(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122327
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】地盤のシリカ含有量算出方法及び地盤の強度推定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240902BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240902BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01N33/24 D
E02D3/12 101
E02D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029808
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 高明
(72)【発明者】
【氏名】村田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040CA02
2D040GA02
2D043AA01
(57)【要約】
【課題】地盤のシリカ含有量を高精度で算出することができる方法、及びこの算出方法を利用した地盤の強度推定方法とする。
【解決手段】アルカリ溶出性アルミニウムを含む地盤中のシリカ含有量を算出する方法であり、地盤の試料土を酸性溶液で洗浄し、この酸性溶液で洗浄した試料土にアルカリ溶出液を加えて試料土からシリカを溶出させ、この溶出量からシリカ含有量を算出する。また、この方法に基づいてシリカ含有量を算出し、この算出値に基づいて地盤の強度を推定する、
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ溶出性アルミニウムを含む地盤中のシリカ含有量を算出する方法であり、
前記地盤の試料土を酸性溶液で洗浄し、
この酸性溶液で洗浄した試料土にアルカリ溶出液を加えて前記試料土からシリカを溶出させ、この溶出量から前記シリカ含有量を算出する、
ことを特徴とする地盤のシリカ含有量算出方法。
【請求項2】
前記地盤に水ガラス系溶液型注入材が注入されており、
前記溶出量から前記注入材由来のシリカ含有量を算出する、
請求項1に記載の地盤のシリカ含有量算出方法。
【請求項3】
前記溶出を100~130℃の液体温度条件下で行う、
請求項1又は請求項2に記載の地盤のシリカ含有量算出方法。
【請求項4】
前記溶出を0.001~0.2MPa(ゲージ圧)の圧力条件で行う、
請求項1又は請求項2に記載の地盤のシリカ含有量算出方法。
【請求項5】
前記溶出後におけるシリカ含有液と試料土との分離を遠心分離で行う、
請求項1又は請求項2に記載の地盤のシリカ含有量算出方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の方法に基づいてシリカ含有量を算出し、この算出値に基づいて前記地盤の強度を推定する、
ことを特徴とする地盤の強度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤のシリカ含有量算出方法及び地盤の強度推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液注入材を注入した地盤の強度を推定する方法としては、従来、コア採取によるのが一般的であった。しかしながら、コア採取は、非経済的であり、また、液状化防止目的の場合は、設計強度が低く、コア採取が不可能である場合もある。そこで、近年では、注入した薬液の主成分であるシリカを固結土から溶出させ、溶出値に基づいて固結土の強度を推定する方法が提案されている。しかしながら、この方法によると、地盤に元来含まれる非晶質のシリカも溶出値に含まれてしまう。地盤に元来含まれる非晶質のシリカは、薬液中のシリカとは必ずしも同じ性質のものとは限らず、非晶質のシリカが溶出値に含まれると、強度の推定に影響を与えてしまう。
【0003】
そこで、薬液注入前後の地盤に含まれるシリカの含有量を対比することで、推定の精度を高める提案がなされている(特許文献1参照)。しかしながら、地盤の強度推定は日に日に重要さを増しており、現在でもより精度の高い推定方法が模索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、地盤のシリカ含有量を高精度で算出することができる方法、及びこの算出方法を利用した地盤の強度推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、地盤の試料土を酸性溶液で洗浄し、この酸性溶液で洗浄した試料土にアルカリ溶出液を加えて試料土からシリカを溶出させ、この溶出量からシリカ含有量を算出することで解決することができる。また、この方法に基づいてシリカ含有量を算出し、この算出値に基づいて地盤の強度を推定することで解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、地盤のシリカ含有量を高精度で算出することができる方法、及びこの算出方法を利用した地盤の強度推定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】未改良地盤(試料土)のAl含有量及びSiO
