IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特開2024-122320ウォーターサーバーバッグ用包装材料
<>
  • 特開-ウォーターサーバーバッグ用包装材料 図1
  • 特開-ウォーターサーバーバッグ用包装材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122320
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】ウォーターサーバーバッグ用包装材料
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240902BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240902BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/18 Z
B32B27/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029794
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(72)【発明者】
【氏名】米本 智裕
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB15
3E086BB51
3E086BB85
3E086CA11
3E086DA06
4F100AC04C
4F100AC04H
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK06A
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AK46B
4F100AK48B
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AK65A
4F100AK65C
4F100AL01A
4F100AL01C
4F100AL06B
4F100AL09B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA19A
4F100EC182
4F100EH202
4F100GB15
4F100JA06A
4F100JA06C
4F100JA15A
4F100JA15C
4F100JB16A
4F100JD14C
4F100JK01A
4F100JK02
4F100JK07A
4F100JK07C
4F100JK10
4F100JK13A
4F100JK13C
4F100JL12
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造適正に優れ、発生臭気が少なく、内容物の臭味変化を抑え、耐ピンホール性、易ニードル突き刺し性、耐破袋性、強靭性、透明性、ヒートシール性に優れた、ウォーターサーバーバッグ用の包装材料、ウォーターサーバーバッグを提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、ヒートシール性樹脂と低密度柔軟性樹脂Aとを含有し最外層である易ニードル突き刺し層、ポリアミド系樹脂と変性ポリエステル系エラストマーとを含有する強靭層、低溶出性樹脂と低密度柔軟性樹脂Bと臭気吸着体とを含有し最外層である臭気吸着層を、この順で含む、ウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、易ニードル突き刺し層、強靭層、臭気吸着層を、この順で含む、ウォーターサーバーバッグ用包装材料であって、
易ニードル突き刺し層は、ヒートシール性樹脂と、低密度柔軟性樹脂Aとを含有する最外層であり、
強靭層は、ポリアミド系樹脂と変性ポリエステル系エラストマーとを含有し、
臭気吸着層は、低溶出性樹脂と、低密度柔軟性樹脂Bと、臭気吸着体とを含有する最外層であり、
臭気吸着層に含有される全樹脂からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された65℃の蒸留水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下であり、
低密度柔軟性樹脂Aおよび低密度柔軟性樹脂Bは、密度が0.85g/cm以上、0.91g/cm未満、30℃曲げ弾性率が10MPa以上、50MPa以下の低密度オレフィン系コポリマーであり、
低密度柔軟性樹脂Aと低密度柔軟性樹脂Bとは、同一または異なる樹脂である
ことを特徴とする、前記ウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項2】
変性ポリエステル系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に由来する主骨格単位と、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)に由来する主骨格単位と、極性基とを有する熱可塑性エラストマーであり、
該極性基は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項3】
ウォーターサーバーバッグ用包装材料の全厚み中の各層の厚さの割合は、易ニードル突き刺し層が22~27%、強靭層が15~20%、臭気吸着層が40~50%であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項4】
前記低溶出性樹脂からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された65℃の蒸留水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項5】
易ニードル突き刺し層中の低密度柔軟性樹脂Aの含有率は、1質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項6】
前記ヒートシール性樹脂が、C4-線状低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項7】
強靭層中の、前記変性ポリエステル系エラストマーの含有率は、1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項8】
