(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122321
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び樹脂分解ガス吸着積層体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240902BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B32B27/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029795
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(72)【発明者】
【氏名】米本 智裕
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA19
4F071AA81
4F071AA82
4F071AA88
4F071AB26
4F071AC11
4F071AC15
4F071AD03
4F071AE05
4F071AE22
4F071AF14
4F071AF34
4F071AF52
4F071AF53
4F071AF59
4F071AG14
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB10E
4F100AB33E
4F100AC04A
4F100AK42D
4F100AK46D
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA06A
4F100CA06B
4F100CA06C
4F100CA30A
4F100CB03A
4F100CB03B
4F100CB03C
4F100EH66E
4F100EJ38D
4F100EJ52
4F100EJ52A
4F100EJ53
4F100GB15
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JA07C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JD02E
4F100JD14A
4F100JK02
4F100JK10
4F100JL12A
4F100JL12B
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造適正に優れ、包装材料が耐γ線および耐EB(電子線)性を有するヒートシール性樹脂と樹脂分解ガス吸着剤とを含有することによって、γ線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、包装体を構成する樹脂の分解等により発生する臭気物質を低減し、耐黄変性を向上し、且つ発生した少量の臭気物質を吸着して、内容物への耐臭味変化性に優れた樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び樹脂分解ガス吸着積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、耐γ線・EB性を有するヒートシール性樹脂と樹脂分解ガス吸着剤とを含有する樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び樹脂分解ガス吸着積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、樹脂分解ガス吸着層を含み、耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射処理性を有する、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムであって、
該樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射樹脂を含有し、
該耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であり、
該樹脂分解ガス吸着層は、少なくとも、ヒートシール性樹脂と、樹脂分解ガス吸着剤とを含有し、
該樹脂分解ガス吸着剤は、疎水性ゼオライトを含有する
ことを特徴とする、前記樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項2】
前記樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムに含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項3】
前記樹脂分解ガス吸着層に含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項4】
前記ヒートシール樹脂は、単段重合気相法メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項5】
前記単段重合気相法メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、請求項4に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項6】
前記樹脂分解ガス吸着層は、酸化防止剤をさらに含有し、
前記樹脂分解ガス吸着層中の該酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下であり、
該酸化防止剤は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の混合系酸化防止剤、またはリン・フェノール系酸化防止剤である
ことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項7】
前記樹脂分解ガス吸着層中の前記樹脂分解ガス吸着剤の含有量が、0.3質量%以上、25質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項8】
前記疎水性ゼオライトは、モル比SiO2/Al2O3が、300/1以上、3000/1以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項9】
前記樹脂分解ガス吸着層の片面または両面に、非吸着層をさらに有し、
該非吸着層は、前記ヒートシール性樹脂と前記酸化防止剤とを含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項10】
前記非吸着層中の前記酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下であり、
該酸化防止剤は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の混合系酸化防止剤、またはリン・フェノール系酸化防止剤である
ことを特徴とする、請求項9に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項11】
前記非吸着層に含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
【請求項12】
少なくとも、基材層、ガスバリア層、樹脂分解ガス吸着シーラント層を、この順で含む樹脂分解ガス吸着積層体であって、
該ガスバリア層は、金属箔または無機蒸着膜を含む層であり、
該樹脂分解ガス吸着シーラント層は、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムからなる層である
ことを特徴とする、前記樹脂分解ガス吸着積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ(γ)線および/または電子線(EB)照射による殺菌・滅菌処理の際に包装材料から発生する臭気成分が、包装体内の内容物に移って内容物に変味や変臭を与えてしまうことや黄変することを防ぐ、耐内容物臭味変化性、耐γ線および/またはEB照射殺菌・滅菌処理に対する耐性(以下、耐γ線・EB照射性、耐黄変性と表記する)に優れた、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び該樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを用いて作製した、樹脂分解ガス吸着積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料において、臭気を吸着する臭気吸着剤を内包した包装材料が提案されている(特許文献1)。このような包装材料においては、合成ゼオライトや活性炭といった臭気吸着剤が、樹脂材料中に練り込まれている。
しかしながら、このような包装材料は、臭気だけでなく、大気中の湿気をも吸着し、且つ、一度吸着した臭気を、脱離させてしまうという問題があるため、十分な臭気吸着効果が得られていない。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分を吸着するのみであって、樹脂材料を選定しない状況では、官能基を有さない有機物の発生量を抑制できず、臭気成分を十分に吸着し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2538487号公報
【特許文献2】特開2014-233408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題を解決し、製造適正に優れ、包装材料が耐γ線・EB照射性を有するヒートシール性樹脂と樹脂分解ガス吸着剤とを含有することによって、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際に、包装体を構成する樹脂の分解等により発生する臭気物質を低減し、且つ発生した少量の臭気物質を吸着して、内容物への耐臭味変化性に優れ、耐黄変性に優れた樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び樹脂分解ガス吸着積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、耐γ線・EB照射性を有するヒートシール性樹脂と樹脂分解ガス吸着剤とを含有する樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、及び樹脂分解ガス吸着積層体が、上記の目的を達成することを見出した。
