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特開2024-122333カメラ設置用器具及びステップ点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122333
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】カメラ設置用器具及びステップ点検方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240902BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B66B31/00 D
B66B29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029817
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆行
(72)【発明者】
【氏名】小平 法美
(72)【発明者】
【氏名】大西 友治
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA15
3F321EB07
3F321EC06
3F321HA04
(57)【要約】
【課題】カメラの設置作業を簡易に行えるとともに、ステップ全体を撮影可能なカメラ設置用器具を提供する。
【解決手段】カメラ設置用器具は、乗客コンベアの欄干又はハンドレールガイドに着脱可能に固定される固定部と、固定部に支持されるアーム部と、アーム部に取り付けられてカメラを固定可能なカメラ固定具と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動する複数のステップを有する乗客コンベアの前記ステップを撮影するカメラを設置するためのカメラ設置用器具であって、
前記乗客コンベアの欄干又はハンドレールガイドに着脱可能に固定される固定部と、
前記固定部に支持されるアーム部と、
前記アーム部に取り付けられて前記カメラを固定可能なカメラ固定具と、
を備えるカメラ設置用器具。
【請求項2】
前記カメラ固定具は、前記アーム部の長さ方向に移動可能な状態で前記アーム部に取り付けられる
請求項1に記載のカメラ設置用器具。
【請求項3】
前記固定部は、前記欄干又は前記ハンドレールガイドを把持する把持部と、前記把持部に連結されて前記アーム部を支持するアーム支持部と、を有し、
前記アーム部は、前記アーム部の長さ方向に移動可能な状態で前記アーム支持部に支持される
請求項1に記載のカメラ設置用器具。
【請求項4】
前記固定部は、前記欄干又は前記ハンドレールガイドを把持する把持部と、前記把持部に連結されて前記アーム部を支持するアーム支持部と、を有し、
前記アーム支持部は、前記把持部に回転可能に連結される
請求項1に記載のカメラ設置用器具。
【請求項5】
前記固定部は、前記アーム部の長さ方向の両端に設けられ、
前記アーム部は、前記アーム部の長さ方向に伸縮可能であり、
前記固定部及び前記アーム部は、前記乗客コンベアの両側に位置する前記欄干の間に突っ張る状態で固定可能である
請求項1に記載のカメラ設置用器具。
【請求項6】
循環移動する複数のステップを有する乗客コンベアに対して、前記乗客コンベアの欄干又はハンドレールガイドに着脱可能に固定される固定部と、前記固定部に支持されるアーム部と、前記アーム部に取り付けられたカメラ固定具と、を備えるカメラ設置用器具を取り付けるとともに、前記カメラ固定具にカメラを固定する工程と、
前記複数のステップを循環移動させて当該ステップを前記カメラで撮影する工程と、
前記カメラで撮影したステップの画像を基に、ステップの異常に関する情報を出力する工程と、
を含むステップ点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ設置用器具及びステップ点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータなどの乗客コンベアは、建築構造物に設置されるフレームと、このフレーム内に設けられて循環移動する複数のステップとを備えている。複数のステップは、無端状のステップチェーンによって連結され、ステップチェーンが回転駆動することによって循環移動する。
【0003】