臭気吸着層に含有される全樹脂中の、
前記低溶出性樹脂の含有率は、80質量%以上、99質量%以下であり、
低密度柔軟性樹脂Bの含有率は、1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項9】
接着層1を易ニードル突き刺し層と強靭層との間に、接着層2を強靭層と臭気吸着層との間に、更に含むウォーターサーバーバッグ用包装材料であって、
易ニードル突き刺し層と、接着層1と、強靭層と、接着層2と、臭気吸着層とは、共押出層であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【請求項10】
前記臭気吸着体は、前記低溶出性樹脂との溶融混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体から発生する臭気が少なく、内容物の臭味変化を抑え、製膜性、耐ピンホール性、突き刺し性、耐破袋性、強靭性、ヒートシール性に優れた、ウォーターサーバーバッグ用の包装材料、ウォーターサーバーバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターサーバーバッグに充填された水は、ウォーターサーバーバッグから発生した臭気によって、臭味変化を生じ易く、臭味変化を抑制する為に様々な検討が行われて来た。
例えば、臭気を吸着する臭気吸着剤を内包したウォーターサーバーバッグ用の包装材料が提案されている(特許文献1)。このような包装材料には、合成ゼオライトや活性炭といった臭気吸着剤が、樹脂材料中に練り込まれている。
しかしながら、このような包装材料は、臭気だけでなく、大気中の湿気をも吸着し、且つ、一度吸着した臭気を、脱離させてしまうという問題があるため、十分な臭気吸着効果が得られていない。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分を吸着するのみであって、樹脂材料を選定しない状況では、官能基を有さない有機物の発生量を抑制できず、臭気成分を十分に吸着し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2538487号公報
【特許文献2】特開2014-233408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題を解決し、製造適正に優れ、発生臭気が少なく、内容物の臭味変化を抑え、耐ピンホール性、易ニードル突き刺し性、耐破袋性、強靭性、透明性、ヒートシール性に優れた、ウォーターサーバーバッグ用の包装材料、ウォーターサーバーバッグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、特定の、易ニードル突き刺し層、強靭層、臭気吸着層を、この順で含む、ウォーターサーバーバッグ用包装材料が、上記の目的を達成することを見出した。
本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、易ニードル突き刺し層、強靭層、臭気吸着層を、この順で含む、ウォーターサーバーバッグ用包装材料であって、
易ニードル突き刺し層は、ヒートシール性樹脂と、低密度柔軟性樹脂Aとを含有する最外層であり、
強靭層は、ポリアミド系樹脂と変性ポリエステル系エラストマーとを含有し、
臭気吸着層は、低溶出性樹脂と、低密度柔軟性樹脂Bと、臭気吸着体とを含有する最外層であり、
臭気吸着層に含有される全樹脂からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された65℃の蒸留水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下であり、
低密度柔軟性樹脂Aおよび低密度柔軟性樹脂Bは、密度が0.85g/cm以上、0.91g/cm未満、30℃曲げ弾性率が10MPa以上、50MPa以下の低密度オレフィン系コポリマーであり、
低密度柔軟性樹脂Aと低密度柔軟性樹脂Bとは、同一または異なる樹脂である
ことを特徴とする、前記ウォーターサーバーバッグ用包装材料。
2.変性ポリエステル系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に由来する主骨格単位と、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)に由来する主骨格単位と、極性基とを有する熱可塑性エラストマーであり、
該極性基は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基であることを特徴とする、上記1に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
3.ウォーターサーバーバッグ用包装材料の全厚み中の各層の厚さの割合は、易ニードル突き刺し層が22~27%、強靭層が15~20%、臭気吸着層が40~50%であることを特徴とする、上記1または2に記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
4.前記低溶出性樹脂からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された65℃の蒸留水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下であることを特徴とする、上記1~3の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
5.易ニードル突き刺し層中の低密度柔軟性樹脂Aの含有率は、1質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする、上記1~4の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
6.前記ヒートシール性樹脂が、C4-線状低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする、上記1~5の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