本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、樹脂分解ガス吸着層を含み、耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射処理性を有する、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムであって、
該樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射樹脂を含有し、
該耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であり、
該樹脂分解ガス吸着層は、少なくとも、ヒートシール性樹脂と、樹脂分解ガス吸着剤とを含有し、
該樹脂分解ガス吸着剤は、疎水性ゼオライトを含有する
ことを特徴とする、前記樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
2.前記樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムに含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、上記1に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
3.前記樹脂分解ガス吸着層に含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、上記1または2に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
4.前記ヒートシール樹脂は、単段重合気相法メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることを特徴とする、上記1~3の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
5.前記単段重合気相法メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、上記4に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
6.前記樹脂分解ガス吸着層は、酸化防止剤をさらに含有し、
前記樹脂分解ガス吸着層中の該酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下であり、
該酸化防止剤は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の混合系酸化防止剤、またはリン・フェノール系酸化防止剤である
ことを特徴とする、上記1~5の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
7.前記樹脂分解ガス吸着層中の前記樹脂分解ガス吸着剤の含有量が、0.3質量%以上、25質量%以下であることを特徴とする、上記1~6の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
8.前記疎水性ゼオライトは、モル比SiO2/Al2O3が、300/1以上、3000/1以下であることを特徴とする、上記1~7の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
9.前記樹脂分解ガス吸着層の片面または両面に、非吸着層をさらに有し、
該非吸着層は、前記ヒートシール性樹脂と前記酸化防止剤とを含有することを特徴とする、上記1~8の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
10.前記非吸着層中の前記酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下であり、
該酸化防止剤は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の混合系酸化防止剤、またはリン・フェノール系酸化防止剤である
ことを特徴とする、上記9に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
11.前記非吸着層に含有される全樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャート上で、30面積%以下であることを特徴とする、上記9または10に記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム。
12.少なくとも、基材層、ガスバリア層、樹脂分解ガス吸着シーラント層を、この順で含む樹脂分解ガス吸着積層体であって、
該ガスバリア層は、金属箔または無機蒸着膜を含む層であり、
該樹脂分解ガス吸着シーラント層は、上記1~11の何れかに記載の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムからなる層である
ことを特徴とする、前記樹脂分解ガス吸着積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着積層体は、耐γ線・EB照射処理性を有する樹脂(以下、耐γ線・EB照射樹脂と表記する。)と樹脂分解ガス吸着剤とを含有しているため、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際に包装体を構成する樹脂の分解等により発生する臭気物質を低減し、且つ発生した少量の臭気物質を吸着して、内容物の臭味変化を抑制でき、耐黄変性に優れる。
したがって、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム及び樹脂分解ガス吸着積層体は、殺菌・滅菌処理に付される食品や医薬品、医療品の包装材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの層構成について、その一例を示す概略的断面図である。
【
図2】本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの層構成について、別態様の一例を示す概略的断面図である。
【
図3】本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの層構成について、異なる別態様の一例を示す概略的断面図である。
【
図4】本発明の樹脂分解ガス吸着積層体の層構成について、その一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム及び樹脂分解ガス吸着積層体について、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明において、フィルムとシートは同義である。
また、臭気を減らすメカニズムは、臭気物質の吸着と、臭気物質の化学的分解とに分類されるが、本発明では、臭気物質の吸着によって臭気を減らすこと及び臭気物質の化学的分解によって臭気を減らすことの総称として、消臭と記載する。
【0009】
<樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム>
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、少なくとも、樹脂分解ガス吸着層を含み、耐ガンマ(γ)線・電子線(EB)照射処理性、耐黄変性を有する。
γ線照射やEB照射による殺菌・滅菌処理は、紫外線(UV)照射、ホットパック、ボイル等による殺菌・滅菌処理よりも強力なエネルギー線による処理であることから、樹脂の分解等による臭気物質をより多く発生させ易く、黄変を生じ易い。
分子量の小さい樹脂分子ほど、γ線照射やEB照射によって分解し易い傾向にあり、特に、ポリスチレン換算で重量平均分子量が7万以下の樹脂成分は、分解し易い傾向にある。
【0010】
よって、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム中にポリスチレン換算で重量平均分子量が7万以下の樹脂成分が多いと、UV照射、ホットパック、ボイル等による殺菌・滅菌処理では樹脂の分解ガス発生量が少なかった場合であっても、γ線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易く、耐黄変性に劣り易い。
【0011】
そこで、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が7万以下の樹脂成分が少ないことによって、強力なγ線照射やEB照射による殺菌・滅菌処理を行っても、樹脂分解ガス吸着層を構成する樹脂の分解により発生する臭気物質が少なく、且つ発生した少量の臭気物質を吸着することができ、耐黄変性に優れる。
【0012】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムに含有される全樹脂成分の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定チャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下であることが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易く、耐黄変性に劣り易い。
【0013】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、耐γ線・EB照射樹脂を含有し、非耐γ線・EB照射樹脂を併用して含有することができる。
耐γ線・EB照射樹脂と非耐γ線・EB照射樹脂との併用比率については、樹脂分解ガス吸着層に含有されるこれらの混合物としての全樹脂についての、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が、GPC測定チャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、γ線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易く、耐黄変性に劣り易い。
