(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122332
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】インクジェットインク組成物および記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20240902BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C09D11/328
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029815
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕未
(72)【発明者】
【氏名】小松 英彦
(72)【発明者】
【氏名】黄木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岡村 久史
【テーマコード(参考)】
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB53
4J039BC09
4J039BC50
4J039BE02
4J039CA03
4J039EA41
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクジェット法による吐出安定性に優れ、インクジェットヘッドにおける目詰まり回復性にも優れたインクジェットインク組成物を提供すること、また、インクジェットインク組成物を優れた安定性で吐出することができ、また、インクジェットヘッドにおける目詰まりが生じた場合にも好適に回復させることができ、所望のパターンで記録部が形成された記録物を安定的に製造することができる記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェットインク組成物は、染料と、有機溶剤と、水とを含有する。そして、前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する、インクジェットインク組成物。
【化1】
【請求項2】
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和が、0.5質量%以上15.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下である、請求項1または2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和をX1[質量%]、前記インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量をX2[質量%]としたとき、0.001≦X2/X1≦0.80の関係を満たす、請求項1または2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤として、さらに、炭素数が3以上6以下のアルカンジオールおよび下記式(2)で表されるグリコールエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1または2に記載のインクジェットインク組成物。
R1-O-(CH2-CH2-O)n-R2 ・・・(2)
(式(2)中、R1は、Hまたは炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、nは2または3である。)
【請求項6】
前記染料が、水溶性染料である、請求項1または2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記水溶性染料が、酸性染料、直接染料および反応染料よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記インクジェットインク組成物中における前記水溶性染料の含有量が、5.0質量%以上20.0質量%以下である、請求項6に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
染料と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、炭素数が3以上6以下のアルカンジオールおよび下記式(2)で表されるグリコールエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種と、を含有し、
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和が、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、
前記インクジェットインク組成物中における下記式(1)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下であり、
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和をX1[質量%]、前記インクジェットインク組成物中における下記式(1)で表される化合物の含有量をX2[質量%]としたとき、0.001≦X2/X1≦0.80の関係を満たし、
前記染料が、酸性染料、直接染料および反応染料よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性染料であり、
前記インクジェットインク組成物中における前記水溶性染料の含有量が、5.0質量%以上20.0質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【化2】
R
1-O-(CH
2-CH
2-O)
n-R
2 ・・・(2)
(式(2)中、R
1は、Hまたは炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、R
2は、炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、nは2または3である。)
【請求項10】
請求項1または2に記載のインクジェットインク組成物をインクジェット法により吐出し記録媒体に付着させる工程を有する、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク組成物および記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、記録媒体に対する画像の記録だけでなく、布帛の捺染にも適用が試みられ、各種のインクジェット捺染用のインク組成物が検討されている。捺染用のインクジェットインク組成物は、所望の色の画像を得るために色材を含有し、色材として、染料等が用いられる。また、捺染用のインクジェットインク組成物においても、通常のインクジェットインク組成物と同等以上の性能が求められている。
【0003】
インクジェットインク組成物において、有機溶剤を溶媒または分散媒として用いることが一般的に行われている。インクジェットインク組成物では、所望する性能を得るために有機溶剤の選択やその配合量について、幅広い検討が行われる。例えば、特許文献1には、色材を溶解または分散させる有機溶剤として、3-キヌクリジノールを用い、ヒドロキシエチルピロリドンを併用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクのように、有機溶剤を用いるインクでは、色材の析出や固化等が生じるような有機溶剤の組合せや配合も存在し、場合によっては吐出安定性の低下や目詰まり回復不良が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