7.強靭層中の、前記変性ポリエステル系エラストマーの含有率は、1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする、上記1~6の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
8.臭気吸着層に含有される全樹脂中の、
前記低溶出性樹脂の含有率は、80質量%以上、99質量%以下であり、
低密度柔軟性樹脂Bの含有率は、1質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする、上記1~7の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
9.接着層1を易ニードル突き刺し層と強靭層との間に、接着層2を強靭層と臭気吸着層との間に、更に含むウォーターサーバーバッグ用包装材料であって、
易ニードル突き刺し層と、接着層1と、強靭層と、接着層2と、臭気吸着層とは、共押出層であることを特徴とする、上記1~8の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
10.前記臭気吸着体は、前記低溶出性樹脂との溶融混合物であることを特徴とする、上記1~9の何れかに記載のウォーターサーバーバッグ用包装材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料は、製造適正に優れ、発生臭気が少なく、内容物の臭味変化を抑え、耐ピンホール性、易ニードル突き刺し性、耐破袋性、強靭性、透明性、ヒートシール性に優れたウォーターサーバーバッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料の層構成について、その一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料の層構成について、別態様の一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料について、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明において、フィルムとシートは同義である。
また、臭気を減らすメカニズムは、臭気物質の吸着と、臭気物質の化学的分解とに分類されるが、本発明では、臭気物質の吸着によって臭気を減らすこと及び臭気物質の化学的分解によって臭気を減らすことの総称として、消臭と記載する。
【0009】
<ウォーターサーバーバッグ用包装材料>
本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料は、少なくとも、易ニードル突き刺し層、強靭層、臭気吸着層を、この順で含む層構成を有する。
そして、易ニードル突き刺し層と強靭層との間、及び強靭層と臭気吸着層との間のそれぞれに、接着層を更に含み、易ニードル突き刺し層、接着層、強靭層、接着層、臭気吸着層を、この順で含む層構成であることが好ましい。
ウォーターサーバーバッグ用包装材料を構成する上記の層は、共押出層であることが好ましく、全層を一括に共押出して、ウォーターサーバーバッグ用包装材料を作製することができる。
【0010】
ウォーターサーバーバッグ用包装材料の全厚は、50~300μmが好ましく、100~200μmがより好ましい。
ウォーターサーバーバッグ用包装材料の全厚み中の各層の厚さの割合は、易ニードル突き刺し層が22~27%、強靭層が15~20%、臭気吸着層が40~50%であることが好ましい。
各層の割合が上記範囲であれば、ウォーターサーバーバッグ用の包装材料として、良好な、製造適正、発生臭気の少なさ、内容物の臭味変化抑制、耐ピンホール性、突き刺し性、耐破袋性、強靭性、透明性、ヒートシール性等のバランスに優れることが容易である。
【0011】
[易ニードル突き刺し層]
易ニードル突き刺し層は、本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料の一方の最外層であり、ヒートシール性樹脂と低密度柔軟性樹脂とを含有する。
ウォーターサーバーバッグ用包装材料でウォーターサーバーバッグを作製した際には、易ニードル突き刺し層は、ウォーターサーバーバッグの最も内容物から遠い層(最外層)になる。
【0012】
易ニードル突き刺し層は、ヒートシール性樹脂を含有することによって、ヒートシール性を有する。
易ニードル突き刺し層中のヒートシール性樹脂の含有率は、60質量%以上、99質量%以下が好ましく、65質量%以上、90質量%以下がより好ましい。該含有率が上記範囲よりも少ないと、ヒートシール性が劣り易く、上記範囲よりも多くても、ヒートシール性はさほど向上しない。
【0013】
易ニードル突き刺し層中の低密度柔軟性樹脂の含有率は、1質量%以上、40質量%以下が好ましく、3質量%以上、35質量%以下がより好ましい。該含有率が上記範囲よりも少ないと、易ニードル突き刺し性が劣り易く、上記範囲よりも多くても、易ニードル突き刺し性はさほど向上せず、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の耐破袋性や強靭性が劣り易くなる。
易ニードル突き刺し層は、酸化防止剤やアンチブロック剤等の添加剤を含有することができる。
【0014】
[ヒートシール性樹脂]
ヒートシール性樹脂は、ヒートシールが容易な熱可塑性樹脂である。
ヒートシール性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.2g/10分以上、10.0g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以上、7g/10分以下がより好ましい。
MFRが上記範囲よりも低いと、樹脂の溶融粘度が高過ぎるために、製膜機から樹脂を押し出すための樹脂圧が高くなり、樹脂の押し出し性が低下して、製膜不良が発生し易くなる。
また、MFRが上記範囲よりも高いと、樹脂の溶融粘度が低過ぎるために、製膜機からの樹脂が流れにムラが生じ易くなり、製膜されるフィルムの厚さの安定性が低下して、製膜不良が発生し易くなる。
さらに、形成された層またはフィルムは、ヒートシール時に流動性が高過ぎて、フィルムの膜痩せが発生し易くなるために、シール強度が低下し易い。
そして、ォーターサーバーバッグ用包装材料がブロッキングを生じ易くなる。
【0015】