2含有量の相関関係を示す図である。
【
図2】未改良地盤(試料土)のSiO
2含有量について、推定値及び実測値の対比を示すである。
【
図3】各種地盤(試料土)のSiO
2含有量の増量(のばらつき)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0010】
本形態の方法は、アルカリ溶出性アルミニウムの他、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのシリカ反応性のカルシウム、マグネシウム等を含む地盤を対象とすることができる。当該地盤は、水ガラス系溶液型注入材(薬液)が注入されたものであっても、水ガラス系溶液型注入材が注入されていないもの、例えば、水ガラス系溶液型注入材が注入される前のものであってもよい。地盤の強度を推定するにあたっては、水ガラス系溶液型注入材が注入される前後両方の地盤に適用するとよい。なお、地盤の強度を推定するにあたっては、例えば、事前に複数濃度の薬液で当該地盤の試料(試料土)にて混合試験を実施し、地盤強度-シリカ含有量の相関関係式を導き、この相関関係式を用いて薬液注入後のシリカ含有量から地盤強度を推定すること等ができる。
【0011】
なお、後述する試験例から明らかなように、本形態の方法はアルカリ溶出アルミニウム含有量が3mg/(g-乾燥試料土)以上の地盤で特に有用な方法である。しかしながら、アルミニウム含有量が3mg/(g-乾燥試料土)未満の地盤であっても本形態の方法を利用することができる。
【0012】
本形態において対象となる酸性シリカゾル系薬液注入材等の水ガラス系溶液型注入材としては、例えば、硫酸と水ガラスを混合してなる薬液注入材(例えば、特開昭61-159485号公報参照。)、硫酸と水ガラス及びコロイダルシリカが配合された主材と希釈水ガラスとを混合してなる特殊シリカ系薬液注入材(例えば、特許第5814010号公報参照。)等を例示することができる。
【0013】
地盤の強度を推定する場合においては、まず、未改良地盤及び薬液改良地盤のアルカリ溶解性シリカ含有量を測定し、この差分から地盤に含まれる注入材由来のシリカ含有量を算出し、この算出値に基づいて地盤の強度を推定する。また、シリカ含有量を算出するにあたっては、地盤の試料土に所定量のシリカを含有するアルカリ溶出液を添加して試料土(地盤)からシリカを溶出させ、溶出前後の溶出液のシリカ濃度差からシリカ含有量を算出すると好適である。
【0014】
アルカリ溶出液としては、例えば、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化リチウム溶液等を使用することができる。ただし、シリカの溶解度、分析への妨害等の観点から、アルカリ溶出液としては、水酸化カリウム溶液を使用するのが好ましい。
【0015】
この点、地盤(試料土)中に溶出性アルミニウムが存在すると、アルカリ溶出液でシリカとともに溶出性アルミニウムが溶出する。そして、この溶出性アルミニウムがシリカと反応して不溶性のケイ酸アルミニウムとなり、シリカ含有量の算出が不正確なものとなる。しかしながら、アルカリ溶出液に所定量のシリカが存在すると、地盤(試料土)中の溶出性アルミニウムがアルカリ溶出液中のシリカと反応して、不溶性のケイ酸アルミニウムとなり、地盤成分中のシリカの溶出を阻害する成分が不活化される。したがって、シリカ含有量の算出に影響を与えるおそれがなく、シリカ含有量を正確に算出することができる。
【0016】
以上の観点から、アルカリ溶出液と共に加えるシリカの量は、地盤(試料土)中のアルミニウム対応量以上であるのが好ましい。具体的には、アルカリ溶出液により溶出される溶出性アルミニウム対応量以上であるのが好ましい。好ましくは、予測溶出性アルミニウム量に対して2倍以上とする。
【0017】
また、シリカ含有量を算出するにあたっては、地盤の試料土を酸性溶液で洗浄し、この酸性溶液で洗浄した試料土にアルカリ溶出液を加えてシリカを溶出させるのが好ましい。この点、地盤(試料土)中の溶出性アルミニウムは酸に溶解するが、シリカは酸に不溶であり地盤(試料土)中に残留する。したがって、予め地盤(試料土)を酸性溶液で洗浄しておけば前述した不溶性のケイ酸アルミニウムの問題が抑制され、より正確にシリカの含有量を算出することができるようになる。
【0018】
ちなみに、地盤中にカルシウムやマグネシウムが存在すると、シリカが反応して不溶性のケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムを形成する可能性がある。しかしながら、以上の酸洗浄を行うと、アルミニウムとともにカルシウムやマグネシウムも溶解するため好適である。