【0007】
本発明の適用例に係るインクジェットインク組成物は、染料と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する。
【化1】
【0008】
本発明の他の適用例に係るインクジェットインク組成物は、染料と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインク組成物であって、
前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、炭素数が3以上6以下のアルカンジオールおよび下記式(2)で表されるグリコールエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種と、を含有し、
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和が、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、
前記インクジェットインク組成物中における下記式(1)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下であり、
前記インクジェットインク組成物中における前記1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび前記2-ピロリドンの含有量の和をX1[質量%]、前記インクジェットインク組成物中における下記式(1)で表される化合物の含有量X2[質量%]としたとき、0.001≦X2/X1≦0.80の関係を満たし、
前記染料が、酸性染料、直接染料および反応染料よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性染料であり、
前記インクジェットインク組成物中における前記水溶性染料の含有量が、5.0質量%以上20.0質量%以下である。
【化2】
R
1-O-(CH
2-CH
2-O)
n-R
2 ・・・(2)
(式(2)中、R
1は、Hまたは炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、R
2は、炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、nは2または3である。)
【0009】
本発明の適用例に係る記録方法は、本発明適用例に係るインクジェットインク組成物をインクジェット法により吐出し記録媒体に付着させる工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物についての、組成および評価結果をまとめて示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]インクジェットインク組成物
まず、本発明のインクジェットインク組成物について説明する。
【0012】
本発明のインクジェットインク組成物は、染料と、有機溶剤と、水とを含有する。そして、前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、を含有する。
【0013】
【0014】
これにより、インクジェット法による吐出安定性に優れ、インクジェットヘッドにおける目詰まり回復性にも優れたインクジェットインク組成物を提供することができる。
【0015】
[1-1]染料
本発明のインクジェットインク組成物は、染料を含んでいる。
【0016】
本発明のインクジェットインク組成物が含む染料は、特に限定されず、例えば、水溶性染料、分散染料等が挙げられるが、水溶性染料であるのが好ましい。
【0017】
これにより、例えば、本発明のインクジェットインク組成物を、記録媒体として布帛に適用した場合における、記録部の発色性等をより優れたものとすることができる。
【0018】
水溶性染料としては、各種の水溶性の染料を用いることができるが、酸性染料、直接染料および反応染料よりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0019】
これにより、例えば、本発明のインクジェットインク組成物を、記録媒体として布帛に適用した場合における、記録部の発色性等をより優れたものとすることができる。
【0020】
酸性染料としては、例えば、C.I.Acid Red 1、6、8、9、13、14、18、19、24、26、27、28、32、35、37、42、51、52、57、62、75、77、80、82、83、85、87、88、89、92、94、95、97、106、111、114、115、117、118、119、127、128、129、130、131、133、134、138、143、145、149、151、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、199、209、211、215、216、217、219、249、252、254、256、257、260、261、262、263、265、266、274、276、282、283、289、299、301、303、305、315、318、320、321、322、336、337、361、396、397;C.I.Acid Violet 5、7、11、15、31、34、35、41、43、47、48、49、51、54、66、68、75、78、90、97、103、106、126;C.I.Acid Yellow 1、3、7、11、17、19、23、25、29、36、38、39、40、42、44、49、50、59、61、64、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、112、114、116、118、119、127、128、131、135、141、142、143、151、159、161、162、163、164、165、169、174、184、190、195、196、197、199、207、218、219、222、227、246;C.I.Acid Blue 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、49、54、59、60、62、72、74、76、78、80、82、83、87、90、92、93、100、102、103、104、106、112、113、114、117、120、126、127、127:1、128、129、130、131、133、138、140、142、143、151、154、156、158、161、166、167、168、170、171、175、181、182、183、184、185、187、192、193、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、232、239、247、249、258、260、264、271、277、277:1、278、279、280、284、288、290、296、298、300、317、324、326、333、335、338、342、350;C.I.Acid Black 1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、51、52、52:1、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、122、131、132、139、140、155、156、157、158、159、172、191、194、234;C.I.Acid Orange 1、7、8、10、19、20、24、28、33、41、43、45、51、56、63、64、65、67、74、80、82、85、86、87、88、94、95、122、123、124;C.I.Acid Green 3、7、9、12、16、19、20、25、27、28、35、36、40、41、43、44、48、56、57、60、61、65、73、75、76、78、79;C.I.Acid Brown 2、4、13、14、19、20、27、28、30、31、39、44、45、46、48、53、100、101、103、104、106、160、161、165、188、224、225、226、231、232、236、247、256、257、266、268、276、277、282、289、294、295、296、297、298、299、300、301、302等が挙げられる。