ヒートシール性樹脂は、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂ならば特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
【0016】
ポリエチレン(PE)系樹脂の詳細としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状(直鎖状)低密度ポリエチレン(LLDPE)や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレンを用いた共重合体が挙げられる。
上記の中でも、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂等を含有することが好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等を含有していることがより好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレンを含有していることが更に好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレンの中でも、C4-直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、C6-直鎖状(線状)低密度ポリエチレンが特に好ましい。
相対的に、C4-直鎖状(線状)低密度ポリエチレンは易ニードル突き刺し性に優れ、C6-直鎖状(線状)低密度ポリエチレンはヒートシール性に優れる。
したがって、易ニードル突き刺し層の易ニードル突き刺し性を高める為には、C4-直鎖状(線状)低密度ポリエチレンを多く含有することが好ましい。
【0017】
LLDPEは、密度が0.910g/cm以上、0.925g/cm未満である。
LLDPEは、エチレンと共重合させたモノマー種によって、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等の種類に分類される。
C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなる直鎖状(線状)低密度ポリエチレンであり、C6-LLDPEは、エチレンと1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテンとの共重合体からなる直鎖状(線状)低密度ポリエチレンであり、C8-LLDPEは、エチレンと1-オクテンとの共重合体からなる直鎖状(線状)低密度ポリエチレンである。
C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEは、エチレン由来のポリエチレンの主鎖に、それぞれ、1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン由来の、炭素数が4個、6個、8個の側鎖が存在する分子構造を有する。
【0018】
[低密度柔軟性樹脂]
低密度柔軟性樹脂は、易ニードル突き刺し層、臭気吸着層に柔軟性を付与する樹脂であり、易ニードル突き刺し層および臭気吸着層で同一の低密度柔軟性樹脂を含有してもよく、異なる低密度柔軟性樹脂A、低密度柔軟性樹脂Bを含有してもよい。
低密度柔軟性樹脂は、低密度且つ低弾性率の熱可塑性樹脂であり、30℃曲げ弾性率は10MPa以上、50MPa以下が好ましく、密度は0.85g/cm以上、0.91g/cm未満が好ましく、ビカット軟化点は35℃以上、60℃以下が好ましく、MFRは0.5g/10分以上、5g/10分以下が好ましく、2g/10分以上、5g/10分以下がより好ましい。
低密度柔軟性樹脂としては、例えば、低密度オレフィン系コポリマーが好ましく、低密度ポリエチレン系共重合樹脂がより好ましい。
低密度ポリエチレン系共重合樹脂の具体例としては、少なくともエチレンとα-アルケンのとからなる共重合体、メタロセン系ポリエチレンプラストマー、超低密度ポリエチレン等が挙げられ、多種のモノマーを併用して共重合させることにより、弾性率等を調整することが可能になる。
【0019】
[強靭層]
強靭層は、ウォーターサーバーバッグ用包装材料に強靭性と柔軟性とを付与する層であり、ポリアミド系樹脂と変性ポリエステル系エラストマーとを含有する。
強靭層中のポリアミド系樹脂の含有率は、80質量%以上、99質量%以下が好ましい。
強靭層中の変性ポリエステル系エラストマーの含有率は、1質量%以上、20質量%以下が好ましい。
変性ポリエステル系エラストマーはポリアミド系樹脂の改質剤として作用しており、強靭層は、ポリアミド系樹脂と変性ポリエステル系エラストマーとを上記含有率で含有していることによって、ウォーターサーバーバッグ用包装材料に強靭性と柔軟性とを付与することができる。
【0020】
(ポリアミド系樹脂)
強靭層に含有されるポリアミド系樹脂には、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロン612等、及び例えばナイロン6/66、ナイロン6/66/12等の、これらの共重合体からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
(変性ポリエステル系エラストマー)
変性ポリエステル系エラストマーは、熱可塑性エラストマーであり、密度0.8~1.2g/cm、軟化点(DSC融解ピーク温度)150~230℃、デュロA硬度(JIS K 6253)75~95、デュロD硬度(JIS K 6253)20~50、230℃におけるMFR3~20g/10分等であることが好ましい。
【0022】
また、変性ポリエステル系エラストマーは、芳香族ポリエステルに由来する主骨格単位からなるハードセグメントと、ポリエーテルグリコール類に由来する主骨格単位と、極性基とを有する熱可塑性エラストマーが好ましい。
芳香族ポリエステルに由来する主骨格単位としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。
ポリエーテルグリコール類に由来する主骨格単位としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)が好ましい。
極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の基が好ましい。
【0023】
[臭気吸着層]