【0014】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、耐γ線・EB照射樹脂を含有し、非耐γ線・EB照射樹脂を併用して含有することができる。
耐γ線・EB照射樹脂と非耐γ線・EB照射樹脂との併用比率については、樹脂分解ガス吸着層に含有されるこれらの混合物としての全樹脂についての、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が、GPC測定チャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
【0015】
したがって、非耐γ線・EB照射樹脂に含有されているポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が30面積%より非常に多い場合には、混合物としての樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム中の全樹脂についてポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率を上記範囲にする為には、非耐γ線・EB照射樹脂の併用比率を十分に小さくする必要がある。
【0016】
例えば、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムが、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が20面積%の耐γ線・EB照射樹脂と、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が30面積%超の非耐γ線・EB照射樹脂とを、質量比8/2で併用している場合について考察すると以下のようになる。
面積%と質量%が等比関係にあるとすれば、これらの樹脂混合物の重量平均分子量7万以下の樹脂成分の面積%は、大まかには、下記の様に算出される。
非耐γ線・EB照射樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が40面積%の場合:
0.2×8/(8+2)+0.4×2/(8+2)=0.16+0.08=24面積%
非耐γ線・EB照射樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が60面積%の場合:
0.2×8/(8+2)+0.6×2/(8+2)=0.16+0.12=28面積%
非耐γ線・EB照射樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が80面積%の場合:
0.2×8/(8+2)+0.8×2/(8+2)=0.16+0.16=32面積%
【0017】
したがって、樹脂混合物の重量平均分子量7万以下の樹脂成分の面積%は、耐γ線・EB照射樹脂および非耐γ線・EB照射樹脂のそれぞれの重量平均分子量7万以下の樹脂成分の面積%によるので、これらの併用比率を単に質量比のみで規定することはできない。
【0018】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、少なくとも、樹脂分解ガス吸着層を有する。
また、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、必要に応じて、樹脂分解ガス吸着層の片面または両面に、非吸着層をさらに有することができる。
【0019】
また、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムは、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、樹脂フィルムの成形加工性や生産性、各種の物性を調製するために一般に使用される種々の樹脂用添加剤、例えばアンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、流動制御材、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0020】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムには、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの厚さは、25μm以上、100μm以下が好ましく、30μm以上、90μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと樹脂分解ガス吸着性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、樹脂分解ガス吸着性はさほど向上せず、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの剛性が強くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
【0022】
[樹脂分解ガス吸着層]
樹脂分解ガス吸着層は、少なくとも、ヒートシール性樹脂と、樹脂分解ガス吸着剤とを含有し、必要に応じて、他の樹脂や各種添加剤を更に含有することができる。
樹脂分解ガス吸着層は、ヒートシール性を有し、γ線照射やEB照射による殺菌・滅菌処理を行っても、樹脂分解ガス吸着層を構成する樹脂の分解により発生する臭気物質が少なく、且つ発生した少量の臭気物質を樹脂分解ガス吸着剤によって吸着することができる。
樹脂分解ガス吸着層は、1層、または組成が同一あるいは異なる2層以上で構成されていてもよい。
【0023】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを、製膜性やヒートシール性に優れ、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際の、樹脂の分解等により発生する臭気物質を低減する為には、樹脂分解ガス吸着層に含有される全樹脂成分の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、GPCチャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易く、耐黄変性に劣り易い。
【0024】
樹脂分解ガス吸着層の樹脂成分は、1種のヒートシール性樹脂から構成されていてもよく、2種以上のヒートシール性樹脂からなる混合物で構成されていてもよく、非ヒートシール性樹脂が併用されていてもよい。
樹脂分解ガス吸着層がヒートシール性と、耐γ線・EB照射処理性とを有する為には、例えば、ヒートシール性樹脂が、耐γ線・EB照射樹脂を有することが好ましい。
また、樹脂分解ガス吸着層に含有される全樹脂が、耐γ線・EB照射樹脂であってもよく、耐γ線・EB照射樹脂と非耐γ線・EB照射樹脂とが併用されていてもよい。
【0025】
樹脂分解ガス吸着層中の樹脂分解ガス吸着剤の含有量は、0.3質量%以上、25質量%以下が好ましい。
上記範囲よりも少ないと吸着効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多くても、吸着効果がさほど向上せず、製膜性が劣り易くなる。
【0026】
樹脂分解ガス吸着層は、酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。
酸化防止剤を含有することによって、樹脂分解ガス吸着層に含有される樹脂の分解を抑制し、臭気物質の発生量を低減し、耐黄変性を向上することができる。
樹脂分解ガス吸着層中の酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下が好ましい。
上記範囲よりも少ないと酸化防止剤を添加した効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多くても、酸化防止剤を添加した効果がさほど向上せず、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる。
【0027】
樹脂分解ガス吸着層の厚さは、良好なガス吸着性を示す為に、5μm以上、80μm以下が好ましく、10μm以上、70μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと樹脂分解ガス吸着性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、樹脂分解ガス吸着性はさほど向上せず、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの剛性が強くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
【0028】
[非吸着層]
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムに含まれる非吸着層は、少なくともヒートシール性樹脂を含有し、樹脂分解ガス吸着剤を含有しない層である。
非吸着層に含有されるヒートシール性樹脂は、樹脂分解ガス吸着層に含有されるヒートシール性樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよいが、非吸着層に含有されるヒートシール性樹脂に、樹脂分解ガス吸着層に含有されるヒートシール性樹脂と同様に、耐γ線・EB照射樹脂を用いることによって、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム全体の耐γ線・EB照射処理性をさらに向上させて、樹脂分解ガスの発生量をより低減化し、耐黄変性を向上することができる。
【0029】
非吸着層は耐γ線・EB照射処理性が低い樹脂を併用することができるが、非吸着層に含有される全樹脂について、ポリスチレン換算重量平均分子量分子量7万以下の樹脂成分の含有率が、GPCチャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、γ線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易い。
【0030】
非吸着層は、酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。