【0021】
直接染料としては、例えば、C.I.Direct Red 2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247;C.I.Direct Violet 7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101;C.I.Direct Yellow 8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163;C.I.Direct Blue 1、10、15、22、25、41、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、120、151、156、158、159、160、153、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、226、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291;C.I.Direct Black 9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、195、199等が挙げられる。
【0022】
反応染料としては、例えば、C.I.Reactive Yellow 1、2、3、5、11、13、14、15、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、29、35、37、40、41、42、47、51、55、65、67、81、95、116、142、161;C.I.Reactive Red 1、3、3:1、4、13、14、17、19、21、22、23、24、24:1、25、26、29、31、32、35、37、40、41、43、44、45、46、49、55、60、66、74、79、96、97、108、141、180、218、226、245;C.I.Reactive Violet 1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34;C.I.Reactive Blue 1、2、3、5、7、8、10、13、14、15、17、18、19、21、23、25、26、27、28、29、32、35、38、41、49、63、72、75、80、95、190;C.I.Reactive Orange 1、2、4、5、7、12、13、14、16、20、29、33、35、38、64、67、71、72、72:1、78、82、84、86、87、91、99、99:1、107、113、122、124、125;C.I.Reactive Black 1、3、4、5、7、8、11、12、14、17、21、23、26、31、32、34、39等が挙げられる。
【0023】
分散染料としては、例えば、C.I.Disperse Red 60、82、86、86:1、92、152、154、167:1、191、279、C.I.Disperse Yellow 64、71、86、114、153、163、233、245、C.I.Disperse Blue 27、60、73、77、77:1、87、165、165:1、257、367、C.I.Disperse Violet 26、33、36、57、C.I.Disperse Orange 30、41、61、80等が挙げられる。
【0024】
分散染料を用いる場合、例えば、インクジェットインク組成物中での分散安定性を高める目的で、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、酸化またはスルホン化して、分散染料の表面を修飾してもよい。また、分散剤を用いることにより、分散染料の分散性を向上させてもよい。分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂およびその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂およびその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物等が挙げられる。これらは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂およびその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体およびその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体およびその塩;ならびに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体およびその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。
【0025】
スチレン-アクリル系樹脂の分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0026】
アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2(東亜合成社製)等が挙げられる。
【0027】
ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0028】
インクジェットインク組成物が前記染料として水溶性染料を含む場合、インクジェットインク組成物中における水溶性染料の含有率は、特に限定されないが、5.0質量%以上20.0質量%以下であるのが好ましく、5.5質量%以上18.0質量%以下であるのがより好ましく、6.0質量%以上15.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
これにより、インクジェットインク組成物を用いて形成される記録部において、より高い色濃度を確保しやすくなる。また、従来においては、このようにインクジェットインク組成物中における水溶性染料の含有率が高いものであると、水溶性樹脂の溶解性を確保することが困難となり、インクジェット法による吐出安定性や目詰まり回復性が劣ったものになりやすかったが、本発明によれば、上記のようにインクジェットインク組成物中における水溶性染料の含有率が高いものであっても、水溶性樹脂の溶解性を十分に確保することができ、インクジェット法による吐出安定性や目詰まり回復性を優れたものとすることができる。すなわち、インクジェットインク組成物中における水溶性染料の含有率が上記の範囲内の値であると本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0030】