臭気吸着層は、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の一方の最外層であり、低溶出性樹脂と、低密度柔軟性樹脂と、臭気吸着体とを含有する。
ウォーターサーバーバッグ用包装材料でウォーターサーバーバッグを作製した際には、臭気吸着層は、ウォーターサーバーバッグの最も内容物側の層(最内層)になる。
臭気吸着層に含有される低密度柔軟性樹脂は、易ニードル突き刺し層に含有される低密度柔軟性樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
臭気吸着層に含有される全樹脂中の、低密度柔軟性樹脂の含有率は、1質量%以上、20質量%以下が好ましい。
上記範囲よりも少ないと、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の柔軟性が不十分になって耐ピンホール性に劣る虞があり、上記範囲よりも多いと、製膜時にヒートシール面同士がブロッキングして製膜性に劣る虞がある。
【0024】
臭気吸着層に含有される全樹脂中の、低溶出性樹脂の含有率は、80質量%以上、99質量%以下が好ましい。上記範囲よりも少ないと、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の低溶出性が不十分になる虞があり、上記範囲よりも多くても、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の低溶出性はさほど向上しない。
【0025】
臭気吸着層は、低溶出性樹脂と臭気吸着体とを含有していることによって、液体内容物に臭味変化を生じさせる臭気成分の液体内容物への移行量が減少されているが、低溶出性樹脂以外の樹脂成分由来の溶出成分(臭気成分)量が非常に多い場合には、液体内容物に臭味変化を生じさせてしまうことになる。
したがって、本発明では、臭気吸着層に含有される全樹脂の混合物について、溶出成分の量を規定することが好ましい。
例えば、全有機体炭素(TOC)濃度が0.02ppm程度の充填水を用いて、臭気吸着層に含有される全樹脂の混合物からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された充填水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下であることが好ましい。
TOC増加濃度が上記範囲より高いと、官能評価による臭味変化を感じ易くなる。また、上記範囲よりも低いTOC増加濃度を得ることは困難である。
【0026】
よって、低溶出性樹脂以外の樹脂成分が非常に多量の溶出成分を含有している場合には、臭気吸着層に含有される全樹脂中の、低溶出性樹脂の含有率を、上記よりも高くすることが好ましい。
【0027】
例えば、低溶出性樹脂によるTOC増加濃度が0.1ppmであり、低密度柔軟性樹脂によるTOC増加濃度が2ppmである場合に、樹脂混合物の低溶出性樹脂/低密度柔軟性樹脂の質量比が90/10ならば、樹脂混合物のTOC増加濃度は、大まかには、0.1×90/(90+10)+2×10/(90+10)=0.09+0.2=0.29ppmになる。
【0028】
(低溶出性樹脂)
低溶出性樹脂は、溶出成分の含有量が少なく、パウチを作製して充填された充填水のTOC増加濃度が小さい樹脂のことであり、特定の骨格を有する樹脂を指すものではない。
パウチからの有機物の溶出量を低くする為には、例えば、下記の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
低溶出性樹脂を製造する際に、未反応原料残存量や低分子量生成物や副生成物の量を低減したり、重合触媒を除去したりすることが効果的である。具体的には、原料純度を向上したり、反応温度や圧力等の条件を精密に制御したり、蒸留や洗浄によって未反応原料や低分子量生成物や副生成物や重合触媒を除去したり、高温のままで空気中の酸素に触れることによる酸化を防止したりする方法が挙げられる。
【0029】
製造された低溶出性樹脂をペレット化する際には、有機物の溶出量を上昇させてしまいそうな、滑剤、酸化防止剤、その他、等の添加剤の使用を制限する方法が挙げられる。
低溶出性樹脂をフィルム化する際には、有機物の溶出量を上昇させてしまいそうな、滑剤、酸化防止剤、溶剤、その他、等の添加剤の使用を制限し、高温による酸化を防止したりする方法が挙げられる。
【0030】
本発明においては、低溶出性樹脂とは、その低溶出性樹脂からなる15cm×44cm×50μm厚のパウチ内に充填された充填水1000gの、35℃2週間保管後の全有機体炭素(TOC)増加濃度が、0.01ppm以上、1.5ppm以下になる樹脂である、と定義する。
【0031】
低溶出性樹脂は、ヒートシール性を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)等の滅菌・殺菌処理に対して耐性があって分解され難い性質があり、屈曲負荷に起因する耐ピンホール性に優れていることが好ましい。
このような観点から、本発明で用いられる低溶出性樹脂は、骨格的分類としては、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0032】
包装体は、包装工程中や輸送中の振動による局所的繰り返し屈曲によって疲労破壊が進行してピンホールを発生することがある為、特に食品・医療用品等用の包装材料は耐ピンホール性が重要である。
本発明における低溶出性ポリエチレン系樹脂の耐ピンホ-ル性は、例えば、低溶出性ポリエチレン系樹脂単体からなる50μm厚のフィルムの、23℃における5000回のゲルボフレックス後のピンホール発生個数が、0個、または1個以上、160個以下であることが好ましい。
低溶出性ポリエチレン系樹脂単体フィルムのピンホール発生個数が上記範囲であれば、ピンホール耐性が必要な用途の場合に、実用に耐え得る包装材料を作製することができる。
【0033】
低溶出性ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等の低溶出化されたもの及びそれらの樹脂の混合物が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
これらの低溶出性ポリエチレン系樹脂の中でも、低溶出性LLDPEが好ましく、低溶出性C4-LLDPE、低溶出性C6-LLDPE、低溶出性C8-LLDPE等が有機物の溶出量を低くし得る傾向にある為、より好ましい。