酸化防止剤を含有することによって、非吸着層に含有される樹脂の分解を抑制し、臭気物質の発生量を低減し、耐黄変性を向上することができる。
非吸着層に含有される酸化防止剤は、樹脂分解ガス吸着層に含有される酸化防止剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。
非吸着層中の酸化防止剤の含有量は、0.01質量%以上、0.2質量%以下が好ましい。
上記範囲よりも少ないと酸化防止剤を添加した効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多くても、酸化防止剤を添加した効果がさほど向上せず、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる。
【0031】
(耐γ線・EB照射樹脂)
本発明における耐γ線・EB照射樹脂は、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際に、分解等により発生する臭気物質が少ない樹脂である。
耐γ線・EB照射樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、GPCチャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易く、耐黄変性が低下し易い。
【0032】
耐γ線・EB照射樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が好ましく、LLDPEがより好ましい。
そして、LLDPEの中でも、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは耐γ線・EB照射処理性に優れることから、更に好ましい。
同じメタロセン系LLDPEであっても、多段重合気相法LLDPEは、分子量分布が広く、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の低分子量成分が多いため、γ線照射やEB照射を実施した際に分解し易く、耐γ線・EB照射処理性や耐黄変性に優れない。
また、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは、C6-LLDPEであることが特に好ましい。
【0033】
(ヒートシール性樹脂)
ヒートシール性樹脂は、ヒートシールが容易な樹脂である。
また、該ヒートシール性樹脂は、耐γ線・EB照射樹脂であることが好ましい。
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを、製膜性やヒートシール性に優れ、γ線照射やEB照射等による殺菌・滅菌処理の際の、樹脂の分解等により発生する臭気物質を低減し、耐黄変性を向上する為には、樹脂分解ガス吸着層および/または非吸着層が含有するヒートシール性樹脂の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率を、GPCチャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも高いと樹脂の分解による臭気物質の発生量が高くなり易い。
【0034】
また、樹脂分解ガス吸着層および/または非吸着層が含有するヒートシール性樹脂のMFRは、0.2g/10分以上、10.0g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以上、7g/10分以下がより好ましい。
上記範囲よりも少ないと、製膜性やヒートシール性が劣り易く、上記範囲よりも高いと樹脂の分解による臭気物質の発生量が高くなり易く、耐黄変性に劣り易い。
【0035】
ヒートシール性樹脂としては低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が好ましく、LLDPEがより好ましい。
そして、ポリエチレン系樹脂の中でも、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは耐γ線・EB照射処理性や耐黄変性に優れることから、更に好ましい。
同じメタロセン系LLDPEであっても、多段重合気相法LLDPEは、分子量分布が広く、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の低分子量成分が多いため、γ線照射やEB照射を実施した際に分解し易く、耐γ線・EB照射処理性や耐黄変性に優れない。
また、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは、C6-LLDPEであることが特に好ましい。
【0036】
(単段重合気相法メタロセン系LLDPE)
単段重合気相法メタロセン系LLDPEは、メタロセン触媒を用いて、気相での単段重合によって合成されたLLDPEであり、従来のチーグラー・ナッタ触媒を用いた多段重合によって合成されたLLDPEよりも、低分子量成分を少なくすることができる。
【0037】
LLDPEは、エチレンと共重合させたモノマー種によって、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等の種類に分類される。
C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C6-LLDPEは、エチレンと1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C8-LLDPEは、エチレンと1-オクテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンである。
C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEは、エチレン由来のポリエチレンの主鎖に、それぞれ、1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン由来の、炭素数が4個、6個、8個の側鎖が存在する分子構造を有する。
【0038】
(樹脂分解ガス吸着剤)
樹脂分解ガス吸着剤は、疎水性ゼオライトを含有することが好ましい。
ここで、疎水性ゼオライトは、酸化珪素(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al2O3)を含有するものである。
そして、疎水性ゼオライトは、モル比SiO2/Al2O3が、300/1以上、3000/1以下が好ましく、400/1以上、2000/1以下がより好ましい。該モル比が上記の範囲であれば、疎水性と細孔サイズのバランスに優れて、良好な樹脂分解ガス吸着性を奏することができる。
疎水性ゼオライトは、230℃以上に晒された場合であっても、ガス成分の吸着効果が維持されることから、好ましく用いることができる。
疎水性ゼオライトの性状は粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよい。上記の中でも、樹脂中に分散させた際の均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
また、疎水性ゼオライト粒子の外形形状は任意であってよく、例えば、球状、棒状、楕円状等であってよい。
【0039】
本発明において、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径0.01μm以上、30μm以下が好ましく、0.1μm以上、20μm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には疎水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、疎水性ゼオライトを含有する層の製膜性が劣る傾向になる為に、疎水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分なガス吸着効果が得られない可能性が生じる。
【0040】
疎水性ゼオライトは、疎水性である為に、極性の高い水分子等は吸着し難く、逆に極性の低い有機ガスとの親和性が高く、他の極性の低いガス成分、疎水性ガス、親油性ガス(溶剤系ガスも含む)とも親和性が高く、これらを吸着し易い。すなわち、官能基を有していないガス成分を吸着する機能に優れている。更に、ゼオライト表面にカルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が存在する場合には、ゼオライト表面は塩基性を示し、酸性ガスを中和反応によって吸着し易い。
【0041】
(樹脂分解ガス吸着剤のマスターバッチ化による分散性向上)
樹脂分解ガス吸着剤を樹脂分解ガス吸着層の他の構成成分と直接に混合して溶融混練してもよいが、樹脂分解ガス吸着剤を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製しておき、これを、目標含有率に応じた比率で樹脂分解ガス吸着層の他の構成成分と混合して溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によって、樹脂分解ガス吸着層中での樹脂分解ガス吸着剤の分散性を高めることが好ましい。
すなわち、樹脂分解ガス吸着剤は、熱可塑性樹脂との溶融混合物であってもよく、例えば、臭気吸着体は、ヒートシール性樹脂や耐γ線・EB照射樹脂との溶融混合物であってもよい。
マスターバッチ方式を採用することで、凝集が発生し易い樹脂分解ガス吸着剤を用いた場合であっても、樹脂分解ガス吸着剤を樹脂分解ガス吸着層中に、効率的且つ均質に分散させることができる。
【0042】
マスターバッチ中の、樹脂分解ガス吸着剤/熱可塑性樹脂の質量比は、特に制限は無いが、3/97以上、50/50以下の割合が好ましく、5/95以上、40/60以下の割合がより好ましい。
樹脂分解ガス吸着剤と熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、各種の混練方法を適用することができる。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂には、樹脂分解ガス吸着層に含有されているヒートシール性樹脂や耐γ線・EB照射樹脂を用いることが好ましい。