乗客コンベアのステップには、様々な要因によって異常が発生することがある。そこで特許文献1には、複数のステップをカメラによって撮影し、これによって得られたステップの画像を基にステップ破損の有無を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-169679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、エスカレータの下部トラス内にカメラを設置しているため、カメラの設置作業が煩雑になる。また、下部トラス内が狭いエスカレータではカメラの設置位置からステップまでの距離が短くなり、ステップ全体を撮影することができない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、カメラの設置作業を簡易に行えるとともに、ステップ全体を撮影可能なカメラ設置用器具とこれを用いたステップ点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば、特許請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、循環移動する複数のステップを有する乗客コンベアのステップを撮影するカメラを設置するためのカメラ設置用器具であって、乗客コンベアの欄干又はハンドレールガイドに着脱可能に固定される固定部と、固定部に支持されるアーム部と、アーム部に取り付けられてカメラを固定可能なカメラ固定具と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カメラの設置作業を簡易に行えるとともに、ステップ全体を撮影可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る乗客コンベアの構成を示す概略側面図である。
図2】ステップの構成を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係るカメラ設置用器具の構成を示す斜視図である。
図4】カメラ設置用器具の固定部の一部を拡大した図(その1)である。
図5】カメラ設置用器具の固定部の一部を拡大した図(その2)である。
図6】第1実施形態に係るカメラ設置用器具が備えるカメラ固定具の斜視図である。
図7】第1実施形態に係るカメラ設置用器具が備えるカメラ固定具の上面図である。
図8】第1実施形態に係るステップ点検システムの構成を示すブロック図である。
図9】第1実施形態に係るカメラ設置用器具を用いたカメラ点検方法を説明するフローチャートである。
図10】第1実施形態に係るカメラ設置用器具を乗客コンベアに取り付けた状態を示す斜視図である。
図11】第1実施形態に係るカメラ設置用器具のカメラ位置調整機能を説明する図(その1)である。
図12】第1実施形態に係るカメラ設置用器具のカメラ位置調整機能を説明する図(その2)である。
図13】カメラによって撮影可能なステップの画像を示す図である。
図14】カメラ設置用器具が備える固定部の変形例を説明する図である。
図15】第2実施形態に係るカメラ設置用器具の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る乗客コンベアの構成を示す概略側面図である。
図1に示すように、乗客コンベア10は、建築構造物の上階と下階との間で乗客を輸送する乗客コンベア、すなわちエスカレータである。ただし、本発明は、エスカレータへの適用に限らず、例えば、動く歩道(水平式、傾斜式)などにも適用可能である。
【0012】
乗客コンベア10は、建築構造物に設置されたフレーム14と、無端状のステップチェーン16と、下部スプロケット18と、上部スプロケット20と、乗客を乗せて輸送するための複数のステップ22と、欄干24と、を備えている。
【0013】
フレーム14は、建築構造物の下階と上階との間に掛け渡されている。フレーム14の長手方向の一端部には下部機械室26が設けられ、フレーム14の長手方向の他端部には上部機械室27が設けられている。下部機械室26は下部乗降床28によって塞がれ、上部機械室27は上部乗降床29によって塞がれている。下部乗降床28及び上部乗降床29は、カバープレートとも呼ばれる。
【0014】
ステップチェーン16は、複数のステップ22を循環移動させるためのチェーンである。ステップチェーン16は、下部スプロケット18と上部スプロケット20とに巻き掛けられている。下部スプロケット18は下部機械室26に配置され、上部スプロケット20は上部機械室27に配置されている。また、上部機械室27には、駆動装置34と制御盤36とが配置されている。駆動装置34は、上部スプロケット20を回転駆動する装置である。駆動装置34は、駆動源であるモータ38と、モータ38の駆動力を上部スプロケット20に伝達する減速機40とを備えている。減速機40は、所定の減速比で回転する出力スプロケット42を有し、この出力スプロケット42と上部スプロケット20に駆動チェーン44が巻き掛けられている。
【0015】
複数のステップ22は、それぞれステップチェーン16に連結されている。複数のステップ22は、フレーム14に設けられた一対のレール(図示せず)に案内されて往路側と復路側を循環移動する。乗客は、往路側を移動するステップ22に乗って搬送される。
【0016】