[1-2]水
本発明のインクジェットインク組成物は、水を含んでいる。
水は、例えば、インクジェットインク組成物中において、染料等の他の成分を溶解する溶媒や、分散させる分散媒として機能する成分である。
【0031】
また、インクジェットインク組成物が水を含むことにより、インクジェットインク組成物中において、例えば、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、2-ピロリドン、上記式(1)で表される化合物等を均一に含ませることができ、これらの機能をより効果的に発揮させることができる。
【0032】
本発明のインクジェットインク組成物中における水の含有率は、30.0質量%以上90.0質量%以下であるのが好ましく、40.0質量%以上85.0質量%以下であるのがより好ましく、45.0質量%以上80.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
これにより、インクジェットインク組成物中において、例えば、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、2-ピロリドン、上記式(1)で表される化合物等の成分をより均一に含ませることができ、また、インクジェットインク組成物の粘度をより確実に好適な値に調整することができ、インクジェット法による吐出安定性をより向上させることができる。
【0034】
[1-3]有機溶剤
本発明のインクジェットインク組成物は、有機溶剤を含んでいる。
特に、本発明のインクジェットインク組成物を構成する有機溶剤は、少なくとも、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(1)で表される化合物と、を含有するものである。以下の説明では、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンを総称して、「特定ピロリドン系化合物」ともいう。
【0035】
[1-3-1]特定ピロリドン系化合物
本発明のインクジェットインク組成物は、特定ピロリドン系化合物、すなわち、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる。
【0036】
特定ピロリドン系化合物は、親水性の高い化合物である。このような特定ピロリドン系化合物を含むことにより、インクジェットインク組成物における染料、特に、水溶性染料の溶解性を高めることができ、当該染料の析出や固化を生じにくくすることができる。これにより、インクジェットインク組成物を、吐出安定性や目詰まり回復性に優れたものとすることができる。このような効果は、インクジェットインク組成物における染料の濃度が高い場合に、より顕著に発揮される。
【0037】
本発明のインクジェットインク組成物は、特定ピロリドン系化合物として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンの両方を含んでいてもよいが、これらのうち一方のみを含んでいるのが好ましい。
【0038】
インクジェットインク組成物中における、特定ピロリドン系化合物の含有量、すなわち、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンの含有量の和は、0.5質量%以上15.0質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上12.0質量%以下であるのがより好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
これにより、インクジェットインク組成物における染料の溶解性をより優れたものとすることができ、当該染料の析出や固化をより生じにくくすることができ、インクジェットインク組成物の吐出安定性や目詰まり回復性をより優れたものとすることができる。
【0040】
[1-3-2]上記式(1)で表される化合物
上記式(1)で表される化合物は、本発明のインクジェットインク組成物に、有機溶剤の一成分として含有される。
【0041】
上述したように、特定ピロリドン系化合物は、染料の可溶化剤として優れた機能を有している。しかし、特定ピロリドン系化合物は、インクジェットインク組成物の粘度を上昇させやすい性質がある。インクジェットインク組成物の粘度が高まると、インクジェットヘッドから吐出する場合に、インク滴の重量が低下して吐出が不安定になる場合がある。本発明では、インクジェットインク組成物に上記式(1)で表される化合物を含有させることにより、インクジェットインク組成物の吐出性が改善されることを見出した。詳細な理由は不明だが、特定ピロリドン系化合物と上記式(1)で表される化合物とが混在することにより、特定ピロリドン系化合物の添加量を抑制しつつ、染料の可溶化性を好適に発現させることができると推察される。その結果、インクジェットインク組成物の粘度をインクジェットヘッドからの吐出に適切な値にしつつ、インクジェット組成物における染料の溶解性を維持し目詰まり回復性を良好とした上で、吐出安定性も優れたものとすることができると考えられる。また、後述するように上記式(1)で表される化合物の含有量が比較的少ない場合であっても、このような効果を得ることができる。
【0042】
ところで、染料として分散染料を用いる場合において、インクジェットインク組成物に界面活性剤や添加剤を比較的多く用いる場合、系の親水性が高くなると、界面活性剤や添加剤が析出しやすくなり、いわゆる油状分離を生じることがある。特定ピロリドン系化合物は、上述したように親水性が高いので、特定ピロリドン系化合物の含有量によっては、油状分離を生じる懸念があるが、本発明では、特定ピロリドン系化合物とともに、上記式(1)で表される化合物を含有させることにより、特定ピロリドン系化合物の親水性を緩和する効果が得られ、油状分離を好適に抑制することができる。このような効果は、上記式(1)で表される化合物の含有量が以下に述べるように比較的少ない場合であっても、得ることができる。
【0043】
インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量は、0.01質量%以上3.0質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以上1.5質量%以下であるのがより好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
これにより、油状分離等の問題の発生をより効果的に抑制しつつ、インクジェットインク組成物における染料の溶解性をより優れたものとすることができ、当該染料の析出や固化をより生じにくくすることができ、インクジェットインク組成物の吐出安定性や目詰まり回復性をより優れたものとすることができる。
【0045】
インクジェットインク組成物中における特定ピロリドン系化合物の含有量、すなわち、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンの含有量の和をX1[質量%]、当該インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量X2[質量%]としたとき、0.001≦X2/X1≦0.80の関係を満たすのが好ましく、0.005≦X2/X1≦0.75の関係を満たすのがより好ましく、0.010≦X2/X1≦0.67の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0046】