【0019】
地盤(試料土)の洗浄に使用する酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸等を使用することができる。ただし、塩酸、硫酸、硝酸等の強酸を使用するのが好ましい。また、阻害成分がカルシウム、マグネシウムである場合には、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウムなどは不溶性であるため、溶解性塩を生成する塩酸、硝酸等が好ましい。
【0020】
以上の方法を利用して注入材に由来するシリカの含有量を算出するにあたっては、注入材を注入する前における地盤(試料土)中のシリカ含有量と、注入材を注入した後における地盤(試料土)中のシリカ含有量とを対比するとよい。この点、前述したようにアルカリ溶出液を使用すると地盤に元来含まれている非晶質のシリカも溶出する。したがって、注入材由来のシリカ含有量を算出するにおいては、算出の精度が低下することになるが、注入前後におけるシリカ含有量を対比するものとすれば、算出精度の低下を抑えることができる。
【0021】
ところで、改良前の地盤は、例えば、同一層においてはシリカの含有量がほぼ一定であるが、異なる層間においてはシリカの含有量も異なることが多々ある。したがって、異なる層が混在する地盤においてはシリカ含有量にばらつきが存在しており、層間の相違を無視して注入材由来のシリカ含有量を算出しようとすると算出誤差が生じる。また、層等に応じて注入材を注入する前のシリカ含有量を算出するものとすると、極めて煩瑣な工法となる。そこで、以下の方法を推奨する。
【0022】
まず、注入材を注入する前の地盤についてアルミニウム含有量及びシリカ含有量の相関関係を求めておく。そして、この相関関係と、注入材が注入された地盤(試料土)を酸洗浄した際に排出された洗浄排液のアルミニウム含有量とから注入材を注入する前の地盤のシリカ含有量を推定する。そして、この推定値と、注入材を注入した後における地盤のシリカ含有量とを対比することで注入材由来のシリカ含有量を算出する。
【0023】
この点、地盤(試料土)を酸性溶液で洗浄すると、火山灰等に含まれるアロフェン質のケイ酸アルミニウムが酸によって分解され、アルミニウムは液相に溶解するが、分解により生じたケイ酸は酸に不溶であり、固相に残留する。この性質からすれば、例えば、火山灰性の地盤等のアルカリ溶出性アルミニウムを含む地盤においては、予め改良前の地盤のアルミニウム含有量とアルカリ溶出シリカ含有量との相関を取得しておけば、注入後の地盤のアルミニウム含有量に基づいて注入前の地盤のシリカ含有量を推定することができるのである。
【0024】
以上について簡単な例を挙げて説明すると、例えば、以下のような割合でシリカ及びアルミニウムを含む未改良地盤が存在したとする。
A層:SiO2=20、Al=10
B層:SiO2=40、Al=20
C層:SiO2=30、Al=15
この結果から、「SiO2=2×Al」との相関関係が導かれる。そして、改良後の試料土についてシリカ及びアルミニウムの含有量を測定した結果(SiO2,Al)=(50,5)となったとすると、上記の相関関係から改良前地盤のシリカ含有量は10と推定することができる。結果、改良によるシリカ増量分は、50-10=40と算出することができる。
【0025】
また、以上の溶出アルミニウムを利用した注入前地盤のシリカ含有量の推定方法は、同じく酸に溶解するカルシウムやマグネシウムを利用して行うことができる。ただし、自然地盤においてアモルファスケイ酸塩としてカルシウム、マグネシウムが存在することはまれであるから、測定項目増加による操作の煩雑さを考慮すると、アルミニウムで行うことが望ましい。
【0026】
ところで、アルカリ溶出液によってシリカを溶出するにあたっては、加温等して、好ましくは100~130℃の液体温度条件下で、より好ましくは110~130℃の液体温度条件下で、特に好ましくは115~125℃の液体温度条件下で行うと好適である。シリカの溶出を100℃以上の条件下で行えば、固結した微粒子細孔内の注入材等の溶出され難い注入材までも溶出することができるようになり、算出の精度が一層向上する。
【0027】
また、アルカリ溶出液によってシリカを溶出するにあたっては、加圧下で、好ましくは0.001~0.2MPaの圧力条件下で、より好ましくは0.1~0.2MPaの圧力条件下で行うと好適である。シリカの溶出を水蒸気飽和-加圧密閉条件で行えば溶出液の蒸発を防止することができ、溶出液の濃度変化による溶出効果の変化を防止することができる。
【0028】
さらに、以上の場合、水蒸気置換内加熱によるものとすれば、アルカリ溶出液が大気中の二酸化炭素を吸収し溶出効果が低減するのを防止することができる。
【0029】