また、他の樹脂を、樹脂分解ガス吸着層全体のヒートシール性や製膜性や樹脂分解ガス吸着性に大きな悪影響を与えない範囲内の種類及び含有量で用いることができるが、樹脂分解ガス吸着層に含有されているヒートシール性樹脂との相溶性が高く、同等程度のヒートシール性を有する樹脂が好ましい。
【0043】
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
【0044】
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂のMFRは、0.2g/10分以上、10g/10分以下が好ましい。この範囲のMFRであれば、樹脂分解ガス吸着剤との溶融混錬が容易であり、樹脂分解ガス吸着層中に樹脂分解ガス吸着剤を分散させ易く、樹脂分解ガス吸着層や樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの製膜性やヒートシール性も維持され易い。
【0045】
(吸着対象ガス)
本発明において吸着対象となるガス成分は、主に、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムがγ線照射やEB照射等で殺菌・滅菌処理されて発生した樹脂分解ガスであるが、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムが元から含有しているガス成分を吸着することもできる。
ここで、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムが元から含有しているガス成分としては、各層を構成する原材料が含有していたガス成分、及び樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを作製する際の熱履歴等によって発生したガス成分等が挙げられる。
【0046】
吸着対象ガスの具体例としては、比較的分子量の小さい有機物が挙げられ、例えば、炭素数が1~16のものが多く、種類としては炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等が挙げられる。
【0047】
炭化水素類の具体例としては、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、ブテン、イソブテン、2-メチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、3-エチルヘプタン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、3-メチルヘプテン、オクタン、2-メチルオクタン、4-エチルオクタン、ノナン、3-メチルノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
【0048】
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、2-メチルプロパナール、3-メチルブタナール等が挙げられる。
【0049】
ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3,3-ジメチル-2-ブタノン等が挙げられる。
【0050】
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、イソ吉草酸、2-メチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸等が挙げられる。
【0051】
(酸化防止剤)
樹脂分解ガス吸着層および/または非吸着層に含有される酸化防止剤は、リン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の両者を混合物で含有すること、または、リン・フェノール系酸化防止剤を含有することが好ましい。
【0052】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト系酸化防止剤が挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラ-C12~C15アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)-エチル-ホスファイト、トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0053】
ホスファイト系酸化防止剤の商品例としては、アデカスタブPEP-36(ADEKA社製)、Irgafos38、Irgafos168(ともにBASF社製)等が挙げられる。
【0054】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール、オクタデシル 3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼンが好ましい。
【0055】
フェノール系酸化防止剤の商品例としては、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、アデカスタブAO-330(ともにADEKA社製)、イルガノックス245(BASF社製)、サイアノックス1790(CYTEC社製)、スミライザーGA-80(住友化学社製)等が挙げられる。
【0056】
リン・フェノール系酸化防止剤は、1分子中にリン原子と、水酸基が置換した芳香族環とを有する化合物からなる酸化防止剤である。
リン・フェノール系酸化防止剤の具体例としては、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0057】
リン・フェノール系酸化防止剤の商品例としては、EAG-5(プライムポリマー社製)、スミライザーGP(住友化学社製)等が挙げられる。
【0058】
[GPC測定について]
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着層、非吸着層に含有される樹脂成分の分子量分布を測定する為のGPC測定の環境や条件は、例えば、下記が好ましい。
GPC測定試料液は、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着層、非吸着層等を単離して、溶質として溶媒に溶解して作製してもよく、これらを形成するための樹脂組成物を溶質として溶媒に溶解して作製してもよい。
【0059】
溶解する溶媒としては、GPC測定の移動相と同じ組成の溶媒が好ましい。
溶質3mgを、20~60℃の溶媒2~5mLに、0.5~2時間攪拌して溶解させ、0.5~2時間静置してから、メンブレンフィルター等で加圧ろ過して、試料液を作製することが好ましい。
メンブレンフィルター等は、1種のフィルター孔径のものでもよいが、2種以上のフィルター孔径のものを用いることが好ましい。例えば、フィルター孔径1.0μmのフィルターで先ず加圧ろ過し、次いでフィルター孔径0.5μmのフィルターで加圧ろ過することが好ましい。
そして、上記で得た試料液をGPC装置に注入してGPC測定を行う。
【0060】
ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率がGPCチャート上で30面積%以下であるポリエチレンは、20~30℃における溶媒への溶解性が劣り正確で分解能の高い測定が困難である為に、GPC装置は、カラム温度120~160℃の高温GPC装置が好ましいが、移動相の沸点や揮発性によって適宜変更することが好ましい。
GPC装置は、例えば、下記の装置が挙げられる。
GPC測定結果は、横軸がポリスチレン換算重量平均分子量、縦軸が検出比率のGPCチャートとして出力され、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が、GPCチャート上での面積%で算出される。
【0061】
(装置及び測定条件)
GPC装置:センシュー科学SSC-7120 HT-GPC System
ガードカラム:guardcolumn HHR-H(S)HT2
分離カラム:東ソー株式会社製GMHHR-H(S)HT2×2本
カラム温度:145℃
移動相:o-ジクロロベンゼン(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.025質量%含有)
試料液注入量:300μL
検出器:屈折率計
分子量算出:ポリスチレン換算の重量平均分子量
【0062】
[樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの作製方法]
下記に示す樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムの作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを構成する各層の製膜は、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
【0063】
例えば、非吸着層1用の樹脂組成物、樹脂分解ガス吸着層用の樹脂組成物、非吸着層2用の樹脂組成物のそれぞれを調製して準備し、インフレーション法により製膜および積層して、下記層構成の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを得ることができる。
層構成:非吸着層1/樹脂分解ガス吸着層/非吸着層2
又は、離型フィルム上に、非吸着層1用の樹脂組成物、樹脂分解ガス吸着層用の樹脂組成物、非吸着層2用の樹脂組成物を、共押出しによるエクストルージョンコート法で積層して、次いで、離型フィルムを除去することによって作製してもよい。エクストルージョンコート法の場合、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。
【0064】
<樹脂分解ガス吸着積層体>
本発明の樹脂分解ガス吸着積層体は、少なくとも、基材層、ガスバリア層、樹脂分解ガス吸着シーラント層を、この順で含む積層体である。
樹脂分解ガス吸着シーラント層は、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムからなる層であることが好ましく、更に他の層を含んでもよい。
また、各層の間には、接着性を向上させるために、接着層を設けたり、各層の表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けたりすることができる。