欄干24は、フレーム14の上方に配置されている。欄干24は、複数のステップ22の両側に位置するように、乗客コンベア10の幅方向の両側に1つずつ配置されている。欄干24の周縁部には無端状のハンドレール46が配置され、欄干24の下部にはスカートガード47が配置されている。ハンドレール46は、図示しないハンドレールガイドに案内されて移動する。
【0017】
上記構成からなる乗客コンベア10において、上部スプロケット20が駆動装置34の駆動力を受けて回転すると、上部スプロケット20の回転駆動力がステップチェーン16を介して下部スプロケット18に伝達される。これにより、ステップチェーン16と下部スプロケット18は、上部スプロケット20の回転にしたがって回転駆動する。この場合、上部スプロケット20は駆動側のスプロケットとなり、下部スプロケット18は従動側のスプロケットとなる。また、ステップチェーン16は、下部スプロケット18と上部スプロケット20との間を循環移動し、複数のステップ22は、ステップチェーン16と共に循環移動する。一方、ハンドレール46は、移動のための駆動力をステップチェーン16から受けることにより、複数のステップ22と同じ速度で循環移動する。
【0018】
図2は、ステップの構成を示す斜視図である。
図2に示すように、ステップ22は、フレーム本体22aと、人が乗る部分である踏板22bと、その踏板22bの四辺に設けられたデマケーション22cと、ステップ22をステップチェーン15に連結するための前補強部22dと、を備えている。フレーム本体22a及び踏板22bは金属によって構成される。フレーム本体22aにはローラ22gが取り付けられている。デマケーション22cは、ステップ境界の乗り込みを防止するための注意喚起を黄色などの彩色で表示する部分である。デマケーション22cは、樹脂によって構成される。
【0019】
前補強部22dは、乗客コンベア10の前輪軸(図示せず)にステップ22を固定するための金属製のプレートである。前補強部22dは、フレーム本体22aにネジ止め等によって固定されている。前補強部22dには、固定ボルト22eと確認用プレート22fが取り付けられている。固定ボルト22eは、乗客コンベア10の前輪軸(図示せず)にステップ22を固定するためのボルトである。前補強部22dには固定ボルト22eの雄ネジ部分を通す貫通孔(図示せず)が設けられ、乗客コンベア10の前輪軸には固定ボルト22eの雄ネジ部分に噛み合うネジ孔が設けられている。このため、前補強部22dの貫通孔に固定ボルト22eを通して締め付けることにより、ステップ22を前輪軸に固定することができる。
【0020】
確認用プレート22fは、固定ボルト22eの締め付け状態を確認するためのプレートである。確認用プレート22fは、固定ボルト22eの締め付けによって前補強部22dに固定されている。確認用プレート22fは、作業者が固定ボルト22eの締め付け作業を完了したときに、白ペンでマーキングされたり、プレートの一部が折り曲げられたりする。これにより、確認用プレート22fにマーキングが付与されているかどうかや、確認用プレート22fの一部が折り曲げられているかどうかによって、固定ボルト22eの締め付け状態を確認することができる。
【0021】
上記構成からなるステップ22には、様々な要因によって異常が発生することがある。例えば、外的要因として、踏板22bの波板部分に小石が挟まったり、取扱い不良により踏板22bの波板部分が変形し、そこに人が乗ることにより繰り返し応力が加わるケースが考えられる。また、設置環境として、乗客コンベア10が屋外に設置され、踏板22bの部分が雨に晒されるケースが考えられる。また、人的要因として、乗客コンベア10の設置作業を行う作業者が固定ボルト22eの締め付けを忘れるケースが考えられる。
【0022】
また、ステップ22に発生する異常としては、例えば、踏板22bの波板部分の変形、前補強部22dの発錆、固定ボルト22eの緩み、確認用プレート22fの状態(マーキングの有無、折り曲げの有無)、デマケーション22cの浮き上がりなどの変形が考えられる。乗客コンベア10を安全に運行するためには、ステップ22に異常が発生していないかどうか点検する必要がある。
【0023】
本実施形態においては、乗客コンベア10のステップ22を点検する場合に、ステップ22を撮影するカメラを設置するためのカメラ設置用器具を使用する。
【0024】
図3は、第1実施形態に係るカメラ設置用器具の構成を示す斜視図である。
図3に示すように、カメラ設置用器具50は、乗客コンベア10の欄干24に着脱可能に固定される固定部52と、固定部52に支持されるアーム部54と、アーム部54に取り付けられてカメラ48を固定可能なカメラ固定具56と、を備えている。カメラ48は、ステップ22を撮影するためのカメラである。カメラ固定具56は、アーム部54の長さ方向Xに移動可能な状態でアーム部54に取り付けられている。
【0025】