これにより、油状分離等の問題の発生をさらに効果的に抑制しつつ、インクジェットインク組成物における染料の溶解性をさらに優れたものとすることができ、当該染料の析出や固化をさらに生じにくくすることができ、インクジェットインク組成物の吐出安定性や目詰まり回復性をさらに優れたものとすることができる。
【0047】
[1-3-3]その他の有機溶剤成分
本発明のインクジェットインク組成物は、上述した特定ピロリドン系化合物、上記式(1)で表される化合物以外の有機溶剤成分を含んでいてもよい。以下、このような有機溶媒成分を「その他の有機溶剤成分」ともいう。
【0048】
その他の有機溶剤成分としては、例えば、アルキルポリオール、グリコールエーテル、特定ピロリドン系化合物および上記式(1)で表される化合物以外の環状アミド、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、ベタイン化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
特に、アルキルポリオールを含むことにより、インクジェットインク組成物の保湿性をさらに高め、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発をより効果的に抑制することができる。また、これにより、ノズルの目詰まりを生じやすい染料種を用いた場合でも、放置回復性や連続吐出安定性をより良好に維持することができる。
【0050】
アルキルポリオールとしては、例えば、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
インクジェットインク組成物がアルキルポリオールを含有するものである場合、インクジェットインク組成物中におけるアルキルポリオールの含有量は、3.0質量%以上40.0質量%以下であるのが好ましく、4.0質量%以上25.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0052】
これにより、特定ピロリドン系化合物および上記式(1)で表される化合物を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、アルキルポリオールを含むことによる効果がより顕著に発揮される。
【0053】
インクジェットインク組成物がアルキルポリオールを含有するものである場合、当該アルキルポリオールは、炭素数が3以上6以下のアルカンジオールを含むことがより好ましい。
【0054】
炭素数が3以上6以下のアルカンジオールとしては、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール等が挙げられる。
【0055】
インクジェットインク組成物が、炭素数3以上6以下のアルカンジオールを含む場合には、インクジェットインク組成物全体としての親水性のバランスをより優れたものとすることができ、より良好な吐出安定性、特に、連続吐出信頼性を得ることができる。また、染料の溶解性や分散性をより良好なものとすることができ、目詰まり回復性をより優れたものとすることができる。
【0056】
グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル等を挙げることができる。より具体的には、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
インクジェットインク組成物は、上記のグリコールエーテルの中でも、下記式(2)で表されるグリコールエーテルを含んでいるのが好ましい。
【0058】
R1-O-(CH2-CH2-O)n-R2 ・・・(2)
(式(2)中、R1は、Hまたは炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、R2は、炭素数が1以上4以下のアルキル基であり、nは2または3である。)
【0059】
上記式(2)で表されるグリコールエーテルとしては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
インクジェットインク組成物が、上記式(2)で表されるグリコールエーテルを含む場合には、インクジェットインク組成物全体としての親水性のバランスをより優れたものとすることができ、より良好な吐出安定性、特に、連続吐出信頼性を得ることができる。また、染料の溶解性や分散性をより良好なものとすることができ、目詰まり回復性をより優れたものとすることができる。
【0061】
インクジェットインク組成物がグリコールエーテルを含有するものである場合、インクジェットインク組成物中におけるグリコールエーテルの含有量は、0.5質量%以上15.0質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上12.0質量%以下であるのがより好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0062】
これにより、インクジェットインク組成物の粘度をより好適に調整することができ、インクジェットインク組成物の保湿効果によるインクジェットヘッドにおける目詰まりをより効果的に抑制することができる。
【0063】
特定ピロリドン系化合物および上記式(1)で表される化合物以外の環状アミドとしては、例えば、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン等のγ-ラクタム類、β-ラクタム類、δ-ラクタム類、ε-カプロラクタム等のε-ラクタム類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
[1-4]界面活性剤
本発明のインクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性、例えば、布帛等への浸透性を調整、向上させるために用いることができる。また、インクジェットインク組成物が界面活性剤を含むことにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。
【0065】
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。
【0066】