或いは、各層の表面に、各種コート剤層を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
【0065】
樹脂分解ガス吸着積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0066】
[基材層]
基材層には、樹脂フィルムや紙材等を用いることができ、1層で構成されていてもよく、組成が同一又は異なる2層以上を含む多層構成であってもよい。
【0067】
基材層の厚さは、素材にもよるが、樹脂フィルムからなる場合には、好ましくは5μm以上、60μm以下、より好ましくは7μm以上、45μm以下である。
基材層に用いられる樹脂フィルムには、熱可塑性樹脂をフィルム化したものを用いることができ、化学的又は物理的強度に優れ、金属や金属酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、それらの蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0068】
このような樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、等の各種の樹脂が挙げられる。
上記の中でも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂の1種であるポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0069】
本発明において、基材層に用いられる樹脂フィルムは、各種製膜法で熱可塑性樹脂からフィルム化して得ることができる。
例えば、1種の樹脂を使用して、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて製膜する方法、2種以上の樹脂を使用して多層共押し出し製膜する方法、2種以上の樹脂を製膜する前に混合して上記製膜法で製膜する方法、等が挙げられる。さらに、テンター方式やチューブラー方式等を利用して1軸又は2軸方向に延伸したフィルムとすることができる。
【0070】
基材層に用いられる樹脂フィルムは、他の樹脂フィルム上に、1種又は2種以上の樹脂を、塗布及び乾燥してコーティングしたり、Tダイ法等によって溶融した樹脂を積層したりして得ることもできる。
本発明においては、基材層に用いられる樹脂フィルムには、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0071】
なお、樹脂フィルムには、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を使用することができる。
【0072】
また、基材層を構成する各層間には、接着性を向上させるために、接着層を設けたり、各層の表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けたりすることができる。
【0073】
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムまたは樹脂分解ガス吸着積層体を用いて作製した包装体において、包装体の外部から内部へと、大気中のガスが包装体を透過して来るのを抑制する層である。
ガスバリア層は、ガスバリア性樹脂膜、金属箔、金属蒸着膜、金属酸化物蒸着膜からなる群から選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含むことが好ましく、金属箔、金属蒸着膜、金属酸化物蒸着膜からなる群から選ばれる1種または2種以上の組み合わせを含むことがより好ましい。
上記において、ガスバリア性樹脂膜はガスバリア性樹脂塗膜やガスバリア性樹脂フィルムであってもよい。
【0074】
ガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の樹脂が好ましい。
【0075】
金属箔としては、厚さが3μm以上、15μm以下のアルミニウム箔が好ましい。
【0076】
金属蒸着膜、金属酸化物蒸着膜は、樹脂フィルム上に蒸着された金属蒸着層付き樹脂フィルム又は金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムであってもよく、その樹脂フィルムは、ガスバリア性樹脂フィルムであってもよく、基材層を構成する樹脂フィルムであってもよい。
【0077】
金属蒸着層付き樹脂フィルム又は金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムとしては、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、酸化アルミニウム蒸着膜を、上記の基材樹脂フィルムの少なくともいずれか一方の面上に形成したものが好ましい。商業的にも入手可能な酸化アルミニウム蒸着膜付き樹脂フィルムとしては、例えば、物理蒸着(PVD)法により蒸着されたアルミナ蒸着層、すなわちアルミナ物理蒸着層を片面に有するPETフィルムである、大日本印刷株式会社製のアルミナ蒸着IB-PET-PIR(厚さ12μm)、シリカ蒸着IB-ON-UB(厚さ15μm)が挙げられる。
【0078】
ガスバリア層用のガスバリア性樹脂膜、金属箔、金属蒸着層付き樹脂フィルム、金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムは、接着剤を用いて、他の層と接着することができる。
あるいは、金属又は金属酸化物蒸着層付き樹脂フィルムの樹脂フィルムに、基材層用の樹脂フィルムを用いることで、基材層への積層を省略することもできる。
【0079】
[樹脂分解ガス吸着シーラント層]
樹脂分解ガス吸着シーラント層は、本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムからなる層であることが好ましく、更に他の層を含んでもよい。
樹脂分解ガス吸着シーラント層は、少なくとも、樹脂分解ガス吸着層を有し、樹脂分解ガス吸着層の片面または両面に、非吸着層をさらに有することができる。
【0080】
樹脂分解ガス吸着シーラント層の厚さは、樹脂分解ガス吸着積層体が良好なガス吸着性及びヒートシール性と適度な剛性を示す為に、25μm以上、100μm以下が好ましく、30μm以上、90μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと樹脂分解ガス吸着性及びヒートシール性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、樹脂分解ガス吸着性及びヒートシール性はさほど向上せず、樹脂分解ガス吸着積層体の剛性が強くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
【0081】
樹脂分解ガス吸着層、非吸着層、またはこれらの層を含む樹脂分解ガス吸着シーラント層に含有される全樹脂成分の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率は、GPC測定チャート上で、30面積%以下であることが好ましく、0面積%であることがより好ましい。
しかしながら、0面積%の樹脂を得ることは実質的に困難である為、実質的には、0面積%より大きく、30面積%以下でことが、より好ましい。
上記範囲よりも多いと、γ線照射やEB照射等の殺菌・滅菌処理の際に、樹脂の分解ガス(臭気物質)が多く発生し易い。
【0082】
樹脂分解ガス吸着シーラント層は、ポリスチレン換算で重量平均分子量が7万以下の樹脂成分が少ないことによって、強力なγ線照射やEB照射による殺菌・滅菌処理を行っても、樹脂分解ガス吸着シーラント層を構成する樹脂の分解により発生する臭気物質が少なく、且つ発生した少量の臭気物質を吸着することができる。また、他の層で発生した臭気物質も吸着することができる。さらに耐黄変性に優れることができる。
【0083】
また、樹脂分解ガス吸着シーラント層は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、樹脂フィルムの成形加工性や生産性、各種の物性を調製するために一般に使用される種々の樹脂用添加剤、例えばアンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、流動制御材、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラント層には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0085】
[樹脂分解ガス吸着積層体の作製方法]
下記に示す作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
先ず、基材層用の樹脂フィルムの片面に接着剤を塗布し、必要に応じて更に乾燥し、ガスバリア性樹脂フィルムを貼り合わせて、下記層構成のバリア性基材フィルムを作製する。
層構成:基材層/接着剤層/ガスバリア層
一方で、樹脂分解ガス吸着シーラント層用に、上記の方法で、下記層構成の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを作製する。
層構成:非吸着層1/樹脂分解ガス吸着層/非吸着層2
そして、上記で得たバリア性基材フィルムのガスバリア性フィルム側の面に接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥し、樹脂分解ガス吸着シーラントフィルムを貼り合わせて、下記層構成の樹脂分解ガス吸着積層体を得る。
層構成:基材層/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/樹脂分解ガス吸着シーラント層[非吸着層1/樹脂分解ガス吸着層/非吸着層2]
【0086】
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着積層体に共通して適用される接着層、ヒートシール性樹脂、GPC測定等について、以下に説明する。
【0087】
[接着層]
本発明の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着積層体は、構成する各層の層間及び各層内の層間に、接着層を設けて積層することが可能である。