以上のようにしてシリカを溶出したらシリカ溶出液と試料土とを分離することになるが、この分離は濾過によるよりも遠心分離による方が好ましい。シリカ溶出液には不純物が含まれ、また、コロイド状のシリカも存在するところ、ろ紙等の濾過によるとコロイド状のシリカも排除されてしまうためである。
【0030】
なお、溶出液中のシリカの定量は、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)、原子吸光光度法、モリブデン青吸光光度法等によることができる。
【0031】
次に、以上の方法に基づいて算出したシリカ含有量を利用し、もって地盤の強度を推定する。この方法としては、例えば、特開2007-051497号公報(特許第4486564号公報)等を参考にすることができる。
【0032】
ただし、同公報による方法は、事前配合において1濃度の使用薬液で配合試験を行い、この試験において地盤強度及びシリカ含有量を測定し、事後試料のシリカ含有量と事前試験のシリカ含有量との比から強度推定を行うものである(填充率と記載されているが、単純比例。)。しかしながら、事前配合試験においては、シリカ濃度が異なる複数配合(例えば、7%、9%等。)の薬液を使用して改良供試体を作製し、改良供試体の一軸圧縮強さと、シリカ増量分(改良供試体及び未改良土のシリカ含有量の差)の相関をとると好適である。この方法によると、複数プロットが存在することになるので、原点を相関線が通らない場合や相関線が曲線になる場合もあり、地盤成分がシリカの固結に影響がある場合等を理解することができる。この点については、例えば、一般財団法人 沿岸技術研究センターの「浸透固化処理工法技術マニュアル(改定版)令和2年7月発行」等を参考にすることができる。
【実施例0033】
次に、本発明の実施例について、説明する。
以下に示す各試験方法に従ってシリカ及びアルミニウムの溶出試験を行った。
【0034】
(試験方法1)
乾燥試料土20gに10%濃度のアルカリ溶出液(KOH)100mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。その後、遠心分離機による固液分離を行い(3000G、15分)、ICP-OESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0035】
(試験方法2)
乾燥試料土20gに10%濃度のアルカリ溶出液(SiO2(5g/L)を添加したKOH)100mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。その後、遠心分離機による固液分離を2回行い(1回目:3000G、15分、2回目:7000G、20分)、ICP-AESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0036】
(試験方法3)
乾燥試料土20gに20%濃度のアルカリ溶出液(SiO2(5g/L)を添加したKOH)100mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。その後、一晩静置してから遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、ICP-AESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0037】
(試験方法4)
まず、乾燥試料土20gに(1+3)硫酸80mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、15分)して静置した。次に、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液60mlを排出した。次に、純水60mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、その後、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液60mlを排出した。次に、再度純水60mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、その後、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液60mlを排出した。次に、10%濃度のアルカリ溶出液(KOH)80mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。そして、遠心分離機による固液分離を行い(3000G、15分)、ICP-AESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0038】
(試験方法5)