固定部52は、欄干24を把持する把持部521と、把持部521に連結されてアーム部54を支持するアーム支持部522と、を有している。アーム支持部522は、カメラ固定具56を旋回できるように把持部521に対して回転可能に連結されている。具体的には、アーム支持部522は、図示しない回転軸により仮想軸Jを中心にA方向に回転可能な状態で把持部521に連結されている。実際に仮想軸Jを中心にアーム支持部522をA方向に回転させると、アーム部54は仮想軸Jを中心にスイングし、カメラ固定具56は仮想軸Jを中心に旋回する。また、アーム支持部522は、アーム部54に嵌合する嵌合孔522aを有している。
【0026】
把持部521は、把持部本体521aと、一対の把持爪521b,521cと、を有している。把持部本体521aは門型に形成されており、この把持部本体521aの上面にアーム支持部522が取り付けられている。また、一方の把持爪521bは、把持部本体521aと一体に形成され、他方の把持爪521cは、把持部本体521aと別体に形成されている。把持部本体521aと把持爪521cは、図4に示すように、接続金具58によって接続されている。
【0027】
第1実施形態においては、一例として、接続金具58がバネ付きの蝶番によって構成されている。接続金具58は、軸部58aと、2つの取付片58b,58cと、ねじりコイルバネ58dと、を有している。取付片58bは、把持部本体521aにネジ止めによって固定され、取付片58cは、把持爪521cにネジ止めによって固定される。これにより、把持爪521cには、ねじりコイルバネ58dの付勢力(バネ力)F1が加わり、この付勢力F1によって一対の把持爪521b,521cが閉じた状態(図3参照)に保持されている。また、把持爪521cは、図5に示すように、ねじりコイルバネ58dの付勢力F1よりも大きな外力F2を受けると、把持爪521bから離れる方向に回転移動する。
【0028】
上記構成からなる固定部52を乗客コンベア10の欄干24に固定する場合は、まず、図5に示すように把持爪521cを外力F2によって回転させる。そうすると、一対の把持爪521b,521cが開いた状態(片開きした状態)となるため、この状態で把持部本体521aをハンドレール46の上から欄干24に被せる。次に、外力F2を解放する。そうすると、一対の把持爪521b,521cは、ねじりコイルバネ58dの付勢力F1によって閉じるとともに、欄干24を両側から挟み込む。これにより、固定部52を欄干24に固定することができる。また、ねじりコイルバネ58dの付勢力F1に対抗する外力F2を把持爪521cに加えて、一対の把持爪521b,521cを開くことにより、固定部52を欄干24から取り外すことができる。
【0029】
なお、第1実施形態においては、把持爪521cを把持部本体521aと別体に形成し、この把持爪521cを接続金具58によって把持部本体521aに接続した構成を採用しているが、これに限らない。例えば、把持爪521bを把持部本体521aと別体に形成し、この把持爪521bを接続金具58によって把持部本体521aに接続した構成を採用してもよい。また、把持爪521b及び把持爪521cの両方を把持部本体521aと別体に形成し、一対の把持爪521b、521cをそれぞれに対応する接続金具58によって把持部本体521aに接続した構成を採用してもよい。
【0030】
再び図3に戻って説明すると、アーム部54は、断面円形の棒状部材、すなわち丸棒によって構成されている。アーム部54は、アーム部54の長さ方向Xに移動可能な状態でアーム支持部522に支持されている。また、アーム部54は、アーム部54の中心軸回りに回転可能に支持されている。
【0031】
図6は、第1実施形態に係るカメラ設置用器具が備えるカメラ固定具の斜視図である。図7は、第1実施形態に係るカメラ設置用器具が備えるカメラ固定具の上面図である。
図6及び図7に示すように、カメラ固定具56は、アーム部54に取り付けられる取付部561と、カメラホルダ部562と、を有している。取付部561には嵌合孔561aが設けられている。嵌合孔561aは、アーム部54に嵌合する孔である(図3参照)。取付部561は、アーム部54の長手方向Xに移動可能に支持されている。また、取付部561は、アーム部54の中心軸を中心に回転可能に支持されている。
【0032】
カメラホルダ部562は、ホルダ本体562aと、一対のホルダ爪562b,562cと、を有している。ホルダ本体562aは、取付部561にネジ止め等によって固定されている。ホルダ本体562aは、取付部561と一体構造であってもよい。一対のホルダ爪562b,562cのうち、少なくとも一方のホルダ爪(例えば、ホルダ爪562c)は他方のホルダ爪(例えば、ホルダ爪562b)に対して接近離間する方向、すなわち一対のホルダ爪562b,562cを開閉する方向に移動可能である。一対のホルダ爪562b,562cは、図示しないバネの力で閉じ方向に付勢されている。そして、一対のホルダ爪562b,562cは、バネの力でカメラ48を挟み込むことにより、カメラ48を固定する。また、一対のホルダ爪562b,562cは、図示しないホルダ支軸によってB方向(図6参照)に回転可能に支持されている。