また、これらの中でも、低溶出性C6-LLDPEは、ヒートシール性に優れる為、ヒートシール性を高める為には、低溶出性C6-LLDPEを多く含有することが好ましい。
【0034】
あるいは、低溶出性ポリエチレン系樹脂は、密度が0.90g/cm以上、0.94g/cm以下であることが好ましく、0.905g/cm以上、0.933g/cm以下であることがより好ましい。密度がこの範囲である低溶出性ポリエチレン系樹脂は、有機物の溶出量を低くし得る傾向にある。
【0035】
[臭気吸着体]
臭気吸着体は、溶出成分(臭気成分)を吸着する。
臭気吸着層中の臭気吸着体の含有量は、0.3質量%以上、25質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、20質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上、15質量%以下が更に好ましい。上記範囲よりも少ないと吸着効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多くても、吸着効果がさほど向上せず、製膜性が劣り易くなる。
臭気吸着体は、疎水性ゼオライトを含有することが好ましい。
ここで、疎水性ゼオライトは、酸化珪素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)を含有するものである。
そして、疎水性ゼオライトは、モル比SiO/Alが、300/1以上、3000/1以下が好ましく、400/1以上、2000/1以下がより好ましい。該モル比が上記の範囲であれば、疎水性と細孔サイズのバランスに優れて、良好な吸着性を奏することができる。
【0036】
疎水性ゼオライトは、230℃以上に晒された場合であっても、ガス成分の吸着効果が維持されることから、好ましく用いることができる。
疎水性ゼオライトの性状は粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよい。上記の中でも、樹脂中に分散させた際の均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
また、疎水性ゼオライト粒子の外形形状は任意であってよく、例えば、球状、棒状、楕円状等であってよい。
【0037】
本発明において、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径は、0.01μm以上、30μm以下が好ましく、0.1μm以上、20μm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には疎水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、疎水性ゼオライトを含有する層の製膜性が劣る傾向になる為に、疎水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分なガス吸着効果が得られない可能性が生じる。
【0038】
疎水性ゼオライトは、疎水性である為に、極性の高い水分子等は吸着し難く、逆に極性の低い有機ガスとの親和性が高く、他の極性の低いガス成分、疎水性ガス、親油性ガス(溶剤系ガスも含む)とも親和性が高く、これらを吸着し易い。すなわち、官能基を有していないガス成分を吸着する機能に優れている。更に、ゼオライト表面にカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が存在する場合には、ゼオライト表面は塩基性を示し、酸性ガスを中和反応によって吸着し易い。
【0039】
(臭気吸着体のマスターバッチ化による分散性向上)
臭気吸着体を臭気吸着層の他の構成成分と直接に混合して溶融混練してもよいが、臭気吸着体を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製しておき、これを、目標含有率に応じた比率で臭気吸着層の他の構成成分と混合して溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によって、臭気吸着層中での臭気吸着体の分散性を高めることが好ましい。
すなわち、臭気吸着体は、熱可塑性樹脂との溶融混合物であってもよく、例えば、臭気吸着体は、低溶出性樹脂との溶融混合物であってもよい。
マスターバッチ方式を採用することで、凝集が発生し易い臭気吸着体を用いた場合であっても、臭気吸着体を臭気吸着層中に、効率的且つ均質に分散させることができる。
【0040】
マスターバッチ中の、臭気吸着体/熱可塑性樹脂の質量比は、特に制限は無いが、3/97以上、50/50以下の割合が好ましく、5/95以上、40/60以下の割合がより好ましい。
臭気吸着体と熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、各種の混練方法を適用することができる。
【0041】
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂には、臭気吸着層に含有されているヒートシール性樹脂、低密度柔軟性樹脂、低溶出性樹脂を用いることが好ましい。
また、他の樹脂を、臭気吸着層全体のヒートシール性や製膜性や臭気吸着性に大きな悪影響を与えない範囲内の種類及び含有量で用いることができるが、臭気吸着層に含有されている樹脂との相溶性が高く、同等程度のヒートシール性や低溶出性を有する樹脂が好ましい。
【0042】
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
【0043】
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂のMFRは、0.2g/10分以上、10g/10分以下が好ましい。この範囲のMFRであれば、臭気吸着体との溶融混錬が容易であり、臭気吸着層中に臭気吸着体を分散させ易く、臭気吸着層やウォーターサーバーバッグ用包装材料の製膜性やヒートシール性も維持され易い。
【0044】
(吸着対象臭気)
本発明において吸着対象となる臭気成分は、主に、本発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料が、特に、ウォーターサーバーバッグ用包装材料中の臭気吸着層が元から含有している、全有機体炭素(TOC)として溶出する成分である。