各種界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0067】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、504、61、AD01、CT111、CT121、CT131、CT136、DF110D、DF37、GA、MD-20、PSA-336、SE、SE-F、TG(商品名、Air Products and Chemicals Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、PD-005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、EXP.4123、EXP.4200、EXP.4300、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(商品名、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0068】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンとしては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(商品名、BYK社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(商品名、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0069】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることができる。フッ素系界面活性剤としては、例えば、BYK-340(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0070】
インクジェットインク組成物中における界面活性剤の含有率は、0.05質量%以上1.0質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.90質量%以下であるのがより好ましく、0.15質量%以上0.80質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0071】
[1-5]キレート剤
本発明のインクジェットインク組成物は、キレート剤を含んでいてもよい。
これにより、インクジェットインク組成物中の所定のイオンを好適に除去することができる。
【0072】
キレート化剤としては、例えば、EDTA、EDTA-2Na、EDTA-3Na、EDTA-4Na、EDTA-3K等のエチレンジアミン四酢酸やその塩類、DTPA、DTPA-2Na、DTPA-5Na等のジエチレントリアミン五酢酸やその塩類、NTA、NTA-2Na、NTA-3Na等のニトリロ三酢酸やその塩類、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸やその塩類、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸やその塩類、L-アスパラギン酸-N,N’-二酢酸やその塩類、L-グルタミン酸二酢酸やその塩類、N-(1-カルボキシラトメチル)イミノ二酢酸やその塩類、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸やその塩類等を挙げることができる。
【0073】
また、酢酸アナログ以外のキレート化剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸やその塩類、エチレンジアミンテトラメタリン酸やその塩類、エチレンジアミンピロリン酸やその塩類、エチレンジアミンメタリン酸やその塩類等が挙げられる。
【0074】
[1-6]pH調整剤
本発明のインクジェットインク組成物は、pH調整剤を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、例えば、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、モルホリノエタンスルホン酸、モルホリノプロパンスルホン酸、カルバモイルメチルイミノビス酢酸、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸、コラミン塩酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸等が挙げられ、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。
【0075】
[1-7]定着樹脂
本発明のインクジェットインク組成物は、定着樹脂を含んでいてもよい。
これにより、記録媒体に付着させたインクジェットインク組成物による画像の密着性等をさらに向上させることができる。
【0076】
定着樹脂は、いかなる形態でインクジェットインク組成物中に含まれていてもよいが、粒子として含まれているのが好ましい。
【0077】
定着樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。中でも、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオフレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0078】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。
【0079】
ウレタン系樹脂としては、市販品を用いてもよい。ウレタン系樹脂の市販品としては、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業社製)、タケラック WS-5100、WS-6021、W-6020、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0080】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系単量体を構成モノマーとして含む重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体等が挙げられる。前記共重合体としては、例えば、アクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂等が挙げられる。また、ビニル系単量体としては、例えば、スチレン等が挙げられる。
【0081】
アクリル系単量体としては、アクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、ジャパンコーティングレジン株式会社製)、モビニール952B、718A(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0082】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、後述するスチレン・アクリル系樹脂であってもよい。
【0083】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂としては、市販品を用いてもよい。スチレン・アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等が挙げられる。
【0084】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いてもよい。ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ社製)等が挙げられる。
【0085】
[1-8]その他の成分
本発明のインクジェットインク組成物は、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分を「その他の成分」ともいう。
【0086】
その他の成分としては、例えば、防腐剤;防かび剤;尿素類;糖類;防錆剤;防炎剤;各種分散剤;顔料;酸化防止剤;紫外線吸収剤;酸素吸収剤;溶解助剤;浸透剤等が挙げられる。
