件で複数のラインを設定不能な場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0046】
CPU7は、操作部29の操作に基づき複数のラインの中から選択されたラインを、基準ラインBLとして取得する(S7)。縫製データ生成プログラムが実行された場合、ミシン1は、ユーザが選択した図形を基準ラインとして、複数のラインを設定できる。ミシン1は、基準ラインを選択不能な場合に比べ、エコーキルトの縫製データを生成する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
【0047】
本発明の縫製データ生成プログラム及びミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。本発明は種々の態様で実行可能であり、例えば、縫製データ生成プログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体、及び縫製データ生成装置の制御部により実行されるデータ生成方法等の形態で実現されてもよい。
【0048】
(A)ミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1は、刺繍縫製可能であればよく工業用ミシン及び複数の針棒を備える多針ミシンであってもよい。ミシン1が多針ミシンである場合、針棒の本数は特に限定されない。ミシン1以外の縫製データ生成装置において、S1からS22の処理が実行されてもよい。縫製データ生成装置は、専用の装置であってもよいし、携帯電話(例えばスマートフォン)、PDA、及びタブレットPC等の可搬型の端末装置、並びにPC等の汎用の装置でもよい。表示部28は、画像を表示可能であればよく、例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動等を利用した電子ペーパーディスプレイ等でもよい。操作部29は、タッチパネルの他、キーボード、マウス、スイッチ、及びジョイスティック等でもよい。ミシン1は、他の装置と通信する通信部を備えてもよい。
【0049】
(B)
図2のメイン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、CPU7の各々が、対応するプログラムを実行するまでに、各装置の記憶機器に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。各装置が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶部等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0050】
(C)
図2のメイン処理の各ステップは、CPU7によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。メイン処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。メイン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。メイン処理に、以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0051】
複数のラインを設定する処理は、配置条件に応じて適宜変更されてよい。配置条件は、基準ラインを指定する情報を含めばよく、模様と基準ラインとの間の距離、配置モード、隣接距離、ライン数、選択隣接距離、及び配置領域の少なくとも何れかは省略されてもよいし、他の条件が追加されてもよい。他の条件は、一例として、変化条件を指定する、等差数列及び等比数列等の数式、及びパラメータ等である。例えば、CPU7は、等差数列の初項と公差とを含む条件を配置条件として取得して、取得された等差数列に従って各隣接距離を設定し、複数のラインを設定してもよい。所定方向は、模様の中心から放射線状に延びる方向でなくてもよい。所定方向は、環状の基準ラインの中心に向かう方向であってもよい。基準ラインは、模様を囲む環状でなくてもよく、模様が省略された環状のラインであってもよいし、直線状又は曲線状の、環状ではないラインであってもよい。基準ラインは、模様の輪郭線であってもよい。CPU7は、配置条件として、増加条件と減少条件との何れかのみを設定可能であってもよい。配置領域の設定方法は適宜変更されてよく、基準ラインと同様の選択肢82の中から配置領域の形状が設定されてもよい。配置領域外となる一以上のラインは、自動的に削除されてもよいし、ユーザが指示した場合に削除されてもよいし、削除されなくてもよい。基準ラインは、ユーザが選択できなくてもよく、その場合CPU7が自動で基準ラインを設定すればよい。配置条件は、隣接距離に乱数を設定することで、所定方向において、隣接距離が不規則に変化する条件を含んでもよい。
【0052】
配置条件は、複数の所定方向の各々で、互いに異なる規則に従って、隣接距離を設定する条件を含んでもよい。例えば、刺繍座標系のY方向に長い矩形状の配置領域が設定され、配置領域の形状に応じて、X方向とY方向とで互いに異なる規則が設定される場合、
図7の画面G11に示すように、CPU7は、模様Eに対し、正方形状の基準ラインBL、複数のラインL1からL4を設定してもよい。基準ラインBLと、ラインL1との間の、Y方向の第一距離DY1と、X方向の第一距離DX1とは互いに異なる値に設定されている。同様にCPU7は、ラインL2と、ラインL3との間の、Y方向の第二距離DY2と、X方向の第二距離DX2とを互いに異なる値に設定し、ラインL3と、ラインL4との間の、Y方向の第三距離DY3と、X方向の第三距離DX3とを互いに異なる値に設定してもよい。X方向を増加条件とし、Y方向を減少条件とする等、所定方向に応じて、互いに異なる変化条件が設定されてもよい。複数のラインのうちの、第二から第四ラインは各々、第一ラインの所定方向に位置するラインであればよく、ラインL2からL4に限定されず、例えば、ラインL4からL6でもよい。第三距離D3は、第一距離D1と同じであってもよい。複数のラインのうち、隣接距離が、互いに同じとなる配列が含まれてもよい。
【0053】
図7の画面G12に示すように、CPU7は、配置領域F3の輪郭と、基準ラインBLとの間の距離及び配置条件に応じて、基準ラインBLから所定方向に最も離れたラインL4が配置領域F3の輪郭上に配置されるように、隣接距離を減少条件に従って設定し、複数のラインL1からL4を設定してもよい。配置条件が、減少条件の場合、隣接距離は、大きい順に第一距離D1、第二距離D2、及び第三距離D3であり、基準ラインBLから所定方向に向かうほど隣接距離が小さい。他の例では、
図7の画面G13に示すように、CPU7は、菱形状の配置領域F4が設定された場合、画面G12の場合と同様の第一距離D1、第二距離D2、及び第三距離D3を有する、複数のラインL1からL4を設定し、配置領域F4の外側となる部分を削除してもよい。この場合、複数のラインL1からL4は何れも、減少条件に従って配置されているが環状ではない。配置領域F4を指定する図形の輪郭に沿って、縫目を形成するための縫製データが生成されてもよいし、されなくてもよい。他の例では、CPU7は、縫製領域R内に、環状にラインを設定可能な範囲で、複数のラインを設定してもよい。この場合画面G4の例では、CPU7は、基準ラインBL、ラインL1からL3を生成し、環状に配置した場合に一部が縫製領域R外となるラインL4からL6を生成しなくてもよい。
【0054】
図3の画面49の構成、配置等は適宜変更されてよい。画面49は、欄55を備えなくてもよい。その場合、例えば、欄54が欄55の機能を兼備し、CPU7は、欄54のキー66が押下されることに応じて間隔を初期値から所定値増加させ、キー67が押下させることに応じて間隔を初期値から所定値減少させればよい。このとき、初期値及び所定値は予め設定されていてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。上記実施形態と上記変形例の各々は矛盾が生じない範囲で互いに組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:刺繍ミシン、7:CPU、8:針棒、9:縫製部、10:移動機構、24:記憶部、28:表示部、29:操作部