ここで、全有機体炭素(TOC)として溶出する成分としては、各層を構成する原材料が含有していたガス成分や、臭気吸着層用のフィルム、ウォーターサーバーバッグ用包装材料を作製する際の熱履歴等によって発生した分解生成物等が挙げられる。
【0045】
全有機体炭素(TOC)として溶出する成分の具体例としては、比較的分子量の小さい有機物が挙げられ、例えば、炭素数が1~16のものが多く、種類としては炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等が挙げられる。
【0046】
炭化水素類の具体例としては、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、ブテン、イソブテン、2-メチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、3-エチルヘプタン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、3-メチルヘプテン、オクタン、2-メチルオクタン、4-エチルオクタン、ノナン、3-メチルノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
【0047】
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、2-メチルプロパナール、3-メチルブタナール等が挙げられる。
【0048】
ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3,3-ジメチル-2-ブタノン等が挙げられる。
【0049】
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、イソ吉草酸、2-メチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸等が挙げられる。
【0050】
<ウォーターサーバーバッグ用包装材料の作製方法>
例えば、下記の層構成を有するウォーターサーバーバッグ用包装材料の作製方法について説明する。
層構成:易ニードル突き刺し層/接着層/強靭層/接着層/臭気吸着層
先ず、易ニードル突き刺し層樹脂組成物、接着樹脂、強靭層樹脂組成物、臭気吸着層樹脂組成物のそれぞれを調製して準備する。
そして、易ニードル突き刺し層樹脂組成物、接着樹脂、強靭層樹脂組成物、接着樹脂、臭気吸着層樹脂組成物を同時に共押出して製膜し、この順で積層して、上記層構成のウォーターサーバーバッグ用包装材料を得ることができる。
易ニードル突き刺し層樹脂組成物、強靭層樹脂組成物、臭気吸着層樹脂組成物のそれぞれから、易ニードル突き刺し層用フィルム、強靭層用フィルム、臭気吸着層用フィルムを作製しておき、接着樹脂を介して積層して、上記層構成のウォーターサーバーバッグ用包装材料を得ることができる。
【実施例0051】
<原材料>
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
【0052】
[変性ポリエステル系エラストマー]
・変性ポリエステル系エラストマー1:三菱ケミカル(株)社製モディックTPC GK320。密度1.03g/cm、MFR(230℃)9g/10分、融解ピーク温度183℃、D硬度(JISS K 6253)40。
【0053】
[低密度柔軟性樹脂]
・低密度柔軟性樹脂A1:三井化学(株)社製低密度オレフィンコポリマー、タフマーA-4085S。エチレン/1-ブテンランダム共重合体、密度0.885g/cm3、MFR3.6g/10分、ビカット軟化点55℃。
・低密度柔軟性樹脂B1:日本ポリエチレン(株)社製低密度プラストマー、カーネルKS340T。オレフィン系プラストマー(メタロセン系プラストマー)、密度0.880g/cm3、MFR3.5g/10分、ビカット軟化点44℃、25℃曲げ弾性率23MPa。
【0054】
[低溶出性樹脂]
・低溶出LLDPE1:(株)プライムポリマー社製UZ1520L。C6-LLDPE、密度0.914g/cm、MFR2.3g/10分。全有機体炭素(TOC)増加濃度0.68ppm。
【0055】
[ヒートシール性樹脂]
・ヒートシール性樹脂1:宇部興産(株)社製、UMERIT 720FT。C4-LLDPE、密度0.918g/cm、MFR4g/10分。
【0056】
[汎用樹脂]
・汎用LDPE1:日本ポリエチレン(株)社製、ノバテックLC600A。LDPE。密度が0.918g/cm、MFR7g/10分。
・汎用LLDPE1:(株)プライムポリマー社製エボリューSP2020。C6-LLDPE、密度0.916g/cm、MFR2.1g/10分。50μm厚フィルム中の溶出性TOCの濃度263ppm。
・ポリアミド樹脂1:宇部興産(株)社製、UBE5033B。ポリアミド6/66共重合体。
【0057】
[接着樹脂]
・接着樹脂1:三井化学(株)社製アドマーNF557。
【0058】
[臭気吸着体]
・疎水性ゼオライト1:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、ミズカシーブスEX-122。SiO/Alモル比=32/1、平均粒子径=2.5~5.5μm。
・疎水性ゼオライト2:水澤化学工業(株)社製疎水性ゼオライト、シルトンMT400。SiO/Alモル比=400/1、平均粒子径=5~7μm。
・疎水性ゼオライト3:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、シルトンMT-8000。SiO/Alモル比=8000/1、平均粒子径=0.8μm。
[添加剤]
・アンチブロッキング剤1:東京インキ社製(株)社製PEX BT-16。
・スリップ剤1:京インキ社製(株)社製M425。
【0059】
<評価方法>
[製膜性]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料の外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通りである。
○:皺やぶつが無く、製膜が可能。
△:皺やぶつが僅かに有り、製膜は可能。
×:皺やぶつが多数有り、製膜が困難。
【0060】