【0033】
なお、カメラ48は、ステップ22の点検に必要な解像度でステップ22を撮影できるカメラであれば、どのようなカメラであってもよい。第1実施形態においては、一例として、カメラ付きの携帯端末であるスマートフォンをカメラ48として使用することを想定している。
【0034】
図8は、第1実施形態に係るステップ点検システムの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、ステップ点検システム60は、上述したカメラ48の他に、制御部62と電源部64を備えている。制御部62は、カメラ48で撮影された画像を有線又は無線で取り込む。制御部62は、画像変換処理部621と、演算処理部622と、データ保管部623と、外部通信部624と、を備えている。画像変換処理部621は、カメラ48で撮影された動画データを静止画データに変換処理する。演算処理部622は、CPUによって構成される。演算処理部622は、画像変換処理部621で変換された画像データを用いて、ステップ22の点検のための処理を行う。データ保管部623は、カメラ48によって撮影された画像や、ステップ22の点検に必要なプログラムなどを格納しておくためのメモリである。データ保管部623は、不揮発性のメモリ(例えば、SDカード)によって構成される。外部通信部624は、パーソナルコンピュータなどの外部の情報機器66と無線通信によってデータをやり取りするための通信部である。電源部64は、図示しない電源スイッチを入れることにより、制御部62に電力を供給する。
【0035】
続いて、第1実施形態に係るカメラ設置用器具を用いたカメラ点検方法について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、作業者は、乗客コンベア10にカメラ設置用器具50を取り付けるとともに、カメラ設置用器具50にカメラ48を取り付ける(工程S1)。カメラ設置用器具50の取り付けと、カメラ48の取り付けは、どちらを先に行ってもよい。
【0037】
上記工程S1において、カメラ設置用器具50は、図10に示すように、乗客コンベア10の下部乗り場に設置される。下部乗り場の下には、図1に示すように下部乗降床28を介して下部スプロケット18が配置され、この下部スプロケット18の回転軸周りでステップ22の向きが変化するようになっている。
【0038】
乗客コンベア10の下部乗り場にカメラ設置用器具50を設置する場合は、上述したように一対の把持爪521b,521cで欄干24を両側から挟み込んで固定部52を欄干24に固定する。このとき、アーム部54は、乗客コンベア10の幅方向に沿ってほぼ水平に配置される。また、カメラ固定具56に固定されたカメラ48は、図示しないレンズを下向きにして配置される。このようにカメラ設置用器具50を欄干24に取り付けることにより、下部乗降床28の下を通過するステップ22からカメラ48までの距離を長く確保することができる。よって、下部乗降床28の下を通過するステップ22全体がカメラ48の視野に収まるよう、ステップ22を俯瞰する位置にカメラ48を設置することができる。
【0039】
次に、作業者は、制御部62を起動する(工程S2)。具体的には、作業者は、電源スイッチを入れて電源部64から制御部62に電力を供給した後、外部通信部624を介して制御部62を情報機器66と無線で接続し、ステップ22の点検に必要な情報を情報機器66から入力する。ステップ22の点検に必要な情報としては、例えば、乗客コンベア10が備えるステップ22の個数(以下、「ステップ個数」という。)などがある。
【0040】
次に、作業者は、図10に示すように、下部乗降床28の一部をずらすなどして開口部28aを設け、この開口部28aを通してステップ22が見えるようにカメラ48の位置を調整する(工程S3)。カメラ48の位置調整は、乗客コンベア10からカメラ設置用器具50を取り外すことなく、カメラ設置用器具50の固定部52を欄干24に固定したままで行うことができる。また、カメラ48の位置調整は、乗客コンベア10の幅方向とこれに交差する方向で個別に行うことができる。
【0041】
具体的には、アーム支持部522の嵌合孔522aにアーム部54を嵌合した状態で、アーム部54をアーム部54の長さ方向に移動させることにより、乗客コンベア10の幅方向でカメラ48の位置を調整することができる。また、取付部561の嵌合孔561aにアーム部54を嵌合した状態で、取付部561をアーム部54の長さ方向に移動させることにより、乗客コンベア10の幅方向でカメラ48の位置を調整することができる。また、固定部52のアーム支持部522は、図3に示すように、仮想軸Jを中心にA方向に回転可能である。このため、図3に示す仮想軸Jを中心にアーム支持部522を図11又は図12に示すように回転させ、これによってカメラ固定具56を旋回させることにより、乗客コンベア10の幅方向と交差する方向でカメラ48の位置を調整することができる。さらに、カメラ固定具56が有する一対のホルダ爪562b,562cを、アーム部54の傾きに応じて回転させることにより、カメラ48の向きをステップ22の向きに合わせて調整することができる。