また、接着層を形成する前に、接着性を向上する為に、接着対象層表面に予めアンカーコート層を形成しておいてもよい。
【0088】
上記の各種接着剤に含有される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、セポリ塩化ビニル系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系接着剤、ルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、エラストマー系樹脂、シリコーン系樹脂、無機系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。
【0089】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリノルボネン等の環状オレフィン(共)重合体等が挙げられる。
【0090】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物を使用して、グラフト重合または共重合によって酸変性した樹脂である。
酸変性ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテン(共)重合体、ブテン(共)重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、共重合体は、ランダムもしくはブロック共重合体であってもよい。
【0091】
ポリ酢酸ビニル系樹脂の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン共重合体等が挙げられる。
【0092】
ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂の具体例としては、スチレン、酢酸ビニル等のモノマーと、(メタ)アクリル酸モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0093】
アミノ樹脂系樹脂の具体例としては、尿素樹脂又はメラミン樹脂等が挙げられる。
【0094】
エラストマー系樹脂の具体例としては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0095】
接着層は、エクストルージョンコート(EC)用接着剤、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、インフレーション法用接着剤等の何れからなる層であってよい。
【0096】
EC用接着剤を用いる場合は、特に限定されないが、例えば、まず、接着剤を加熱溶融して、Tダイス等で必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、接着対象層上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、接着層の形成と接着対象層への接着と積層を同時に行うことができる。
EC用接着剤を用いた場合、接着層の厚さは、1~10μmが好ましい。接着層の厚さを上記範囲とすることで、良好な接着性が得られる。
EC用接着剤には、加熱溶融させて押出機で適用可能な任意の樹脂を用いることができる。具体的には、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を用いた接着剤が好ましく、ポリエステル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤がより好ましい。
【0097】
ドライラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散又は溶解した接着剤を一方のフィルム上に塗布し乾燥させて、もう一方のフィルムを重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて接着し、積層することができる。
ドライラミネート用接着剤は、例えばロールコート、グラビアロールコート、キスコート等で塗布して用いることができる。
ドライラミネート用接着剤またはノンソルベントラミネート用接着剤を用いた場合、その塗布量は、0.1~10g/m2(乾燥状態)が好ましい。接着層の塗布量を上記範囲とすることで、良好な接着性が得られる。
【0098】
ノンソルベントラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散又は溶解せずに接着剤自身を接着対象層上に塗布し乾燥させて、もう一方の層を形成するフィルムを重ねて積層した後に、30~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層することができる。
ノンソルベントラミネート用接着剤は、例えばロールコート、グラビアロールコート、キスコート等で塗布して用いることができる。
【0099】
インフレーション法による共押出し及び製膜で積層体を形成する場合には、上記の中でも、ポリエステル系やポリオレフィン系接着剤が好ましい。
【0100】
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、層間の接着性を向上する為に、接着対象層表面に予め設けられる層であり、任意のアンカーコート剤から形成することができる。
アンカーコート剤の具体例としては、有機チタン系、イソシアネート(ウレタン系)系、ポリエチレンイミン系、酸変性ポリエチレン系、ポリブタジエン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のアンカーコート剤が挙げられる。
【0101】
(表面処理層)
表面処理層層は、層間の接着性を向上する為に、接着対象層表面に予め各種前処理により形成される層である。
表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理層、オゾン処理層、酸素ガス又は窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理層、グロー放電処理層、化学薬品等を用いたる酸化処理層、コート剤層が挙げられる。
【0102】
(コート剤層)
コート剤層の具体例としては、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着層、蒸着アンカーコート剤層等が挙げられる。
コート剤層には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂又はその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
【実施例0103】
<原材料>
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
【0104】
[基材層]
・PETフィルム1:厚さ12μm。東洋紡(株)社製T-4102。片面コロナ処理。
・ナイロンフィルム1:ユニチカ社製、二軸延伸ナイロンフィルム、フィルム厚さ15μm。品番名 エンブレムONBC。
【0105】
[ガスバリア層]
・アルミニウム箔1:東洋アルミニウム(株)社製、厚さ7μm。
【0106】
[接着剤]
・接着剤1:ドライラミネート(DL)用接着剤。ロックペイント(株)社製、ロックボンドJ RU-77T/アドロック H-7;配合比10/1。
【0107】
[ヒートシール性樹脂]
・LLDPE1:単段重合気相法C6-LLDPE、密度0.912g/cm3、MFR2.0g/10分、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の成分の含有率22.5面積%。
・LLDPE2:単段重合液相法C6-LLDPE、密度0.914g/cm3、MFR2.3g/10分、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の成分の含有率32面積%。
・LLDPE3:多段重合気相法C6-LLDPE、密度0.916g/cm3、MFR2.3g/10分、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の成分の含有率35面積%。
【0108】
[樹脂分解ガス吸着剤]
・樹脂分解ガス吸着剤1:水澤化学工業(株)社製疎水性ゼオライト、シルトンMT400。SiO2/Al2O3モル比=400/1、平均粒子径5~7μm。
・樹脂分解ガス吸着剤2:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、シルトンMT-2000。SiO2/Al2O3モル比=2000/1、平均粒子径2~4μm。
【0109】
[酸化防止剤]
・酸化防止剤1:(株)プライムポリマー社製EAG-5。リン・フェノール系酸化防止剤を5質量%、ポリエチレンを95%含有。
【0110】
<評価方法>
[製膜性]
作製したシーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着積層体の外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通 りである。
○:皺やぶつが無く、製膜が可能。
△:皺やぶつが僅かに有り、製膜は可能。
×:皺やぶつが多数有り、製膜が困難。
【0111】
[ヒートシール性]
樹脂分解ガス吸着積層体を50mm×100mmに切り分け、樹脂分解ガス吸着シーラント層同士が対向するように2枚を重ね、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、一辺端部の10mm×100mmの領域をヒートシールし、反対側端部はヒートシールされておらずに二股に分かれている状態にした。
そして、15mm幅で短冊状に切って、10mm×15mmのヒートシール部を有する短冊を作製し、二股に分かれている端部を引張試験機に装着して引張強度(N/15mm幅)を測定して、合否を判定した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
引張強度試験条件
試験速度:300mm/分、荷重レンジ:50N
合否判定基準
○:引張強度が30N/15mm幅以上であり、合格。
×:引張強度が30N/15mm幅未満であり、不合格。
【0112】