【0087】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンゾイソチアゾリン-3-オン、4-クロロ-3-メチルフェノール等が挙げられる。また、防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0088】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、分子内にイソチアゾリン環構造を有する化合物を好適に用いることができる。
【0089】
尿素類としては、例えば、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0090】
糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。
【0091】
本発明のインクジェットインク組成物中におけるその他の成分の含有率は、6.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましい。
なお、その他の成分の含有率の下限は、0質量%である。
【0092】
[1-9]その他
本発明のインクジェットインク組成物の25℃における表面張力は、特に限定されないが、20mN/m以上60mN/m以下であるのが好ましく、25mN/m以上50mN/m以下であるのがより好ましく、27mN/m以上40mN/m以下であるのがさらに好ましい。
【0093】
これにより、インクジェットヘッドのノズルの目詰まり等がより生じにくくなり、インクジェットインク組成物の吐出安定性がより向上する。また、ノズルの目詰まりを生じた場合でも、ノズルにキャップをすることによる回復性をより優れたものとすることができる。
【0094】
なお、表面張力としては、ウィルヘルミー法、もしくはリング法により測定した値を採用することができる。表面張力の測定は、表面張力計(例えば、協和界面科学社製、DY-300、DY-500、DY-700等)を用いることができる。
【0095】
本発明のインクジェットインク組成物の25℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であるのがより好ましい。
【0096】
これにより、インクジェットインク組成物のインクジェット法による吐出安定性がより優れたものとなる。
【0097】
なお、粘度は、振動式粘度計、回転式粘度計、細管式粘度計、落球式粘度計により測定して求めることができる。例えば、振動式粘度計としては、JIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
【0098】
本発明のインクジェットインク組成物は、インクジェット法による吐出に供されるものであればよく、インクジェット法としては、例えば、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式等のオンデマンド方式等が挙げられるが、本発明のインクジェットインク組成物は、特に、ピエゾ振動子を用いたインクジェットヘッドより吐出されるものであるのが好ましい。
【0099】
これにより、インクジェットヘッド内でのインクジェットインク組成物の構成成分の不本意な変性等をより効果的に防止し、インクジェット法による吐出安定性をより優れたものとすることができる。
【0100】
上述したように、本発明のインクジェットインク組成物は、染料と、有機溶剤と、水とを含有し、前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種と、上記式(1)で表される化合物と、を含有するものであればよいが、前記有機溶剤として、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンよりなる群から選択される少なくとも1種、および、上記式(1)で表される化合物に加えて、炭素数が3以上6以下のアルカンジオールおよび上記式(2)で表されるグリコールエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、インクジェットインク組成物中における1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンの含有量の和が、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上3.0質量%以下であり、インクジェットインク組成物中における1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンおよび2-ピロリドンの含有量の和をX1[質量%]、前記インクジェットインク組成物中における上記式(1)で表される化合物の含有量をX2[質量%]としたとき、0.001≦X2/X1≦0.80の関係を満たし、前記染料が、酸性染料、直接染料および反応染料よりなる群から選択される少なくとも1種の水溶性染料であり、インクジェットインク組成物中における水溶性染料の含有量が、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
これにより、前述したような各効果が相乗的に作用しあい、特に優れた効果が得られる。
【0101】
[3]記録方法
次に、本発明の記録方法について説明する。
【0102】
本発明の記録方法は、本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット法により吐出し、記録媒体に付着させる工程を有する。
【0103】
これにより、インクジェットインク組成物を優れた安定性で吐出することができ、またインクジェットヘッドにおける目詰まりが生じた場合にも好適に回復させることができ、所望のパターンで記録部が形成された記録物を安定的に製造することができる記録方法を提供することができる。
【0104】
特に、本実施形態の記録方法は、記録媒体に対し、本発明のインクジェットインク組成物をインクジェット方式により付与する吐出工程を有する。
【0105】
[3-1]吐出工程
吐出工程では、インクジェット法により本発明のインクジェットインク組成物を液滴として吐出し、記録媒体に、当該液滴を付着させる。これにより、所望の像を形成する。像の形成には、複数種のインクジェットインク組成物、例えば、複数種の本発明のインクジェットインク組成物を用いてもよい。
【0106】
インクジェットインク組成物を吐出するインクジェット法は、いずれの方式でもよく、例えば、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式等のオンデマンド方式等が挙げられる。
【0107】
記録媒体は、特に限定されないが、例えば、各種布帛、普通紙等の紙や、インクジェット用専用紙、コート紙等で呼称されるインク受容層が設けられた記録媒体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の各種プラスチックで構成されたプラスチックフィルム、金属、ガラス等が挙げられる。
【0108】
また、記録媒体に対して昇華転写を行うための転写紙についてもインクジェット捺染記録方法の記録媒体とし得る。
【0109】
布帛は、特に限定されず、布帛を構成する素材としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維等が挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよいし、混織等を施したものでもよい。
【0110】