【0042】
次に、作業者は、乗客コンベア10の運転を開始して複数のステップ22を循環移動させるとともに、カメラ48に設けられた撮影ボタン等を押すことにより、カメラ48によるステップ22の撮影を実行する(工程S4)。乗客コンベア10の運転とカメラ48によるステップ22の撮影は、乗客コンベア10が備えるすべてのステップ22をカメラ48で撮影し終わるまで継続される。具体的には、上記工程S2で情報機器66から入力されたステップ個数分だけカメラ48でステップ22を撮影したら、乗客コンベア10の運転とカメラ48の撮影を終える。この工程S4でカメラ48が撮影したステップ22の画像データ(動画データ)は、制御部62の画像変換処理部621に取り込まれる。
【0043】
次に、画像変換処理部621は、カメラ48が撮影したステップ22の画像データである動画データを静止画データに変換処理するとともに、変換処理後の静止画データからステップ22の点検に用いる静止画データを抽出する(工程S5)。静止画データの抽出は、ステップ22ごとに行われる。ステップ22の点検に用いる静止画データは、好ましくは図13に示すように、ステップ22の全幅にわたって前補強部22dが正面に見える画像データである。このような画像データは、下部スプロケット18の回転軸周りでステップ22の向きが変わるときにカメラ48によって撮影可能である。画像変換処理部621で変換処理されたステップ22の画像データは、演算処理部622に送られる。
【0044】
次に、演算処理部622は、画像変換処理部621によって抽出されたステップ22の静止画データと、基準画像データとを比較することにより、ステップ22の異常有無を判定する(工程S6)。基準画像データは、異常が発生していないステップ、つまり正常なステップの静止画データである。基準画像データは、データ保管部623に予め記憶され、電源部64から制御部62に電源が供給されたときに、演算処理部622によって読み出される。演算処理部622によって判定されるステップ22の異常は、例えば、踏板22bの波板部分の変形、前補強部22dの発錆、固定ボルト22eの緩み、確認用プレート22fの状態(マーキングの有無、折り曲げの有無)、デマケーション22cの浮き上がりなどの変形である。
【0045】
次に、演算処理部622は、上記工程S6での判定結果を含む情報を、外部通信部624を介して情報機器66に出力する(工程S7)。このとき、情報機器66に出力される情報は、ステップの異常に関する情報に相当する。情報機器66に出力される情報には、例えば、異常有りと判定されたステップ22が存在するか否かを示す情報、異常有りと判定されたステップ22の画像データ、異常内容、識別情報などが含まれる。ステップ22の識別情報は、例えば、カメラ48の撮影中に個々のステップ22に付与される識別番号である。これらの情報は、情報機器66の画面に表示される。このため、作業者は、情報機器66に表示された情報を確認し、異常有りと判定されたステップ22の中に何らかの対応が必要なステップ22があれば、適切に対応する。例えば、作業者は、異常有りと判定されたステップ22の確認用プレート22fにマーキングがない場合、あるいは確認用プレート22fの一部が折り曲げられていない場合は、該当するステップ22の固定ボルト22eを規定のトルクで締め付けた後、確認用プレート22fのマーキング処理や折り曲げ作業を行う。
【0046】
このようなステップ点検方法により、カメラ48の設置作業を短時間で終えて、ステップ22の異常を効率良く検出することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、演算処理部622がステップ22の異常有無を判定し、異常有りと判定されたステップ22に何らの対応が必要かどうかを作業者が判断しているが、対応の要否を演算処理部622が判断してもよい。また、演算処理部622は、異常が疑われるステップ22を特定し、最終的な異常の有無は、ステップ22の画像や現物を見て作業者が判断してもよい。また、ステップ点検システム60に表示部(図示せず)を設け、この表示部に、ステップの異常に関する情報を表示(出力)してもよい。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態に係るカメラ設置用器具50によれば、乗客コンベア10の欄干24にカメラ設置用器具50の固定部52を固定するとともに、カメラ設置用器具50のカメラ固定具56にカメラ48を固定することにより、カメラ48の設置作業を簡易に行うことができる。また、カメラ固定具56に固定したカメラ48からステップ22を俯瞰する形で撮影するため、ステップ全体を撮影することが可能になる。