[樹脂分解ガス吸着性]
作製した樹脂分解ガス吸着積層体を200mm×300mmのサイズに切り分け、樹脂分解ガス吸着シーラント層同士が対向するように2枚を重ね、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて4方をヒートシールして、空気1000mlが封入されたパウチを作製した。
次いで、パウチに15kGyのγ線照射処理を施した。
そして約1週間、常温環境下で保管した後に、パウチ内の空気について、臭気官能評価と、アセトアルデヒド濃度の測定を行った。
【0113】
(パウチ内空気の臭気官能評価)
下記判定基準で、臭気官能評価を行った。
1:強い臭気を感じる
2:臭気を感じる
3:多少、臭気を感じる
4:臭気を感じない
【0114】
(パウチ内ガスのアセトアルデヒド濃度)
検知管((株)ガステック社製、No.92M)を用いて、アセトアルデヒド濃度を測定した。
【0115】
[耐黄変性]
作製した樹脂分解ガス吸着積層体を200mm×300mmのサイズに切り分け、樹脂分解ガス吸着シーラント層同士が対向するように2枚を重ね、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて4方をヒートシールして、空気1000mlが封入されたパウチを作製した。
次いで、パウチに15kGyのγ線照射処理を施し、黄変状況を下記評価指標で目視により評価した。
評価結果には、10人の評価者による評価の平均値を採用した。
1:大幅に黄変している、
2:黄変している、
3:多少、黄変している、
4:黄変していない
【0116】
[耐破袋特性]
作製した樹脂分解ガス吸着積層体を200mm×300mmのサイズに切り分け、樹脂分解ガス吸着シーラント層同士が対向するように2枚を重ね、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて4方をヒートシールして、パウチを作製した。
そして、上記のパウチの内部に10Lの水を充填し、水充填後の包装体を1mの高さから落下させる操作を合計3回繰り返し、破袋の有無を評価した。
合否判定基準
◎:3回の落下評価で破袋無し。合格。
○:3回の落下評価で1袋が破袋。合格。
×:3回の落下評価で全てが破袋。不合格。
【0117】
[Mw7万以下の樹脂成分含有率]
測定対象層を形成する樹脂組成物を、45℃の0.025質量%2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)含有o-ジクロロベンゼンに添加し、1時間攪拌して溶解させ、1時間静置した。濃度は、樹脂又は樹脂組成物3mgに対して、溶媒3mL。
そして、フィルター孔径1.0μmと0.5μmのメンブレンフィルターで加圧ろ過して、試料液を得た。
次に、上記で得た試料液を、下記の高温GPC装置に注入してGPC測定を行い、GPCチャートを出力し、ポリスチレン換算の重量平均分子量7万以下の面積%を算出した。
(装置及び測定条件)
GPC装置:センシュー科学SSC-7120 HT-GPC System
ガードカラム:guardcolumn HHR-H(S)HT2
分離カラム:GMHHR-H(S)HT2×2本
カラム温度:145℃
移動相:0.025質量%BHT含有o-ジクロロベンゼン
試料液注入量:300μL
【0118】
<フィルム・積層体の作製と評価>
[マスターバッチの調製]
臭気吸着層に用いるマスターバッチを下記のように調製した。
(マスターバッチ1の調製)
LLDPE1と樹脂分解ガス吸着剤1とを下記の割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
LLDPE1 60質量部
樹脂分解ガス吸着剤1 40質量部
(マスターバッチ2~4の調製)
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に操作して、マスターバッチ 2~4(MB2~4)を調製した。
【0119】
【0120】
[非吸着層樹脂組成物の調整]
表2に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、非吸着層樹脂組成物1~4を調製した。
【0121】
【0122】
[樹脂分解ガス吸着樹脂組成物の調製]
表3、4に示された配合で各原料をドライブレンドすることによって、樹脂分解ガス吸着樹脂組成物1~11を調製した。
【0123】
【0124】
【0125】
<樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム、樹脂分解ガス吸着積層体の作製と評価>
【0126】
[実施例1]
上記で得た樹脂分解ガス吸着樹脂組成物1を、160~170℃のインフレーション製膜法によって製膜して、1層構成の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム1(50μm厚)を得た。
一方で、PETフィルム1の片面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、アルミニウム箔1をドライラミネート法により貼り合せて、バリア性基材フィルムを作製した。
そして、上記で得たバリア性基材フィルムのアルミニウム箔1側の面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、上記で得た樹脂分解ガス吸着フィルム1をドライラミネート法により貼り合わせて、下記層構成の樹脂分解ガス吸着積層体1を作製し、各種評価を実施した。
層構成:バリア性基材フィルム[PETフィルム1(12μm厚)/接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm厚)]/接着剤1(3.5g/m2)/樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム1[樹脂分解ガス吸着層(50μm厚)]
【0127】
[実施例2]
樹脂分解ガス吸着樹脂組成物1を樹脂分解ガス吸着樹脂組成物2に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、樹脂分解ガス吸着積層体2を作製し、同様に評価を実施した。
【0128】
[実施例3]
上記で得た樹脂分解ガス吸着樹脂組成物1と非吸着層樹脂組成物1とを、160~170℃のインフレーション製膜法によって製膜及び積層して、下記2層構成の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム3を得た。
層構成:非吸着層1(10μm厚)/樹脂分解ガス吸着層(30μm厚)
一方で、PETフィルム1の片面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、アルミニウム箔1をドライラミネート法により貼り合せて、バリア性基材フィルムを作製した。
そして、上記で得たバリア性基材フィルムのアルミニウム箔1側の面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、上記で得た樹脂分解ガス吸着フィルム1の非吸着層1側の面を、対向させてドライラミネート法により貼り合わせて、下記層構成の樹脂分解ガス吸着積層体3を作製し、各種評価を実施した。
層構成:バリア性基材フィルム[PETフィルム1(12μm厚)/接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm厚)]/接着剤1(3.5g/m2)/樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム1[非吸着層1(10μm厚)/樹脂分解ガス吸着層(30μm厚)]
【0129】
[実施例4]
上記で得た樹脂分解ガス吸着樹脂組成物1と非吸着層樹脂組成物1とを、160~170℃のインフレーション製膜法によって製膜及び積層して、下記3層構成の樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム4を得た。
層構成:非吸着層1(10μm厚)/樹脂分解ガス吸着層(30μm厚)/非吸着層2(10μm厚)
一方で、PETフィルム1の片面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、アルミニウム箔1をドライラミネート法により貼り合せて、バリア性基材フィルムを作製した。
そして、上記で得たバリア性基材フィルムのアルミニウム箔1側の面に接着剤1を塗布及び乾燥し(乾燥温度70℃、乾燥後の塗布量3.5g/m2)、上記で得た樹脂分解ガス吸着フィルム1の非吸着層1側の面を、対向させてドライラミネート法により貼り合わせて、下記層構成の樹脂分解ガス吸着積層体4を作製し、各種評価を実施した。
層構成:バリア性基材フィルム[PETフィルム1(12μm厚)/接着剤1(3.5g/m2)/アルミニウム箔1(7μm厚)]/接着剤1(3.5g/m2)/樹脂分解ガス吸着シーラントフィルム1[非吸着層1(10μm厚)/樹脂分解ガス吸着層(30μm厚)/非吸着層2(10μm厚)]
【0130】
[実施例5~11、比較例1、2]
表5~7の記載に従い、実施例4と同様に操作して、樹脂分解ガス吸着積層体を作製して、同様に評価した。
[比較例3]
表7の記載に従い、実施例3と同様に操作して、樹脂分解ガス吸着積層体を作製して、同様に評価した。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
[結果まとめ]
樹脂分解ガス吸着シーラント層、樹脂分解ガス吸着層、非吸着層に含有される全樹脂成分の、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の樹脂成分の含有率が30面積%以下である実施例は、全て、パウチ内の臭気及びアセトアルデヒド濃度が低く、良好な製膜性、ヒートシール性、樹脂分解ガス濃度、耐黄変性のバランスを示した。
一方、該含有率が30面積%超である比較例1、2は、パウチ内の臭気及びアセトアルデヒド濃度が高く、黄変が強く、劣った結果を示した。
樹脂分解ガス吸着層が樹脂分解ガス吸着剤を多量に含有する比較例3は、劣った製膜性を示した。
樹脂分解ガス吸着層や非吸着層に、リン酸系・フェノール系混合系酸化防止剤を含有する実施例2~11は、リン酸系・フェノール系混合系酸化防止剤を含有しない実施例1よりも、優れた耐黄変性を示した。