まず、乾燥試料土20gに(1+1)硫酸40ml及び純水60mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、15分)して静置した。次に、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液80mlを排出した。次に、純水80mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、その後、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液85mlを排出した。そして、10%濃度のアルカリ溶出液(KOH)85mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。その後、遠心分離機による固液分離を行い(3000G、15分)、ICP-AESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0039】
(試験結果)
以上の各試験方法によるシリカ溶出量測定値を表1に、Alアルカリ溶出量測定値を表2に示した。なお、表中において試料土は、6号ケイ砂(未改良):6号ケイ砂のみ、6号ケイ砂(9%薬液改良):6号ケイ砂にシリカ濃度9%酸性シリカゾル薬液を混合、6号ケイ砂+Al(未改良):6号ケイ砂に水酸化アルミニウムを添加、6号ケイ砂+Al(9%薬液改良):6号ケイ砂に水酸化アルミニウムを添加しシリカ濃度9%酸性シリカゾル薬液を混合、6号ケイ砂+ローム(未改良):6号ケイ砂に乾燥赤土(ローム土)を添加、6号ケイ砂+ローム(9%薬液改良):6号ケイ砂に乾燥赤土(ローム土)を添加しシリカ濃度9%酸性シリカゾル薬液を混合と分類してある。また、試験方法2,3において、溶出液の実測SiO2濃度は、5100mg/Lであった。
【0040】
【0041】
【0042】
(考察)
表1からはアルミニウムが含まれる地盤の場合、従来法よりも今回提案の方法の方がシリカ増量を高く測定できているため、より正確に測定できていることが分かる。
【0043】
次に、以下に示す各試験方法に従って注入材を注入した後の地盤から注入材を注入する前の地盤のシリカ含有量を算出することが可能か否かの検証結果を説明する。
【0044】
(試験方法6)
まず、乾燥試料土20g及び注入材7.5mlの混合物を7日間静置した後、110℃、24時間乾燥し、(1+1)塩酸100mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、15分)して静置した。次に、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液50mlを排出した。この排出液については、更に遠心分離機による固液分離を行い(3000G、15分)、ICP-OESを使用して上澄みアルミニウム(Al)を定量した。一方、上記上澄み液50mlを排出した後の固相には、純水50mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、その後、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液50mlを排出した。その後、再度純水50mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液50mlを排出した。そして、再度純水50mlを加え、vortexを使用して1分間攪拌し、遠心分離機による固液分離を行い(7000G、15分)、上澄み液50mlを排出した。その後、20%濃度のアルカリ溶出液(KOH)50mlを加え、高圧滅菌器を使用(120℃、0.1MPa、30分)してシリカの溶出を行った。そして、遠心分離機による固液分離を行い(3000G、15分)、ICP-AESを使用して上澄みSiO2を定量した。
【0045】
(試験結果)
以上の各試験方法による試験結果を表3に示した。なお、シリカ含有量試験からの一軸圧縮強さ(qu)の推定は、シリカ増量(改良土のシリカ含有量-未改良土のシリカ含有量)で評価を行った。
【0046】
【0047】
(考察)
異なる層が混在する地盤(試料土A~I)では、未改良土のシリカ含有量にばらつきがある。既存法を用いてシリカ増量で評価する場合、未改良土のシリカ含有量は2.8~14.8mg/gであり、1つの未改良シリカ含有量を使用して強度推定を実施すると、強度に大きなばらつきが発生することが分かる。
【0048】
酸洗浄法では、火山灰に含まれるアロフェン質のケイ酸アルミニウムが酸により分解され、アルミニウムは液相に溶解するが、分解により生じたケイ酸は酸には不溶性であり、固相に残留する。この性質から火山灰性の地盤においては、あらかじめ未改良土の酸洗浄液のアルミニウム含有量とアルカリ溶出シリカ含有量の相関関係(
図1)を取得しておけば、改良土における酸洗浄液のアルミニウム含有量から未改良時点でのシリカ含有量を推定できることが分かる。
【0049】
また、シリカ増量(改良土のシリカ含有量(実測値)-未改良のシリカ含有量(推定値)は、既存法と比較し、理論値(28mg/g)に近く(
図3)、強度も理論値(417kN/m
2)に近い値を示している。