【0049】
また、第1実施形態に係るカメラ設置用器具50において、カメラ固定具56は、アーム部54の長さ方向Xに移動可能な状態でアーム部54に取り付けられている。これにより、カメラ設置用器具50を乗客コンベア10に取り付けた状態では、カメラ固定具56に固定されるカメラ48の位置を、カメラ固定具56の移動により乗客コンベア10の幅方向で調整することができる。したがって、乗客コンベア10の幅方向において一方の欄干24から他方の欄干24までの寸法が異なる乗客コンベア10にも対応可能となる。
【0050】
また、第1実施形態に係るカメラ設置用器具50において、アーム部54は、アーム部54の長さ方向Xに移動可能な状態でアーム支持部522に支持されている。これにより、カメラ設置用器具50を乗客コンベア10に取り付けた状態では、カメラ固定具56に固定されるカメラ48の位置を、アーム部54の移動により乗客コンベア10の幅方向で調整することができる。したがって、乗客コンベア10の幅方向において一方の欄干24から他方の欄干24までの寸法が異なる乗客コンベア10にも対応可能となる。
【0051】
また、第1実施形態に係るカメラ設置用器具50において、アーム支持部522は、カメラ固定具56を旋回できるように把持部521に対して仮想軸Jを中心に回転可能に連結されている。これにより、カメラ設置用器具50を乗客コンベア10に取り付けた状態では、カメラ固定具56に固定されるカメラ48の位置を、カメラ固定具56の旋回により乗客コンベア10の幅方向と交差する方向で調整することができる。
【0052】
なお、上記第1実施形態においては、カメラ設置用器具50の固定部52を乗客コンベア10の欄干24に固定する構成を採用しているが、本発明はこれに限らず、乗客コンベア10の下部乗り場で欄干24の上縁部に沿って配置されるハンドレールガイド(図示せず)にカメラ設置用器具50の固定部52を固定する構成を採用してもよい。
【0053】
また、上記第1実施形態においては、図4及び図5に示すように把持部本体521aに接続金具58によって把持爪521cを接続した構成を採用しているが、固定部52は、欄干24又はハンドレールガイドに固定できる構造であれば、どのような構造であってもよい。例えば、固定部52は、図14に示すように、把持部521の把持部本体521aに螺合されたネジ軸523と、ネジ軸523の一端に設けられたパッド524と、ネジ軸523の他端に設けられたツマミ525とを有し、ツマミ525を回転させることによって把持爪521bとパッド524との間の寸法Lが変化する構造であってもよい。
【0054】
図15は、第2実施形態に係るカメラ設置用器具の構成を説明する斜視図である。
図15に示すように、第2実施形態に係るカメラ設置用器具50Aは、アーム部54Aと、アーム部54aの長さ方向の両端に設けられた固定部52A(図15では一方のみ表示)と、アーム部54Aに取り付けられたカメラ固定具56Aと、を備えている。カメラ固定具56Aの構成は、第1実施形態の場合(図6図7を参照)と同様である。
【0055】
アーム部54Aは、例えば、直径が異なる2つのスリーブをネジの噛み合いによって連結するとともに、直径が大きい側のスリーブにバネを内蔵し、いずれか一方のスリーブを回転させることによってアーム部54Aの長さ方向に伸縮可能な構造になっている。固定部52Aは、例えば、ゴム製のパッドによって構成されている。つまり、固定部52A及びアーム部54Aは、いわゆる突っ張り棒と同様の構造になっている。
【0056】
上記構成からなるカメラ設置用器具50Aにおいて、固定部52A及びアーム部54Aは、図15に示すように、乗客コンベア10の両側の位置する欄干24の間に突っ張る状態で固定される。これにより、カメラ48の設置作業を簡易に行えるとともに、ステップ全体を撮影することが可能になる。
【0057】
また、アーム部54Aの長さ方向にカメラ固定具56Aを移動させることにより、カメラ48の位置を乗客コンベア10の幅方向で調整することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…乗客コンベア、22…ステップ、24…欄干、48…カメラ、50,50A…カメラ設置用器具、52,52A…固定部、54,54A…アーム部、56,56A…カメラ固定具、521…把持部、522…アーム支持部
図1
図2
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図4
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図6
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図15