本発明の記録方法においては、本発明のインクジェットインク組成物のみでなく、他のインク組成物を組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明の記録方法においては、本発明のインクジェットインク組成物とともに、顔料を含むインクを用いてもよい。
【0111】
[4]記録物
本発明に係る記録物は、前述した本発明のインクジェットインク組成物を用いて製造されたものであり、前述した記録方法を用いて製造することができる。
【0112】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0113】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[5]インクジェットインク組成物の調製
【0114】
(実施例1)
図1に示す組成となるように、各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合、攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、インクジェットインク組成物を得た。
【0115】
(実施例2~11)
インクジェットインク組成物の調製に用いる成分の種類、各成分の配合比率を変更し、
図1に示す組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0116】
(比較例1)
インクジェットインク組成物の調製に用いる成分の種類、各成分の配合比率を変更し、
図1に示す組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0117】
(比較例2)
Pigment Red 122と、タケラック W-6020(商品名、三井化学ポリウレタン社製)と、トリイソプロパノールアミンと、純水と、を所定の割合で混合し、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行い、分散原液を得た。次に、得られた分散原液を孔径約8μmのメンブレンフィルターで濾過して粗大粒子を除き、純水で顔料濃度10質量%になるように希釈して顔料分散液を調製した。次に、
図1に記載の材料のうち、Pigment Red 122、タケラック W-6020、トリイソプロパノールアミンを除く成分を容器に入れ、攪拌・混合した。これに上記の顔料分散液を所定の割合で加え、さらに、濃度調整のための純水を加えて2時間攪拌し、孔径約5μmのメンブレンフィルターにて濾過することで、インクジェットインク組成物を得た。
【0118】
(比較例3)
インクジェットインク組成物の調製に用いる成分の種類、各成分の配合比率を変更し、
図1に示す組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクジェットインク組成物を調製した。
【0119】
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物の組成を
図1にまとめて示す。なお、
図1中、各成分の含有量の単位は、質量%であり、C.I.Reactive Yellow 95を「RY95」、C.I.Reactive Red 254を「RR254」、C.I.Acid Yellow 79を「AY79」、C.I.Direct Blue 87を「DB87」、C.I.Pigment Red 122を「PR122」、2-ピロリドンを「2-Py」、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンを「HEP」、上記式(1)で表される化合物を「化合物(1)」、グリセリンを「Gly」、ジエチレングリコールを「DEG」、プロピレングリコールを「PG」、トリエチレングリコールを「TEG」、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを「TEGMBE」、タケラック W-6020(商品名、三井化学ポリウレタン社製)を「W6020」、トリイソプロパノールアミンを「TIPA」、トリエタノールアミンを「TEA」、アジピン酸を「AA」、オルフィンPD-002W(商品名、日信化学工業社製)を「PD002W」、オルフィンE1010(商品名、日信化学工業社製)を「E1010」、エチレンジアミン四酢酸を「EDTA」、Proxel XL2(商品名、Arxada社製)を「XL2」と示した。また、前記各実施例のインクジェットインク組成物は、いずれも、25℃における表面張力が30mN/m以上40mN/m以下の範囲内の値であり、25℃における粘度が3mPa・s以上8mPa・s以下の範囲内の値であった。なお、表面張力は、表面張力計(協和界面科学社製、DY-300)を用いてウィルヘルミー法により測定し、粘度は、振動式粘度計(セニコック社製、VM-100)を用いたJIS Z8809に準拠した測定した。
【0120】
[6]評価
[6-1]目詰まり評価
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物を、それぞれ、インクジェットプリンターEW-M770T(商品名、セイコーエプソン)に充填し、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりのないことを確認し、ヘッドをホームポジションに戻した状態にした。この状態で、40℃/20%RHの環境下に2週間放置した。放置後、ノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察し、以下の基準に従い評価した。
【0121】
A:クリーニング1回で全ノズルからインクが正常に吐出した。
B:クリーニング2回以上5回以下の範囲で全ノズルからインクが正常に吐出した。
C:クリーニング6回以上10回以下の範囲で全ノズルからインクが正常に吐出した。
D:クリーニングを11回以上実施しても全ノズルからインクは正常に吐出されなかった。
【0122】
[6-2]連続吐出評価
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物を、それぞれ、インクジェットプリンターEW-M770T(商品名、セイコーエプソン)に充填し、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりのないことを確認した。その後、引き続き、25℃/50%RHの環境下で、10時間連続吐出し、以下の基準に従い評価した。なお、クリーニングは2時間ごとに行った。
【0123】
A:吐出中に不吐出や吐出乱れを生じなかった。
B:吐出中に少々不吐出や吐出乱れ等が生じたが、吐出中に復帰した。
C:吐出中に少々不吐出や吐出乱れ等が生じ、吐出中には復帰しないが、クリーニングにて復帰した。
D:吐出中に不吐出や吐出乱れが生じ、吐出中に復帰せず、クリーニングによっても復帰しなかった。
【0124】
[6-3]低温放置評価
前記各実施例および各比較例のインクジェットインク組成物を、それぞれ、パックに封入し、-20℃の環境に4日間放置した。その後、室温まで戻し、10μm孔径のメンブレンフィルターに10mL通液した。通液後のメンブレンフィルターを観察し、以下の基準に従い評価した。
【0125】
A:凝集物が全く観察されなかった。
B:通液できたが、凝集物が観察された。
C:通液できず、凝集物が大量に観察された。
これらの結果を
図1にまとめて示す。
【0126】
図1から明らかなように、本発明では優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。