[ヒートシール性]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料を50mm×100mmに切り分け、樹脂分解ガス吸着シーラント層同士が対向するように2枚を重ね、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、一辺端部の10mm×100mmの領域をヒートシールし、反対側端部はヒートシールされておらず、二股に分かれている状態にした。
そして、15mm幅で短冊状に切って、10mm×15mmのヒートシール部を有する短冊を作製し、二股に分かれている端部を引張試験機に装着して引張強度(N/15mm幅)を測定して、合否を判定した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm
時間:1秒
引張強度試験条件
試験速度:300mm/分、荷重レンジ:50N
合否判定基準
○:引張強度が30N/15mm幅以上であり、合格。
×:引張強度が30N/15mm幅未満であり、不合格。
【0061】
[耐ピンホール性]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料をA4サイズ(30cm×21cm)に裁断し、ゲルボフレックステスター(テスター産業(株)社製、BE-1005)で屈曲後に、ウォーターサーバーバッグ用包装材料の面内に発生したピンホールの数をカウントした。
温度:23℃
ゲルボ屈曲回数:5000回
【0062】
[突き刺し強度]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料を裁断して120mm×80mmの短冊片を作製し、引張圧縮試験機(ORIENTEC社製のSA-1150)を用いて、JIS Z 1707 1997に準拠した方法により、突き刺し強さを測定した。
【0063】
[耐破袋特性]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料を用いてパウチ袋(200mm×300mm)を作製し、パウチ袋の内部に10Lの水を充填し、水充填後のパウチ袋を1mの高さから落下させる操作を合計3回繰り返し、破袋の有無を評価した。
合否判定基準
◎:3回の落下評価で破袋無し。合格。
○:3回の落下評価で1袋が破袋。合格。
×:3回の落下評価で全てが破袋。不合格。
【0064】
[充填水TOC増加濃度]
ウォーターサーバーバッグ用包装材料を用いてパウチ袋(15cm×44cm)を作製し、65℃の水(高速液体クロマトグラフィー用蒸留水、純正化学)1000gをホットパック充填して包装体液体充填物を作製し、35℃、2週間保管後に、(株)島津製作所社製TOC-L全有機体炭素計により充填水のTOC濃度を測定した。
次いで、充填前の水についても同様にTOC濃度を測定した。
そして、各包装体におけるTOC増加濃度を下記式から求めた。
TOC増加濃度=保管後の充填水TOC濃度-充填前の水のTOC濃度
充填前の水のTOC濃度:0.02ppm
【0065】
<フィルム・積層体の作製と評価>
[マスターバッチの調製]
臭気吸着層に用いるマスターバッチを下記のように調製した。
(マスターバッチ1の調製)
低溶出LLDPE1と疎水性ゼオライト1とを下記の割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
低溶出LLDPE1 60質量部
疎水性ゼオライト1 40質量部
(マスターバッチ2~4の調製)
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に操作して、マスターバッチ2~5(MB2~5)を調製した。
【0066】
【表1】
【0067】
[易ニードル突き刺し層樹脂組成物の調整]
表2に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、易ニードル突き刺し層樹脂組成物1~5を調製した。
【0068】
【表2】
【0069】
[強靭層樹脂組成物の調製]
表3に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、強靭層樹脂組成物1~5を調製した。
【0070】
【表3】
【0071】
[臭気吸着層樹脂組成物の調整]
表4に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、臭気吸着層樹脂組成物1~9を調製した。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
<ウォーターサーバーバッグ用包装材料の作製と評価>
【0075】
[実施例1]
上記で得た易ニードル突き刺し層樹脂組成物1と、接着樹脂1と、強靭層樹脂組成物1と、接着樹脂1と、臭気吸着層樹脂組成物1とを同時に共押出によって製膜してこの順で積層して、下記層構成のウォーターサーバーバッグ用包装材料1を作製し、各種評価を実施した。
層構成:易ニードル突き刺し層樹脂組成物1(30μm厚)/接着樹脂1(5μm厚)/強靭層樹脂組成物1(20μm厚)/接着樹脂1(5μm厚)/臭気吸着層樹脂組成物(55μm厚)
【0076】
[実施例2~9、比較例1~4]
各層の樹脂組成物を表6、7の記載に従って変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ウォーターサーバーバッグ用包装材料を作製し、同様に評価を実施した。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
[結果まとめ]
本願発明のウォーターサーバーバッグ用包装材料は、製膜性、ヒートシール性、耐ピンホール性、突き刺し強度、耐破袋特性、充填水TOC増加量の優れたバランスを示した。
しかしながら、易ニードル突き刺し層、強靭層、臭気吸着層の何れかが本願発明における規定を満たしていない比較例1~4の積層体は、製膜性、ヒートシール性、耐ピンホール性、突き刺し強度、耐破袋特性、充填水TOC増加量の何れかが劣った結果を示した。比較例4は、インフレーション製膜時にチューブの内面同士が付着して製膜出来ず、積層体を得られなかったために、以降の評価を中止した。
【符号の説明】
【0080】
1 ウォーターサーバーバッグ用包装材料
2 易ニードル突き刺し層
3 強靭層
4 臭気吸着層
5 接着層
図1
図2